4-1マニュアルの基礎知識
「マニュアル」ではなく「マニアウ(間に合う)」でよい多店化を目指すと、自社でも各種作業マニュアルが必要になってきます。また、それらを活用してP/A比率を高め、より効率的な経営をしたいと考える経営者や中堅幹部は多いものです。
その際に一番手っ取り早い方法としてよく行われているのは、同業他社のマニュアルを入手しコピーして、必要と思われる個所を自社用に書き換え導入してしまうことです。
しかし、結果は[三日坊主]か長くて1週間で使われなくなる(機能しないことに気づく)ことが多いようです。
その主な理由は、マニュアルの内容が一部は使えても全体としては自社の作業内容に即しておらず、つじつまが合わないからです。
しかも、自社には運用のための仕組みや継続して活用するためのルールがないからです。要するにトータルシステムになっていないのです。
また、トップが本部要員の中から優秀な担当者を抜擢して作ったマニュアルも使われないことが多いものです。
それは労力と時間を掛けて自社用に制作したつもりでも、内容が優秀(理想的)過ぎて、現場の実態からかけ離れたものとなっていたり、ただ文章が長々と続くだけで内容や表現の仕方に工夫がなく、マニュアルの仕様や形態としても不適切だったりするためです。
ところがマニュアルがないと思っている中小店でも、現場のバックヤードやレジの裏側などに張ってある簡単なメモや表は全員が便利に用い、継続して使われています。
それは必要に迫られ、間に合わせで作ったため簡素化されており、必要な場所に張ってあるからです。「マニュアル」ではなく「マニアウ」でよいという意味はこの辺にあるのです。
使われてこそマニュアルというわけです。このことは実はマニュアルの本質を示しているのです。マニュアルの本質とは使いやすい・分かりやすい・教えやすいことです。マニュアルとは本来「便覧、ハンドブック、手引き」といった意味であり、内容や形態も使いやすく、使われやすくなければならないものなのです。
店舗での1日のオペレーションや各作業、新人P/Aへの教育トレーニングの中で実際に活用されてこそ、その真価を発揮するのです。
それでは自社用の「使いやすい・分かりやすい・教えやすい」マニュアルの基本的な作り方をまとめてみます。また、表現方法のアイデアや実際の運用と継続のための仕組みづくりも併せて提案します。
自社で埃をかぶっているマニュアルがあれば、これらを参考にあらためて見直し、作り替えてみることをお勧めします。
マニュアルの作り方マニュアルは現場での各作業を標準化し、単純化することによりシステム化を図った具体的な作業指示書ということができます。
従って、現場の実務担当者が集まり作業ごとに検討し、取りあえず仮決定する必要があります。複数店で営業している場合には、各店ごとに各作業の最も良いやり方を検討させた後、各店の代表を選出し一堂に会します。
そして現場で実際に行っている各店流の作業方法や手順を進めながら、相互チェックして最も良いやり方(ベストワン・ウエイ)を決めるのです。
このベストワン・ウエイを見つけることを「標準化」といいます。できれば清掃作業や仕込み作業などは、各作業の適正な時間(標準時間)も仮設定するとよいでしょう。
このことが結果的に新入社員やP/Aをトレーニングする際の目安となります。また、各作業は新人でもできるように分かりやすい方法・手順・道具を選び、簡素化した仕組みにします。
このことが単純化なのです。仮決定したマニュアルは、正式に全店に導入する前にモデル店を決めテスト導入を行ってみる必要があります。その際にポイントとなるのは、できるだけ各作業を知らない不慣れな新人で試すことです。
そして仮決定したマニュアルのスムーズに行えた点、分かりにくい点、当初予想したレベルに到達するまでのトレーニング必要回数や時間なども測ってみることが必要です。
これらのことを繰り返す結果、不備な点が改正され実態に即した、より良いマニュアルの作成が可能となるのです。これらのマニュアル作成作業はできれば自社でプロジェクトを組み、中小店の場合にはトップ主導で行う必要があります。
トップはできるだけ具体的なマニュアルには口を出さず、プロジェクトの担当者間の意見が分かれたり、迷ったりしたときに「取りあえずこれでやって見よう」と決定を下すことが重要な仕事となります。
