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第四章商売のコツとは何か

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第四章商売のコツとは何か

富士そばが従業員になるべく手厚く、そして余裕のある経営を行えているのは、本業での結果があってこその話です。幸い、二〇一七(平成二九)年に入っても店舗数は増え、業績も成長を続けています。

背景には、もちろん従業員の頑張りや運の要素もあるでしょうが、一つの要因として、私が身につけてきたビジネスの経験が生きているのだと思います。

そこで本章では、富士そばの経営で生かされている「商売のコツ」をご紹介しましょう。立ち食いそばというかぎられた業界での話が主ですが、基本的な頭の働かせ方や、判断の仕方などの点で、ビジネス全般で何らかの参考になる部分もあるのではないかと思います。

富士そばは不動産業である

立ち食いそば屋は物件がすべて立ち食いそば屋における、良い物件の条件とは何か。しばしばこんなテーマで取材を受けることがあります。

ライバルに真似をされてしまう恐れがあるので、本当はあまり明かしたくはない情報なのですが、ここでは少しだけそのエッセンスをお教えしましょう。

まずは、お店の広さについて。昔は一〇坪くらいあれば十分で、一四~一五坪もあれば広い方でした。しかし今はその大きさは普通で、二〇坪あっても良いぐらいです。

というのもバブル崩壊以前は誰もが小忙しく、回転率がとても高かった。椅子もなく、文字通りの「立ち食い」が基本でした。それが近年では、椅子に座りゆっくりと食べたり、食事中におしゃべりをしたいという人が増えています。

回転が遅くなりましたが、値段はむやみに上げられないので、その分お店を広くして売上を維持しようという狙いです。そして物件が一階にあること、間口が広いことも大切な条件です。

その方が、外から中の様子が見えてアピール性が高く、入りたくなります。お店が二階にあったり、間口が狭かったりすると、中の様子が窺えず、なかなか入ろうという気になりにくいものです。

さらに、大きな交差点などに接する角地であれば理想的です。単純に目立つからです。店の目の前の歩道やスペースは、狭いのが理想とまでは言わないけれど、あまり広すぎない方が良いです。

広場があるということになると、これはいけません。広場の反対側を通りかかって富士そばが目に入っても、せいぜい「おっ、あそこに富士そばがあるな」と思うぐらいで、わざわざ行こうとは考えない。

立ち食いそばには、それほど人を呼ぶ力はないのです。広場を横切ってまで入っていこうという人はあまりいないでしょう。

これが、店の前の歩道やスペースが狭い場合、間近でちらりと見えた店内の様子や、漂ってくる匂いにつられて、ふと足を踏み入れたくなることがあります。

昔、フライパンで醬油を焦がして、店の外に向けて扇風機で匂いを拡散させてみたこともあります。すると、面白いようにお客様が入りました。やはり目や鼻に直接訴えかけると効果的なのです。

駅には半歩でも近い方が良い駅からの距離は、ケース・バイ・ケースです。駅近でも目立たない場所ならば、人が通らないこともあるし、やや遠くても人通りが多いところもありますから。

ただし原則としては、駅に半歩でも近い方が良いでしょう。立ち食いそば屋を利用するお客様は、さっと手軽に食事を済ませたいという方が多い。

そうした方が駅を出てすぐの場所で飲食店を選ぶ場合、たとえ一〇〇メートル歩けばもっと美味しい店があるとしても、大体はすぐ入れる駅近のお店を選ぶことでしょう。

わざわざ遠いお店に足を運ぶのは、よほど熱心なファンだけです。なので、他の条件が完璧でも、近くに競合店があるという理由で出店を見送ったことは多々あります。

特に、より駅の近くに他の立ち食いそば屋があったら、出店は避けます。どんなに小さい個人店で、味が美味しくない店だとしても、です。

「こんなに小さくて、味も大したことのない店が相手なら勝てるだろう」と判断して出店してしまえば良い?それは考えが甘い。うぬぼれの過ぎた読み違いというものです。小さくても、味が抜きんでていなくても、お客様はそれなりについているものだからです。

一定のパイが奪われてしまうことを覚悟しなければいけません。職場や家の近くで、いつも食べるお店が決まっている人に、それを変えさせるのは至難の業です。経験上、通うお店を変えるのに大体三カ月はかかるでしょうか。

牛丼屋や定食屋でもそのぐらいの時間を要するので、まして同じそば屋だったらさらに時間がかかります。

また、駅との距離があればあるほど、将来的に、駅により近い区画の物件が空いたときに、競合店に出店されてしまう可能性が高くなります。

だから、駅との間にある他業種の並びも気にします。たとえば大手企業、銀行や証券会社、和菓子の「虎屋」のような繁盛している老舗は、近いうちに撤退する可能性がかなり低い。

駅までの区画がそれらで埋まっているようだったら、ライバルも店を出しにくいので、やや安心できます。黒い服が多い場所を狙え!周辺環境としては、大学のように人の集まる施設があると繁盛しそうに思われるかもしれませんが、それは誤解です。

