序章成長も成果もフィードバックしだい
マッキンゼー入社1年目から求められるスキル
仕事のいついかなるときにもフィードバック
ファームで起こった鮮烈な思い出がいくつかあります。
それは入社1年目、初プロジェクト、初ミーティング後に起こりました。
プレッシャーを感じていた私は何が何でも存在感をアピールしようと長々と論点がズレたことを話してしまいました。
案の定、私のコメントはスルーされ、その後は沈黙を貫きました。
部屋を出るなり、フィードバックは光の矢の如く返ってきました。
アメリカ人のコンサルタントからです。
彼は私をチームルームの外へ呼び出し、伝えたいことがあると言います。
私は表情こそ平静を保っていましたが、内心はもう心臓がバクバクでした。
「シュウ、さっきミーティングであなたはクライアントの現状について語ったが、論点が外れていた。
皆は誤りを指摘こそしなかったけど、無反応だったね。
時間の浪費だよ。
非常に残念に感じた。
こうしたらいいと思う。
バリューが出るなら言う、出ないなら言わない。
OK?次から気をつけて。
それがマッキンゼーでサバイブする方法だよ」激しく詰められるのかと思っていた私は意表を突かれ、ただ茫然としていました。
彼が思いのほか丁寧に説明してくれたからです。
そのときはもちろん何も知らなかったのですが、これは、緻密に計算されたフィードバックの手法だったのです。
入社して4つ目のプロジェクトは消費財のプロジェクトでした。
あと数カ月で1年目が過ぎようとしていた頃です。
中間発表後にマネージャーからチームにフィードバックが欲しいと言われました。
クライアントとのワークショップも順調に終えた直後だったのでチームも意気揚々。
メンバーが一人、また一人と上手に良い点、改善点を述べていきます。
私は度肝を抜かれました。
皆よく観察していました。
最後に私の番になったのですが、大したことが言えず、まとまりに欠け、恥ずかしい思いをしたのを覚えています。
実は、私は自分のことで精一杯で、ほかの人を見る暇も必要性もあまり感じてはいなかったのです。
そしてプロジェクトを無事終えたとき、マネージャーから、「もっとしっかりフィードバックできるようになってね」とサラッと言われました。
そう、見抜かれていたのです。
あるアジア系のメディア会社に成長戦略案件を頼まれました。
チームの中の一人が財務モデリングを担当することになりました。
投資銀行出の凄腕の彼のモデリングスキルは非常に高かったのですが、それを文字に、そしてパワポに落とすと、どうも意味合いが鮮明ではありません。
困った私は何度か一緒にチャートを書いたのですが、上達が遅い。
短いプロジェクトだったので、疲れた私は諦め、自分で取りかかりました。
しかも彼にその理由をしっかりと述べず、フィードバックを後回しにしてしまったのです。
結論から言うと、大変嫌われてしまいました。
しかも、私がつけた彼のパフォーマンス(成績)とフィードバックが合わないと彼から猛反発を食らう羽目になったのです。
そのとき、初めて私はいくつかのことを学びました。
フィードバックというのは継続的に行うこと、辻褄が合うように徹底させること、断片的に捉えたと思われないこと。
そして非常に慎重に行うこと。
さらに最終的には相手に腹落ちしなかったら、最悪恨まれてもしょうがないと理解すること。
仲良くしていた関係が一瞬に崩れ去り、彼にとっても苦い経験をさせてしまいました。
その後、パートナーから私のフィードバックの穴を指摘されたのは言うまでもありません。
フィードバックが大切にされる3つの理由ところで、あのマッキンゼーが、なぜこれほどまでにフィードバックを大切にしていたのか。
それには3つ理由があります。
