スタッフ全員を面接予約受付態勢にとにかく即レス!即アポ!
アルバイトを探す際の情報収集は、ウェブやアプリを利用した「デジタル化」が進んでいます。この変化は、スマートフォンの普及が大きく影響しているわけですが、スマホの普及は、同時に応募アクションを電話で行う「アナログ化」への回帰も促すことになりました。
〝パソコン機能としてのスマホ〟で求人情報を探し、〝電話機能としてのスマホ〟で応募する。まさにバイト探しのデジアナ化現象です。
ツナグ働き方研究所の調査によると、求人サイトを利用した人が電話で応募した割合は62・8%に上ります。デジタル派の3分の2が電話で応募しているというデータがこの現象を裏づけています。
そもそも面接ドタキャンの理由は「他社に決まった」「連絡が遅かった」というものが大半を占めます。せっかくの応募を無駄にしないためにも、とにかく迅速な対応が求められているのです。電話応募に対していかにリアルタイムにレスポンスできるか。
そして、会話中に面接の予約を取りつけることができるか……。貴重な応募を面接に結びつけることができるかどうかは、初動で決まるといっても過言ではありません。ここでは、「即レス」「即アポ」を実現するための重要なポイントを3つ紹介します。
1つめのポイントは、スタッフ全員への周知です。よく見受けられるのが、アルバイト採用活動を行っていることが職場全体に伝わっていないケース。お店が人を募集していることを店長だけしか知らなければ、応募の電話をとったスタッフは当然戸惑います。
どう対応すべきかわからず、店長からの折り返し連絡にしてしまった時点で、その応募者が面接に来てくれる確率はいっきに下がります。
そういった事態を回避するためにも、求人広告が掲載される前に、職場のスタッフ全員に募集のことを伝えておきましょう。たとえば、朝礼の場で
「来週月曜日からスタッフ募集の広告を掲載します。みんなの新しい仲間となる募集だから、店長の自分がいないときでも面接の予約を受けつけられるようにお願いします」といった告知をしておけば、スタッフの当事者意識も高まります。
2つめのポイントは、対応をスムーズにするための準備。面接候補日がわかるカレンダーと、応募者情報を記入できる※面接予約受付シートを、電話の横に置いておくことをおすすめします。
これだけで迅速な対応につながります。こういった細かい準備をしておけば、スタッフが慌てずにすむうえ、応募者を待たせてイライラさせることを防ぐこともできます。
3つめのポイントは、ウェブからの応募に対しても電話をかけることです。ウェブ応募の利点の1つは深夜帯にも応募ができること。朝出勤した時点で前夜の応募を確認したら、すぐに電話をかけましょう。
一度電話で話しておくことで、応募者の「約束を守らなければ」という気持ちを高めることができます。メールでの淡泊なやりとりだけより、各段にドタキャンを防ぐことにつながります。
繰り返しになりますが、応募電話に対して「即レス」「即アポ」が実現できるか……、これが面接へのカギです。スタッフ全員、面接予約受付態勢で臨みましょう。※「面接予約受付シート」は、特別付録2からダウンロードできます。
神事例16「店長から折り返し連絡します」をやめてみた!あるアパレルブランドの店舗での募集。
人気のブランドであることも手伝ってか、この採用難時代にもかかわらず応募はそこそこありました。しかし、面接率が低かった。原因は、店長不在時の「店長から折り返し連絡します」というオペレーションでした。それに気づいた店長はやり方を変えました。スタッフ全員にアルバイトを募集していることを周知し、応募の電話に誰もが対応できるようにしたのです。
しかし、それでも面接率は上がりませんでした。よく見直してみると、店長自身が忙しく、面接時間を確保できていなかったのです。その結果、あとから連絡するという対応が多発していたのです。そこで、店長は面接日の確保を最優先することにしました。
1回の応募電話対応で面接予約までを完結させるためには、面接官の面接候補日程を事前に確保しておくことが必須です。日々の業務に追われながらも、店長は面接日程の確保に努めました。その結果、応募者の3割ほどしか面接に来てもらえなかったのが、応募者の約7割が面接に来てくれるようになったのです。