というのも、大学は年に二回も長い休みがあって、閑散としてしまう時期があるからです。遊園地も休日はにぎわうけれど、平日はそこまで混みません。集客を見込んでこうした施設の近くに出店した場合、時期によって売上に大きくムラが出てしまうことになりかねません。

たとえ人が多く集まっている印象のある場所であっても、出店するときにはよく吟味・検討しなければならないのです。結局、一番良いのは会社がたくさんあって、サラリーマンがたくさん集まっているビジネス街なのです。

会社員は雨が降ろうが槍が降ろうが、必ず出社しなければなりませんし、仕事をしていれば必ずお腹が減るものですから。都内のOLは、食べたいランチがあれば電車で二駅ぐらい移動することがあるといいます。

富士そばの本社で働く若い女性社員に聞いても、同じことを言っていました。しかし、サラリーマンは、まずそんなことはしません。

店が近くにあって、頼んだらすぐ出てきて、手軽で安くて、それなりに味も良い。そういう要素を重視する。つまり、立ち食いそばはサラリーマンの食べ物であり、ビジネス街に出すのが基本であるということなのです。

こう書くと、さも当たり前の結論に思えるものですが、立ち食いそばの商売を始めた当初は、そんな当たり前のことさえもわかっていませんでした。

こういうことは、試行錯誤を繰り返すうちに学んだわけです。また、一つの出店の基準として「五分間に一〇〇名以上通る場所」という条件もあります。

その際、注目するのが通行人の「色」です。女性は赤などの原色の服を鮮やかに着こなしますが、サラリーマンが身に着けるのは、ほとんどが黒っぽいスーツ。

つまり通行人全体の印象として黒ければ黒いほど、出店は成功する可能性が高いと言えます。そのため、私はこのように指示を出しています。

「黒い服を着た人が、五分間に一〇〇人以上通る道を狙いなさい!」また、私は普段、電車やタクシーで移動をするときにも、通過する街を眺めて「この地域はあまり立ち食いそば屋がないな。ここに出したらどうだろう」「この街は雰囲気が良い。こういうところに出店してみたいな」と考えたりしています。

狙いを定めたら、まずは最寄り駅の利用者数を調べます。朝昼晩、そして深夜。どの程度の人が通るかを見るわけですが、とりわけ一番大事な時間帯は、朝です。

というのも、夜は早く帰宅する人も飲んで遅く帰る人もいて、利用者数にムラがありますが、朝の通勤時間はそれほど幅がなく、地元の利用者数を把握できるからです。

また、朝に駅を利用した大多数の人は、帰りにも同じ駅を利用しますからね。例外もありますが、一日の乗降客が三万人以上であることを原則としています。出店を検討している駅では、タクシー乗り場を確認することもあります。

利用者数はもちろん、運転手の機敏さも一つのポイントです。もしのんびりしていたり、慣れていないようだったら、この駅はあまり客がいないんだなと判断できるでしょう。

一方、運転手がせわしくテキパキと動いていれば、客数が多いから手慣れているのだと考えられます。タクシー乗り場がにぎわっている駅で、近くに立ち食いそば屋がなければ、そこは穴場です。駅を出てからタクシーに乗るまでの間に、立ち食いそばでお腹を膨らませたいという人は多い。

そこは多少高い家賃を払っても、出店する価値があります。物件の判断は「秒殺」私はどちらかというとせっかちな性格で、待つのは苦手です。

部下に頼んでいた案件は、「どうだった?」とすぐに結果を聞きたくなってしまいます。あまり急かすのも可哀想だし、なるべく言わないように我慢して待つよう心がけていますが……。

ただし、出店する物件の確保はスピードが勝負。とても良い物件が出ていて、「すぐに内覧させてもらいなさい」と指示しても、内覧に同行する設計士が忙しくて一週間後になってしまうというようなこともあります。

そんなときは、「だったら設計士じゃなくて良い。施工者が見たらわかるから、すぐに行ってもらって即判断しなさい」と指示します。待っている間に誰かに取られてしまう可能性がある以上、とにかく早く動かないといけません。

物件に関しては、ほとんど即決です。常務は出店候補の物件を探してくるのが重要な仕事です。良い場所があると、私のところに「見てください」と持って来る。

でも大抵の場合、私はそれをほんの数秒で「これはダメだ」と判断するから、みんなから「秒殺」と呼ばれています。先日も都心の物件を見に行き、「ダメ」と秒殺しました。

常務は靴の底をすり減らし、やっと見つけた物件なので、「ええっ、もっと調査しないんですか?」と嘆いていました。第一印象でダメだと判断したら、それで決まり。

それ以上の調査はしません。なぜなら調査をすればするだけ、いろいろな良い点が目に入ってくるからです。

そうすると人間は欲があるものだから、「もしかしたらうまくいくんじゃないか」と思い、さらに発展して「どうしてもやりたい」という方向に気持ちが傾いてしまう。

だんだん情が移って、甘さが出て、失敗が起こりやすくなります。だからちょっとでもダメだと思ったら、その時点できっぱりとやめる。

情にほだされないようにするため、もう、二度と足を運ぶこともしません。立ち食いそばは月の売上一万円の差で利益が出るか出ないか、という業界なので、危ない橋は渡れないという局面が多々あります。

