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第4章心をつかんで切り返す「一流の技法」~主導権を握るための心構えとテクニック~

目次

第4章心をつかんで切り返す「一流の技法」~主導権を握るための心構えとテクニック~

一流は共感しながらクレームの話を聴く

ステップ1の「お詫びする」ことによって、お客様の心をつかんで対立関係を対話できる関係に変えた後にやるべきことは、ステップ2の「共感する」ことです。

クレームを受ける皆さんには、お客様の話を共感しながら聴いてもらいたいのです。

では、「共感しながら話を聴く」ためには、どうすればよいのか?それは、「理解をする」ということです。

お客様の話を理解しようとして、お客様の気持ちをわかろうとして下さい。

つまり、対立関係が対話できる関係になった後に、さらに良好な関係に変えるためには、お客様の〝良き理解者〟になる必要があります。

〝自分のせいではないのにクレーム対応をさせられている〟と考える方は、「はい」「え~」と簡単で単調な相づちとなり、事務的な対応になりがちです。

これでは、残念ながら、お客様の良き理解者とは言えません。

お客様の心を癒すことなどできません。

企業のコールセンターのオペレーターのなかには、クレームに慣れすぎている方も少なくなく、「はいはい」「え~え~」とテンポが単調で相づちが早くなってしまう人もいます。

こういう聴き方をしてしまうと、お客様は〝軽くあしらわれている〟と考え、さらに怒りを募らせてしまう可能性があります。

クレーム対応で、「お客様に何があったのか」をしっかり理解しようとすると、自然に相づちが、次のような言葉に変わります。

お客様に共感する「相づちの言葉」「そうだったのですね」「そんなことがございましたか」「状況がよくわかります」「お察しします」「ご心配になりますよね」「大変な思いをされたのですね」「そんなことがあると不安なお気持ちになりますよね」「お話、よく理解できました」ほかのクレーム対応を指南する本や研修などでクレーム対応法について少し勉強した人は、クレーム対応はいかにもテクニックが必須のように思われているかもしれませんが、クレーム対応はテクニックで行なうものではありません。

なぜお客様がお怒りなのかを知りたいと思うと、先ほど挙げたような相づちにならないとおかしいのです。

お客様の話を共感しながら聴いていると、お客様の言いたかったことやクレームの理由が手に取るようにわかるようになります。

また、お客様も落ち着いて話ができるようになります。

お客様と完全に対話できる関係に変わるのです。

明石家さんまさんの相手の心をつかむスゴい話の聴き方

フジテレビ系列の番組『ホンマでっか!?TV』に企業クレーム評論家として出演した際に大変驚いたことが1つあります。

それは、明石家さんまさんの話の聴き方です。

テレビで見ていると、明石家さんまさんのスゴいところと言えば、次から次に出演者にツッコミを入れ、爆笑を取りまくる姿をイメージされる方が多いと思います。

でも私が番組の収録中に最も感激したことは、さんまさんの抜群にうまい話の聴き方です。

とにかく、話を聴くときの相づちがスゴいのです。

「ほっ!」「それで!」「おっ!わかるよ」「はぁ~!なるほどな~」というように、さんまさんならではの「共感の相づちの言葉」をポンポンと連発されます。

共感の相づちの言葉をはさむことで、番組出演者を気持ち良くして、話をどんどん引き出すのです。

超大物タレントなのに、前のめりの姿勢で話を聴き、ときには「ホンマでっか!?」と大きく驚くリアクションをとったり、誰よりも大きな声で倒れ込みながら笑ったりします。

話しているこちらのほうは、とても心地良い気分になれます。

このように相手の話をしっかり聴いているからこそ、その後に爆笑を引き起こす的確なツッコミができるのだと思いました。

この本はクレーム対応の本ですので、明石家さんまさんのスゴい話はこの辺りにしたいと思いますが(笑)、さんまさんの「共感の相づちの言葉」は、クレーム対応にも間違いなく活かせると思いました。

相手の話をしっかり聴こうとするから、理解しようとするからこそ、相手と良好な関係を築けるのです。

クレーム対応は特殊な業務と思われるかもしれませんが、基本的には人と人とのコミュニケーションです。

ある意味、職場の気の合う同僚との雑談や家族との日常会話などと同じです。

人間関係を良くする要素には、共感することが大きなウエイトを占めるのです。

日本一の心理カウンセラーで、日本メンタルヘルス協会の衛藤信之先生から、「相手をわかろうとする姿勢が相手の心を開く」と教えていただいたことがあります。

お客様の良き理解者になるためにも、共感しながら話をしっかり聴いてお客様の心をつかみ、失った信頼を取り戻すきっかけにして下さい。

「共感の言葉」のはずなのに!ドツボにはまるNGワード

クレーム対応で、対応者本人は良かれと思って、よく使っている言葉のなかに、NGワードがいくつか存在します。

これを使ってしまうと、お客様をさらに怒らせてしまう代表的なNGワード、それは次の2つです。

最悪のNGワード「おっしゃるとおりです」「ごもっともでございます」あらゆる業種で、クレーム対応者がこのような言葉を使っていると思います。

私の取引先でもクレーム対応の現場で頻繁に使用されています。

しかし、この2つの言葉こそ、クレーム対応において最悪のNGワードです。

なぜダメなのか?これらは共感・理解ではなく、「同調を表す言葉」だからです。

同調とは、同意や賛成を表す言葉です。

つまり、「おっしゃるとおりです」「ごもっともでございます」は、お客様の申し出や指摘に対して「はいはい。

お客様の言うとおり!」「そのとおりです。

大賛成です!」と同調してしまっているためダメなのです。

この2つの言葉をクレーム対応で連発してしまったりすると、「そうか!やっぱり私が言っていることが正しかった!!」「悪いのはこの会社だった!」とお客様は怒りのボルテージを上げていってしまいます。

怒りの感情を増幅させたお客様はその後、対応者に対して、「そんな対応では私の気が済まない」「謝って済む問題ではないぞ!」と、本当は謝って済む問題まで、そう言うようになってしまいます。

お気づきになられたかもしれませんが、実は同調の言葉とは、「全面謝罪」しているのと同じなのです。

第3章で「全面的に謝るのではなく、部分的に限定付き謝罪を使う」ことをおススメしましたが、「おっしゃるとおりです」「ごもっともでございます」という言葉を使うと、全面謝罪になってしまいます。

この、全面的に非を認めたかのような対応では、お客様に顧客心理が働いて、「自分のほうが対応者(企業)より立場が上だ」と考えて、一生懸命対応している対応者のことを見下すようになります。

クレーム対応で最も怖い、一番避けたいお客様との関係性は、対立する関係以上に「上下関係」をつくってしまうことです。

上下関係をつくってしまうと、お客様は100%、自分の立場が上であることを全面に出しながら、自分の要望どおりの解決策が出てくるまで許そうとしません。

これでは、ク

レーム対応がいつまで経っても終わりません。

「すべての非を認めて、そんなに悪いと思っているのなら、この責任を一体どう取るつもりか!?」と、お客様は余計に強気な態度に出てくるのです。

お客様との関係は「対等」で大丈夫!