電話対応のコツをまとめよう!応募者対応マニュアルがあればスタッフも安心
「即レス」「即アポ」。応募に対する迅速な対応の重要性について述べましたが、それだけでは対応が完璧だとはいえません。その対応中、実際にどんなやりとりをすればいいのか。当たり前ではありますが、スタッフ全員に、ここをちゃんと周知しておくことがポイントです。
とくに、電話での対応は緊張しがち。SNSの普及もあり、日常で電話をする機会が減っているからです。友人との私的な電話ならまだしも、職場での公的な電話となれば、余計にハードルが高いと感じるでしょう。
だからこそお店のスタッフには、たとえば「電話はできるだけ3コール以内に出る」「会話が終わってもこちらから電話を切らない」といった、基本的なマナーからきちんと教えてあげる必要があるのです。
有効なのが※応募者対応マニュアル(電話対応台本)をつくることです。基本的なマナーはもちろん、面接予約に至るまでの応募者とのやりとりを台本にしておくと、応募者からの電話に出たスタッフがスムーズに対応できます。
また、不意な質問にあたふたしないための※FAQ(問合せ対応集)を準備しておくことも大切。こういうマニュアルがあればスタッフも安心できます。ただし、せっかくマニュアルをつくったとしても、うまく使えなければ意味がありません。
台本を見ながら事前に練習しておくことをおすすめします。実際に声に出して練習することで、慌てずにすむわけですから。ここからはやや上級編となりますが、面接に来てもらうためのトークに関する神ワザをお伝えしましょう。面接に来てもらうためには、「来ない選択をさせない」あるいは「来ない理由を減らす」ことがポイントです。
たとえば「面接日は、いつがよろしいですか?」と聞くのではなく、「面接日は、〇日と×日のどちらがいいですか?」と聞けば、面接予約率が上がります。
面接に来る前提で、選択肢を限定した聞き方になっているからです。前者はオープンクエスチョン、後者はクローズドクエスチョンといいます。応募者との会話では、後者のクローズドクエスチョンをうまく活用しましょう。
以前、何かの雑誌で、女性をデートに誘う際は、デートに来てもらう前提に立って「食事はイタリアンにしますか?それとも和食がいいですか?」と聞いたほうが、デートに応じてもらえる確率が高まる、という記事を読んだことがありますが、これもクローズドクエスチョンの効果です。
実際、応募対応の際に「面接時の飲み物はオレンジジュースとコーヒー、どちらがいいですか?」と聞くことで、「面接ドタキャンゼロ」を実現したカレー屋さんもあります。まさに心理学のテクニックを利用した上級編の駆け引きトーク。
こういった工夫をすることで面接率の向上につながるのなら、覚えておいて損はありません。※「応募者対応マニュアル」「FAQ」は、特別付録2からダウンロードできます。
神事例17前日の確認連絡が当日のドタキャンを防ぎます面接の前日に、「明日の面接よろしくお願いします」と連絡をする。
これも、面接のドタキャンを防止するのに有効です。最近は食べログでお店を予約しても、前日に予約確認のショートメールが送られてきますよね。アレと同じです。
あるフレンチレストランでは、当日キャンセルを避けるため、予約のお客様に「明日お待ちしております」というメールを前日に送っていました。
このレストランのオーナーシェフのGさんは、「これが面接にも使えるのでは」と、思いつきました。以降、応募者に対して面接前日に確認メールを送るようにしたところ、面接に来てくれる率が1・5倍に向上したとのこと。
Gさんがメールで送る情報は、簡単な挨拶のほか、「①面接時間」「②場所の説明」「③面接担当者の名前」など。これらの情報を再通知することで、応募者の面接に対する心理的なハードルを下げることができます。なお、この連絡は電話ではなくショートメールでも可。当日、応募者が面接会場にたどり着くのに、この情報が便利な確認手段になります。
場所をしっかり伝えるだけでも面接率は上がる!
