第2章インパクトを高める「フィードバックループ」
フィードバックにも「型」がある
通常の注意やアドバイスを超えて通常のフィードバックは、皆さんも次のように慣れ親しんでいるものだと思います。
主に、①「間違った行いがあり」→②「それを注意する、取るべき行為を促す」、といった単純なものです。
しかし単純なだけに、「ミーティング中に貧乏ゆすりはやめなさい」「相手の名刺を受け取る際は両手で持つ」など簡単なマナーやお作法のときには有効ですが、仕事の中身や複雑な事柄が絡むと通常のフィードバックはあまり有効ではないのです。
「相手が」すぐ直したい、直すべきだと思う事柄についてはこの通常フィードバックのままで私はよいと思います。
その行動を続けていると自分にとってはデメリットがあると思わせること、それが肝心なのです。
例えば、根本的なマナー、ナイフとフォークの持ち方などは、「恥をかく」という観点から伝わりやすく、簡単なので直しやすいでしょう。
しかし、そんな作法やマナーでもボーダーラインぎりぎり、相手のセンシティブな領域にまで入り込まなくてはいけない場合もあります。
結果として、通常よりかなりエスカレートした状況や内容にも対応していくことが、仕事における大切なフィードバックなのだと思います。
最近あるトレーニング中の参加者からこんなユニークな発言がありました。
その参加者はHR人事採用の方で、有望な候補者の最終面接をしていました。面接は満足に進み、会社の幹部の方もその候補者に好感触を持っていました。
しかし、その後みんなで昼食に出た際に、勢いに乗った候補者がナイフとフォークを振り回しながら、まるでコンサートホールでタクトを振るように白熱した議論を展開し始めたのだそうです。
その場にいた人事とパートナーはこの喜劇的な候補者の様子に驚きの色を隠せませんでした。
お互いに顔を見合わせ、この候補者はクライアントには出せそうにないな、いくら仕事ができても、というような意見を交わしたそうです。
その後、どうなったか申し上げる必要もないですが、人事の方は少し寂し気に嘆いていました。
その候補者は多分ちゃんとしたフィードバックを誰からももらえていなかったんだなあ、と。
複雑な状況で威力を発揮する「フィードバックループ」通常のフィードバック手法が有効ではないのが、日々我々が切磋琢磨しているストレス満載の仕事場、いわゆる現場です。
求められるハードルやバーが高ければ高いほど、通常のフィードバックでは難しいことが多いです。
コンサルティング業界もその傾向が強いのですが、だからこそ、そういった状況にも有効なフィードバックの手法というのが概ね確立されているように思います。
確固とした唯一の手法があるわけではありませんが、やり方はどれも似通っています。
ここでは、4つのステップを含む「フィードバックループ」とも言うべき手法をお伝えできればと思います。
簡単に羅列すると、フィードバックをするにあたって次のステップを実行します。
- 観察をし、ファクトを集める(頻度、スパン、量、どこかに記録しておく)
- 相手の言い分を親身になって聴く(アクティブリスニング)
- その行動について自分の感情や気持ちを伝える(インパクトを与える)
- 自分だったらこうすると案を出し、正しい行為を伝える(正しい解が難しい場合は質問形式で「一緒に」作っていく)
このフィードバックループはフィードバックをする上で役立つ場面がたくさんあります。
・相手のことをあまり知らないとき
・相手も自分のことを評判でしか見極められていないとき
・フィードバックのデータポイントが極力少ないとき
・ネガティブなフィードバックを伝えないといけないとき
・取るべき行為が(実は)はっきりしないとき、協議で決めたいとき
・相手と継続的に仕事やプロジェクトを行わなくてはいけないとき
・相手がフィードバックをもらうのが苦手なとき・ポジティブフィードバックもネガティブフィードバックも形式立って、思考整理された、同じやり方で標準化したいとき
・成績が悪い人(Underperformer/Lowperformer)に対して、グッと距離を縮め、伝わるフィードバックがしたいとき
・批評や批判的な意見に対して防戦を決め込む部下やチームメンバーがいるとき
・クロスボーダーや文化の違いを乗り越えたフィードバックが必要なときと、様々な状況において、このフィードバックループは有効かと思います。
同時に、こういうふうに書き出すとフィードバックは本当に様々なTPOを加味した形で行わないといけない複雑なものであることが改めてわかります。
そして、最も有効なのが、フィードバックをしたくないときです。
フィードバックがどちらかと言うと苦手な人のための万能薬となるツールなのです。
受け手が納得するメッセージになっているか?では、なぜ、このフィードバックループが効果的なのか。
それは、受け手側が「なぜそのフィードバックをもらっているのか」を明確に伝える手法だからです。
フィードバックが有効ではない大半の理由は、結論に辿り着かない、すなわち、相手の腹に落ちることがなく、「何をしたら」と「どのようにして」の議論に飛躍してしまうからです。
「相手に伝わること」が大前提のフィードバックにおいて、この「なぜ」を丁寧に説明しないことにはただ時間の無駄遣いに等しいのです。
企業の成功の秘訣の一つを簡単に説明した人がいます。
彼はその手法をゴールデンサークルと名づけ、一躍有名になりました。
ほとんどの企業は「何を売るか」そしてその売る商品は「どんな特徴があるか」で勝負したがります。
しかし、「売れる商品」とは心をつかむ商品。すなわち、サイモン・シネック氏曰く、消費者とはその物理的なものを買っているだけではなく、その企業にまつわるミッションや存在理由などを買っている場合がほとんどだと断言しています。*6
その中枢にくるのが「なぜ」であり、フィードバックをするにしても、これは同じです。フィードバックを与える側はその説得材料が必要になるのです。
「基本の型」で手痛い失敗を避ける本書を手にしているということは、あなたもフィードバックが重要だということをどこかで意識したことがあるからでしょう。
フィードバックに失敗した思い出。嫌われてしまった経験。私も複数、そんな苦い思い出があります。今でも忘れられない教訓を一つ。
その方は私のチームにいたアソシエイトでした。頑張り屋さんで、エクセル操作やテクニカルなことが非常に得意でした。人柄も良く、気も合いました。
チームは全員で4人でしたが、その上にいた上司以外は皆、彼と非常にうまくいっていました。
ところが、ひょんなことから、私はそのアソシエイトの悪口を、ある尊敬している先輩から聞いてしまいました。
ここが良くない、あれが良ければもっといいのに、といった類のものです。
当時まだ未熟だった私は、安易にそういった他の人の意見に感化され、間違ったフィルターを通してそのアソシエイトの行動やパフォーマンスを見ていくようになります。
最終的に「思い込み」が激しくなったフィードバックを彼にしてしまい、ずいぶん長い間嫌われてしまいました。
もっと早い段階でフィードバックの基本を身につけておけばよかったと非常に残念です。
これから本章でご紹介する「フィードバックループ」は、あらゆる仕事の場面での使用に最適化したフィードバック術だと思っていただければ幸いです。
日々の現場で随時行う非正式(informal)なものから、社内制度として定期的に行う正式(formal)なものまで、この型さえ頭に入れておけば、一通り対応できるようになっていると思います。
Step1オブザベーション観察する
普段我々は「フィードバックをやるぞ」と念頭に置いて仕事をしていませんし、必死にフィードバックのネタをかき集めるために走り回ったりはしません。
フィードバックというのは相手との仕事の営みの中で自然に出来上がるものです。要は観察力が試されているのです。
フィードバックが上手な人は、部下と仕事をしていく上で、足りない部分と伸ばせる部分、両方に対する「気づき」もまた他の人より数倍多いです。
ただこの観察力だけで、フィードバックの達人という結論には至らず、この後詳述するリスニング、コミュニケーション、アクション強化などが絡んできます。
とはいえ、大切な登竜門には変わらず、この気づきの多さによって部下の成長が加速する、と言っても過言ではないでしょう。
いかに「事実」だけに着目するか「あなたはいつも遅刻する」こんな注意やフィードバックをした経験がある人がほとんどでしょう。
しかし、この簡単簡潔な文には3つほどの暗黙の前提(仮定)が含まれています。あなたはわかりますか?2つはおわかりですよね。
「いつも」と「遅刻」です。
実際、この手のフィードバックをしても、相手から「証明しろ」なんて状況に追い込まれることは皆無だと思います。
しかし、厳密に言い直すなら、「あなたは週4回、8時30分のミーティングに10分ほど遅れて参加しています」のほうが正しいのです。
3つ目はわかりましたか?そう、隠された言葉「ミーティング」です。
この簡単な文を読まれた読者の方々でも、「遅刻」というのを「出社」というふうに置き換えた人も少なくないでしょう。