店を出すか出さないかは、ここまで挙げたような条件を厳しく守りながら、本当にぎりぎりの線で判断してやっているのです。これはさすがにマニュアルを読めばわかることではなくて、経験を積まないと判断できません。

経験を積み、その蓄積から導かれる思考を信用するのはとても大事なことです。このように土地にこだわり続ける富士そばは、そば屋というより、もはや不動産業だと言っても良いかもしれません。

「富士そばは飲食店だけれど、一番こだわるべきなのは、実は不動産選びなんだ」このことに早い段階で気づけたからこそ、今日までの成長があったのだと思います。

サラリーマン感覚を磨く

長続きするお店の条件私は日ごろから勉強のために、できたばかりの飲食店には積極的に足を運ぶようにしています。

そうして経験を積み重ねていると、「この店はそんなに長く続かないな」と感じるパターンがいくつかあることに気づいてきます。一つは、手を広げすぎる店。

最初、醬油ラーメン専門店だったのが、他のスープに手を広げていたり、寿司屋だったのが肉料理や甘味を出すようになったり、そうやって本業から外れて、場当たり的に新しいものへと逃げていく店です。

そうすると本業でだんだんとお客様の支持と信頼を失って、早いうちに店を畳むことになります。そして当然ですが、美味しくない店も続きません。

最近行った甘味の店は、お汁粉の味が薄いので器の中を覗いたら、ほとんどが水で顔が映るほどでした。この店には未来がないなと思いました。

お客様を馬鹿にしてはいけません。逆に、飛びぬけて美味しければ値段が高くても続いていくものです。とんかつ屋で、値段は高いけれど長く続いているお店を知っています。

一方、別のとんかつ屋は味がいまいちで、安くしたり、キャベツのおかわりを無料にしたものの、閉店してしまいました。チェーン店やファストフード店にもしばしば足を運びます。

他の店のそばを食べてみることもありますが、そば限定で意識しているわけではありません。それよりも意識しているのは、値段です。

富士そばの客平均単価は四五〇円。それよりもうちょっと価格が上がって一食七〇〇円ということになると、お店はたくさんあって選べます。

でも、七〇〇円を境に壁があって、それ以上の値段になると、少しお財布の紐が固くなってくる。さらにビジネス街に行くと、九〇〇円ぐらいするランチも珍しくない。

そういうものをいちいち食べ比べてみながら、あれこれ考えます。

「これとうちの四五〇円だったら、遜色ないのか。それとも半分程度の価値なのか」「普段九〇〇円を出している人は富士そばで満足するだろうか」「このメニューと同じ値段を出したら、富士そばでは何が食べられるだろうか。

そして満足度はどちらが上だろうか?」たとえば四五〇円のハンバーグセットを食べて、ボリュームはこっちの方が多いけれど、味は富士そばの方が良い……などと判断していくと、富士そばが飲食業界全体の中でどの程度の位置にいるのか、理解ができるというわけです。

とはいえ一食四五〇円のお店というと、実は探してもそんなに多くありません。だからこそ、富士そばの単価の安さは絶対的な武器になり得るのです。

かけそば一杯三〇〇円のラインは、よほどのことがないかぎり、死守しなければならないと思っています。やはりサラリーマンにとって、ワンコインでランチが食べられるかどうかは大きな問題です。

四九〇円と五一〇円はたった二〇円の違いしかなくても、実感としては天と地ほどの差があるのではないでしょうか。「天と地ほどの差がある」と感じることができるのは、私が普段からサラリーマンの目線を磨いているからでしょう。

車は使わずにいつも電車で通勤し、駅から歩いた距離を身体に刻み込む。駅付近でにぎわっている店があれば、ためらわずに入ってみる。

いつもお客様と同じ目線の高さを共有し、自分だったらどの店を選ぶかを考え、それを経営に反映させているのです。私には、若き日の「一杯のかけそば」ならぬ、「一杯のコーヒー」の思い出があります。

昔、まだお金がなかったころ、ある可愛い女の子に会いたいがあまり、高級な喫茶店に入り、やせ我慢して高いコーヒーを注文したのです。

そのときには非常に良い気分になったのですが、店を出た後、「失敗したなあ、あのコーヒー代はもったいなかった」と悔やんでも悔やみきれませんでした。

結局、四日間も反省して落ち込んでしまったのです。そういう時代もあったから、お金は大事にするし、ありがたみもわかっているつもりです。今でも、経営者になったからといって、お金の重みを忘れたわけではありません。

絶対に安売りはしない

富士そばの最大の強みの一つは、その単価の安さです。現在の価格帯を守り続けることには大きな利点があります。

しかし、商売は安ければ良いというものでもありません。私は、富士そばでは絶対に不必要な安売りをするな、と口を酸っぱくして言っています。富士そばの近くに、半額のそば屋さんが出たとしても、価格競争には絶対に応じません。