通い慣れた立場からすると気づきにくいものですが、はじめて訪れる応募者にとって、面接場所にたどり着くことはそれほど簡単なことではありません。
グーグルマップがどれだけ発達したとしても、「これから面接」という緊張感もあり、なかなか普段どおりにはいかないものなのです。
それに加えて、大型ショッピングモール内の店舗などは、広大な敷地に100を超える店舗が軒を連ねているので、見つけるだけでもひと苦労。
先日取材した郊外のアパレル店は、ショッピングモールの入口から店舗まで、なんと15分もかかりました。普通、施設の入口から店舗まで15分もかかるなんて誰も考えません。
ですから、このお店に応募した場合、あらかじめお店の場所を知っている人でなければ、面接に遅刻してしまうわけです。応募者の約半数が下見にいくという話をしましたが、その理由の1つが店舗の場所確認だというのもうなずけます。
ある惣菜店チェーンでのケースを紹介します。この会社は、「応募は集まるのに面接率が低い」という問題を抱えていました。その原因は面接場所でした。
この会社の店舗はデパ地下にあるため、スペースが狭く、店舗での面接ができません。そこで仕方なく、新宿西口の高層ビル街にある本社オフィスで面接を行っていたのですが、その場所がわかりにくいと、数人の応募者から異口同音に指摘されたのです。
それを聞いて採用担当者は驚きました。その会社は、新宿高層ビル群のなかでも、かなり有名なビルに入っていたからです。「いくらなんでもわかるよね……」と。しかし、デパ地下のお惣菜屋さんということもあり、応募者の大半は主婦層。彼女たちは普段、高層ビル街には足を運びません。ただでさえ複雑な新宿駅。
「どの出口から出ればいいのか」「地下道からいくべきか、地上を歩くべきか」など、有名なビルであっても、通い慣れていない人にとっては、たどり着くまでにいくつもの関門があったのです。
応募者の指摘の意味を理解したこの会社は、新宿駅から本社ビルへの道順を記した地図を、面接予約者にFAXで送るようにしました。
現在ではFAXからLINEに変わっていますが、面接場所の地図を送るひと手間をかけることを継続しています。LINEにせよショートメールにせよ、面接に対するハードルを下げるために、応募者に地図を送ることは極めて有効な手段です。
今では地図のURLを送ることもそれほど手間ではなくなりました。とはいえ、主婦やシニアのなかにはデジタルリテラシーの低い応募者もいて、ガラケーを使っている人もいます。
そういったことを鑑みると、応募者からかかってきた電話で、きちんと説明できれば、それに越したことはありません。面接場所を電話で伝える際に重要なのは、応募者の目線に立つことです。
「4番出口を出ます」とか、「出て10歩で左に曲がります」とか、駅から面接場所までの行程をできるだけ具体的に伝えることを意識しましょう。
神事例18いっそ迎えにいってしまう作戦もあり!
再開発が進む渋谷にあるカフェでは、最近、応募者からの「道がわからない」という電話が増えていました。工事中の場所が多く、昨日まで通れた通路がいきなり通行止めになっていたりと、電話口で説明するのも大変な状況。
そこで、渋谷駅の改札まで迎えにいくことにしました。これだけで面接のドタキャンがいっきに減ったそう。しかも、歩きながら世間話をしたり、職場の雰囲気を伝えたりできるようになったことで、応募者の緊張が解けるという効果も。
おかげで、和やかな雰囲気で面接できるようになり、内定辞退者も激減しました。
応募者の「ここで働きたい!」という気持ちを高めるために忙しくても面接には1時間かけるべし!
いよいよ、面接本番で使える神ワザについて解説しましょう。まずは、面接にかける時間です。我々の調査によると「面接にかける時間は30分以内」という店長が78%。これは、店長が「面接は見極めの場だ」という認識に立っているからでしょう。
しかし、面接は応募者を見極める場であると同時に応募者から見極められる場でもあります。つまり、応募者を選ぶのではなく、「選んでもらう」という意識が大切なのです。それなのに、突っ込んだ質問をすることもなく、第一印象だけで見極めを終え、あとは勤務条件の確認をして終了……。
こんな面接が大半を占めているのです。これでは、「選んでもらう面接」とは程遠い状態。逆にいえば、応募者が働きたくなるツボを押さえ「動機づけ」できれば、採用率は確実にアップします。
そのためには、※面接に1時間割いてほしいのです。まずは、アイスブレイクで話しやすい雰囲気をつくります。たとえば、応募者に対して「あなた」ではなく、ちゃんと名前で呼ぶだけでも、距離感がグッと縮まります。
その後、合否を見極めたら、後半30分は応募者を惹きつけるための時間に使いましょう。ここまで再三述べてきたように、「絶対にこの職場で働きたい」という強い動機を持つ応募者は希少なわけですから、面接時の「動機づけタイム」こそが、採用確率を格段に向上させる「魔法の時間」となりうるのです。
では、どんな話をすれば応募者の「動機づけ」につながるのか。やり方は簡単です。じつは応募者の90%は、面接時に仕事の説明をしっかりしてもらえると、「この職場で働こう」という気持ちが高まるというデータがあります。
同じような観点で、職場を案内することも有効です。いずれにせよ、具体的に働くイメージが湧くことで、応募者のモチベーションは上がります。また、面接の最後には必ず応募者からの質問タイムを設けましょう。
「質問に対して満足な回答が得られる」「自分の話をじっくり聞いてくれる」ことにも、応募者は動機づけされるからです。こういった傾聴の姿勢は、「入社後も自分を大切に扱ってくれそう」という気持ちを醸成します。
なお、不採用と判断した応募者に対しても、残り30分をきちんと使いましょう。採用されなかった応募者からすると、あまりに短い時間で判断されたのでは、ちゃんと見極めてもらえたのかという不審感を抱きかねません。それによって、お店に対するネガティブな気持ちが芽生えれば、お客様を1人失うことになるからです。
神事例19「採用即決!」で、応募者のモチベーションが上がった!