我々の脳というのは常に慣れ親しんだ経験や過去の状況に当てはめて、物事を整理する傾向があります。
それは常にサバイバルモードに置かれている脳の生存手段と言ってもいいでしょう。まず、推測をして後で間違いを正す。
ただフィードバックを与える上でこの推測や憶測というのは厄介です。
フィードバックをする際に、大抵は感情が多く絡みプレッシャーやストレスが溜まるので、なるべく意訳を回避し、同じ土俵で話すのが大切なのだと思います。端的に、一言一句を意識して正確に伝える努力が必要なのです。
あくまで「ファクトベース」で話す事実に基づくフィードバックというのは相手の考えを先読みしないという点に尽きます。
「話すのが雑」や「作業が雑」というのも事実に基づいているのですが、さらに一歩踏み込んだ形で雑とはどこを指しているのかの説明を初めにすることです。
私も驚きを隠せないフィードバックをいただいたことがたくさんありますが、コンサルティングファーム特有のこの事実からぶれない、ファクトベースという特性に救われた(笑)ことが多々あります。
例えば、あるオペレーション管理改善のプロジェクトで、当時の上司から「文書ファイルの余計なデータは消さないといけない、このようにしっかりと完璧に見せるのが重要だ」と言われました。上司は非常にキメ細かな人でした。
フィードバックの内容はアウトプットをデジタルだろうがハードコピーだろうが完璧にする、でもよかったのですが、それだと私に反論の余地を与えるので、しっかりと具体的に教えてくれました。
ただ、にわかには信じ難かったのですが、上司が指摘した余計なデータというのは実はパワーポイントを実際に開かないと「表示されないテキストボックス」のことでした。
それも小サイズで、ページの隅っこに隠れる形で置かれたものです。「これが彼が求める完璧の定義か」と私は学びました。
ファクトベースで説明されたことで、単なる小言や価値観の押しつけでなく、彼が本気だということが伝わってきたのです。
今でも覚えていますし、このように高いスタンダードを敷いて仕事をする姿勢が大切だということは現在の大きな糧へとつながっています。
もちろん私が現在のチームメンバーにそのようなフィードバックをするか否かはわかりませんが、期待値として持っていることに変わりありません。
この「ファクトベースで話す」というのは、「客観的にありのままの状態を伝える」ということと、「(まだ)感情や自身の思いを乗せない」の2つに集約されます。
念のため、いくつかの例を出しておきます。
例1◯ベスト:「先週の会議と3週間前に2度、必要資料の提出が10~15分ほど遅れた。
その上、先週の会議では、それを回避するため1日前にリマインダーメールを打たなければならなかった」△まあまあ:「会議資料の提出がいつも遅れる」×主観(間違い):「あなたは怠け者です」例2◯ベスト:「今月は2カ月前と比較してクロージング比率がX%落ち込んでいる」△まあまあ:「最近、契約のクロージング率が下がっている」×主観(間違い):「熱意が足りない。ノーと言われるのが怖いのではないか」情報を「素」の状態で残し、最後に上位概念を説明するフィードバックのファーストステップはありのままで伝える、すなわち日々の仕事で求められている洗練されたメッセージの逆をイメージするとよいでしょう。
次ページのように、図に落とすとわかりやすいかもしれません。
コンサルティングで特徴的な思考法に、ピラミッド型のロジックツリーというものがあります。
図のように、上位概念(GoverningThought)を一番てっぺんに置き、それを支えるファクトを下にいくつも並べます。
このファクトの部分をイメージしていただけると、よいと思います。
実はパチンコ玉のように小さい事実の粒を、我々の脳は日々の仕事の中で拾い集めているのですが、時が経つにつれ、事実であったその鮮明な事柄が上位概念に変わっていきます。
最終的に時間が経ち、フィードバックの頃合いにはピラミッドにおける一番上に乗っかる「洗練されたメッセージ」になってしまっていることが多いのです。
フィードバックを行うときは、まずは下位のファクトの指摘から入り、最後に上位概念を伝えるようにすると、相手により正確にメッセージが伝わります。
Step1観察するオブザベーションファクトを取りこぼさないために
フィードバックメモ活用術山のように仕事が多いとき、部下と頻繁にやりとりをしている最中、クライアントのために急な期限を守ろうと必死に舵を切っている際、最後に思いつくのが、「そうそう、あの部下や同僚や上司について気づいた点をどこかにメモしておこう」という考えです。
そもそもフィードバックカルチャーがない組織の中でこうした習慣をつけるのは難しいでしょう。
でも成長へ向けたカルチャーが薄くても、年に一度はどんな組織でもパフォーマンスレビューの時期はやってきます。
我々のようにプロジェクト単位のところもありますが、ほとんどは半年、もしくは1年に1回の頻度で相手と正式なフィードバックのやりとりを交わすのだと思います。
だからフィードバックの内容なんて真剣にメモしておく必要はない、ではなくて、逆にそれくらい時間が空いてしまうからこそ、しっかりしたメモは役に立つのです。
利点として、
・記憶を辿る時間や手間が省ける
・相手の成長がわかる。
特に複数の仕事の機会があってからのレビューの場合
・相手からも信頼される(この上司はしっかりメモを取って見ていてくれたのか!)
・事実に基づいた誠実な議論が可能になるなどがあります。
経験上、特に大事なのは最初と最後です。
レビューと日々の仕事を両立していく上で、おぼろげな記憶を辿って詳細を一所懸命探るほど時間の浪費はありません。
1「事実+感情」を記録メモする場合は、事実:
・最近メールの返信が遅れる
・メールの内容やコミュニケーションのタイミングについても、いつもに比べミスが多い(2020年3月8日)
感情:自分はまあまあ、怒っていたと、この二段構えをクイックに書き出します。
スタイルは自由ですが、見返しやすいように箇条書きで、そして私は日付を必ず入れます。
入れないと、後でフィードバックを既にしたのかどうか、わからなくなりますし、実際フィードバックを行う際の第一の信頼性要因となるからです。
また、そのように伝えると、まず相手も覚えていることが多いです。
次に可能な限り、感情をつけ足します。
後でフィードバックをする際に、自分の言いたいことのキツさや柔らかさに温度をつけ、他のフィードバックとキャリブレーション(調整)をかけるためでもあります。これは有効です。事実に対し、時々ですがどうしても感情が入ることがあります。
つい最近、ある方のフィードバック担当者に電話会議を申し込まれました。
当初、私は色々とその方の作法のなさや未熟なコミュニケーションや不適切な態度について、結構酷なフィードバックをしました。
しかし、一旦電話を切った後に、メモを見直すとその日は相当怒っていたと書いてありました。
それに気づいて、すぐに電話をかけ直し、酷なレビューのトーンをワン・オクターブ下げてもらいました。
「もし私以外にも似たようなフィードバックをする人がいたら、そのときは先ほどのトーンで書いてください」とつけ加えました。
フィードバックで大切なのは、公平性をある程度保つ人になることです。後に自分の信頼性へとつながっていくからです。
この感情をメモするというのは自身の苦い経験から来ています。若いときにその匙加減の理解を怠った私は非常に痛い目に遭いました。
2自分宛メールで送信する
フィードバックをする上で、ノートに取るよりも効果的な方法があります。それが、メールを自分に打つことです。
日付も時間もすべて記録され、メールならいつ、どこでも、仕事の合間にでも打てます。夜の帰りの電車や車の中でも、イラっときたことも含め、気になることは、すぐフィードバックと題して自分に送れば、気持ちの整理も勝手にできるのが利点です。
いつでも、どこでも、すぐに、の三拍子が揃っています。スマートフォンにもメモ機能はあるのですが、私は断然メールにこだわります。
メールを自分宛に打つことによって、そのフィードバックが記録されたという印象が深くなります。
「送信」ボタンは実に不思議な副作用を持っていて、それを押すだけで心から少しそのフィードバックのテンションが和らぐのです。
3「来週フィードバックをください」と言われたら
とはいえ、仕事に忙殺され、フィードバックに十分な準備や観察ができていなかった人のために、自身からフィードバックを引き出す素敵な方法があります。
来週フィードバックをくださいと言われたからといって、今週の金曜日に机に向かって、「Aさんと仕事をしてどんなことがあったかな、どんな課題や改善点があったかな、どんな強みがあったかな」と自問してみてもあまりマシな答えは返ってきませんし、そこそこ程度の結果しか望めません。
そこで、「レビューアーになった思考で考える」という手法を試してみてください。過去の有意義な事実を思い出すには、シンプルですが、こんな質問を試してみるとよいでしょう。
1.今後Aさんと一緒に仕事をしたいか?イエス、ノー、そしてなぜ?
