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第4章フォーマルなフィードバックのやり方

目次

第4章フォーマルなフィードバックのやり方

会社の正式な仕組みとしての必要性と意義

面談が雑談で終わってしまう!

過去に私がヒアリングした、こんなシチュエーションを想像してみてください。

・以前いた部署は、マイクロマネジメントだったので、細かいフィードバックが頻繁に飛来。

それはそれで大変だったが、今の部署では、むしろほぼ野放し状態。

・私は部下の成長に非常に高いコミットメントを持っており、コーチングをいち早く取り入れ、事業部を海外の拠点にまで発展させました。

フィードバックを定期的に行い、教育と評価は別物と考えて取り組んでいます。

・年1回の昇給や昇進の際にその額面が書かれている紙が渡される面談のみ。

事務的な話に留まる、もしくは喫緊の仕事の話に飛んでしまう。

・「最近どう?」というような形で雑談に終わってしまうケースが多い。

・フィードバックという形は取るものの事前準備は苦手。

いわゆる、抑えるべき3~4つの点がない。

・数字がなぜ跳ねないのか?その議論を客観的に議論できず、肩叩きで終わる。

考え、態度、行動を探るまでの一連のフィードバックには至らない。

・口頭と記憶で終わってしまう。

専用のシートやフォーマットはない。

メモも取らず次回の議論へつなげられない。

実は書き始めると長々と羅列できますが、これらに共通していることは、会社の正式なフィードバックの仕組みが存在していないことです。

そして、もう一つ明白なのは各リーダーや組織の仕切りによってフィードバックに対する考えが千差万別であることなのです。

第1章では本書で扱う「日常の場面でのフィードバック」の定義、利点やチェックリストなど俯瞰的に言及し、第2章では個人のフィードバックの手法の一つ、覚えやすく効果覿面の「フィードバックループ」について深堀りし、第3章ではチームで行う事前フィードバック「チームラーニングとチームノーム」について詳述しました。

段階だって説明してきたので、次は「フォーマルな場面でのフィードバック」について触れたいと思います。

継続的な視点で成長をチェック属人的でInformalなフィードバックだけでなく、正式な仕組みとして質の高いformalなフィードバックを行うことで、リーダーも、チームも、組織もより早く成長できます。

