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第4章定着してこそ「神採用」のゴール!アルバイトが辞めなくなるちょっとしたコツ

目次

とにかく初日のウェルカムが肝心です!

どうすれば新人が、この職場ならやっていけそうだと感じてくれるのか。それは、「この職場には自分の居場所がある」と感じてもらうことです。もう少し具体的に説明すると、次の3つです。

  • この職場は、自分にとって安心・安全である
  • この職場は、自分の存在を受け入れてくれる
  • この職場で、自分は役に立っている気がする

これらは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが説いた「欲求5段階説」に通じています。

マズローは、人間が本質的に求める欲求を5段階層で理論化しました。

❶〜❸は、そのなかの「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」と呼ばれるもの。ここでは、この3要素にもとづいて、出勤初日の受け入れ方について解説します。いうまでもありませんが「初日」はとくに重要。

「居場所がある」という感覚まで達しなくても、「明日も来よう!」「次の出勤が楽しみだ!」という気持ちを持ち帰ってもらえれば成功です。そのために必要なのは、とにもかくにも「ウェルカムの気持ち」。そして「準備」。

整理すると、次のプロセスをきちんと行うことです。

  • 事前に必要なもの(制服・名札・ロッカー・タイムカード・入館証等)を準備する
  • 初日の朝(仕事に入った直後)に面談の時間を設ける
  • 仕事内容・ハウスルールを説明する
  • 職場を案内し、先輩スタッフ全員に紹介する
  • 休憩時間にもこまめに声をかける

たとえば、仕事内容や、職場におけるルールをきちんと説明することは、「安全欲求」を満たすことにつながります。なぜなら、慣れない職場でむやみに怒られないための「安全」を、新人に提供しているからです。

また、制服や名札を事前に準備したり、先輩スタッフに紹介し、歓迎していることを強調することは、新人の「社会的欲求=所属の欲求」を満たすことにつながります。

さらに、ある大手ファミレスチェーンでは、初日朝に店長が30分の面談をし、新人への期待や店舗で大事にしているイズムを語るようにしただけで、1カ月後の離職率が約半分になったとのこと。

これは新人の「承認欲求」を満たすことにつながります。このケースが示すように、ちょっとしたウェルカムでも大きな効果を生むのです。

神事例23初日ウェルカムサプライズの仕掛け人

ある個人経営の居酒屋では、オーナー店長Nさんのこだわりで、新人の出勤初日にちょっとしたサプライズを行っています。そのお店のスタッフ全員がウェルカムメッセージを色紙に書き、手渡すようにしているのです。

「入社おめでとう!」「今日から仲間だね!」というメッセージをもらえるだけでも、新人にとっては、かなりインパクトのあるサプライズになるのです。

このウェルカムサプライズの効能は、ほかにもあります。「最初は、自分が率先してやってたんだけどね。サプライズを体験した新人にも後輩ができるじゃないですか。

新人が入ってきたら、だんだん先輩のスタッフが自発的にやってくれるようになってさ……」と、N店長は、うれしそうに話してくれました。

このサプライズの連鎖が、職場の一体感を高めてくれているようで、このお店では、ネガティブな理由でアルバイトが離職することがないとのこと。

店長自らが動かなくても、先輩スタッフが自主的に職場力の向上に寄与してくれる。素晴らしい事例だと思います。

新人の居場所をつくるには……職場全員の顔と名前の一致がカギ!

「この職場には自分の居場所がある」と感じてもらうために、いちばん手っ取り早いのは、新人の名前を覚えてあげることでしょう。まわりの人に顔と名前を覚えられていることは、脳科学や心理学的な観点から見ても、非常に重要な要件です。

顔と名前を覚えられていることで、その場所を「自分の居場所」だと強く感じられるようになるので、安心感が増すうえ、その職場に対するコミットメントを感じることにもつながるからです。

これは先述した「マズローの欲求5段階説」の「社会的欲求」を満たすことに直結しています。

ある調査によると、上司に自分の顔と名前を「あまり覚えられていない」と感じる人の3割以上は、離職意向が高まる傾向にあるといいます。

逆に、「顔と名前を覚えられている」と感じている人は、そうでない人よりも、仕事に対するモチベーションが高い人の割合が約4割高いというデータもあります。

新人に、「職場で顔と名前を覚えられている」と感じてもらうことが、いかに重要であるかがわかりますよね。結果的にそれが、モチベーションアップや、「辞めたい」という気持ちを解消することにつながるのです。

また、新人の顔と名前を覚えるだけでなく、新人にスタッフの名前を覚えてもらうことも、モチベーションを高く保って働いてもらうために重要な要素です。

「知っている顔がいる」職場には親近感も増しますし、職場でコミュニケーションがとれたという体験を積むことができれば、より〝居場所感〟も増していきます。

そもそも、新人の立場で考えれば、自分の名前は覚えてもらっているのに、自分は先輩の名前を覚えていないとなれば、引け目を感じるのは当たり前です。

だからこそ、新人の名前を覚えてあげること以上に、新人に先輩の名前を覚えてもらいやすくする工夫が大切。そのほうが職場にはやく溶け込めるのです。さらに、先輩の名前を覚えることは、新人のスキルアップにも影響します。

何か質問したいとき、「あの〜」と聞くよりも「〇〇さん」と名前で呼びかけるほうが、声をかけやすいからです。

このように、「新人の顔と名前を覚えること」と「新人に顔と名前を覚えてもらうこと」は、離職防止と、モチベーションアップ、業務効率の向上という3つのメリットがあります。

社員、パート、アルバイト同士が、たがいに顔と名前を「覚えている」「覚えられている」職場、つまり〝顔と名前が一致している職場〟を目指しましょう。

神事例24事務所に100名超の従業員全員の名前と顔写真を貼り出す

量販店ある大手量販店では、バックヤードに100人を超える従業員全員の名前と顔写真を貼り出しています。さらに、各スタッフの趣味や星座、動物占いの動物といったコミカルなプロフィールまで記載されていて、従業員同士のコミュニケーションに一役買っています。

じつは、このお店では、10年ほど前まで、従業員名簿をつくり配付していたのですが、個人情報保護の観点からそれを廃止しました。

このアイデアは、その名簿の有用性を実感していたベテラン主婦パートJさんのアイデアからはじまったそうです。彼女に話を聞くと、「バックヤードで会っても、顔と名前が一致しないと話しかけづらくて。とくに新人は、休憩時間中孤独じゃないですか。

ポツンと1人でいるのはかわいそうだし……」と語ってくれました。この仕組みのおかげで職場内の会話が増え、新人スタッフがはやく馴染めるようになったことで、離職率が約3分の1に下がったとのこと。まさに、顔と名前を覚えることで職場活性・離職防止につなげた神事例です。

