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第5章大ピンチでも何とかしてしまう「超一流の技法」~天使と悪魔の見極め方~

エピローグお客様の怒りを笑顔にする才能は誰もが持っている表紙デザイン/志岐デザイン事務所(萩原睦

目次

第5章大ピンチでも何とかしてしまう「超一流の技法」~天使と悪魔の見極め方~

マジでヤバいときはどうする?

ここからは超一流のクレーム対応術を身につけるために、第3章と第4章で説明した「5つのステップ」を踏んでもうまくいかない場合のイレギュラーな対応について紹介します。

業種や職種、お客様の性格などに応じて、クレーム対応のやり方を変える必要はありません。

基本的にはクレーム対応の「5つのステップ」の手順を進めることになりますが、どう対応してよいか悩むような内容のクレームに関して、私がコンサルティングをしている企業の事例を交えながら説明していきます。

どこまで対応すればよいのか、という判断基準の1つにしてもらえればと思います。

「精神的苦痛を受けた」というクレームを受けた場合

精神的苦痛に関しては、クレーム対応の「5つのステップ」でお客様との信頼関係を築いていれば、ここまでの言葉を言われることは少ないのですが、お客様自身が対応に満足していないときには、仮に自分たちから商品交換などの解決策を提示しても納得してもらえず、「この精神的苦痛はどうしてくれる!」などと言われることがあります。

このような場合には、どうすればよいでしょうか?「そうは言われましても、私どもができるのは商品交換のみとなります」と簡単に言ってしまえば、「商品を交換して許してもらおうというつもり?あなたは何もわかっていない!!」とお叱りを受けてしまいます。

私はこういったケースの「切り返し」として、次のように、改めて「お詫びの言葉」を投げかけ、お客様の気持ちに寄り添う対応で十分だと思っています。

超一流のお詫びの言葉「お客様に嫌なお気持ちをお与えしてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいでございます」精神的な苦痛の感じ方は人それぞれです。

ただ、そのような様々なお客様が受けたであろう精神的ダメージに関しても、対応者側のほうでそれをできる限り理解して、お客様の気持ちを察した「お詫びの言葉」を投げかけることはできます。

「訴えてやる!」というクレームを受けた場合

興奮気味のお客様のクレームの常套句の1つに、「訴えてやる!」という言葉があります。

特に、クレームの初期対応で失敗した場合に、この言葉が出てくるケースが少なくありません。

しかし、この言葉に引っ張られてはいけません。

例えば、「お客様、訴えるな

んておやめ下さい!」と言ってしまうと、「すぐに知り合いの弁護士に相談する!」といったように、お客様をどんどんヒートアップさせてしまいます。

「訴える、訴えない」の問題に注意が行くあまり、本来解決すべき問題からかけ離れた話になってしまいます。

つまり、論点がズレてしまうのです。

実は、クレーム慣れした企業では、「お客様がされることに、こちらから何も申し上げることはございません」という切り返しの言葉を採用しているところが増えています。

また、「訴えてやる!」と似た常套句の「消費者センターに言うぞ!」「マスコミに流すぞ!」という言葉に対しても、同じような言葉を使っています。

残念ながら、これはNGです。

どうせ弁護士に相談することはないだろうし、マスコミなどに告発することもないだろう、とお客様を軽視していて、対応があまりにも事務的で開き直った態度だと思います。

たとえ、お客様が実際に弁護士や消費者センターに相談したり、マスコミに情報を流したりすることはないとしても、悪い口コミを広げてしまう可能性があります。

最近のSNSで、企業が悪口を書き込まれるパターンで最も多いのは、お客様からのクレームに対して対応者側が開き直ったパターンです。

企業の開き直りの態度に対して、「自分は軽視された」と感じたお客様が、SNSを使ってその企業を攻撃するのです。

開き直る前に、できることがあるはずです。

それは、どんな場合でも、共感や理解する姿勢を示すことです。

訴訟や告発までは本気で考えていないお客様が多いことは確かです。

でも、対応者側は、それほど怒っている、悲しんでいる、というお客様の気持ちを受け止めなければいけません。

一度失った信頼を取り戻すためには、次のように、お客様に「寄り添う言葉」を投げかけてみてはどうでしょうか。

超一流の寄り添う言葉「お客様が私どもを訴えるとおっしゃるくらい、お怒りだというお気持ちが伝わってまいります」このように、「そこまでお怒りだというお気持ちがよく伝わってまいりました」と、お客様の気持ちを受け止める対応を心がけてほしいのです。

弱みやデメリットを追及してくるクレームを受けた場合

最近のお客様は商品やサービスのことをよく研究し、同業他社の商品やサービスと比較してから購入します。

特に価格の比較サイトもたくさんあるので、誰でも簡単に情報が手に入るようになりました。

お客様と企業の従業員の間に知識の差などないと思うほどです。

今、私が取引先から受けるクレームの相談で増加傾向にあるのは、その企業の弱みやデメリットを追及してくるタイプのクレーム案件です。

「ほかの企業ではやっているのに、どうしておたくはできないの!」

こういう指摘のクレームを受けると精神的にも落ち込みますし、どう対応してよいのか悩むかもしれません。

でも、ここで落ち込んだり、悩んだりする必要はありません。

このように、他社と比較してクレームを言ってきている時点で、そのお客様はあなたの会社の商品やサービスに興味があると言えます。

「次も使いたい」とお客様は思っているのです。

「ここを改善してくれたら次も使うよ」とお客様が教えてくれているのだと、前向きに視点を変えてみましょう。

このケースの対応方法として、お客様の期待に応えられなかったことに関してはしっかり受け止めながら、自分たちのメリットをさりげなく、お客様に伝える方法で切り返しましょう。

この切り返しの方法に関する事例を2つ紹介します。

いずれも実際に私のところに相談があり、それにアドバイスした方法を実践してもらった事例です。

リフォームメーカーのショールームで「価格が高い!」と言われたクレームお客様「おたくは全体的に高いね。

特にトイレは他のメーカーより全然高いんじゃない!」対応者「ご指摘ありがとうございます。

ご期待に応えられず恐縮するばかりです。

価格は少し高いと感じられるかもわかりません。

ただ、私どもの製品は消臭機能がとても良いのが特徴です。

しかも自動で便座とフタが開閉できますので、腰への負担を軽減することもできます。

耐久性の高い新素材を使用しておりますので安心して長くお使いいただけると思います」学習塾で保護者から「子供の成績が全然上がっていない!」と言われたクレーム保護者「先生、ウチの子はぜんぜん算数の成績が上がらないのですけど、どんな授業をされているのですか!」対応者「ご心配になりますよね。

お気持ちよくわかります。

ただ、〇〇君は国語の読解力が上がり、漢字がたくさん書けるようになりましたね。

確実に成長されています。

授業での集中力もどんどん増していますので、算数の成績にも反映されてくると思います」これらの対応の共通点は、お客様の指摘を一旦受け入れたうえで、自分たちの良い部分に論点を変えていっているところです。

また、論点を変える前の接続詞の言葉として、「しかし」や「ですけど」などの強い否定的な言葉を使わずに、「ただ、……」という柔らかい表現を使っています。

これによって、お客様は対応者側の言い分を受け入れやすくなります。

そもそも、世の中に完璧な商品やサービスなど存在しません。

どんな企業でも、強みや弱みは存在しますし、先ほどの例の学習塾のように問題解決や成果を示すのに時間が必要なサービスもあるでしょう。

どんなときでも、自分たちの弱みの部分だけをクローズアップするのではなく、視点を変えて強みの部分、改善された部分に話をもっていく対話術を身につけて下さい。

どこまで対応するのかを決めておく

ここまでは、怒りを笑顔に変える方法、クレーム客をファンに変える対応法を説明してきましたが、残念ながら、対応者側からクレーム対応を打ち切ったり、お客様のご要望に対してお断りしないといけない場合もあります。

その場合の、毅然とした態度をとる方法について説明したいと思います。

シニア層に多い、クレームを言うお客様の話が長い場合

クライアントからよく相談を受けるものに、シニア層のお客様からのクレームがあります。

シニア層のお客様から電話を受けたときなどでは、最初はクレームだと思って話を聴いていると、内容はただの世間話だったり、商品やサービスなどと関係のない個人的な話が延々と続いたりするケースがよくあります。

