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第5章フィードバックの精度を上げる

目次

第5章フィードバックの精度を上げる

より指導力の高いリーダーになるには?

質の高いフィードバックを行う。そして仕事のパフォーマンスを上げる。それは掲げるに相応しい目標でしょう。

では、そんなフィードバックができるようになると、いったいどんな利点があるのでしょうか?質の高いフィードバックが可能な人は…・上司から認められる・部下からも慕われる(フォロワーシップが作られる)・仕事ができる人として求められる・観察力が磨かれる・積極的に聞く力が身につく・人の気持ちを敏感に察することができる・強みや弱みを把握でき、的確な指導が可能になるさらに、・働く周りの人に高い目標や要求ができるようになる・チームのマネジメントが楽になる・きつい仕事を(部下に)任せられ、仕事の効率やアウトプットを何倍にもできる・EQにまつわる素養が高まる、例えば共感力、影響力、統率力、想像力、など・時間の無駄遣いが減り、雑談トークもなくなる・会社のフィードバックカルチャーに貢献できる・相手の強みを伸ばす方法も身につけられる・ハイポな(大きく伸びる)チームを形成できる質の高いフィードバックを身につけることによって、あなたは自身の指導力はもとより、様々な能力が磨かれ成長していくことができるはずです。

そして、そんな人物は、普通の人とどこがどう違うのでしょう?いかなる特徴を持ち合わせていて、あなたにそう感じさせるのでしょうか?ここでは、そんな人たちの特徴を集めてみました。

1.落ち着きがある2.相手の主張をしっかりと聞き、共通概念を形成している3.言葉選びが上手で納得がいくよう説明をしてくれる4.メッセージに一貫性がある5.フィードバックを元に「何をすべきか」をはっきり示してくれる6.あるべき論を語るが、そのギャップについても考えている7.一気にやらず、優先順位やタイミングを見計らって行っている8.仕事において何が大切かを理解している9.今後のキャリアや将来に向けて考えてくれている10.最後に、あなたのことを親身に思ってくれている、それが伝わってくるこの最終章では、こんな誰もが憧れる理想のリーダーになれるよう、より精度の高いフィードバックを行うコツを深堀りしていきます。

フィードバックの達人になる

通常のフィードバックが難しいケース定義、ループ、チームラーニング、フォーマルな手法と運用を経て、フィードバックの応用編に入ってきました。

この章では、どのように効果的なフィードバックを、通常よりも一歩も、二歩も踏み込んで(ストレッチゾーンで)実践していくのかを深堀りしていきます。

それを理解するためには、難しい状況で整理するのが一番でしょう。

特に、悪戦苦闘した体験に照らし合わせるのが重要です。

自分が散々苦労した、そんな状況を思い出してください。

私にも、もちろんですが、そんなもってこいのシチュエーションがあります。

途中プロジェクトに配属されたときのことです。

もともと在籍していた部下のチームメンバーTIさんは、おかしなことに、初めからタメ口で、不作法で、したたか。

行っていただきたい仕事を上手にかわしてきます。

簡単に言うと、私は初っ端から完全になめられてしまったのです。

尚かつ、仕事を熟す面でのケイパビリティは高く仕事も割と速い、そんな他人からの評価でした。

そして、私へのそんな態度とは打って変わって、クライアントとのコミュニケーション時には非常に丁寧で、礼儀正しいときている。

初日から「これはまいったな」と酸欠状態に陥ったのですが、ふとステップバックして、あえてフィードバックをしようかどうか躊躇してしまいました。

上司である私は年齢では彼より3歳若い、私は中間管理職的な立場でボスと部下の間的ロール、入社して日が浅い、プロジェクトの参加タイミングも2~3週間遅れた状況で内容や状況把握にキャッチアップが必須。

複雑な状況です。

あなたならどうしますか?どんなフィードバックをしますか?いつしますか?誰を巻き込みますか?そもそもフィードバックをしますか?影響力が及ぼせる領域は限られる例のように状況が複雑で、ダイナミック(流動的)で、感情を伴う場合、その状況に対し理性を持ち、冷静沈着に行わなければなりません。

ところがフィードバックを端的に捉え、タイミングを間違えたり、行いたいフィードバックの分類や認識が浅はかであったり、相手への必要性の見極めを誤ったり、他の人の評価を信じ込みすぎ己の眼で決断をしなかったり、その結果私はこれまで痛い目をたくさんみてきました。

様々な体験を経た結果、フィードバックを相手に行うという行為は、だいたい次のような要素に分解できるのではないかと思います(次の表)。

特に複雑な状況の場合、これらのどの領域がフィードバックの効果を妨げているのか、またどの領域をメインにフィードバックをすればより有効なのか、さらには、そもそもフィードバックを行うこと自体が適切なのかどうか、などの判断の目安になれば幸いです。

フィードバックを行うとき、実はその効果というのは色々な角度から考えていくのがベストなのです。

どこから手をつける?フィードバック効果一覧では左の表を、順に上から見ていきましょう。

まずは、相手との関係です。

これは過去の実績や経験値、現プロジェクトにおける間柄。

次にフィードバックのコンテンツ、定性的な部分です。

ここは主にフィードバックループでもカバーしてきた内容(ファクトベースであることや与えられた感情を露わにする)や伝え方です。

そして、定量的な部分、フィードバックの頻度や数は多ければ多いほど良いというわけではなく、絞ることも重要。

タイミングはクリティカルです。

相手の精神状態、己の精神状態(感情が高ぶっているときは避ける)について。

同時に、フィードバックの「鉄が熱いうちに」も鉄則にしてよいでしょう。

そして、今回のケースに最も適しているお互いの評価。

それもほとんどは外部評価です。

これまでの経験に対して、称号や地位、年齢、役職などになります。

残念なことにここの固定概念をクリアするのは一筋縄でいきません。

後で、なぜこのTIさんの例が難しい状況か改めて説明します。

図の○と×はご自身が今後行う上での難易を示すものだと理解しておいてください。

もしフィードバックを行っていて苦労している場合、それを妨げている領域についての認知が必要になってきます。

そして、フィードバックもそうなのですが、「終わり良ければすべて良し」の如く、行うトーンやメッセージは、それを取り巻く仕事の最終的な結果が大きく影響することも覚えておくといいですね。