かつて、こんな提案をされたことがあります。吉祥寺には合計三店舗あるのですが、それら三店舗が協力して、その全店で食事をした人には天ぷらが一個タダになるクーポンを配るというのです。

私は「そんな安易なキャンペーンはしない方が良いよ」と諭しました。天ぷらが無料になることに惹かれて来店する人は、天ぷらが無料でなければ来ない人だからです。そのときだけは来るけれど、キャンペーンが終わった後はもう来ない。

つまり、富士そばの継続的なファンになってはくれません。飲食店を支えてくれるのは、「値段が多少高くても、ここの料理が好きだからいつも行くんだ!」という固定ファンです。

一時期キャンペーンをやったというだけの理由で、そういうありがたいファンが生まれることはめったにありません。ポイントがもらえることが、「あのお店よりもこっちが良い」とお店を選ぶ判断材料になることはあると思います。

でもポイントがもらえるという理由が、買うかどうか悩んでいる商品を買う最終的な決め手になることは、まずないでしょう。本当に必要なものだったら、四の五の言わずに買うはずです。

ポイントは本質にはなり得ないのです。仮に安売りで繁盛しても、長くは続きません。昔、名古屋でサラダ専門店を経営していたときのことです。

木製の器に、値段からは考えられないボリュームのサラダを山盛りにし、さらに特製ドレッシングを三つも提供しました。中身も充実していたと思いますが、当時はサラダ専門店など世に存在していなかったこともあり、目新しさからテレビに取り上げられて話題になり、お店は大繁盛しました。

しかし好事魔多しとはこのこと。繁盛がピークに達したころ、従業員が過労で倒れてしまったのです。愕然とする私に、知り合いの喫茶店の社長が教えてくれました。

「丹さんは商売というものをわかっていませんね。いいですか、商品を安売りしてはいけません。なぜか。商品を安売りすると、一気に来客が増える。そうなると従業員が疲れて、サービスが悪化する。すると、客に迷惑がかかる。しかも、忙しいわりに経営者の利益が薄くなる。従業員も、客も、経営者も、誰も利を得ない。悪い方向へ向かうだけです」

その社長が出した結論は、「飲食業は正当な価格で心のこもったサービスを提供し、余裕のある営業をした方が長続きする」でした。

それ以来、富士そばではその教えを守り続けているわけです。商いは牛のよだれのごとく数年前、とある駅前で富士そばの横にあった高級そば屋がなくなって、機械でつくるインスタントそば屋ができたことがありました。

するとお客様がそちらに流れて、富士そばの売上が急に下がりました。私が心配していたところ、従業員たちが「大丈夫です。必ず取り返してみせますから」と口を揃えて言いました。そのライバル店に偵察に行ってみたら、椅子はやけに高いし、カウンターも傾いている。肝心のおそばも全く美味しくありません。

私は「これなら大丈夫だ。時間はかかるかもしれないけど、みんな頑張れ」と励ましました。それからも、店長がお店の前でチラシを配って宣伝するというような、特別な活動をしたりはしませんでした。

基本的には、それまでと変わらず美味しいものを適正価格で出していれば、お客様は戻ってくると判断したのです。そして一年耐えたら、お客様が帰ってきて、売上も戻りました。

新しい店舗の珍しさや値段の安さに惹かれて、客足がいったん遠ざかったとしても、食事というのは毎日繰り返す営みです。結局、ある程度は質の良いものを求めるのです。

昔、義父が「商いは牛のよだれのごとく」ということわざを教えてくれました。牛のよだれは、細長い線がたゆまず切れず、ゆっくりと落ちていきます。

同じように商売も、短気を起こして投げ出したり、休んだりしてはいけない。絶え間なく同じことをコツコツとやっていれば、必ず好機は訪れるのです。

富士そばは現在、国内だけで一三〇店舗に迫るほどに拡大を続けています。それぐらいの規模やスピードで経営していると、細く長く落ち着いて、という原則を貫くのは難しい。

しかし、最近では「牛のよだれのごとく」こそが商売の基本だなと、改めて感じています。安くて美味しくて、世に求められるものをコツコツとつくり続けていれば、慌てることはありません。

そば屋ではなく、スナックを目指せ!立ち食いそばのイメージを変える

かつて私が富士そばを創業したころ、立ち食いそば屋は「川」という字の端の端、それも下の方だ、などと言われて馬鹿にされていました。

「川」という字の一番右の棒が国道のようなメインストリートだとすると、立ち食いそば屋は一番左の棒で、路地裏の一本道にあるような店。つまり連れ込み旅館、今でいうラブホテルと同類の業態だというイメージを抱かれていたのです。

一九七二(昭和四七)年の創業から一〇年以上経ったころ、道行く人に「そばといえば何をイメージしますか」と聞いてみると、ほとんど全員が「六〇〇円くらいのざるそば」と答えたものです。