私は、クレーム対応のお客様との関係性には上も下もない、と思っています。

意外だと思われるかもしれませんが、クレーム対応のシーンでもお客様との関係は「対等」でよいと考えています。

ではなぜ、対等でよいのか?それは、クレーム対応者は「お客様の良き理解者」であるべきだからです。

自分たちがわざとお客様に損失を与えようとしたことが原因のトラブルなら、それは犯罪です。

その場合は加害者になるので、お客様より立場が下になって罪を償う必要があります。

でも、クレームを受けたといえども、何も犯罪を行なったわけではないはずです。

お客様のために一生懸命やっていたにもかかわらず、「自分たちの説明に不足があった」「気をつけてはいたけれど、お客様にご満足いただけない対応だった」「もう少し配慮ができたかもしれないけれど、十分にできなかった」──。

このようなことが原因でクレームは発生します。

だからこそ、お客様との関係は対等でいいのです。

私がクレーム対応を2000件以上行なってきてたどり着いた結論があります。

それは、お客様は目の前の問題を解決してほしいと思っていますが、それ以上に「わかってほしい」「理解してほしい」からクレームを言うということです。

クレーム対応のやり方がわからなかったころの私は、お客様は目の前の問題を解決してほしいからクレームを言うものだと思い込んでいました。

だから、解決策を出すことばかりを急いでいました。

また、とにかく早く終わらせよう、早く許してもらおう、と考えていた時期もありました。

でも、解決策を早く出せば出すほど、お客様からこう言われました。

「アンタは何もわかっていない」「あなたではダメ!話のわかる人に代わって頂戴!!」──。

目指すべきは、「この人はわかってくれた」「私の味方だ!」と、お客様からそう思ってもらえる対応者になることだったのです。

クレームの裏側にはお客様の事情や背景が隠れている

クレームはなぜ起きるのか?それは、お客様の大きな期待があったからだと前で述べました。

「この会社にお願いしたら、こうなるだろうと思っていた」「便利で快適な生活になるだろうと信じていた」「これくらいはきちんとやってくれるだろう」という期待をお客様は持っていたのです。

でも実際、期待していたものと全然違うと、「ガッカリだよ!」「残念だよ!」「期待外れだよ!」となります。

このお客様の期待と現実のギャップ(落差)がクレームの正体です。

このギャップに失望して悲しんでいるお客様の気持ちを理解しなければいけません。

お客様の失望感を理解しようとして、しっかり共感しながら話を聴いていると気づくことがあります。

それは、クレームはお客様ならではの事情や、対応者側(企業側)が想像もしなかったような背景、さらには、その商品やサービスを手に入れてお客様はどうなりたかったのか、つまりお客様の「なりたかった姿」です。

これらをしっかり理解することが大切です。

「イルカが思ったより上に飛ばなかった……」

ここで紹介するお話は、ある水族館のイルカショーへのクレームの事例です。

ご家族で来館されたお客様から、その水族館の公式サイトに「イルカショーのイルカが思ったより上に飛ばなかった……。

イルカのやる気がなかった」という内容の書き込みがあり、この書き込みへの対応に関して、水族館のクレーム担当者から相談を受けました。

そこで、第3章でも説明したウェブやSNS上においてお客様からの指摘(申し出)の主旨がわからない場合の対応法として、次のように返信回答してもらいました。

意味不明な投稿に対する対応例「ご指摘、誠にありがとうございます。

もう少し詳しくお話を聴かせていだきたく存じます。

お手数ですが、当社お客様相談室0120○○○○○○○○までお電話いただきましたら、私〇〇が担当させていただきます。

ご連絡、心よりお待ち申し上げております」この返信回答の翌日、書き込みをされたお客様(ご家族のお母さん)から担当者宛てに電話が入りました。

その担当者がお客様から話を聴いて、「イルカが思ったより上に飛ばなかった」という書き込みをされた理由がすぐにわかりました。

このお客様は、イルカが見事なジャンプ力で華麗に飛んでいるシーンを映した、その水族館のテレビCMを見たお子様から、「夏休みにはイルカショーを見たい」とせがまれて、家族4人でその水族館に行くことになったようでした。

クルマで水族館に向かっている途中の家族同士の会話で「イルカがあんなに高く飛ぶなら着水したときに、ものすごく水が飛んできて、服とかビショビショに濡れるんじゃない!?」と盛り上がっていたご様子。

でも実際には、テレビCMのイメージとは違って、期待していたほどの高さまでイルカが飛ぶことはなかった──。

そのため、お子様がとてもガッカリされて帰宅することになった、というのがクレームの主旨だったのです。

このクレームには、お客様の事情や背景、そしてお客様の「なりたかった姿」がやはり存在していたのです。

これらを聴いた担当者は、さらに共感しながら、次のような言葉を投げかけました。

共感の言葉「ご家族の皆様で楽しみにされていたのに、ご期待に応えられなかったのですね」「お子様に喜んでもらいたいと、わざわざお越しいただいていたのですよね」「私も子供がおりますのでお気持ち、痛いほどよくわかります。

私もお話を聴いてとても悔しいです」お客様の話に共感して、クレームを言ってきたお客様の事情と背景を理解できたからこそ伝えることができた、素晴らしい「共感の言葉」ばかりでした。

この共感の言葉によって、お客様もわかって下さったようで、その後は、この水族館のペンギンが可愛かったこととか、見たこともない深海魚にお子様が喜んでいたことなど、その水族館で楽しむことができた話もしてもらえて、最後は「また行きます」とお客様が明るくおっしゃって電話を切られたそうです。

この事例の対応はまさに、クレーム客をファンに変えてしまう、「一流のクレーム対応」と言えます。

クレーム対応に必須の「理解しようとするマインド」

クレーム対応は、テクニックだけではうまくいきません。

「私はクレーム対応には自信があります」と言っている人に限って、余計なことをお客様に言って対応に失敗しています。

「自分が同じことをされたらどう思うか?」というお客様視点のマインドが必要です。

お客様の怒りを笑顔に変えるためには、お客様と同じ気持ちになる必要があります。

実は、クレーム対応で100%お客様の要望どおりの解決策を出すのは難しいものです。

先ほどの例のイルカが高く飛ばなかったことに対する具体的な解決策というものはありませんし、家族の大切な時間はもう取り戻せません。

だからこそ、クレームになった背景を読み解いてそこに共感する、お客様の気持ちに寄り添うことが大切なのです。

クレーム対応は解決策で勝負しない。

どれだけわかり合えるかが重要です。

クレームを怖がったりしないで、きちんと話を聴こうとする姿勢をお客様に示せば、きっと失った信頼を取り戻すことができます。

怖いと思いながら、震えながらでも一歩踏み出すことが、クレーム対応に必要な心構えです。

どんなときでも部分的なら共感はできる

お客様からのクレームの内容に対してすべてを共感するのは、「ちょっと、やりすぎなのでは?」と思う方もいらっしゃると思います。

では、そのような場合はどうすればよいのか?どう考えても常識的におかしいと思うような申し出や指摘に対する共感の方法として、「部分的共感」をおススメしています。

「おかしいのでは?」「ちょっと無理があるのでは?」とツッコミたくなるような指摘を受けた場合はこう切り返して下さい。

部分的共感の言葉「お客様がそういうお気持ちでいらっしゃること自体、よく理解できます」「そういうお考えでいらっしゃる、ということ自体、私もわかります」ポイントは「自体」という言葉です。

自分はそう思わないかもしれないようなことでも、「そうは思いません」「お客様、お言葉ですが……」と反論するよりは部分的にでも共感するコミュニケーションをとるようにして下さい。

「お客様がそういう気持ちでいらっしゃるということ自体は理解できます」などのような言葉を使います。

正確に言うと、共感というより「協調」と捉えていただいても構いません。

クレーム対応をしていると、どうしても対応者側が考えることと異なる考えを持ったお客様はいらっしゃいます。

そのようなお客様には「それは違います」と反論するより、全面的に共感しなくても、部分的共感によってお客様に歩み寄って良い関係を築こうと考えていただきたいのです。

これは、今でこそ笑い話になりましたが、私の講演に参加された方から、「谷さんが今まで対応してきて、一番怖かったクレームは何ですか?」と質問されたときに必ずお話しする仰天エピソードです。

お客様相談室時代にホテルや旅館へのクレーム担当をしていたときの体験なのですが、何だと思いますか?怖いお客様から呼び出されて5時間軟禁されたこと?興奮したお客様から胸ぐらをつかまれて殴られそうになったこと?これらも実際、体験しましたが(笑)、もっと怖かったクレームがあります。