以上、このような要素が複雑に絡み合い、フィードバックの精度に影響を及ぼしていると私は考えています。

うまくいかない場合は、ぜひこの表で、ご自身のフィードバックを振り返ってみてください。

そして、もし×の部分がその原因であるなら、なかなか改善は難しいでしょう。

本章では、そんなときのための手法もお伝えしていきます。

できることできないことの境界線を知る

すぐに効果が出るもの出ないものフィードバックの精度を上げるためにはそれが何に対して効力を発揮するかを知っておく必要があります。

その上で相手に臨むほうが断然結果が出ます。

例えば、GTさんがレポートの書き方が荒く、簡単な間違いが多い場合、フィードバックをした後に改善が見込める余地は高い。

しかし、逆にその同じGTさんがレポートの提出日ギリギリにならないと作業を始めない、土壇場までサボる癖がある場合は改善が難しい問題となってきます。

そんなフィードバックの効果や変化が可能な事柄とそうでない難しい場合を表にまとめてみました。

先ほどのTIさんの例の場合は、正直ややこしく変化が起こし難い要素ばかりでした。

まず、「態度や心構え:上司に向かってタメ口や不作法」、そして「価値観:子供じみた考えでもOKというノリ」、さらには「性格:人を見下す」。

どれをとっても、フィードバックを行って即インパクトが望めるものではありません。

主に、フィードバックの精度という観点から考えると、スキル、仕事の向上、生産性アップ、タイムマネジメントや知識といった箇所が当たりどころだと思います。

逆に、フィードバックの変化が起こし難いのは考え方以下、人間力に関わる深い部分の領域になります。

こちらは一度フィードバックを行ったくらいでは形の上でしか改善は見込めませんので、別の方法での指導が必要になってきます。

くどくど繰り返さずに1回限りそもそもフィードバックをするときの心構えで重要なのは「同じフィードバックは1回しかしない」という考えです。

1回以上、再三に渡り相手に同じフィードバックをしていた場合、それはフィードバックとは言いません。

特にこのTIさんのような場合は、しても1回。

関係性の悪化や、感情的な衝突など、マイナスなことが多いことも考慮するとそうなります。

理想を言うならば、人は仕事を通じて自身が足りない部分を学び、フィードバックとはそれを一つひとつチェックリストの如くクリアにしていくことです。

例えば、一般的に数十個欠陥があった場合、新入社員研修からベテランになり、リーダーシップを取るまで、その足りない部分を直す。

少なければ少ないに越したことはないですが、重要なのはお互いフィードバックについて同レベルのマインドセットを共有していることです。

そう考えると、一つひとつのフィードバックの重みも違ってきますし、自身の成長の機会についても慎重に捉えるようになるのではないでしょうか?フィードバックのルールを設定するとき、基本私は1回しか言わないよ、とまず相手に伝えます。

心配はいりません、直すのが難しい点については別の人からも幾度となく類似したフィードバックが飛びます。

本当にフィードバックが必要なのかを見極める

なんでもかんでもすればいいのではないよく自分の意見を相手に押しつけたいがあまり、フィードバックの要否を間違えてしまう人がいます。

特に、アドバイス好きな思いやりの強い方、要注意です。

良かれと思って行ったことでも裏目に出るケースが多々あります。

フィードバックとは主に目的が2つしかないのです。

一つは褒めること。

もう一つは改善を要求すること。

ほとんどが後者になります。

だからこそ、フィードバックは自分が意見を言いたいのか、それとも相手の役に立つのかを吟味する必要があるのです。

昨今はパワハラなど身に覚えのない嫌疑をかけられる可能性もゼロではないので、よりフィードバックの必要性の見極めも大切になってきています。

相手はあなたの意見を真剣かつ敏感に捉えるのです。

いくつか例を出しましょう。

この中で、あなたがフィードバックをするのは、どの場合ですか?1.先ほどの、GTさんがレポートの提出日ギリギリにならないと作業を始めない、土壇場までサボる癖の場合2.TIさんの態度、価値観、性格にまつわる言動で、個別の事例は些細な、取るに足らない事柄ばかりの場合3.フレキシブルタイムを導入している会社だが、自分が朝型なので、チームのメールが夜遅い、もしくは、チームの仕事が夜分に捗る傾向をなくしたい場合4.お客さんから態度に問題があるとクレームが来た場合。

具体的には話しかける際に仰々しく、回りくどくなり、本題になかなか辿り着かない「自分が言いたいから言う」になっていないか?フィードバックを行う上で難しいのは、その意見が実際必要なのか、もしくは好みなのかを見極めることです。

ここでの4つの状況の場合、フィードバックが可能なのは実は最後のポイントだけだと思います。

私であれば、それしかその場でフィードバックをしないでしょう。

1番目の場合はフィードバックというより、早い段階でプロセスチェックをし、改善を図ります。

2番目はフィードバックでは解決が困難な事柄なので、別の方法を考えると思います。

3番目は対個人のフィードバックというより、相互の話し合いになります。

フィードバックだなと思ったタイミングで、クイックに次のリトマステストをしてみるといいでしょう。

・これは単なる自分が好きな、慣れている、嗜好(習慣)なのではないか?・仕事のパフォーマンスやアウトプットと直接的な関係を特定できているのか?・フィードバック後の考えうる改善点は明らかに効果へとつながり、それの確信を持っているのか?フィードバックとは凡そセンシティブな事柄が多いので、それでも不安なときや50―50でわからないときは誰かに聞いてみるのが一番の方法です。

なお、GTさんのレポートの例だと、ギリギリで土壇場なのが「悪い」とは一概には言えません。

結果がもし出ているのであれば、それはGTさんのスタイルなのかも、と検討してみることも必要です。

また周りの人で、同じように期限ぎりぎりまでスタートしないけど、仕上がりやクオリティは高い人を想像してみるといいかもしれません。

もちろん限度や限界はあります。

提出日の前日になって、数時間前に始めました、では決して良い結果など生みようがありません。

そんな「現実的ではない」というポイントでのフィードバックはありえます。

ただ、因果関係の特定が難しい事柄は時間を見てからフィードバックをするか、なるべくしないが理想的です。

多分、それでなくてもフィードバックがしたいテーマは山積みになっていると思いますし、選別するのにいい機会だと思います。

sidebarパーキンソンの法則

時間を無駄にしないためにパーキンソンの法則という素晴らしい法則をご存知でしょうか?雑誌『エコノミスト』に1955年に登場したこの「観察」はその後、ビジネス界で実感覚として広まりました。

先ほどの、GTさんのレポートの例の場合、ギリギリで土壇場なのが「悪い」というような判定はし難く、逆に前倒しが常に良いと思っている人に対してのアンチテーゼのような説明材料になりえます。

この法則の意味は、「仕事は最大限利用可能な時間を埋める如く拡張する」と定義されています。

つまり、仕事とは「あれも、これも」必要で、それは考え始めたらきりがない。

特に想像しやすい例はリサーチなどをするときです。

3時間しかないときに調べものをして結果を出せというときと2日間あるときとを想像してみてください。

2日間ある場合、まず、キーワードやサーチエンジンで記事をできる限り集めよう、その後は最低10個の記事は読み込もう、まとめるのはそれを終えてからなど、たくさんのルールを作って時間を「悪用」してしまいます。

3時間しかないときは、まず専門家に聞いてみよう、から始める可能性が高いです。

そこでショートリストしたアイデアを調べに行く。

そうやって短時間で用を終える姿勢ができます。

建設的で、実がある結果を生むのはもしかすると、この間の時間だけかもしれません。

もちろんどれくらい膨大な量のリサーチかを特定していないので一概には言えませんが、だからこそ細かい出来高をトラッキングしながら(クライアントが求める基準に照らし合わせる、もしくは、価値に訴求していることを確認する)通過点を設定するのが賢明なのでしょう。

