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第3章従業員ともめないようにルールを書面化する

目次

1要注意!ルール変更が労務トラブルのもとに

◆社員は労働基準法で守られている

評価制度を変更しようとする前に、必ずやるべきことがあります。

それは、従業員の労働条件を定めた雇用契約書や、会社のルールである就業規則を再確認することです。

もし、改定後の評価制度に雇用契約や就業規則と食い違う部分があれば、新制度に見合うように契約書や就業規則の内容を修正しなければなりません。

ただ、それらを修正・変更した場合は従業員への承諾までは必要ありません。

※修正・変更した場合は従業員への承諾までは必要ありません就業規則の変更には意見を聞くことは必要ですが、承諾(同意)までは不要です。

改定する評価制度の内容が労働条件に違反しないようにするのはいうまでもありません。

たとえば、年2回支給していた賞与を年1回に変更する場合、就業規則の該当部分を「賞与は年1回以上とする」等に書き換えて、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聞く必要があります(意見書に意見の記入と署名もしくは記名・押印が必要)。

このことは労働基準法(労基法)で定められており、もし、従業員の了解を得ないまま評価制度を変えてしまうと「雇用契約の労働条件に合致しない」という声があがり、トラブルのもとになります。

最悪、労働基準監督署に通報されてしまいます。

労基法はご存知の通り、従業員の保護を目的とした、会社が守らなくてはならない最低限の労働条件を定めた法律であり、当事者間の意思の如何にかかわらず執行される強行法規の一つです。

そして、労基法の違反を取り締まる機関が労働基準監督署(労基)です。

従業員が「労基法に違反している」と感じ、会社と話し合っても解決できないと判断すれば、労基に通報します。

すると、労基の職員による調査が入ります。

調査の結果「違反あり」と判断されれば、是正勧告が出されます。

会社がこの勧告を無視して違反行為を続けた場合、または会社側が「是正した」と主張しても再監督時に「是正されていない」と判断された場合は、検察庁に送検され、懲役や罰金など司法処分の対象となります。

また、重大な悪質性があった場合は勧告なしで司法処分となります。

そのため、違反を未然に防ぐことはもちろん、知らずに違反してしまった場合は迅速に是正することが重要です。

また、労基は通報の調査の他にも、毎月特定の事業場を訪問して適正に業務が行われているかをチェックする「定期監督」、重大な災害があった場合に現場に駆けつけて調査する「災害調査」などを行い、労働現場に違反がないかどうかを常にチェックしています。

◆気づかないうちに従業員に不利なルールになっていたら?

故意ではなくても、違反していることに気づかずに業務を続けてしまう場合もあるでしょう。

たとえば、次のようなケースです。

「契約書や就業規則に、最低限の労働条件が明記されていない状態で業務を続けていた」「契約書や就業規則に記された労働条件が、そもそも従業員にとって不利なルールであり、そのまま業務を遂行していた」この場合も、調査や是正勧告、場合によっては罰則の対象になってしまいます。

会社を経営する限りは労基法を遵守する必要があり「知らなかった」では済まされないのです。

是正勧告で指摘されやすい項目として、多いものから順に、左記に示します(2011年厚生労働省「臨検監督の状況」)。

自社に当てはまる行為がないか、労働契約書や就業規則に明記されたルールを遵守しているか、しっかり確認しましょう。

・(必要な届け出がないまま)時間外労働を行わせた・機械や設備などの安全基準を満たしていない・割増賃金を支払っていない・年1回の健康診断を実施していない・就業規則の作成・変更を届け出ていない・労働条件を明示していない・賃金台帳が適切に調製されていない※時間外労働を行わせた「」、。

◆労務トラブルが事業にブレーキをかける要因になる!