では、なぜ正式な仕組みでフィードバックは必要なのか?まず、日々バラバラになったフィードバックをパズルのピースとしましょう。

そのピースは一見孤立しているように見えがちなのですが、ほとんどのケースがパズルのようにつなぎ合わせることができ、自分像の一角を表すことができるのです。

例えば、Aさんは普段机の上に書類やものが散らかっていたり、ほったらかしにしていたりする。

スケジューラーの予定管理が杜撰である。

身だしなみがだらしないときが結構ある。

これらは個別の対処や改善が必要ですが、まとめると、Aさんは「乱雑な人」というふうに置き換えることができます。

極端にシンプルな例ですが、我々の行動というのは数多に重なっているように見えていて、実は根っこの部分で共通していることが多いのです。

正式な仕組みの上で、これを特定して対処することで、より質の高いフィードバックが可能になります。

日常ではカバーできない大問題について話す次に、日々のフィードバックではできない重い話などは正式な場でないと意味がありません。

特に人格に関わるような話、キャリアの向き不向き、プロジェクトで失敗した事柄などについてのフィードバックは日々のやりとりでは交わせない大きな議論です。

あるプロジェクトで、メンバーの立ち居振る舞いが問題視されました。

「このままでいくと、リーダーとしてはやっていけない。

能力的な素質はあるのにもったいない」といった内容でした。

しかし、彼の不適切な言動をいちいち現場でフィードバックしていても解決しません。

問題はもっと大きいのです。

原因は価値観や彼の二面性にあるかもしれません。

こういった問題は表面上直せても、その場しのぎに過ぎない場合もあります。

巧妙かつ狡猾な人ほど隠すのはお手の物です。

ですから、こうしたフォーマルなフィードバックの場で相手と目を合わせ、反応を慎重に見ながらコミュニケーションをする必要があります。

個人と会社のシナジーを図る場としてリーダーとしてやはり大事なのが、正式なフィードバックの仕組みの上で相手への長期的な成長について語ってあげることです。

個人の成長目標もありますが、会社の経営指針・モデル・価値観に照らし合わせた形でのフィードバックを行うことでシナジーを築いていくのです。

まず、初めに理想とする基準を設定し、統一された形で求める人材のあるべき姿を想定してください。

お互い共有し、フィードバックをする際もそれに合致した形で行います。

特に、フォーマルなフィードバックをする以上、共通した言語は必ず守らなければならないものです。

お互いそのほうが、会話の速度や意思伝達も早いですし、誤解を招きません。

例えば、フィードバックを行う上で、「弱み」とは言わずに、「成長機会」(デベロップメントニーズ)と呼ぶなどです。

ネガティブをポジティブに変換するだけで効果は断然違ってきます。

その他、「強みの中の強み」のことを強調するために、「スパイク」などという言い回しを活用するなど、全社共通での差別化を図ります。

なお、職場によって様々ですが、フォーマルなフィードバックとは、大まかには「プロジェクト後・毎」や「年1回、半年に1回など定期的」の2つと考えてよいでしょう。

本章ではこうした定義の上で、具体的なフィードバックの手法についてお伝えしていきます。

プロジェクトごとのフォーマルフィードバック

成長が運しだいにならないために冒頭で会社としての正式なフィードバックが実質行われていない混乱した例をいくつか挙げました。

多くの会社では、評価や数字の達成率などの確認が主流で、あとは雑談に近い形で終わってしまうようです。

しかし、実際困っていることや達成できない理由を構造化し、ファクトベースで積み上げ、個人の成長に向けて親身に話すことが、大きな注文ですが、大事だと思います。

私が最近遭遇した悲惨な例を挙げると、そこで行われていたフィードバックは驚くほど単純(無駄)な、「気づいた点を文章にまとめて、メールで送付してください」でした。

耳を疑うかもしれませんが、事実何の枠組みも存在しておらず、アシスタントからリマインダーメールが来るだけでした。

これといった運用の仕組みというわけでもなく、ランダムにリーダーに届いただけで、それを実行するのも個人の自由のような状況でした。

思いつくままに嫌味だって書けますし、強みだけを強調したっていいですし、結局何が重視されているのかはリーダーしだい。

リーダーの良し悪しに任されます。

運が良い人だけが伸びていき、偏った結果を生みます。

同時に、フィードバックが経験則だけになりがちで、そういった成功体験などは伝わらない、役に立たないことが多いのです。

しかもこの会社の売上高は数百億円にも及びます。

CEOが嘆くのも当然のはずです。

ここではまず、プロジェクト後・毎に行うフォーマルなフィードバックについて、そして次項で年1のフィードバックについてお伝えしていきます。

プロジェクト後・毎のフィードバックは行わない職場もあると思いますが、例えば大まかな業務の区切りなどで、個人的に自身やメンバーの振り返りをする際などにお役立ていただければ幸いです。

行うタイミングを逃さないコンサルティングですと、通常プロジェクトごとや仕事の一区切りごとにマネージャーは各チームメンバーのためにある程度統一されたテンプレートを使用し、書き込みをします。

それを期限内に終わらせ、2~3週間後には、30分~1時間をブロックして相手と一緒に正式なフィードバックセッションを設けます。

簡単に聞こえますが、徹底するには時間がかかります。

自動的に発動するリマインダーやツールを導入するとよいでしょう。

そのフィードバックセッションが完結したらそのことをシステム上で伝え、終えます。

なお、「仕事の成果やパフォーマンス」と「自己の成長」というのは必ずしも同時並行かつ都合よく噛み合うというわけではありません。

そのため、プロジェクトごとのフィードバックを行っていても、年に一度は総合的なフィードバックをすると効果的です。

詳しくは次項をご参照ください。

全社で評価シートを活用フォーマルなフィードバックがしっかりできているかどうかは、使用するシート項目の分解度や粒度の細かさでわかります。

コンサル会社では「評価シート」と呼ばれ、項目はその会社が重要視している点、すべてです。

一例ではありますが、次のような考えを参考にしてください。

同じ会社でも部門によって内容は違ってくると思いますが、ポイントは、プラクティカルで、誰もが納得がいくものであることです。

・探す必要もなくPDFが随時ダウンロード可能・会社のミッションとバリューが明記されており、フィードバックをする側が何に対して重点を置くかがはっきりしている(例えば:果敢に挑戦する姿勢、顧客第一主義、など)・そのプロジェクト特有の背景や状況の説明(2~3点)・自分の役割、役目の理解を明記・担う役割のスコープが広がるごとにリーダーの資質たるカリスマ性、統率力、ビジョン、共感力、果敢性、VUCAの要素、などを追記・大分類と小分類が整理されていて、評価しやすいように選択肢形式になっている・フリースペースがあり、何か書かなくてはいけない・最終的に「一言でまとめると」のシンセシスを書かなくてはいけないこのような評価シートを駆使し、フォーマルフィードバックを行っていきます。

