5-1店舗オペレーションの基本「クレンリネス」
クレンリネスの徹底で客数が増える流通業やサービス業で成功するポイントは、店舗数や売場面積が増えても、各店の商品力・サービス力・クレンリネス力がお客さまの満足のレベルを維持できていることです。
清掃することをクリーン、清掃した清潔な状態が維持されていることをクレンリネスといいます。そのベースには職場の人間関係と円滑なコミュニケーション、そしてシステム(仕組み)が必要となります。
特にクレンリネスはお客さまの目や手に触れる部分(商品・備品や設備)だけに、不快の原因となりやすいものです。
しかし、お客さまが不快に感じても苦情となって発生することは少ないのも事実です。従って、人手不足や時間不足を理由に毎日の決まった清掃も、とかくルーズになりがちです。
ところが、お客さまは苦情を言わないだけで「あの店に行くのは、もうやめよう」と心に決める場合が多いのです。さらに、利用した本人は自分の知人や友人にも利用した店のひどさを伝えます。
口コミで伝わった苦情は信ぴょう性があるため、結果として利用した本人だけでなく、多数のお客さまを失うことにつながります。
アメリカの調査によれば、利用して良かった店の口コミが5人に伝わるのに対し、利用して悪かった(不快に感じた=満足しなかった)場合には何と17人に伝わると言います。
小売・サービス業として最も恐れる必要があるのは、このような潜在的な苦情が累積して、企業側で気がつかぬうちに客数が減少することです。
客数を増加させるには、日々の努力の積み重ねにより長い時間を要しますが、客数が減少することは簡単で急激に起こり、いったん減り出すと歯止めが効かないことが多いのです。
不振店となった場合でも、とにかくクレンリネスを徹底すると客数が伸びるのは、潜在的な苦情の絶対数が減り、店頭のすっきりとした好印象などから通過客の来店率も高まるからです。
外部から見ると派手に見える業種・業態でも、実際には大変地味なことを積み重ねて成功するビジネスが多いものです。その基本がクレンリネスです。
すべての小売・サービス業は、「清掃に始まり、清掃に終わる」といっても過言でありません。しかも、通常行われる清掃はP/Aを含め従業員の誰もが簡単にできる作業です。
清掃場所別に道具や手順をマスターし、タイムリー(適時)、デイリー(毎日)、ウイークリー(毎週)、マンスリー(毎月)といった清掃サイクルに従ってクレンリネス作業を実施してみましょう。
また、クレンリネスの基本が、自分の身だしなみにあることも忘れてはいけません。小売・サービス業のプロとなるには、「清潔、控えめ、上品」という3つの身だしなみのポイントを、常に心掛けることが重要です。
店長はP/Aを含め従業員全員に対し、店で決められた身だしなみやお化粧の基準を守らせ、その店のイメージや雰囲気を醸し出す大切なユニホームの一部として理解させるべきです。
また、仕事に入る前に各自(または、上司)が髪、ユニホームのほころびや清潔さ、手や指先、靴の汚れなどもチェックする習慣や躾も必要となります。
クレンリネスの本質は安全性スーパーマーケットからコンビニエンスストアまで、流通業で食材の調達や調理加工を行い、販売する業種・業態は数多くあります。言うまでもなく、人間は毎日食べることによって生きているのです。
女性の社会進出や余暇時間の増加など、今後、中食(惣菜や弁当などを購入し、家庭や職場で食事すること)など自家製加工食品の利用頻度は高まるばかりです。
これらを扱う店はお客さまの健康管理を含め、安心で安全な食材を元に大切な命をお預かりするビジネスといってもオーバーではありません。
これらの店でまず大切なのは、食品衛生を厳守し、品質管理を徹底した食材や調理済み食品を提供することです。
そのためには、定期的な清掃、点検を実施し、常にクレンリネス(清潔な状態)を維持し、食中毒の原因を排除する必要があります。
食中毒は養分・水分・湿度・時間といった要因がミックスされ、主に調理を行うバックヤードで発生します。クレンリネスは、これらの要因に留意して組み立てられなければなりません。
そのため、食材の腐敗の原因ともなる冷蔵庫・冷凍庫の温度チェックは、品質管理面だけでなく、売場・バックヤードともクレンリネスの一部分として理解し、清掃、点検時に確認する必要があります。