また、各作業は体系的に整理し相互に関連した仕組みにする必要があります。まず、当初の段階で自社に必要なマニュアルをすべて洗い出し、作業ごとに「マニュアル原案」と「トレーニングプログラムの原案」を作成する責任者を決めます。
そして同時進行で取り組みながら、最終的には全体としてのトータルシステム確立を目指すようにします。マニュアルの表現方法と仕様マニュアル作成に関し大切なことは、それらをどのように表現するかです。
できるだけ長い文章では表現せず、個条書きを基本として絵や写真、チャートや一覧表などにより、分かりやすく工夫することが大切です。
表現形態も統一したフォーマット(書式)を用い、作業の流れやポイントが分かるように一覧できる方が便利です(図表❹-1)。
また、1つの作業は1枚のページに収まるようにするとよいでしょう。もし、収まりきらなければ、全体の流れやポイントを1枚にまとめたチャートを初めのページに付けるようにします。
マニュアルの仕様や形態についても工夫が必要です。例えば、主要部分を手帳形式とし携帯性を高め、1年ごとに改定版としたり、バインダー形式にして各マニュアルをカード式に管理し、改定するたびに入れ替えるという方法も取れます。
スーパーマーケットや外食産業などで仕込み作業場や調理場などで使用する仕込みマニュアルは、各商品別に使用食材や準備する調理器具や機器、仕込み工程や保管方法、保管期限なども入れ1枚にまとめ、ラミネート加工をすると熱や水にも強く大変便利です。
ビデオマニュアルに関しては次項の「ビデオマニュアルの作り方」を参照してください。マニュアルは人事考課の対象となるトレーニングプログラムに沿って、各P/Aはマニュアルによる自社の正しい作業を順にマスターしていきます。
各作業はマニュアル以外の例外(異なった方法や手順)は認められません。従って、各従業員が作業を正しく(マニュアル通り)行っているかどうかをチェックすることで人事考課が可能となります。
作業の内容によっては、前述した作業の標準時間も重要な考課の要素となることは言うまでもありません。一定期間ごとに人事考課は実施されますが、その結果は時給や手当のアップとなって各P/Aに反映されなければなりません。
マニュアルという基準があることで、店長は各P/Aに問題点を指摘できるわけです。マニュアルを体系化することにより、P/Aの賃金体系も明確にすることができます。
このことをより大きくとらえれば、結果的に正社員のキャリアパスプランにまで発展させることも可能となります。
小売・サービス業におけるマニュアルは、人材育成の仕組みづくりの母体とも言えます。また、定期的な人事考課の結果、「誰が何ができて何ができないのか」といったことも店長は把握できます。
各個人に対する育成テーマが明確となるため、より具体的にトレーニングを通し店全体としてのレベルアップも図れるわけです。
店長を筆頭とした社員の認識としては、マニュアルビジネス=トレーニングビジネスと理解する必要があります。
同様に店長に対する評価も、これらP/Aを含めた部下の人事考課を適切に行い、個人別に正しく指導育成しトレーニングを行っているかどうかが上司から人事考課されるのです。
この結果、マニュアルを通して組織が活性化し、レベルアップすることになります。従って、マニュアルは社員の自己育成の重要なツールととらえることもできるのです。
マニュアルは変わるべきものマニュアルは環境の変化や時流に対応し、変わっていくべきものです。例えば、自社が通常のレジからPOSシステムを導入すれば、おのずと作業内容は変化を来します。
また、顧客の求める商品やサービスに関する質の変化に伴い、作業内容は順次改定されます。作業内容の変更はマニュアルの変更を意味すると同時に、トレーニングプログラムの変更や改定の必要をも意味しています。
また、導入したマニュアルに不備が生じた場合も同様です。前述したようにマニュアルの仕様や形態は、ブック形式ではなくバインダー形式のカード式とし、追加、補充、廃棄などが簡単にできるように初めから決めておくと便利です。
