1 効率的に身に付けさせるための三つの教育方法
教育でやる気を高め、マンネリ化を防止する
教育は、仕事の効率化や働く満足、仕事のマンネリ化防止に役立ちます。家庭生活を送る上でも、効率的な家事の仕方や料理などを教われば、時間を有効に使え、生活のクオリティが上がり、教わる内容に応じて進歩や変化が楽しめるのと同じです。
特にマンネリ化はやる気を削ぎ、作業効率を下げます。それどころか、パート・アルバイトの転職要因ともなります。逆に、マンネリ化せず「仕事を通じて成長している」実感がある間は、簡単に「辞めよう」とは思いません。
そうした実感は、教育によってスキルアップしたり、違う仕事にチャレンジしたりできることで得られるものなのです。そもそも、会社としても、パート・アルバイトが「いつまでたっても新人同様」では困ります。また、同じ職場の中に、勤続年数のわりに「仕事ができない」人が混じっていると、次第に軋轢が生じ、組織を乱してしまいます。
教育は、知識と技能の両面から行います。マナー教育のところでも触れたように、知識として頭でわかっていても、行動できなければ意味がありません。逆に、行動できても、その意味やねらいを知らなければ、行動の価値は半減してしまいます。
例えば「電話の取次でお客さまにご不快な思いをさせてはいけない」と頭でわかっていたとしても、保留や転送の操作ができずにお待たせしてしまったり、途中で切れてしまっては、無意味です。
一方、保留や転送の仕方を知っていても、「電話の取次でお客さまにご不快な思いをさせてはいけない」ということがわかっていなければ、社内の取次相手が出ないままいつまでも保留にしてしまったりなど、やはり対応に支障をきたしてしまいます。
「知って」いて、なおかつ「できる」ようにすることが、教育では大事です。面倒でも、その両方を確実にしていくことが、パート・アルバイト戦力化の早道なのです。
手軽で効率的なOJT
パートや正社員といった雇用形態を問わず、企業における教育は、 OJT( On the Job Training =職場内訓練)、 OFF― JT( Off the Job Training =職場外訓練)、 SD( Self Development =自己啓発)の推奨、という三つで行うのが基本です。
各方法には、それぞれ特色があります。これを理解した上で、どれか一つではなく、教える内容ごとに使い分けたり、組み合わせたりすることが大事です。
まず、 OJTですが、 On the Job Trainingの頭文字をとった言葉で、オー・ジェー・ティーと読み、「職場内訓練」を意味します。
これは、文字どおり日常業務を通じて上司や先輩などが行う教育のこと。実際に仕事をしながらの実地訓練となり、必然的に「場面ごと」に「具体的に」教えることとなるため、理解してもらいやすい教育方法といえます。
また、多くの場合、マンツーマンあるいは一人対少人数での教育となるため、わからないことをすぐ質問してもらったり、理解しているかどうかを確かめながら教えられます。
同様に、実際にやらせてみることで、技能として身に付いているか、すなわち「できる」レベルまで落とし込めているかを、一つひとつ確認できます。
その場で「できるまでやらせてみる」つまり、トレーニングを行うことも可能です。OJTは、教える内容や教える相手により、臨機応変にできるため、高い教育効果が見込めます。
一方で、 OJTは、教える側の力量により、その質がかなり左右されることも否めません。教え方が悪いと、教わる側が辟易してしまったり、理解できないのは自分が悪いのではないかと不安になったり、自信喪失してしまいます。
また、教える側が間違って理解していると、その「間違った考えややり方」が、新人パート・アルバイトや後輩パート・アルバイトに、脈々と伝わっていってしまいかねません。
そのため、 OJTは、教える側の人選が大事です。第一に、仕事が正確にできること。また、一つひとつの仕事の意味や狙い、つまり「何のために」「どうして」このように行うのかを、きちんと理解している人を選びます。
性格的には、あまりに短気だったり、ものごとをはしょって伝えるような人は、不向きです。こうした注意点こそあるものの、パート・アルバイトの教育は、実際には OJTが主軸です。
教育のために別途時間を割いたり、そのための場所を用意したり、講師を呼んだりする必要がなく、他の方法に比べ手軽で、しかも表立ったコストがかかりません。