面接に来た応募者の働きたい気持ちを高める一手として、「即決採用」を心がけているお店があります。ある焼肉チェーンの店長Fさんは、内定辞退が多いことが悩みでした。
そこで仲のよかった先輩店長のTさんに相談すると、「オレはいいと思ったら面接の場で『採用っ!』って握手するよ」とのこと。
じつは、Fさんはほかの応募者と比較して採用する人を決めたい慎重派。内定の連絡をするまでに時間がかかっていたのです。
しかし、Tさんの「こっちも比較しているけど、応募者もあちこち比較しているわけだから、連絡ははやいほうがいいんじゃないの」というアドバイスを聞いて納得。
「やってみてわかったんですけど、たんに内定辞退を防ぐだけでなく、その場で内定を出すと、面接に来た子の顔がパッと明るくなるんですよね」と、Fさんは語ってくれました。
即決することによって、応募者が「動機づけ」されているわけです。我々の調査でも「面接の場で採用する旨を伝えられると働く気持ちが強くなる」というデータがあります。これこそ、まさに神ワザではないでしょうか。
応募者がさらにグッとくる秘訣お給料以外の魅力をアピールできれば勝ち!
面接に1時間を確保すること、そのうえで具体的な仕事内容をしっかりと説明すること、応募者からの質問にていねいに答えること。
この3つを実践することで、応募者が職場で働くイメージを持つことができ、それが「ここで働きたい!」というモチベーションにつながります。
忙しい現場で、店長が面接のために1時間を割くというハードルはあるものの、仕事内容の説明や傾聴の姿勢を示すことは、それほど難しいことではありません。
これまでやってきた面接に、まさにひと手間をプラスするだけで採用成功につながるのですから、実践しない手はないでしょう。ここでは、さらに応募者の働く気持ちを高める採用の神ワザを紹介しましょう。
それは、〝お給料以外の魅力を伝えることができるか〟ということ。ここまで、「インスタ映え」するビジュアルや、美味しい「まかない」は、職場の立派なアピールポイントになるとお伝えしてきました。
これらと同じように、面接の場でも、職場の魅力をアピールすべきなのです。面接での応募者に対するアピール力は侮れません。第2章で、求人広告では対象を絞り、その対象に響く表現を心がけるべきと述べました。とはいえ、広告は不特定多数に対する情報発信であることは否めません。
一方、面接は基本的に1対1。面接時には、応募者個人に向けて、その人が魅力に感じるであろうポイントを訴えることができるのです。
たとえば、ある応募者は「職場で友人ができるといいなぁ」という思いを持っていたとします。その応募者に対しては、職場内での交流がアピールポイントになります。仕事終わりにみんなでボウリングにいく、休日にバーベキュー大会を開催している、といったことが「ここで働きたい!」というモチベーションにつながります。
また、英語を勉強している学生は、外国人のお客様が多いエリアの飲食店に応募することもあるでしょう。職場で英語を使う機会があれば英語力が磨かれるからです。このようなケースでは、外国人のお客様への接客について触れるといいでしょう。
似たようなケースとして、就活を意識してアルバイト先を選ぶ応募者もいます。あるいは、私服で勤務できる、髪型や髪色が自由といった職場の雰囲気に惹かれる応募者もいます。アルバイトに応募する動機は千差万別。
1人ひとりの欲求や志向をくみとり、それに合わせて職場の魅力を語れば、かなりの確率で採用に至るはずです。「いやいや、そんな簡単にいうけど、応募者の志向と職場の魅力が合致しない場合だってあるはず」と思った人も多いことでしょう。
だからこそ、応募の動機をしっかり聞き出すことが重要なのです。応募者は、あなたの職場になんらかの魅力を感じて面接に来ているわけですから、必ず合致する要素があるはずです。