定期的なコミュニケーションは超重要流行りの1対1面談「1on1」を実践すべし

初日をうまく過ごせたとしても、新人が職場に溶け込むためには、節目、節目のハードルが存在します。

たとえば、少し店の雰囲気がわかってきた3日目、なんとなく仕事がわかってきた3週間目、自分なりに動けるようになってきた3カ月目……。このように、「3」のつくタイミングには、なんらかのコミュニケーションをとったほうがいいとよくいわれます。

いずれにせよ、入社から1週間以内、遅くても4週間以内には「フォロー面談」を実施すべきです。1対1で対話する場を設け、実際に働いてみての感想についてヒアリングしましょう。

こういった、1対1の面談は、「1on1(ワン・オン・ワン)ミーティング」と呼ばれ、近年多くの企業で導入されています。

「入社前のイメージと実際の職場のギャップはないか」「先輩との関係性はつくれているか」「孤立していないか」「教えたことは理解できているか」「困っていることはないか」など……、さまざまな角度からチェックしてください。

ていねいに気持ちを聞き出す「傾聴」の姿勢で理解しようと努めることで、新人との距離が少しずつ縮まっていくはずです。なお、フォロー面談の日程は、「初日」の段階から決めておきましょう。これは、ものすごく大切なことです。

なぜなら、面談日までは、辞めにくくなるからです。新人が辛い経験をしたり、1人で悶々としている時期があったりしても、面談日が決まっていれば、ある程度、耐えて待つことができます。

「次の電信柱まで頑張って走ろう」と考えながらジョギングすると、長い距離を走れるというアレです。このようなマイルストーンが、職場に馴染めず悩んでいる新人にとって、希望の光になるのです。

ある大手人材派遣会社では、自社の派遣スタッフが派遣先で勤務を開始すると、「コーディネーター」と呼ばれるフォロー役が、即座に1回目の訪問面談日程を設定します。

この仕組みによって、離職率が改善したとのことです。このフォロー面談のポイントは、面談を「コーディネーター」が行うことです。

仕事を指導する立場ではないなど、利害関係のない人が面談を行うことによって、新人の本音を引き出し、信頼関係を築きやすくするのです。

この手法を「トライアングルコミュニケーション」と呼びます。「トライアングルコミュニケーション」は、派遣会社でなくても、店舗で簡単に行うことができます。

指導係の先輩スタッフではない、別のスタッフに面談をしてもらえばいいのです。新店のオープニングスタッフのように同期入社組がいる場合は別ですが、欠員補充で入ってきた新人アルバイトには、ちょっとした愚痴をこぼしあえる相手が存在しません。

目上の立場である上司にはいいにくいこともあるでしょう。そう考えると、利害関係の少ない〝斜めの関係〟にあたる先輩スタッフが面談を行うほうが、新人も本音を話しやすくなります。「職場の三角関係」ぜひ、試してみてください。

神事例25面談時の不平不満を業務改善案につなげ一石二鳥!

「1on1」の面談では、仕事の愚痴だけでなく、職場改善のアイデアが出てくることも少なくありません。ちょっと聞くと、不平不満のような話でも、よく聞いてみると業務改善の余地があることに気づかされることもあります。

そういった意見が出たら、即実行することが大切です。その際に有効なのは、その提案をした本人に改善の責任者を任せること。

そうすることで、突然の退職を防げるうえ、仕事を任せることで責任感が増し、そのスタッフの成長を促すことができます。耳障りな意見に対しても聞く耳を持つ度量と、任せる勇気が大切なのです。

あるコールセンターでは、クレームに近い意見を述べたUさんを改善の責任者にしたところ、素晴らしい解決策を提案してくれたそうです。

Uさんはもともと自分なりの解決策を持っていて、その裏返しが不平不満につながっていたのでしょう。その後、Uさんは、他者の意見をまとめ上げながら積極的に業務改善に努め、2年後には社員に登用されるまでに成長したとのこと。もはや離職防止ではなく、業務改善とスタッフ戦力化の理想形のような事例です。

「ぶっつけ本番」と「ほったらかし」は厳禁!OJTの本当の意味を知ろう

ここまで、新人に「この職場には居場所がある」と感じてもらうための取り組みについてお伝えしてきました。ここでは、初期トレーニングについて解説します。担当業務を覚えて、一人前のスタッフになっていくこと。

これは「この職場で、自分は役に立っている」という「承認欲求」を満たすことにつながります。とはいえ、それは一朝一夕にできることではありません。

そのための第一歩は、「自分は役に立っている」という感覚ではなく、「自分は足を引っ張っていない」という感覚を提供すること。

つまり、まずは業務上のしくじりを極力減らしてあげることです。「失敗する→怒られる→足を引っ張っていると感じる→この職場は無理」という負のスパイラルに陥らない状態をつくることが、初期トレーニングにおけるポイントなのです。

とはいえ、忙しい現場ではそう簡単にはいきません。新人スタッフが安定稼働するまでは、トレーニングに心血を注ぐ必要があると頭ではわかっていても、なかなかその時間を捻出できないのが現場のリアルでしょう。

結果として、OJT(OntheJobTraining)という名の「ぶっつけ本番」や「ほったらかし」が横行するのです。OJTとは、座学だけでは覚えられない業務を、実際にやってみることで習得してもらう初期教育の考え方です。

あくまでも座学とセットで、計画的に実践の場で学ばせるためのトレーニングを、座学で教えることもなく無計画に現場に立たせるというやり方にしてしまったら、業務が身につくはずがありません。

何も教えてもらっていない状態で失敗しないわけがありません。こんな状態では、当然先輩から怒られたり、お客様からクレームを入れられたりするシーンが増えていきます。

これでは、承認欲求を満たすどころか否認機会を増やすことになってしまいます。では、忙しい現場において、どのようにすればこういう状況を回避できるのか。

特効薬はありませんが、次図を参考にしながら初期教育を組み立ててください。

重要なのは、

  1. 教育内容を整理し分担して行う
  2. 業務に関するコミュニケーションの機会を増やす

この2つのポイントを意識してみましょう。

神事例26スタバは、新人研修に80時間使う

世界的なコーヒーチェーン、スターバックスコーヒーでは、アルバイト採用後、すぐに1人で店頭に立たせることはしません。なんと、研修に80時間もかけるのです!研修の内容は正社員と同じです。