このようなケースでは、3分前後、共感しながら話を聴いていると、クレームの内容とは無関係だと判断できる場合がほとんどです。

私にも経験がありますが、このような場合に、どこまで対応すればよいのかは悩ましいところです。

そんなときには、次のような言葉を投げかけて話を軌道修正するのが一番良い対応法だと思っています。

超一流の話の遮り方「お客様、改めてお伺いしたいのですが、どのようなご用件でしょうか?」このようなケースに限って、対応者側からお客様の話を遮っても問題ありません。

このように改めて用件を聞いてみても、その後も特にクレームの話が出てこないようであれば、残念ながら次のようにお客様に伝えましょう。

超一流の打ち切り方「大変恐れ入ります。

ほかのお客様もお待ちですので……」「来客があり、お待たせしておりますので、こちらで失礼します」この言葉をお客様に投げかけて、速やかにお引き取りいただくなり、対応者側から電話を切るようにして下さい。

市役所や区役所などの行政機関では、国家や政治の話題について延々と話をしてくる住民が少なくないようです。

この場合も、次のように対応を打ち切るようにしましょう。

超一流の打ち切り方「誠に申し訳ございません。

私どもではお答えすることができない内容ですので、

お電話を切らせていただきます」本来は、クレーム対応をお客様と良好な関係を築くことにつなげたいところですが、対応者側が聴くべき話ではないと判断せざるをえない場合は、長くても10分以内に対応を終了したいものです。

私のお客様相談室時代に、60代の女性の方から電話で、「おたくのコールセンターのオペレーターの対応が良くない」という主旨のクレームがありました。

「責任者は誰?」「オペレーターにはどんな研修をやっているの?」「どれくらいの時間をかけて研修をしているの?」「研修カリキュラム・テキストはどんなものを用意して、一体誰が教えているの?」などと、一方的に質問が続きました。

その対応に困った私の部下から相談を受けて、私が電話を代わり、次のように対応しました。

超一流の打ち切り方「私どものオペレーターの対応にご満足いただけなかったようで、申し訳ございません。

改めてお伺いしたいのですが、どのようなことがご要望でしょうか?」このように聞いたところ、その女性は以前、宝石販売会社に勤めており、業務内容が接客研修担当だったようでした。

「現在は定年退職したので仕事がない、だから私をオペレーターの教育係として雇うべきだ」という主張を怒りながら伝えてきました(笑)。

この事実確認と要望確認を行なった後、私はその女性に「履歴書と職務経歴書を私、谷宛てにお送り下さい。

ご了承いただけますでしょうか?」と解決策を提示して電話を切りました。

後日、この女性から送られてきた書類の返事として、「厳正なる選考の結果、採用を見合わせていただくことになりました」と、書類選考での不採用をお知らせする手紙を郵送させていただきました。

ほかにも、シニア層のお客様の特徴として、毎日、自分の使える時間が多くあるので、クレームを言う前にかなり準備しているケースが少なくありません。

企業のホームページで経営理念や社長の名前、会社組織図などを調べ上げたうえで、電話をしてくるクレームも増えてきています。

最近、全国に出没している有名クレーマーで「おたくの経営理念は何ですか?」と静かな口調で質問してきて、対応者がオロオロして答えられないと「そんなことも知らずによくこの会社で仕事をしているな!」と激怒するオジさんもいますので(笑)、会社の経営理念程度はしっかり答えられるようにしておいて下さい。

お客様が解決策に納得しない場合

第4章までで説明したクレーム対応の「5つのステップ」では、対応者側が提示した解

決策に対して了承が得られることを前提にして解説しました。

ただ、残念ながら、対応者側が提示した解決策に対して、お客様が納得しない場合も想定しておく必要があります。

解決策を出して納得が得られない場合の対応方法として、代案を出すことが考えられます。

ただ、クレーム・コンサルタントの仕事をしていてわかったのは、代案を出すのは難しい場合がほとんどだということです。

もっと言えば、代案があるなら、最初から両方の解決策を提示しておくほうが良いということにも気づきました。

つまり、最初に出した解決策がダメなら、こちらの案を出そうというような駆け引きをするのではなく、最初から両方を提示してお客様に選択してもらうほうが良いということです。

繰り返しになりますが、クレーム対応の解決策には代案がない場合が圧倒的に多いのです。

対応者側が提示できる解決策がたった1つしかないときには、その解決策でお客様に納得していただくしか術はありません。

では、どうすればよいのか?私自身も実践し、全国の企業や組織で採用いただいている方法があります。

それは、「解決策を3回説明する」ということです。

3回説明することで、この解決策しか持ち合わせていないことを、お客様に理解してもらうのです。

特に、よく起きるクレームに対しては、解決策の説明の仕方のバリエーションを用意することをおススメします。

次のようにして、同じ結論でも伝え方を変えていきます。

1回目まず、わかりやすく伝えるクレーム対応の解決策を提示する際は、どれだけお客様にわかりやすく説明できるかがポイントです。

大前提として最初の解決策提示では、専門用語やカタカナ表現は避けるべきです。

対応者からすれば当たり前の表現でも、お客様には理解できないことがたくさんあるからです。

例えば、市役所や区役所の窓口で、個人を特定できる書類が必要だ、と年輩の住民に説明している職員が、「コンプライアンス上の問題になりますので、お願いします」と言ったところで、コンプライアンスの意味がわからない住民には何のことかわからず、話が平行線になってしまう場面に遭遇したことがあります。

わかりやすく説明するためには、子供にも理解できるような基準に設定します。

具体的に言うと、小学校の高学年の児童でも理解できるくらい、かみ砕いて説明することをおススメします。

2回目背景や根拠を伝えるもし、1回目の解決策の説明でお客様に納得してもらえないときには、2回目の解決策の説明では、「背景や根拠を伝える」ようにして下さい。

ここで言う「背景」は、お客様がクレームを言ってくる背景があるのと同じで、対応者側が提示する解決策にも「なぜ、その解決策を提示したのか」という事情などの背景があるはずです。

それをお客様に説明して理解してもらいます。

もう1つは「根拠」です。

第2章で、革靴の踵部分の交換に2週間かかる理由が「会社で決まっていますので……」と言われて私が怒りを爆発させた事例を紹介しましたが、その後に対応した店長らしき男性が修理に2週間かかる根拠を論理立てて教えてくれたおかげで私の怒りが収まったように、なぜそうなるのかという根拠をきちんと説明することが大切です。

3回目過去の事例を伝える最後の「過去の事例を伝える」方法も、とても重要です。

「過去の事例を伝える」とは、以前に同じケースのクレームを受けた際に、どのような対応をしたのか、過去の事例などの自分たちの経験談を伝えることです。

残念ながら、どの企業でも、どうしてもなくならないクレームは必ずあります。

そのようなクレームの場合、人やタイミングによって対応を変えてはいけません。

そうすることで、どんなときでも毎回同じ公平な対応をしているということを、同じクレームを言ってきた別のお客様に伝えることができるのです。

お客様はなぜゴネるのか?

自分の要求を押し通そうとする、ゴネるお客様は残念ながらいます。

このようなお客様には、ゴネ続けることで、自分の思いどおりにしたいという思惑があります。

「粘れば、何とかなる」という心理がゴネる行為の正体です。

こういったお客様に対しては、対応者側が過去の事例を伝えることで、結論は変わらないということを明確に説明しなければいけません。

私の経験上、ゴネるお客様は、ゴネ続けても結論が変わらないとわかると、時間のムダだと感じて諦めることがほとんどです。

クレーム対応後、残念ながら、そのようにゴネ続けたお客様から、帰り際に捨てゼリフを吐かれるケースがあるかもしれませんが、気にする必要はありません。

本来であれば、お客様に納得してもらって、円満に解決することが理想ですが、クレーム対応をどこまでやるのかという意味では、お客様の要望どおりにならなくても3回説明することで、対応者としての「説明責任」を果たすことになります。

私の過去の失敗談ですが、ゴネるお客様にはあまり時間をかけるより早く終わらせたほうが良いと判断して、仕方がなく要望どおりの対応をしたことがあります。

しかし、その対応で満足するお客様は少なく、むしろ「やるんだったら、最初からやれ!」と嫌味をよく言われました。

近年、企業の不祥事や政治家のスキャンダルでも説明責任を果たさずにブランドを失墜させたり、議員辞職に追い込まれたりするケースが後を絶ちません。

クレーム対応でも同様で、説明責任をしっかり果たすようにして下さい。

これぞ超一流のクレーム対応![パート1]