コンサルティングや投資銀行などでキャリアを積んだ人は、肌感覚でこの法則を学びます。

フィードバックは初めの数分が肝心

マインドフルに伝えるには?あなたはフィードバックをするとき、普段どうしていますか?・まず、5分の雑談トークを介しますか?それとも、真っ先に本題に入るタイプですか?・相手に話させますか?それとも自分の話題で盛り上げますか?・緊張感を持たせますか?それともリラックスした気分になってもらいますか?あるとき、アメリカに出張に行った際、イベントでマインドフルネス(瞑想)について学びました。

会場に入るなり、いくつかのブースがあり、部屋を選ぶことができました。

テーマによって違うみたいで、私は初心者向けのほうへ足を運びました。

そこには長身のスキンヘッドの女性が部屋のセンターに立っており、周りには20席ほどの椅子とさらにその円形を大きく囲むように床にはヨガマットのようなものが配置されていました。

1分後、まず静かに彼女が話を始めます。

「目を閉じて。

深呼吸をして。

それを3回続けて。

次にその呼吸に注目をして。

体に残る日々の疲労に意識を向けて。

体に痛みや違和感を感じたら、一旦そこで止めて。

判断をするのではなく、観察、観察。

自分がどのように感じているかを第三者的に、浮遊した形で想像してみてください」そして5分ほど経過した後、みんなが一斉に目を開けます。

そして見知らぬ人たちが、なぜでしょう、より近しい人に感じるのです。

一緒に何か不思議な体験をしたからでしょうか。

まずは相手の心の状態を確認フィードバックもこれと同じです。

初めの数分というのは相手の状態を探る良い機会なのです。

ストレスを感じているのだろうか?仕事の上で心配事があるのだろうか?週明けでリフレッシュして元気いっぱいなのだろうか?と、複数のシチュエーションがありますが、肝心なのは相手が(今あなたに伝えようとしているメッセージに)聞く耳を持っているかどうかを確かめることです。

もし、相手に「心の余裕や平穏がないな」と感じたら、まさに馬の耳に念仏状態なので次回に持ち越すことが重要なのです。

肝心なのは冒頭で「何を言うか」に固執するのではなく、相手の状態にどのように合わせ、素直に聞いてもらうようにするか、なのです。

フィードバックループでは第3ステップとして、感情の説明なども入り、センシティブな内容になるのがほとんどです。

効果的に、相手に伝わる形を取るためには、ある程度このようなマインドフルネスが必要になってくるのです。

「何が何でも」と無理強いしない実際、私がフィードバックに臨む際に心がけているのは、平常心になります。

何かを言うときも、言い返されたときも、同じトーンで接するように心がけます。

お互いの波長が合わさったときに、フィードバックは絶大な効力を発揮するからです。

例えば、開口一番に「昨日はよく眠れた?」は有効です。

睡眠によって相手の状態がわかりますし(変わりますし)、「最近体調どう?」は人が一番気がかりな健康に意識を向けるのでフィードバックに入りやすいです。

もちろん、「今フィードバックするのに良いタイミングかな?」と聞いてしまうのも手です。

何が何でもフィードバックをするという立ち位置ではなくて、波長が合えばやる、というようなノリで構えるのがベストです。

同時に、伝えたいフィードバックに自分なりの期限を持っておくといいでしょう。

しかし、決してやらないのは、フィードバックのメッセージを相手の状況に合わせて変えることです。

内容は常に一定していることをチェックしておいてください。

準備してきた重要な2~3点について、そのまま曲げず、ありのままで伝えます。

それが可能でない場合は、別の方法が必要だと判断してください。

気まずいフィードバックはその気まずさゆえに、伝えたいメッセージを簡略化して伝える傾向があります。

しかしそれをしてしまうと、せっかくの意図が台無しになってしまい、「相手のため」にならないのです。

それを前もって回避するためにも初めの数分が肝心です。

フィードバックでの齟齬をなくす

ファクトでお互いの理解を確かめるかねがね人は、お互いを理解できないことで絶え間なく争いを繰り返してきました。

主張の論争にならないために、己だけに見えているファクトに留まらず、お互いが共通認識を持ったファクトだということを確かめるようにましょう。

その方法は簡単です。

何かフィードバックをする際に、それに対して相手がどう考えているかをしっかりと卓上に並べることです。

例えば、ミーティング中にKFさんが携帯をチラチラッと見ていたとします。

それがあなたの目にとまり、クライアントも不自然な視線を送っていました。

クライアントは何も言いませんでしたが、不快に感じていたのは一目瞭然です。

そこであなたは注意をします。

フィードバックタイムのときに、そのことを述べます。

すると、案の定、彼のリアクションとして、仕事のメールをチラッと見ただけで、重要なテキストも打ってないし、行為もすぐやめた、という返答が戻ってきました。

彼としては、そんな些細なことを注意されるのはおかしいという感覚です。

こんなときこそ、ファクトを並べる良い機会です。

ファクトといっても、あくまで個人の観察結果なので100%断定的なことは言えません。

とはいえ、このように映ったという描写としてしっかり意を込めて伝えてください。

お互いの認識を擦り合わせようとするのとそのままフィードバックを終えるのとでは後々のインパクトが違います。

ここでお互いのファクトを積み上げることと、それを立証する行為に出ます。

重要なのは、第2章で紹介したフィードバックループを思い出していただいて、その行為が自分や相手にどのようなネガティブな影響をもたらすかを述べることです。

ファクトは同じでも受け手に対して「こう見える」「感じる」は説得力がある材料になります。

無論最終的には共通認識されない箇所もあります。

それでも意見の相違が起きないようにできるだけ配慮することが大事なのです。

言わば、「できる限りにおいてお互いのファクトを近づけ、寄り添うことはできた」。

それが理想的かつ効果を生む姿なのだと思います。

議論をし、折り合う点を見つけられない場合でも、諦めず、努力することがフィードバックのより良い結果へとつながることを覚えておいてください。

5WHYで認識のズレを擦り合わせフィードバックを行う際に、遊び心を持つことも重要です。

真剣、深刻なフィードバックにこそ、少し工夫を凝らした形を演出するのが大事だと思います。

問題解決の手法の一つとして5WHYというものが存在します。

通常、問題解決の過程ですと、この5WHYは原因究明のときに使用される手法です。

例えば、「目標に対して企業の業績が伸び悩んでいる」というときの理由として深層に眠る真因を探るときに使用します。

「なぜ」を幾度も聞くことに真実により近しい答えを出そうとします。

このようにフィードバックをする際に、原因究明をするのは大事です。

先の例でミーティング中にKFさんが携帯を見ていたことは、あなたとKFさんで明らかに認識の乖離が生じています。

KFさんの、「こんな些細なことを注意されるのはおかしいという感覚です」の後、引き続き、フィードバックにおける議論を進めてみましょう。

彼の言動の理由は何でしょうか?なぜ、彼はミーティング中に携帯を見る行為に至ってしまったのでしょうか?(「些細なことで」の温度感も気になりますが)もしかすると、KFさんにとって携帯を見るという行為に悪気はないし、悪くないと思っているからかもしれません。