労基による調査や是正勧告を受けたり、罰則が科せられたりした場合、会社が受けるペナルティーはそれだけではありません。

勧告に従って是正したり、罰金を支払って罪を償ったとしても、会社が違法行為をしたという事実は消えてなくなるわけではありません。

その事実が社会に伝われば、会社は社会的信用を失い、「ブラック企業」と呼ばれるようになってしまいます。

そうなれば、従業員のモチベーションが低下し、離職率の増加を招いてしまいます。

周囲から「ブラック企業で働いている」と思われるのは辛いことですし、違反内容が是正されたとしても、そのレッテルを剥がすことはできません。

以前のように会社を信用できず、気持ちよく働くことができなくなってしまえば、転職を考えるのは当然でしょう。

また、労基法の対応はもちろん、通報した従業員との話し合い、他の従業員への説明も必要です。

会社への信用をそれ以上下げないよう、批判は真摯に受け止め、質問に対しては適切に回答しなければなりません。

取引先や顧客からも問い合わせが来たり、契約を切るという連絡が入るかもしれません。

最悪の結果にならないよう、慎重な対応が必要です。

このように、事業に費やすべきエネルギーと時間が、多方面で消費されることになってしまいます。

モチベーションが低下した従業員たちに無理をさせることもできないため、事業が足止めを食らってしまい、業績不振につながるリスクがあるのです。

◆「労働条件」を明確にしよう

そのような事態に陥らないよう、従業員採用の際には必ず、給与や労働時間などの労働条件を書面で確認するようにしましょう。

その必須書類である労働条件通知書のつくり方については後で詳しく説明しますが、ここでは労働契約書と就業規則に書かれた「労働条件」について、しっかり把握しておきましょう。

たとえば労働契約書に、評価制度の改定時に発生すると考えられる次の内容について、記載はあるでしょうか。

・給与の減額について・賞与の廃止について・支給項目の変更について・給与テーブルの改定についてこれらの項目がない、または一部欠如している場合は、早急に内容を決定して記載しなければなりません。

すでに明記されており、評価制度の改定によってズレが生じ整合性が取れなくなる場合は、先に労働条件および労働契約書の変更に取り掛からなければなりません。

繰り返しになりますが、従業員にとって不利な変更になる場合は、事前に労働組合や従業員に対して就業規則の変更を伝え、十分な説明を行い、もし、修正・変更した場合は従業員への周知義務があります。

または、改定する評価制度の内容を労働条件に違反しないよう調整します。

たとえば労働契約書に「入社後2年間の給与は金額を据え置きとする」と記載していたとします。

すると、新しい評価制度でも、入社2年未満の従業員は減給対象にできません。

そこで、成果を出していなくても「入社後2年間は特例措置として減給しない」などを付記することで、整合性を維持するという方法です。

評価制度や給与制度の見直しを始める前に、必ず、自社の労働条件を明確にしておいてください。

2規程と書式を見直しトラブルを回避する

◆見直しポイント①就業規則

就業規則とは、従業員の給与や労働条件、その他について定めた会社のルールブックのことです。

ルールを定めることで、会社と従業員が共通認識を持ち、トラブルを未然に防ぐことができます。

労基法では「常時10人以上の労働者を使用する使用者は(中略)就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と定められており、これに違反した場合は30万円以下の罰金が科せられます。

労働者とは、雇用するすべて人のことを指します。

当然、パートタイマーや契約社員も含まれます。

就業規則には、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、事業場で定める場合に必要となる「相対的必要記載事項」の2種類があります。

絶対的必要記載事項(労基法89条)・始業・終業時刻・休憩時間・休日・休暇(年次有給休暇、育児休業、生理休暇、冠婚葬祭等の特別休暇など)・交代勤務の場合は、交代の期日、時刻、順序など・賃金(基本給や各手当)の決定方法、計算方法・賃金の締め日、支払日・昇給の時期と条件・退職、解雇、定年の事由や手続き相対的必要記載事項(労基法89条)・退職手当について・退職手当を除く臨時の賃金(賞与)、最低賃金額・食費・作業用品などの負担・安全衛生について・職業訓練について・災害補償、業務外の傷病について・表彰、制裁について

・その他全従業員に適用される事項就業規則の内容は、法令に沿ったものでなければなりません。

作成の際は、法律や労務問題に詳しい社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。

就業規則を作成・変更するときは、「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者の意見」を記した書面を添付し、労基に届け出をする必要があります。