まず、「OFF‐JT(OfftheJobTraining)」からはじめます。座学でスタバの歴史やコーヒーの知識などを学びます。その後、OJTとして約1カ月間、店頭に立ち、オーダー受けやレジ打ちなど、接客にまつわるさまざまなことを学びます。

もちろん、研修中は必ずコーチ(教育担当)と一緒になるようシフトが組まれます。ちなみに、この80時間分の時給はきちんと支払われます。

時給が1000円だとすると、1人あたり8万円もの投資をしていることになります。現在、都心部では、1人当たりの採用単価が10万円ほどかかるといわれていますが、スタバは自社HPだけで採用できているため十分ペイできるのです。

卓越した接客力がブランド力を高め、自社HPで採用を完結できる。これこそが教育がもたらす経済効果。教育にかける時間への投資はケチるべきではありません。

教育の虎の巻をちゃんと整備しておく!頼りになるマニュアル&チェックシートを活用

新人アルバイトに対して、教育担当の先輩が業務内容をレクチャーするケースは多く見られます。しかし、新人と先輩が常に同じシフトに入れるわけではありませんので、四六時中つきっきりで教育することは現実的ではありません。

また、教育担当者の教え方のレベルにはバラツキがあります。そんなとき、役に立つのが「マニュアル」です。どんな人材になってもらいたいかを明らかにし、その道筋を示す「新人教育の羅針盤」、それが教育マニュアルの存在意義です。

盛り込む内容は、「基本的なビジネスマナー」「企業理念」「職場のハウスルール」「業務の全体像」「具体的業務の説明」「働くうえでの心得」など。しかし、これをすべてまとめ上げるのは大変な作業です。

企業理念やハウスルールについては、面談等でもカバーできると考えると、最低限必要なのは「仕事の基本を教えること」です。

つまり、新人アルバイトのために整備しておくべきは「業務マニュアル」なのです。業務マニュアルは具体的な「行動指示書」とも言い換えることができます。

新人でも、これを読めば、ある程度の業務内容は理解できますし、仕事の全体像をつかむことができるようになるでしょう。

そうやって仕事のやり方や手順を自分のペースで自習・復習できるようになることで、新人が「自ら学ぼう」という姿勢を持ってくれるようにもなります。マニュアルは、教え方のバラツキを是正するだけではなく、自主性の醸成にも効力を発揮してくれるのです。

また、マニュアルの整備に劣らず重要なのが、教育の進捗状況をわかりやすく確認できる「研修項目チェックシート」の作成です。

とくに、先輩アルバイトに新人教育を任せた場合、店長や職場の責任者が、教育の進捗状況や新人スタッフの習熟度合いを細かく把握する必要が出てきます。

そういった意味でこのチェックシートは、業務マニュアルと対をなす教育ツールなのです。作成時のポイントは、マニュアルに記載されている業務を、1つひとつの手順に分解してチェックできるようにすること。

たとえば「レジ業務」「トイレ清掃」のようにひと括りにするのではなく、次図のように極力行動を細分化し、具体的に記載しましょう。

「教えたこと(教わったこと)」「クリアしたこと」という教育の進捗具合を、このシートを使い、職場全体で確認することによって、次に何を教えるべきかが明確になります。業務マニュアルとチェックシート、この2つのツールを使いこなすことで、新人教育はとてもスムーズになるはずです。

神事例27無印良品の最強マニュアル「MUJIGRAM」

無印良品には、社員やアルバイトに向けた壮大な業務マニュアルが存在します。

このマニュアルは「MUJIGRAM(ムジグラム)」と呼ばれ、売り場におけるディスプレイの仕方から、接客や発注に至るまで、店舗運営に関するあらゆることが網羅されており、総ページ数は2000ページを超えます。

いっきにすべて覚えるものではなく、働きながら「こういうときはどうしたらいいか」と迷った際に頼りにする、まさに羅針盤のようなマニュアルです。

構成もわかりやすく、図解や写真が多用されていて、新人でも理解しやすい内容になっています。そして、「MUJIGRAM」のすごさは、そのアップデート力。現場の「小さな気づき」を吸い上げ、それを内容に反映させているのです。

現在、全国から年間約5000件もの改善提案が本部へ寄せられています。そのうち毎月20〜30件の提案が採用され、「MUJIGRAM」に反映されていくのです。

「MUJIGRAM」が更新されるたびに、現場の生産性や効率は高まり、一連の変化に対する現場の貢献感も高まる。まさに「マニュアルの鏡」です。

何げないことも「褒めポイント」になる!褒めるコツはとにかく量。

小さなことでも「いいね!」が大事

唐突ですが、2018年に平昌で開催された冬季五輪でのエピソードを紹介します。女子フィギュアスケートの宮原知子選手が4位に入賞したときのインタビューシーン。

あるテレビ局の女性アナウンサーがかけたねぎらいの言葉は、「メダル、惜しかったですね」でした。多くの日本国民の言葉を代弁したようなコメントです。ところが、別の番組で、元テニスプレイヤーの松岡修造さんがかけた言葉は違いました。

それは、「おめでとう!自己ベスト!自分を超えた!」というひと言。「さすが修造!いいこという!」と、思わず膝を叩いたのを覚えています。

松岡さんは、アスリートとしての自身の経験や、多くのテニス選手に教えてきた経験から、褒めることの重要性をよく知っています。

「人は、褒められればうれしくなり、成長する力が湧いてくる!ならば僕が日本の皆さんを本気で褒めまくります!」というくらい、褒めることに熱い思いを持っているのです。

「メダル惜しかったね」ではなく「おめでとう!自己ベスト!」。この素敵な褒め言葉は、宮原選手のこれまでの成績を把握していたからこそ生まれたわけです。ここが彼のセンスです。

これは、アスリートだけでなく、アルバイトに対しても同じことです。上司や先輩など、他者からの賞賛は、新人アルバイトの「承認欲求」に直結します。

誰だって褒められればうれしいわけですが、「足を引っ張らないように」と、ビクビクしながら日々を過ごしている新人にとっては、「褒められること」に対する喜びレベルが格段に違います。

では、どうやって褒めればいいのか。そのコツは、とにかく質より量です。「仕事のできない新人のどこを褒めればいいの?」と疑問に思った人も多いことでしょう。

しかし、そんなに難しく考える必要はありません。なぜなら、褒めるポイントは、些細なことでいいからです。たとえば、「挨拶の声が大きくていいね!」「制服が似合っているね!」「歩く姿勢がいいね!」など……。ちょっとしたことを指摘してあげるだけでも、新人にとっては大きな褒め言葉。

新人が無意識で行っていることを、サラリと褒めてあげるだけでいいのです。これなら、スタッフを細かく観察することで必ず何か見つかるはずです。

私がこれまで話を聞いてきた、アルバイトが辞めない職場の店長たちは、必ず「質より量のちょっとした褒め言葉」を新人にかけていました。

自分でも気づいていないことを他者から肯定されると、うれしい気持ちが倍増するだけでなく、「自分のことをちゃんと見てくれている」「気にかけてくれている」という安心感につながり、新人が心を開く第一歩になるのです。

神事例28褒め上手な店長は、アルバイトに愛を叫ぶ!