一斉・一律の習得には OFF― JT
OFF― JTは、 Off the Job Trainingを略した言葉で、日本語にすると「職場外訓練」となります。オフ・ジェー・ティーと読み、多くの場合、教わる側を一堂に集めて行うセミナーや研修のことを意味します。
一人の講師が、一〇人弱程度 ~内容によっては数百人もの受講生を相手に講義や講演を行ったり、研修を実施します。OFF― JTは、多くの人に一斉に同じ内容を伝えられるため、ビジネスマナーや新しいシステムなどを職場全体に浸透させたい場合に効果的です。
また、CS(顧客満足)等の意識を組織に強く醸成させる目的から、著名な講師を招いて講演をしてもらったり、自社業界で起こっている問題を職場や会社全体に伝えるため、社員が講師役を務めて実施する場合もあります。
このように OFF― JTにはメリットがたくさんありますが、一方、教える相手がパート・アルバイトの場合、難しさも伴います。
時間給で雇用されシフト勤務などで働く人を、特定の時間に、特定の場所に集めなくてはならないからです。コスト的にも、自社に開催場所が確保できない場合は、貸会場の使用料などが別途必要となってきます。
しかし、「パート・アルバイトには OFF― JTは実施しない」と結論付けてはいけません。もちろん、教育そのものの大事さはいうまでもありませんが、さらに、法的に違反となる場合があるからです。
というのは、二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法で、「仕事の内容や責任、人材活用の仕組みや運用などが同じ無期雇用契約の(あるいは反復更新により無期と同じ)パート・アルバイトに対しては、教育について、正社員との差別的取扱いは禁止」と、定められているからです。
ちなみに同法では、仕事の内容や責任等が正社員とは異なるパート・アルバイトに対しても、正社員との重なり具合に応じて、バランスを取ることを求めています。
教育は、投資です。もったいないから投資しないのではなく、投資した以上のリターンが得られる工夫をすることです。
成長のカギを握る S D(自己啓発)
SDは、 Self Developmentの頭文字をとったもの。読み方はエス・ディーで、日本語にすると「自己啓発」です。SDは、仕事以外の自分の時間に自主的に学習することです。
例えばパソコン操作を家で練習する、仕事に役立つ本を読む、といったこと。パート・アルバイトが SDに積極的に取り組んでくれれば、こんなにありがたいことはありません。
しかし、業務時間外であるならば、これをパート・アルバイトに強制することはできません。そこで大事になるのが、 SDを奨励するような職場風土作りです。
例えば、仕事に役立つ本を職場に設置しておき貸出可能にする、あるいは、休憩室のテレビで業務関連のビデオや DVDを見られるようにしておく、などです。
仕事に直結しない内容でも、小説などを通じて人間性を養ったり、業界の知識や歴史を知ることは、仕事の面白みにつながります。
社員食堂がある工場などで、その一角を図書コーナーにしている例はよく見ます。SDを奨励する風土作りを、もっと積極的に進めている企業もあります。
例えば、ある全国ブランドの洋菓子製造・販売会社では、ポイント制の福利厚生制度の一環として、仕事に関する教育・研修を自主的に受けた場合、その費用の一部を会社が負担しています。この制度は、パートも対象です。
また、山梨県のあるスーパーでは、パートが仕事に関する教育・研修を自主的に受講した場合、その費用を全額会社が負担しています。
その教育費は、 OFF― JT等もすべて合わせた額ではありますが、年間八〇〇万円にも上ります。ちなみにそのスーパーは、正社員は一〇人のみ、パート・アルバイトは約一 ○ ○人です。
同店のマネジャーは、「うちは、パートさんの力でもっているようなものだから」「パートさんを教育して、その分、高度な仕事を行ってもらっています」と言い、教育費を惜しみません。
もちろん、積極的に学び成長した人にはより難易度の高い仕事に就いてもらい、その分賃金も上げています。投資は、それをはるかに上回る利益を上げているからこそできること。その利益の源泉こそ、教育だと、同社は言い切ります。
2 パート・アルバイトだからこそ、の注意点
知識や経験は個々それぞれ