また、作成した就業規則は、事業場の見やすい場所に備え付けたり、書面で交付したりなどして、従業員全員に周知する義務があることも忘れてはなりません。

補足〈パートタイマーの就業規則について〉パートタイマーを雇い入れ、正社員とは別の労働条件を定める場合は、パートタイマー専用の就業規則を作成する必要があります。

この場合、正社員用の就業規則の中に「パートタイム社員には専用の就業規則が適用される」という但し書きを加えるとよいでしょう。

作成の際は、以下のことに注意しましょう。

・正社員に適用される法律は、原則としてパートタイマーにも同様に適用される→すべての従業員は、法律によって守られています。

・同一労働同一賃金ルールを守る→パートタイム・有期雇用労働法(2020年4月より施行、中小企業は2021年4月より施行)の中で、パートタイマーや契約社員などの非正規社員と正社員との間で同一労働同一賃金ルールが決められました。

これにより、手当や賞与、退職金の有無などについて、正社員と非正規社員で不合理な待遇差をつけた場合、違法になってしまうので注意が必要です。

このルールについては、第4章で詳しく説明します。

※同一労働同一賃金ルールが決められました①職務の内容・配置の変更の範囲が同じである場合、基本給、手当、賞与、福利厚生などすべての待遇に対して、差別的取扱いが禁止されました。

※同一労働同一賃金ルールが決められました②正社員と比較して、職務の内容、配置変更の範囲、その他の事情において差がある場合にはその差に応じて均衡待遇を行う必要があります(待遇差を合理的に説明できることが求められる)。

※違法①②。

①、、、、、②、、、、

◆見直しポイント②労働条件通知書・労働契約書(雇用契約書)

労働条件通知書は、正社員・パート・契約社員などの雇用形態にかかわらず、従業員を雇い入れるときに必ず伝えるべき内容を盛り込んだ文書です。

労基法では、入社時に「賃金・労働時間その他の労働条件について書面の交付により明示しなければならない」と定められており、万が一、交付しなかったり、内容が法令にそぐわなかったりした場合、30万円以下の罰金が科されます。

労働条件の締結の際に書面交付により必ず明示しなければならない項目は、次の通りです。

・契約期間/期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準・就業場所・業務内容・始業、終業時刻/休憩時間/休日、休暇・賃金の計算方法、締め日、支払日(昇給に関する事項は書面での交付義務はなく、口頭でも可)・所定労働時間を超える労働の有無・労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項・解雇を含む退職に関する事項一方、労働契約書(雇用契約書)は、雇用の際に会社と従業員の間で交わされる契約書で、記載内容は労働条件通知書とほぼ同じです。

そのため「労働条件通知書兼雇用契約書」としてまとめるケースもあります。

労働契約書自体に法的義務はなく、なくても労働契約は成立しますが、のちのちのトラブルを回避するため、できるだけ作成することをお勧めします。

雇用契約書は2通用意して、それぞれ従業員に署名捺印してもらい、1通を従業員が、もう1通を会社が保管します。

※労働条件通知書と違って法的義務はなく①労働基準法は労働契約の締結の際に「書面の交付」により明示することを求めています。

必ずしも「労働条件通知書」としているわけではありません。

なお絶対明示事項としては上記の他に次ページの4つも含まれます。

さらにパートタイマーおよび有期雇用労働者の場合は、上記の必須項目に加えて、次の内容を記載しなくてはなりません。

・昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無・相談窓口(短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口)について※労働契約書自体に法的義務はなく②①②③④、

◆見直しポイント③給与規程

給与の支払いに関するルールは、就業規則の本則とは別立てで、給与規程(賃金規程)を作成するのが一般的です。

この規程も、就業規則の本則とともに労基に届け出なければなりません。

給与規程に記載する項目のうち、とくに大事なものについてまとめていきます。

【給与体系】給与体系とは、給与の支払い項目や、その決定方法、支給基準をまとめたものです。

給与は、所定の労働時間内の労働に対する対価として支払われる基本給や諸手当などの「基準内賃金」と、時間外手当や通勤手当など、所定の労働時間に関係なく支払われる「基準外賃金」に分かれています。