以前、取材させていただいた、ある居酒屋の店長Mさんはとにかく熱い男でした。彼は、話のなかで、こんなことを語ってくれました。

「シンプルに〝愛〟だと思うんですよね。僕がスタッフを死ぬほど愛しているから、スタッフも愛してくれる。要するに信頼関係です」信頼関係を築くためのコツを聞いたところ、「コミュニケーションは質よりも量が大切」「とにかくポジティブなコミュニケーションをとり続けます。なんでもいいのですが、話す回数を増やすことです」

と、Mさんは熱く教えてくれました。日々のコミュニケーションの積み重ねが信頼関係を築き、スタッフがお店で働くのが楽しくなる。

楽しいからもっと仕事を覚えたいと思う。それがお客様にも伝わり、愛されるスタッフになる……。このお店には、こんなプラスの循環が存在するのです。

このお店では、大学を卒業するアルバイトの最終出勤日、21歳の2人のために、常連客が79人も駆けつけた、というエピソードがあります。にわかに信じられない話ですが、M店長の話を聞けば、納得することができます。

怒ってもいいけど、怒り方が問題!「叱ってもらえた!」と思わせるコツ

アルバイトをちょっと怒ったら、次の日から来なくなった……。こんな体験をしたことがある店長さんも少なくないはずです。新人にとってガッツリ怒られるのは辛いもの。職場でまだ自分の居場所を確立できていない時期だからこそ、余計に堪えるのです。

そんな状況で、理不尽な怒られ方をすれば離職に直結することでしょう。とはいえ、ミスを容認するわけにはいきませんし、新人が失敗したときには、きちんと注意してあげるべき。

そのためには、正しい怒り方を習得する必要があります。よくいわれることですが、「怒られた!」ではなく「叱ってもらえた!」と思わせるのが怒り方の理想形。

では、具体的にどうすればいいのか。ポイントは次の3つ。

  1. 無駄な怒りは捨てること
  2. 怒りの言葉で吐き出さないこと
  3. 怒りポイントを具体的に伝えること

これが、「怒る」を「叱る」に変えるコツです。まず、「❶無駄な怒りを捨てること」について。怒りの感情が持続するのは6秒ほどだそうです。

ですから、怒りを感じたらまずは6秒間我慢する。これだけで怒りの感情がかなり収まります。6秒待ったら、冷静な頭で怒るべきかどうかを見極めるのです。

この6秒ルールで怒る機会は減るはずです。とはいえ、6秒って意外と長い。それをやりすごすための、ちょっとしたワザがあります。

たとえば、難しい計算をしてみるとか、自分の怒りに点数をつけてみるとか。あるいは、自分の好きなタレントや飼っているペットの名前など、どんなことでもいいので、イラッときた瞬間に唱える言葉を決めておくというのも手です。

いずれにせよ、冷静になるためのルーティンを1つ持っておけばいいのです。

また、この6秒ルールは「❷怒りの言葉で吐き出さないこと」にもつながります。冷静になることで、怒るべき場面でも「なんでテーブルが片づいていないんだ!」などと怒鳴ってしまうことがなくなるからです。

最後に「❸怒りポイントを具体的に伝えること」について。そもそも人が怒りを覚えるのは、自分が持つ「こうあるべき」というこだわりが破られたときです。それを、「許せる範囲」「なんとか許せる範囲」「許せない範囲」と、線引きしましょう。

たとえば、あなたに「ドリンクは注文を受けてから1分以内に提供すべき」というこだわりがあったとします。その場合、「許せる範囲」は1分以内。「なんとか許せる範囲」は5分以内。

それ以上経過して、お客様に声掛けもしないのは「許せない範囲」など……。具体的なこだわりをイメージしてみてください。

そのうえで、「ドリンクははやく出すように」という抽象的な指示ではなく、「ドリンクはオーダーから1分以内の提供を心がけること」とスタッフに伝えておくのです。

そうすれば、怒られる側も「あ、5分以上かかってしまった」と怒られた理由がわかるので、「理不尽」と感じることがなくなります。怒鳴るのではなく、「こうしてほしい」と、リクエストの形で伝えるだけで、職場の雰囲気は劇的に変わります。

神事例29「アンガーマネジメント」を取り入れた店長

ここで紹介した怒り方のポイントは、「アンガーマネジメント」というメソッドがベースになっています。アンガーマネジメントとは、怒りを予防し制御するための心理療法プログラムのこと。

短気であることを自覚していた、あるコンビニのA店長は、テレビで見たこのプログラムに興味を覚え、研修を受講しました。受講後、すぐに怒りを制御できるようになったわけではないものの、日々実践するなかで徐々に効果が表れてきました。

たとえば、アルバイトが遅刻してもすぐには怒らない。その代わりに忙しく仕事している自分の姿をやや誇張して見せる。その後、間を置いてから遅刻した理由を聞く。そんな冷静な対応ができるようになったのです。

すると、遅刻したアルバイトは自然と自身の行動を反省し、改めるようになったそうです。もともと、怒りっぽいことを除けば、気さくなキャラで人気者だったA店長。

アンガーマネジメントを学んだことで、〝怒った次の日から来なくなり、フェードアウトして辞める〟ということがゼロになったそうです。

「頼りになる右腕」と「やっかいなベテラン」との境界線を把握せよ

ベテランの居場所づくりが新人を救う!以前、あるスーパーに勤める30代主婦のKさんが、こんな話をしてくれました。「私たちの仕事は、レジ・店内見まわり・フリーの3つに分かれています。

フリーというのは、バックヤードで発注や伝票処理をする仕事で、立ち仕事でないため体がちょっとラクなんです。でも、特売日とか忙しい日はほとんどフリーの時間はありません。