私の研修を受講してくれたクリーニング会社の部長さんが「解決策の3回説明」をうまく実践されましたので、超一流のクレーム対応の事例として紹介します。

40代の女性のお客様から、「大切なジャケットがクリーニングに出したら縮んだ。

一体どうしてくれるの!」と言われたクレームの事例です。

クリーニング業界では、クリーニング後の衣類の仕上がりに関するクレームが一番多いようです。

特に「クリーニングに出したら服が縮んだ!」というクレームに関しては、服が実際に縮むことはほとんどないそうで、これをお客様に理解してもらうことは大変難しいようです。

これがクリーニング業界で、最も苦戦するクレームの代表例です。

この部長さんは、ジャケットをお預かりして後日、「解決策の3回説明」の準備をしてから、お客様の自宅を訪問し、改めてお時間を割いていただいたことをお詫びした後に、次のような説明をして、お客様との円満解決に見事、成功されました。

わかりやすく伝える「お客様、わたくしはこのクリーニング業界で20年間仕事をしているので、いろいろ勉強したのですが、洋服はクリーニングで型崩れを起こすことは稀にあっても、生地や糸が全体的に縮むことは正直ございません」背景や根拠を伝える「ただ、型崩れが発生している可能性がありますので、お預かりしたジャケットを製造元のアパレルメーカーに持っていき、採寸をしてきました。

結果は、やはり縮んだり型崩れを起こしていなかったことがわかりました」過去の事例を伝える「実は、過去に同じようなご指摘を別のお客様からいただいたケースもあるのですが、衣類が縮んでいたということは発生しておりません。

ただ、このようにご指摘いただくことで、私たちスタッフの、お客様の大切な衣類を取り扱っている、という意識がさらに強くなりましたし、製造元のアパレルメーカーも『お客様に当社の商品を大切に思っていただけて大変嬉しいです』と申しておりました。

今回の件、ご了承いただけますでしょうか?」本当はクレームを言われたときに、「お客様の体形の変化が原因です!」とすぐにでも伝えたかったようですが(笑)、プロとして「解決策の3回説明」を実践されました。

この説明に、お客様もご納得されたようで「いろいろお手を煩わせたようで、こちらこそ申し訳ありませんでした。

親身になって丁寧にご説明いただき、よくわかりました。

お手数をおかけしました」とおっしゃって、笑顔でジャケットを受け取られたそうです。

3回説明してもお客様が納得されない場合

「解決策を3回説明しても理解を得られない場合はどうすればよいのか?」「お客様との交渉が決裂することなく、友好な関係性を築きながらクレーム対応を終わらせる方法はないものか?」という質問もよく受けます。

これらの質問に対して、私は、どうしてもお客様の要望に応えられない場合のクレーム対応の最後の言葉として、次の言葉をおススメしています。

クレーム対応の最後の言葉「私どもとしましても、できるだけのことはさせていただきたいと考えておりました。

ただ、今回は残念ながらお客様のご要望に沿えることができません。

誠に残念でなりません。

当社としましても大変重く受け止めております」このように、「自分たちとしてはこれ以上、良い考えを持っていません」ということをしっかり伝えます。

主語に「私どもとしましても」「当社としましても」といった言葉を意識して使うことによって、組織としての最終決定という印象をお客様に与えることができます。

これが、お客様から解決策について理解してもらえない場合におけるクレーム対応の最後の言葉です。

クレーム対応は交渉事でもあります。

対応者側が説明責任を果たし、「できること」と「できないこと」を明確に伝え、これ以上の対応はできないとお断りすればよいのです。

だからと言って、突っぱねるのではなく、お客様に最後まで寄り添う気持ちを忘れないようにして下さい。

また、電話を切るときも、最後にきちんと自分の名前を名乗ってからお礼で終わるようにして下さい。

対面による対応の場合には、出口まで一緒に向かい、最後まで見送るということも忘れてはいけません。

最後まで、お客様に対して敬意を払いましょう。

クレームEメールで内容がわからなければ電話対応に切り替える

クレームがEメールで送られてきたとき、すべてEメールで返信対応することにこだわらなくてもよいと思います。

第3章で、SNSに書き込まれたクレーム内容の主旨がわからない場合、自分たちの連絡先を記載して「お話をお聴かせ下さい」という対応をとる方法について説明しましたが、Eメールでも同じように内容がわかりづらいのであれば、電話対応に切り替える方法をおススメします。

クレームEメールで必要なのは、文章を読み解くことです。

クレームの内容をしっかり把握して、的確な返信回答をしないといけません。

しかし、お客様からのEメールの文面だけ見ても意味がわからないケースが少なくありません。

SNSと同様に、むやみやたらに返信すると、「そんな意味で言っているのではない!」と余計に怒られるケースも想定

されます。

以前、飲食店から相談を受けた案件では、名前も連絡先の記載もなく、次のようなクレームEメールが送られてきました。

「グルメサイトに良い口コミばかり書かれてあったけど、自分たちで書いたのではないのか!ふざけるな!!」確かに、お客様の怒りの感情は伝わってきますが、この文面からは何があったのかがわかりません。

この飲食店を実際に利用した方の感想なのかどうかもわかりません。

クレームEメール対応の最大のデメリットは、お客様と何度も何度もやりとりをしなければならないことです。

これでは、お客様と対応者がお互いに疲弊するだけです。

お客様の大切な時間を奪わないためにも、1回の対応で完了させるためにも、まずメールで、次のように返信してみてはいかがでしょうか。

メール対応から電話対応へ「このたびはご連絡いただき、誠にありがとうございます。

お客様のお怒りのお気持ちがとても伝わってまいりました。

もう少し詳しくご事情をお伺いできればと考えております。

つきましては、私どもからお電話を差し上げたく存じます。

大変お手数をおかけしますが、お客様のお名前、お電話番号、ご都合の良い時間をお知らせいただければ、私どもよりご連絡をさせていただきます。

お忙しいところ、誠にご不便をおかけします。

お客様からのご連絡を心よりお待ち申し上げております」この返信対応後、実際にお客様と連絡が取れて話ができれば、このお客様がクレームを伝えてきた理由がわかります。

仮に、連絡先を返信してこなかったのなら、ただの冷やかしでクレームEメールを送ってきたと判断してもよいと思います。

お客様自身のストレス発散のためにメールを送ってきた可能性が高いと判断できます。

私の経験上、このような主旨のわからないメールが10件あるとすると、先ほどの返信対応に対して連絡先をメールで返信してくるのは2件程度です。

この2件のクレームについては、しっかりと対応して下さい。

超一流は知っている、クレームの善悪の見極め方どうにもならないクレーマーの見極め方

超一流レベルのクレーム対応を実践するために必要な要素、それはクレームが良質なのか、悪質なのかの見極めができることです。

そして、それらに対して、どのように対応するのかを理解していることだと考えています。

ここまで、「クレームを言うお客様は正しい」という考え方を前提にして、怒りを笑顔に変える方法を説明してきました。

そして、基本的には円満解決を目指し、クレーム対応後、そのお客様にファンになっていただくこと、クレームをお客様からのアドバイスと捉え、学びに変えて仕事のやり方を変えていく方法について説明してきました。