また、ハエやゴキブリやねずみも食中毒の媒介となるため、専門業者に依頼し定期的に除去作業や発生を未然に防ぐ処理を行うことが重要です。
不衛生なだけでなく、ハエやゴキブリが売場に出てきたり、ねずみが天井で音を立てるようでは、お客さまの印象は最悪なものになってしまいます。
さらに、火災の原因となる排気ダクトなども、定期的な清掃、点検を実施し安全性を高めなければなりません。
店側で毎日できる排気ダクトのフィルター清掃と、専門業者によるダクト内部の定期清掃を組み合わせて実施することがポイントとなります。
安全性は食中毒や火災だけの問題ではありません。毎日の清掃を怠るとバックヤードの床が滑りやすくなり、フライヤーに手を入れてしまったなどと、思わぬ事故につながります。
また、ノンフーズ(ファッション以外の非食品分野)の店でも、お客さま用の入り口、床、階段を清掃し、常に安全に留意しなければなりません。
特に雨や雪の日などは、滑りやすい個所など店側でタイムリーに清掃し、見た目だけでなくお客さまの安全を確保することが重要です。
商品の陳列にしても無理をせず、重く倒れやすいものは転倒防止の措置が必要となります。緊急時の非難通路や階段を定期的に点検し、常に整理整頓に留意することも、クレンリネス作業の1つと理解すべきです。
安全性について大小いろいろと述べましたが、最も大切なのは、これらのことが毎日のクレンリネスの継続と徹底により維持されていることを理解することです。
従って、クレンリネスの本質は安全性ということができます。クレンリネスとメンテナンス店舗や設備に多大な先行投資を伴う小売・サービス業は多いものです。
これらは減価償却が終わって(投資した建物や設備の元がとれて)から、大きな利益が出始める商売とも言えます。従って、メンテナンスにより建物や設備をお客さまに満足を与えながら、いかに維持できるかが安全性とともに重要なテーマとなります。
毎日実施されるクレンリネスを通し、屋根や壁面、サイン(看板)などの異常や傷みに早く気づけば、壊れる前に補修ができます。
結果として修繕費が安くあがることになりますが、これは開店後数年たった店を預かる店長にとって予算管理面でも重要なポイントです。
また、電気や水道など配線や配管の老化にいち早く気づき、漏電や漏水を防ぎ大きな事故を未然に防ぐことができたという事例は数多くあります。
クレンリネスにともなうメンテナンスは、良いオペレーション(店舗運営)づくりの基礎と言えます。同様に、店内の電球の切れやサインの照明状態も部下のクレンリネス作業を通し、店長は常に報告を受け対処しなければなりません。
毎日のクレンリネスを通し磨きあげられ、メンテナンスにより維持された店は、そこで働く人々にとって愛着が増し、店舗として真の輝きを持って熟成していくものです。
このような店は、店外にまで従業員の活気とやる気があふれ、店内の居心地も良いため、年数を経ても客数が増え続けることになるのです。
5-2クレンリネスの仕組みづくり
クレンリネス3つの基本
●ドライ(Dry):乾燥を徹底する
クレンリネスで最も大切な基本の1つが、ドライ(乾燥)を徹底することです。特に食材を扱う業種・業態の場合、バックヤードが重要です。
バックヤードが乾燥していれば食中毒も防げますし、作業中に滑って思わぬケガをすることもなくなります。まな板やダスターなども、使用後や閉店後に乾燥させるのはそのためです。
湿気の多い日本では、バックヤードだけでなく売場もドライに気を配る必要があります。また、店舗はレイアウト上、北側や地下などに倉庫があることが多いものですが、結露や湿気のためカビが繁殖し不衛生となっていたり、悪臭が発生している場合もあります。
保管しておいた消耗品や備品などが使い物にならなくなっていることもあります。また、雨や雪などの後で店内の階段や床が滑りやすくなっている場合にも、年配者、子供、妊婦が滑って思わぬ事故になることも多いものです。安全性の基本がドライにあることを忘れてはなりません。
●シャイニー(Shiny):光り輝くものは徹底して輝かせる
鏡・ガラス・ステンレス・真ちゅう部分など、光り輝くものは徹底して店内外を問わず光り輝かせることが重要です。これらの輝きが店に入る際に、商品の品質に対する安心感や、買物の楽しさなどうれしい予感を演出するからです。