それなのに、Tさんはずっとフリーの仕事をやっているんです。レジお願いしますと頼んでも来てくれず、ずっと裏にこもっているんです……」まさに職場に君臨するお局様。

しかし、Tさんは最初から困った存在だったわけではないはず。むしろ仕事のできる「頼れる右腕」だったのではないでしょうか。

なぜ、このような困ったベテランが生まれるのか。人手不足の現場において、店長やマネージャーは、キャリアが長く職場のことを熟知しているベテランに頼りがち。

しかし、それがあまりにも行き過ぎると歪みが出てくるのです。「みんなに頼られている」ことが当たり前になりすぎると、どうしても気持ちが緩みます。

その結果、「ミスをしても謝らない」「他人の指摘はすべて批判する」といった残念なふるまいが顔を出すのです。それがエスカレートすると、「他人に自分の地位を脅かされること」を危惧するようになります。

そうなると「自分の居場所を守りたい」という防衛本能が働き、せっかく入ってきた新人のシフトを横どりしたり、無視したりするなどして、退職に追い込んでしまうことにもつながるのです。

24時間営業や年中無休の外食・小売りチェーンなどでは、店長がずっと職場にいるわけにはいきません。むしろ全営業時間で考えれば、店長不在の時間のほうが長いかもしれません。

ですから、留守を任せる職場のベテランが「やっかいな古株」なのか「頼れる右腕」なのかで、新人の定着率には天と地ほどの差が生まれるのです。

「店長には、それでいいといわれたかもしれないけど、お客様には、こちらから声をかけて接客してください」ある眼鏡ブランド店でアルバイトをはじめたDさんは、副店長にそういわれ「えっ?」と思いました。

店長からは「レジまわりの仕事に慣れてから、接客を覚えましょう」と指導されていたからです。この副店長は、赴任してきたばかりの新任店長よりも年上の先輩社員。

店長のやり方に納得がいかないらしく、店長が休みの日には、店長の方針と違うことを指示してアルバイトを混乱させることもしばしばあるとのことでした。

ベテランが職場のリーダーとして機能する状態をつくる。なかなか難しいことですが、まずは懐に飛び込むことです。

「力を貸してもらっている」というスタンスも大切。しかし、関係性ができれば毅然とした態度で臨むこともできます。そして、頼るだけでなく任せること。

心配だからと、途中で口出ししたり進捗の確認をしすぎたりすると、「信頼されていない」と思われる逆効果を生みます。リスクはあるけど責任をとるという覚悟。

新人に「居場所がある」と感じてもらうためには、まずベテランスタッフが「居場所がある」と感じられる職場づくりが大切なのです。

神事例30副店長の改心で職場が蘇ったラーメン店

あるラーメンチェーンで、副店長だったMさんのエピソード。

「2人で店をつくり上げてきた信頼できる店長が異動になったため、自分がこの店を任されるのかと思ったら、違う店から店長が異動してきました。正直、なんでオレがこんな店長の下に?と思いましたよ」と、Mさんは当時の心境を語ってくれました。

納得のいかないMさんは、スタッフを抱え込み店長を孤立させました。すると、それに反発した店長がハードマネジメントを断行。結果、その店のアルバイト6人全員が辞めてしまったそうです。その後、店長から「腹を割って話そう」と声をかけられたMさん。

本音をぶつける前に、店長から「店を助けてほしい」と頭を下げられ、店の仕切りは基本的にすべて任せてもらえることになりました。

さらに、店舗運営のノウハウも開示してもらい、店長昇進へのサポートもしてくれるようになったとのこと。Mさんは「これで頑張らないと男じゃない」と大反省。その後、2人で店を盛り立てる体制ができたとのこと。辞めたスタッフも、数人が戻ってきてくれたそうです。

コラム いよいよ本格化する外国人雇用!その成功のカギとは?

2019年4月、改正された出入国管理法が施行されます。政府が、とうとう外国人の受け入れに関する政策を「大転換」したのです。

これまでは、「単純労働」分野での外国人就労は原則禁止されてきました。「え?建設現場でもコンビニでも、外国人が働いている姿をいっぱい見ますよね」と思った方も少なくないかと思います。じつは、建設現場や工場で働いている外国人の多くは技能実習生。また、コンビニや飲食店で働いている外国人は留学生なのです。

技能実習制度は、技術を習得し母国に帰って役立ててもらおうという国際貢献支援のこと。外国人留学生制度は、文字どおり教育支援のことです。技能実習生とアルバイトの留学生を合わせると約52万人に上り、これだけで、日本における外国人労働者の約4割を占めています。

要するに国際貢献や教育を名目に、外国人を安価な労働力として利用しているのが実情だったのです。なぜ、そういったいびつな状況になっているのか。それは、外国人就労政策は移民政策に通じる非常に難しいテーマだからです。

安価に雇える外国人が大量に流入することで日本人の仕事が奪われるとか、治安の問題とか、ケアしなければならないことが多い。だからこそ歴代の日本政府はここまで慎重に慎重を期した対応をしてきました。しかし、世は空前の人手不足。

これまでは研究者や企業の管理職、専門スキルを持つ人など高度な専門人材にかぎられていた就労目的の在留資格を、単純労働の分野にも広げることはやむを得ないと判断したのです。

今回の法改正では、新たな在留資格を設け、人手不足が深刻な分野で就労を認めることになりました。一定の日本語能力や就業分野に関する知識があれば、特定技能1号として最長5年間の在留が認められます。その対象となるのが、介護や建設など14業種。

コンビニなど小売業は対象から外れているものの、これまで単純作業と見なされてきた飲食業や宿泊業までが対象に入りました。人手不足に悩むサービス業の本丸にあたる業界で、外国人を雇用できるようになることは、現場にとっては朗報でしょう。

そうなると問われるのが、各々の職場でどう迎え入れるのか。本書でも重要だと位置づけてきた「受け入れ力」問題。外国人雇用がうまくいくカギは、まさにここです。

そこで、ベトナム人のマッチング事業を手掛けるasegonia代表の井上義設氏に、受け入れのコツを聞きました。ベトナムはここ数年で最も入国者が増えている国です。

──来日するベトナム人が増えている理由は?井上2017年には23万人以上のベトナム人が来日しています。

彼らは親日派が多いんです。仏教や儒教の国で、宗教観も日本に似ているし、日本の漫画やアニメも大好き。もちろん最大の理由はお金を稼ぎたいから。貨幣価値を比較すると、ベトナムのドンに対して日本円は5倍の貨幣価値です。これは大きな魅力でしょう。

──ベトナム人スタッフを受け入れる企業は、彼らとどんなふうに接するべき?井上彼らは基本的に仕事熱心。

一方で、誇り高いところがあります。仕事に対してはもちろん、ベトナムという国に対してのリスペクトを忘れないことです。ベトナムの祝日や記念日など、特別な日を把握していると職場の雰囲気がよくなると思います。たとえば、ベトナムには「女性の日」というのがあるのですが、その日に女性スタッフ全員に花を配るという職場がありました。これはうれしいですよね。

──ほかにも、同様の事例はありますか?

