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序章|稼ぐ会社の人事制度はテキトー!?

目次

はじめに

~頑張る中小企業の〝道しるべ〟になるために~まず初めに自己紹介を。私は中堅・中小企業の人事給与や労務問題の専門コンサルタントをしています。

約20年前の駆け出しのころ、経営関係の本に載っているような人事給与制度に、当時の私なりの変更を加えてクライアントに導入していました。

ですが残念ながら、「ウチにはあわない」「運用が難しい」などクレームの嵐です。特に実績がある、立派なベテラン社長からの鋭い指摘にグウの音も出ませんでした。

そう、既存の制度に少し手を加えたところで、多種多様な中小企業のスタイルには合わないのです。そこで、思い切って方向転換を試みました。

教科書は捨て去り、目の前の社長の声を聞き、何に不安を感じ、悩んでいるのか?ということに謙虚に耳を傾けました。

そして、社長の想いをカタチにするような人事給与制度づくりに、徹底的に取り組みました。半ば開き直り、ただそれだけに徹してみたのです。

そんなある日、とある業界団体で講師を務めたセミナー終了後、業界でも超有名な2代目社長から「先生のやり方でウチの人事給与制度を指導してほしい」と依頼されました。

地元でも有名な社員200名の優良企業です。そのときの魂が震えるような感動と、「これでいいんだ!」という安堵感は、今でも忘れることができません。

ところが、教科書と決別している私のやり方は、勉強熱心な総務部長やコンサルタント、大手企業出身の顧問など、社内外に多くの〝抵抗勢力〟を生み出すことになり、「客観性と公平性が必要!」「あの人は人事がわかっていない」と批判を浴びることになりました。

それでも、地道に内容を発信し、実績を積み上げることで、徐々に多くの支持を得られるようになり、上場企業を含めて約20年間で300社超の企業の人事給与制度に関与させていただきました。

うち、百数十社とは継続的にお付き合いを続けています。私への依頼の9割超が立派な会社の後継社長です。

「もっと早く先生の指導を受けたかった!」と真面目で熱心な後継社長から評価をいただくようになりました。

本書では後継社長や新たに起業した新人社長、やる気のある総務責任者が、人事給与制度で悩むことなく、自信をもって給与を決め、全社一丸で社員が業績向上に邁進する、そんな会社づくりのエッセンスを述べてみたいと思います。

そして、2つのことを、おことわりしておきます。

1つ目です。私は経営学や人事の専門領域について学問的に学んだことはありません。人事労務の専門家といえるほど理論武装ができているかというと、はなはだ不安です。

私が学んだ対象は、目の前の有能な経営者たち、困難な現実と格闘している孤独なリーダーたちです。あるいは、組織に集う、いろんなものを背負った社員たちの言動です。

その現実・現場・人間同士のぶつかり合いの中での悪戦苦闘を見ながら得た、「こうすればうまくいくのではないか」「これは実は違うのではないか」というささやかな気づきをお話しするものです。

2つ目です。本書は「人事給与制度はこうすべき」という正解を示すものではありません。

あくまで、中小企業が人事給与制度を考えるにあたってのスタンスや意味のある試行錯誤の過程のサンプルを、そのままお伝えするのみです。

どんな企業でも通用する、またはすぐに使える「一般的な人事給与制度のフォーマット」をお知りになりたいのなら、本書は必要ありません。期待ハズレの内容といえます。

そして、本書では人事給与制度において〝テキトー〟にできない部分として、後継社長に知っていただきたい労働法のエッセンスについても紙面を割いて説明しています。

コロナショックを経験したこれからの時代、付加価値を高め、労働生産性を高め、社員の給与をドンドン増やせる会社しか生き残れません。

特に後継社長は先代社長から何を引き継ぎ、何を変えるべきか、そしてどのように変えるべきかについての悩みが尽きません。

だからこそ、多くの社長、あるいは人事部、総務部、管理職にある方、さらには若くてもやる気に溢れている社員は〝道しるべ〟を求めています。

私自身、真剣なオーナー社長に対し、心臓の鼓動が鳴りやむまで自らの技をもって、立派な会社づくりのお手伝いがしたいと思っています。

本当に困って、悩んで夜も眠れないときに最も頼れるコンサルタントでいられることが、私の願いです。

本書がささやかながら、頑張る中小企業の〝道しるべ〟となり、全社一丸となって稼ぎ、豊かになっていく、そんな経営の一助となれば望外の喜びです。

序章|稼ぐ会社の人事制度はテキトー!?