しかし、自分たちの業務に悪影響を与えるような「悪質なクレーム」も残念ながら存在します。

ここからは悪質なクレームの見極め方と、そのクレームに毅然とした態度をとる方法について解説したいと思います。

私が定義するクレームの善悪を見極める基準の1つとして、「ルールを守らないお客様」は悪質なクレーマーだと判断して、受け入れないようにしています。

自分たちが大切にしたいと思うお客様とだけ付き合う、というように解釈してもらっても構いません。

どう考えても悪意を感じるクレームはあります。

こういうクレームの場合、疲れだけが残る対応になってしまいます。

私も経験がありますが、全身のエネルギーを吸い取られるような徒労感しか感じられないクレームがあるのです。

そうしたクレームに対しては、企業側・対応者側がどこまでやるのか、そして毅然とした態度をとるべきクレームは何かについて明確にしておく必要があります。

ここを明確におかないと、会社や組織全体の仕事に対するモチベーションが下がってしまうので、判断基準を決めておくことはとても重要なのです。

経営者対象の講演では、このようなルールをしっかり決めていくときには、従業員を守るスタンスが必要になることについてもお伝えしています。

そして何よりも、一部のルールを守らない悪質クレーマーよりルールを守ってくれているお客様を大切にすることを優先するようにお願いしています。

残念ながら、すべてのお客様が神様だとは限りません。

それをしっかり見極めることが超一流のクレーム対応術です。

では、ルールを守らない悪質クレーマーとしては、どんな人物が想定されるのか?それは基本的には、コミュニケーションが取れない人や、関係性を築けない人です。

「主張内容が支離滅裂で何を言いたいのかがわからない」「自己中心的で対応者側の話を一切聴かない(一方的に話し、聞く耳を持たない)」──。

誤解を恐れずに表現するなら、人格的な問題があると判断した場合が、これに当てはまります。

私の経験上、お客様自身のご家庭の事情や、ご自身の社会的立場に問題や不満を抱えていて、そのウップンを対応者にぶつけてくるお客様が悪質クレーマーに該当します。

おそらく、このタイプのお客様との話は最初から最後まで平行線のままです。

このような関係性が築けないと判断した場合のお客様に対しては、可能ならば、電話や対面での対応から「文書対応」へ早急に切り替えるべきだと思います。

悪影響を与えるお客様は対応を打ち切る

私にも、お客様相談室時代に苦い経験があります。

50代の男性のお客様で、2か月に一度はご旅行をされ、そのときにはいつも私たちのサービスを利用してくれていた有難い常連客の方がいました。

ただ、毎回決まってご旅行からお帰りになった翌日に、お泊まりになった旅館へのクレームをオペレーターに延々と話すのです。

それだけでなく、会社の体制批判、対応したオペレーター個人に対する誹謗中傷を繰り返した挙句、「上司を出せ!」と言ってきて、私が対応すると、「あの旅館とは取引をやめろ!」、そして「対応したオペレーターをクビにしろ!」と理不尽な要求の連続でした。

冷静に見ても、クレームの内容はご自身の偏った主観によるもので、自分の不満やストレスをぶつけているだけだ、と私は判断しました。

今後、会社としてお付き合いするべきではないお客様と判断し、それから数日後に私からこのお客様にアポイントを取り、法務担当者と2人で、そのお客様のご自宅の最寄り駅付近の喫茶店でお会いすることにしました。

先方のお客様は、「いつもお使いいただき、ありがとうございます。

毎度、ご不便をおかけして申し訳ございません」というようなことを伝えに来たのかと思っていたのかもしれません。

喫茶店に入って、私は無表情で事務的な言い方でこう切り出しました。

「お願いがありまして伺いました。

申し訳ございませんが、今後当社のサービスをご利用にならないで下さい。

はっきり申し上げまして、お客様にご利用いただくことは当社にとって迷惑です。

大変困っています」と毅然とした態度をとったのです。

思わぬ内容だったようで、そのお客様がものすごく動揺されている様子は表情から察しました。

この後、そのお客様は激しい口調で、前回利用した旅館と対応したオペレーターに対するクレームをまた言い始めました。

私はその話をすぐに遮り、「今後は何かおっしゃりたいことがございましたら、お電話ではなく、こちらの私どものお客様相談室の住所に書面でお送り下さい」と伝えて、私の名刺を置いてその場を立ち去りました。

その後、そのお客様が私たちのサービスを利用されることはなくなりました。

しかし、私たちの判断は間違っていなかったと今でも思っています。

自分たちの仕事に明らかに悪い影響を与えるお客様には、最後の手段としてご退場いただくという考え方は重要ですので、ぜひ参考にして下さい。

興奮しているお客様への対応法

クレーム対応をしていると、お客様が最初からかなり興奮されていて、暴言が止まらないケースがあります。

クレーム対応に慣れていない経験が浅い対応者なら恐怖で頭が真っ白になって言葉が出てこないこともあるでしょう。

店頭で暴言を吐かれて「お客様、ほかのお客様にご迷惑となりますので、お静かにして下さい」と思わずなだめるような対応をする人がいますが、これは静かにしろと命令しているのと同じなのでNGです。

もっと興奮して暴言を浴びせてくるケースもあります。

このような強い口調のお客様を目の前にすると、悪質クレーマーなのではないだろうかと不安になるでしょう。

では、そのようなとき、どのような対応をすればよいのでしょうか。

興奮されたお客様から暴言を吐かれて、あなたが恐怖心を持ったのならば、そのままの感情をお客様に次のように伝えて下さい。

興奮しているお客様への対応「お客様のお言葉で怖くなってしまい、何と申し上げてよいのかわかりません……」このような言葉の後は黙ってしまっても構いません。

頭が真っ白になるくらい恐怖心を抱いたときには、素直にその気持ちを伝えればよいのです。

これは、テクニックではありません。

あなたが管理職の場合、現場にクレーム対応の経験が浅い部下がいるなら、その部下にお客様にそう伝えるように指導して下さい。

では、この「怖くなって何と言っていいのかわからない」というリアクションをしたときに、怒鳴っていたお客様はどのような反応をするのか?まず、ほとんどのお客様は慌てます。

動揺します。

その場をうまく取り繕おうとして慌てながら、「いやいや、そんな怖がらせようとは思ってなかったよ。

私は、悪質クレーマーではないよ(汗)」と言って、その後は急に冷静になって大人しく話を始めるケースを私自身、何度も経験しましたし、そんな現場を数多く見てきました。

これは人間心理と関係しています。

クレームを伝えてきたお客様は少なからず、被害者意識を持っています。

「(こんなことをされて)私の、この気持ちをどうしてくれる!」と被害者意識が強ければ強いほど、自分のこの気持ちをわかってほしいと思い、興奮して大きな声を出したり、感情を抑えられなくなって暴言を吐いたりしてしまうのです。

でも、興奮して大声でクレームを言っていたら、いつの間にか目の前の対応者が自分に

怯えている姿を目の当たりにして、いつの間にか被害者だと思っていた自分が相手を怖がらせる加害者になっていることに気づくから慌てるのです。

だから、冷静になって、その場を何とか取り繕おうとするのです。

繰り返しになりますが、テクニックではなく、怖いと思えば「怖いです」と、お客様にそう素直に伝えて下さい。

悪質クレーマーの見極め方

先ほど、興奮しているお客様には「怖い」と伝えるようにと述べましたが、それで、すべてのお客様が冷静になるわけではありません。

実は、極めて稀ですが、冷静になるどころか、さらに興奮して暴言を吐き続けるお客様がいます。

そうです。

このお客様こそがマジでヤバい、本当の悪質クレーマーです。

悪質クレーマーは、「この気持ちをわかってほしい」「自分の抱えているこの問題を解決してほしい」という理由から、クレームを言ってくるわけではありません。

クレームを言うこと自体が目的であり、対応者を怖がらせたり、業務妨害したりすることが最大の目的なのです。

ですから、ここまで説明してきたクレーム対応のやり方は通用しません。

怒りを笑顔に変えることは到底できません。

そもそも悪質クレーマーには、また使いたいから改善してもらえれば次も使う、という考えは一切ありません。

ここは、クレーム対応から企業の危機管理に切り替えて対処しないといけません。

ただ、数多くの企業の方からクレームの相談を受けてわかったことですが、100件に1件あるかないかの確率だと私は考えています。

1%以下だと思います。

どの時点で悪質クレーマーと判断すればよいのか、どのタイミングで気づけるのかという質問をよく受けます。

結論から言うと、正解はありません。

むしろ企業側・対応者側の主導でガイドラインを決めて、「これは悪質クレーマーだ」と判断する基準を設けるようにアドバイスしています。

つまり、お客様と悪質クレーマーの境界線は、企業側が決めてよいということです。

例えば、NGワード(担当者個人への暴言、土下座強要)、対応時間(電話を切らせようとしない、居座るなど)や、理不尽な金銭要求があるなどで判断して下さい。

つまり、企業や組織として、あるレベルの状態になったら悪質クレームだと判断できるようルールを明確にしておくということです。

そのルールを違反するようなお客様が現れたときには、ルールに則ってクレーム対応から「危機管理」に切り替えて、毅然とした態度で対応を打ち切る必要があります。

繰り返しになりますが、お客様は神様や天使ばかりではありません。

悪魔も存在します。

その見極めができるようになることが、超一流のクレーム対応をするためには必要です。

悪質クレームのタイプと対処法

悪質クレームは大きく分けて2つのタイプがあります。

ここでは、2つのタイプの悪質クレームの特徴とその対応法を説明していきます。

ストレス発散型の悪質クレーム「バカヤロー」「コノヤロー」「頭が悪いのかお前!」「そんなことも知らないのか、このデブ!」──。

その他、文字にするのがはばかられるような汚い言葉に乗せて、対応者個人に対するネガティブな感情をそのまま誹謗中傷として大声で浴びせてきます。

このようなクレーマーは自分の言い分をわかってほしいのではなく、クレームを言うことが最大の目的になっていますので、そこには改善のヒントは存在せず、自分のネガティブな感情をぶつけているだけです。

