1ステップ1「グレード」の段階数を決める社員が将来のキャリアを描ける組織に
①人材の成長のステップ、グレード数を設定する
それでは、「給与制度」の設計方法について解説していきましょう。給与額やそのルールを決める前に、まず「グレード・レベル・イメージ」を作成します。
「グレード・レベル・イメージ」とは、あなたの会社の社員を段階的に育成するためのステップを明確にしたものです。まずはグレードごとに求める仕事レベルを明確にしたうえで、それぞれのレベルに応じた給与の金額を決めていきます。
次に「グレード・レベル・イメージ」の事例を紹介していますので(図6)、ご覧ください。「グレード・レベル・イメージ」を作成するときは次の2つの目的を意識してください。
ひとつは社員の成長の質とスピードを高めること。もうひとつは、会社の5年後のビジョンと目標が達成できる組織をつくることです。
まず、グレードの数を何段階にするかを決めます。といっても、グレード数をいきなり決めるのは難しいので、3つのステージごとにグレード数を考えていくとよいでしょう。
・S(スタッフ)ステージ役職がない一般社員
・L(リーダー)ステージ主任・係長などの管理職ではないリーダークラス
・M(マネジメント)ステージ課長・部長などの管理職にあたるクラスこの3つのステージです。
繰り返しますが「グレード」は人材育成のためのステップです。
そこで、次のような手順でグレードの数とそれぞれのグレードに求める仕事レベルを設定します。
まず社員の成長のプロセスを具体的にイメージし、そこにグレードを当てはめていきながら決めるといいでしょう。
たとえばあなたの会社に新入社員が新卒で入社した場合、課長などのマネジメント層になるにはどのようなステップを踏んで成長していくのが理想でしょうか。
その成長過程に求める仕事をイメージしながらまとめてみましょう。
[レベル1]上司や先輩社員の指示にもとづいて、一つひとつ確認、チェックをしてもらいながら、業務をこなす状態
[レベル2]配属された部署の基本的な業務の流れを理解し、担当する業務は一人でできる状態
[レベル3]部署の業務はひととおり把握したうえで、部署やチームのことを配慮しながら仕事を進められる。業務上の課題発見、改善案などを上司に相談、提案ができる状態
[レベル4]部署の中で成果を期待できる一人となっている。後輩へ業務上の指導・アドバイスを適切に行なえる状態
[レベル5]チームやプロジェクトなどのリーダーとして、複数のメンバーをとりまとめて推進し、成果を期待できる。リーダーシップを発揮しはじめている状態
こうして、社員の成長イメージを描きながらグレードの段階数を決めていきます。
自社の既存社員がどうやって成長してきたのか、また今後の目標を達成し、5年後、10年後のビジョンを実現するための人材づくりにはどういう段階を踏むのがふさわしいかをイメージしながら作成していきましょう。
検討すべき事項としては、たとえば、[レベル1]と[レベル2]は同じグレードとするのか、別のグレードとしたほうがよいのか。
また、[レベル4]から役職を「主任」とし、リーダーステージとするのか、[レベル5]からにするのかなどがあるでしょう。さらに、マネジメントステージになる前のリーダーステージでは、主任相当・係長相当という2つのグレードが必要なのか、主任相当の1つのグレードのみでよいのかなどもここで考えておきます。
②グレード数が多い場合と少ない場合のメリット・デメリット
グレードを作成する際に、よく出る質問が以下の2つです。
「グレードが多い場合と少ない場合のメリット・デメリットを教えてください」「役職とグレードは連動(一致)させずに、個別に運用してもよいのではないでしょうか」それぞれお答えしていきましょう。
グレードが1段階以上あがることを「昇格」といいます。会社が定める一定の基準を満たした社員は昇格し、給与もアップします。グレード数が多いほうが、「昇格」の機会を増やすことができます。
グレードに応じて給与の幅が決まりますから、グレードの数が多いということは「昇格」したときの昇給幅が小さくなるため、「昇格」の基準をよりゆるやかに設定できます。
これを社員に対してアピールすれば、モチベーションにつなげることができます。デメリットは逆です。「昇格」に対するモチベーションはあがる一方で、昇給額は少ないので、「金額面」がモチベーションをあげる要素にはなりにくいということになります。
グレード数が少ない場合、昇格スピードは遅くなりますが、それを越えたときはより大きな達成感が得られます。同時に昇給額は大きく、金額面でもやる気につながるでしょう。
また、「評価基準」の作成にもグレードの数が影響します。「評価基準」では、評価項目ごとに、グレードに応じた仕事のレベルを文章で明確に表現します。