マニュアルを改訂する際の手続き、決定方法、決定者も明確にしておかなければなりません。多店化の初期段階ではこの辺から崩れていく場合が多いので、特に注意が必要となります。
具体的には「悪法も法なり」として、不備のあるマニュアルであっても各店や各個人の判断で勝手に変更させない(できない)仕組みでなければなりません。
例えば、複数店の場合にはスーパーバイザーやエリアマネジャーを通し、書面で本部に伝えることを原則とすべきです。
改訂に当たっては迅速に問題点(事実)を確認し、対応策を検討しベストな改善策をまとめあげた上で、具体的な改訂マニュアルを各店に伝達し導入しなければなりません。
マニュアルに関する管理は改訂時の伝達文の形式や本部の承認印の必要性なども決め、自社における絶対のものとして権威づけるとともに、常に徹底する意識が社員全員に必要となります。
これらのことが整って初めて継続した運用が可能となるわけです。マニュアルに関してさまざまな角度からまとめてみましたが、難しく考えず、とにかく自社のマニュアルを自社のメンバーで作成することから始めて見ましょう。
お客さまを最優先にと思うトップの意志が、マニュアル作成を通して社員全員に伝わり、意思統一されて現場の隅々にまで反映されることが重要です。
そして、これらのことが継続されれば、結果として業績は必ず伸びるものなのです。
4-2ビデオマニュアルの作り方
自社で作ろうビデオマニュアル接客サービスやフェース管理など作業によっては、ビデオの活用が効果的です。特にカラーテレビが生まれたときからあった昭和40年代以降の世代には、分かりやすく有効です。
ビデオマニュアル制作のポイントは、作業ごとにビデオ各1本にまとめることと、1本当たりの時間も長過ぎると集中力が欠けやすくなるため、できるだけ15分以内に適切にまとめることです。
この15分は人間が集中力を継続できる限界と言われています。
自主制作する場合には[ビデオマニュアル制作チェックリスト](図表❹-2)を参照にすると便利です。また、撮影だけプロの手を借り外注することも可能です。
結婚式場などで活躍するビデオ撮影のプロに依頼するとよいでしょう。ローカルチェーンのスーパーマーケット・書店・レンタルビデオ店などでは、社員やP/Aから有志を募る手もあります。
ある程度の規模以上になると、映像好きのマニアックな若者たちが何人かはいるものです。プロジェクトを組む際に声を掛け、計画段階から参画してもらい参加意識を高め、彼らのアイデアも生かしながら制作すると効果的です。
自分たちで制作したマニュアルは自分たちで守るものです。ビデオマニュアルの場合にも確認とトレーニングを目的とした、補完のための簡単な書式でのマニュアルは必要となります。
内容的には重要なポイントを整理し、まとめるとよいでしょう。また、映像の中で特に重要なシーンは、映像から写真を起こし添付するとシーン(場面)イメージが再現されやすく効果的です。
ビデオマニュアル制作と進行管理の要点①ビデオマニュアルの[企画・制作チェックリスト]の各項目を検討し決定する(図表❹-2)。
②各マニュアル別に「あらすじ」を組み立てる。
③「あらすじ」に沿って簡単な台本を作成する。
※作業を工程順に撮り、技術のポイントや注意点を訴求するためのビデオマニュアルの場合には、台本なしに直接④を作成してもよい。
④台本に沿って「シーン・カット割付表」のたたき台を作成する。
Ⅰ.シーンをナンバー順に決める。
Ⅱ.場面を想定し各シーンにカットを割り付ける。
※各シーンとも5カット以内とし繁雑さを避ける。
Ⅲ.カットごとに場面イメージを簡単に書き添える。
Ⅳ.各シーンの登場人物、撮影場所、大道具、小道具を書き入れる。
Ⅴ.照明や音響をどのようにするかを決め、注意点があれば備考欄に記入しておく。
Ⅵ.全体としての仕上がり時間(原則は15分以内)を設定し、各シーンの優先順位や各カットの予定収録時間を考慮し、トータルで調整を行う。
⑤④で作成した、たたき台を基に全体の構成を見直し、実際の撮影用の台本と「シーン・カット割付表」を作成する(図表❹-3)。
⑥各カットのポイントを「カット別絵コンテ表」(ストーリーボード)にまとめる。
左の枠にポイントとなるイラストを4コマ漫画風に描きイメージを構成する。