このような人とは関係性を築くことはできないので、対応者側が歩み寄る必要もありません。

この手の悪意があるクレーマーはファンに変わることも皆無です。

対処法としては、暴言と対応者の容姿や人格を否定するような言葉が出てきたら、悪質クレーマーと判断し、毅然とした態度で対応を打ち切ります。

ストレス発散型の悪質クレームへの対応例悪質クレーマー「バカヤロー。

そんなことも答えられないで、頭が悪いのかお前は!!」対応者「お客様が私に対して、バカヤローとおっしゃるくらいお怒りだというお気持ちはよくわかりました。

ただ、これ以上、そのような汚いお言葉、私個人への暴言を口にされるのであれば、これ以上対応できません。

お帰り下さい」それでも大きな声で暴言を吐き続けたり、居座ったりするような態度をとった場合は、次のように対応を打ち切ります。

対応者「ほかのお客様も驚いていらっしゃいます。

今日はお帰り下さい。

落ち着かれましたら、お話を聴かせていただきます」クレームを言うだけで居座るような態度をとるのであれば、明らかに営業妨害です。

そう判断したときには、「これ以上対応できません」「お帰り下さい」「こちらで失礼します」という言葉を、平静を装って事務的に伝えるようにしましょう。

非常識・無理難題な要求型の悪質クレーム「俺は客だぞ!それぐらいやれ!!」このように「俺は客だから神様だ!」と言うようなお客様は、はっきり言って神様ではありません。

もっと言うと、「お客様は神様です!」は企業側のセリフであって、顧客側が言うセリフではありません。

顧客という立場にあぐらをかき無理難題を言う人は、悪質クレーマーと判断して毅然とした態度をとって下さい。

何度も繰り返しますが、クレーム対応は人と人とのコミュニケーションです。

また、クレーム対応でのお客様との関係は「対等」で良いと第4章で述べました。

しかし、自己中心的な話ばかりして、対応者の話を聞こうとしなかったり、自分勝手で非常識な主観のもと、到底無理な要求をしてきたりするだけの相手とは、良好な関係を築けないと判断して対応を打ち切る必要があります。

すべてのお客様と仲良くしようとしなくてもいいのです。

特に、クレームとお金をセットで要求してくる場合、お金目当てとしか考えられません。

このような悪質クレーマーに対しては、次のように毅然とした態度で断わる勇気を持って下さい。

非常識・無理難題な要求型の悪質クレームへの対応例悪質クレーマー「バイトを休んで手続きにきた。

ここまでの交通費と1日分の給料を出せ!」対応者「恐れ入ります。

個人のご事情につきましては私どもでは対応策を持ち合わせてございません」少し病的で、コミュニケーションが取れない、思い込みが激しい相手がまだ一方的に話し続ける場合、次のように打ち切って下さい。

対応者「私どもとして結論はお伝えしたことがすべてです。

居座るおつもりでしたら警察を呼びます」お金の要求などが絡んでくる場合は、迷わずに警察を呼ぶということを全面に出して対応を打ち切る方法を選択して下さい。

このようなクレーマーは、自分たちが同じ説明を何度繰り返しても、話は平行線のままで終わることがありませんので、対応を打ち切らざるをえません。

なお、悪質なクレームではありませんし、営業妨害でもないのですが、最近企業から相談をよく受けるクレーム案件で、ご高齢のお客様のご家族や身体障害者のお客様のご家族から、「もっと気を使ってほしい」「私たちを特別扱いしてほしい!」という無理難題に近い要求が増えています。

このように申し出をしてくるご家族の気持ちは否定しませんが、「もちろん配慮はいたします。

ただ特別扱いはできかねます」と毅然とした回答をするほうが良いと思います。

配慮はしてもお客様を決して差別しないというスタンスで、ほかのお客様と同じ公平な対応となることを伝えましょう。

ここでは、悪質クレームに対して毅然とした態度で対応を打ち切る方法を説明しましたが、お客様への対応を打ち切ることはとても残念なことです。

しかし、未来の見えない悪質クレームに対して後ろ向きの対応に時間を費やすくらいなら、自分たちにとって大切な、ほかのお客様との絆を深めることに注力していただきたいと思います。

口うるさいお客様は早めに味方にする

どの企業からも、「口うるさいお客様がいて困っています」とよく相談を受けます。

企業によっては、「なぜ、いつもあのお客様はウチに文句ばかり言うのですかね。

そんなに嫌なら使わなくてもいいのに……」と言っている担当者さえいます。

これは、お客様の心理を根本的に理解していない証拠です。

そうなのです。

応援しているからこそ、クレームを言うのです。

次も使いたいから、クレームを言うのです。

知り合いのカメラマンから聴いた話です。

そのカメラマンは20年間、同じメーカーのカメラだけをこだわりを持って使い続けているようですが、ものすごく、そのカメラメーカーにクレームを言うそうです。

彼曰く、「今更、ほかのメーカーに変えたくないし、ここのメーカーが好きだから、ほかのメーカーがこうやっているからおたくも同じようにやってくれよ!」などと注文をつけるそうです。

「ライバルメーカーに負けるなよ」「ほかのメーカーの新機能が良いから付けてくれよ」「もっと頑張ってくれよ!」という気持ちで、クレームの電話を入れるのです。

普通、それなら、別のメーカーの商品に買い替えればいいじゃないかと単純に思いますが、このカメラマンはそのメーカーの商品を愛しているのです。

どこの会社にも店舗にも、このような口うるさいお客様は必ずいます。

せっかくなら、そんなお客様を、細かいところによく気づいてくれる、面倒見の良い有難いお客様だと前向きに捉えてお付き合いしたいものです。

このようなお客様には、「いつもご利用いただき、ありがとうございます」というように感謝の言葉を投げかけて下さい。

この「いつも……」という、たったひと言によって、お客様との関係をさらに強固にすることができる場合が多くあります。

それができれば、強力な味方にすることができます。

価格が高いとか安いとかは関係ありません。

機能が充実しているなどのメリットを超越して、あなたのこと、あなたの会社のことが好きだから、と使ってくれるようになります。

ぜひ、口うるさいお客様には心を込めて接して、早く味方にして下さい。

お客様が何をしてほしいのかを察する

研修の講師として登壇した病院で、いつも文句ばかりを言ってくる患者さんがいるそうです。

「『ナースコールで呼んでも、すぐに来ない!』とよく怒る患者さんなのですが、どう対応すればよいでしょうか?」という相談を受けました。

理想的な解決策は、その患者さんに呼ばれたらすぐに対応できるように人員を増やして体制を整えることですが、それができたら、もうやっていますよね。

ここで危険な対応は、「どうしてすぐに来ない!」とクレームを受けたことに対して、「今後は同じことがないようすぐに善処します」と約束をしてしまうことです。

そのように伝えてしまうと、次に患者さんに呼ばれて対応が遅くなったときに「また、すぐに来なかった。

何をやっているのだ!!」と、さらに怒られるのは目に見えています。

このような少し厄介で、すぐにクレームを言ってくるお客様は、なぜクレームを言うのか?どうして自分の都合ばかり押し付けてくるのでしょうか?それは、寂しいからです。

かまってほしいからです。

この病院の患者さんの場合もそうですが、クレームをすぐに言ってくるお客様を対応者側(病院側)が腫れ物に触るかのように、距離を置いているケースが少なくありません。

こういった口うるさいお客様から逃げていること自体が、クレームを言われる原因をつくっているのです。

この病院で、すぐにクレームを言う患者さんへの対応策として、私は、「どんなことをすれば、その患者さんに喜んでもらえるのか?」について話し合うように看護師の皆さんにアドバイスしました。