また、宝飾店などの店内では雰囲気にメリハリをつけ、店の格式を高めたり、高級感や清潔感をつくり出す効果もあります。入り口のドアやショーケースのガラス面が光の加減で手の跡など汚れが目立つようでは、いくら素晴らしい商品を品揃えしたところで興ざめです。
また、このような入り口のガラス面では通過客へのアピールも弱く、客数増は望めません。また、トイレの鏡や便器の汚れは、その店の商品や雰囲気など、すべてに悪影響を及ぼします。特に女性客は敏感です。
逆にいつも清潔できれいであれば、来店頻度が増す効果があります。クレンリネス作業として光り物を扱う場合の注意は、対象となる物の材質により、それぞれにワックス・洗剤や道具が異なっているため、最も適した方法により実施することです。
●オーダリー(Orderly):整理整頓を徹底する
クレンリネスの基本に整理整頓が入っていることを、意外と思うかもしれません。しかし、実際にはどの店も店内外の美観というとらえ方をすれば、処分していいものや整理していいものがたくさんあります。
店長の異動などで処理の判断がつかないものも多いでしょうが、このような場合、初めて利用したお客さまの眼で駐車場、店舗の裏側、店内など客動線に沿って歩いて見てみるとよく分かります。
店舗の裏には使わない棚板や古い販促用品、店内には不要なちらしや備品、不要なものなどが詰まった段ボールなどが結構あることに気づくことでしょう。不要なものは従業員や納入業者の作業動線を悪くしていたり、店内外の美観を損ねているのです。また、緊急時の非難通路が、これらの不要物で占拠されているところへ放火でもあれば、人災となりかねません。
これらの不要物や取りあえず使わないものは、店長やエリアマネジャー(スーパーバイザー)と相談して捨てるか、本部などへ連絡し移動してもらうべきです。
また、必要以上の商品が倉庫や棚に詰まっている場合、不良在庫となっているだけでなく、隅々まで清掃できないためにネズミやゴキブリの巣となっていることもあります。
これなども本部の承認を得て、不良在庫としてきちんと処分し整理する必要があります。クレンリネス管理の仕組みクレンリネスは大掃除ではありません。
1週間を通し、常にある一定レベル以上(お客さまが満足するレベル)を営業中のどの時間帯でも維持し、管理できていることが重要となります。
従って、クレンリネスの仕組みは、誰がいつ実施するのかを示すことと、どのような洗剤や道具を用い、どのような方法や手順で実施するのかをマニュアル化(クレンリネス作業マニュアル)することがポイントとなります。
そこで、どの店にも簡単に応用できるアメリカの外食ナショナルチェーンのノウハウ[週間クレンリネス表]を提案します。この表には誰がいつ実施するのかが示されています(図表❺-1)。
また、クレンリネス作業マニュアル(図表❺-4)は自店で利用する洗剤により異なるため、自店用に作成しなければなりませんが、不明な点は自店で取り扱っている洗剤会社に直接連絡すれば資料を送付してくれます。
クレンリネスは、誰にとっても面倒くさい、手の掛かる嫌な作業の場合が多いものです。店長としては、一部の人や曜日・時間帯に負担がかからぬよう、公平に仕組みをつくることが大切です。
きちんとした公平な分業体制ができれば、各曜日・各時間帯に入った正社員やP/Aが責任を持ってやり続けるようトレーニングし、指導を継続することが重要です。
そのためにはP/Aにも店舗の一員として採用となった初期の段階で、自店におけるクレンリネスの重要さを理解させ、習慣となるまで納得できるよう徹底して教育することが大切です。
また、クレンリネスの習慣が弱い店の場合、いったんは従業員総出で大掃除をし、その後、きちんとした週間サイクルでクレンリネスを実施する必要があります。
このような店では当初、習慣化するまで、時間のある限り正社員が一緒になってP/Aと作業をすることも大切です。
さらに、人が不足した場合でも正社員が責任を持ってクレンリネスの分業を果たし、やり続ける覚悟が必要となります。
週間クレンリネス表の作り方①店内のクレンリネスチェックにより、チェック後優先順位を考え、場所ごとにクレンリネスのサイクルを決めます。
・毎日行うもの・週間に1~3回行うもの・月間に1~3回行うもの②セクション(場所)別にそれらの作業をまとめ、次に各時間帯別に整理します。