演出・カメラアングル・音響・その他の要点をまとめ、撮影中に抜けのないようにする(図表❹-4)。
※例えば、作業の中でズームアップして表現した方が分かりやすくなるような個所や、カットの進行に従いマニュアルが順に理解されやすくなるような映像構成のポイントなどをイラストにするといい。
⑦原則として各シーンの各カット順にリハーサルを行いながら撮影する※ストーリー性のあるドラマ仕立てのビデオマニュアルを制作する場合などには、同一のシーンだけを選び出して撮影する方が効率は良いが、単純な作業マニュアルの撮影程度なら、あまり凝らない方が無難に仕上がる。
※ビデオ編集を行わない場合には、このような一つひとつのカットを予定収録時間内で順に撮影し、映像を撮影後確認しながら積み上げていく。
そのためにもリハーサルは必ず行い、カメラアングルや照明などを確認する。
特に演技が伴う撮影を社員やP/Aで行う場合には重要となる。
⑧全体を通して見ながら大まかな編集を行い、カットの順序を入れ替えたり、不必要な部分をカットする。
最悪の場合は必要なカットの撮り直しを行う。
※マニュアルの使用目的(何のために・誰に・どんなタイミング・どんな頻度で見せるのかなど)を再確認しながら編集する。
⑨ナレーションや音響、タイトルや文字スーパーなどを入れる。
⑩完成したオリジナルビデオ・テープ(マザーテープ)からコピーを必要数ダビングする。
責任者と保管場所を決めマザーテープはしっかりと管理する。
4-3トレーニングプログラムの必要性
マニュアル実行に欠かせないトレーニングプログラムP/Aの自社での活用を前提とした場合、マニュアルだけが出来上がっても不完全と言えます。
マニュアルを新人のP/Aにも順に正しく理解させ、より高度な技術を身につけさせるには、教えるための仕組みづくりが必要となるのです。
このP/Aの短期間戦力化を目的としたカリキュラムをマニュアルのトレーニングプログラムといいます(図表❹-6)。
マニュアルとなった作業をトレーニングプログラムとして、毎日発生し作業量が多く(時間がかかったり絶対量の多いもの)正社員でなくてもできる作業から順に並べ、1日に4、5時間を教育トレーニングの目安として、まとめたものが[ステップ別トレーニングチェック表]です。
具体的には後述する[ステップ別サービス基礎トレーニングチェック表]を参照してください(図表❹-10~11、14~15)。
通常、「新人基礎トレーニングプログラム」は3~5日間で実施されるようにします。
その後、一定の実習期間(通常1~3カ月間)を経て、より高度なトレーニングプログラムに移行するようにカリキュラムは設定されるべきです。
これらのトレーニングはOJTの原則に従い、マンツーマン[教育担当者(トレーナー)1人に対し新人(トレーニー)1人]で実施します。
トレーニングプログラムにはマニュアルの要点がチェック表となって表示されていますが、それぞれの項目に関し必ず大切なポイントを2、3整理しトレーナーが確実に伝えると効果的です。
また、なぜそうしなければならないのかをトレーニーに適切に説明できるように、事前にトレーナーに対する教育がなされていなければなりません。
●第1日目のポイントはオリエンテーション具体的なマニュアルのトレーニングに入る前に、初期教育の基本として必要なのがオリエンテーションです。
どのP/Aも働く目的があって、あなたの店を選んだはずです。
初めから辞めようと思って入ってくるP/Aは一人もいません。
そこでまず、会社の経営理念や仕事の使命、会社の歴史や地域への貢献度の説明、職場のルール(ハウスルール)、ストアツアー(店内案内)、教育トレーニングの方法、作業内容、時給・手当のアップなどの説明を通して、新人にどこまで「動機づけ」できるかがポイントとなります。
第1日目はオリエンテーションの後で、接客に関する基本動作と用語のトレーニ
ングを行い、さらに毎日の決まり仕事となっている清掃や整理などの単純な作業を教えます。
とにかく、まず店に慣れてもらうことが重要となります。
●第2日目、第3日目のポイント第1日目と同様にトレーニングプログラムに従ってOJTは進行しますが、出勤時のあいさつ、ユニホームの着方、名札の位置など職場のマナーや身だしなみのチェックをトレーナーが毎日きちんとトレーニング前に行うことが重要です。