また、積極的にコミュニケーションを取る方法についても考えてもらいました。

この話し合いでの看護師さん同士のやりとりは、次のとおりです。

「患者さんは夜中になぜナースコールを鳴らしたのか?」「それは、咳が止まらず不安になったのではないのでしょうか?」「そうであれば、その不安を取り除いて差し上げるようにコミュニケーションを取ることが大切なのではないでしょうか?」この話し合いの後、その患者さんに対して咳を抑えるために寝る前にうがいをすることを提案したり、ナースコールが鳴ると水を飲ませてあげる対応をしたりしたそうです。

すると、その患者さんがクレームを言うことが少なくなり、しかも看護師さんたちと笑いながら雑談する機会が増えたそうです。

このように、お客様(この例では患者さん)のやってほしいことを察し、簡単なコミュニケーションを始めただけで、クレームを減らすことができるのです。

そして、その患者さんは、退院されるときに看護師さん一人ひとりに、「ありがとう。

本当にお世話になりました」と頭を下げて笑顔で退院されたそうです。

お客様を笑顔にしようとするとクレームは起きない

「面倒だ」と思ってやらなかったことで、クレームを受けることがあります。

仕事を効率良くやることだけを考えるのではなく、ひと手間かけるだけでお客様の笑顔は増やせます。

ほんの少しの労力で、サービスを大きく進化させることができます。

ここでは、お客様を笑顔にするために必要なことが理解できる事例を紹介します。

講演に訪れた沖縄のリゾートホテルの、細かい気配りが行き届いているサービスに感動したことがありました。

講演の主催者側から「講演前に昼食をご用意しています」と言われて、昼食に利用したレストランはバイキング形式でした。

私のお目当ては、そのレストランで一番人気の肉厚で、とても美味しそうなビーフステーキ。

ステーキコーナーへ真っ先に向かうと、すでに焼かれたお肉が1枚置かれていました。

私がそれを手にしようとしたとき、ステーキコーナーにいたシェフから「お客様、ぜひ焼きたてをお持ち下さい。

すぐにでき上がりますので!」と言われて、ものすごく嬉しい気持ちになりました。

この気配りのおかげで、焼きたてで熱々のステーキを堪能できました。

その昼食後に開催された講演の最初のつかみで、先ほどのシェフの気配りが行き届いたサービスの話をして、講演の参加者に、このホテルの素晴らしさを熱く伝えました。

良い口コミが拡散するときというのは、案外、この例のように、ひと手間をかけた、ほんの少しの気配りがきっかけになるのかもしれません。

もう1つ、私が思わず嬉しくなったエピソードを紹介します。

先日、パソコンの修理でバッテリーだけの交換をパソコンメーカーに依頼したのですが、数日後にこのメーカーのサポートセンターから電話がかかってきました。

「ディスプレー(画面)は見づらくないですか?」という問い合わせでしたので、「少し見づらいかもしれないです」と答えたところ、後日、手元に戻ってきたパソコンはバッテリー交換だけでなく、ディスプレーも新しくなっていました。

また、それだけではなく、キーボードを含めたすべてのカバーも新しく交換してくれていて、新品同様の状態で戻ってきたのです。

さらに、カバーには私が貼っていた、〝ニコちゃんマーク〟のステッカーが丁寧に剥がしてあり、また貼り直せる状態にして添付されていました。

同封された修理報告書には、「私どものパソコンを大切に扱っていただき、ありがとうございます。

保証期間内のため、すべて無料ですのでご安心下さい。

引き続き、ご愛顧の程、宜しくお願い申し上げます」と担当者直筆の丁寧なメモ書きが記載されていました。

クレーム対応ではありませんが、まさに、超一流と呼べるサービスだと思います。

話は変わりますが、東京都板橋区を中心に活動しているプロレス団体「いたばしプロレスリング」をご存知でしょうか?「地元板橋に元気と笑顔を!」をモットーにまちづくり、地元商店街の活性化を目指して、闘っているプロレスラーたちがいます。

「笑顔の連鎖で、町中を笑顔と元気であふれさせたい!」と言い切る、代表の「はやて選手」は、人を喜ばせたい、笑顔にしたい一心で、このプロレス団体を運営されています。

はやて選手と話をしていると、ほかのプロレス団体よりも人気を獲得したいとか、お客様を呼び集めてお金を稼ごうという姿勢を感じたことがありません。

もちろん、そんな言葉を彼から聴いたこともありません。

彼らは、会場に足を運んでくれた目の前のお客様を笑顔にするという姿勢を貫いています。

いたばしプロレスを見て、笑顔になって明日からも頑張ろうと思ってもらうために、リングの上で全力で闘っているのです。

そして、いたばしプロレスを観戦した満員のお客様すべてが笑顔で会場を後にされます。

私自身も、いたばしプロレスを何度も観戦しましたが、自分はここまで人を笑顔にできているのかと考えさせられ、毎回勉強させてもらっています。

いたばしプロレスを見ていて、もう1つ学んだことがあります。

それは、お客様はその人が一生懸命やっているかどうかを見ているのだということです。

一生懸命やっている人、いっぱい、いっぱいになりながらも頑張っている人には、誰も文句は言いません。

クレームは起こらないということです。

手を抜いて仕事をしている人のところにクレームはやって来ます。

できないのではなく、やらない人の仕事ぶりにクレームは忍び寄って来るということに気づかせていただきました。

クレームを言うリピーター、クレームを言わないファン

あなたは、「リピーターとファンの違いは?」という質問に対してすぐに答えられるでしょうか?リピーターは、「商品」や「サービス」に付きます。

その商品やサービスが必要だから、リピートします。

一方、ファンは、「人」に付きます。

「あのお店の、あの店員さんが好き!」「あの会社の、あの営業マンが非常に優秀だから取引している」──。

つまり、「この人が好き!」と思ってもらえれば、ファンになってくれるのです。

クレームでもわかっていることがあります。

それは、リピーターが最もクレームを言ってくるということです。

なぜなら、「必要だから」「また使いたいから」と思っているからこそ、同じことがあったら困ると考えてクレームを言ってきます。

でも、ファンはクレームを言いません。

それは、その人のことが好きでファンになっているからです。

では、どうすればファンをつくれるのか?お客様に、「この人は、自分のことを『理解』してくれる」と思ってもらえれば、ファンになってくれます。

雑談がうまい人はクレームを起こさない

「雑談」ができるビジネスパーソンは、取引先の担当者などから好かれているため、クレームも発生しません。

私はクレームの専門家でありながら、毎年オファーをいただく仕事に、婚活イベントの司会があります(笑)。

イベント会場で、いつも気づくことがあります。

それは、イケメンでも雑談ができない男性は、女性との距離を近づけられずに苦戦しているのを見かける一方で、さほどイケメンとは個人的に思えない男性が、雑談で女性たちを楽しませて一番の人気を獲得していることです。

また、常連客でにぎわう居酒屋は、店員がお客様とよく雑談しています。

たわいもない会話でお客様と良好な関係を築けているので、お客様も「また来たよ!」と嬉しそうな顔をしながら店に入ってくるのです。

ある取引先の企業には、クレームを頻繁に起こす営業マンと、クレームを受けることなくお客様から熱狂的な支持を受け続けている営業マンがいます。

クレームをよく起こす営業マンは、「おたくの商品は高い。

値引きしないと別の業者に代えるよ」と言われ、よく値引き要求を受けるようです。

一方、熱狂的な支持を受け続けている営業マンは、値引き要求などされたことがないと言います。

この違いは、お客様と雑談ができているか否かなのです。

雑談ができていない営業マンは、お客様との関係性が弱いため、取引の基準が〝価格だけ〟になっています。

私も営業マンの経験が10年以上あるのでよくわかりますが、お客様は高いから商品を買わないのではなく、価値がないから買わないのです。

では、どんな価値が必要なのか?その営業マンと付き合う価値がないと思われるから、お客様はお金を出さないのです。

価格を高く感じるのです。

お客様は何を買うかより、誰から買うかを重要視しています。

お客様は、「私はこの人が好きだ。

ファンだ」と思うと、クレームを言わないし、値引き要求もしてこないものです。

私は、東京・恵比寿にある「BeleadEBISU」というサロンで、毎月髪の毛を切ってもらっています。

かれこれ5年以上お世話になっているのが、こちらのスタイリストの関田大輔さん。

この方、予約が取りづらい、とても人気の高いスタイリストさんです。

私は仕事柄、講演やコンサルティングの場で人前に出て話すことが多いので、プライベートではあまりしゃべりません。

でも、この関田さんに髪を切ってもらうときは、無意識に雑談していて、とても楽しく時間を過ごせます。

そのため、関田さんの大ファンになっ

てしまったのです。

関田さんとの何気ない雑談のなかでは、「この話、講演で使える!」「この話、あの取引先に教えてあげよう!」と思うような話がいっぱい出てきます。

髪を切るという技術がプロフェッショナルであるのと同時に、お客様を雑談で楽しませるという付加価値を提供できるのが、関田さんが人気スタイリストである理由だと思います。