2.Aさんに別の仕事やプロジェクトを勧めるとしたらどんなものを勧めるか?
3.Aさんの次の役職への昇級(プロモーション)はイエス、ノー、そしてなぜ?この3つの質問に答えるだけで複数の要素が絡んだ解答を得ることができます。
1は、Aさんの人柄や性格について考えがまとまることが多いです。
Aさんは「一緒に仕事をすると愉快だ。刺激的だ」、もしくは、「思考停止に陥る」などの答えが思い浮かぶでしょう。
この質問をして、ハードスキルの答えは(そのスキルが著しく乏しい場合を除いて)まず出ません。こうした自分が言葉にした状態に対し、いくつかの事例を思い出すのです。
2は、スキルの話になります。
「分析力が乏しく鍛えるべき」とか、「情報収集力が高くそこをさらに伸ばすべき」など、プロジェクトや仕事において、何をさらに強化・補強しなければならないか、そのように考えると思います。
Aさんの成長の立場にたって今後を誘ってあげる精神が生まれます。人は根本は助けたがり屋なのですから、と私は思います。
3は現実的に評価を下すとしたら何が欠点で、欠落しているのかの総まとめができる質問になります。
Aさんと仕事をする場合、たとえ刺激的だったとしても、「そうだ、まだプロモーションには早いな」、という一歩引いた見解が可能になります。
最近あった実際の例ですと、コミュニケーションの中でも「短く簡潔に上級幹部レベルでの伝達がまだ難しい」と判断した方がいます。
これらを組み合わせれば、だいたいのAさんの人物像を描いて、具体的なフィードバックができると思います。
Step1観察するオブザベーション若いリーダーほどこの観察ステップは効果を発揮する
アンデルセンの童話に『裸の王様』というお話があります。自分を着飾るのが大好きな愚王は狡猾な仕立て屋にまんまと騙されてしまいます。
しかし、本当の犯人はそれを王に「フィードバック」できなかった重臣たちです。
王は、幻の衣を仕立ててもらっている過程で、自分のお洒落ぶりを幾度となく重臣たちに尋ねます。が、王の機嫌を損ねまいと、彼らは嘘の証言をしてしまいます。
結果、民衆のパレードの前で、王様は赤っ恥をかきます。
誰が言うかで反応は大違いこのように、私たちはフィードバックをする際、ついその内容より「その人」のことが気になってしまいます。
たとえ正しい指摘であっても、こんなフィードバックをしたら受け手にどう思われるか、が気にならないわけはないのです。もちろん、これはフィードバックを受ける側も同じです。
例えば、その人にポジティブな印象を持っていれば、フィードバックがスッと入ってくるということ。
その反面ネガティブな印象だと、フィードバックが伝わりにくくなります。
「この人が言っているのだから耳を傾けよう」「こんな人の言っていることは無意味、聞きたくない」とフィードバックの前に決めつけてしまいます。
ここではっきり伝えておきたいのは、「フィードバックの『内容』と『人』を切り離して考えるのは困難だ」ということです。
もしあなたがまだ若くて、年上の相手にフィードバックをしなければならないなら、とりわけ切実な問題だと思います。
さらに言えば、こうしたことが理由で、相手へのフィードバックを躊躇したくなる状況も十分ありうるでしょう。
ではフィードバックにおいて、受け手の偏見(や不信や反感)を排除するためにはどうしたらよいでしょうか。
あなたが部下、同僚、上司、どのような立場でフィードバックを行っても同等に聞いてもらえるためにはどのようにしたらよいのでしょう。
複雑なフィードバックになるにつれ、正しい答えというものがおぼろげになり、境界線が見えにくくなります。
だからこそ、このファクトベースの観察のステップは大切なのだと私自身、年数を重ねるごとに実感しています。
思考をファクトに切り替える練習
フィードバックを行うとき、その第一に重要なステップは、伝えるメッセージが自身の思考から事柄(ファクト)へシフトしていることです。
それをチェックするには、まず心得として「誰が言っても同じに聞こえる」ということを意識してみてください。主観はゼロでなくてはなりません。たったそれだけ?と思うかもしれませんが、事実、そうなんです。
例えば、「あなたの声は小さすぎる、プレゼンはつまらない」ではなくて、「あなたの声は会場の3分の1には届いていなかった、結果みんな携帯をいじっていた」というふうに言い切ることです。
ファクトに忠実になり、それ以外の余計なことは言わない、とルールを決めてしまいます。言葉遣いが丁寧であれば、単刀直入がベストです。なお、褒めるときのフィードバックも同様です。
「最高でした!」の後に何が最高だったのかをはっきり述べるようにしましょう。フィードバックの前に、伝える内容をどこかに書き出してチェックしてみるのもよいかもしれません。
より的確に伝えるには、どこをどう観察すべきなのかなど、ポイントも見えてくると思います。
Step2アクティブリスニング相手の話を聴く
先日フィードバックを行いました。
コンサルタントSさんはクライアントにインタビューをしているとき、
・少し話が回りくどく、長い
・質問も少し回りくどいときもあるが、要点の理解でも長い場合がある具体的には、
・ケイパビリティ向上に向けての打ち手を出そうとしたとき
・相手が言ったことに対して長期的なことを羅列してから本題に入った
・それで相手が本題の流れをどっちに振ればよいのか迷ってしまった
ここで、ポーズ。合間を入れます。相手に現状を理解してもらい、相手のリアクションを待ちます。
ここからがフィードバックループの2つ目のステップ、「アクティブリスニング」という概念を使っていきます。
アクティブリスニングとは?こんな体験をしたことはありますでしょうか。
1on1のセッションで、会話が流れるように進み、相手からは100%の注目をしてもらい、神秘的な光のオーラに包まれるような体験。
不思議なことにそれは隣に座る同僚などからではなく、会社のCEOであったり、ヨガの先生であったり、お寺のお坊さんであったり、知り合いの齢80歳の耳鼻科のお医者さんであったり、あの人はただ者ではないなと思わせてくれる、後で心がワクワクしてくる人から得られる体験です。
そして気づくのが、「あれ?そもそも会話というより何か一方的に自分が思ったことを話していただけだったのに、気づくとお互い深い話をしていた」というようなことです。
そんな話をとあるグローバルCEOにしたとき、彼はスティーブン・コヴィー氏がまさにそのような感じだ、と言ってくれました。
20年前、彼はあるワークショップで、初めて人材育成界で著名なコヴィー氏(『7つの習慣』の著者)と出会ったときのことを思い出し、まさにこの1on1のセッションのようなワンダーランドに入ったとシェアしてくださいました。