トレーニング以前に「躾」をきちんと行うことがポイントとなるわけです。
次に、前日トレーニングした内容に関する復習と、トレーニーから疑問点を質問してもらいます。
特に質問のない場合、トレーナーは各チェック項目の大切なポイントを逆に質問し、答えの確認を行うのがいい方法です。
また、3日間を終了したら、自社に関することや基本作業についての簡単なペーパーテスト(図表❹-12、13)をすると知識の確認ができ効果的です。
※作成手順は(図表❹-6)を参照してください。
4-4アメリカ式トレーニングプログラムの使い方
トレーニング項目チェックと合否の評価トレーニングプログラムとは、自動車教習所で教官が教習後に毎日チェックする指導カリキュラムのようなものです。
トレーニングは各項目の内容に沿って、上から番号順に行います。
各項目のトレーニング方法はOJTが主体となりますが、内容により特定のテーマについてトレーナーとトレーニーが話し合うことで、トレーニーに考えさせ理解を深めるものもあります。
トレーニングプログラムは作業の難易度にもよりますが、原則として1日1枚20項目のトレーニングを4、5時間のペースで進むように構成されています。
多くても1日当たり30項目までが限界となります。
これらの項目は、「トレーニングプログラムの必要性」で述べたように、各コースにおけるトレーニーの段階的な育成目標のレベルを先に決め、トレーニングの予定日数(合計時間数)に合わせ、1日1枚20項目程度に作られているのです。
トレーニーの習熟度に合わせてトレーニングの進行は調整しますが、初回は1日1枚20項目程度のペースで行い、評価欄の評価によりフォローをします。
評価は1日に行ったトレーニングの終了前15~20分を使って行います。
具体的には、その日に実施した各トレーニング項目をトレーナーがトレーニーに質問したり、トレーニングした実技を重点的に確認することで復習しながら習熟度をチェックします。
評価の表記方法は下図をご参照ください。
合否の判定は、マニュアルに従った正しい動作による標準作業やサービスが標準時間内で完了できたかどうかで行います。
ただし、初めは正しい動作で作業することを優先します。
理由は繰り返しトレーニングする間におのずとスピードがつき、標準時間内での達成が可能となるからです。
しかし、トレーナーとして適正な標準時間を作業ごとに当初より意識させることは重要なポイントです。
月日の欄があるのは、初回トレーニングの実施日を記入するためのものです。
何らかの事情で本来1日1枚のペースで終了すべき初回トレーニングが中断された場合、終わった項目までの日付を入れ、後は翌日(次回)以降に持ち越します。
この場合にも合否の判定は終わった項目まで行い、残りのトレーニング項目は次回に引き継ぎます。
従って、トレーナー欄のサイン(担当者)が変わることもあります。
トレーナーはトレーニーとともに1日のトレーニングプログラムに相互サインをつけた後で、初回トレーニングにおけるトレーナーの所感を簡単に記入しておきま
す。
例えば、「Aの項目に関しては得意だが、Bに関しては次回再トレーニングを行い、Cの部分は確認し強調する必要がある」などとなります。
アメリカ式トレーニングプログラムの効果アメリカでチェーン展開する企業の多くは、このトレーニングプログラムの形式を採用しています。
その理由は、作業やサービスを1項目ずつ確実にトレーニングできるからです。
また、トレーナーとトレーニーが毎日のトレーニング終了後、相互にサインすることで「確かに教えました」「確かに教わりました」という一種の契約関係が成立するからです。
この結果、トレーニーが実際の作業中にマニュアルで標準化した方法以外の動作や手順などをとった場合、店長としてはチェックが可能となります。
それは、誰がトレーナーでいつ教えたかをトレーニングプログラムで確認できるからです。
担当したトレーナーに対しては、その作業に関する作業手順や教え方を確認できますし、トレーニーに対しては誰からどう教わったかを確認できるからです。