ではなぜ、彼は悪く思っていないのでしょうか。

それは、実際に別の関係ない仕事を行っているわけではなかったから。

では他の仕事を行っていないことが、なぜ、マナー違反ではないのでしょうか。

彼はクライントからフィーをいただいているからその時間分は別の作業はしないと決めているからだとしましょう。

では、注意散漫になることはOKなのでしょうか?なぜ、彼はこの状況をただクライアントありきでしか考えていないのでしょうか?それはクライアントの面前だったからそう考えたのでしょう。

しかし、そもそもミーティング中に携帯を見る行為が気をそらし、ルール違反という議論に発展してもおかしくないのでは?さらに断言してしまうと、プロフェッショナルとしての素養が欠ける、になりかねないのです。

それは会社ブランドとしての信頼へ、そして自分の信用を失うに等しい、とつながっていきます。

「些細なこと」ではないということが、なぜをたくさん繰り返すことで、もしかすると、KFさんにも届いたかもしれません。

なかなか改善できないときの原因究明にも5WHYの活用が特に有効な場合が、もう一つあります。

それは、フィードバックをもとに正しいアクションを取ったにもかかわらず、一向に改善ができていない状況のときです。

第2章でも少し触れている通りです。

例えば、レポートの「うっかりした間違い=ケアレスミス」が改善されないとしましょう。

これは実際にあった話なのですが、WHYを繰り返していくと、その原因は、プレゼン(成果物)をぎりぎりに上司のところに持ってくる習性があったからでした。

そこで、「二度読む」「印刷をする」「赤線を引く」「声に出して読む」など様々なその場しのぎの解決法(絆創膏を貼るイメージ)は二の次であることが判明し、やはり、その方の場合「一日前に終わらせる」。

そして、一晩寝かす。

次の日に頭脳明晰な状態で臨むことによってミスを大幅に減らすことが可能になりました。

なまじ中途半端な形でフィードバックを終わらせてしまうと、相手にとって有効な方向が導き出されずに終わってしまいます。

それはお互い時間を費やす身としてもったいないのです。

真因を探る、を念頭に置きながら次回臨んでみることをお勧めしたいと思います。

ローパフォーマーへのフィードバック

自分の傾向を把握しておく最近私は仕事の知人にこんなフィードバックを受けました。

「服部さんってケイパビリティが低い人、あまり見抜けないよね」。

割と辛辣なコメントだったので初めは少しムッとしましたが、その夜振り返ってみると、「案外そうかもな、一理あるな」と思いました。

私の一つの大きな欠点というのは人を信じすぎることにあります。

「この人できないかもなぁ」と思っても、チャンスを与えます。

しかし、逆に言えばその人のことを過大評価してしまう。

なぜ、そうするのか?そのフィードバック後に考えてみた結果、格好良く言うと、自分ができないことをたくさん乗り越えてきたから。

不可能なことはあまりないと思っていて、努力をすればよいと思っているからです。

「できない→でも信じ続けて→努力して→できた!」の連鎖です。

私の場合、人は環境によって良くも悪くもなり、誰もが可能性を秘めていると思い込んでいるフシがあります。

格好悪く言うと、幼少の頃からヘマをするたび、詰めが甘い、抜けている、などと「マイナス点」をひどく親から指摘され、大人になったときにそれがコンプレックスになってしまったのかもしれません。

あえて人のマイナス点を見ようとしない。

もっと根本的には、人に嫌われたくないというのもありますが、その点は人として皆持ち合わせているものであまり独特ではない気もします。

結果、先述の2つの自分が混同してしまい、自分に対するハードルを常に高く持つようになり、人に対するハードルが低くなりがちになってしまいました。

私はそれに気づいた後、対策としてローパフォーマーにどう接したらよいかをさらに追求するようになりました。

ちなみに、予防策としてチームに誰かを入れる、採用するときにその人が非常に優秀である点にもこだわるようになりました。

そもそもローパフォーマーとは?先日別のコンサル会社に勤める後輩がチームメンバーのパフォーマンスやアウトプットに悩んでいました。

まず、その対象のチームメンバーは典型的な「ダメな仕事をする人」でした。

ミーティング中に居眠りをしたり、お願いした仕事の半分を忘れたり、勤務態度にも問題があったり、盛りだくさんの問題児だそうです。

「辞めさせるしか、ないかな。

もう1年以上経っているし」と持ちかけてきました。

実際ローパフォーマーともなると、複雑に入り組んだ問題が重なり合っています。

それらを一つひとつ解きほぐすのには時間がかかるのです。

まず、ローパフォーマーというのはどういった人を指すのか、を見ていきましょう。

ローパフォーマーにもいくつかの種類があります。

まず、意欲vs.スキルの対比を表した図で説明します。

例えば、あなたの職場にこの3名のKFさん、AIさん、GTさんがいるとしましょう。

KFさんのスキルは高いのですが、仕事に対する意欲があまりありません。

AIさんはスキルも意欲も欠如しています。

一概には言えませんが、先ほどの問題児のような気もしますね。

GTさんは仕事に対し意欲旺盛ですが、必要なスキルレベルに到達していない状況です。

3人ともパフォーマンスとしては低く、一見誰もがローパフォーマーに映ってしまうかもしれません。

しかし、私は「意欲もスキルも低い人を指す」と認識しています。

その場合、当たり前のようですが、スキルもしくは意欲のどちらかに解決の軸を見出すのが難しくなります。

いちいち、パフォーマンスが低い根源を考えてしまい、考えれば考えるほど、わからなくなるのです。

フィードバックでは解決しない場合も逆にローパフォーマーに必要なのは、フィードバックと併せてパラダイムシフトだと認識してください。

パラダイムシフトというのは、発想の転換という意味です。

職場環境であったり、職種であったり、新しい上司であったり(そうです、あなたではなく)、割と抜本的な議論になると思います。

とはいえ、それを仕事始めの3カ月や6カ月後に議論してしまえ、と言っているわけでもなく、そこにはいくつかの段階を経て辿り着くものだと思います。

フィードバックでそのシフトを起こせるかもしれませんが、その人が今いる状況や世界のままでは難しいかもしれません。

その準備期間として、まず上司であるあなたが、その人に対して、・既にどんなフィードバックをしてきたのか?・どの程度徹底してきたのか?・改善された部分はあったのか?・個人として、会社として続けるメリットは?などを自問してみるといいです。