それは、「旅館の露天風呂がぬるい」というクレームです。

露天風呂から見える景色も絶景で評判の良い、人気の宿にお盆時期に宿泊された年輩の男性のお客様から、「今、露天風呂に行ってきたけど、やけにお湯がぬるい。

風邪をひきそうだ」というご指摘がありました。

夜10時過ぎで旅館のフロントに誰もいなかったようで、お泊まりのお部屋から直接、私の会社に電話がかかってきました。

かなりお酒に酔っていたご様子で口調もとても乱暴だ

ったことを記憶しています。

実は、この旅館のお風呂は源泉かけ流しで、むしろお湯が熱いのです。

「お湯が熱すぎて長く浸かれなかった」とアンケートに書かれることが多い露天風呂なのに、このお客様のご指摘は、真逆の「ぬるい」「風邪をひきそうだ!」でした。

お客様の話を慎重に聴き進めていくうちに、私は途中でとんでもないことに気づきました。

それは、お客様が「ぬるい」と感じたのは露天風呂ではなかったのです!この旅館の「中庭にある池」でした(笑)。

ぬるいどころか冷たかったはずです。

大きな錦鯉も泳いでいたでしょう。

「何でやねん、このお客さん、酔っていても普通はそれぐらい気づくやろ……(心の声・関西弁バージョン)」そんなツッコミの言葉が頭の中でぐるぐる回りました。

お客様のこの大きな勘違いを指摘してよいものだろうか?指摘しても恥をかかせるだけだな……、どう伝えようか必死に考えて思わず出てきたのが、次の言葉です。

OK対応例私「楽しみにされていた露天風呂でご期待に応えられなかったのですね。

お湯がぬるいとそう感じられたこと自体、私も残念ですし、お客様のお気持ち、よく理解できます」お客様「わかってくれたらそれでいい。

このままだと風邪をひくからもう寝る。

明日、支配人にお前からちゃんと言っとけよ!」こうして、電話は無事に切れました。

部分的共感には「お客様のプライドを傷つけない」というメリットがあることを、身をもって実感しました。

「それって池ですよ。

お客さん!それは風邪をひきますよ!!」と言ってしまったらどうなっていたか?今、想像するだけでも背筋が寒くなります(笑)。

共感はしても同情はしない

クレーム対応では、様々な事情を抱えたお客様がいます。

そして、先ほど、どんなときでも、(部分的なら)共感できると述べました。

でも、決して同情はしないで下さい。

特にご家族の事情や病気などの個人的な事情を全面に押し出してくるようなクレームを言うお客様に深入りしてはいけません。

私自身も、次のようなクレームの相談を受けたことがあります。

産地直送の通販会社で商品の誤配送があり、コールセンターへクレームが入りました。

その際にお客様から、「震災のときに家がなくなった。

こんな落ち込んでいるときに商品を間違って送ってこられて、さらに嫌な気持ちになりました。

この気持ち、わかりますか?」と一方的に、お客様自身の生活の事情を訴えてくるクレームでした。

家がなくなったことは大変お気の毒なことですし、それに関してはお客様の気持ちをお察しすることはできます。

ただ、家がなくなったことと、商品を誤配送してしまってご不便をおかけしたことはまったく別問題です。

このお客様の言葉に引きずられて、同情してしまった対応者が「このお客様、とても気の毒なのです。

サービスで何か(おまけを)お付けすることはできないでしょうか?」と、そのコールセンターの責任者に相談してきたのです。

会社の判断として、誤配送が理由でお届けが遅れてしまったことに対してのお詫びの意味でサービスを付加することは考えられますが、お客様の訴えの言葉に同情しすぎてしまうのには賛成できません。

お客様が抱えている事情やクレームの背景を理解することは重要だと説明してきましたが、それとともに必要なことは、メモを取って入手したクレームの事実と直接的な背景のみに目を向けるということで、ここからブレてはいけません。

事実確認と要望確認のポイント

ここからは、ステップ3の「事実確認と要望確認を行なう」について説明します。

メモを取って共感しながらお客様の話を聴く過程において、確認しておきたいポイントがあります。

大きく分けて、次の4つです。

「従業員の対応が良くなかった」とクレームが入った場合の確認事項(1)いつ、どこで(2)何があったのか〈事実〉(3)何に対して怒っているのか(4)どうしたいのか〈要望〉仮に店舗で、突然のクレームが発生して、メモを取ることができない状態になったとしても、この4つのポイントは押さえるようにして下さい。

自分の解釈でメモを残すのではなく、お客様の言葉をそのまま記録するようにして下さい。

最近では、次に示したようなクレーム対応用の所定のフォーマット用紙を活用して事実と要望の確認をしている企業も増えています。

事実と要望の確認をしていると、対応するべきポイントが見えるようになります。

さらに、メモも取っていれば、お客様のクレーム内容を〝見える化〟できます。

例えば、「商品を使ってケガをしたので、解約したい」というクレームが入った場合、メモをしっかり取って事実確認ができていないと、次のように最後の「解約したい」という言葉に引っ張られてしまいます。

アウトな対応例お客様「おたくで買った商品を使ってケガをしたので、解約したい」対応者「お客様、この商品につきましては6か月間解約できないので、違約金が発生してしまいます」お客様「お前のところの商品でケガをしたんだぞ!違約金なんか知るか!!」これは実際にあったケースです。

このような対応をしてしまったことで、その後、「お前ではダメだ!上司を出せ!!」と大きなクレームに発展してしまいました。

このケースでも、もし事実確認がしっかりできていれば、お客様がケガをしたことと、お客様が商品を解約したい、という2つの申し出があったことがわかります。

つまり、クレームの原因になった事実は、「商品を使ってケガをした」ことです。

その結果、お客様の要望として「商品を解約したい」という申し出になったという因果関係がわかるわけです。

「なぜケガをされたのか?」「ケガの具合は今一体どんな状況なのか?」という事実にフォーカスして共感の言葉を投げていけば、話を詳しく聴けるようになります。

効果的に質問する

お客様の話をメモしながら事実と要望の確認をするときのポイントとして、次のような対話法を身につけると、お客様の言いたいことがよくわかります。

お客様の話を確認する対話法「〇〇ということで宜しいでしょうか?」「○○ということですね」(例)対応者「私どもの対応者が○○と言ったということでしょうか?」お客様「そうです!」選択質問を使って、お客様の話を確認する対話法「お客様がおっしゃりたいのは○○ですか、それとも〇〇ですか?」お客様の話を要約する対話法「つまり、〇〇ということで間違いないでしょうか?」(例)対応者「結局、1時間お待ちいただいたということで間違いないでしょうか?」お客様「そういうことです」お客様が何を言いたいのかがわからない場合の対話法「お客様が一番お困りになっているのは、何でしょうか?」

そもそも、お客様はどうしたかったのか?