それを面接時に見極めることが大切なのです。なお、それを探る際は、給与や勤務時間などのハード面ではなく、仕事への興味や職場環境といったソフト面を聞き出してください。
それがそのままヒントになります。ただし、盛りすぎには注意が必要です。「聞いていた話と違う」と離職の原因になりますから。この塩梅は意識してください。
神事例20面接時に、自慢の1杯をふるまい動機づけする
ラーメン店東京都心に十数店舗をかまえる人気ラーメン店では、その個性を前面に押し出した面接を実施しています。「超」がつくほど人気の行列店なので、面接に割ける時間は、午後の比較的閑散とした数時間しかありません。
しかし、そのかぎられた時間のなかで、非常に効率的な面接を行っているのです。まず、面接に来た応募者全員に自慢のラーメンをふるまいます。
そして食べ終わったあとに、その味へのこだわりを語り、そこから面接に入っていくのです。応募者はこのお店のファンであることも多いので、面接でラーメンを食べることができるのはかなりうれしいはず。
しかし、このお店は一宿一飯の恩義から採用にこぎつけようという、あざとい狙いでラーメンを出しているのではありません。
このお店の創業者はこれまでの経験から、スタッフが長続きする秘訣は、結局のところお店に対する共感の強さだと悟ったのです。ラーメンを食べてもらう。
そのこだわりについて語る。面接ではなく、もはや仲間探しです。このチェーンでは、時給ではなく、ラーメンそのものが最大の動機づけポイント。ある意味、最強ですよね。
「面接で聞いていた話と違います……」が、すぐ辞める元凶!
募集条件は、きちんと確認すべし時間をかけたていねいな面接には、苦労して採用したスタッフの早期離職を防止する効能もあります。
アルバイトなど、非正規雇用者の離職率は、入社6カ月以内で55%に上ります。新卒採用で入社した新入社員が3年で3割辞めることが社会問題化していますが、アルバイトの離職率はその比ではありません。
もちろん無期雇用の社員と有期雇用のアルバイトとでは、働く期間に対する前提が違いますが、それを考慮したとしても、はやすぎる離職が多発しているのです。
アルバイトの世界では、働きはじめて1カ月以内に2割以上が辞めてしまうのが当たり前。それはなぜなのでしょうか。
せっかく働きはじめたのに、すぐ辞めてしまった人が口をそろえていうのが「面接で聞いていた話と違います」という言葉。
つまり、面接時にイメージした職場と、入社後のリアルな職場のギャップが大きすぎて、働き続けるのが困難だというのです。
冒頭で「時間をかけたていねいな面接が離職を防止する」と述べたのはこのためです。15分から30分ほどの短い面接時間では、仕事内容や職場環境についてきちんと説明することが難しいでしょう。
「いやいや、どんな仕事なのかくらいはちゃんと説明しているよ」という反論もあるでしょう。しかし、それは採用する側の考え。「伝えたつもりが伝わっていない」というケースが山ほどあるのです。
日々そのお店で働いているこちら側の〝当たり前〟と、その職場のことをまるで知らない応募者の〝当たり前〟との間には、大きなギャップがあるのです。
とくに、社会経験のない学生だと、少し説明したくらいでは話の内容を理解できないこともあるでしょう。「伝えたか」ではなく「伝わったか」がゴールなのです。
事実、「ちゃんと仕事内容を伝えた」という面接官の割合が60%なのに対し、「ちゃんと仕事内容を理解できた」という応募者の割合は35%に留まるというデータもあります。
「伝えたつもりが伝わってない」というギャップが25ポイントもあるわけです。では、面接時に何を伝え、確認しておくべきなのか。
基本的には以下の5つについて確認してください。もちろん募集する際に提示した募集条件がベースとなることが前提です。
❶給与:研修期間があるのかないのか?その間の給与はどうなるのか?
❷勤務時間:勤務時間のカウントはどこからどこまでか?
❸待遇:制服の有無。まかないの有無。それらの費用負担はあるか?