「立ち食いそばを知っていますか」とたずねても、「知っています」と答えたのは、せいぜい一〇人のうち三、四人。それほどマイナーな存在だったのです。

そんな状況がくやしかったので、せめて世の中の三分の一の人に、「そばといえば、立ち食いそば」と言ってもらえるようにしたいと思いました。

そのためには、立ち食いそばのイメージをもっと良いものにしなければならないと考えたのです。具体的には、汚いという印象を持たれているお店をきれいにする。そして安っぽさを払拭しようと決めました。最初に着手したのが、床の改装です。それまでの立ち食いそば屋といえば、板張りの壁、コンクリートの床が一般的。

しかしそのままでは、「立ち食いそば屋は、ちょっと……」と敬遠している人は、いつまで経っても入ってくれるようにはなりません。

私は思い切って、全店の床を大理石に取り替えることにしました。

本物の大理石を使う

初めて手がけたのが、高田馬場店です。床に大理石を嵌めていったところ、四隅のコーナーが残りました。お店の構造上、ここにも大理石を入れるとすると、円形になるように大理石を削ることになり、残った欠片の部分は捨てることになります。

それを見た業者さんからは、「こんなことをしていたら、いくらお金があっても足りませんよ。もったいない……」とため息をつかれ、社員からは「足元の床なんて、誰も見ていませんよ」と呆れ顔で言われたものです。

「いや、これで良いんだ」と私は答えました。多少お金がかかっても、やる以上はしっかりやりたかったのです。プロならまだしも、一般のお客様が店に入るなり床を見て、「すごい、こんな隅まで本物の大理石を使っている!」と気づくことは、まずないでしょう。

だけれども、良いものの方が見る人にとっては気持ちが良いし、感じるものも確実にあるはずです。模造品を使って安く済ませる、という選択肢もありました。でも、見た目だけをそれらしく整えても、中身がハリボテだったら、お客様にはすぐに伝わってしまうものです。

天然のフグと養殖のフグを比べたら、見た目はそっくりでも味が全然違うのと同じように。内装がボロボロで、見るからに安っぽければ、自信を持って「立ち食いそば屋に来てください」とは言えません。

イメージを一新するためには、どうしても本物を使う必要がありました。そこまで本気でお金をかけないかぎり、立ち食いそば屋を敬遠していたお客様の偏見や価値観は変わらないと考えたのです。

結局、かかったお金は一店舗あたり、約五〇〇〇万円。現在、丼物を出すようなチェーン店は内装に一店舗あたり一〇〇〇万円もかけないと聞いたことがあります。

そう考えると、かなり派手に使ったものです。今でも全店の床は大理石で揃えています。以前、値が張るという理由で、少しだけ大理石をやめた時期もありました。

しかし、「最近では大理石を使ったのと使わないのとでは、負担はそれほど変わらないんですよ」というアドバイスを受け、すぐに戻しました。

近年は大理石の値段も下がっており、だいぶ使いやすくなったのです。その後も立ち食いそばのイメージを変える試みは続きます。

店の入り口をガラス張りにし、椅子を設置して座って食べられるようにして、そばも生麵に替えました。今、道行く人に「そばといえば?」と聞けば、四〇~五〇パーセントくらいの人が「立ち食いそば」と答えてくれるのではないでしょうか。

それだけの自信があります。それでも、かつて私が歌を習いに行っていた教室の生徒さんから、「丹さん、富士そばの社長さんなんですって?富士そばも、もうちょっとねえ……」と言われたことがあります。

よく聞いてみたら、彼女が普段行くのは高級店で、立ち食いそばといえば「安かろう、悪かろう」というイメージを持っていたのです。

これは残念でした。まだ残りの五〇パーセントの方にとっては、そばといえば「六〇〇円くらいのざるそば」なのかもしれません。富士そばも、もっと頑張らないといけないと思いました。

ただし、そういう方々にも、お店に一回足を運んでさえもらえれば、悪いイメージを変えられる自信はあります。なんて言ったって、本物の大理石を使っていますから。

勝負のときに出し惜しみしないありがたいことに、富士そばのつゆは美味しい、とよく言ってもらいます。実は、つゆにはそれなりの自信があるのです。

一九八五(昭和六〇)年ごろ、大手の製粉会社と提携した立ち食いそば屋が、富士そばの近くに何店か展開するということを報じた新聞記事を目にしました。

売りは、揚げたての天ぷらだというのです。バックに製粉会社がついているので、「これは下手をするとライバルになる。富士そばも吞気にはしていられないぞ」と私は脅威に感じました。