お客様の要望、つまり、お客様がどうしたいのかについては、お客様から直接お申し出にならないケースもありますが、話を丁寧に聴いていくと自分たちが何をするべきかが自然にわかってきます。

お客様の要望は大きく分けて2つあります。

(1)「苦情として、とにかくひと言、言いたかった」「わかってほしかった」場合(2)具体的な解決策が必要な場合(1)「苦情として、とにかくひと言、言いたかった」「わかってほしかった」場合この場合は、お客様から具体的な要望は出てこないのですが、(おたくらのせいで)「嫌な気持ちになった」「大変だった」「不安な気持ちにさせられた」「心配させられた」ということを、お客様はただ伝えたかったのです。

このようなケースにおける事実と要望の確認メモの取り方は、次の例のとおりです。

①いつ、どこで〇月〇日の午後に来店された際②何があったのか〈事実〉レジ担当の従業員の対応が悪かった③何に対して怒っているのか商品交換時にとても面倒くさそうな対応だった。

いつも使っているのに、その態度にムカついた④どうしたいのか〈要望〉こんなことがあったら困る。

不満を伝えたかった(2)具体的な解決策が必要な場合お客様から具体的な要求があった場合は、交換・返金・原状回復やアフターフォローでの解決を図れるかどうかを検討するようにしましょう。

このケースにおける事実と要望の確認メモの取り方は、次の例のとおりです。

①いつ、どこで〇月〇日の午後に電話が入った②何があったのか〈事実〉昨日買ったスーツのボタンが取れていた③何に対して怒っているのか不良品をなぜ販売する。

普通は気づくだろう。

今日、着ていくつもりだったのにガッカリした④どうしたいのか〈要望〉商品をすぐ交換してほしい。

家に届けに来い(1)(2)のどちらの場合も、事実と要望の確認ができたら、改めてお客様の気持ちに寄り添う言葉を次のように投げかけます。

その際、「お詫びの言葉」と「共感の言葉」を使うようにして下さい。

お詫びの言葉と共感の言葉「いつもご利用いただいておりますのに、大変失礼な対応があったということがよくわかりました。

心よりお詫び申し上げます」

「大変な思いをされたということ、よく理解できました。

そんなことがあると、ご心配になりますよね」「お客様を不安なお気持ちにさせてしまいましたこと、改めてお詫びいたします」「ちゃんと自分の話を聴いてくれてわかってくれた」「逃げずに正直に非を認めてくれた」と思ってもらうためにも、このような言葉をお客様にしっかり伝えて下さい。

先日、新しくパソコンを買い替えたのですが、1週間くらい経過したころに充電ができないことがわかり、すぐに購入した家電量販店に行ったことがありました。

修理コーナーの担当者の方が私の一通りの説明を共感しながら聴いてくれて事実確認と要望確認をした後の言葉がこうでした。

気づかいの言葉「せっかくお買い上げいただき、これからというときに大変ご不便をおかけしました。

お仕事に支障はきたしませんでしたか?」正直に言えば、仕事には支障をきたしていました。

「不良品をつかまされた」と腹を立てていました。

でも、この「気づかいの言葉」に「この人、ちゃんとわかってくれている」と嬉しくなりました。

思わぬ当たりくじでも引いたような気分になったことを覚えています。

事実確認と要望確認ができた後のお客様の期待を超えるような「気づかいの言葉」には、それだけでお客様の心を癒す効果があるのです。

どんな解決策を出すかよりも、どう出すか

ステップ4の「解決策を提示する」に関しては、お客様の了承を得てから解決策を出すようにしましょう。

お客様の話がすべて終わったタイミングで、次のような「了承を得るための言葉」を投げかけて下さい。

了承を得るための言葉対応者「お話、よくわかりました。

私からこのまま話をしても宜しいでしょうか?」お客様「あぁ、いいよ」このように、「了承を得るための言葉」の後に、お客様から「了承の言葉」を言ってもらって、はじめて自分たちの言い分や解決策に関して話を進めるようにして下さい。

クレームの種別に分けて、「了承を得るための言葉」の例を挙げておきます。

(1)「苦情として、とにかくひと言、言いたかった」「わかってほしかった」場合了承を得るための言葉「ご指摘いただき、私どもに至らない点がありましたことを心よりお詫び申し上げます。

お客様からのご指摘を社内でも共有して従業員の接客力の向上に努めてまいります。

ご了承いただけますでしょうか?」(2)具体的な解決策が必要な場合了承を得るための言葉「このたびは、大変お手数をおかけしましたことを深くお詫びいたします。

このようなことになり、お恥ずかしい限りです。

この後、お客様のご自宅に商品をお届けさせていただきたく存じます。

いかがでございましょうか?」解決策を伝えるときのポイントは、解決策を提示した後にも、「了承を得るための言葉」を入れて、お客様から了承をしっかりもらうことです。

つまり、解決策提示の際には、①解決策を出す前と、②解決策を伝えた後の2回、お客様から了承をもらうことになります。

「従業員の接客力向上に努めてまいります」「ご自宅に商品をお届けさせていただきたく存じます」というように、一方的に言い切る表現は避けて下さい。

「ご了承いただけますでしょうか」「いかがでございましょうか」と伺いを立てて、お客様から「わかりました」「じゃあ、そうして下さい」と了承を得ることを忘れずに必ず実践して下さい。

説得ではなく納得してもらう

私が代表理事を務める一般社団法人日本クレーム対応協会では、「クレーム・コンサルタント養成講座」という、企業内でのクレーム対応の専門家を養成する講座を開講しています。

受講者の方には、いつも事前アンケートとしてクレーム対応の経験だけでなく、自分自身がどんなクレームを言ったことがあるのかを質問しています。

そのアンケートの目的は、逆の立場に立ってクレームを言うお客様の気持ちを理解していただきたいからです。

このアンケートで興味深い回答結果が出ています。

次のアンケート結果にもあるように、企業のクレーム対応で腹が立った理由の第1位が(クレームを言っているのに)「最初に謝罪がなかった」、第2位が「ちゃんと話を聴かない」でした。

まさにクレーム対応はオープニングの限定付き謝罪と、共感しながら話を聴くことが大切だと言い続けてきた私にとっては、背中を押してくれるようなアンケート結果でした。

また驚いたことに、「クレーム対応では最初に謝ってはいけない」と考えている企業の方ほど、「最初に謝罪がなかった」と回答されています。

本当に不思議なものです。

そして第3位には、「(対応者側から)解決策を一方的に押し付けられた」が入ります。

一方的に企業側の都合を押し付けられると、お客様は自分が軽視された気がして不快になるということです。

解決策を伝えた後、了承を得ずにクレーム対応をクロージングしてしまうと、その場ではお客様が納得したかのような顔をされてお帰りになったとしても、その後に押し付けられたことに怒りが込み上がってきて、その会社の本社やお客様相談室に電話をかけて再度クレームを言うケースが少なくありません。

恥ずかしながら、私はお客様相談室の責任者時代に、「お客様対応が無事完了しました」といった部下からの報告を真に受けて安心していると、後日、そのクレームを言ってきたお客様と思われる方から「責任者を出して!」との申し出があり、「自分たちの都合を押し付ける事務的で冷たい対応でしたけど、どんな従業員教育をされているのですか!」などと、お叱りを受けることがよくありました。

それは、最初の了承をもらうことはできていても、2回目(解決策提示後)の了承が得られていなかったためです。

クレーム対応のクロージングでは、お客様を説得するのではなく、お客様に納得してもらうことが重要です。

そして、お客様から了承を得たら、「ご了承いただき、ありがとうございます」というように、感謝の気持ちを伝えることを忘れないようにしたいものです。

「金返せ!」と言われたらどうする?