そのため、グレードの数が多いほど、内容のボリュームが増え、作成に時間がかかることになります。また、そのレベルの差を社員にわかるよう表現するのも難しくなります。
グレードの数が少なければグレードごとのレベルは明示しやすく、評価基準の文字数も少なくなるため、作成にかかる時間も少なくて済みます。
ここまでお話ししたことは次にまとめていますので、参考にしてみてください。
繰り返しますが、「グレード」は、あなたの会社の社員育成のステップですから、理想の社員を育てやすい環境づくりが最優先です。
それぞれのメリット・デメリットだけを考えてグレードの数を決めるべきではありませんが、頭に入れておくとよいでしょう。
③社長の温情的な処遇は仕組みで排除しておく
次に役職とグレードを連動させるべきかどうかについてお答えします。
具体的には、「M1グレード」であれば「課長」、「L1グレード」であれば「主任」というように固定したほうがよいのかということです。
先に正解を申し上げると中小企業の場合、グレードと役職は一致させて運用するべきです。
そもそも「役職とグレードを個別に運用できないか」という質問は、社長が独断で決めてきたあいまいな処遇ができなくなることへの不安から出てきています。
「役職は与えられないが、グレードをあげることで昇給させてあげたい」「本人の能力と実際やっている仕事内容は一般社員と変わらないにもかかわらず、役職を与えている社員を降格させたくない」こうした社長の温情的な処遇を排除することにより、社員のモチベーションが下がるのではないかと経営者は気がかりなのです。
しかし、実際はグレードと役職を別々に運用することで生じる弊害のほうが大きいのです。
その弊害とは、次の3つです。
1グレードの仕事レベルとは関係なく役職者が増える可能性がある
2役職を与えなくても昇格させることができるので、上位グレードに低い役職者や役職のない者が昇格してしまう可能性がある
3役職とグレードで別々の評価が必要になり、評価の決め方と賃金への反映方法が複雑になってしまう
1に関しては、グレードは人材の成長ステップです。
本来は上位グレードに行くにしたがって、その社員がリーダーシップを発揮しながらマネジメントをできるようにならないと、組織としての成長がストップしてしまいます。
ところが実際は、勤務年数が長い、あるいは年齢が高いというだけで役職を与えてしまっている中小企業が多いのです。
その結果、部下育成力やマネジメント力の低い人が部門長を務めることになり、若い人材が育たずに辞めていくという現象につながってしまいます。
実はこれが、中小企業がある一定の規模から成長がストップしてしまう大きな要因となっています。
だからこそ、グレードと役職は一致させ、グレード・レベルの中にリーダーシップや部下育成など、役職者として必要な要素を盛り込むことが大事です。
そうすることで、そのスキルがない人の昇格はストップします。現在の役職者に対してもあるべき姿と具体的な役割を求め、次のステージを目指せる組織づくりを推進しましょう。
2は逆に、役職を与えずに昇格させてしまうパターンです。こうした運用をすすめると次のような、いびつな組織ができあがってしまいます。
たとえば、本来Sステージのはずの一般職の社員が一般職のまま「L1」や「M1」に昇格したり、主任が「M1」まで昇格してしまうということが起こります。
このパターンも1と同じように、勤務年数や年齢を重ねただけの人や役職を与えるレベルではない人が昇格していくことになってしまいます。若手のモチベーションの低下につながるのは明らかでしょう。
3についてもご説明しておきましょう。
役職には、「課長」なら「課長としての役割」、「主任」であれば「主任としての役割」があるはずです。ということは、これから作成していく「賃金制度」で給与を決めるためには、その役職に対する実績を評価しなければなりません。
グレードと役職を別々に運用してしまうと、グレードに対する評価と役職に対する評価を行なう必要が出てきます。
そうなってしまうと評価結果を別々に算出、集計したり、賃金や賞与に反映するルールをそれぞれ決めなければならなくなり、非常に複雑な仕組みになってしまいます。
中小企業は、複雑な体系にするよりシンプルなルールでわかりやすい体系にしておいたほうが社員の理解が進み、成果にもつながります。
各グレードに対して役職は1つを基本とし、2つ以上のグレードに1つの役職をまたがらせたい場合は役職名を変えることをおすすめします。
また念のためお伝えしておきますが、部門や職種の違いから同一グレードに異なる2つ以上の役職が存在するのは問題ありません。