なお、その組織においてトップリーダーになるまで、学習・研修・成長を貫く共通の軸があり、それに基づいてフィードバックをするというのが大事です。

もちろん、シートを用意するだけでは足りません。

私もいくつかの企業を経験してはっきりとわかったことなのですが、優秀な組織ほど、ビフォーとアフターを徹底します。

ビフォーでは、部下の成長や育成は必然という概念をしっかりと植えつけます。

第1章でご紹介した成功事例のように、事前にシートの説明や研修をしっかり行います。

正式な場ではこのようなシートを活用します、と一連のコミュニケーションを流すのです。

アフターではフィードバックを行った後にこのフォームの記述内容が確定され、当事者にまた送られることを徹底します。

なお、この情報は保管され、必要に応じてアクセス可能にしておきます。

そして長期的に何が改善されたかがはっきりと議論され、成長という感覚的な言葉に留まらず、実際に「何が、どう改善」を遡れるようにしておきます。

部下との事前共有で精度を上げるフォーマルフィードバックの際、相手が事前にフィードバックのポイントを把握していることが望ましいです。

内容は主に、評価シートのコンテンツになります。

それが相手へ事前に送信されていて、チェックが可能になっている状態が理想です。

数日前に相手が考え、質問準備などもできていれば、フィードバックがよりスムーズになり、より早く本題、成長へのアクションに辿り着くことができます。

実際、この事前準備の大きなメリットはサプライズの要素と勘違いをなるべく回避できる点です。

もちろんですが、フィードバックはある程度、相手のパフォーマンスとして捉えられ、今後のキャリアにも影響していきます。

ですので、自分の考えや思いをしっかり整理して、ベストの状態で臨んでもらうほうが、本人の納得度や満足度も高くなります。

追加でセルフでアセスメントをしてもらう場合も、上級手段ですが、あります。

プロジェクトが終わった時点で全員自己採点するのです。

自分が今後強化していきたい点、今回ダメだった点、数カ所。

そして今回最も優れていた点、数カ所。

リーダーとして部下やメンバーが成長に対して考えていることが把握でき、便利です。

とはいえ、逆にフレッシュな思考の妨げにもなりうるので、扱いに注意が必要です。

フィードバックをゼロベースで考えてなくてよいという楽な部分もありますが、逆にリーダーとしてのフィードバック思考や習慣を怠惰にさせてしまう可能性もあります。

つまり諸刃の剣なのです。

私の場合、割と簡単な処置として、相手の書き込みを読む前に、既に自分である程度相手への内容を固めてしまいます。

予め箇条書きで書いておくという意味です。

その後に、フレッシュな目で相手から提出された内容に対し、リーダー独自の視点でチェックをしていきます。

フィードバックセッション本番頻度にもよるのですが、プロジェクトごとのフィードバックは、年1などのものよりカジュアルな雰囲気でも構いません。

フィードバックセッションとその後のディナーなどを組み合わせるのもよいでしょう。

もしくはそれらの合間に、しっかり静かな場所へ移動して、30分語るなども可能ですし、リラックスしている分、割と率直に会話が進みます。

ただし、フィードバックを行う際、各メンバーが「このセッションは正式に行う重要なものである」という共通認識を持つことが非常に大切です。

貴重な成長機会として、限られた時間を有効に使うようお互い意識してください。

目安は30分~1時間程度です。

では、具体的にどう切り出して、何を話しておけばよいのか?いくつか例を挙げておきます。

まず、今回のプロジェクトや仕事に対して、相手への期待値やロールをきちんと説明します。

チームリーダーレベルなら、「本件において、Aさんの全体の流れ、チームメンバーの分担、メンタルのサポート、シニアクライアントとの関係構築、コミュニケーション全般、ファーストアラート(いわゆるすべてにおいて、まず自分が敏感に反応する)など」。