通常は、このようなセクションと時間帯で必要となります。
③「週間クレンリネス表」に記入しますが、時間帯ごとに作業する順に記入すると便利です(フードサービス用)。また、クレンリネス作業、各時間帯ごとの優先順位の順に表示してもかまいません。セクションと時間帯は必ず記入します。
例えば、開店が11時とし、早番が10時から作業するとします。その場合、すべての作業を10時~11時に終わるべきかといいますと、決してそうではありません。
開店11時を過ぎてもお客さまに迷惑をかけないのなら、昼のピーク前までに行ってもよい作業もあるはずです。
このような店の場合、朝の時間帯を10時~12時と設定することも可能となります。
同様に、閉店の時間帯も仮に24時閉店の店の場合、すべての作業を24時すぎに行うべきかというと、お客さまに迷惑をかけず事前に行ってよい作業も多々あり、従って23時~24時という時間帯の設定も可能となります。
よく閉店作業が遅くなる店がありますが、これらの再検討が重要です。アメリカの外食産業では、プレクローズ作業(事前の閉店作業)といって大変重要視し、合理的に行っています。
開店・閉店ともクレンリネス時間帯の設定について説明しましたが、「お客さま最優先」で決して迷惑をかけずに作業を実施することは、いつも当然のことです。
④月、火、水、木、金、土、日の欄ですが、毎日行うものはそのままにします。
週間で行うものは作業しない曜日欄をぬりつぶすか、横線をひいておきます。
⑤クレンリネス作業以外の点検や補充の作業も、この表に一緒に記入しておくと大変便利です。
※(例)トイレチェック(点検)・喫茶カウンター補充・サービスカウンター補充・これらの詳細な項目は別表を作成し、各場所に表示しておくと便利です。
週間クレンリネス表の使い方コピーにより、毎日チェックリストのようにチェックする方法もありますが、コルクボード(ピンボード)とカラーピンによる方法をお勧めします。
理由は、毎日継続が必要な作業に対し、いちいちチェックするために鉛筆やボールペン、または用紙のコピーなどが伴うと「〇〇がないから…」と言って、すぐ3日坊主で終わりやすいからです。
初めから多少費用はかかっても、コルクボードとカラーピンを差しておき、その移動によりチェックする方が、はるかに簡単で単純だからです。
週間クレンリネス表の使い方は次の順序で行います。
①例えば、本日が月曜の開店時だとします。
すべてのピンは、月曜の空欄に差してあります(月曜に作業のない欄のピンは当然ありません)。
②いろいろな作業が終了した段階で(ある程度まとめて)終了した表示として、ピンを火曜日に移動します。
これにより、この作業は終了したと店長やほかの従業員に知らせたことになります。
③曜日の飛ぶ作業は、次の空欄の曜日に移動させてください。
④このようにして、作業が終わったらピンの移動を行います。
⑤なお、何かの都合で作業ができなかった場合は、当然その位置に残りますが、そのようなときは、次の時間帯に入る人が手空きのときにその作業を実施し、終了後にピンを移動するようにします。
⑥清掃用具と方法は、マニュアル(図表❺-4)を用いて説明し、場所ごとにしっかりと初めからOJTを行ってください。
※クレンリネスの基本トレーニングの方法は図表❺-3を参照してください。
また週間クレンリネス表の応用例として小売業用の作業チェックリスト(図表❺-5)も掲成してあります。
クレンリネスの5S
小売業もフードサービス業も「清掃に始まり、清掃に終わる」ことが基本です。
クレンリネスは資産管理の基本です。
管理の対象は店舗、冷暖房をはじめとする各種設備、家具や道具類、器等の備品類、包装資材や紙ナフキンなどの消耗品類、それに商品、原材料や食材などです。
これらはモノに変わってはいますが、すべてはお金(資産)なのです。5Sはこれらの管理を徹底するクレンリネスの要素です。
この結果、①商品の価値を最高の状態に維持し、お客さまに提供する②お客さまに買い物や食事を楽しむための快適で安全な空間を提供する③従業員が明るく誇りを持って働ける労働環境を維持することが可能となるのです。
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