M1グレードを「店長」「課長」とする場合などです。
2ステップ2各「グレード」の給与を決めるまずグレードに応じた基準額を設定してみよう
①賃金の構成を理解するいよいよ給与の金額を決めていきます。その前に賃金全体の構成を確認しながら、給与体系について説明しておきましょう。次の「賃金構成一覧表」をご覧ください。
本書では「給与」と「賞与」について、支給のルールを決めるために必要な考え方と具体的な手法を解説していきます。ただし、給与に関しては先ほどの図11の「固定給」の部分のみです。
「所定外給与」に関しては、法で定められたルールがありますので本書では触れません。また「通勤手当」についても仕事の貢献度や評価とは関係ありませんので、対象外とします。
そのほかの支給項目がある場合は、第3章2項にくわしく考え方を示していますので参考にしてください(こちらを参照)。
各名称についても本書では「賃金構成一覧表」に示したもので解説していきますので、あらかじめ確認しておいてください。
②各グレードの標準金額をざっくり決める給与はまず、各グレードの基準額から決めます。
方法としては、グレードごとに標準金額を設定していきます。この段階では目安の金額を大まかに決めるイメージで、あまり悩まずに思いきって決めていきましょう。
のちほどシミュレーションをしながら調整をしていきますので、現状の社員の金額は気にせずに、理想の金額にしていきます。
- 図12では、グレードを6段階としたパターンで実際に金額を決めてみました。考え方のポイントは、そのグレードや役職に求められる仕事に対する対価としてどのくらいの金額がふさわしいのかという点です。
ここで、図6(こちらを参照)で決めた「グレード・レベル・イメージ」を活用します。
「各グレードの社員が、グレード・レベル・イメージで求められる仕事レベルを遂行できたらいくらぐらいの給与にすべきか」という視点で金額を考えるのです。
各グレードの標準額ができたら、グレード間の金額の差額も出してみましょう。ちなみに上位グレードに行くほど差額が大きくなっていたほうが、この後の賃金テーブルを設計しやすくなります。
理由は2つあります。
ひとつは、上位グレードに昇格あるいは昇進したほうが下位グレードで昇格するより大きな昇給額とできるからです。もうひとつは、上位職のほうが評価結果による差額を大きくしたいからです。
③グレード別に賃金の範囲を決める次に、グレードごとに賃金の上限と下限の金額を決めます。前のステップでグレードの標準額が決まりました。
しかし、このままでは同グレードの社員は全く同じ給与となってしまい、評価結果や実力による差をつけることができません。そこで、たとえばL1(主任)の最低額はいくらで最高額はいくらが妥当なのかという視点で金額を設定していきます。
具体的には、先ほど決めたグレードごとの標準額の上下に均等の金額で幅をつけていきます。L1グレード、主任なら最低290、000円くらいからだろう。
そうすると標準額との差が30、000円なので、上限は350、000円としよう。という要領です。
この同グレード内での差額も、前述したように上位グレードに行くほど大きくします。
なお、ここで設定する金額はまだ仮の金額です。後ほど調整を行ないますので、各グレードの金額幅のイメージがつかめる程度で大丈夫です。次にあるのが一覧にした表です。
これを「グレード別賃金範囲表」(図13)といいます。さらにこれをグレードにそって展開して「グレード別賃金範囲グラフ」(図14)を作成します。
この2つの図を使って次の2点を確認しておきましょう。まず、グレードが昇格していくことでどのように給与が上昇するのか全体の大きなイメージをつかんでおきます。
次に、上下のグレード間で、下位グレードの上限額と上位グレードの下限額の差、あるいは重なりを確認しておきます。
現時点では下位グレードの上限額が上位グレードの下限額を上まわっていない状態が理想です。ここまでで、これから作成する基本給と役職手当のベースとなる賃金の金額が決まりました。この「グレード別賃金範囲表」をもとに具体的な支給項目ごとに賃金額を設定していきます。
3ステップ3役職手当を決めるマネジメント層に魅力をもたせる役職手当の定め方
①「役職手当」の金額を決める
次は、「役職手当」の金額を決めます。図6(こちらを参照)で作成した「グレード・レベル・イメージ」の役職に応じて金額を決めます。
まず、「グレード・レベル・イメージ」の各役職の仕事レベルに応じたあなたの金額イメージをもとに、ざっくりと決めてみましょう。
たとえば次のような要領です。
