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第6章手当を必要なモノに限定して支給する

目次

1必要不可欠な手当に限定する~合理的な賃金管理を考えるうえで検証すべき5つの各種手当

◎手当の原則を頭に叩き込んでおく

手当には、さまざまな種類のものが考えられますが、基本給では吸収できない要素を補完するものという原則を忘れてはいけません。あれもこれもとたくさんの手当を設定することが、社員への配慮の表れだと考える方もいますが、これは間違いです。

手当が幾重にも支給されるということは、基本給が低いために手当を加算しないと世間並みにならないということに他なりません。さらに、手当の支給条件によって支給される者とされない者がでることで、不公平感を助長する恐れすらでてくるのです。

すでに第2章で確認したとおり、基本給で対応できない要素は、次の4つに大別できます。

①勤務時間に関連する手当

②特殊な技能を必要とする職種に支給する手当

③作業環境の特殊性に応じて支給する手当

④生活関連手当

これ以外の要素は、原則として基本給で受け止めるようになります。

例えば役職について「偉くなった」からといって手当をつける必要はありません。なぜなら責任等級制度では仕事の質、担当職務の役割責任で等級が決まるのですから、等級別に設定された本給月額表の水準には、当然に責任要素が組み込まれているからです。

次項目以降では、合理的な賃金管理を考えるうえで、すべての企業で検証していただきたい代表的な手当として、管理職手当、特技手当と特殊作業手当、家族手当、および住宅手当をとりあげます。

2管理職手当を正しく決定する~「労働時間に関係する手当」として正しく設定する

◎一般的な役付手当とは本質的に異なる

ここで説明する管理職手当は、管理職が所定労働時間を超えて働くことを想定して、その時間外勤務の保障分としてふさわしい額を支給するものです。

責任等級制度では、仕事の責任の重さの要素は、基本給の中に組み入れて水準決定していますので、「管理職になって偉くなったから役付手当を付けて厚遇する」という考え方はとりません。

職能資格制度のもとで職能給に役付手当を付加するように、基本給と職制上の役割責任を切り離して運用する必要はないのです。

ただし、基本給はあくまでも所定労働時間内の労働に対するものですから、それを超過した分については別途保障する必要があるということです。

◎間違った運用をされがちな役付手当

等級に身分資格階層が色濃くでている会社では、かなりの確率で間違った役付手当が運用されてきました。問題となるのは、時間外勤務手当が支給される係長と課長の金額差が少ないということです。

ここでは課長55,000円、係長20,000円で、その差額は35,000円ですが、係長に支給する時間外勤務手当が35,000円以上あれば手取額は逆転する可能性が高くなります。

要は、時間外勤務手当の付く非管理職層と、時間管理の対象から外れる管理職層に対する給与上の取り扱いの違いを正しく認識していないために、このように不公平感を増長させるような金額設定が行われているのです。

役付手当の支給額の設定によっては、必要以上に昇格願望をあおったり、正しい賃金格差を歪めたりすることになります。

そうならないためにも、管理職手当を管理職に限定して支給する「労働時間に関係する手当」として正しく設定しなければいけません。

労働基準法41条第2号では、「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」については、労働時間および休日の規定は適用しない、と定めています。

「管理職になると残業手当が付かなくなる」というのは、この条文からきています。つまり、管理職は会社の立場に立って、部下の時間管理を行うのですから、そもそも時間管理には馴染まないということです。

ただそうはいっても、管理職に対しても時間外勤務の保障分としての見合う金額以上の管理職手当を支給しなければバランスが取れませんので、適正な水準で管理職手当を支給する必要があるのです。

◎管理職手当は残業時間を参考に決定する

管理職手当は、等級別の定額設定が基本です。

この時、管理職手当の支給水準が適正な水準になっていないと、「管理職に昇進して時間外勤務手当(残業手当)が支給されなくなり、かえって手取額が減ってしまった」との不満が噴出することになるわけです。