お客様の要望で「お金を返せ!」というクレームにはどう対応するのか?その答えは1つです。

判断基準を決めておくということです。

その判断基準は、お客様との約束を果たすことができたかどうかを基準として考えて下さい。

契約の内容どおりだったかどうか、契約が履行されたか否かで判断するのが良いと思います。

お客様に言われたから、お金を返すのではないということです。

例えば、ネット通販でお客様から注文を受けて発送した桃10個のうち、3個が腐っていた場合、これはお客様との約束を果たしていません。

契約不履行です。

本来、10個分の代金をいただいているにもかかわらず、7個しか提供できていないことになるので、その差額を返金するか、あるいは新たに3個をお届けするかという解決策をお客様に提示することになります。

一方、お届けした桃10個が「美味しくなかった」「色味が悪かった」というクレームに関しては、10個提供するというお客様との契約(約束)は履行されています。

この場合、お口に合わなかった、色合いにご満足いただけなかったことに対する謝罪にとどめ、返金までする必要はないと考えるのが妥当です。

クレームで従業員が怒られるムダな時間を使うくらいなら、お金を返したほうが手っ取り早いと考えている会社も少なくないのが現状です。

これは、ダメなクレーム対応と言わざるをえません。

あるドラッグストアでお客様から「花粉症の薬の効果がなかった。

何の役にも立たなかった」と大声でまくし立てられたことで、恐怖心にかられ、すぐに返金の手続きをしようとした薬剤師さんがいました。

ところが、そのような対応では、「アンタは何もわかってない。

金で解決しようとしやがって!」と、お客様はさらにお怒りになります。

このようなケースでは、お客様はお金を返してほしいと思う以上に、薬の効果がなかったことにガッカリしていると冷静に判断することが大切です。

お客様は目の痒みと鼻水を止めてほしい、花粉症で仕事にならないのが悩みで薬の効果に期待していたのです。

お客様の要望はここにあるわけです。

このお客様の要望に応え、あるいはお客様の抱えている問題を解消するために、この薬はあまり効き目がなかったかもしれないので、目薬や花粉を完全防備できるマスクを紹介したり、少しでも部屋に花粉を持ち込まない方法を提案したりするなど、プロとしての解決策を出すことができれば理想的です。

これこそが薬剤師に求められることでしょう。

このとき、お客様はなぜクレームを言ってきたのか(事実)、何を求めていたのか(要

望)を確認して、解決策を出すという軸からズレないようにして下さい。

「できること」と「できないこと」を明確にする

クレーム対応でお客様の話を聴くときは、過大要求(不当要求)や理不尽な要求と思われるものが出てくることを想定しておいて下さい。

理不尽なことを言われたと感じても、悪質クレームなのではないかと身構える必要はありません。

自分たちがお客様に対して「できること」と「できないこと」を明確にすることを意識して下さい。

実例を紹介しながら、具体的に説明しましょう。

大型スーパーで起きた60代男性からのクレーム(電話)のケース

「昨日、おたくで買った鍋の取っ手のネジがはみ出していて、手をケガして病院で2針縫った。

治療費と慰謝料を合わせて3万円払え!もし、ウチの孫がケガをしたらどうしてくれる!この鍋は不良品だから、ちゃんとした高級鍋と交換しろ!」皆さんなら、このクレームに対して、どのような解決策を提示しますか?このクレームの場合、お客様からの要求は、「治療費と慰謝料を合わせて3万円払え!」と、「鍋が不良品だから、ちゃんとした高級鍋と交換しろ!」という2つです。

まず1つ目の要求「……3万円払え!」について、お客様のケガや食料品での体調不良などの健康危害に関するルールは必ず事前に決めておく必要があります。

このケースのように病院で2針縫ったということが事実であれば、「お客様のおケガの状況はいかがでしょうか?」と、労りの言葉を投げかけたうえで、「病院での診断書をご用意いただければ治療費をお支払いする」という対応でよいと思います。

ただ、慰謝料について言えば、お客様本人しかわからない精神的な苦痛に対してはお金を払わずに、嫌な気持ちを与えてしまったことに謝罪する、という対応でよいと思います。

2つ目の要求「……高級鍋に交換しろ!」については、過大要求だと判断してよいでしょう。

確かにお客様自身がケガをされ、お孫さんのことを心配される気持ちもよくわかりますが、高級鍋への交換は不当な要求に当たります。

このケースの解決策としては、高級鍋への交換は行なわないで、返品、もしくは同じ商品との交換を提示することになります。

ここがPOINT「できること」と「できないこと」を明確にする〇できること………治療費の支払いと商品の交換・返品×できないこと……慰謝料の支払いと高級鍋への交換

このケースの解決策提示の例(実際に提示した内容)「お買い上げいただきましたお鍋は一度回収させていただきたく存じます。

おケガに関しましては、病院での診断書をお預かりできましたら、治療費を早急にお支払いさせていただきます。

慰謝料のお支払いと高級鍋への交換につきましては、お客様のご要望に応えられず心苦しい限りですが、今回お買い上げいただいたお鍋と同じものに交換させていただくか、返品の対応をさせていただけましたら幸いです。

ご了承いただけますでしょうか」この解決策提示の例では、慰謝料の支払いと高級鍋への交換というお客様の要望に応えられないことを伝えてから、最後に交換・返品の対応が可能であることを伝えています。

このように、「できないこと」を先に伝えて、「できること」で最後を締めるようにすると、お客様に前向きな印象が残りやすくなります。

まさしく、一流のクレーム対応の技法だと言えます。

補足ですが、理不尽だと感じられるクレームには、「もし、ウチの孫がケガをしたらどうしてくれる!」などのように、「もし、〇〇だったら……」というまだ起こっていない仮定の話を持ち出して不平や不満を訴える言葉が出てくることがあります。

実は、この一見、理不尽に感じる言葉にこそ、お客様の最大のお怒りポイント、クレームになった大きな原因が表れているのです。

この対応策として、先ほどの例で言えば、次のように仮定の話に対しても「共感の言葉」を投げかけることをおススメします。

共感の言葉「お孫さんのことを考えますと、お客様がそうご心配になるお気持ち、とてもよくわかります」特に、「できること」と、「できないこと」が混在している場合などは、それを配慮して、共感の言葉を投げかけてから解決策を伝えるのが効果的です。

どうしても何もできないときの伝え方

当然ですが、お客様のクレームの要望内容によっては、すべて対応できない、つまり解決策が存在しないケースもあります。

その場合でも、簡単に「できない」とは言わずに、お客様に、その現実をどう伝えるかを慎重に検討したいものです。

解決策がない場合の対応例(A)「大変申し訳ございませんが、高級品への交換はいたしかねます」(B)「高級品への交換はいたしかねます。

大変申し訳ございません」(A)の伝え方でもNGではありませんが、(B)の伝え方のほうが謝罪の気持ちと気づかいの気持ちがお客様に伝わりやすいと私は考えています。

たとえ、お客様から理不尽であったり、非現実的な要求があったとしても、できないことが強調されるより、「要望に応えられず申し訳ない」という気持ちを強調した(謝罪や気づかいの言葉で終わる)ほうが、お客様は解決策がないという現実を受け入れやすくなります。

一流は知っている、怒りを笑顔に変える「3つのツボ」

お客様の怒りを笑顔に変えるために、私は解決策を提示するときに、次の「3つのツボ」を押さえて、解決策を段階的に考えるようにしていました。

(1)お客様の話を聴いて、やらないといけないことや、要望されていることを確認する(2)そのうえで、「できること」と「できないこと」が何かを明確にして、解決策を提示する(3)さらに、お客様から要望されていなくてもできること、お客様にやって差し上げたいこと、お客様に喜ばれることをする(1)と(2)については、すでに説明しましたので、ここでは省略します。

ポイントは(3)です。

お客様から直接要望されなくても、自分たちがプロとしてできることをやる。

お客様に対して「尽力する」「支援する」という考え方やマインドを持たなければいけません。

私のクライアント先で、「尽力する」「支援する」ことを見事に実現している会社の事例を2つ紹介します。

私がアドバイスしている解決策提示の方法を、実際にクレーム対応マニュアルとして導入していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

ウェブ予約専門の旅行会社のケース

「泊まりたいホテルの部屋を予約したいけれど、空いている部屋がない」というクレームに対して、先ほどの「3つのツボ」に当てはめて考えると、次の手順になります。

(1)お客様の要望→希望のホテルの部屋を予約できるようにしてほしい!(2)できないこと→すでに部屋は満室状態で予約のお手伝いができないできること→近隣の空室があるホテルを探し、代案として提案する(3)お客様に喜ばれること→一度、お客様の第一希望のホテルに直接電話を入れて、空きがないか、急なキャンセルが発生していないかをダメ元でも確認するこの旅行会社では、仮に(2)の近隣のホテルの部屋の予約が取れない場合は、ダメ元でも、必ずお客様の第一希望のホテルに直接連絡して、空室を確認する(3)の対応を実践しています。