向こうが天ぷらを重視するなら、うちはつゆの味で勝負だ。そう考え、使う鰹節の量を一・五倍に増やしたのです。結果、お金はかかりましたが、味が格段に良くなりました。

別のそば屋で働いていた従業員が、うちで働くようになって、「こんなにたくさん鰹節を使うんですか?」と仰天していました。

また、ずっと以前に働いていた従業員が富士そばを久しぶりに食べて、「こんなに美味しくなったんですか」と驚いたこともあります。

それから、どれだけ不況が来ても鰹節の量は減らさず、ずっとそのままです。また今では全店に同じ質のつゆを提供できるスープサーバーを置いてあります。

これも正直、安いものではありません。ただ、富士そばでたまたま一杯のかけそばを食べる人に、「美味しい」と心に残るようなつゆを安定して出していきたい。

そのためにスープサーバーの導入は、どうしても必要でした。やはり「本物」を用意するにはお金がかかります。あまりケチケチしてはいけません。

宣伝費は要らない東京近郊に住んでいれば、利用したことがなくても、富士そばを知っているという方は多いと思います。しかし全国的な知名度は、おそらくそこまで高くありません。理由ははっきりしています。

実は富士そばは、宣伝費がゼロだからです。新聞や雑誌に広告を全く打たないし、テレビCMを流したこともこれまでに一度もありません。

富士そばは、これまで立地勝負でやってきました。富士そばが出店するのは、駅から一〇〇メートル以内で、人通りの多い物件です。

必ず目につくし、混んでいれば、「今度入ってみようかな」と思うような場所ばかり。お店に来ていただけて、美味しかったら、また足を運んでくれるでしょうし、それが評判になって広がるでしょう。

「富士そばって五〇〇店舗ぐらいあるんだよね?」友人からこう聞かれたことがあります。しかし当時、出店していたのはたかだか八〇店舗程度。

「そんなに多くないんだよ」と正確な店舗数を教えたら、「てっきり、もっとたくさん出店しているものだと思った」と驚かれました。友人は、なぜそんなに多いと感じたのか。

それはやはり、出店先の場所が良いからでしょう。電車に乗って窓から外を眺めているときや、駅で降りたときに何度も目にするような目立つ場所ばかり押さえているから、実際以上にたくさんあるように錯覚してもらえるのです。

良い場所で営業していることが、すでに最高の宣伝になっているわけですから、それに加えてわざわざ高い宣伝費をかけて広告を出す必要がありません。

そのあたりの、何が必要で何が不必要なのかを判断するメリハリも経営では重要です。不動産業を営んでいたころ、知人の会社がCMを打ったことがありました。CM直後は商品が世間に一気に知れ渡るので、飛ぶように売れていたようです。

しかし少し時間が経つと、すぐ売れなくなってしまいました。さらにCMをやめると、「あの会社は潰れたんじゃないか」と思われ、逆効果になることが多いのです。

お金をかけてそんな結果になるのは、なんとももったいない。嫌らしい言い方をすると、CMはドーピングに似たところがあります。短期的には大きな効果が表れますが、その効果は決して長続きしません。

私は良い場所へ出店を続けていき、その実績が重なれば、将来的に不動産業者の方から「この場所は富士そばが気に入るはず」と、良い物件を持って来てくれるのではないか、と期待していました。

今では、不動産業者から紹介したいという物件のファックスが、毎朝、本社に三〇枚ほど届きます。これまで物件に力を入れ続けてきた甲斐があったのです。

私は何事も続かなければ意味がないと考えるので、今後も地道に良い場所に出店することを続けるつもりです。ドーピングに頼らず、コツコツ身体を鍛えていきます。

スナックを目指せ!

実は、これまで富士そばをおそば屋さんにしようと思ったことは一度もありません。よく従業員にも「うちをそば屋だと思うな」と言っているのですが、なかなか私の意図は正確に伝わっていないようです。

それも仕方がないことです。なにせ「富士そば」と店名に「そば」が入っているわけですから。「そば屋だと思うな」の真意をより正確に表現するなら、「あまりそば屋くさくはするな」ということ。そば屋といえば、静かで落ち着いていて、少し店内が暗い高級店というイメージ。気軽に入れるという感じではないでしょう。

しかし、富士そばは気軽に入れるお店にしていたいのです。たとえば、某牛丼チェーンは誰でも気軽に入れるのが魅力です。それが一時期、内装に凝って、照明を暗くしているようでした。

たぶん、一種の高級感を演出しようとしていたのでしょう。これは方向性を間違えていると私は感じました。

「今日は牛肉が食べたいな。よし、牛丼屋に行こう」と思う人は少ないはずです。大方が、「お腹が空いたな。じゃあ牛丼屋でも行こう」というところではないでしょうか。そういう「気軽に立ち寄る」お店に高級感があると、人は逆に敬遠してしまうものです。

結局、その牛丼屋さんも最近になって、また元のように戻しているようですが……。富士そばだって同じです。「今日はそばを食べたいから、富士そばに行こう」と考える人はなかなかいないと思うのです。