基準内賃金は最低賃金の対象となるため、給与を設定する際は、基本給と諸手当を足した金額が最低賃金以下にならないようにします。

(90ページ参照)基本給は、年齢や勤続年数で決める「属人給」、仕事内容や能力によって決める「仕事給」、属人給と仕事給の両方の基準で決める「総合給」の3タイプがあり、多くの企業では総合給型を採用している会社が多いように見受けられます。

なお、残業代について注意点があります。

「管理職には残業代を払わなくてもいい」とお考えの社長が時折、いらっしゃいますが、場合によっては違法となることがあります。

社内での役職にかかわりなく、「労働条件の決定その他労働管理について経営者と一体的な立場にある者」という定義に該当する方だけは労基法上の「労働時間」や「休日」等の規定が適用されないため、残業代は支給されません。

※役職手当が支払われている管理監督者役職手当が支払われているからという理由のみで、労基法上の管理監督者に該当するとはいいきれません。

【給与形態】給与の支払形態には「月給制」「日給制」「時給制」のほか、年単位で決定した金額を毎月分割して支払う「年俸制」、従業員が製造・販売した物の量や売上などに応じて決める「出来高制(歩合制)」などがあります。

このうち月給制は、遅刻や欠勤等があっても減額されず決まった金額が支払われる「完全月給制」と、遅刻や欠勤の時間分を減額されてしまう「日給月給制」に分けられます。

なお、年俸制の場合、給与改定のタイミングは年に1回となるため、人事評価を年に複数回行う制度との連動は困難となります。

【給与改定】多くの会社で、毎年決まった時期に行われている給与の見直しについても、就業規則に必ず記載しなければなりません。

とくに昇給は、絶対的必要記載事項に当たります。

【賞与(ボーナス)】賞与については、労基法の通達に「従業員の勤務成績に応じて支給され、その額があらかじめ定められていない」臨時の給与として記載されています。

支払いは義務ではなく、任意です。

支給する場合、多くの場合は半年間の査定期間を設けて、企業の業績や従業員の勤務成績、勤続年数等を基準に金額を決定します。

詳細は第2章の〈賞与は何を根拠に支払うのか?〉(104ページ)を振り返ってください。

給与規程には、賞与の支給の時期や対象者などを記載します。

業績の悪化等により賞与を取りやめる可能性がある場合は、あらかじめ「会社の業績が悪化した場合は支給しない」旨の但し書きをしておきます。

参考〈給与の支払いについて注意すべき点〉・賃金支払い5原則労基法で定められている原則で、会社は給与を、①通貨で、②直接従業員に、③全額を、④毎月1回以上、⑤一定の期日を定めて、支払わなければなりません。

守らなかった場合、法律違反となるので注意が必要です。

①通貨で支払う給与は、現金かつ日本円で支払われなければなりません。

ただし、従業員の同意を得ている場合は、所定の金融機関の口座への振り込みによる支払いが認められます。

②直接、従業員に支払う従業員が病気や入院、長期出張などのやむを得ない事情で直接受け取ることができない場合は、配偶者など、従業員の「使者」と認められた者にのみ、支払うことが認められています。

親権者などの法定代理人や、従業員が借金をしている場合の債権者など、本人と使者以外の者に支払うことは認められていません。

③全額を支払う給与は、従業員に全額支払わなくてはなりません。

ただし、源泉所得税や社会保険料など法令で定められているもの、あるいは労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者との書面(労使協定)がある場合については、給与から天引きすることが認められています。