❶稼ぐ会社がやっている人事制度5つのルール

とある大物政治家が、こんなことを言っていました。

世の中は白と黒ばかりではない。敵と味方ばかりではない。その間にある中間地帯が一番広い。そこを取り込めなくてどうする。真理は常に中間にある

「テキトーにやっておく」というのは、「手を抜いていい加減にやる」という意味で使われることが多いです。

しかし、「テキトー(適当)」を辞書でひいてみると、「ある状態や目的などに、ほど良く当てはまること」とあります。

本書では「テキトー」をこの意味で用いています。また、何が「テキトー」なのかを自分のアタマで考えることが中間の真理に近づくと考えています。

人事制度というものは、教科書やセオリー通りに真面目に取り組めば、常に複雑かつ難解なものに仕上がっていきます。

本書では、「中間地帯にある程よい真理としての人事制度」へのわかりやすいアプローチのために、オヤジ(先代社長)と息子(後継社長)を登場させます。

鉛筆ナメナメ、一見するといい加減で、不合理な人事管理をしているオヤジ(先代社長)を一方の「極」としています。

他方、コンサルタントなどの〝専門家〟の指導を受けて、または自分で本を読みセミナーに通うなどの勉強を重ね、詳細で合理的な人事制度を導入したいと考えている後継社長をその「対極」とします。

この序章では、本書を読んだ後、貴社が見つけるであろう人事制度のアウトラインとなるルールを示していこうと思います。

このルールは、立派に経営を行っている会社の社長が実際にやっていた行動から学ばせていただいたものです。

つまり、稼ぐ会社が自社固有「テキトー」にたどり着く「必然の」ルールです。以下に個別に紹介していきます。

ルールその❶目に見えない部分を見る努力をすべし

経営を構成する諸要素には「目に見えるもの」と「目に見えないもの」があります。目に見える部分、客観的に把握できる部分より、目に見えない部分が大切であることが多いのです。社長は目に見える部分はもちろん、目に見えない部分(裏側・深層)を見る努力をしましょう。

たとえば「人事制度を導入して、どういう目に見えない〝副作用〟が起きるか」という視点はとても大切です。

ルールその❷人事の常識を忘れ、自分のアタマで考えるべし

世の中的に正しいとされる、教科書的な人事給与制度のフォーマットや常識を疑ってください。特に人事系の理論はわかったようでわからないもの、確たるエビデンスに基づかない仮説が大半です。

次から次へと外国から横文字の手法が紹介されますが、すべて眉唾モノであると私は考えています。問題が深刻であればあるほど、人は「即効性のある解決策」に飛びつきたくなります。

しかし、安易にかっこいい「フォーマット(型)」に飛びついてしまって、後で大いに後悔することになる例もたくさん見てきました。

中小企業の人事は夫婦関係、親子関係のようなものです。外部からはわからない多くの複雑な人間関係にまつわる物語があります。

したがって、取組みの目的を明確にし、その会社固有の問題を、固有の解決策で、固有のプログラムで進めていくことが必要です。すでにどこかでうまくいったと紹介される「手法」は自分の会社にあてはめてもうまくいかない、これが原則です。

ルールその❸シンプルは常に善、複雑は常に悪とすべし

コンサルタント・人事屋は難しい制度を導入し、その運用を複雑化する天才です。しかし、複雑さはロクな結果をもたらしません。

みんな、詳細がわからなくなっていき、興味も失っていきます。でも、単なるシンプルは手抜き、まさに悪い意味でのテキトーを招きます。

常識にとらわれず、本当に人事で大切なもの、欠かすことのできない取組みを見抜き、後はバッサリと些末事項として切り捨てられることが大事なのです。そもそも評価制度というものは本当に必要なのでしょうか?そこから見直していきましょう。

ルールその❹現場の人間同士がぶつかり合って真剣な対話をすべし

私は組織で起こる問題の大半がいわゆる〝コミュニケーション不足〟に起因していると考えています。特に業績がパッとしない中小企業では、まるで大手企業のように部門・個人間に隔たりがあったりします。

人事問題にかかわらず、経営問題は、皆がありたい姿を共有し、問題点を「見える化」し、状況を知りうる人同士が真剣かつ腹を割って対話することで局面を打開できます。

この組織風土がない会社が、複雑かつ難解な人事制度を運用して成果をあげることは不可能です。逆に人事制度を導入することが、この大切な対話を阻害してしまうことさえあります。そんな最悪の場面を山のように見聞してきました。

ルールその❺制度・法律を考える際、人間の本性に重きをおくべし

制度や法律・社内ルールを考える際に、常に人間の本性を大切にするほうがうまくいきます。人間の本性を大切にするということは、人間が感じる喜びや悲しみ、快不快について理解したうえで物事を進めるということです。