1つ目は、ファームの根底にある哲学がピープルファーストだからです。
人を大事にするには、簡単に言うと、その人が成長できる機会やアドバイスをできるだけ多く与えることです。
ファームにはあらゆる側面から一人の人間を一人前のコンサルタントに育てていく「プロフェッショナルな義務」があるという根強い考えがありました。
プロジェクトにおけるマネージャー、同僚や部下、そしてクライアント。
プロジェクトとは別にメンターのように自分を見てくれるデベロップメントリーダーの存在。
その全員からフィードバックをもらうことによって若手は急速に成長することができるのです。
2つ目は、仕事の質をできる限り高く保つためです。
プロジェクトを最終成果物へ近づけるために、ファームではそのストーリーに関与している全チームで繰り返しレビューをします。
つまり、言い換えると、細かいボディチェックのように、何回もフィードバックを行います。
成果物について、練りに練った上での「結晶化」を目指しており、そのためには、各メンバーの質の高いフィードバック力が欠かせないのです。
3つ目は、フィードバックができる人は、仕事ができるからです。
実際、フィードバックが上手な人は、あらゆる能力が高い水準にあり、それらを総動員して、同僚、部下、上司、クライアント、周囲の信頼や協力を得て、仕事を首尾よく進めていきます。
単純に、フィードバックは難しく、練習を重ねる必要があります。
その適格な手法を学び、質を高めるには、ざっと挙げてみるだけでも、観察力、客観性、アクティブリスニング力、思いやり(相手への配慮)、相手が腹落ちするコミュニケーションスキル、一貫性、継続性、誠意、信頼、影響力、自律性など、様々です。
そういう意味では、フィードバックスキルは、ビジネスにおける、総決算のスキルの一つとも言えます。
リーダーシップを発揮して生産性の高い仕事をする、失敗から学び飛躍的な成長を遂げる、そのための核となっているのが、フィードバックスキルなのです。
組織の隅々までフィードバックカルチャーが浸透実際、マッキンゼー社内でフィードバックカルチャーは大変浸透しており、「フィードバックのフィードバック」もよく行われていました。
それもグッドかバッドか、ではなくて、このように伝えたほうが伝わりやすい、具体的には観察力の詳細部分が弱いなど、的確な指摘が行われます。
フィードバックの精度を実際のプロジェクトの中で鍛え、私や他のチームメンバーのコミュニケーションスキル向上へつなげていってくれました。
そして、できる人ほどフィードバックを欲しがって、もらってはどんどん成長していきます。
これには年齢も立場も全く関係ありません。
マネージャーも自身で若手メンバーにどんどんフィードバックを求めてきます。
あるプロジェクトで、マネージャーとしてこのプロジェクトをどう回しているか知りたい、ということでした。
まだ駆け出しだった頃の私が恐る恐る良い点と改善点とを指摘すると、彼はニッコリ笑みを浮かべ、次週、その改善点を直してきたのです。
簡単に言うと、夜ご飯が遅いチームの習慣を変えたい、といった類のものだったのですが、翌週からしっかり夕方6時にチームハドル(集まり)が設定され、「さあ、これからどうする」と聞かれました。
このように、フィードバックカルチャーがチーム全体に浸透しているとお互いにコミュニケーションが円滑になります。
そればかりか、一丸となってお互いを高め合い、高みを望むようになるのです。
若手は若手なりに、ベテランはベテランなりに、それぞれの得意分野を活かして、チームに貢献することができます。
フィードバックは、立場に関係なく、お互いが成長と成果を目指して行うコミュニケーションの一つでもあるのです。
そもそもフィードバックとは何か?