たとえば、懇親会費はこのような対応時に天引きすることができます。

また、貸付金については、判例上、労働者の「自由な意思」で賃金と借金との相殺に同意したと認められる「合理的な理由」が「客観的に」に認められれば有効とされています。

④毎月1回以上、⑤一定の期日を定めて支払う支払日が休日にあたる場合は、別日に支払うことができます。

しかし「毎月第◯金曜日」などは、期日が月によって変動するため、一定期日とは認められません。

なお「末日」は問題ありません。

また、賞与など臨時に支払われる給与については例外です。

最後に、労働基準法24条、賃金決定の原則(ノーワーク・ノーペイの原則)についてご説明します。

給与は労働の対価として支払われるものであるため、従業員が遅刻や欠勤等、何らかの理由で労働しなかった場合は、会社には給与の支払い義務が発生しません。

これは雇用形態にかかわらず、すべての従業員に適用されます。

この原則が適用されるケースは、遅刻や欠勤の理由が、体調不良など従業員自身に責任がある場合、または、自然災害や電車の遅れなど、従業員にも会社にも責任がない場合のいずれかです。

育児休業や介護休業、生理休暇等もこれに入ります。

適用されないケースは、会社から自宅待機を命じられた等の会社に責任がある場合のほか、年次有給休暇などです。

◆見直しポイント④人事考課規程

人事考課規程とは、従業員の成績や能力、意欲などを、一定の基準をもとに公正に評価するためのルールブックのことです。

この規程に定められたルールを判断基準として、人事評価、給与管理、異動配置等を行うのです。

人事考課規程には、人事評価の全般的なルールとなる「人事評価方法」「評価対象期間」「評価者」等を定めます。

さらに人事評価方法の中では、人事評価の手法や基準など、詳細な運用ルールを記述します。

会社の人事評価の方法は複数あり、これまでは年功序列の傾向を持ち、個人の職務遂行能力を評価する「職能資格制度」が多く採用されてきました。

近年では、キャリアや年齢に関係なく、各従業員の果たすべき役割(能力や行動)の基準を定め、その基準をどの程度達成できたかをもとに評価する「役割等級制度」が採用されるようになってきました。

言うまでもなく、従業員の人事評価は社長の主観や独断ではなく、人事考課規程に記された一定のルールに基づいて客観的な方法で行われるべきものなのです。

3関連規程と書式を見直す

◆見直しポイント①休業・休職に関する規程

【私傷病休職取扱規程】私傷病休職とは、業務以外の理由で生じたケガや病気(私傷病)により、一定期間休職することです。

法的義務はありませんが、導入する場合は、休職期間や休職中の給与、復職の判断、復職後の処遇などについて、就業規則で規定する必要があります。

【育児・介護休業規程】育児や介護による休業に関しては、就業規則の本則とは別に「育児・介護休業規程」等の規程を設ける場合が多いようです。

育児や介護による休業について定めた法律である育児・介護休業法は、従業員の雇用形態や会社の規模・業種を問わず適用されるもので、取得条件を満たした従業員からの休業の申し出を拒否すれば、法律違反となります。

「育児休業」は、基本的には1歳未満の子どもと同居し養育している従業員が、育児のために休業できる制度です。

たとえば、期間を定めて雇用される者で、雇用された期間が1年以上、子が1歳6カ月になるまで雇用を継続することがわかっている従業員に適用されます(つまり、雇用期間の定めがないものは入社1年未満でも取得可能)。

また1週間の所定労働日数が2日以下の場合は、労使協定の締結により対象外になります。

※対象外①労使協定に育児休業を取得できないものとして定めた次ページの労働者からの育児休業申出は拒否することができます。

※対象外②①②()③※。

上記以外にも、育児休業の申し出ができる条件や、対象外となる条件(企業側としては申し出を拒否できる条件)にはいくつかのバリエーションがあります。

また、育児休業を父母ともに取得する場合には子が1歳2カ月まで休業が延長される「パパ・ママ育休プラス」制度や、産後8週間以内の期間に育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくても申出により再度の育児休業取得が可能となる「パパ休暇」などのオプション制度もあるので、厚生労働省のホームページなどでしっかり確認しておきましょう。

「介護休業」は、介護を必要とする家族1人につき、通算93日までの範囲内で3回まで認められます。

期間を定めて雇用される者で、雇用された期間が1年以上、取得予定日より93日後から半年以内に雇用関係が終了しないという条件を満たす者について取得対象になります(つまり、雇用期間の定めがないものは入社1年未満でも取得可能になります)。