残念ながらコヴィー氏は自転車事故で他界してしまいましたが、このようにアクティブリスニングの境地というのは、実際1on1の設定の場でなくとも、相手をそのような気分にさせてくれます。
通常アクティブリスニングというのは、相手のことをしっかり見つめ、言葉を一言一句聞き逃さず、前のめりの姿勢で、すべてを呑み込むといったような印象を与える聞き手になることです。
簡潔にまとめてしまうと、アクティブリスニングは「MorethanjustListening」というような意味合いになります。
それは相手のメッセージのボリュームを上げることではなく、相手にあなたが「100%いるよというアピール」をすることなのです。
いわゆる、今この世界には私とあなた、それだけが存在している、というような状態です。
私はマッキンゼーの早い時期にこの概念を学びました。トレーニング期間中にロールプレイで何度も練習させられます。
そこでは思いやり、共感、利他主義、傾聴、順応性、自覚などコンサルタントとして必要な構成要素に一気に触れましたが、まずは問題解決のために相手に100%いるというアピールが大事だと教えられるのです。
20代の若い頃に、こうしたEmotional intelligenceを知ることは、非常に大きな収穫でした。
大きくポジションを取るからこそ必要不可欠ただ、実際、アクティブリスニングは「言うは易し行うは難し」の世界です。
なぜなら、そもそもフィードバックをするということが、「大きくポジションを取る」ということだからです。
どういうことかというと、フィードバックとは、「私が観察した結果、あなたについてこう考えます。必要なファクトを集めました。あるべき姿に辿り着く前に、私は私のこうした見方が正解だと思いますが、あなたはどう思いますか?」
と割と大胆かつお構いなしに土足で相手の心の中にズカズカ入っていく行為だからです。
伝える内容がきつければきついほど言葉選びには注意が必要ですが、結局のところ、その言葉が意味する重さは変わりません。
このため、例えば、ローパフォーマーに率直にファクトを積み上げて説明する場合などは非常に緊張します。
以前、海外のプロジェクトで仕事に冷めた態度を取り、ミスを連発していたローパフォーマーの方に対し、真剣にならないと次のプロジェクトの機会が危いといったフィードバックをした瞬間、取り乱して大泣きされてしまったケースを今でも覚えています。
人類(ホモサピエンス)は30万年前から、生きるための防衛本能を忘れたことはありません。人生をサバイブするためには、他の人に認められたいという欲求が強いのです。
フィードバックが難しい理由は、その根底を揺さぶるものだからでしょう。人は自分のことが好きですが、強いて言うならば、好きになりたい、そして他人にも好きになってもらいたい、という上位概念に動かされています。フィードバックをする際にもそれを忘れてはならないのです。
Step2相手の話を聴くアクティブリスニング信頼関係を築くために
あなたはフィードバックを行う上でどんなことに注意をしていますか?相手を傷つけないようにする。嫌われないようにする。正す。
相手の仕事のパフォーマンスを上げる。チーム力も上げる。働きやすくする。様々な解があるように見受けられます。
しかし、どれをとってもフィードバックを行う上で根底に必要なのは「信頼」というキーワードです。
そのための方法・作法は色々ですが、一つは先ほど紹介した第1ステップの観察、ファクトベースという手法。
そしてもう一つはこのアクティブリスニングという手法です。相手の信頼を勝ち取らなければ話は始まらず、馬の耳に念仏なのです。
1いち早く信頼を勝ち取る方法では、信頼というのはどのように勝ち取るのでしょう。いざ答えようとするとなかなか思い浮かばないものです。
例えば、普段あなたは誰を信頼していますか?その答えは割と即座に出てきます。
家族、妻、夫、親友であったり、会社の先輩であったり、さっと思いつく人がいるはずです。
しかし、そこを深堀りし、なぜなのか説明しようとするとどうでしょう。
信じているから、頼りになるから、任せられるから、裏切らないから、それを考えるときに人は過去を思い出します。
過去から成り立つ何か、具体的に思い出す出来事や体験、それがやがて抽象的な信頼という概念に変わるようです。
実は、この信頼という概念をある方程式で解いた名著があります。『プロフェッショナル・アドバイザー』はコンサルタントをはじめ多くのプロフェッショナルの支持を獲得。その理由は使いやすさと説得性にあります。*7
それによると、信頼(Trust)を因数分解すると、次のような方程式になります。
信頼=信憑性+確実性+親密性/自己主張
信憑性(Credibility)とは:学歴、経歴、実績、他者評価、勲章、昇進、など、外部的に認識されている要因。本人が言わなくても伝わる部分です。
確実性(Reliability)とは:主に仕事を実行していく中で見えた部分。フィードバック内では、観察力、ファクトの整理、コミュニケーション方法などがあります。
親密性(Intimacy)とは:思いやり、距離感、ユーモア、感情知性に該当し、それが豊かな人ほどこの親密性が高い傾向にあります。
自己主張(SelfOrientation)とは:自分のアジェンダ、自己中心的な振る舞い。相手にとっての利点は不明確です。
この信頼の方程式では、分子である最初の3つ(信憑性、確実性、親密性)の値が大きければ信頼が厚く、また分母の自己主張の値が大きければ大きいほど信頼度が下がるという意味合いになります。
あくまでも実数値というより、抽象的に考えた場合ですが、イメージは湧きやすいと思います。
フィードバックを行う上での信頼というのは、「相手が自分のことを受け入れ」「言っていることに納得し」「ネクストアクションへつなげ」「変革を起こす」、というふうに成果に直結する重要なポイントです。
無論、大前提として働く上で尊敬されていない場合は、この方程式における1番目、信憑性(Credibility)で疑いの念をかけられてしまうので、既にフィードバックを受け入れてもらえないリスクがあります。
しかし、この部分は本人の努力では即座には如何ともし難いですし、たとえそうであっても、先に述べたファクトを伝える観察力は、あなたの信憑性を高めます。
「自分は客観的にあなたの行為や行動を見て、それを詳述しているだけ、あとの判断はゆだねる」というようなアプローチです。
同時に自己主張を下げる効果を発揮します。足し算と割り算なので、簡単な算数ですよね。信頼の値が大きければ大きいほど「良い」という単純な結果になります。
アクティブリスニングというのは、この信頼性を上げ、自己主張を下げることで、フィードバックで非常に有効に働くステップになるのです。
2どの程度相手の話を聞いているか?