仕事のダメ出し?指導や説教?読者の皆さんも、言葉としてフィードバックという単語はご存知でしょう。
実際、我々は日々ビジネスの現場で多くのフィードバックを受け取る(そして行う)機会に直面しています。
プレゼン後、レポート提出後、資格のテスト後、分析結果を出した後、研究成果の発表後、研修のロールプレイ後など、その頻度と領域は様々ですが、実はフィードバックは、仕事の成果や人の成長に最も直結する役割を果たしているのです。
でも、日本の職場を見渡すと、まだまだフィードバック本来の力を活かしきれていない印象です。
そこがもったいないと感じるのです。
試しに、フィードバックとは?と尋ねてみると、次のような、あやふやな答えが返ってくることが多いです。
「仕事のダメ出し」「修正点の指示でしょう」「指導とか説教?」「評価です」「アドバイスや改善点の指摘」「反省を促すための語り全般」などなど。
職場において、本人が望むかどうかには関係なく、上が伝えるべきネガティブなメッセージ全般、といったところでしょうか。
されるのはもちろん、するほうも、あまり良くは思わない。
できることなら最小限で済ませたい。
そんな空気を感じるのです。
でも、日々の仕事において、フィードバックを避けることは、自分やチームメンバー、ひいては組織全体の成長や成果のチャンスをみすみす捨て去っているのと同じです。
そもそも、実に多くの人が、フィードバックの意味を誤解しているように思えてなりません。
より良い結果を生み出すための情報伝達ではフィードバックとは、いったい何なのか?一言で何かと言うと、「特定のプロセスや行動による結果に対して、向上を目的とした情報の伝達」です。なので、仕事に限らずあらゆる場面で使われる手法なのです。
例えばある地域では長い間、車両のスピード違反に悩まされていました。
坂道だったので、ビュンビュン飛ばす車の数が一向に減りません。あの手この手を使いましたが、結局、現象を解決したのは、レーダー速度標識(通常LEDなので光る)の導入でした。
*1それ以前も、制限速度の看板を大きくしたり、通学路に看板を設置して安全性を訴えたりなど試みましたが一向に改善されず、「自身のスピード―例:時速77キロ―をリアルタイムで知る」という最も単純なフィードバックが功を奏したのです。
ではなぜ飛ばす車が減少したのか。
後に心理学者が解明した説によると、人は自分で判断し、反省することを好み、「上から目線」のアドバイスをめっぽう嫌う習性があるからなのだそうです。
このように、そもそもフィードバックとは工学などの分野で用いられていた手法で、その情報そのものにはポジティブもネガティブもありません。
改善や向上を目的としたニュートラルな情報伝達で、センサーなどの機器における反応や警報音などもその一つです。
これが転じて、日常のコミュニケーションであれば、「相手の言動に対して持っている意見」となり、そして、ビジネスのコミュニケーションであれば、「相手の仕事や作法に対して持っている意見」になります。
・例えば、仕事と人のデベロップメントを目指すコミュニケーションのために使用する。
・例えば、コミットメントを促すときにも効果的です。
・例えば、チームモラル(意識ややる気)を上げてもらいたいときにも使います。
フィードバックとは、ネガティブな評価を伝えることが目的ではありません。ポジティブな結果を生むことを目的とした、具体的な観察や助言を含んだメッセージの伝達なのです。
要するにフィードバックは、伝え方や受け取り方しだいで、日常においてもビジネスにおいても、もっと上手に活用できるはずなのです。
ビジネスの成功に欠かせないフィードバック実際、ビジネスにおけるフィードバックの大切さについては、ビル・ゲイツからイーロン・マスクまで、業界の著名人がその重要性について発言をし、世代を超えて脈々と受け継がれています。
テスラモーターズやスペースXの設立など、数々の偉業を成し遂げている南ア出身のイーロンは、数年前にカジュアルなインタビューで、仕事に対してあえてアドバイスをするとしたら、それはフィードバックループの大切さを知ることだと述べています。
*2何をして、いかに自分を高めていくか、フィードバックはビジネスの成功には不可欠であり、その原動力であると熱く語り、「私の良いところは聞きたくない。むしろ、できない、良くないところを指摘してくれ」とまで語っています。