「子の看護休暇」は、6歳以下の子どもを養育している従業員が、子どもの病気やケガの世話、予防接種や健康診断の付き添いなどのために取得できる休暇のことです。

介護休暇は、要介護状態にある家族の世話をしている従業員が取得できるものです。

子の看護休暇も、介護休暇も、対象家族が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として取得することができます。

なお、子の看護休暇・介護休暇は法改正(2021年1月1日施行)により、時間単位ですべての従業員が取得できるようになりました。

育児や介護に関する法律は、今後も変更や改正が行われる可能性があります。

定期的に厚生労働省のホームページ等で情報収集をするようにしましょう。

◆見直しポイント②退職に関する規程

【退職金規程】退職金の支給には法的義務がなく、会社の任意となります。

退職金制度を設ける場合は、①適用される従業員の範囲、②退職手当の決定、③計算方法や支払い方法、支払い時期について、必ず就業規則への記載が必要です。

(相対的必要記載事項)退職金は全額を直接支払うのが原則ですが、懲戒解雇などの場合は減額や不支給が認められることがあります。

そうした万一のケースについても、規定しておくことが重要です。

【競業避止および守秘義務に関する誓約書】競業避止義務は、従業員が在職中や退職後に、競業する会社で働いたり、競業となる会社を設立したりすることを禁じるものです。

会社の企業秘密や個人情報を漏洩してはならないという守秘義務と合わせて誓約書を作成し、入社時や退職時に署名捺印してもらうようにします。

◆見直しポイント③職務発明に関する規程

従業員が職務上の研究開発によって行った発明を、「職務発明」といいます。

発明に関しては「特許権」の問題がつきものです。

職務発明において、その特許を受ける権利が「会社にあるのか、それとも発明した従業員にあるのか?」という問題を巡っ

て、これまで多くの労使間トラブルが発生してきました。

特許法では「会社が職務発明の特許を受ける権利を有する」という内容が契約書や勤務規則などに明記されていない場合、特許権は発明者である従業員にあると定められています。

そのため、職務発明の取り扱いについては必ず事前に規程を作成したり、個別契約で取り決めをしておかなくてはなりません。

これを行わなければ、会社には特許権がなく、特許出願ができなくなってしまいます。

幸いにも特許法の2015年の法改正により「職務発明の特許を受ける権利を会社が取得する」ことを、職務発明規程に定めることができるようになりました。

通常、会社は職務発明をした従業員から「特許を受ける権利」を承継しなければ特許を申請することができません。

しかし、あらかじめ従業員に「職務発明の特許権を会社に帰属させる」という意思表示をさせることで、職務発明が完成した瞬間に会社が特許権を得ることができるようになったのです。

一方で、会社は職務発明に貢献した従業員に対して、給与や賞与のアップ、一時金をはじめとする金銭の支給や、留学の機会を与える等、〝相当の利益〟を与えることが義務付けられます。

特許を受ける権利を会社に帰属させず、従業員が特許を取得した場合であっても、その発明がなされるまでの間、従業員に給与を支払い、設備費などを負担していたのは会社です。

そのため、会社は「通常実施権」を取得します。

これは特許権者である従業員の許諾がなくても、その特許で保護されている製品等の製造・販売を行う権利です。

ただし、従業員がライバル企業に対して使用を許諾したり、勝手に特許権を売却する可能性がある以上、リスクを排除するためにも職務発明規程を設けることは重要です。

◆見直しポイント④その他の規程

【慶弔見舞金規程】結婚や出産などの慶事や、お葬式などの弔事で会社から支給される慶弔見舞金については、支払いに法的義務はありませんが、福利厚生の一環として任意で取り入れているケースが多く見られます。

【出向規程】従業員を他の会社に異動させる出向についても、あらかじめ規程や契約を作成し、従業員の入社時に説明して同意を得ておく必要があります。

出向には、元の地位を維持したままで別の会社に異動する「在籍出向」と、元の会社の契約を終了して異動する「移籍出向」があり、どちらのタイプかを明確にします。

そのうえで、出向期間や出向先での労働条件、福利厚生等について定めておきます。

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