井上あるブライダル企業の例なのですが、ベトナム人のチームをバッシング(片づけ)スタッフとして採用した際、仕事は裏方なのですが、ほかのスタッフと同じように正装のビシッとした制服を貸与したところ、ものすごくモチベーションが上がったそうです。そうしたハートフルな対応は、じつはすごく重要なんですよね。

──外国人雇用がうまくいくか否かのカギも、日本人に対するの接し方と同じだと?井上外国人雇用がうまくいっている企業は、シニアや主婦のスタッフのマネジメントもうまくできています。

日本人スタッフの離職率も低いところが多いんです。ドイツは、1960年代に、トルコなど多くの国から大量の労働力を受け入れました。当時を振り返る有識者は「ドイツは労働力を呼び寄せたつもりだったが、来たのは人間だった」と語っています。結局のところ、日本人であろうが外国人であろうが、職場での接し方は同じということなのです。

「HRテック」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「HRテック」とは、クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)など、最先端のIT関連技術を活用して、人事関連業務を行うサービスの総称です。

こうした次世代ツールをうまく活用することができれば、採用定着率や業務効率の向上など、現場にとって大きなメリットがあります。

しかし、現場の採用担当者のなかには、デジタルアレルギーの人も多く、最新のテクノロジーに対して及び腰になりがち。そこで、この【特別付録1】では、今、旬のHRテックツール4つをカタログ化。誰にでもわかるよう、超簡単に解説します。

とにかくCMで話題!でも、どんなモノなのかよくわからない「indeed」

「仕事探しはIndeed、バイト探しもindeed♪」最近、テレビCMでよく耳にするフレーズです。

このキャッチフレーズから、求人サービスであることはわかるものの、実際、indeedがどのようなサービスなのか、従来の求人媒体と何が違うのかがわからないという人も多いのではないでしょうか。

indeedは、インターネットの求人サービスです。ただし従来型の「タウンワークネット」や「バイトル」といった求人サイトとは少し違います。

正確には、「求人情報専門の検索エンジン」と表現するのが適切でしょう。indeedは、求人サイト、新聞等のメディア、各種団体、企業の採用ページなど、数千のウェブサイトを巡回して求人情報を収集、独自のAIテクノロジーを駆使して、求職者の検索条件に合わせて一覧表示します。

「求人業界のグーグル」といえばわかりやすいかもしれません。創業は、フェイスブックとほぼ同時期の2004年11月。2010年には世界7大陸すべてでサービスを展開する初の求人サイトとなり、現在では50以上の国と地域、28言語での検索に対応する世界最大のオンライン求人サービスへと成長しました。

日本でサービスを開始したのは2009年のこと。その後、2012年にリクルートの完全子会社となりました。関係者によると、現在、日本での求人掲載件数は約200万件を超えるとのこと。

求人サービス最大手の「タウンワーク」の求人件数が約80万件、求人サイト大手の「an」が約30万件であることを考えても、そのモンスターぶりが際立っています。

提供する情報量が多いほど価値が高いという視点に立つと、indeedは、日本の求人媒体のなかで、圧倒的なパワーを持っている、といっても過言ではありません。

しかも、indeedは、掲載するだけなら基本的に無料です。アカウントを持ち、求人票をつくれば、情報を無料で掲載できる仕組みなのです。こんな素晴らしいツールを活用しない手はありません。

とはいえ、はじめて利用するサイトでアカウントを登録することは、面倒なものです。とくに、デジタルアレルギーの人は、余計にそう感じるのではないでしょうか。

毎日、職場で使うストアコンピュータなどは、扱えないと仕事に支障をきたしますが、普段触れることのないデジタルツールでは、なおさらでしょう。

しかし、すべきことは、登録して投稿するだけ。しかもタダ。繰り返しになりますが、この最旬最強の採用ツールを使わない手はありません。

アナログな縁故採用のデジタル進化形リファラル採用を支援する「Refcome」

縁故採用は、ベーシックな採用手法として長年重宝されてきましたが、じつは、これが最近注目を集めています。

「縁故採用」は、長年入職者経路1位の座を保ってきましたが、1996年に「広告」にその座を明け渡して以降、横ばいが続いていました。しかし、2013年から再び上昇傾向に転じているのです。

理由はインターネットです。「紹介」というアナログベースの手法が、「SNS」を使ったデジタルベースの手法へと進化したことで、広がりを見せているのです。

これまでは、せいぜい「知人からの紹介」程度でしたが、SNSであれば、「知人の知人からの紹介」など、いっきに輪が広がります。

SNSの発達が、紹介による人づての採用活動の利便性・効率性を飛躍的に進化させているのです。紹介による採用が注目を浴びているのには、もう1つ理由があります。それは、離職防止です。

人と人との個人的なつながりがベースとなっていることが、採用のマッチング精度を高め、入社後の離職防止にも効果を発揮するのです。

紹介なので、候補者の人となりはある程度担保されますし、候補者から見ても、働く職場に対する信頼感がある程度担保されています。この両者の安心感が定着につながるのです。

そして、「縁故採用」のさらなる進化形として、最近注目を浴びているのが「リファラル採用」です。リファラル(referral)とは「委託・紹介・推薦」といった意味。

そして「進化形」とは、アナログだった「紹介」という採用手法を、デジタルツールで支援するスキームが登場したことを指します。そもそも、縁故採用を成功させるためには、以前からいくつかのハードルがありました。

その1つが〝手間〟の問題です。候補者に対する勧誘、その際の条件提示、面接担当への取次など……。縁故採用のプロセスには、紹介者であるスタッフが〝にわか採用担当〟となって採用活動に関与せざるを得ません。

これって、従業員からするとかなり手間ですよね(だからこそ、紹介報奨金などが支給されたりするわけですが)。そういった手間を極力軽減する目的で登場したのが「Refcome」というサービス。

SNSで拡散するための求人情報の生成、あるいはSNS上で応募を受けつける仕組みをデジタルで支援するクラウドサービスです。

まさに、アナログを支援するデジタルのツール。難しいと感じがちなHRテックのなかで、このサービスは非常に簡単。サービスサポートも充実しています。

手間のかかる応募者との面接設定をスピーディに!面接日程調整システム「オートークビズ」

第3章で、「応募者が実際に面接に至る確率は50%以下。応募を無駄にしないためにも迅速な対応が求められている」と述べました。繰り返しになりますが、貴重な応募を面接につなげるためには、とにかく「即レス」「即アポ」が必須です。