実は、ネットでの予約状況は最新の情報に更新されていない場合が多いので、そこを見越して、手間がかかっても、必ずお客様のために空室状況を確認しています。

仮に、電話で確認して部屋が予約できなくても、その姿勢にお客様は「自分のために動いてくれた」と感激され、対応に満足してもらえます。

外資系包丁メーカーのケース

「最近買った包丁が全然切れない」というクレームでは、「3つのツボ」を押さえて考えると、次のような手順を踏むことになります。

(1)お客様の要望→不良品ではないか!商品をすぐ交換してほしい!(2)できないこと→使用済の包丁に関しては交換や返品を受け付けていないできること→その包丁がよく切れる使い方を電話で説明する(3)お客様に喜ばれること→ほかの会社の商品だが、その包丁メーカーの取引先の飲食店で評判が高い研ぎ石との併用を提案するこの包丁メーカーでよくあるクレームは、新品の包丁が「切れにくい」というものです。

海外製ということもあり、少しコツをつかまないとうまく切れないようで、それがお客様に「切れにくい」と切れ味を悪く感じさせる原因の1つになっていました。

そこで、その包丁メーカーのホームページ上では、よく切れる使い方を情報ページで公開して、そのページを案内しながら実際によく切れる使い方を電話で伝えるためのマニュアルも用意したところ、代表電話に誰が出ても同じ対応ができるようになりました。

面白いのが、(3)の、他社の研ぎ石を使えば包丁の切れ味がさらに持続する、という他社商品との併用を提案しているところです。

「あの有名な銀座の『〇〇鮨』の板前さんも使っているそうです」などの情報を加えたところ、お客様にとても好評だということです。

市役所や区役所でよくある残念な対応

最近、市役所や区役所など行政機関の職員の方を対象に、クレーム対応の研修の講師を数多く担当させてもらっています。

行政機関は法的な制約もあり、業務の都合上、できないこと、やってはいけないことが少なくありません。

そのような状況と事情はよくわかるのですが、住民に対して、「それは無理です」「決まりですので……」「期日をお守り下さい!」と一方的に言い切る職員の方が残念ながら多いように感じます。

しかし、どんな事情があるにしても、住民の声に耳を傾け、何かできることはないかを少しでも考えることはできるはずだと私は思っています。

仮に、申請期限を過ぎた書類の申請者に対し、「申請の期限が昨日までなので、対応できません」とあっさり突っぱねることは、誰でもできます。

でも、このような対応をされた住民のほとんどは、「私たちの税金で給料をもらっているくせに、何だその態度は!」と怒るでしょう。

怒らなかったとしても、嫌な気持ちになることは間違いありません。

そうならないためにも一度、住民の話をしっかり聴いてほしいのです。

期限切れの申請をしてきた住民は、期限が間に合わなくて焦っているのです。

期限が過ぎているのは本人もわかっています。

でも、「何とかならないのか!?」という気持ちで来所しています。

もしかしたら、仕事を休んで朝一番で役所に来たのかもしれません。

「なぜ、今日になったのか?」「いつ気づいたのか?」を聴くことぐらいはできるのではないでしょうか。

そうすれば、その住民の怒りが鎮まり、自分の非に気づいてもらえます。

対応者側(行政機関側)に非がないケースの場合、少し時間がかかっても対話をしっかりすることで、相手に不備があったことを理解してもらえます。

その住民が忙しくて期限があることに気づかなかったとか、期限を忘れてしまっていたという事実があるなら、その住民の落ち度を指摘するのではなく、改めてその落ち度を認識してもらうための対話をしていくことが重要です。

そのうえで、「次はどうするか?」の解決策を相手(住民)と一緒になって考えていく姿勢を見せて下さい。

できることを全力でやればクレーム客がファンに変わる

過去に私自身がクレームを言ったときの体験談です。

友人の子供(9歳の男の子)の誕生日プレゼントにおもちゃのサッカーゲームをプレゼントしたことがありました。

ただ、このおもちゃの一部に不具合があり、説明書どおりに動きませんでした。

それで、おもちゃメーカーにクレームを言いました。

そのとき、「こんな不良品は困ります。

すぐに交換して下さい」と要望を伝えたものの、このサッカーゲームは人気商品のため、全国のおもちゃ店で在庫を切らしていました。

また、工場で追加生産中だったので、交換には最短でも10日かかるという回答でした。

とても残念な気持ちになりましたが、この後、おもちゃメーカーの一流の対応によって、私のネガティブな感情は一変し、メチャクチャ感動したのです。

この緊急事態に、そのおもちゃメーカーが私に対してとった対応は、次のように、商品の取扱説明書には記載されていない、そのおもちゃメーカーだけが知っているゲームの裏ワザを教えてくれたことでした。

一流のクレーム対応「お客様、実は、このボタンとレバーを同時に動かすと、ものすごく速いシュートが打てて、キーパーは一歩も動けません」「ここのボタンを連続で押すことで、2人の選手を同時に動かすことができます」まさに、クレーム客(この例では私)の100%要望どおりの解決策が提供できないなら、その他の手段でリカバリーしようとする企業姿勢に、一流のクレーム対応だと感心したものです。

「今、商品の在庫を切らしているから待って下さい」と伝えるだけならやはり、誰にでもできます。

お客様の要望に応えられない状況でも、自分たちがお客様に提供できることを全力でやって見せた感動的な一流の対応でした。

この対応がきっかけで、私はこのおもちゃメーカーの大ファンになりました。

クレーム・コンサルタントとして様々な業界と接点を持つようになった今、クレーム対応をしっかり行なう業界と、そうではない業界の二極化が進んでいると感じます。

特に、おもちゃメーカーや菓子メーカー、テーマパーク・レジャー施設などの子供を対象にしている企業のクレーム対応は素晴らしいと思うことが多くあります。

そして、そのような業界の方々は共通して、次のようなコメントをされます。

「お子様を悲しい気持ちにさせてしまうと、その親御さんや、おじいちゃん、おばあち

ゃんから強烈なクレームが来る。

これは、仕方がない。

大切なお子様、お孫さんを悲しい気持ちにさせてしまったので、とても理解できる。

でも、それにもまして重要なのは、悲しい気持ちにさせてしまったお子様への心のケアやアフターフォローだ」このコメントについて補足すると、例えば、遊園地やレジャー施設でお子様がとても嫌な思いをすると、そのお子様が大人になってからご自身にお子様ができたときに、「あっ、この遊園地、子供のころにすごく嫌な気持ちになったから、別の遊園地に行こう」と考えるからです。

さらに、お孫さんができたときにも、「孫はあそこには連れていきたくない」と思われると、70年~80年間ずっと悪い印象のままで、一生利用してもらえないことになります。

したがって、このような業界では、1回1回のクレームにしっかり対応して、お客様の自社へのネガティブな印象を少しでも挽回する努力をし、自分たちができることは全力でやるという意識が高いのです。

先に取り上げた鍋のクレームの場合、お客様に喜ばれる対応はアフターフォローになりますが、例えばクレーム後に来店されたときにしっかり挨拶をしたり、ケガの具合を考慮してお見舞いの品を送るなどの対応が良いかもしれません。

反論するときに効果的な「切り返しの言葉」

クレーム対応で、お客様に反論をしてもよい場合はあるのか?もちろん、反論していただいて結構です。

お客様を否定したり、お客様の話を遮ったりしてはいけませんが、自分たちの言い分を伝えないといけないときや、ご理解いただかないといけないときもあります。

ただ、反論したい場合や自分たちの言い分を伝えたい場合には、その前にどんな言葉を投げかけるかが重要なポイントになります。

アウト(残念)なクレーム対応者がよく間違って使ってしまう「反論の言葉」として、「しかし」「ですけど」「さっきも言いましたけど」などが挙げられます。

これでは、お客様を否定しているニュアンスとなり、せっかく対話できるようになった関係が対立関係に戻ってしまいかねません。

反論や自分たちの言い分を伝える前に使ってほしい「切り返しの言葉」はいくつかあるので、例示しておきます。

反論前の切り返しの言葉「誠に恐れ入りますが……」「大変申し上げにくいことでございますが……」「間違いがございましたら、お許しいただきたいのですが……」このような切り返しの言葉を試してみて、その効果を確認して下さい。