仕事上の責任が重くなる一方で、給与手取額が減少してしまうのであれば、管理職になりたくない社員が続出するのも無理からぬことです。

そうならないためにも、管理職手当は、部下の残業時間を参考に決定するようにします。

次ページのように考えます。

なお、部門や職場の状況によって労働時間の実態が違うとしても、管理職手当には差違を設けず、等級定額で支給すべきものです。

部門による支給額の差は、あらかじめその部門・部署のマネジメントに対し優劣や難易度のレッテルを貼ることになってしまう可能性があるからです。

3特技手当と特殊作業手当を設定する~考え方をきちんと理解し、自社の事情にあわせて運用していく

◎公的資格免許保有者等には特技手当で調整する

公的な資格免許や高度な専門知識・技能を保有する方については、一般の社員に比べ、賃金相場がやや高めであることが多いものです。

そのような社員には、特技手当(公的資格手当)を支給して給与水準を調整する必要があります。特に中途採用時、仕事に必要かつ有効な有資格者を採用するときには、特技手当が効果を発揮します。

建築士、施工管理技士、調理師、看護師や薬剤師、介護支援専門員、デザイナーなど特殊な技能・技術を必要とする職種と手当支給額は、最終的には所定内賃金総額との関係で決められるため、対象となる職種と手当の支給基準は各社の実情に応じて決める必要があります。

参考例として、ここでは実際に医療法人・社会福祉法人での特技手当の設定例を載せておきました。運営上で注意すべき点は、次の4つです。

(1)職務遂行上、必要かつ有効な資格のみを対象とすること

(2)対象となる資格を保有しているだけでなく、実際に仕事に生かしていること

(3)複数の資格保有者には、最も重要な資格についてのみ支給し、重複支給はしないこと

(4)取得することが前提の資格や免許、会社が取得費用を全額負担したものについては、手当の支給対象としないこと

・社員の自己啓発や能力開発のために資格取得を奨励するときこの場合、特技手当は用いません。

特に、「仕事で使わないもの」「将来は仕事に有効であるとしても今の仕事には必ずしも必要がないもの」が含まれているときの具体的な資

格取得奨励策の進め方としては、①自己啓発支援制度や資格取得奨励制度をつくって対応する②補助金や表彰金など一回限りの報奨金として支給する③資格取得費用の会社負担などの方法で対応するのが良いでしょう。

このほかに法令の要請によって、防火管理責任者など、業務上で公的な資格・免許を保持する者の届け出が義務付けられている場合に、法的責任を負う立場であることから、対象者に対して若干の特技手当を支給することがあります。

ただし、もとより管理責任を負う管理職であり、会社が取得費用を負担している場合には支給する必要はありません。

◎「きつい、汚い、危険」が伴う仕事には特殊作業手当で調整する

特殊作業手当は、作業環境や作業条件が一般業務に比べて悪い職場に勤務する場合に支給する手当で、いわゆる「きつい、汚い、危険」が伴う、いわゆる3K仕事がその対象となります。

肉体的、精神的にも大きな負担のかかる環境下で行われる作業に対する、インセンティブとしての役割を持つのが、本手当です。

具体的には、高所作業、爆発物や有害物の取扱い、製鉄所など高熱職場での作業など、その適用範囲は広いものです。

廃棄物処理作業や建物解体現場のような粉塵の多い現場などで「粉塵手当」と呼ばれるものも、この特殊作業手当の一種です。

その作業に就く頻度により、支給方式も月額で定額を支給するのか、その業務に携わった日に日額で支給するか、あるいは時間単位で支給すべきか、会社ごとに状況に応じた支給基準を設定することになります。

どのような作業にいくら支給するかについて、作業条件に応じ支給額を決定するルールをあらかじめ定めておくようにします。

4家族手当に社長のメッセージを込める~勤務成績にかかわらず一定の生活水準は維持させたい

◎家族手当を支払う根拠を正しく理解する

家族手当を支払う根拠はどこにあるのでしょうか。

もともと家族手当が、高度成長期の生活費の急上昇にともなう生活補填費的な性格を持つものであったことは事実ですが、今では、その性格も大きく変わってきています。

「直接仕事に関係しない手当だから、廃止すべきではないか」という主張も聞かれますが、新卒入社後、2〜3年で年収が400万円を超えるような大企業とは異なり、中小企業では家族手当なしに標準生計費を維持していくことが難しい会社も少なからずありますので、大企業と同列に論じることはできません。

家族手当は、生活費の補填という性格を持ち合わせていますが、「社員一人ひとりがわが社でしっかりいい仕事をしてくれるのは、本人の努力はもちろんのこと、家族の理解や支えがあってのことであり、会社もそのことを十分に理解しているし、いつもその家族も含めた社員の幸せを考えている」という会社の姿勢を示していることが重要なのです。