それよりも、「ちょっとお腹が空いたし、ちょうど良い場所にあるから、富士そばでも良いかな」と思って来る人が大半でしょう。

つまり富士そばにとって「美味しいものを提供する」というのも当然大事な要素ですが、それと同じか、ひょっとしたらそれ以上に「気軽に立ち寄れる」雰囲気も大切なのです。

気軽に寄れるお店として、私が真っ先に思い浮かぶのはスナックです。音楽がかかっていて、お酒が飲めて、軽食もとれて、リラックスできる場所。

富士そばが目指しているものは高級そば屋ではなく、気軽に入れる街のスナックなのです。気軽に入ってもらうためには、不必要なまでに内装に凝ってはいけません。

大理石によって高級感を演出していますが、逆に入りづらいと感じられてしまうといけないので、ガラス張りで店内を明るくして中和しています。

寒い日にはちょっと暖をとる、熱い日には日差しを避けて涼む。そういう目的で、みんなが気軽に一休みできるオアシスを目指しているわけです。

内装では、色にも気を遣っています。設計士にはよく「最近のテレビCMを見て、よく出てくる色を使ってくれないか」と伝えています。

テレビCMは明るい色を使うことが多く、日本人はそうした色を見慣れているので、親しみを感じるはず。だから、店内に明るい色がバランスよく使われていると、お客様は落ち着きを覚えるだろうと考えるに至ったのです。

「定義」を考えるこれまで、イメージ戦略や内装などの解説をしてきました。そうした施策を打つときに、私はどういうことを意識していたのか。

本章の最後に、そんなことをお話ししましょう。昔から、粋な人は昼間からそば屋で一杯引っかけるという文化がありました。

そこで、富士そばでも軽く飲める「ちょい吞み」を最近試してみたのです。最初に手がけた店は、高円寺店でした。店の前には「富士そば」ならぬ、「ふじ酒場」の提灯を掲げました。

おつまみは、枝豆、冷や奴、板わさ、かつカレーのライス抜き。さらに、天ぷらをそばつゆにひたした天ぬきも出しました。いずれも通常メニューの具材で、手軽に用意できたのです。

ビールは、サントリーのザ・プレミアム・モルツを約三〇〇円で提供。これなら一〇〇〇円でもそれなりに飲めます。これがヒットしました。

高円寺店はそれまで一日に三〇万円ぐらいの売上だったのが、その効果で四五万円売り上げるようになったほどです。一体どんなことをやっているのか、興味を示したサントリーの役員が来店したこともありました。

新しいメニューを出したり、戦略を立てたりするとき、私は「定義は何か」を口癖にしています。私の言う「定義」というのは、つまるところ「売り」や「狙い」のことです。

たとえば、この場所に出店したいと言われたら、「何の定義があって、こんなところに出すの?」と必ず聞きます。「ここは人がいっぱい通る」「家賃が安い」など、「どんな売りと狙いがあるか」を定義してもらうのです。

「ちょい吞み」には「定年後のお年寄りが気軽に寄れるだろう」という定義がありました。私の世代は、敗戦を経験しました。

その後、高度成長期で生活が逼迫することはなくなりましたが、幼少期に貧乏を経験したせいか、散財することに対して、どこか根本的な不安や恐怖があります。

金銭的に少し余裕があればキャバレーや銀座のクラブに遊びに行くところでしょうが、多くの方にはそんな時間もお金もないのではないかと考えました。

そういう方が何をしているかといえば、夏の暑い盛りはデパートに入ってジーッとしていたり、天気が良ければ外をぶらぶらしたりしている。

何もしなくてもお腹は空きます。そこであまりお金をかけずに軽くそばを食べられて、しかも一杯引っかけられるお店があったら、きっと足を運ぶはずだと予想したのです。

また、話し相手が近くにいなくて、寂しい思いをしている高齢の方も少なくありません。家で一人で飲んでいると孤独を感じますが、周囲に人がいれば寂しさも紛れるでしょう。

なぜそれをするのか。誰にそれが求められているのか。「定義」を考えておくことで、狙いや戦略が明確になるというわけです。

津田沼店・花木幸輔店長が語る「富士そば」と丹会長

プログラマー、システムエンジニア、建築の施工管理……。これまでの自分の職歴です。要するに、飲食業から遠く離れた畑で育ってきたことになるでしょうか。

何度か転職を考えた際には、富士そばの求人情報はつねにチェックしていました。従業員に優しい企業だという噂を以前から聞いていたからです。

私の経験として、会社が個人に与える仕事は、どうしても枠組みが狭くなってしまいがちです。「この仕事をやりたいんです」と訴えても、その通りにやらせてくれることは珍しい。

それが富士そばの店長になったら、メニューを決めるのも、新メニューの開発も「お好きにどうぞ」だったので、やはりこれは他の会社と違うぞ!と実感しました。

私がメニューを開発するときは、あまり思い悩まず、とりあえず動いてしまうことを信条にしています。ふと思いついたメニューが、店にある食材でつくれるようであれば、まずはつくり始めてみる。

その出来上がりを味わい、美味しいのか美味しくないのか、いけるかいけないのかを判断します。

「トルネードポテトそば」もそうでした。当時、そばにフライドポテトをのせた「ポテそば」が流行っていて、もう一つひねりを加えたものができないか……と考えていたとき、ジャガイモ一個をらせん状に切って揚げたトルネードポテトを思い出したのです。