❹交通費:一部支給の場合は上限を。駅からのバス代は出るか?
❺出勤日:いつから勤務できるか?また、きちんと仕事のキツさを伝えておくことも大切です。
入社を促すために、つい仕事のいい点ばかりを誇張してアピールしがちです。
しかし、「土日の昼過ぎはとくに忙しい」「お客様から叱られることもある」など、仕事の厳しい点を伝えておくことが、「聞いていた話と違います」を防ぐためには極めて重要なのです。
神事例21採用決定後、入社前に「2時間面談」を行う雑貨屋さん
面接後、採用を伝えてから入社するまでの間に一度来社してもらい、2時間程度の面談をしている雑貨屋さんがあります。
本格的なトレーニングは入社後に行うのですが、ざっくりとした仕事の概要や職場の雰囲気などを伝えるために面談を行っているとのこと。とくに意識しているのが、お店で大事にしている理念などをじっくりと語ること。
たとえば、お店に並んでいる雑貨がどんな視点でセレクトされているのか、あるいはショップブランドをつくっていくうえで何を大切にしているのかなど。
条件面の確認に留まらず、思いを伝えることによって、自社で働いてもらううえでの心の準備ができるのです。入社前面談をはじめたころは、勤務上のルール説明がメインだったのですが、徐々に理念共有の時間に変わっていったとのこと。
そういう話を事前にしておいたほうが、圧倒的に辞めにくいと気づいたからです。もちろん、この2時間分の時給と交通費は支払っています。言わずもがなですが、ここをケチらないようにしてください。
どのくらい働けるのか?どのくらい稼げるのか?勤務時間と収入について握っておけば、もめません!
働く条件を確認するうえで最も重要なのは勤務時間です。当然ですが、採用されたスタッフにとって「どのくらい働けるか」によって「どのくらい稼げるか」が決まりますから。
じつは、「思ったより稼げない」と感じているアルバイトは少なくありません。彼らは、「シフトの希望を出しているのにあまり出勤させてもらえない」という不満を溜め込んでいるのです。
こういったストレスは離職に直結します。我々、ツナグ働き方研究所が実施した「アルバイト労働時間調査」では、アルバイトの「理想の労働時間」の平均は月間98・3時間でした。
勤務日数は17日で週休3日程度、1日あたりの労働時間は5・7時間を希望しているという結果でした。しかし、実際の労働時間の平均は91・3時間と、やや少なめです。
以前話を聞いた、あるファストフード店のアルバイトYさんは、「ウチの会社は、残業代未払い問題が報道されてから、労働時間の管理が厳しくなったんです。
たとえば5時間のシフトに入り、手が足りないので残業することになっても、8時間以上は絶対に働けません。こっちは平気だし稼げるから、もっと働きたいんですけどね」と、語ってくれました。
働き方改革やブラックバイト報道の影響もあり、経営側に「アルバイトを働かせすぎるのはNG」という意識が蔓延しているのかもしれません。
そういった観点からも、「どのくらいシフトに入れそうか」を確認しておくことは極めて重要です。一方で、過剰にシフトに入れるのも、働く側の不満の原因になります。
学生なら授業との兼ね合いがあるし、主婦には家事育児という本業があります。シニアの方も体力的にフル稼働するのは大変でしょう。
そういった意味でも、どのくらいシフトに入れるかを共有しておくことを強くおすすめします。とくに、お休みに関しては細かく確認しておきましょう。
学生の場合は、シフトに入ってほしい日と試験日が重なったり、お子さんのいる主婦の場合は、夏休み中の勤務シフトを変更してほしいというケースがあったり……。
入社後、おたがいが「聞いてないよ!」とならないよう、きちんと確認しましょう。とはいえ、聞き方に注意が必要な時代になってきました。
たとえば、主婦の応募者に対して、こちら側から、子どもの有無、子どもがいた場合の夫の協力態勢、面倒を見てくれる親がいるかなど、個人情報にかかわる質問はNG。
勤務時間の確認については、
- とくに入ってほしいシフトの時間や曜日に対する要望
- ほかのアルバイト先との掛け持ちの有無
- 平日、土日祝日それぞれの勤務可能時間
- お正月、ゴールデンウィーク、お盆など連休期間の勤務
について、できるだけ具体的にヒアリングしていきましょう
神事例22「どのくらい働けますか?」ではなく「どのくらい稼ぎたいですか?」