パート・アルバイトに対する教育は、正社員とは違う難しさを伴います。原因は、その多様性。一人ひとりが、全く違う背景をもった人たちだということです。
例えば「アルバイトは初めて」という高校生や、まだ就職活動もしていない大学一 ~二年生は、「働く」ということに関し、全く白紙の状態です。
そんな相手には、不安を取り除きつつ、できるだけ丁寧に、しかし仕事を甘く見ないように、注意して教育する必要があります。また、同じ年齢の主婦パート二人を雇った場合でも、教育の仕方を変える必要が出てくる場合があります。
例えば、学生アルバイト同様仕事の経験がほとんどない Aさんには、新卒新入社員に教えるように、基礎から丁寧に教えます。
一方、過去に正社員として長く働き、パートとしても多くの仕事経験を積んだ Bさんに対しては、中途採用社員を相手にする感覚で教育します。
前職とは違う「自社の」やり方や考え方、判断基準などを、過去にとらわれず身に付けてもらうことが、教育の目的となってきます。
年長パート・キャリアパートに教える場合の注意点
新人パートが年上だったりキャリアパートの場合には、教え方に注意が必要です。
キャリアパートとは「総合職正社員やマネジャーとしてバリバリ働いていた」経験をもつ人など、生半可な中途採用正社員よりもはるかに高度な仕事をこなしてきた経験をもつパートです。
具体的には、言い方や枕詞を工夫します。例えば「よくご存じかとは思いますが」「当社が特に大切にしている点なので、あえて繰り返し確認しますが」といった具合です。
要は新人パートの来し方を、価値あるものと認める言い回しの工夫です。相手を尊重し、敬愛していることが伝わる、気配りの言葉を添えるのです。
「なぜ、教育するのか」を意識する
なお、厳しく教育し続けると、パートによっては「この会社は、だんだん仕事がきつくなる」などと思う人もいるでしょう。
そんな不安や不満を解消するには「なぜ、どうして厳しく教育するのか」「教育の結果、何を期待しているのか」を、きちんと情報提供することです。
例えば「当社では顧客満足を極めて重視しています。だからマナーについては特に厳しく、細かく注意することがありますが、一緒に頑張っていきましょうね」といった具合です。
その際、入社当初から「厳しく教育する旨」宣言しておくと、後々の教育がしやすくなります。また、教えた内容を、より早く、深く、吸収してもらえます。
パート・アルバイトを戦力化したい場合の教育は、最終的には「自ら考え、会社として正しい行動ができる」ようになることを目標とします。上司や正社員に確認をとることは大事ですが、いつまで経っても正社員に聞かなければ何もできないようではいけません。
上手な注意の仕方、褒め方とは
教育において、注意をすることは重要かつ不可欠です。しかし、その言い方には、すでに述べたように、気配りが必要です。特にパート・アルバイトは、心配りに欠けたちょっとした一言で、傷ついたり、やる気を失ったり、落ち込んでしまったりしがちです。
そこで以下に、せっかくの注意をきちんと受け止めてもらうための、「上手な注意の仕方」のポイントを挙げました。あわせて「上手な褒め方」についても、記します。
●上手な注意の仕方
- □一回に一つのことをその場で注意。過去を蒸し返したり、あれこれ一度に言わない
- □冷静に注意すること
- □強く叱る場合は他の人のいないところで行う
- □「あなた」が悪いのではなく「そのこと」がいけないのだと伝えること。
つまり「人」と「事」を分けて注意する
- □なぜ注意するのか、一つひとつ理由をあげて、かみ砕いて説明する
- □注意と激励はセットで。
特に相手が新人の場合は、励まし希望を与えることで、次への意欲をもり立てる
- □教えていないことは注意しない
- □注意して改善されたら、必ず褒める
●上手な褒め方
- □事実に基づいて、具体的に、細かく褒める
- □良い行為は見逃さず、すかさず褒める
- □むやみやたらに褒めるのではなく、当然褒めるべきものだけ褒める
- □相手が「褒めてもらえるかな」と予期していることを、外さないように褒める
- □時間、場所、タイミングを考えて褒める
- □周囲の人への影響も考えながら褒める
- □他者からの褒め言葉はぜひ伝える。
例えば「 ◯◯チーフがあなたのこと、頑張っていると褒めていましたよ」など
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