または、チームメンバーレベルなら、「X業界についてのリサーチ、整理、意味合い出し、専門家とのインタビュードラフト、質問のドラフト、特定企業に対してのフォローアップ、市場分析、など」。

できるだけ具体的に伝えます。

評価シートには項目ごとにびっしりフィードバックを記入していると思いますが、その中でも優先順位の高いものから、先ほどの期待値を確認した上で深堀りしていきます。

例えば、マネージャーならチームとクライアントのリーダーシップや実際のインパクトについて、チームメンバーなら分析、ロジスティクス、質問やアウトプットのクオリティについてなどです。

また、主観などを抑制するためにも、フィードバックを始める際に、まず、「Iobservedthat…」(私は◯◯を観察した)という形で始めることが多いです。

第2章の「フィードバックループ」で述べましたが、フォーマットを準備しておくと便利です。

上記のような形で臨むと常にどこに対してチャレンジがくるかも想定できますし、フィードバックが楽です。

最後に、もう一つお伝えしておくと、個人のパフォーマンスに応じて、環境を変える人がいますが、これはお勧めできません。

もし、あるチームメンバーや部下が優秀で、成果を上げていたとしましょう。

すると、飲み屋で行う。

なぜなら、話すことがあまりないから。

逆にそうでない問題児がいたとしましょう。

その人は金魚鉢みたいな会議室でゴリゴリ詰める。

このように行った場合、両方にとって公平なフィードバックの機会ではなくなってしまいます。

ポイントは共通している環境や仕組みが必要だということです。

フォローアップの仕組みリーダーとしてフィードバックしたことが改善できているかをフォローアップするのは大事な役割の一つですが、プロジェクトごとに行うのは難易度が高いのも事実です。

それが実質可能になるのは、一年や半年に1回などのフィードバックの場合でしょう。

詳細は次項で詳しく述べていきます。

プロジェクトの期間が長い場合は、プロジェクトのフェーズごとのフォローアップも可能です。

前回の評価シートやフィードバックセッションで議論した内容に遡り、今回(例えば、3~6カ月後)改善された部分を明記し、どのような点で良くなったかを書き込みます。

それを正式なプロジェクト後のフィードバックセッションでレビューしていけばよいです。

なお、優れたフォローアップという意味では、やはりデベロップメントリーダーについても触れておく必要があります。

以前在籍したマッキンゼーでは、第三者的な教育係、メンターのような人が一人いて、その人が責任を持ってコンサルタントの評価と育成に携わっていました。

プロジェクトリーダーやプロジェクトで関わったパートナーとは別に存在していたデベロップメントリーダーの最大の利点は客観性です。

人選はフィードバックを受ける人とは異なる業種、ファンクションであることが鉄則です。

その人が、多方面から集められたフィードバックを元に、一番本人に必要なものをピックアップして、年に一度整理してくれます。

それをベースに翌年のチャレンジするべき項目を中心に己を鍛えていくのです。

導入している会社は少ないですが、人の成長にフォーカスする場合、いかにフォローアップが大切と考えられているか、おわかりいただけるのではないかと思います。

年1など定期のフォーマルフィードバック

「あれもこれも」では伝わらないもしプロジェクト単位では行わない仕事が主流だとしたら、こちらの年1回や半年に1回がその貴重な機会になります。

評価シートに今年の仕事での達成マイルストーンを複数用意、区切ってセッションを進めていくことで、同等の効果が得られます。

この一年で、成長できたことは何か、そして成長課題は何か。

それを本人はどう思っていて、どこをどのようにすれば、さらに成長していけそうか。

「フィードバックループ」を意識しながら、インタラクティブなやりとりを行ってください。

だいたい30分~1時間が目安です。

余力があれば、シート以外に後述のレターのようなレビューを追加してもよいと思います。

とはいえ、フィードバックする内容にも様々な種類があります。

例えば、サッと思いつくものを羅列しても結構な量です。

特に、年1など定期フィードバックの場合は、次のようなマイルストーンの検討が必要になります。

・日々の仕事を熟すための単純作業に関して・仕事能率のアップに関して・社会人としてのルールやマナー・強みを引き出す差別化要因・早いうちに対処すべき弱みや悩み・一点の目標に向けて(昇進、昇給、賞与)これら各ポイントの内容をいちいち深堀りしていては、時間がいくらあっても足りない気がします。