アップルの創始者、故スティーブ・ジョブズも、優秀でスマートな人の採用を大前提に置きながら、さらにその採用理由として、賢い人から何をすればよいのか助言をもらうためだ、と言っていたそうです。
イーロンにしろスティーブにしろ、一級品のエゴ、スタミナ、賢さを持ちながら、貪欲に他者からフィードバックを欲しがる姿勢はビジネスで成功していく上では必需品なのでしょう。
逆にそのような考えが彼らの時代を作った、と言っても過言ではないのです。評価より育成。
米国企業でも近年注目また、ここ数年でフィードバックと年末のパフォーマンス評価の考えが変化してきているのもご存知でしょうか。
雑誌『ハーバードビジネスレビュー』によると、米大企業の10~15%は実は年末のパフォーマンス評価を撤廃していて、インフォーマルで頻繁なフィードバックに徹しているだけの企業も増えてきているとのことです。
*3主な理由として、年末のパフォーマンス評価では膨大な時間のロスになってしまう(マネージャーレベルで年平均210時間、または5週間ほど!)、フィードバックがビジネスに与えるポジティブなインパクト、そして、人材起用の激戦化(WarforTalent)により加速している自社育成のニーズが述べられています。
IBM、アドビ、デル、マイクロソフト、などのテクノロジー企業を皮切りに、デロイトやアクセンチュアなどでも試験的に(ハイブリッド形式を一部用いて)フィードバックだけで人事評価を決めてしまう手法を後押しているそうです。
これらの先行的な企業はデベロップメントに対するフィードバックを中心として、数字がつくスコア一つに絞らず、マルチの角度から情報を提供するようになってきています。
さらに、アマゾン、GEなどは独自のフィードバック・アプリを開発、導入し、同僚、上司内でスムーズかつタイムリーにフィードバックを可能にするような配慮まで確保してきているとのことです。
フィードバックによくある悩み
このように、フィードバックはビジネスに欠かせないスキルなのですが、実際には、多くの方がうまく活かしきれず悩んでいるようです。よく耳にするのが、次の3つの悩みです。
1効果がない
せっかく部下に指摘したりアドバイスしたりしても効果がない。何度も同じことの繰り返し。改善しても要求レベルの3割未満。
でも、もしかすると伝えているメッセージが適切でないのかもしれません。フィードバックのナンバーワン課題は一貫性です。
あなたがもし多くの人に「あなたはきちっとしている」と言われているのに、ある人に「あなたは乱雑である」と言われたら混乱してしまうでしょう。
私がいた戦略コンサルティングの世界で一番多く使われていたフレーズがあります。「ファクトベース」という言葉。
この意味は、「事実に基づいた、裏づけがある、根拠が明白」なことが重要だということです。
なぜフィードバックがファクトベース重視かというと、それはフィードバックで最も大きな障害(障壁)となっているのが、「誰が言った」という事柄だからなのです。
一番説得力があるのは「誰が見ても、そう映る」と感じられる客観性のあるメッセージです。
私心や偏見が感じられないメッセージであればあるほど、相手は聞く耳を持ちますし、具体的で正確であればあるほど役立つアドバイスにもなります。
本書では、そうしたメッセージの内容や伝え方について、ご紹介していきます。
2気まずい
そもそもフィードバックをするほうもされるほうも、フィードバックは苦手という人は多いように思います。
実際、フィードバックをしても常に素直に聞き入れてくれる部下ばかりではありません。
コンサルタントになりたての頃の私もそうでした。
1年目にもらったフィードバックで印象的だった言葉があります。
「成長への階段は誰でも登れるが、あいにく、各ステージごとにタイムリミットが存在する」とそのシニアパートナーは言ってくれました。
私は彼からもらったフィードバックに対して、ひどく個人的に受け止めていました。
具体的には、ガントチャート(コンサルタントが作成する一種の予定表)の説明がアクションを含む動詞形式で書かれていなかったことに対して、彼のメスが入ったのですが、内容が同じなら、何も変わらないじゃないか、が私の当初の反応でした。