某大手外食チェーンが経営する焼鳥店の店長、Hさんに取材したときのこと。
彼は、「面接時に〝どのくらいシフトに入れますか?〟ではなく、〝どのくらい稼ぎたいですか?〟と聞くようにしています」と教えてくれました。
理由を聞くと、「稼ぎたい額をベースに勤務シフトのイメージを共有すると、応募者との距離が近くなるんです。〝この店長は、自分の給料のことを一緒に考えてくれるんだ〟みたいな」という答えが返ってきました。
「雇う・雇われる」ではなく、応募者と同じ方向を向く意識が共感を深めるのです。実際、H店長のお店では、シフトのトラブルで辞めるスタッフがほぼいないとのこと。
「このくらい稼ぐには、このくらいシフトに入らないと」というイメージができるため、入社後に「休む、休まない」でもめにくいのです。
また、急なシフト変更についても、「明後日入ってもらえば、希望額に届きますよね」と、お金とセットで頼むことで、お願いしやすくなるとのこと。ぜひマネしてみてください。
コラム 不採用時の対応には細心の注意が必要
不採用の応募者への伝え方には細心の注意を払いましょう。「不採用の人には連絡しない」というケースも散見されますが、必ず連絡すべきです。
なぜなら、不採用の通知がないと、応募者は次のアルバイト先を探しはじめていいのかがわからないからです。また、対応が悪ければイメージダウンにもつながりますし、「いい加減なお店だ」と思われる可能性も出てきます。
ここでは、不採用の通知をする際のコツをいくつか紹介しましょう。不採用通知はいつする?不採用通知は、遅くとも面接から1週間以内に完了させましょう。ただし、あまりにはやいと、応募者は「きちんと選考してくれたのだろうか?」と不安に感じる可能性があります。
応募人数や選考期間の事情で長くかかることがありますが、その場合は、面接時に「遅くとも〇日までに結果をご連絡します」と、目安のスケジュールを伝えておくと、応募者も安心します。
伝え方はやんわりと「不採用になりました」と、結果のみを端的な表現で伝える不採用通知は、マイナスの印象を与えてしまいます。
「ご応募いただき、誠にありがとうございます」という感謝の気持ちを述べたうえで、できるかぎり「不合格」「不採用」という言葉を使わないよう心がけ、相手に不快な印象を与えないようにしましょう。
不採用の場合、履歴書は極力返却する履歴書は個人情報の塊です。不採用の人の履歴書は、店内・社内に保管したままにすると流出するリスクを伴うため、必ず返却または破棄しましょう。
履歴書の代わりに「応募エントリーシート」のような形で個人情報をもらう場合もありますが、その際も同様です。なお、返却方法は郵送がベスト。
応募者が最も安心できる方法ですし、「ていねいに対応してもらった」と、いい印象を持ちやすいからです。不採用通知に履歴書を返却する旨を記し、同封すると手間が省けていいでしょう。
破棄は速やかに履歴書や応募シートを破棄する場合は、極力速やかに行いましょう。いつ・誰が破棄するかのルールを決めておくとトラブルを予防できます。
個人情報が漏れないよう、シュレッダーで細断してください。お店のファンであるお客様が、「ここで働きたい」と応募してくるケースは少なくありません。それが不採用になった。
このケースで対応を誤れば、お客様のなかにアンチな気持ちが芽生え、大事なお客様を失ってしまうかもしれません。しかも、影響はそれだけではありません。SNSにネガティブな投稿をされる可能性もあります。
その投稿が多くの人にシェアされることになれば、お店の評判はガタ落ちになり、1人のお客様を失っただけではすまなくなります。
不採用のときこそ、ていねいな対応が必要だと心得てください。「採用できたから、これで大丈夫!」いいえ。世の中そんなに甘くはありません。
苦労して採用したスタッフが入社後すぐに辞めてしまい、結局、また募集しなくてはならない……。この悪循環がアルバイトの採用現場における問題の核心なのです。その背景にあるのが「辞めたらまた採ればいい」という残念な価値観。
本書では「初日の受け入れ」「職場に馴染むためのフォロー」「業務トレーニング」など、入社後に必要なコミュニケーションタスクを、採用活動における最終段階と位置づけています。入社したての新人に「この職場ならやっていけそうだ」と感じてもらうこと。これが「神採用」のゴールなのです。
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