そこで、会社とリーダーにとってコアなポイントについては予め決めておく必要があるのです。

鍵になるのは、ビジネスの本質と社員の成長がいかに精密に紐づけられているかです。

自社にとってコアな部分を意識的にコンサル会社以外の例を挙げておきますと、以前プロジェクトをお手伝いさせていただいたあるクライアントの営業販売組織の場合、重要な領域・テーマが3つありました。

紐づく要素として、1.製品や業界知識:あらゆる角度から精通しているか否か2.問題解決力:ここには、課題の特定、構造化、仮説の検証、分析、優先順位づけ、アクションプランへの落とし込み(作成)など3.実行力(遂行力、推進力):実行に加え、進捗管理能力や善後策といった切り口の考察などこれら3つの要素に分けることで、数字の達成率や確認が主流の業界であっても、「なぜ数字が達成できない、困っているか」をより上手に、正確に分解した形でフィードバックすることが可能になります。

同時に物事を多面的に捉えられるようにもなります。

このようにフォーマルなフィードバックを行う上で、リーダーとして軸をはっきりさせることは後の部下の成長に大きく関わってきます。

「コアな部分(根っこ)」か「ノンコアな部分」かフィードバックを明示的に意識しながら行うことが可能なのです。

例えば、先述の「社会人としてのルールやマナー」というのは、最低限必要なものなのですが、そればかりにフォーカスを置いていてはいけませんよ、という示唆にもなります。

なお、こちら年1のフィードバックを提供する側として、次の点を予め頭に入れてセッションに臨むことをお勧めします。

・直近の仕事への目標達成に関連するフィードバック。

いわゆる「ジョブ」に対するフィードバック・中期的「キャリア」に対するフィードバック・長期のアスピレーションいかがでしょう。

この3つのうち、実はフィードバックが集中している箇所はありますか?多分、直近の仕事に対するフィードバックがほとんどだと思います。

それは過去の振り返りという意味で非常に重要です。

しかし、人は未来に目を向けてこそ、飛躍的な結果がついてくるものです。

自身のフィードバックが未来思考なのか、過去思考なのかの傾向を見極める簡単なチェック法として覚えておいてください。

レター形式で重みを持たせると効果的もちろん、プロジェクトごとにフィードバックを行っていても、この定期フィードバックはぜひ行ってください。

「仕事の成果やパフォーマンス」と「自己の成長」というのは必ずしも同時並行かつ都合よく噛み合っているわけではありません。

そのため、たとえ短くても年に一度は総合的なフィードバックをすると効果的です。

この振り返りのセッションでは、その年のプロジェクト後のフィードバックなどを集約し、いくつかの大きなテーマに分けて議論することをお勧めします。

また、この際、評価シートは使わず、ワード文書を作成して手渡すようにします。

段落ごとに、今年のプロジェクト別での貢献、優れていた点、デベロップメントニーズと今後の部下の目標(やるべきこと)という形で書いていきます。

このため、リーダーとしてのシンセシススキルも試されことになるでしょう(次項を参照)。

イメージは次に示した通りです。

総まとめのフィードバックになるので、正式なレターのような形で提供するとグンと説得力、コミットメントが増します。

そして何より部下を大切にし、尊重している表れとなり、長期な忠誠心に影響を与えます。

これを毎年続ければ、去年から今年、今年から来年とケイパビリティの向上をきちんとフォローできるようになります。

普段では難しい、根深い問題を話す本章冒頭でお伝えした通り、人格に関わるような話、キャリアの向き不向き、プロジェクトで失敗した事柄についてのフィードバックは、このときがベストです。