あなたが相手の話を聞いているときに必ず行っているステップがあります。
それが、
- まず、相手の話の理解
- 理解した箇所の精査や評価
- それに対する自分の考えやレスポンスの整理
- 実際の発言
単純に書き出すとこうなりますが、現実には1つ目である「話の理解」の前段階が非常に重要になってきます。
その「聞いている状態」としては、
- 話を聞いていない(聞こうとしていない)
- 聞いてはいるが、上の空。別のことが気になって考えている余裕がない
- 聞いてはいるが、自分が次に言いたいことを考えている。タイミングを見計らっている
- 聞いてはいるが、自分には理解できない(正直、内容が複雑すぎる場合)
- 100%聞いている
通常、フィードバックをしている際、どの状態にいることが多いでしょう?私が参加したあるコミュニケーションのワークショップでも「リスニング」しているときの状態をグループで考え、それを書き出してみました。
すると、部屋にいたほとんどの人が自分のリスニング力がまだまだであるということを痛烈に認識させられました。
3相手の考えを引き出して確認する
なお、アクティブリスニングにおいて欠かせないことが一つあります。「自分の理解が正しいかどうかをしっかり相手に確認する」ことです。
確認することによって、相手の世界と自分の世界の整合性をつけます。フィードバックを行うとき、一番厄介になるのが、お互いに持つ思いや解釈のズレです。
よく、ありがちなのが、「そういう意味合いで言ったのではない」的な議論が後になって行われることです。
「Aさんはこれができていない」ではなく、「できていないと思うが、どう思う?」「例えば、提出が遅れたとき、何が起こったんだろう?」「そのとき、何を考えていたのかな?」と相手へ考えさせるタスクを渡す。
そこで現状の振り返りを行ってもらい、お互いにとっての理解を盛り込むようにします。
行き違いを避けるためには、当たり前と思える事柄でも、それについて聞き返すことに尽きます。
そして最後に必ず、相手のポジションを要約する・してあげることです。
4何を聞くかよりどう聞くか
フィードバックを行う上で聞く姿勢というのは大切です。アナリストのときのトレーニングでこんなことを学びました。
NonVerbalCueismoreimportantthanVerbalCue.(非言語的コミュニケーションや手がかりは言語よりも重要である)。
このヒントはそれから幾度となく私を助けてくれました。
精度を上げる近道としてこの非言語的コミュニケーションから醸成される部分があると覚えておくと便利です。コンテンツばかりに目が行きがちですが、その効果は割と薄かったりします。
では、聞くフィードバックにおいて何が大切なのでしょうか。
▼相手の話をしっかりと聞く(Listenintensely)
しっかりと聞くとは相手のことを深く思いやり、上司、同僚、部下として見るだけでなく、「人として」見ることを怠らない。
▼聞くときに一旦すべてを聞き取る(Listentothewholepicture)
間髪入れずにアドバイスや論議の相違点など述べてしまうと結局相手は聞いてもらった気になりません。
▼相手の立場にたって聞いてみる(Standinhisorhershoes)
もし、私が彼・彼女だったら、と自分自身で想像してみる。自分はそんな変なことをしない、ミスを起こさなかった、馬鹿ではない、は禁物。
▼判断せずに聞く(Don’tJudge)
フィードバックの対話をしているとき、相手のガードが堅いのは当然です。そこで審判役を全面に出しては逆効果になります。180度異なる意見でも判断をせずに聞く。難度が極めて高いので、情緒的成熟度が求められます。
▼相手と同じ姿勢を取る(Emulateposture)
相手が前のめりになったら、自分も体重を移動して、相手が腕を頭の後ろに組んでリラックスしたら自分も席の奥深くに座るなど工夫します。
逆に相手が腕を組み始めたら、それは構えているサインかもしれないので、相手の緊張をほぐす仕草をしてみるのも一手でしょう。
アクティブリスニングは信頼構築の礎となります。
それはオーガニックにコミュニケーションを取りながら相手と関係を築くための有益な手法です。
前もって「お互いの評価」として決まっている関係性に対し、一種の反対の力を働かせてくれたりもします。ここを丁寧にやるとやらないでは雲泥の差が生まれるのです。
Step3エモーショナルインパクト自分の感情を伝える
事実に対して、「気持ち」を入れ込むというと、何かこれまでの流れに相反しているかに思えますよね。
しかし、フィードバックにおいて感情を持ち込むことは説得材料として非常に効果的なのです。通常は、仕事に感情は持ち込むべきではない。
感じたことを話すのは社会人としてまだまだ「プロフェッショナリズムに欠ける」と思いがちです。
全然ロジカルじゃないし、仕事の妨げになる。ここまで観察力、ファクトベース、客観性について語ってきたので、意外だと思う人もいるでしょう。
しかし、フィードバック第3のステップは、相手に自分が与えられた感情を言い渡すことに焦点を当てます。最近の例でお話しします。
自分が感じたことを一人称で最近ある方にフィードバックをしたときに、こう伝えました。
「クライアントの打ち合わせのときも、社内で問題解決会議をしているときも、あなたの発言はいつも回りくどく長い」と。
このときもそうだし、あのときもそうだし、と場面もしっかり、文脈もしっかり押さえた上で言いました。
既に2~3回同じ現象を体験して、伝えたのはあるクライアントの打ち合わせ直後です。一番インパクトが大きいタイミングで行いました。
まず、その方は弁明や言い訳を口にしました。聞き流すのではなく、しっかり要所をつかみ、聞きます。ときには聞いているよと伝えるために弁明に対して深堀りもしました。
その後、私はすかさず、「実は、それをやられて私は嫌な気持ちになりました、あれは少しイラッとしてしまいます」と言いました。
相手はまず、唖然とするのですが、すぐに集中が戻ってきて、そうなんですか、他にありますか、と。
そして、この場合はもう一点、「クライアントはイラッとすると思います」「クライアントの顔を見たら、むすっとしていた」などの観察も入れました。
その後は彼に腹落ちした感があったので、次のステップであるアクションへと移りました。
実は、気づかずにほとんどの人は、フィードバックを受けたら、たまらず何と言うかご存知でしょうか?「いつもですか?」「最近ですか?」「いつからですか?」、その指摘内容の頻度や回数について尋ねます。
肯定する場合は、「よく言われます」「2年ぐらい前に同じことを言われました」などです。そこから「なぜ」その行動や行為に至ったかを説明する人が多いです。
もちろん、黙る人もいます。フィードバックに慣れている人はあまり弁明をしません。
ただフィードバックをした人からの次の言葉を快く待ちます(ここは非常に優秀かつ順応性が高い人に見られる傾向です)。
サラッと躊躇なく伝える一通り相手からの説明が終わったら、アクションはこれ!と言う前に、その行為や行動について自分はどう感じたかを積極的かつ正直に伝えることが鍵です。
例えば、「実は、それをやられると私は不愉快です」「しゃべるのも面倒くさくなります」「むかつきます」「吐きそうになります」「怖いです」「残念な気持ちになります」「驚きました」といった類のことを伝えます。
率直に言うのがベストです。回りくどいと相手に真意が伝わらず、逆効果になります。大抵の人は第一反応として、「え?」というようなビックリした表情を浮かべます。
しかし、もしフィードバックループのステップ1と2を上手に遂行していたならば、「まあ、しょうがないな」というような感じになります。
典型的な答えは「へぇ~そうなんですか」という不思議がる受け答えで少し構えるというものですが、それは人間の防衛本能なので無視していいと思います。
自分のことが可愛いから当たり前であり、不愉快な感じを相手に与えて「ああ、よかった」と思う人は、サイコパスでもない限り多分いません。
あなたがクライアントに送った誤送信メールで私は驚いた、怖かった、心臓がどきどきしたと普通は言いませんが、実のところ上司であればそれが本心です。
「やばい、あんなミスをして」。そこをただ、注意するだけではインパクトが薄れてしまいます。でも、もし、感情を伝えていれば、相手はさらに「まずかったな」と思うはずです。
その域まで達するのが、フィードバックを与える側としての役目であり、大事な要素なのだと思います。
Step3自分の感情を伝えるエモーショナルインパクトなぜ感情を伝えるのが有効なのか
自分が感じたことについて、あなたが感じたことは理不尽だ!なんていう人はまず、いません。
感じることはまさに個人の自由だからです、なんて言ったら笑われそうですが、事実です。