さらに、一流のクレーム対応者を目指すなら、お客様に反論する前に、次のような「切り返しの言葉」を使う切り返し方をおススメします。

一流の反論前の切り返しの言葉「お客様がお気を悪くされるのではないかと思い、なかなか言い出せなかったのですが、実は……」このように、反論するときには、少し長めの切り返しの言葉を使うと効果的です。

なぜなら、お客様に「今から反論しますけど、心の準備は大丈夫ですか」と言わんばかりに時間的な余裕を与えることができるからです。

私の経験上、反論する前の言葉は長ければ長いほど、お客様は聞き耳を立てるので、効果が上がります。

ぜひ試してみて下さい。

思い込みや勘違いのクレームにはどう対応する?

クレームを受けたときに、お客様に反論したり、自分たちの言い分を伝えたりしなければいけないケースとして圧倒的に多いのは、お客様の思い込みや勘違いから発生したクレームに対してです。

クレーム全体の10~20%は、お客様の思い込みや勘違いから発生するというデータがあります。

どんなにわかりやすい商品やサービスの取扱説明書をつくってお客様に渡しても、お客様はそれをきちんと読まずに勝手な使い方をして、「これ、もう壊れたのですけど……」などとクレームを言ってきませんか?また、契約時、「ここまではプランに含まれておりますが、これ以上はオプションになりますので、お見積りを取らせて下さい」とあれだけ丁寧に説明していたにもかかわらず、「えっ!これをお願いするだけで、またお金を取るのですか?お金お金と、うるさいですね~」と、お客様は平然とクレームを言ってきます。

ですから、このような思い込みや勘違いによって発生するクレームの対応方法も習得しなければいけません。

「引きのトーク」を活用する

私は、お客様の思い込みや勘違いから発生するクレームに対しては、対応者側がお客様のプライドを傷つけないことが重要だと思っています。

そのためには、対応者側が「引きのトーク」を活用することが大切です。

「引く」ことがいかに大切なのかに気づかせてくれた私自身の経験談を紹介しましょう。

私が東京・有楽町の百貨店で、ジャケット、パンツ、Yシャツ、ベルトまで一式を購入したときのことです。

会計時に私が提示したクレジットカードにエラーが出て使用できませんでした。

限度額がオーバーしていたことに自分でもすぐに気づきました。

でも、そのとき、店員さんがホスピタリティ度抜群の「引きのトーク」を投げかけてきたのです。

一流の引きのトーク「こちらの機器に不備がございまして、ちょっと読み取れないようです。

ご不便をおかけしております。

もし宜しければ、ほかのカードか現金でお支払いいただくことは可能でしょうか?」これは、クレーム対応のシーンではありませんが、「こちらの機器に不備があった」というお客様のプライドを傷つけない「引きのトーク」は、すごく勉強になりました。

この一流と言える接客の「引きのトーク」は、クレーム対応にも応用できます。

お客様の思い込みや勘違いによるクレームに対しては、「お客様が勘違いしています」と、自分たちの正当性を主張するだけでは、事態を余計ややこしくしてしまいます。

この点に関して、ある保険会社のケースを交えて少し掘り下げてみましょう。

保険会社のケース

契約内容について、お客様から「そんな話は聴いてない。

知らない!」というクレームを受けたとき、次のようなアウト(NG)な対応をしたばかりに、事態がややこしくなりました。

アウトな対応例対応者「お客様、この契約内容に関しては、こちらの書類にしっかり記載があります。

お客様の印鑑も押していただいております」お客様「何だ、その言い方は!私が間違っていたかもしれないが、その言い方が気に入らない。

私を誰だと思っている!!」お客様の思い込みや勘違いがあったとしても、それを一方的に指摘してはいけません。

自分に非があることに気づいたお客様はきっと論点を変えてくるでしょう。

お客様の思い込みや勘違いを指摘しても構いませんが、ただ、その後は自分たちの対応も不十分であったことを詫びる「引きのトーク」を使う必要があります。

つまり、お客様は勘違いしているけれど、自分たちの対応にも不足している部分があったことを明らかにして、謝罪するのです。

OK対応の一例を挙げておきます。

OK対応例対応者「お客様、実は、今ご指摘いただいた契約内容につきましては、契約書のこちらに記載があり、お客様のご印鑑も頂戴してございます。

ただ、しっかりご理解いただくところまで説明できていなかったのは、当社の対応も十分ではなかったと思います。

もう少し契約書の文字を大きくする等の対応が必要だったと反省しております」思い込みや勘違いをしているお客様を責めるだけではなく、自分たちもプロとしてもっとできることがあった、という姿勢をお客様に伝えるために、一方的にお客様を責めずに、自分たちも一旦引くことで、「お互い様」であることを強調するのです。

主張するところは主張しながら、引くところは引くという手法です。

ただし、「自分たちの対応が十分ではなかった」とこちらの非を認めるだけになってしまうと、お客様も「そうよ!どうしてくれるのよ!!」とまくし立ててくることがあるので、好ましい対応とは言えません。

私の経験上、主張しながら引くと、お客様のプライドを傷つけることなく、さりげなく思い込みや勘違いに気づいてもらえます。

この方法によれば、「あら、ホント。

書いてあったわね!」と、少し恥ずかしそうなリアクションをされるお客様が多いのです。

そのようなリアクションをされたら、すかさず自分たちのほうから「いえ、でも私どももこれはしっかりやることが必要だと、とても勉強になりました」と言ってみると、その後はお客様と笑いながら対話できたことが数多くありました。

繰り返しますが、クレーム対応は、やはりお客様との「対話」です。

議論の場ではないので、勝ち負けは必要ありません。

自分たちの正当性を主張して言い負かしてもいけませんし、お客様に言いくるめられてもいけません。

常に、「引き分け」に持ち込むくらいの気持ちで、伝えるべきところは伝え、引くべきところは引くことを意識して下さい。

なぜなら、クレーム対応の最終ゴールは、お客様に再び自社の商品やサービスを使ってもらうことだからです。

旅行会社のケース

次に紹介するのは、クレジットカードが使用できないために起きたクレームの事例で、

私のクライアントの旅行会社の話です。

「予約した旅館でカード払いができないなんて聞いていないぞ!ふざけるな!!」といった、クレームEメールがお客様から送られてきました。

「ふざけるな!!」と書かれていたことについて、少し感情的なっているEメール対応の担当者、斉藤さんから相談を受けました。

彼には感情的になる理由がありました。

なぜなら、実は、その旅館は現地精算時にカード払いができないことを、インターネットの予約ページで大きく記載していたからです。

そこで私は、この旅行会社のお客様相談室のメンバー10人に集まっていただいてミーティングを開き、このお客様からのクレームEメールを印刷して全員に配付し、どのように返信するべきかを考えてもらいました。

このとき、ミーティングの議題は、「どう返信するか」ではなく、「なぜ、お客様はこれほど怒っているのだろうか?」としました。

ミーティングが始まってすぐに、10人のメンバーから、クレームの背景やお客様の事情を想像した、良い意見が次々に出てきたのです。

「ひょっとしたら、このお客様、財布にお金をあまり入れていなかったのではないでしょうか」「確かに、カードが使えなくて宿泊代を現金で支払ったために、次の日の観光であまりお金を使えなかったのかもしれないですね」「あと、地方のお土産屋さんはカード払いができないところも多いし、少額の買い物でも現金をあまり使わないようにしたのかも……」「帰りのクルマを運転しているときにも、ひょっとしたらガソリンのことを気にして、手持ちの現金の心配をしたかもしれないな」──。