とくに若い世代には、一般的なメールのやりとりでさえ、「どうしてこんなに時間がかかるのか」と感じる人も少なくありません。

LINEなど、チャットでのリアルタイムのやりとりが当たり前なので、「どうして返事に1日以上かかるのか」という不満は、時代とともに大きくなっています。

一方、本業で忙しい店長やスタッフにとっては、応募者への対応はそれなりの負担となります。この、採用する側とされる側のギャップを解消できると期待されているのが、急速に進歩を遂げた「チャットボット」という技術。

「チャットボット(chatbot)」とは、チャット(会話)とボット(ロボット)を組み合わせた言葉で、人工知能を活用した「自動会話プログラム」のことです。

ここで紹介する「オートークビズ」も、このチャットボットを使って面接日程調整を完全自動化するサービスの1つです。

「オートークビズ」は、いわゆる、採用管理システムのカテゴリに属するサービスですが、従来のそれとは大きく開発思想が異なっています。とにかく使い方が簡単なのです。

これまでの採用管理システムは、機能が豊富な半面、それを使いこなすのが難しいことが問題でした。このオートークビズがこだわっているのが、機能のシンプルさ。

応募から面接日程の調整までは自動的に進んでいくため、店長は確認するだけというコンセプトで設計されているのです。担当者がパソコンやスマホで情報を入力する手間やステップを極力少なくし、できるだけボタンをクリックさせないインターフェイスになっています。

機能を追加するのではなく、余計な機能を削りシンプルにした結果、採用担当者のITサービスに対する苦手意識を払拭することができたのです。

オートマチックに合理化できるところがあるならば、そこはシステムに任せて、店長も人事担当者も、もっと本業に注力する。オートークビズは、シンプルな使い勝手のよさを追求することによって、HRテックがもたらす本来的価値の提供を実現しているのです。

動画面接プラットフォーム「HARUTAKA」

ここで紹介する「HARUTAKA」は、オンラインで面接を行うことができるサービスです。前項で紹介した「オートークビズ」のように、面接日の設定を、自動化するメリットは大きいはずです。

しかし、面接そのものは、採用における最もコアなプロセスです。だから私は、当初「オンラインで面接をやってしまいましょう」というITサービスに対して、正直なところ半信半疑でした。

前述のとおり、面接はたんなる見極めの時間ではなく、応募者を惹きつけて動機づけするスカウトの時間であったり、入社直後の離職を防ぐための条件確認の時間であったり、さまざまな役割を含んでいるからです。

そういった観点からも、やはり実際に会って面接すべきではないかと思っていたのです。しかし、調べていくうち、動画面接には圧倒的なメリットがあることに気づきました。その1つがスピード感です。

採用担当者の面接時間を確保したり、応募者との日程調整をしたりするだけでも大変ななか、リアルな面接では面接会場の確保も必要になります。

これらすべてが重なるタイミングを探すのには、かなりの労力がかかり、なかなか面接をセッティングできずに終わってしまうケースも実際に起きています。

また、応募者が遠方に住んでいる場合、面接に来てもらうのも大きな負担となります。その点、時間や場所の制約がない動画面接は、採用活動をスピードアップさせること間違いなしです。

しかも、ここで紹介する「HARUTAKA」は、ライブ面接だけでなく、録画面接という機能もあります。これを使えば、応募者がスマホで録画しておいた面接動画を、採用担当者が時間の空いているときにチェックするというオンデマンドな面接が実現できるため、非常に効率的だといえます。

そしてもう一点、動画面接の優れた点があります。それは、応募者の「素」を見極めやすくなることです。一般的に動画が伝えてくれる情報量は、ウェブサイト3600ページ分といわれています。

文字と写真だけの履歴書が教えてくれる人となりと比較して、圧倒的な情報が得られるわけです。「いやいや、それは履歴書比較の話でしょ。やっぱり実際に会って面接しないと、応募者の人となりはわからないでしょ」という声も聞こえてきそうです。

しかし、緊張感いっぱいの面接で、素の自分を出しきることは、難しいものです。とくに、最近の若者はリアルコミュニケーションが苦手。

ユーチューブやTikTokへの投稿に慣れ親しんでいる世代にとっては、むしろ動画による自己表現のほうが、よほどリラックスして「素」を出せるのかもしれません。

もちろん、オンライン面接で採用を決めた場合は、「動機づけ」のための時間を別途設定することをお忘れなく。第3章で、応募から面接に至る採用プロセスに関する神ワザとその重要性について解説しました。

応募を受けつけたり、面接をしたりという採用のプロセスは、求人媒体や求職者からの応募など「他力」に頼るプロセスとは違い、自らの対応しだい、つまり「自力」で結果が変わります。

このプロセスを磨くだけでグッと成果が上がるのです。そこで、本編のなかでも触れた、採用強者に近づくためのサポートツールを【特別付録2】としてまとめました。

忙しいあなたに、そのまま使っていただけるよう、すべてダウンロードできる仕様になっています。ぜひご活用ください。

「採用お助けツール」とダウンロードの方法ついてここまで、アルバイト採用に関するさまざまなメソッドを解説してきました。そのなかで、いくつかのツールを紹介しました。

ここでは、そのなかから、汎用性の高い次の5つのツールと、本書で解説した内容を、あなたの職場に落とし込むためのチェックシートを公開します。

❶面接予約受付シート

❷応募者電話対応マニュアル

❸応募受付FAQ(問合せ対応集)

❹理想的な1時間面接シナリオシート

❺面接採点表

❻応募受付・面接・出勤初日完全チェックシート

❺の「面接採点表」は、本編では紹介していませんが、面接時に応募者を見極める際、役に立ちますのでご活用ください。

❻の「応募受付・面接・出勤初日完全チェックシート」は第3章、第4章で解説した内容を、実践できているかを確認するためのチェックシートです。

ぜひ、本書を〝読んだだけ〟で終わらせず、日々のお仕事に役立てていただければと思います。ダウンロードの方法「採用お助けツール」のダウンロードは次のURLから行えます。

http://www.kankipub.co.jp/pages/kamisaiyo.zip/職場やご自宅のパソコンにダウンロードし、プリントアウトしてご活用ください。

❶面接予約受付シート

神採用16参照とにかく「即レス」「即アポ」。本編で何度もお伝えしましたが、そのために役立つのがこの予約受付シートです。

スタッフが慌てずに対応でき、応募者を待たせ、イライラさせてしまうことも防いでくれます。ここで重要なポイントは、面接官の日程確保です。

このシートに、面接候補時間をあらかじめ書き込んでおけば、応募者とのファーストコンタクトで、確実に面接の予約をとりつけることができます。

忙しい店長が面接官であることが多いでしょうから、事前の日程確保はなかなか難しいでしょう。しかし、ここが勝負の分かれ目といっても過言ではありません。なお、応募者の個人情報管理には細心の注意を払ってください。