頭に浮かんだら、即行動。もしボツになっても、自分の家で使えば良いと考えながら、手回しでポテトを切ることができる専用の道具を、自腹で購入しました。

試作は予想以上に大変でした。カットが薄いとポテトチップスのようでジャガイモの食感がないし、厚いと揚げても中まで火が通らない。またカットしたジャガイモをきれいに開いた状態にするのも難しい。

結局、完成するまでに一カ月かかりました。最初、係長にメニューを説明したときは「こいつは一体何を言っているんだ?」という当惑した反応でした(笑)。

それでも、一回つくって見せたら、「これはインパクトがあって良い。店で出してみよう」とゴーサインをもらいました。上司である係長には、メニューとして出すか出さないかの判断をあおぎますが、基本的に美味しいと言われればOKです。

ダメだった場合、また次に頑張ろうと気持ちを切り替えます。「トルネードポテトそば」を販売すると、珍しさもあって好評をいただきました。

津田沼店以外でもメニューに入れた店もありましたが、手間がかかるのと技術が必要なので、今では当店だけで扱っています。

今のところ、トルネードポテトは単品でも一二〇円で売っています。「手間のわりに安くないか?」と言われることもあります。

でも学校帰りの高校生が喜んで買っていくんですよね。それが嬉しくて、まだしばらくお値段据え置きで頑張りたいと思っています。

目指すのは「友達の家」みたいなお店富士そばは、私の周りでは店長同士の仲も良く、一緒に遊びに行ったり、飲みに行ったりする機会もよくあります。

津田沼店が所属する会社・ダイタンイート内でのつながりは特に強いですね。と言っても同じグループの中だけでなく、他のグループの店長さんとも仲が良いということも珍しくありません。

以前、私は荻窪北口店に勤務していました。荻窪には駅の南口に荻窪店もあり、同じグループであってもライバル関係にありました。

仕事中は「負けるものか」とライバル心を燃やしていましたが、業務が終わってしまえば「ちょっと飲みに行きますか」と誘いあうような関係でした。

オンとオフを分けているといえば良いでしょうか。店の売上や忙しさによって一度に働く従業員の数は変わります。津田沼店は通常、四人前後で回しています。

忙しい時間帯は四三席がすべて埋まってしまうため、四人いても忙しいのですが、人数が足りない状況にならないよう心がけています。

また、会社も人員に関してはつねに配慮しており、日ごろから「アルバイトさん一人一人に負担をかけすぎないように」と指導されています。

スタッフさんがいてこその店長であり、お店だと私は思っています。極端な話、スタッフさんから見放されてしまったら、店はどうにもならなくなってしまう。

だからといって腫れ物に触るように気を遣うわけではなく、友達や家族のように気さくに接していきたい。これは、どの店長も意識していることではないでしょうか。

津田沼店では従業員同士が気兼ねなく、ラフに接することができる雰囲気になるよう心がけています。従業員同士であれば言葉遣いもそんなに気にしていません。

そんな津田沼店のコンセプトは、「気軽に行けて、気の置けない場所」。私自身も、働いているのに、たまに友達の家にいるように感じてしまうことがあります。

厨房の中の雰囲気は、お客様にも伝わると思うんです。その雰囲気に惹かれて足を運んでもらいたいし、お客様が望まれるなら、少しフラットな感じで接したい。

外食ではなく、家で食事をしているような気分になってもらえれば最高ですね。従業員同士、仲良くやれているし、すべて任されているという実感が強く、やりがいがある。

だから富士そばの仕事は「楽しい」の一言に尽きます。会長は「大きい」人会長は年二回、店回りに来られます。基本的にはそばを注文すると客席に座られて、一番大事なつゆの味を確認。

その後は、特にお店の活気を気にしているようで、ぐるっと店内を見渡しています。そしてお土産の和菓子を置いて、「じゃあ頑張ってね~」と帰って行かれる。

ここだけの話、会長が店に来ても、あまり気にしたことはないんです。

「ああ、来られているんだ。だけど今は忙しいから、お客様優先で会長に対応することはできない……」なんて考えているうちに、もう帰り支度を始めている。

でも、おそらく会長は特別扱いされるのはお好きじゃないとも思うんですよね。店回りで歩き通しでしょうし、ハイヤーや自家用車を使わないで、今でも電車で通勤されているという話も聞きます。

普通の経営者は偉くなれば秘書やお抱えの運転手がつくイメージですが、それとは正反対。「事務所や社長室は狭くて良い。そういうところに金を使うんじゃない」と公言されていて、自分を立派に見せようという気持ちをいっさい感じません。

初めてお会いしたときに感じた「ちょっと普通の人とは違うな」という印象は、今に至るまでずっと変わりません。会長って大きいんですよ。向かいあったときもそう感じますし、会議のときに遠くの席に座られていても、実際の身長以上に大きく見えます。偉ぶらないのに、ふしぎとそういうオーラを放っている方ですね。

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