このように、1つのクレームに対してお客様の立場に立って考えてみると、いろいろなシーンが想像できて、クレームを言うお客様の気持ちが手に取るようにわかることがあります。

「この旅館はカード払いができないと、予約ページに記載があります。

しっかりご覧下さい」と、お客様の思い込みや勘違いをただ指摘するのは簡単です。

その点に気づいたEメール担当者の斉藤さんが、お客様へ返信したメールの内容は次のとおりです。

一流の引きのメール「このたびは、せっかく私どものサービスをご利用いただきましたのに、ご不便をおかけして申し訳ございませんでした。

お申し出いただいた内容の文面を拝見しまして、楽しみにされていたご旅行でご不安なお気持ちをお与えしたのではないかと、私どもとしても残念な気持ちでいっぱいでございます。

カード払いができないことによってご旅行で楽しみにされていたことが体験できな

かったり、お土産物を購入できなかったりされたのではないかと大変心配しております。

(中略)実は、旅館の宿泊費のお支払いにつきましては、私どものホームページの予約ページに記載をさせていただいていたのですが、しっかりご理解いただけなかったという点では私どもの対応が十分ではなかったと反省するばかりです(以下、省略)」この返信後、クレームを言われたお客様から、すぐに次の返信メールが届きました。

「ご丁寧にメールを下さり、ありがとうございます。

内容を拝見しました。

カード払い不可はちゃんと記載してあったのですね。

私が見落としていたようです。

こちらこそ、大変失礼しました。

申し訳なかったです。

実は、宿泊代を現金で払った後、楽しみにしていた地元の名産品をお土産物にたくさん買ったのです。

それで手持ちの現金が少なくなってしまいました。

帰りのクルマのガソリンが足りなくなってきて不安になりました。

地方のガソリンスタンドはカードが使えないところもありますから、カード払いができるガソリンスタンドまで行けるか、とても心配しながら帰宅したのです。

御社の気づかいの言葉にとても感謝しています。

でも泊まった旅館は最高でした。

料理も美味しかったし、スタッフは皆さん親切でした。

何より露天風呂からの景色が最高でした!また御社のサービスを使って旅行に行きます。

使わせていただきます。

お気づかいいただき嬉しかったです(原文)」対応者側とお客様との気持ちがつながった瞬間でした。

この旅行会社では、このやりとりを紙に印刷し、クレーム対応のベストプラクティスとして、お客様相談室の掲示板に飾っています。

改めて、お客様からの2つのメール文面の内容を見比べると、同じお客様とは思えないくらいの劇的な違いがありました。

まさしく、怒りが笑顔に変わったことがよくわかる一流のクレーム対応の事例だと思います。

たとえ自分たちのほうに非がない場合でも、それをただ主張するのではなく、一旦引いてお客様を責めない姿勢をとることが、お客様との良好な関係をつくるのです。

「魔法の言葉」でお客様の怒りを笑顔に変えるクロージング

いよいよ、「5つのステップ」の最後のステップ5「魔法をかける」を説明します。

クレーム対応の最後に投げかける「魔法の言葉」、つまり、どうやってクレーム対応をクロージングするのかも重要です。

最後に投げかける魔法の言葉を解説する前に、クレーム対応の最後に絶対言ってはいけない言葉を先に触れておきます。

それは、「お詫びの言葉」です。

そうなのです!クレーム対応の最後で、「このたびは申し訳ございませんでした!」などと言ってお客様を帰らせたり、電話を切ったりするのはアウト(NG)な対応です。

実は、クレーム対応の最後は「お礼の言葉」で終わるのが良いのです(先述した「解決策のない場合」を除く)。

クロージングのお礼の言葉「このたびは、私どもの至らない点を教えていただき、ありがとうございました」「ご指摘を賜り、気づくことができました。

ありがとうございました」「お知らせ下さり、本当にありがとうございます」私はこのようなお礼の言葉を、次のように少しアレンジして使っていました。

谷流お礼の言葉「ほかのお客様にも同じように嫌なお気持ちを与えていたのではないかと気づくことができました。

このたびは、ご指摘いただき、誠にありがとうございます」「貴重なご意見を頂戴しました」という言葉を使っている企業が少なくありませんが、20年前から使い古されたクレーム対応の常套句ですので、個人的にはクレーム対応の最後の言葉にはおススメしません。

ぜひ、クロージング時に使う「お礼の言葉」も自分でアレンジして磨き上げて下さい。

そもそも、どうしてクレーム対応を、お詫びではなく、お礼の言葉で終わるのか?それは、お詫びで終わると、クレームを言ってきたお客様を最初から最後までクレーマー扱いすることになるからです。

お客様のなかには、少し感情的になってしまったことを後悔しているお客様が少なくありません。

にもかかわらず、お客様はなぜクレームを言ったのか?そうです。

皆さんの会社の商品やサービスをまた使いたかったからクレームを言うのです。

「ここを改善してくれたら、また使いますよ」と教えてくれているのです。

だから、クレーム対応の最後に、お詫びの言葉ではなく、お礼の言葉、感謝の言葉を投

げかければ、クレームを言ってきたお客様を、アドバイスしてくれる有難いお客様に変えることができるのです。

クレームを言ってくれたお客様に、感謝と敬意を表す言葉でクレーム対応を締めくくることを意識して下さい。

「ありがとう」3回の法則

一流のクレーム対応を実践するには、解決策提示前の了承を得たときの「ありがとうございます」、解決策の了承を得たときの「ありがとうございます」、そして感謝の言葉でクロージングするときの「ありがとうございます」というように、感謝の気持ちを伝える言葉(お礼の言葉)を3回、お客様に投げかけるように心がけて下さい。

そうすれば、クレームを言ってきたお客様はファンになってくれて、良い口コミを広げてくれるようになります。

クレームを言ってきたお客様のなかには、クレームを言ったことを後悔しているお客様が多いと述べましたが、この話をある講演でお伝えしたところ、受講いただいた地方の建設会社の社長さんから次のような話を聴きました。

その社長さんは長野県の山間部にお住まいで、あるとき、地元に唯一ある郵便局の女性局員の対応に少し腹を立てて、「なんだ!その対応は!!」と声を荒げたようです。

とはいえ、それほど感情的になっていたわけではなかったそうですが、この社長さんが元々柔道家で体が大きく顔つきも優しい感じとは言えない、かなり迫力のある方ということもあり、女性局員が涙目になって「申し訳ありません」とお詫びの言葉を繰り返したそうです。

周囲からは、顔の怖いオジさんが女性局員をイジメているとしか見えない状況──。

そこに割り込んで出てきた責任者らしき局長も震えながら、「も、申し訳ございません」と土下座するような勢いで謝ってきたので、社長さんは「もういい」と言って、そそくさと逃げるように郵便局を出ざるをえなかったそうです。

「あんなビビられて、クレーマー扱いされたら、行きづらくてしょうがない。

しばらくは、面倒だけど隣町の郵便局へ行くしかありません」と苦笑いされていました。

このエピソードからも、クレーム対応は、お詫びの言葉で終わるのではなく、お礼の言葉で終わるほうが良いと言えます。

あなたもお客様の立場になってみると、「教えていただいてありがとうございます」などと感謝の言葉を投げかけられると、「クレームを言って良かった」「わかってもらえた」「次も使おう」と思うはずです。

これこそが、クレーム対応の目指すべきゴールなのです。

「魔法の言葉」をうまく使いこなして、クレーム客をファンに変えましょう!

なお、ここまで説明してきた「5つのステップ」で、お客様の怒りを笑顔に変えるクレーム対応モデルを例示しておきます。

 

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