十分フィードバックを行ってきた上で、難しいようであれば、より抜本的な対策を講じることになっても、後悔はないでしょう。

大抵の場合、ローパフォーマーにフィードバックをする場合は、気まずく、ぎこちなくなりがちです。

相手はフィードバックを必要だと認識していない、限界を感じていない、など、楽しい環境とは真逆な「嫌な気持ち」になることも多々あります。

しかし、部下のためを思えばこそ、そんな気持ちを抱えながらも伝えて理解してもらう、これはリーダーの条件でもあります。

スターパフォーマーへのフィードバック

できる部下にはどう接すればよいか?スターパフォーマーとは文句なく結果が優秀な人のことを指します。

先ほどのスキルと意欲の図で位置するのはまさに、ハイパフォーマーのブロックの中でも右上端の片隅に存在する人です。

よかったですね、そんな部下を持った日には左団扇です。

部下のやりたいように、思いつくままにやらせて、仕事の自由度(と責任)を上げていく、という手法でしょうか。

もちろん、仕事上はそのままDowhatyoudobestを貫いてもらいます。

しかし、そんな方に出会ったあなたは、いったいどのようなフィードバックを行っていますか?1.文句のつけようがないので何もしていない2.褒めを重視している(自然にそうなってしまう)3.実は一番悩んでいる。

上司として脅威すら感じる。

結果、あまり建設的にフィードバックを行っていない4.逆にアップワードフィードバックも積極的に受けているこの質問をすると、あなたの器すら伺えてしまうので、あまり大声ではできないのですが、良き上司というのはいかにそんな人を伸ばし、会社やチームへの貢献を広げていくかを念頭に入れてフィードバックを考えます。

器が小さい上司は、1、3に留まり、積極的にスターパフォーマーへの後押しができません。

嫌われるのを恐れる上司は2をやります。

私自身、おこがましくも昇進階段を駆け上がる際に幾度かこのスターパフォーマー的なレビューをいただきました。

それと同時に、周りの後輩には優秀な人も多かったので、そんな彼らにいかに自分自身が先輩枠や上司枠から淘汰されないようにすべきかも考えました。

そこで発見したことは、上司であれ部下であれ、できる人ほどフィードバックが欲しいという発見です。

それを活用した上手なフィードバックの方法がありますので、ここで共有したいと思います。

誰でも必ず一つや二つ改善点はある仕事ができる人はそうであることを大抵は自覚しています(あなたもそうなのでは?どうですか?)。

もちろん駆け出しの社会人1年目は別として、仕事を数年続けていくと誰しも仕事の充実や実感、周りの評価と実績というものが一定の形で自信というものに変換されていきます。

よく理解する、飲み込む、実践する、修正する、結果を出す、などが共通しているテーマといったところでしょうか。

特に仕事ができる予調となるのはあなたのラーニングアジリティ―継続的にスピード良く学んでいく姿勢―だと私は思います。

しかし、できる人はその評価をもらい続け、年を重ねるとその栄光からくる一つの呪縛にかかってしまいます。

それは「勝者の呪い」のようなもので、常に勝ち続けてきた、高評価をもらってきた人は、ネガティブなフィードバックに対して非常に敏感になっていくのです。

そんな勝ち組の人たちに的確なフィードバックを行えば効果覿面です。

むしろ感謝さえされてしまうかもしれません。

スターパフォーマーでも必ず一つや二つは改善点があります。

そして自分ができるということを知っている人は、往々にして自分ができない箇所の検討がついています。

自分がよく見えているのです。

そもそも自己査定や反省が入念に行われているから、その人はスターパフォーマーなのだと思います。

初めはその人の輝かしい姿に魅せられて、その要素はカムフラージュされ、見えにくくなっています。

しかし、よくよく観察していくと、その人の至らない点が鮮明に映し出されてきます。

ついでながら、その改善点はその方に長期につきまとっているテーマであることがほとんどです。

例えば、私の場合はフィードバックや叱られることに対してのガラスのような割れ方と反応でした。

フィードバックをもらう際に私はそれを「仕事上のフィードバック」と割り切ることが苦手で、「私個人にあてた攻撃」のように捉える傾向がありました。

すると、どうでしょう。

フィードバックに対する防衛システムが敏感に反応し、弁護や答弁が得意になってしまいます。

それを堪えることの大切さをフィードバックを通じて学びました。

最近の例ですと、あるスターパフォーマーがチームに加わりました。

アウトプット、スピードとクオリティすべてにおいて突出した方でしたが、シニアなクライアントの前に出て意見を述べることが他の能力水準に比べると劣っていました。

別にそれがまだ彼女の役割として必須ではなかったのですが、次のステップとしては超えないといけないハードルです。

プロジェクトに入って3日後くらいにその点を指摘したら、彼女はその通りですと理由や彼女なりの工夫など試みていることを述べてくれました。

スターパフォーマーの場合、あまり時間をかけず、改善するべき点を早期発見して、「的中させる」ことが大事です。

容易に相手からの信頼や尊敬を勝ち取れます。

ここで差別化を狙って新しい発見や、説明・説得が難しい改善点を伝えようとすると、逆に仕事へのインパクトはネガティブになります。

たとえ気づいても後に回すことが気の利いた上司の役割です。

まず、フィードバックをしてもよさそうな一つ二つの指摘で安全牌を切ってスターパフォーマーへのフィードバックに臨むと、以降、割とスムーズに進むことが多いです。

強みを「スパイク」へもう一点、スターパフォーマーが喜ぶのは強みをさらに強くすることです。

このことを英語ではサッカーシューズの裏側にあるトゲトゲの部分の「スパイク」と呼んでいます。

長所は誰もが自慢したいものです。

この競争社会でさらに上を目指すのなら、スパイクを増やすことが必要です。

実際、今の若いスターパフォーマーは長所をたくさん持ち合わせています。

しかし、どれを伸ばせばよいのか、不安になっている場合が多いです。

同時にあまり役に立たない長所を得意だからといってどんどん伸ばしていってもあまり効率的ではありません。

フィードバックのやり方としては、今回のパフォーマンスやアウトプット、スピードなどの優れている部分を述べた後に、一つひとつに対し、さらに何ができるかを述べてあげることです。

例えば、ある人がサマリーを書くのが非常に上手だとしましょう。

そこで、まずその部分を認めた後に、その中でも特段に良かったものを複数持ってきて比較し、一番良いものに対してなぜそう思ったのかなどを述べたり、また別の仕事で見てきた良い例を見せてあげるのもよいかもしれません。

書籍やTEDのスピーチなどを勧めるのもよいでしょう。

ざっくばらんにここを引き伸ばしたいのだが、どう思う?日々何か特別なことをしている?なんて聞いてみるのもよいと思います。

また、もしその能力について、あなたより数段優れているのであれば、反対にアップワードフィードバックとして、アドバイスをもらうのもありだと思います。

最終チェック。

ハロー効果はないか?最終的にスターパフォーマー対策として、まず相手がどの部類に入るかを見極めることが重要です。

相手の能力を過大評価すると、いずれ後悔することになります。

そのため、ハロー効果という概念を知っておくと便利です。

ハロー効果というのは認知バイアスの一つで基本的な誤りのことを指します。

俗に言う、「人の買いかぶり」現象です。

これは人が犯しやすい単純な誤認で、例えばハリウッドの映画スター(トム・クルーズやブラピなど)がハンサムだから頭も切れるはずと勝手に認識してしまうことです。

出演している映画でも英明果敢な役柄を演じているので、そのイメージが後押しされます。

またビジネスでは、米ウォルマートのようなディスカウントストアは、すべての商品が破格の値段で売られていることを全面に出すため、商品の一部を他社とは比べものにならない安い値段で売っています。