「主任は最初の役職として10、000円としよう。その場合、課長は50、000円を超えないと管理職として魅力がないだろうな。さらに部門を統括する部長ならプラス30、000円以上は必要だろう」という具合です。
こうした考え方をもとに、たとえば次のように各役職の金額を設定します。
主任10、000円 課長60、000円 部長100、000円
②管理職層の役職手当の定め方役職手当を決める場合、気をつけなければならない点があります。
それは、管理職と非管理職の役職手当の金額の差です。なお、ここでいう「管理職」とは、労働基準法上の管理監督者(時間外手当の支給対象からはずれる)とします。
つまり、時間外手当を支給しない管理職の役職手当は、非管理職の最上位グレードの時間外手当を完全に上まわる必要があります。
M1グレード以上を管理職とする場合、想定される時間外手当の金額を算出し、これを上まわる額を役職手当として定めてください。
この考え方にもとづいて「役職手当」を決めていない会社の中には、時間外手当を含めると、非管理職の給与が管理職を上まわる逆転現象が起こっている場合もあります。
こうした会社では、管理職に昇格すると仕事に対する責任の重さや範囲が広がるにもかかわらず、毎月の手取り額が下がってしまいます。
そうなると、誰も管理職を目指したいとは思わないでしょう。
とくに、これから会社の中核を担ってほしい若手社員が「管理職に魅力がない」と実感することは会社にとって大きな損失です。
4ステップ4基本給を決める異なった特性の「本給」と「仕事給」で基本給を構成する
①固定給は3つの項目に分解する
先ほど決めたグレードごとの標準金額(こちらを参照)を3つの支給項目に分解します。「本給」と「仕事給」「役職手当」です。
本給と仕事給をあわせて「基本給」とします。それぞれ内容と主な運用方法を説明しておきましょう。
本給……勤続給的な性格をもった、積み上げ型の支給項目年1回、定期的に昇給する積み上げ型の支給項目です。グレードごとに上限、下限を決めます。
現行の賃金から移行する時点では、各社員の現行賃金の額に応じて支給額が決まります(後ほど、移行シミュレーションの項目でくわしく説明します)。
年1回の昇給額は「本給標準昇給額テーブル」(こちらを参照)を作成し、評価結果に応じて決定します。
降格した(グレードが下がった)場合のみ、本給も下がる可能性があります。
仕事給……評価結果にもとづいて、成果や貢献度を直接反映する支給項目評価するたび、あるいは一定期間の評価結果に応じて金額が変動する支給項目です。
前回と比較し、評価結果が上がれば金額が上がり、評価が下がれば金額も下がることになります。
通常、半年ごとに変動させるのが最も多い運用パターンです。
変動の幅は下位グレードは小さく、上位グレードに行くほど大きく差がつくように設定します。
前述の本給とあわせて基本給とします。
役職手当……役職に応じて支給する給与役職に応じて一律の金額を決めて支給します。
役職手当を決める場合の考え方や手順、その際の注意点などは前項でくわしく解説しました。
本書で紹介する「賃金制度」は「本給」「仕事給」という性格の異なった支給項目を基本給とし、その構成比を過去の処遇や組織風土、改革の方向性などに応じて決めることで、柔軟に対応することができる体系となっています。
②「本給」と「仕事給」の比率を決める基本給における「本給」と「仕事給」の比率を決めます。
勤続給的な性格の「本給」と、評価結果にもとづいた仕事の貢献度で決まる「仕事給」のウェイトを決めることで、どちらに重点を置いた賃金体系なのかを示すことができます。
A本給:仕事給7:3B本給:仕事給5:5C本給:仕事給3:7という3つのパターンで考えてみましょう。
A「本給」の比率のほうが大きいため、勤続給的な意味合いを重視し、会社としては評価をダイレクトに反映するウェイトは比較的小さくしたいことが社員に伝わります。
B基本給の半分は仕事の貢献度がダイレクトに反映される考え方であるというメッセージを社員に伝えることができます。
C仕事の貢献度が基本給に大きく影響することが社員に伝わります。
ポイントは、「仕事給」は下がる可能性があるため、仕事給の比率を大きくすると、基本給が大きく昇給、あるいは降給するかもしれないというイメージをもつ人が多くなることです。
とくに、社員は下がるほうに敏感ですから、仕事給の比率を大きくしすぎると給与を下げるための賃金制度ではないかという誤解をもたれてしまう場合があります。
一旦こうした認識が浸透してしまうと、これを修正するのには大きな労力と時間を要します。
給与、賞与ともこれまで下げたことがないという会社は、本給:仕事給=7:3~6:4の配分で導入したほうが不満にはつながりにくいでしょう。
しかし、これまで給与や賞与を上げ続けてきたことで、成長意欲が希薄な組織風土になってしまった。