たとえば、脅しや不安を煽って、ある行動に駆り立てることもできます。

しかし、人間が持っている良心を引き出し、喜びの獲得や痛みの緩和に向けた制度設計・労務管理をするほうがうまくいきます。

本書でとりあげる人事制度の分野では、一般的に客観的な基準を設定し、働きを測定し、点数化し、給与をアップダウンさせて人を動かすことを重視しがちです。しかし、これは人間の本性に適ったものではありません。私は多くの人事制度は難しすぎ、違和感があり、人間の本性に適ったものではないと考えています。

❷理想的な「テキトー感」を見つけるための9つの章

では、以上のルールをざっとご留意いただき、次に本書の構成を述べます。

「第1章オヤジ(先代社長)の時代と何が決定的に異なるのか?」先代社長の時代の外部環境や社員の価値観が大きく変化していることを確認します。

後継社長はその変化に対応して政策変更していく必要があるからです。

『種の起源』で有名なダーウィンは「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」と述べています。

私はこの言葉をいつもかみしめています。

「第2章人事給与制度の落とし穴をつぶさに見る」私が現場で観察してきた事例をもとに「一般的な人事給与制度」を導入した際の失敗から人事評価制度について学びます。

ここでいう「一般的な人事給与制度」とは、①できるだけ客観的に過去半期、または1年の成果を測ろうとする。

②成果に連動した給与制度でやる気を上げようとする。という特徴を持つ教科書的なフォーマットのことを指しています。人事評価制度とは、この「一般的な人事給与制度」に組み込まれた制度のことを指しています。

「第3章給与制度の『常識』は『非常識』?」人とお金の関係について述べます。

ここも常識とされることが大きなミステイクを引き起こしかねないケースがよく見られます。給与というのは極めて社会性のあるものです。ですから、とても制約が多いのです。人事給与制度を考える際に、この点の理解が前提となります。

「第4章実は合理的だったオヤジ(先代社長)の判断」先代社長の「不合理に見えるが実は合理的なのではないか?」と思われる側面に焦点をあてます。つまり、先代社長から何を学ぶかを考えてみます。後継社長は承継した会社をゼロリセットすることはできません。

良い部分、変えてはいけない部分を引き継ぎながら、変えるべき部分を果敢に変えていくことが求められます。また、すぐに変えることが可能な部分と、時間をかけて変えなければならない部分の判断も大切です。

「第5章後継社長が人事給与制度を導入するときに外せない原理原則とは?」第4章の「不合理に見える合理性」を踏まえて、後継社長がどのように人事給与制度を導入していったら良いか、その勘所を述べます。

後継社長は先代社長と同じ考え方・やり方で人事給与制度を運用していくことはできません。一定の説明責任や合理性を求められるのも事実だからです。

「第6章後継社長の人事給与制度5つのポイント」第5章の「原理原則」に基づいて、「一般的な人事給与制度」を導入する前に、まず考えてほしいポイントを5つ、具体例を交えながら解説していきます。

先代社長のいいところを学びつつ、後継社長ならではの現代性をもった制度を構築していく、その勘所をお伝えします。

「第7章後継社長は労働法をこう使う」最近、働き方改革の推進などで特に難しくなってきた、労働法への対応について述べます。

ここも先代社長の時代と大きく異なる部分です。オヤジの時代に起こらなかった労務問題が次々と噴き出してくる、というくらいの覚悟が必要です。

この部分ではテキトー(適当)であることが許される中間領域は限られているので、知識としてそのポイントを勉強しておく必要があります。

「第8章後継社長の制度改革の要諦は中長期の展望にあり」先代社長の時代の制度を後継社長がどのように変えていくべきかを述べます。

ここがもっとも難しい問題となります。あるべき姿を描きながら、あせらず、しかし、時間を味方につけて着実に取組む必要があります。

人事給与は社会性のカタマリです。社員とその家族の生活がかかっています。一部でも不利益があれば、相当な配慮が必要となります。思いついたらすぐに変えてしまうという乱暴なことは一切できません。

しかし、労務コストを安易に増やすこともできません。ですから、中長期の展望に立って、ジリジリと変えていくほかないのです。

「第9章もう一度やり直す覚悟を!~アフターコロナの自己改革」最終章にあたって、2020年に全世界を覆った、新型コロナウイルス感染症による経済的大打撃を受けたあとの会社運営のあり方について、簡単に述べたいと思います。

戦後最大級の大不況とも言われているこの状況下で、苦しい戦いを強いられている方も多いことと思われます。そんな中でも「ピンチをチャンスに変える」希望はあるはずです。

それを探っていくつもりです。さて、私は中小企業は大手企業のモノマネをしてはいけないと考えています。

大手企業は機械的・汎用的に処理せざるを得ないので、必要悪として複雑かつ難解な人事制度を導入しています。

一方、人・物・金・情報の資源が限られている中小企業は独自性が必要です。独自のテキトー感を失えば、中小企業としての強みが消えてしまうのではないか、そんなふうに私は感じています。

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