消費者はそのバイアスに騙され、多くの商品を買ってしまうわけですが、実はすべての商品が一律に値引きされているわけではありません。

人の評価に対するハロー効果で一番大事なのは、別の人のポジティブなフィードバックや昨年の評価などをあまり参考にしないことです。

難しいですが、その方のデューデリジェンス(調査)をしている際には参考にしても、プロジェクトや仕事やチームが編制された時点ですべて「一旦白紙に戻す」作業をすると効果的です。

私が好きな宮崎駿監督の傑作、『もののけ姫』で長老の巫女、ヒイ様がアシタカへ旅立つ前に言った台詞の一つで、「曇りなき眼で見定めろ」というのがあります。

まさにそれです。

的確なフィードバックのためのインフルエンス

相手を導くための、あと一押し最近虎の門ヒルズの近くの鯛めし屋でマッキンゼー時代の友人と会食をしました。

以前はシニアパートナーをやっており、今は各方面で個人のコンサルタントとして活躍中の彼はある業界のCXOレベルのほとんどのメンバーをファーストネームで呼べる間柄です。

そして、たくさんのリーダーを見てきました。

彼曰く、「良いCEOとそうでない、良いBUヘッド(部門統括部長、本部長)とそうでない、良いマネージャーとそうでない、良いビジネスパーソン一般とそうでない人の一番大きな差はこのインフルエンススキルにある」と言います。

どのポジションでも共通して見えてくる問題というのが、「相手を導くコミュニケーション」なのです。

インフルエンスの手法にはいくつかのタイプが存在するのをご存知でしょうか。

私が習った場所では、これをインフルエンスレバー(InfluenceLever)と正式には呼んでいました。

レバーというとテコの原理を想像する人が多いかもしれません。

しかし、どちらかと言うと把手や操作ハンドルみたいな意味合いのほうが妥当かもしれません。

使いこなせていない、もしくは、奥深くに眠っているようでは、大きなアドバンテージの機会を逸してしまいます。

影響力を増すための7つのレバーまず、インフルエンスレバーはその働きかけ方によって、ポジティブとネガティブに分かれます。

両方とも相手に変化を求めるという意味では同じですので、当然の如くポジティブなレバーのほうが多いですし、使い勝手が良いです。

左がそのリストになります。

▼ポジティブなインフルエンスのためのレバー1.オーソリティー(Authority)地位、名誉、権力2.エンパシー(Empathy)共感力、感情3.ロジック(Logic)論理的思考全般4.カマラデリー(Comradery)仲間意識、輪、ハーモニー5.リワード(Reward)賞金、賞与、インセンティブ、旅行6.ロールモデル(RoleModel)率先垂範▼ネガティブなインフルエンスのレバー7.スレット(Threat)脅し、詰めインフルエンスレバーはこれ以外にもたくさん存在しますが、特に職場のフィードバックで重要度の高いものを選択しました。

そして大切なのは、いつ、どのレバーを使うと、最適にコミュニケーションを運べるかを理解することです。

ほとんどの人はこのインフルエンスレバーを見ると、自分がこれまで偏っていたことに気づきます。

通常ですと、1~2の手法を使いながらフィードバックを行っているはずです。

また、フィードバックといえば、「3.論理的」な形でしか存在しない、というのが暗黙のルールとなっている人もいるでしょう。

でも、本当に有効なフィードバックをしたいと思ったら、もっと多くのインフルエンスレバーを駆使すべきなのです。

では、事例を使用しながら一つずつ見ていきましょう。

冒頭でお話をした私がTIさんに苦しめられた経験に戻りましょう。

TIさんのように価値観、態度、癖や習慣、社会人としての考え方などの項目に当てはまる事象でフィードバックをする場合、まず難しいということを理解するよう述べました。

それでも、コトが悪化していく気配があり、差し迫った状況にある場合、7つのインフルエンスレバーのうちどれが有効でしょうか?まず、初めに排除してよいのが、「3.論理的」なフィードバックを試みる、です。

論理がコンサルタントでも通じる場合とそうでない場合があります。

もちろん、使用してもいいですが、あまり結果を期待せずにやることが大事です。

特に、相手が意図的にしかけている場合、論理は無効だからです。

「2.共感」というレバーを使うためには前提として、相手がまず自分に対してオープンでないといけません。

相手があなたに聞いてほしいと思っている姿勢が伝わってこないといけませんので、TIさんの場合は無効です。

「4.仲間意識」のインフルエンスを使う場合は、徐々にチームで囲い込みながら、例えば4~5人いるプロジェクトやチームであれば、チームラーニングなどの場で使用すると効果的です。

そこでお互いにフィードバックをして、複数のデータポイントの「重なった意見、同意見」で説得するという効果に期待します。

もう一つ、このレバーは「チームとしての動き方や考え方」を強調したいときに有効です。

往々にして、フィードバックは一対一になりがちなので、「自分だけが言っているのではない」というスタンスを明確にすると説得力が増します。

「5.報酬」というのは、フィードバックにおいて、「その行動を直すと、直接にメリットがありますよ、例えば昇進へつながる」などです。

その場合、行っているアクション、改善すべきアクションとリワードとのリンクが割とはっきりしていないと成立しません。

TIさんの場合、その目的がまだわからない以上、レバーとしてはまだ得策ではないでしょう。

ロールモデルとしてフィードバックを行う、というか、見せてみるのはどうでしょうか?「6.率先垂範」とは言葉で言うのではなく、自身のアクションやアウトプットで見せる。