支払う代金の価値以上に、楽しさと学べることをたくさん提供してもらえるので、関田さんに会うと得した気分になれるのです。

喜んでお金を払いたくなります。

ここまで紹介してきた例の共通点は、「目の前のお客様を笑顔にしよう」「喜んでもらおう」というお客様を軸にした考え方があるということです。

お客様を笑顔にしようとすると、周囲がファンであふれ、クレームを言われることが少なくなることを心に刻み込んで、実践してみて下さい。

クレーム対応に強い組織の共通点

クレームに強い組織は共通して、クレームを組織の中で共有する環境を整えています。

「クレームを出すなよ!」と言う経営者や管理職がいる会社や組織の従業員(職員)は、クレームを隠そうとします。

そして、クレームを起こしてはいけないと考える組織では、クレームを受けると、従業員は自分で何とかしようと独断で行動しようとします。

これを防ぐために必要なのは、クレームを共有し、組織として対応しようとするための環境づくりです。

「きちんと報告してくれてありがとう!」このように、クレームが発生したときには、素早く報告してきた部下をほめるようにして下さい。

「きちんと報告してくれてありがとう!」と言える上司がいる組織は、クレームが大きくなりません。

部下も自分だけで何とかしようとせず、迅速に上司に報告するようになって、トラブルを最小限に食い止めることができます。

クレームが起きたことを隠さずに、勇気を持って迅速に報告をしてきた部下に対して、「なぜ、そんなことになったのだ!」と部下を責める上司がいる会社は、部下がクレームの報告をためらうようになってしまいます。

これでは、自分でクレームを何とかしようとして、最終的にどうしようもなくなってから、報告が上がってくるようになります。

そのときには、もう「時すでに遅し」です。

ものすごくこじれた状態、解決が難しい状態になって、大クレームに発展してしまいます。

ここで、私が毎年、研修会場としてお世話になっている「庭のホテル」(東京都千代田区)の対応に感動したエピソードを紹介します。

3日間の研修で、お昼休みに研修の受講生の皆さんとホテル内にある和食レストランでランチをしていたときのことです。

食事が終わり、ホールの従業員の方がお茶を注ぎに私たちのテーブルに来たときに湯呑が倒aれて、私のジャケットとテーブルの下に置いていたカバンが濡れてしまったことがありました。

ほんの少し濡れただけで、おしぼりで拭けば問題のない程度だったので、個人的にはまったく気にはしていませんでした。

お茶をこぼしてしまった従業員の方が、すごく申し訳なさそうな表情でお詫びされたので、私のほうが逆に恐縮したほどでした。

その数分後、すぐにレストランのフロアマネージャーらしき男性が私のところに、責任者として再度、お詫びに来られました。

責任者に情報共有されたうえに、とても迅速な対応だったので、それだけでも素晴らし

いと感激していたのですが、翌日のチェックアウト時にも支配人室の室長が出てこられて、再度お詫びの言葉をいただき、感動を大きく超え、感謝の気持ちさえ持ちました。

ここで皆さんに注目していただきたい庭のホテルのスゴいところは、クレームやトラブルを迅速に共有される仕組みができ上がっていることです。

「これでもか!」と言わんばかりのお詫びと気づかいの言葉の連打で、私はメロメロになって、このホテルの大ファンになりました。

講演や接客研修でも、この話をよくします。

まさに、庭のホテルの宣伝部長かのように、良い口コミを広めています。

クレーム対応に強くなるためのマニュアルと仕組み

クレーム対応に強い組織では、クレーム対応のマニュアルが整備されています。

クレーム対応はケースバイケースで、臨機応変に対応すればよいと考えている企業は、クレーム対応に失敗して、お客様の信頼を失っています。

そうならないためにも、クレーム対応のルールを明確に決めておくことが大切です。

でも、完璧なマニュアルをつくる必要はありません。

よく起きるクレームの上位3つだけ、対応マニュアルをつくれば十分です。

クレーム対応マニュアルの監修のご依頼をいただくクライアントには、20個ぐらいのクレームのケースに関するマニュアルをつくりたがるところが多いのですが、20個つくっても、それを従業員の誰も覚えられないので、「3つで十分です」とアドバイスしています。

商品やサービスに関するクレーム、接客対応に関するクレーム、お客様の思い込みや勘違いによるクレームなど、上位3つのクレーム対応策を準備しておけば、その組織が受けるクレームの90%ぐらいはカバーできます。

その代わりに、この上位3つのクレームに対しては、社長から、入って間もないアルバイトまで、全員が同じ対応ができる状態にするのが理想的だと考えています。

その対応マニュアルのつくり方は簡単です。

何度も繰り返し説明した「5つのステップ」をそれぞれのクレームに当てはめていくだけで結構です。

「このクレームには、どんなお詫びの言葉がピンポイントで当てはまるだろうか?」「どんな共感の言葉を投げかけることが必要だろうか?」「話を聴いてみないとわからないけれど、どんな解決策が想定されるだろうか?」「過去にはどんな解決策を提示していただろうか?」という視点で、対策を準備しておいて下さい。

上位3つのクレーム対応マニュアルをつくると必ず気づくと思いますが、ある程度は現場に権限を下ろしておかないと対応が難しくなります。

つまり、よく発生するクレームがわかっているのであれば、現場の対応者に〝責任者がいなくてもここまでお客様に伝えて大丈夫〟というような決裁権を与えておく必要があります。

逆を言えば、決裁権や権限がない人がクレーム対応をするのはとても危険です。

どこまでやってよいのかがわからず、しかも権限も持っていない対応者は、不用意なことを言って、会社に迷惑をかけたくないと考え、しっかり対応できずに事務的な対応になってしまって、お客様を怒らせてしまうことがあるからです。

経営者や管理者、店長がいなくても、現場が「ここまでやってもよい」という権限を持つと、従業員はクレームから逃げずに、お客様としっかり向き合おうとします。

やはり、クレーム対応マニュアルは必要です。

組織としてどこまでやるかという指針を明確にして下さい。

そうしないと、従業員が気の毒です。

従業員を守るという意味もありますので、経営者や管理者は企業理念に沿って、クレaーム客とどう向き合うべきか、クレームに対する考え方を明確にする必要があります。

現場に権限が与えられず、クレーム対応をしている方はぜひ、この機会に「このクレームがよく起きて困っているので、どこまでやってよいのか、私たちに権限を下さい!」と上席の方に提案してみて下さい。

これぞ超一流のクレーム対応![パート2]

これは、私がほとんど毎日通っているカフェで目撃した話です。

40代ぐらいのサラリーマン風の男性が店に駆け込んできて、ものすごい剣幕で「コーヒーを持ち帰りしたけど、砂糖とミルクが入ってなかったぞ!!」と怒鳴って、店内の雰囲気が凍りつく場面に遭遇しました。

すると、レジカウンターにいたアルバイトの学生さんらしき男性の店員さんが、その怒鳴った男性に近寄り、「えっ!?それは大変ご不便をおかけしました。

誠に申し訳ございません!」と見事に限定付き謝罪をしながら、丁寧に頭を下げました。

その怒鳴った男性は少し落ち着いた様子になったものの、さらにこう言いました。

男性がわかってほしかったところ「急いでいたからテイクアウトにしたのに、何で(砂糖とミルクを)入れてないんだよ!」これに対して、店員さんは砂糖とミルクを用意しながら、「そうでしたか。