それを叱られ、さらに、叱られたことに不貞腐れていたことに対してフィードバックが下ったのです。
彼が言いたかったのは「若いうちに感情的に、個人的になる習慣を排除しろ」の一言に尽きます。
それが学べる期間もまた、20代前半なのだ、と彼は伝えたかったのでしょう。歳を重ねるごとに頭は固くなります。
いわゆる「フィードバック耐性」のようなものができてしまうので、そこを意識することは非常に重要でもあったのです。
当時は非常にやりづらく、気まずいプロジェクトでした。
しかし、今は彼に非常に感謝していますし、最近は私自身がときにこうしたメンバーに悩まされることもあります。
たとえこちらがどれだけ配慮して接しても、相手の特性はもちろん、好き嫌いや相性、お互いの立場や環境によって、素直に聞き入れてもらえない場合もあるからです。
しかしそんなとき、気まずさを恐れて、フィードバックを避けるのは、本人やチームのためになりません。
言いにくいとき、やりづらいときでも、最低限どうすればよいかについても、本書では事例を交えて紹介していきます。
3時間がない
フィードバックが大切とわかっていても、忙しいと後回しになりがちです。実際、いつどのタイミングでどう行うかなど、考え始めると、どんどん面倒くさくなってきます。
そうこうするうちに適切なタイミングを逃したり、そのうち伝えるべきことそのものを忘れてしまったり、といったことも起こります。
いきあたりばったりでやろうとしても、なかなかうまくいかないのがフィードバックです。
実は、やり方にもいろいろコツがあり、次のようなフレーム「フィードバックループ」を手順として頭に入れておくと、スムーズにフィードバックができるようになります。
- 1.観察する(オブザベーション)
- 2.相手の話を聴く(アクティブリスニング)
- 3.自分の感情を伝える(エモーショナルインパクト)
- 4.行動を促す(アクションアドバイス)
詳しくは第2章で紹介しますが、日々の業務に追われていても、たとえ多少厄介な事柄であっても、まずはこれさえ頭に入れておけば、一定の質でフィードバックができるようになります。
ちなみに、本書で紹介するフィードバックスキルは、特に決まりきった堅苦しいマニュアルではありません。
自身の仕事で優れた能力を発揮する人、チームワークや部下育成に長けている人と一緒に働く中で、私が身につけたベストだと思うやり方です。
そもそもフィードバックは、世界標準で使われているスキルで、ビジネスに限らず、医療や教育など、様々な分野で重視されています。
第1章と第4章の章末に、「チェックリスト」を用意してありますので、この機会にぜひ、ご自身のフィードバックスキルについて振り返ってみて、課題の発見や解決に役立てていただければ幸いです。
「リーダーになってから」では遅すぎる
メンバーが総力戦で取り組む時代実のところ、フィードバックは、基本のやり方さえ押さえれば、誰でも今すぐ磨いていけるスキルです。ところが、日本の職場では、今ひとつ重視されていないように感じてなりません。
特に、若手のビジネスパーソンにとっては、フィードバックとはひたすら受けるものであり、フィードバックを行うなんてまだまだ先、部下を持つようになってからで十分、と考えられているようです。
しかし、近年のようにビジネスを取り巻く環境が急速に変化するVUCA時代*4においては、メンバー全員が総力戦で取り組まなければ、新しいアイデアも生まれませんし、成果も出ません。
少なくとも、組織やチームに与えられた「課題」に対しては、若手も積極的にフィードバックをして貢献することが求められます。
実際、私が経験した海外企業の一つで、2年以内に1000億円以上の投資資金を集めたソーシャルコマース兼オンラインクーポンサイトのグルーポンでは、急速に成長するために「世界のビジネスを牽引するリーダー」というテーマで毎週のように投資家や目上の人から意見を求められていました。
要するに、「リーダーになってから、フィードバックスキルを身につけよう」では遅すぎるのです。
意識的にフィードバックを磨いている人とそうでない人では、成長スピードに大きな差が出てきます。
未知の未知数リーダーシップもちろん、リーダーになってからも、今後はとりわけ質の高いフィードバックスキルが求められるようになっていきます。
それはなぜか?