どちらに問題があっても、標準化した正しい手順にすぐに修正でき、次回からは統一できます。
また、何人ものトレーニーが同じ作業の同じ個所で問題を生じさせていれば、そのトレーニングに関する項目の組み方、内容、教え方などを修正する必要があることが発見でき、本部としては早急な対応も可能となります。
このことは、特に新しいシステムを導入した当初や急速に展開するチェーン企業に有効です。
4-5ステップ別サービス基礎トレーニングシステム
トレーニングチェック表の用い方この項では具体的な「ステップ別トレーニングチェック表」を紹介していますので、各項目に合わせて確認してください。
①トレーナーはトレーニングの各ステップに入る前に、ステップ別トレーニング進行表(図表❹-7)を事前に読んでください。
②必ずチェック表の順に従ってトレーニングしてください。
③原則としてチェック表は、各ステップの初日にその日の分を全項目実施してください。
④トレーナーとは教える側、トレーニーとは教わる側を指します。
トレーニングが済んだ段階で、その日のうちに必ず双方のサインまたは印をチェック表に記入し、教えたこと、教わったことを確認してください。
⑤トレーナーは、トレーニングステップ実施中に気のついたことをチェック表末尾の「トレーナー所感欄」へ記入してください。
⑥メニューの出し方やおしぼりなど、店によって異なることもあります。
(店により省略)とあるものについては自店の方法に手直ししてください。
⑦トレーニーの能力により、要領がよく覚えの早い人がいますが、各ステップの日数を短縮してはいけません。
分かりきったことでも、確実に身につくまで我慢してやらせ通すことが大切です。
短縮した場合、そのトレーニーからサービスの定型が乱れるものです。
OJTの進め方OJTとは、OFFJTに対比する用語です。「OnTheJobTraining」の略であり、現場での実務的なトレーニングのことを言います。
OFFJTとは、会場や教室を用い集合教育により、知識や会社の理念など理解させるためのトレーニング方法のことです。OJTは原則としてマンツーマン(トレーナーとトレーニーが1人対1人)で行います。またトレーニーができるようになるまで、繰り返し繰り返し教え、体得してもらいます。
進め方は、①トレーナーがやってみせる。
※なぜ、そうするのか、そうすることが一番良いのかを説明する。
②トレーニーにやらせてみる。
③トレーニーのやり方の中で、間違っているところを修正し教える。
そこの際にポイントやコツを教える。
④もう一度トレーニーにやらせてみる。
⑤できるようになったら、次に進む。
何が良かったか、褒める。できないときは、もう一度1へ戻り、トレーナーがやってみせる。
※OJTのポイントは、何回も反復して練習することと、トレーナーがトレーニーをうまくできたときに褒めることです。分かるまで、何回でも繰り返してください。第3章-4「コーチングを活用したP/Aトレーニングのすすめ」参照。
4-6小売業の作業別トレーニングプログラム
P/Aが店舗で最初に身につけなければならないのは、店舗で毎日行われている各種作業です。企業によっては、これらの作業を店舗オペレーション(運営)と表現する場合もあります。
店長にとって、各作業に関する知識と具体的な作業の技術や方法をできるだけ短期間にP/Aにマスターさせ、即戦力とすることが重要な職務の1つです。
そこでP/Aトレーニング用に店舗オペレーションに関する各作業を分類し、基礎知識と実務での基本的な作業ポイントをまとめてみます。
業種・業態ごとに異なる作業や各店舗での個別作業もありますが、それらは自店でまとめ補完することをお勧めします。
作業分類と基礎知識店舗オペレーションの各種作業は毎日実施される固定的作業と、曜日や時間帯によって予測される売上高や来店客数により作業頻度(作業量)が変わる変動的作業とに分けられます。
店舗オペレーションの基本原則の1つであるクレンリネス作業(清潔な状態を維持すること)=清掃などは、週間や月間で決められた曜日や日で行われる作業を含め、前者の固定的作業であり、スーパーマーケットなどの青果、鮮魚、精肉部門で実施される食材の調理加工、パック詰め、ラッピングなどは後者の変動的作業となります。