これを一気に変えたいという目的で、あえて仕事給のウェイトを大きくして危機意識を社員にもってもらうおうとする場合もあります。
こうした会社の組織風土やこれまでの賃金の運用方法を踏まえて「仕事給」の比率は慎重に決めてください。
実際、私たちがコンサルティングで導入する場合、「本給:仕事給=5:5」で導入するパターンが一番多いです。
③「」いよいよ基本給となる「本給」、「仕事給」の金額を検討していきます。
まず、図12(こちらを参照)で決めたグレードごとの標準金額から、第2章3項で決めた役職手当(こちらを参照)の金額を引きます。
これを「グレード別基本給標準額」としましょう(次の図19)。次に、「グレード別基本給標準額」に「本給」、「仕事給」の比率を掛けます。
こうして算出された金額が、各グレードの「本給」、「仕事給」の標準額となります。この標準額をもとに、まず「仕事給」を決めます。
「仕事給」は、評価結果をダイレクトに反映する支給項目、つまり、評価結果に応じて上がる場合と下がる場合があるとお伝えしました。
そこで、この「仕事給」の性格を利用して、評価結果を反映する段階(差額)を設定しながらその範囲を決めていきます。
もう少し具体的にいうと、評価ランクがひとつ変わるといくら金額が変わるかをグレードごとにシミュレーションしながら「仕事給」の幅を設定します。
そこで、各グレードのランク設定の数を決める必要があります。
通常「SS、S、A、B、C、D、E」という7段階とする場合が多いので、まずは7ランクで作成してみましょう。前述したように、一般的には、上位グレードに行くにつれて差額を大きく設定します。
つまり、上位職になるほど、評価結果で差がつく賃金体系にするということです。上位職の人ほど会社に対する貢献度が大きく、責任の範囲も広い仕事をしているからです。
たとえば、次のような具合です。
S1グレード1、000円S2グレード2、000円S3グレード3、000円L1グレード(主任)5、000円M1グレード(課長)7、500円M2グレード(部長)10、000円次に、グレード別「仕事給」の標準額を各グレードの「B評価」の金額として中心に置き、上に「SS、S、A評価」の3ランク、下に「C、D、E評価」の3ランクの金額を先ほど決めた評価ランクの差額に応じて決めていくことで計7ランクの仕事給額を設定することができます。
こうしてできた「仕事給」の一覧表が次の図20です。
これはあらかじめ計算式を入力した表をエクセルで作成しておいて、評価ランクの差額を入力すると、比較的短時間で賃金表を作成することができます。
④仕事給の金額をもとに本給を決めるこうして決めた「仕事給」の金額をもとに「本給」の金額を決めます。「仕事給」は7ランクに分けたのに対して、「本給」は、各グレードの上限と下限の金額のみを決めます。
これは、本給には幅をもたせて、現行の給与のバラツキを吸収し、移行を行ないやすくするためです。くわしくは、後ほど解説します(こちらを参照)。
先ほど「本給:仕事給=5:5」とすることが多いと述べました。その場合、「本給」の上限・下限と「仕事給」の上限・下限の金額は同じ金額とします。
つまり、「仕事給」の「SS」評価の金額が「本給」の上限、「仕事給」の「E」評価にあたる金額が「本給」の下限となります。
「本給:仕事給=4:6」とした場合、同じように「仕事給」上限(下限)額:「本給」上限(下限)額が6:4となるようにします。「本給」は「仕事給」に6分の4を掛けた金額ということになりますね。「本給:仕事給=6:4」なら「仕事給」に4分の6を掛けて本給の金額を算出します。
この「本給」と「仕事給」を合計したものが格グレードの「基本給」となります。さらに、この「基本給」に「役職手当」を加えて「固定給」とします。
ここで、図13(こちらを参照)であらかじめ決めておいた「グレード別賃金範囲表」の金額との整合性を確認します。「グレード別賃金範囲表」と大きく金額が異なるグレードがあれば評価ランクの差額を調整しながら、金額を修正します。
これで、次の「固定給テーブル」が完成します。ただし、現状ではこのテーブルの金額は、まだ仮決定ということにしておきます。
次章で現状の社員全員分の給与をこのテーブルに当てはめていきます。その過程で矛盾が生じたり、社員が不公平だととらえてしまうようなことが起きた場合、さらに金額を変更する必要があるからです。
それでは、実際に支給している社員の給与を、これまで作成してきた給与表に当てはめていきましょう。具体的な移行に向けた準備です。
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