扶養家族のある社員からは「会社は家族にも配慮してくれてありがたい」と感じてもらえるし、扶養家族のない社員にとっても納得できる範囲の金額ならば、家族手当への理解も十分に得られ、不公平と思われる心配もありません。

家族手当は会社と社員との関係を円滑なものにするため効果的な手当だということは、今も変わらないのです。

※家族手当①、「、、」。

※家族手当②、、、。

◎家族手当に隠された合理的な運用のための仕組み

家族手当を支給する会社側のメリットはこれだけではありません。

家族手当を支給することで、若年層社員の賃金の中だるみを是正することができ、人件費原資の効果的配分に結びつけることができるのです。

現在、27歳、既婚社員の標準生計費(2人世帯)として、会社は26万円という水準を考えています。家族手当がなければ、260,000円すべてを基本給としなければなりませいことになり、基本給カーブはより緩やかな傾きにできます。

家族手当がなければ、独身者に対しても世帯持ちと同様に、2人世帯での生計費がまかなえる基本給水準が必要になってきます。それだけの水準が維持できなければ、社員の定着も中途採用もうまくいかなくなるからです。

さらに、基本給カーブの傾きを緩やかなものに修正できたら、その分の原資を賃金表のスタート金額の引上げにまわして若年社員の基本給を引き上げれば、今よりも有利な採用条件を提示することができるようにもなり、一石二鳥です。

このように家族手当は、会社にとってもメリットの大きい手当なのですが、支給水準が低すぎても、反対に高すぎても十分な効果は期待できません。

◎会社によって支給方法にバリエーションがあって良い

次ページに掲げたモデル支給例には、4つのパターンがあります。

所定内賃金が、地域相場の水準を超えていると判断できれば、家族手当は例1で示した、配偶者15,000円、第一子5,000円、第二子5,000円という金額でもかまいません。

これは、ほぼ全国的な支給実態に即した金額です。

給与水準が低ければ、家族手当を高めに設定することをお勧めします。

会社の業績が向上し、賃金表(=本給月額表)のベースアップができるようになったときは、基本給を引き上げるのと同時に、家族手当を徐々に例1の水準程度まで減額すると良いでしょう。

家族手当は、社長の考え方が、最も反映されやすい手当でもあります。

ある社員50人の建設会社では、例3のように第一子に手厚い支給に切り替えました。

その会社の社長は、「自社の若手社員を見ると、たいてい結婚後も共働きをしているから、家族手当(配偶者分)の支給対象者は非常に少ない。

その半面、子供が生まれたときは、家族が増えて生計費が余計にかかるだけでなく、奥さんも産休・育児休業期間中の給与収入がなくなるから、第一子に手厚く支給したい」とのことでした。

一方、社員30人の機械部品メーカーでは、例4のパターンを採用しました。

「さまざまな事情の社員がいるから、配偶者分を止めるつもりはないけれど、金額は原則として子供と同額でいいだろう。

ただ、生計費アップに直結する一人目の扶養家族に対して手厚くしたい」というのが社長の弁でした。

そこで、扶養家族には全員一律5,000円を支給するものとしたうえで、第1順位の扶養家族には、10,000円を加算することにしたのです。

このように家族手当の支給方法には、唯一無二の正解があるわけではありません。

会社によって支給方法にもさまざまなバリエーションがあって良いのです。

大切なのは、家族も含めて社員の幸せを考えているという、会社からのメッセージが込められていること。

それは、「たとえ勤務成績が平均以下であっても、家族の状況に応じた生活水準は維持してあげたい」という、社長の想いの表れでもあるのです。

5住宅手当は不公平感を助長しやすい~手厚くしても必ずしも社員が満足するとは限らない

◎各種手当の中でも比較的支給金額の大きな手当

住宅取得費用が高額になりやすい日本では、住宅手当は必要不可欠な手当項目として捉えられがちです。

しかし、住宅費用について会社が公平に対応しようとすればするほど、支給基準は複雑化し、迷路に入り込むケースが多いのもまた事実なのです。

そもそも住宅に対する考え方は、社員によって大きく変わります。

本来、住宅費用は、毎月の給料の中から社員が負担すべき性格のものですが、「多少は費用が高くても広めの家で暮らしたい」と考える社員もいれば、「今は狭い部屋で我慢して、頭金ができたら、いずれ家を持ちたい」という社員もいるかもしれません。