お急ぎでしたのに私どもの対応が至らず、大変失礼いたしました」と、お客様に共感して再度お詫びの言葉を投げかけました。

さらに、その店員さんは、「このままでは熱々のコーヒーを、お楽しみいただけませんので、コーヒーを入れ直しさせていただきましょうか?」と見事に解決策を提示したのです。

この気づかいに満ちあふれた対応によって、怒っていた男性は完全に落ち着きを取り戻し、「あっ、助かります。

お願いします」と、少し恐縮しているような態度になりました。

その後、入れ直してもらったコーヒーと、砂糖とミルクの入った袋を手に少し恥ずかしそうな笑顔で「ありがとう」と言って店を出ていこうとしました。

そのとき、そのお客様の背中に向けて店員さんが、「ご足労おかけしました。

お越しいただきありがとうございます。

またお待ちしております!」と大きな声で感謝の言葉を投げかけたのです。

この迅速かつ見事な対応には、店内のお客様全員が感心した様子。

緊迫した空気が一変し、店内が何となくアットホームな雰囲気になりました。

私の横にいた男子高校生たちも、「スゲ~、今の対応!あの店員、神だ!あれは神の領域だよ!!」と今風の言葉で、この店員さんに対して最上級の賛辞を贈っていました(笑)。

このアルバイトらしき店員さんの完璧なまでの対応、とても素晴らしかった。

文句のつけようのない、「超一流のクレーム対応」です。

でも、私はこの対応は、組織的に予め準備されていたものだと思っています。

この店で

よく起きる上位3つのクレームとして、きちんとマニュアルが整えられていたのではないかと考えています。

これは、私の推測の域を出ませんが、テイクアウトの際に、店員さんが砂糖とミルクを入れ忘れることがかなり多いのではないかと推測しています。

当然あってはならないことですし、またそれと同じ失敗を繰り返してはいけません。

でも、どれだけ再発防止に努めても人がやることなので、必ず発生してしまいます。

砂糖とミルクを入れ忘れたときは、「お詫びして」「共感して」「コーヒーを入れ直す解決策の提案をする」というルールが店側のマニュアルで決められていたのではないでしょうか。

しかも、権限が現場に与えられていたと推測しています。

この権限は、お客様を主役にするためのものだと思います。

ものすごく怒っているお客様に対しては、なかなか咄嗟に対応できるものではありません。

でも、動揺せずに落ち着いて対応するためには、「準備する」ことが必要だと改めて認識させられた素晴らしい接客シーンでした。

あの怒鳴った男性は、きっと、このお店の店員のファンになって、このお店をまた利用されることは間違いないと思います。

エピローグお客様の怒りを笑顔にする才能は誰もが持っている

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

いかがでしたでしょうか?クレームが怖くて嫌で嫌で仕方がないと思っているあなた、あるいはクレーム対応でストレスを感じているあなたのために、私のお伝えしたかったことはすべて、この本の中に書きました。

たくさんの時間をかけて魂を込めて全力で執筆しました。

1つでも2つでも3つでも、この本に書いた内容を実践していただければ、「この本を読んで良かった」と思ってもらえると信じています。

最後の最後にお伝えしますが、本音を言いますと、私はもうクレーム対応に関する本を書くつもりはありませんでした(笑)。

2011年に出版デビューしたクレーム対応に関する著書『「怒るお客様」こそ、神様です!』(徳間書店)ですべて書き尽くしたと思っていたからです。

ただ、その本の出版から6年以上が経過し、自分もクレーム・コンサルタントとして様々な業種のお客様と接しているなかで、様々なクレーム対応のケースに直面しました。

以前とは少しやり方を変える必要性を感じたり、私自身もコンサルティングの現場で、いろいろな企業の方にアドバイスさせていただいたりするなかで、新たに気づいたことがたくさんありました。

また、クレーム・コンサルタントとしてキャリアを積んだことで考え方も変わってきました。

もう少し別の視点から説明をしたほうが、より実践的で役立てていただけるのではないかと考えることがとても増えましたので、今回の執筆に至りました。

さらに、この本では、前作の中で書かなかった悪質クレームの対応策についても触れています。

前作では、悪質クレームやどうしようもないクレームは触れませんでした。

なぜなら、日本社会からクレームに対するマイナスイメージを払拭したいと考えていたからです。

マスコミは、ほんの一部の悪質クレームだけを切り抜いて大きく取り上げることが多く、そのようなクレームに対する悪いイメージを吹き飛ばしたいと考えていたからです。

例えば、「最近のモンスターペアレンツについてどう思われますか?」というテレビ番組からの取材に対しても、「一部はそんな親御さんもいらっしゃるのかもわからないですけど、学校の先生の聴く姿勢が足りないために親御さんが(正当な)指摘をされていることのほうが多いですよ」と私は答えました。

でも、マスコミは、悪質クレーマーの実態にフォーカスを当てたがります。

「悪質クレーマーなんてほんの一部です。

初期対応で失敗するから怒らせているだけです」という私のコメントは、ニュース番組でほとんど取り扱われることはありませんでした。

新聞やニュース番組で悪質クレームばかりを取り上げるから、日本中がクレームに対してマイナスの感情を持つのです。

「愛」を持って伝えてくれているお客様までクレーマーという悪者にされている。

マスコミの情報を見てクレームに対する恐怖心を増大させる人々が増えるという図式を根本的に変えたいと思っていました。

だから、書かなかったのです。

でも今回の本では、やはり、そこに踏み込まざるをえないと考えて執筆をしました。

フジテレビ系列の情報バラエティ番組『ホンマでっか!?TV』でも実際に起きているモンスタークレーマーについてお話ししました。

それは、悪質クレームと良質クレームの見極めができて、対応方法を変えていくことを知っていただいてこそ、超一流のクレーム対応が実現できると考え直したからです。

悪質クレームの見極め方と対応法の両方を多くの方々がしっかり学ぶことで、日本の社会からクレームに対する恐怖心や嫌悪感を持つ人をなくしていきたいと考えました。

だから、もう一歩踏み込んだことをお伝えする必要があると考えたのです。

お陰様で、講演や研修に数多く登壇させていただく機会にも恵まれ、私の話を聴いていただいたお客様から「クレームが怖くなくなった!」「クレーム対応のストレスがなくなった!」「お客様の怒りを笑顔に変えられるようになりたい!」「なんだか、クレーム対応が楽しくなってきました!」と言ってもらえることが増えました。

「講演の内容を本でも詳しく勉強してみたい」というお声もたくさんいただき、この本を執筆させていただくことを決意しました。

この機会を提供して下さった日本実業出版社の皆様には、心より御礼を申し上げます。

本当にありがとうございました。

この本の出版には企画段階から執筆まで1年近くの時間を費やしました。

この1年間は、休日も執筆活動に時間を費やしていたため、一番大切な家族には少し寂しい思いをさせたかもしれません。

自宅で私が難しい顔をしてパソコンの画面に向かっていたことで、家族にはいっぱい気をつかわせてしまったかもしれません。

妻の麻弓、長女の優花と次女の笑花には、この場を借りてお詫びと感謝の気持ちを伝えたいと思います。

「ごめんなさい。

そして、いつもありがとう!」

この本を手に取っていただいた、あなたにお願いがあります。

この本でお伝えしたことを、ここだけで終わらせずにクレーム対応の現場で必ず実践するようにして下さい。

この本に書かれた対応法を自分で試してみて下さい。

この本で書いた内容は、私自身の経験から学んだことだけでなく、クレーム対応に真剣に向き合い、怒りを笑顔にしている私の取引先の皆様や仲間たちの話もたくさん紹介しています。

ぜひ、それをムダにしないでほしいのです(私の心の叫びです)。

この本はクレーム対応の本ですが、本質的な部分では社会での働き方について私が考えていることを書かせていただきました。

クレームを言われる人だけでなく、クレームを言う人にも、このクレーム社会を笑顔で過ごせる方法についてお伝えできたと思っています。

読者のあなたには、この本でクレームに対するストレスを取り除き、毎日楽しくお仕事や日々の生活に向き合うための一助になれば大変嬉しく思います。

お客様の怒りを笑顔に変える才能は誰もが持っています。

本当です。

お客様の怒りを笑顔に変えたときの、あの心地良い癒しにも似た気持ちをあなたにも、ぜひ体感していただきたいと思います。

さぁ、次はあなたの出番です!2017年11月谷厚志

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