これらの各作業は、「標準化→単純化→システム化」された仕組みとなっていることがP/Aを活用する際の原則となります。
標準化とはその作業をする方法や手順が一番良いやり方で決められており、適正な作業時間も明示されていることです。
また、単純化とは機械や道具などの利用により、誰でも簡単にできるようにすることであり、その結果、誰がやっても同じ成果が出せるシステム化が可能になるという意味です。
こうしておけば、マニュアルとトレーニングプログラムによりトレーニングでき、P/Aの比率を高めることで人件費の削減も可能となるわけです。以下に各作業のトレーニングをする際のポイントをあげてみます。
●清掃作業(クレンリネス)
いくら素晴らしい商品を売っていても、店舗に清潔感がなかったり棚や商品が埃をかぶっていたのでは台なしです。商品の品質まで疑われる恐れもあります。
清掃
作業は、やる気があればP/Aでも確実にできる作業であり、習慣化することがポイントとなります。店舗オペレーションで行われるクレンリネスは大掃除ではありません。
タイムリー(適時)、デイリー(毎日)、ウイークリー(毎週)、マンスリー(毎月)といった清掃サイクルに従い、ある一定レベル以上の清潔度(お客さまが満足するレベル)を営業中のどの時間帯でも維持し管理できていることが重要となります。
※クレンリネスに関する詳細は、第5章「クレンリネスの仕組みとトレーニング法」を参照してください。
●検品作業
検品作業は、発注した商品が間違いなく自店に納品されたかをチェックする作業であり、品質管理の基本となる重要な作業です。発注書を基に納品書と納品された現品の3つで照合することが基本です。検品と収納を検収作業と呼びますが、P/Aにしてもらうこの作業のポイントは以下のようになります。
①発注量と納品書の数量、現品の数量のチェックおよび納品単価と計算の確認
②現品の品番、サイズ、入り数の確認
③品質の劣化した商品、パッケージの汚れや破損、納品期限が過ぎた商品などの有無の確認
④納品が指定した通りの時間、方法で行われたかの確認
⑤欠品、数量不足、不良品などがあった場合の上司への報告と処理
⑥担当者として納品、受領伝票へのサインの実施生鮮食材を扱う
P/Aの場合にはさらに、鮮度や熟成管理に関する知識も必要となります。検品を徹底するためには、後述する「品出し、陳列作業」などを通じて自店の商品を覚えさせることです。その結果、正確でスピーディな検収作業が可能となるのです。
P/Aといえども清掃作業同様に、プロとしての厳しい検品の実施を習慣化すべきです。また、収納に当たっては自店の商品分類や商品の特性、形状やサイズなどに従い定位置管理を習慣づけます。食料品の場合には「先入れ先出し」などの基本原則を徹底して教え込むことも重要です。
●値付け作業
検品作業終了後、品出しの前に実施されるのが値付け作業です。値付け間違いや漏れがあった場合、お客さまは店に対して不信感を抱くようになることを教育トレーニングでは強調します。
また、値付けの不備は、レジ作業の混乱を招くことになります。ピーク時にレジで会計に手間取ると、結果的に販売チャンスロスにもつながることを、具体例を挙げてOJTで説明するようにします。
さらに、待たされたお客さまからの苦情の原因となることも多く、正確に漏れがないよう、値付け作業を実施しなければならないことを理解させます。トレーニングのポイントは、商品ごとに決められた位置に決められた方法で値付けすることを教えます。
また、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、バーコードによりPOSレジで管理する場合には、バーコードの上に値札を張ることは厳禁となりますが、このこともトレーニンプログラムで触れることが大切です。
さらに値札の印字の不鮮明なものや汚れ、ハガレなども品出しの際に再確認するようトレーニングを通して習慣づける必要があります。
●品出し・陳列作業
売場にお客さまの求める商品が品出しされていなかったり陳列されていなければ、当然、購買には結びつかず売上げはあがりません。また、通過客の来店率や固定客の来店頻度を上げることもできず、客数がダウンし、結果的に不振店ともなりかねません。