❷応募者電話対応マニュアル

神採用17参照職場でのオフィシャルな電話対応は、とかく緊張するものです。基本的なマナーや質問事項など、応募者との間で発生するやりとりを記した「台本」のようなマニュアルを準備しておくと、アルバイトスタッフでも安心できますよね。

あまりにも細かくしてしまうと、覚えるのが大変なので、最低限のやりとりで構成するほうがいいでしょう。これを用意するだけで「必要なことを聞き忘れた!」というミスを防げますし、キャリアの浅いスタッフでも、自分で対応できるようになります。

誰かに取り次ぐことなくスタッフ全員が面接設定まで対応できる。応募者を待たせないためにも、あるいは職場の生産性を考えても、これは大事なポイントといえます。

❸応募受付FAQ(問合せ対応集)

神採用17参照応募者とのやりとりがスムーズにいって、さっくり面接の設定までこぎつけることができればありがたいのですが、そうはいかないケースも当然ありますよね。

不意な質問をされれば、あたふたしてしまうのも無理はありません。対応マニュアル以外にも、よくある質問に対して回答を用意しておくと、さらに安心感が増します。

なお、FAQは、応募者対応用にわざわざ作成する必要はありません。FAQが最も必要になるのが面接時。

面接でよく聞かれる質問に対しての回答集を準備することは必須ですから、それを応募者対応のシーンでもそのまま使えばけっこうです。

また、募集条件について聞かれることも多いでしょうから、求人広告をコピーしたり、採用ホームページをプリントアウトしたり、募集時の情報を手元に置いておくこともおすすめします。

❹理想的な1時間面接シナリオシート神採用19参照「面接は、採用プロセスにおいて極めて重要。1時間はかけるべし!」とお伝えしました。そして、その1時間の過ごし方についても、簡単なフロー図で解説しました。

この面接シナリオシートは、理想的な1時間を過ごしてもらうために、より具体的なトーク例をまとめたものです。前半の「見極めタイム」はもちろんですが、後半の「動機づけタイム」はとくに重要。

お給料以外の職場の魅力を、応募者の興味に照らし合わせて、やりがいとして伝えることができるか。これができれば、グッと採用確率は上がりますし、辞めにくくもなります。ぜひ、参考にしてください。

❺面接採点表面接における採用基準については、本編では触れていません。

〝面接では選ぶのではなく、選ばれる意識が重要〟ということをしっかり理解していただくためにも、あえて応募者を選別するノウハウについては解説しなかったのです。

しかし、せっかく採用できたものの、「あれ?こんなはずでは……」となってしまったら、こんなに残念なことはありません。

採用基準があいまいだったり、面接で話した内容をよく覚えておらず、第一印象の記憶しかなかったり……。こういった不備をなくすためにも、採用基準を明確にすることと、面接時に評価を記録することをおすすめします。

そのためのお助けツールがこの面接採点表。あらかじめ決めた採用基準を記載しておき、その項目を判定できるようにしておくと便利です。また、評価の記録は、できるだけ面接が終わってすぐに行ってください。

❻アルバイトの応募受付・面接・出勤初日完全チェックシート最後に収録したのは、採用プロセスにおいて実践すべき項目をまとめてチェックできるシートです。

本書でお伝えした神ワザはもちろん、それ以外の大切な項目も網羅的に確認できるよう、応募受付から面接、そして出勤初日まで34項目をピックアップしました。

かなり細かいチェックシートではありますが、せっかくの貴重な応募を、採用・定着につなげるために実践すべき項目ばかりです。

1つでも多くマルがつくよう、頑張ってください。このチェックポイントをきちんと実践できれば、採用率、定着率は劇的に改善するはずです。

おわりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。地元のカフェで、最後の原稿を書いています。

このカフェは、けっこう集中しやすいロケーションで、休日の原稿書きによく使わせてもらっているのです。ふと集中力が途切れた瞬間、人の話し声が耳に入ってきました。

カウンターに陣取ってパソコンをカタカタ叩いている私の背後で、面接が行われていたのです。このカフェに応募してきたアルバイトの面接のようです。

聞き耳を立てていると、このカフェはどうやら個人店ではなく、近隣に4〜5店舗ほどを展開しているチェーン店で、面接官は店長のさらに上の立場とおぼしき本部の人。ひょっとしたらオーナーかもしれません。

俳優の吉田鋼太郎に似た中年男性です。この面接官が、次から次に応募者をさばいていました。そう。まさに……さばいていたのです。

「店舗は、A店が希望なんだね。今後、B駅に新店が出るんだけど、そっちじゃダメ?」「職種はホール希望か……。厨房は?興味ない?料理覚えられるよ!」彼は、人手の薄い店舗と職種へのコンバートが可能かどうかにしか興味がないようでした。

そのポイントだけを確認して「じゃ、あとで連絡するから!」といって、次々に応募者を帰していきます。所要時間は10分もかかっていなかったのではないでしょうか。でたッ!塩採用!私は思わず心のなかでつぶやきました。

本書でお伝えした「神採用」の対極にある接し方。まさに、「塩採用」としかいいようがありません。このお店は、雰囲気もいいうえに食事も美味しく、なかなかいいお店です。

しかし、スタッフの入れ替わりが本当に激しい。大学生のアルバイトが中心なのですが、いつも新人さん状態なので、サービスレベルが安定しません。

「残念だなぁ」と常日頃から思っていたのですが、これで納得しました。こんなしょっぱい面接をやっていたら、すぐに辞めてしまうでしょう……。

このタイミングで、本書ができていたら、この吉田鋼太郎似の面接官に、今すぐ渡してあげるのに……。ちょっと間に合わなかった。残念です。

しかしこの光景に立ち会い、本書が世のお役に立てればと、より奮い立つものがありました。こういった塩採用は、他人事ではありません。むしろ、実際の採用現場においては、塩採用派が圧倒的多数を占めていることでしょう。

もしかしたら、あなた自身も気づかぬうちに塩採用をしているかもしれません。ぜひ、本書の内容を日々の採用活動に生かし、「神採用」を実現してください。

本書でお伝えしてきたとおり、アルバイトの採用と定着に関する問題は、ちょっとした工夫やひと手間で劇的に改善します。

ニッポンにはびこる塩採用が、オセロのように1枚ずつ「神採用」に裏返っていく。本書が、そのお手伝いをすることにつながるとしたら、こんなにうれしいことはありません。

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