感情を伝えることの利点を挙げていきます。
1率直に伝わる
フィードバックをする側も一人の人間であることが伝わるからです。「相手も自分と実は同じ?」はとてもパワフルなメッセージなのです。
ある意味、上司であっても、まずは人間で、フェアなやりとりをしているのだ、というシグナルを送ることが肝心です。あるときこんな感情フィードバックをしました。
衛生面なのですが、若い後輩に、「体臭・口臭がひどいから打ち合わせのとき非常にやりづらく、集中できなく、クライアントに出すのが怖い」と結構ひどいことを言いました。
10年働いていて、この手のケースは初めてだったので、言うか言わないか非常に迷いました。もしかしたら、習慣とかではなく、もともとの体質だったらどうしよう、と。
でも失礼を承知で、ギャンブルした結果、後で大変感謝されました。
もちろんそこでもアクティブリスニングをした際に、仕事が非常に忙しくシャワーを浴びる暇もあまりない、と言われ、びっくりし、他のプロジェクトの責任者と事の重大さについて話しました。そういった、別の収穫も生まれ、やはり率直に感情を言うのは大切だと学びました。
2摩擦を和らげる
日々仕事をしていて嫌いな人やあまり合わない人もいます。そのときにただ、「あなたと仕事をしているとムカつきます」というようなボクシングのストレートを食らわせても何の得にもなりません。
角が立ちすぎて、喧嘩を売っているのか、もしくは、仲間割れか、などに見られます。相手も「いったい自分の何にムカついているの?」と反論したくなるでしょう。
生理的に受けつけない、なんてこともありますが、仕事では割と具体的に嫌いになった理由というのが特定しやすいでしょう。
そもそも仕事上で相手との関係をプライベートのように扱ったり、そんな期待を持っている人は少ないからだと思います。
そこで、フィードバックをする都度、ファクトとセットで小出しに感情を伝えることで、嫌な部分がいくつかのピースに分かれ、関係の摩擦が和らぐ効果へとつながる場合もあります。
例えば、チームにいるYさんの、1.依頼への返信が遅い2.頼みごとをするときにいちいち細かく説得しないとアクションを起こさない3.受け答えがはっきりしないといったファクトをまとめて伝えようとすると、多分全体的にYさんに対し「苛立ちと嫌悪」を抱いていると認識されるだけかもしれません。
しかし、1のときはどちらかと言うと、不安で心配。2は面倒くささを感じた、3ではイラっとしてしまう、に分解されます。
細かく感情を伝えることで抽象度が和らぎ、相手についての複雑な気持ちに対する理解や整理が可能になります。
仕事の場合、相手とは今後も接点を持ち続ける場合が多いので、溜め込まない上で、フィードバックを通じて感情を伝えるというのは活用するべきです。
3インパクトを高める
仕事は真剣な場所です。そんな環境にいると、人は「考え、実行する」というような機械的な思考に陥りがちになります。
しかし、「考え、感じ、実行」することを忘れてはなりません。ロジックをがちがちに固めても我々はロボットではないので、期待通りに動いてくれるとは限らないのです。
感覚的なものですが、ファクトやロジックというのが積み上がった状態(相手が良い意味でぐうの音も出ない状況まで落とせている)のインパクトは良くて80%くらいまでしか達しないと思っています。
さらなる効果を期待したいのではあれば、感情を移行する。それが残り20%の溝を埋めるものではないでしょうか。
フィードバックにおいても、そこまでして、やっと「アクションアドバイス」へシフトが可能になると思います。逆にそこまでして相手に伝わらなければ、もはや悔いはないでしょう。
4相手の本音がわかる
仕事をしていると、プロフェッショナルな世界なので、相手の本音の判断はしにくいです。でも、感情を伝え、相手の反応を見ることによって、それははっきりとわかります。
例えば、その人はわざと何かをやらかしたのか、悪意を持って自分を腹立たせようとしてその行動を取ったのか、それとも単純に行動や行為が至らなかっただけなのか。
実は、仕事ができる人ほど、できない人に対して懐疑的になりがちで、悪意にとる傾向が見られます。
そんなときも、フィードバックの達人は、上手に感情を入れてこんなふうに伝えるのです。
「おかしいなぁ、なんで約束した通りのカテゴリーで備忘録が取れていないのだろう」。
すると、ただ忘れたか、わからなかった、それとも自分のやりたいようにやったと3パターンの反応がはっきり出ます。
表情を見れば検討がつくものです。
次の機会にぜひ、実行して観察してみてください。
最後に一つ、大事なことをお伝えしておきます。
感情を伝える=感情を露わにする、ことではありません。
怒鳴ったりすることではないのです。
淡々と平然と感情のことを話します。
コツはこう感じたということをサラッと言ってしまえることです。
初めはその不慣れな形に戸惑うでしょう。
私もずいぶん下手でしたが、左のような定型文などを用いて練習しました。
フィードバックのトレーニング中に学んだ、「◯◯の行動、行為は私に◯◯の感情を抱かせた」などの形式を用いて伝えます。
幸いにも、私がいた環境ではフィードバックカルチャーが進んでいたので、割と受け入れられやすい体制だったのかもしれません。
ただ、もちろん、言葉選びは慎重に行いました。
私が逆の立場であっても理解できるな、といったようなシミュレーションなども織り交ぜ、自分のスタイルを作っていきました。
sidebarアイスバーグ理論感情が突き動かす行動
我々の日々の仕事や生活で、自身の行動、言動、振る舞いといったものは実は自己表現のごく一部であって、氷山の一角です。
フィードバックで感情が鍵になる理由は、それもまた表面上に見えている部分を支える重要な要素だからです。
例えば、あなたが今日会議で発した言葉、言わなかったこと、ムッとした事柄は、ご自身が持ち合わせている複数の要素が重なり合って複合的に出来上がっていると考えてよいでしょう。
当たり前のようですが、人はすべてを周囲にさらけ出しているわけではありません。
それどころか、自分ですらよくわかっていない欲求や願望、信念などが基礎になって、その人が作られていると言ってもいいのです。
アドバイスをしても、耳を貸そうとしない、思いのほか過剰な反応をするなどの場合、原因はその人の心理断層のさらに奥深くに眠っている可能性もあります。
一般的にはアイスバーグ理論(考え)*8と呼ばれるものですが、フィードバックを行う上で、頭の片隅に入れておくことをお勧めします。
次の図を順に説明していくと、
1.実は、人はまず自分の存在意義から世界について考えます。
生と死であったり、自己が地球上に存在している理由であったり、様々な生誕論・進化論なども含みます。
もちろんこんなディープなことを毎日考えているわけではないですが、根源としてそこが揺るぎない土台となっています。
例えば、私の場合は「人はこの広い宇宙の永久に近い時の流れの中で根本的にはちっぽけだ」「ちりのようだ」と考えています。
「蟻も人間も変わらない」「大統領もホームレスも同じだ」と。
そんな生物の意義を信じています。
2.次に、それをベースに生きていく上で核となる欲望、渇望が形成されています。
そこには執着、愛、希望、自由といった根源的な定義が出来上がっていきます。
あなたにとっての愛とは?希望とは?自由とは?といった定義はご自身の存在意義に関連し、紐づいているのです。
3.下から数えて3層目には、その定義づけに対して今度は自己への期待や他人への(一方的)期待が出来上がっていきます。
簡単に言ってしまうとルールです。
「何事もやればできる」「人は機会について平等であるべき」など、人生を生きる上で重要、大切だと思う、生き方のルールというのが構成されます。
4.しかし、それだけでは独自の世界にはまってしまい、他者との共存ができないので、ここで現実の世界とあなたが見ている世界の捉え方(認識)に関してのキャリブレーション(目線合わせ)が行われます。
この照らし合わせであなたはその時代や状況に極力合わせた価値観や考え方にフィットしていきます。
余談ですが、もしかすると、会社などがなぜバリューや価値観を尊重するかは、割と深い部分に位置するこのレベルであなたと意識合わせをしたいからかもしれません。
5.そのベースの上に我々は様々な感情を抱きます。
これはコントロールしているようで、あまりできていないものです。
この感情自体には良いも悪いもなく、現実世界への自分独自の反応を意味します。
例えば、自身がもし正義感が強い人で、不正や不平等などに対し苛立ちを感じるのは、その下にある、認知、期待、欲望、生命としての意義などからきているものなのです。
6.最終的に可視化される部分として、表面上に浮かび上がるのが、行動や言動、振る舞いになります。