・曖昧で不確実なことが多いVUCAの世界は一人ひとりの不安を煽る。誰もが状況や環境を理解しづらくなる中、的確なフィードバックで周囲を導いていくことが最大の価値を生みます。
・世の中の変化のスピードが速いので、機敏なフィードバックで対応。部下の成長もそれに合わせて急ピッチで進めることができます。フィードバックはその変化に上手にキャリブレーションを図ってくれる便利な方法なのです。のんびり部下の成長を待っていたらビジネスにマイナス効果をもたらします。
・未来が見えないので多くのインプットが必要。優れたリーダーは自分がフィードバックするだけでなく、メンバー全員からフィードバックを引き出す力も備えてなくてはなりません。これによって、あらゆる未知の状況を切り抜けていくことができます。
今後、VUCAの傾向が一層深まるほど、リーダー自身どのようにその状況や環境を整理し、理解し、判断し、決断に至ればよいかが難しくなっていくでしょう。
「わからないなりに答えを出し、高速に修正していく」形にどんどん自身を慣らしていかなくてはならないのです。
例えるなら、開発の世界で今主流となってきた試作品をどんどん世の中に出して、それを開発とオペレーションチーム両方で同時に仕上げていく、高速二人三脚の世界です。
にもかかわらず、そういった訓練、研修や教育を受けてきていない、というのが私たちの現状でしょう。
しかし、そんな状況下、相手に自分の考えを素早く、そしてわかりやすく伝えることが鍵を握っているのです。
要するに、「コミュニケーションが雑、下手、不慣れ、勉強や経験不足」といった割とエレメンタリーな次元からいち早く卒業し、「限られた情報のやりとりやモヤモヤ感の中で、周囲に効果的に接し、どう動かしていけるかを意識する・伝える」が必要になってきます。
実のところ、フィードバックができないとビジネスが麻痺する、と言っても過言ではありません。
必要なアクションが起きず、悪循環が生まれ、周りに置いていかれる。できないリーダー特有の悪い習慣です。
「~でもいいからトライしてみよう」といったアジャイルかつ、フレキシブルな考えをベースに、誰もがフィードバック力を鍛えていく必要があるのです。
フィードバックの常連を目指す質の高いフィードバックを行う。そして仕事のパフォーマンスを上げる。それは掲げるに相応しい目標でしょう。これは数多とあるリーダーシップの基礎基盤の一つと言えます。
しかし、「カリスマ性」とか「ビジョナリー」とは違って地道な努力で磨きをかけられるものだと私は、経験上、感じています。
幸い、フィードバックの練習は、すぐにでも始められます。同僚、部下、後輩、上司、クライアント、誰に対しても行えるので、ぜひ明日から実践してみてください。フィードバックの常連を目指すのです。
本書では、日常の一対一の部下育成からチームラーニング、フォーマルな面談まで、誰でもフィードバックが行える場面を想定して、その手法を紹介しています。
本文に入る前に、マザーテレサが残した、印象深い言葉で締めくくりたいと思います。
「Becarefulofyourthoughts,foryourthoughtsbecomewords.Becarefulofyourwords,foryourwordsbecomeactions.Becarefulofyourdeeds,foryourdeedsbecomehabits.Becarefulofyouhabits,foryourhabitsbecomecharacter.Becarefulofyourcharacter,foryourcharacterbecomesyourdestiny.」(思考に気をつけなさい。それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい。それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい。それはいつか習慣になるから。習慣に気をつけなさい。それはいつか性格になるから。性格に気をつけなさい。それはいつか運命になるから)
こちらはあるエグゼクティブコーチから私が授かったフィードバックに含まれていた言葉です。あなたの運命までも司るのが、考えです。その考えをぜひ、周囲にもうまくフィードバックしてください。
これから待ち受けるフィードバックの世界が瞬く間に広がることを願い、また身近にいる大切な人たちに対しリーダーシップを発揮し、質の高い仕事を成し遂げていくことができたならば、この上ない喜びです。
服部周作
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