第1章で触れた、部下に仕事を任せるのが苦手などの場合もそうで、落ち着いた場所や雰囲気で話すことをお勧めします。

特に深刻だったり、繊細だったりするトピックは、重要度を上げて、例えば、セッションの初めに話すのもよいでしょう。

そうした難しい角度からリーダーが積極的に攻めていくことで、本人にも問題の大きさが伝わるはずです。

そして何より、期限を切って、焦らせるようなことをしてはいけません。

フォーマルフィードバックの期間中に頻繁に話す覚悟も必要ですし、相手にはどれだけ時間がかかっても大丈夫と安心させることが重要です。

あと、難しく根深い問題の話ほど、人は取り繕ったり、オブラートに包んだり、本音を避けたりしますが、フィードバックをする際に得策ではありません。

覚悟として、相手が怒って、不愉快になって、部屋を出て行ってしまう。

けれども、必ず何かしらの答えを探し出して、改善をしてくる、のように考えて勝負するとよいです。

喧嘩をすると、仲直りした後に、さらに強い絆で結ばれる場合がありますが、それくらいの心持ちが必要です。

マインドセットや人格は人の骨格です。

第2章で人間心理の深層について触れましたが、下から3層目に自己への期待や他人への一方的な期待として生き方のルールについて言及しました。

我々は皆、まさにこのルールに沿って生きています。

マインドセットや人格はこのようにそれぞれが持つ独自の世界観なのです。

それを社会や組織の他の人々と共存する場でぶつけ合い、日々、人は成長していきます。

この深い部分の話をするわけですから、相手のことをさらに深く知る必要もあるかもしれません。

過去に受けたことのある、行動心理学や知的サーベイの結果などを聞いてみるのもよいでしょう。

例えば、代表的なのをざっと並べるだけでも、MBTI、CliftonStrengths(StrengthsFinder)、HBDI、FIRO、など数多に存在します。

戦略コンサルティングで有名なのはMBTIというテストです。

特にないようであれば、これを機会に何か受けてもらってもよいでしょう。

費用と時間の許す範囲で構いません。

そこで原因を突き止めるというより、話の糸口になればそれでもよいと思います。

言うまでもないことかもしれませんが、こういったトピックを話すときこそ、リーダーとしてフィードバック能力の真価が試されます。

ぜひ、周到に準備をして臨んでください。

sidebarスパン・オブ・コントロール

毎年、評価の時期が近づいてくると、憂鬱になるリーダーは多いかもしれません。

通常の業務に加えて、複数のメンバーのフィードバックを行うとなると、実際、かなりの業務量です。

一人のリーダーが効率よくリードできる最大人数はだいたい何人かご存知でしょうか。

専門的にはスパン・オブ・コントロール(SpanofControl)と呼ばれるのですが、多くて10人、通常は7人が最適だと決まっています。

戦略ファームなどでは、年末のフィードバックの時期、評価シートを書き、セッションを行っているのは、最大でも5~6人ではないでしょうか。

偶然にもデータ分析をして、バーチャートなどを並べてよい数も最大で7つと決まっています。

それ以上は人間の脳にスゥッと入ってきません。

コンサルティングファーム1年目で習う鉄則です。

大所帯を持った巨大組織のCEOも実際の直属の部下はその程度です。

最近、マネジメントチームレビューをした際も、12枠以上も組織図でレポートラインを掲げていたCEOは取締役会で、「あなたはどのように一人ひとりを把握していくのだ?」と注意を受けていました。

短い言葉で的確にフィードバックする

シンセシスのスキルを磨くフィードバックはコンサルタントとしての総合的なスキルを測る上で格好の場だと認識されています。

アナリスト時代の基本トレーニングの一環として、問題解決の思考とアプローチというものがあり、ステップ・バイ・ステップで紐解いていくと、分析した後、それを統合する力ということで、シンセシス(Synthesis)というスキルが残ります。

それは少ない言葉や短いフレーズで的確に表現できる能力(思考のまとめ力)のことです。

プロジェクトの業務において特に意味合いを「書く」ときに重視され、フィードバックの際にも実はマネージャー以上ではこれをかなり真剣に見られています。

このスキルに秀でた人のフィードバックであれば、①容易に理解・想像ができる、②アクションに意味がある、③長期成長へのインパクトが大きい、ということになります。

特にフォーマルなフィードバックは、限られた時間で行わなくてはなりませんし、もちろん文章として「書く」という作業も発生するので、このシンセシスが大事になってくるのです。

長々と説明を求めてくる相手には例えばあるタスクに対し、詳細レベルまでいかないとその間違いを認めない人「Jさん」がいたとしましょう。

ここの部分間違っているよ、では足りず、「え、どこの何が?もっと詳細を教えてください」。

あの小学校時代の意地悪クラスメート「何時何分地球が何回周ったとき」、あの台詞を思い出させてくれるような人物だとします。

結局、自分が納得、説得されないと非(間違い)を認めない。

人から指摘を受けるのが苦手で、頭が固い。

何事をするにも長々と説明が必要で、フィードバックをする際も嫌になるほどファクトを求め、その状況や人などあらゆる事柄を配慮した上でフィードバックの妥当性を問うのです。