Step4アクションアドバイス行動を促す
相手に感情が腹落ちしたら、次に感情のことは一旦忘れてください。
言い渡した後は、キレイさっぱりとこの第4ステップに進みます。
ここでは感情的に流されたアドバイス、意見をしてはいけないですし、論点はこれからできる「アクション」へシフトさせます。
少し余談ですが、実は優れた経営者とそうでない人の違いは、色々な感情を引きずらないところにあります。
感情的にならないのではなく、感情を瞬時に封じ込める、アウトとインの速さに長けているのです。
フィードバックもサラッと感情を伝えた後は、もう引きずってはいけません。
そして、いざアドバイスをするときには、要点がいくつかあります。
順に見ていきましょう。
1すぐに改善できるものから言う先ほどの例に戻ります。
話が長い人は何から改善できるのでしょう。
「短く」と言ってすぐ実行するのは難しいと思います。
ただファクトベースなので、何が話を長くしているかは容易に特定できます。
そこをまずクイックに話します、もしくは、指摘をします。
例えば、私がこんな問いかけをします。
「では先ほどのミーティングで学んだことを30秒でまとめると、何と社長に伝えるとよいですか?」「今の状況を1行でまとめると何になりますか?」「わかる範囲でいいので、現在のこの課題に対する解を簡潔なストーリーやロジックで組み立ててください」これらに対する回答の一例として彼から返ってくるのはこんな感じです。
「そうですね、現在の限られた情報から推察すると、もちろん3~4日ですべてを理解しているとは思えませんが、私の頭でわかる範囲で申し上げると、そして前提として○○さんの思考パターンに合わせると、~になります」まず、この方の説明が長いというのは、①「前提」や「前置き」や「憶測」などが文面に多く含まれるところにあります。
あとは②ズバッと言えない理由として、「間違える怖さ」「否定されることに対する弱さ」などがありました。
そして③詳細に入ると、そこから抜け出せない傾向、④ポジションを取らないがゆえにポイントがズレてしまうこと、⑤さらに直接的に質問に答えないことなどが挙げられます。
この5つの中で、やはり、イラッとするのは①の前置き説明でした。
ここはすぐに改善できるので、次のインタビューの機会から改善してもらいました。
そして残りも一つひとつ紐解いていくのですが、一気に全部の枝分かれの部分を伝えないのがミソです。
伝えると、優先順位がつけられず、効果が出ない場合があります。
2期待値を言う、そして握る何を言ったら、合格なのか。
どんな行動を取ったらよいのか。
改善点がどれくらいまでいけば解消にまで至るのか。
それはフィードバックを与える人それぞれで違うでしょう。
ですから、まず、期待値を握っていることがお互いにとって重要です。
「ここまでできればグッド。
これ以上なら、さらにベター」みたいな感じで、マイルストーンを設定すると尚可だと思います。
では具体的にどのようなことなのでしょうか。
「聞き手にスッと気持ちよく入った、そんな心地よい気持ちになっていればベスト」と先ほどの方には伝えました。
後は、「今の長さのざっくり半分、もしくは3分の1程度」と。
あまりここの期待値を評価点(KPI)のようにしないことが大事です。
評価に目がいってしまうと、第1章の冒頭で述べたように、成長へシフトがされません。
ゴールはあくまで彼がさらに素晴らしいプロフェッショナルになることです。
その道しるべになって期待値もアドバイスをしていくのがフィードバックの役割だと思います。
3できたら即、褒めて、強化するそして、フィードバックの第4ステップで肝心なのは、アドバイスが実行に移り、その「兆し」が現れたら、その都度褒めることです。
それも比較的大げさにするとさらに効果的です。
先日もその方ができた際に、さらに上の上司が勢いよく、「そう、飲み込み早いですね。
その調子だとすぐにでもできちゃう」みたいなことを瞬時に言っていました。
その上司は、フィードバックの本質をわかってらっしゃるな、と感心しました。
成功体験は失敗体験よりわかりやすいのです。
フィードバックをした場合、まず相手に失敗のイメージを植えつけているので、それを払拭する必要があります。
「前回できなかったけど、今回はできたね」。
そしてそのできた箇所を思い出させて、何回もプレイバックをし、確実にその弱い部分を補強していく。
この方の場合は、長話になってしまうそもそもの原因である、「間違う怖さ、否定されることに対する弱さ」などを根本的に変えられるところまで持っていくことがポイントになります。
4できないときは原因を探るしかし、現実はこの方の例のように一朝一夕にはいきません。
繰り返し間違いがあり、それを改善する長期戦となることも少なくないのです。
その場合は、その現象が起こっている原因を掘り下げないといけません。
これを根源原因分析と呼びます。
問題解決の手法の一つになるのですが、フィードバックをする上でも欠かせません。
フィードバックとはある人、ある行為や行動における問題を解決しようとしているのですから。
紛れもなく、問題解決です。
根源的な分析の場合、5つのなぜ(WHY)という方法が用いられることが多いです。
なぜ直らないのか?ではなくて、その行動が「なぜ起こるのか?」に注目します。
例えば、長い話し方について、根源は頭の整理の質にもありますが、この方の場合は、主に間違える恐怖でした。
なぜ間違えることに恐怖があるのか、またなぜ弁護的になってしまうのか、どのような状況のときにそれに陥るのかなどを解くのです。
根源がわかっていた我々は瞬時にアドバイスとして、「短くすること」と「リスクフリー」だよ、間違えてもフォローするからというスタンスを取りました。
以上のような要点を押さえておけば、一通り的を射たアクションアドバイスを行えるはずです。
相手の行動がすぐには改善しない場合は、さらなる観察や問題解決が必要になりますが、ステップ3までが順調に進んでいるのであれば、遅かれ早かれ良い変化が見られるはずです。
Step4行動を促すアクションアドバイス明確に伝わらない、日本のフィードバック
言語の違い?文化の違い?週末の早朝、私は某邦銀メガバンクのグローバルHRを手がける取締役の方とお会いしました。
その方はフィードバックラーニングに非常に力を入れている方でした。
そこで真っ先に話題に上がったのが、日本人はフィードバックを躊躇する、特に相手に率直に伝えない悪い癖があるというものでした。
それは、婉曲的なのか、ただはっきりしないのか、と問い直したところ、どちらかと言うと、はっきり明確に伝えられない可能性が高いとのことでした。
仕事の性質上、英語と日本語を両方耳にする機会が多々あります。
その場合、フィードバックを英語で行う際に、「英語圏は表現が直接的(Direct)」だからやりやすいという人もいます。
日本語の場合は、遠回しに物事を伝える傾向があり、忌憚のない意見をお願いしますと言っても、なかなかフィードバックがしづらいイメージがあります。
しかし、アドバイスをするときに覚えておきたい点は、フィードバックにおいて、直接的と遠回しのフィードバックというものは存在しないことです。
存在するのは、「わかりにくい」と「わかりやすい」の差だけだと思います。
フィードバックループで明らかにしておきたいのは、フィードバックがこのアドバイスの最終ステージまで突入したときには、すでに相当わかりやすくなってなくてはいけないということです。
ここまで、よく観察し、ファクトを揃え、相手の言い分を傾聴して感情へのインパクトも整理され、さて、アドバイスとなったときにわかりにくく伝えてしまったのでは、これは非常にもったいないのです。
わかりやすいメッセージとは?昨今〈ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と受容)〉というのが組織の中で熱いトピックとして取り上げられることが多いです。
特に幹部候補の対象であったり、幹部会議の中を見渡したりする際、やはり日本の職場はまだまだ男尊女卑の傾向が根強かったりします。
もしあなたが会社の経営幹部でグローバルな社長に、”Let’smakeaborderlesscompany.””Let’smakeacompanywithoutgender,cultural,racial,orreligiousdifference.”と言われたらどのように思われますか。
どちらのほうがわかりやすいでしょう?わかりやすいという意味は腹落ちしやすいになるのですが、的確に言うと、伝えているメッセージに別の解釈の余地を与えないになります。
フィードバックをする場合もこれと同じで、言葉選びが重要になります。
仕事ができる人に共通なのですが、このような細かいところまで気をつけていることで、差がつくのでしょう。