そこで、相手に認めさせる、ないしときにはギャフンと言わせる。

これは、TIさんの状況では効果的かもしれません。

山本五十六元師の、「やってみせ言って聞かせてさせてみて褒めてやらねば人は動かじ」。

そのやってみせの部分を強調することです。

相手より明らかに優れたスキルがあれば、それを見せつけて黙らせてしまいましょう。

最後に「1.地位・権力」を使い、正す。

これは上司の特権ですが、よほど窮地に陥らない限り、使用を避けるべきです。

このインフルエンスレバーを引いてしまうと、どちらかと言うと相手の思う壺になります。

これを振りかざす人は、その狙っていた効果と引き換えに後で大きく信頼を勝ち取らないといけません。

ネガティブなインフルエンスレバーは1つだけなのですが、この「7.脅し・強制」のカードを出すときには大抵ポジティブな要素をすべて使い切った後です。

ただ、アンダーパフォーマー(業績不振の人)にフィードバックをするときには有効です。

もう後がない、というのを見せるための必需品と言えます。

同時に豆知識をもう一点。

通常、単純作業と(知的)複雑業務でインフルエンスレバーを分ける必要があります。

以前読んだダニエル・ピンク氏の著書によると、単純作業をしているときの人間というのは、罰や脅しを通じて「良く働き、結果を出す」。

その反面、複雑業務に取り組んでいる人は褒めやリワードで「良く働き、結果を出す」という研究結果があるのだそうです。

*10いかに納得や腹落ち感を引き出すかTIさんの場合、フィードバックを行うのはあまり適切ではない(限定的)というのが私の判断です。

インフルエンスレバーを考えたときに使用可能な要素が「1.地位・権力」と「6.率先垂範」または「7.脅し・強制」と踏んだからです。

「4.仲間意識」を使いたいところですが、私がチームに途中参加ということもあり、もう少し時間が経たないと機能しないので、選択肢から除きました。

なお、この「1.地位・権力」には、「自分もこうしてきたから、こうなんだ」といった説得の仕方も含みます。

経験値をベースにした偏ったアドバイスになってしまうと、相手はなかなか納得できないので要注意です。

ちなみに「2.共感」は第2章で紹介したフィードバックループでも登場します。

相手の話を積極的に傾聴し、また相手の気持ちや立場にたってフィードバックを行うというインフルエンスの一つです。

話をよく聞く(例えば、話を真っ先に否定せず、最後まで聞く)といった手法レベルに留めるのではなく、現場感があり、お互いの立場を理解しながら、諭すことができるレベルを指します。

ただ、共感でやってはいけないのが、「そうそう、昔自分もそうだったんだよね、だからできないのもわかる」といった肯定的なフォローを入れることです。

相手と自分は同じ土俵やレベルではないことを確立していかなければなりません。

そんなところで自分の過去を餌に共感の姿勢を出してしまうと、フィードバッ

クとしては相手に不必要な安堵感を与え、改善へ向けてのステップを遅らせてしまいます。

TIさんの例でも同じです。

「そう、同じく、私も昔、嫌な感じの人がいて、その人には真っ向から勝負を挑んで意識合わせしたんだよね」みたいなことを言ってしまうと、相手がプロとして欠けている部分を逆に肯定してしまいます。

すると次回も、そのまた次も、別の環境でその人は、継続的に誤った考え方で相手に臨んでしまうかもしれません。

そうではなく、ここでは大人の対応しか通用しませんよ、というのが適切なメッセージなのです。

このように、インフルエンスレバーは、相手に納得や腹落ち感を引き出すために一番効果的な方法を選ぶことに意味があります。

肝心なのは相手がアクションを起こし、変化へとつなげていくことなのですから、その変化を起こす確率が一番高い方法を選んで挑戦してみてください。

sidebarネーミングの重要性

最近、エグゼクティブコーチングで手法の一つとして教わったのが、ネーミングの効果です。

人がある芳しくない心理状況から抜け出すために有効なのだそうです。

そのコーチによると、人は普段、「なぜ自分がそのような精神状態に陥ったかの真因を探ることに時間をかけすぎている」。

逆に、「いかに迅速にその悪状況から脱出するかに焦点を置くほうが断然効果的」なのだと言います。

ネーミングというのは、自分や状態に名前をつけることで、いつでも、どこでも意識して理想の状態に戻れる魔法の呪文なのです。

ちなみに私がくよくよしたり、ネガティブな考えに陥ったりしたときのネーミング(脱出法)は『けろけろけろっぴ』です。

そのキャラをイメージするだけでいいのです。

考えすぎに困っている人に特に有効かもしれません。

フィードバックを行うときも、なぜ効果がないのか真因を探ったら、できるだけ早く先ほどご紹介したインフルエンスレバーを使用して、状況を改善するアクションに移ることが重要です。

より着実に相手の変化へつなげていくことができるはずです。

感謝の念を込めたフィードバック

できているところに着目する前著、『47原則』(ダイヤモンド社)でフィードバックについて書いたときに、サンドイッチの手法について触れました。

要約すると、フィードバックをする際に相手に「良いことを言って」「改善点(悪い点の指摘)を伝え」「良いことを言って」終える。

サンドイッチのように上下キレイな食パンのスライスで包み込むと相手は喜ぶというものでした。

以前、私が大先輩から学んだ手法です。

そちらで触れなかったのですが、この「良いことを言って」のフィードバックを探すときに、日ごろの感謝の念を込めてというやり方があります。

ここで紹介したいのは、AppreciativeInquiryという組織の良い点(問題点ではない)、可能性、あるべき姿にフォーカスした手法をフィードバックに応用した方法です。

これは米国のオハイオ州の大学教授等が1987年に提唱したモデル*11で、それまで問題解決型で「足りない点やイケてない点を洗い出す」に特化していた組織や企業の改善方法のあり方についてメスを入れました。

逆に、彼らがフォーカスしたのは組織、チームや人のポジティブな要素で「既にできていること」。

組織の可能性や新しいアイデアに着目し、問題ばかり漁るのは効果的ではないと判断したのです。

強みをさらに伸ばすステップそこで重要なのは質問の仕方です。

質問こそが、その未来の形を自然と作ってしまう、と彼らは考えました。

フィードバックへの使い方はシンプルです。

ワークショップなどで試した結果で立証済みなのですが、1.まず、日ごろ相手の行動や行為で感謝していることを考え、述べます。

今週この人と仕事して何が助かったのか?最近、一緒に仕事をして感動したことはあったか?ちょっとした気遣いでも構いません。

彼や彼女に感謝していない人などいないのです。

ただ、フィードバックのタイミングになるとそれを忘れ、弱みや改善点にすっ飛んでしまいがちなだけです。

2.次にそのポジティブな要素をさらにこうしてほしいとか、もっとしてほしいことを伝えます。

例えば、「XGさんは予定をいつも前もって入れてくれて非常に助かる。

できれば、その内容の粒度をもう一歩高めて書き込めるとさらによい」3.そのプロセスの考え方、やり方の応用を一緒に考え、可能性を探り、アイデアを膨らませます。

「そのためには、会議の内容の把握やトピックの理解が必要だから、その日のうちに書き込んでしまうと効果的」4.最後にあるべき姿を確立する。

「簡単に言うと、書き込み→詳細→その日のうちに→復習、という形を取るとベストかもしれない。

もちろん、一例だけどね」といったような形です。

経験の浅い若手にも効果的例えば、仕事のアウトプットや内容ではまだまだの方がいたとします。

でも、毎日のスケジュールの段取りや事前メールに関しては非常に良いとします。

とすると、気が利いている証拠ですよね。

そんなポジティブな要素をただ、「それはいいね」というだけではなく、「それに対し、感謝している」と述べる。

そうなると一段とそこを重点的にフォーカスできるようになります。

次に、そのスケジュール周りが得意な理由はなぜかな?と聞いて一緒に考えます。

それを仕事のアウトプットに応用できないか?スケジュール周りが得意な人はプランニングを考えている人が多いです。

前もって何をすべきかを考えている。

もう一つはテキパキ、すぐに行動を起こせる人。

スケジュールをカレンダーに入れていき、後回しにしない。

そんな利点もあるかもしれません。

そのプロセスを洗い出し、仕事の内容のアップデートやアップグレードに使います

まとめフィードバックの精度を上げる

この章では、フィードバックの精度を上げる目的で、私がこれまで実際に仕事の現場で学んだ教訓も含め、様々お伝えしました。

突き詰めるところ、フィードバックで大切なのは、信頼、インフルエンス(影響力)、コンテンツ(フィードバックの内容、ひらめき、洞察)、とデリバリー(コミュニケーションの方法やプロセス、フィードバックループ、チームラーニングも含む)だと私は思います。