親から受け継いだ自宅の社員もいれば、すでに家を購入して住宅ローンを払っている社員もいることでしょう。

このように住宅事情は人それぞれですから、一定の条件で支給基準を設けて住宅手当を設定すれば、その条件から外れる社員からは不平・不満の声が上がってきます。

住宅手当を手厚くしたからといって、必ずしも社員が満足するとは限らないのがこの手当の難しいところです。

会社としては、住宅手当には深入りせずに基本給を充実させることに専念し、住宅費用の取扱いは社員自身に委ねるべきでしょう。

ただし、次に解説するようなケースでは、必要に応じてバランス良く住宅手当を設定するようにします。

・住宅手当が必要な場合社宅や寮がある会社では、その入居者とのバランス上の配慮から住宅手当を設定した方が良い場合があります。

社宅や寮では、通常は本人負担が少なく、会社が半分以上の費用を負担していることが多いものです。

社宅が用意されている以上は、これを有効に活用することが望ましいわけですが、この場合には世間相場よりかなり安く住居を提供することになるため、社宅に入れない社員との間で不公平感が生まれます。

これを解消するために、社宅に入っていない社員に対しても住宅手当を支給することになるのです。

ただし、この金額はできる限り少額にとどめ、一方で社宅入居者には適正な水準の住居費を負担してもらうようにしなければなりません。

◎住宅手当と時間外勤務手当をともに支給するときの注意事項

中小企業には「借家・借間に居住する社員に対し、扶養家族を有する世帯主には20,000円、独身者には10,000円を支給する」というように、家賃額にかかわらず家

族持ちの世帯主ならいくら、独身ならいくらと決めている会社が多くあります。

このような住宅手当は、住宅の取得費用に応じた支給額となっていないため、時間外勤務手当の割増単価を算出する際の算定基礎から除外することはできません。

住宅手当の有無が、残業手当の支給額にも大きな差となって跳ね返ってくるのです。

ここに2人の同年齢の社員がいて、いずれも基本給は260,000円。

一方には住宅手当30,000円が支給され、一方には支給されていないとしましょう。

月の所定労働時間を160時間として、この2人がそれぞれ月30時間の残業を行ったときの時間外勤務手当の額を計算すると、次のようになります。

時間外勤務手当の差は7,031円に達し、1回分の昇給額に匹敵する金額です。

住宅手当の支給額が大きいほど、この差は拡大します。

同じように働いて、同じ時間の残業をしても、もらえる金額がこんなにも違うのであればBさんには納得できないことでしょう。

このようなケースも、不公平感を助長することになりますので、過大な住宅手当には注意が必要です。

実務現場で考えるコト⑤昇格昇進運用と賃金処遇

人事・賃金制度の運用の成否は、ひとえに昇格昇進の運用にかかっているといっても過言ではない。

「昇格」とは今よりひとつ上位の等級に格付けることをいい、「昇進」とはより責任の重い上位の仕事やポストに就くことを指す。

そして、昇格と昇進は切り離さず、昇格させるのと同時に昇進させるのが基本。

等級格付だけを引き上げて、担当する仕事の中身は今までどおりということがあってはならない。

職能資格制度の導入企業では、その等級に求められる職能レベルに対し、一定水準以上に達したと判定されれば、その等級を「卒業」して上位等級に昇格させるという運用が行われていた。

責任等級制度であれ、職能資格制度であれ、また職務等級制度であっても、等級格付けが賃金処遇決定の基準となるので、昇格をさせれば給与額は上昇する。

特に昇格時に基本給が大きく跳ね上がる「昇格昇給」を織り込んだ職能資格制度では、人件費の上昇が仕事と賃金のミスマッチの引き金となりかねない。

なぜなら、職能等級は昇格しても、昇格時点での仕事の中身そのものは昨日までと同じで、給与だけが上昇するからだ。

賃金決定のベースとなる等級制度が何であれ、昇格昇進運用が甘い会社は、人件費が高止まりしやすく、年功的な賃金分布となりやすいという傾向が強くでるので要注意。

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