同時に、フィードバックの希釈を防ぐことも大切です。
フィードバックを行うときについつい多くを語ってしまう傾向があるというのが多くの人の実態です。
人は相手に自分が悪く思われるのが嫌なせいか、フィードバックをする内容が酷ゆえの優しさからか、シンプルな点を誇張して話してしまいがちです。
アクションアドバイスは、具体的に、ではあっても、余計な言葉をつけ足す、のは禁物です。
次の表を参考にしていただければ幸いです。
Step4行動を促すアクションアドバイスフィードバックの匙加減を決める
相手のキャパを見極める3つの質問フィードバックというのは与えるものです。
相手はあなたからもらって喜ぶべきです。
私はギフトだと思っています。
でもそんなふうに言って、「その通りですね!」と賛同してくれる人は既にフィードバックの達人か自己成長意欲が非常に高い人、もしくは強い芯の持ち主に限ります。
あとの人は「フィードバックなんて私には必要ありません」が普通です。
このためフィードバックを行う際に、匙加減を見極めることが大切になります。
例えば、フィードバックが嫌いな人には必要最低限のレベルで留めるべきです。
そうしないといらぬお節介になりかねません。
特に、私の経験ではネガティブなフィードバックの許容範囲が人によって全く違います。
ポジティブに褒められることは好きでもネガティブな要素はなかなか受け入れられないという人も多くいるのです。
そのために見極めておきたいポイントが、次の3つになります。
・まず、相手は欲しいのか?・自分は知っているどの程度のことを相手に言ってあげればよいのか?・また、その上限は何か?必要最低限に留めるべきケースも私は去年、このフィードバックをとても嫌う人と仕事をしました。
フィードバックをするとそれを覆す例をたくさん揃えてきて、「自分は違うぞ」と主張し、挙句の果てには私のミスを正そうと努力します。
十中八九その方の早とちり、聞きそびれによるもので、気の毒に感じるときもありました。
しかし、それでも横柄な態度と言葉遣いで突っかかってきます。
このような人は、いったいどうしたらよいのでしょうか?しかも彼は役職上、私の部下に当たります。
悩んだ結果、フィードバックは必要最低限に留めました。
相手が自分を尊敬、尊重、信じていない中で与えても、耳の右から左へと通り過ぎてしまいます。
待つこと4カ月くらいでしょうか。
プロジェクトでクライアントを含め、他の方から高評価をいただき、彼の態度も徐々に良くなりましたが、最後まで大きくは変わりませんでした。
無論、仕事のプロセス、質、両方で課題点はありました。
しかし私は結局クライアントとのコミュニケーションに関するトピックにフィードバックを留め(ここが肝心だったので)、それ以外は抑制しました。
間柄としては好転しましたし、文句なしの結果となったのですが、その方は自身の成長機会を逸し、その繰り返しで今に至るのだなと思い、少し残念でした。
しかし、最初の調子でフィードバックを続けていたら、明らかに仕事に支障が出ていたでしょう。
相手の状況によっては、仕事を遂行する上で必要な最低限のフィードバックを含め、先述の3つのポイントを把握しておくと後悔せずに済むと思います。
一度に与えず、整理して渡すフィードバックにおいて、実は本当に重要なのは「見えてきているフィードバックの中のどの部分を今、どうやって、伝えるか」という選定や判断になります。
経験豊富な人ほど相手のあらゆる成長機会である部分、そして強みを広げられる部分が見えます。
しかし、それをいっぺんに「データダンプ」してしまっては相手に混乱が生じてしまいます。
ですから、この判断と選定と戦略というのは「アート」になります。
そのときに良い手法を一つお伝えします。
まず、仕事の結果における許容可能な「及第点」を設けます。
そこを簡単に相手と業務を通じて擦り合わせ、説明していきます。
次に、相手に自分の期待値について語ります。
及第点に対して、その上どこまでできれば「優秀」、さらにその上まで凌駕すれば「最優秀」というように決めます。
そこを合わせたところで、相手に「あなたはどこに行きたい?どのような仕事のアウトプットを出したいのですか?」と逆に質問を投げかけてください。
あえて、ここまでやれ!というのではないのです。
この3つのカテゴリー分けを前段でしておけば、あとはその目標に合わせたフィードバックを準備していけばいいでしょう。
とはいえ、フィードバックは最終的にはアートなので、「あれ、なんかうまく刺さってないな」と思ったら、直感を使い、ストップするのも賢明な行為です。
止めることもまたかえって、良い選択なのかもしれません。
なお、組織によっても異なりますが、日本の場合、現在の仕事のパフォーマンスのフィードバックよりも、その上の仕事のパフォーマンスについてのフィードバックをやる傾向があるように感じます。
しかし、フィードバックをする際は、それに対してはっきりとした線を設けることが重要です。
今、「現在の仕事の期待感や要件について語っているのか」もしくは、「その上の仕事の期待感や要件について語っているのか」です。
つまり、相手にとっての緊急性を一目瞭然にしておく必要があるのです。
的確なサポートを適切なタイミングで、がフィードバックの醍醐味であり、常にあるべきスタンスなのです。
sidebar人の成長3つのパターン
実るまでが難しいフィードバックを与える側として、成果がすぐ現れないと不思議に思うこともあるでしょう。
そこで、あくまでも参考程度にですが、相手の成長具合について、いくつかのパターンで考えること、その感覚を持ち合わせること、をお勧めしたいと思います。
まず1つ目のパターンが、「ステップ・バイ・ステップ型」です。
フィードバックの量が蓄積され、それが日々の活動に取り込まれ、ミスを経験し、複数の類似したフィードバックにより改善しながら、新たなステージへと突入します。
このパターンの人は通常の組織の昇格や役職が変わる仕組みと連動した形で、己も成長します。
そして、またフラットの蓄積(蓄電)時期が訪れます。それでも着実に成長していく安定的なパターンで、一般企業などの優秀なジェネラリストに多いような気がします。
しかし、中には、フィードバックを即吸収してしまう、名づけて「究極のリニア型」という人も稀に存在します。
フィードバックをするほうとしては、やっていて、順調に進化が見られるので、有意義な気持ちになれます。フィードバックの頻度も1回で、すぐに次の課題へと飛んでいきます。
その昔、私のチームに入ってきたばかりの新米コンサルタントがまさにこのパターンで、どんなフィードバックも瞬時に吸収するどころか、積極的に多方面へともらいに行っていました。
例えば、データベースを一から構築したいとき、彼は私のフィードバックではまだ足りず、直接その道のエキスパートに連絡して、より専門的な内容のフィードバックを受けていたのです。
案の定、数年後彼に会ったときには、既にどの同期よりも役職や責任レベルが上がっていました。
3つ目のパターンが「やり方しだいで成長型」で、フィードバックをする側としてはリスクを取る必要があります。
フィードバックに対して抵抗感や防御的な姿勢を見せる人にこのようなパターンが多いです。
こちらが根気よく我慢したり、工夫したりした結果、徐々に仕事のコツをつかみ、自信が芽生え、急激に伸びる場合もあります。が、それ以外はフラットのままに終わります。
このケースこそ、フィードバックについての深い知識が役に立ちます。
稀ではありますが、かつてはあんなだった人がこんな成功を収めたの?というときに現れる成長曲線ではないかと、個人的には思います。
以上を踏まえながら、自分が今フィードバックをしている相手がどのパターンか知っておくのも期待値を置く上でよいかもしれません。
まとめフィードバックループ
ここまできて、一旦ステップバックします。そもそもフィードバックループというのは何を成し遂げようとしているのでしょうか。
フィードバックを行うことで、する側は相手が変わってくれる、良くなってくれることを望んでいます。フィードバックをする相手が変われると思っているから時間や気力を割くのです。
というのも、人を変えようとする努力ほど、労を費やすものはないからです。
では、その限られたチャンスの中でどのようにフィードバックの質(やインパクト)を最適化すればよいのでしょう。
フィードバックとは相手に伝わるだけでは不十分です。伝わった相手が行動を起こし、それが結果として現れることが願いです。
フィードバックループの本質とはそのインパクトを可能な限り高める、その効果を含んでいます。図にすると次のようになります。
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