「それだったらまあ、しょうがないな、あなたのフィードバックを受け入れよう」というようなスタンスです。

あなたならどう対応しますか?そんなに長々と説明してもいられないので、この人のリアクションを突き詰めていく必要があります。

なぜ、このような挙動に出るのか。

おそらく、プライドが高いからでしょう。

しかし、もし、「あなたはプライドが高い」というフィードバックをしてしまったら、それは主観が入りすぎてしまい、ろくな議論展開が叶いません。

なので、柔軟にそれを言い換える必要が出てきます。

防御的で、リアクティブ、自己を庇う、正当化する、感情的、素直ではない、など表現は様々です。

私であれば、「Jさんはビッグピクチャーで捉えられない・限定的」とお伝えするでしょう。

私が思うに、全体像を捉えていない人ほど、第三者目線で自分を見ることができません。

その目線で見られないから、自分が間違ったことも認識できない、と、そう論じます。

その後に少し、インパクトがあるファクトを用意して、一つ二つ状況説明をしてあげます。

そして、こちらに対するアクションが可能になれば、その方への成長のインパクトが大きいと思います。

シンセシスを効かせたフィードバックのコツこのように、特にフォーマルなフィードバックを行うにあたっては、文書はもちろんのこと、口頭でも、その質を強く意識することをお勧めします。

そのために役立つポイントをご紹介しますので、話す・書く、両方の参考にしていただければ幸いです。

1前置きや前提を特段入れない状況が状況であったというのは百も承知というスタンスを取ります。

例えば、部下に対して、「おまえが頑張っていることは重々にわかっている…ホント、目立つ欠点もあまりないんだが、あえて言うとしたら…今回は特別なケースだということも理解している」など、同情を介した言葉をなるべく避けることです。

相手の気持ちを思っての発言なのですが、ビジネスで、フィードバックで、シンセシスを意識する場合、そういった枕詞は避け、単刀直入に言う努力をしましょう。

そのほうがキレイさっぱりで後になっても気持ちが良いものです。

ちなみに、このような「状況トーク」というのは、後で会食や酒席などで話すと効果的です。

「ホント大変なプロジェクトだったよな…無茶ぶりが凄くて困っちゃって…」など、このタイミングで現状理解しているよ、を仄めかすと関係がグッと縮まります。

2一度フィードバックしたことを二度(別の言い方で)言わないフィードバックでありがちなのが、似たようなことを何度も繰り返し言うことです。

そこはグッと堪えて、メッセージ一つに対して、例を一つ二つ準備し、そこに絞って部下に伝える努力をしましょう。

複数のことを一気に覚えることは難しいです。

そして、似たようなことを複数言うと、逆に信憑性を失うことにもなります。

伝えたい複数がリンクされているなら、その関連性を明らかにし、またその概念を同じ傘の下に動かしましょう。

これこそシンセシスの醍醐味です。

3伝える前に言葉選びのためにいくつか候補を用意する先ほどのJさんの例のように、現状を理解したら、とことん原因を突き詰めて、「なぜ」に対する表現をいくつか用意していく。

その後、用意した言葉から選んでもいいですし、さらに的確な表現を導き出しても尚可です。

要するに、一旦卓上に言いたいことを並べてから、コミュニケーションをリファインしていくのが常套手段だと考えてください。

4最後の締めに多くを語らない関係ない褒め言葉やフォローを入れない。

変な余韻を残さないようにします。

ここで気をつけていただきたいのは、自身が行ったフィードバックを決して濁さないため、下手に軽んじてはいけませんよ、ということです。

特にフォーマルなフィードバックの場では、繊細な話、重い話、苦手な話、将来の目標などを語るので、リーダーとして残しておきたいインプレッションを大事にしてください。

文言を減らす、多くを語らないに越したことはないのです。

5フィードバック相手以外のことはあまり言わないロールモデルを用いるときは必ず相手が明らかにわかる・認める人に限ります。

尊敬する対象が違う場合がありますし、尊敬する部分も真逆だったりします。

ここでロールモデルの正確性を議論しても意味がないので、明らかに誰から見ても認めている人以外は使わないほうが面倒を避けられます。

ついでながら、補足するとフィードバックをするときに「会社の誰々みたいに」は極力避けるようにしています。

常に、自分自身のポテンシャルと闘い、自身のあるべき姿に屈しない。

そういったスタンスのフィードバックが効果的だと私は信じています

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