しかしすべてが独立した変数ではなくて、適切に関連している複合的な関数(方程式)になります。

例えば、信頼が低い場合や仕事をしてまだ日が浅い場合はデリバリーの手法に重点を置きながら進めていくよう努力してみます。

信頼が低い状況でどれだけ心に刺さるフィードバックの内容を相手に伝えても、威力が半減し、良い結果につながりません。

インフルエンスの理解をしておくだけでも、自分に託されたツールと展開の領域が広がり、様々なフィードバックの局面で妥当な判断を下せるようになると思います。

大きなチームを率いていて、メンバーの誰かにセンシティブなフィードバックを伝えないといけない。

そんなときこそ「仲間意識」のインフルエンスレバーを引いて、一対一でのフィードバックを回避しながら上手に相手を動かせるかもしれません。

フィードバックは相手の反応を見て臨機応変に対応しなくていけません。

だからこそ、事前フィードバック(チームラーニング)やフィードバックループなどを駆使しながら、ある程度のコントロール法を自分なりに持っていることが望ましく、それが良い結果へとつながると信じています。

ただ雑談トークで終わってしまっては、お互いの貴重な時間がもったいないです。

やはりフィードバックを行う一番の動機として、「評価」ではなく「成長」へ舵取りができていることです。

そこには相手の入念な観察から始まり、アクティブリスニング、感情からアクションへとつながり、お互い、チームでさらにハイパフォーマンスを目指す姿を理想の形としている熱い思いがあってもいいのではないでしょうか。

おわりに

「人間の本性というのは活発な働きであり、それは同時にすべてのものの本性なのです。

生きている限り、私たちはなにかをします。

しかし、『私はこれをしている』『私はこれをしなければならない』『なにか特別なものを得なければならない』と考える限り、実際はなにもしていません。

(中略)なにか特別なことをしようなどとしないとき、そのときなにかしているのです。

自分のしていることになんらの考えも持たないとき、そのときなにかしているのです」*12坐禅の修行にはそんな意味を含みます、と1971年に他界された鈴木俊隆先生は、そうおっしゃいます。

以前、私はこの尊い言葉に触れたとき深く感銘を受けました。

フィードバックについて、最後に言い残すとしたら、このエッセンスだと思います。

本書を手に取って、読んでくださり、改めてありがとうございます。

フィードバックお待ちしております!(総合出版すばる舎読者の声より。

もちろんアクションアドバイスまで期待しちゃいます)。

「フィードバック」のトピックに絞って一冊と決断したとき、こんなにアイデアが膨らむとは思ってもいませんでした。

現に、執筆半ば無理だ!と投げ出しそうになったことも一度や二度ではなかったです。

本執筆中、編集担当の原田氏には、温かく、辛抱強く、エールを送っていただき誠に感謝です。

前著『47原則(TheMcKinseyEdge)』は、80%仕上げるのに9カ月ほど。

今回はみっちり、粛々、彫刻刀で削るように2年半。

長い道のりでした。

また前著は2~3時間のフライトの合間にサラッと読める本、今回はところどころ密度が濃く、読み直しが必要な部分もあったのでは、と思います。

今思い返せば、執筆中に度々もらったフィードバック、「もっとシンプルに、わかりやすく」がこのトピックの複雑性を物語っていたのでしょう。

最終形態に練り上げるまでに、たくさんのイタレーションが必要でした。

2015年末に長女を授かり、そこから加速するように忙しくなりました。

体は弱いほうではなかったのですが、睡眠不足の波と共に徐々に自分の体のコントロールを失っていき、体調を崩す頻度が増えました。

口癖になったのが、「ようし、頑張って元の状態に戻すぞ」でしたが、毎朝ランニングをしても、規則正しい食生活を送っても、あまり成果が出ずでした。

そうこうして、バタバタ闘うパパ、夫、仕事人と執筆家を演じているうちに、さらに、父のガンの告知が重なりました。

良いドクターを探し、母とともに介護に明け暮れ、精神的には負のスパイラルに陥りそうになりました(無論父はそれ以上の不安、苦痛と葛藤の日々を送りましたが)。

そうした中でも、冒頭の鈴木先生の考えに基づき、色々な弊害を着々と取っ払い、平常心で、決して楽ではなかったですが、普通に進めていく姿勢を貫き、ようやく原稿が一冊の形になりました。

この間、私を支えてくれた妻にも感謝です。

週末の子育て分担、不公平だったと思います。

でも文句一つ言わずに彼女も仕事とその他諸々を貫いてくれました。

フィードバックのアイデア、悩み、仕事の実例なども包み隠さず共有していただいた知人や仕事仲間にも謝辞を述べたいと思います。

我々は人生というリングの上で毎分毎時選手交代をしています。

その様々な役割においてすべてが成果として良いものではありませんし、コントロールできるものでもないですし、KOされることだってあります。

それでも、立ち上がることさえできれば、いつかは報われます。

フィードバックもそうやって平常心で淡々と取り組めば、着実に上達していけると信じています。

2020年3月に入り、コロナショックの恐怖に世界が晒される中、やはり医療の最前線で働く方々の行動と勇気に感動させられます。

自分の命や家族のウエルネスを犠牲にして、人類の敵と闘う。

それは映画などで観る特別に強い精神を持った人だけのパワーではないのです。

様々な医療関係や医療従事者による証言を読んでみると、それは自身の仕事に熱心に取り組み、責任感を持ち、普通に貫いている人たちなのだと気づかされます。

また逆に自然も、ウイルスも、その与えられた使命を至極当然の如くまっとうしているだけなのです。

その対岸にいる人間にとってみると、破壊力は格別であり、厄介なのですが。

そんな中、今日も、娘は、すくすく元気な姿でアニメ『忍たま乱太郎』の主題歌「勇気100%」を私の耳の鼓膜が破れる勢いで歌っています。

彼女はまだ4歳なので、コロナの実態がわかりません。

でも外出する機会が減り、保育園も行けなくなり、彼女なりに一所懸命歌に変えて、現実と向き合っているのだと私は思います。

色々と、回りまわりメビウスの輪の如く書きましたけど、自分らしいスタイルを見つけることがフィードバックにしろ、生き方にしろ重要だと思います。

フィードバックも特別なことを行っているという感覚をなるべく早く忘れる。

繰り返し行っていく。

経験値を貯める。

やがて自分に合った型が出来上がり、ある日、理想のフィードバックが、そうリーダーとしてのフィードバックが!普通にできるようになります。

では、そろそろ、始めていきましょうか。

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