品出しの基本は売れ筋商品や高回転商品を把握し、欠品したり品薄となっている商品を優先して陳列することです。また、鮮魚や精肉、冷蔵・冷凍食品など温度管理を要する売場のP/Aには、これらを最優先で品出しすることをトレーニングで強調します。
先入れ先出しを原則として補充商品の品出しは実施しますが、トレーニング期間中も終了後もピーク時間までに確実に陳列し、出し忘れや品薄状態をつくらないように再三注意することが大切です。
そのためには売場の陳列スペースを常にチェックし、商品をグループ別に把握し管理することを上級者(パートリーダー)やトレーナーのトレーニングで学ばせます。
また、バックルームの整理整頓にも常に留意させ、陳列スペースに合わせグループ別に商品を管理すると分かりやすいことを実感させるべきです。
新人P/Aのころから売場、バックルームとも、どのような商品がどこにどのくらいあるかを常に把握する習慣をつけさせます。
書店や陳列スペースが比較的小さな靴や鞄などの売場を担当するP/Aの場合、お客さまの要望に即座に対応するためにも重要な作業です。
お客さまが求めた商品を即座に探し提供した結果、お客さまが心から喜ぶ顔を見ることで仕事への興味と張り合いが生じ、自信をつけさせることも可能です。
こうなればしめたもので、自分から商品知識なども身につけるようになります。
●陳列直しと鮮度管理
作業お客さまが求める売れ筋商品や高回転商品、店として売りたい商品を見つけやすく、取りやすく、買いやすくする工夫が陳列には重要な要素となります。
陳列直しはお客さまに満足を与えながら、自店で意図した売上構成を達成し維持するための作業でもあります。毎日ピーク時間前にはP/Aに実施させた後、売場責任者や店長がチェックし確実に時間内に実施させる習慣をつけておかなければなりません。
また、ちょっとした手空き時間にも指示を出し陳列直しを行います。やがて指示がなくてもP/Aが自主的に常にチェックできるようになればトレーニングは成功です。また、陳列直し作業のポイントは、この作業を単独で実施するのではなく、常に
ほかの作業も並行して実施するようにトレーニングし指導することです。一般的には、商品や販売什器などの清掃作業が並行作業として実施されますが、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの場合に行われる鮮度管理は特に重要な並行作業です。
冷蔵・冷凍食品用のケース、弁当・惣菜用の保温ケースの温度チェック、デイリー商品のチェックなどが陳列直しとともに実施されるべき定時の鮮度管理作業となります。
具体的な作業としては、「商品補充」「値札チェック」「売価変更処理」「日付チェック」「エンド陳列」「ケース温度管理」「衛生保持」「フェース清掃」「前出し作業」「POPの取り付け」などとなります。
P/Aにトレーニングを通して、徹底してマスターさせなければならない基本作業はこれらの内容となります。
参考としてこれらの基本作業と一般的なレジ操作に関する[小売業・作業別トレーニングチェック表](図表❹-16~20)を紹介します。
接客サービスに関しては前項の「フードサービス業ステップ別トレーニングチェック表」の基本ステップも参照してください。
このほかに棚卸し作業や発注作業などもありますが、業種・業態により扱い商品や発注方法が異なるため、これらのトレーニングチェック表を参考に自社独自のものを作成し、活用することをお勧めします。
また、ステップ別に育成する場合の参考として「スーパー・グロサリー部門段階別作業分類表」(図表❹-21)を紹介します。
4-7中小店のための教育トレーニングプログラムを活用する7つのポイント
教育トレーニングの重要性を認識せよ中小店の中には、教育トレーニングなど必要ないと思っている経営者がいます。また、うちの店はたいして広くもないし単純な仕事だから、いちいち教えるまでもないと考えている店長がいます。そうでしょうか。
実際には中小店だからこそ、限られた経営資源である人・物・金・情報・時間を生かすため、取り組むべき課題が教育トレーニングなのです。なぜなら、今後ますます人の質がサービスに差をつけ、結果として他店との差別化や客数アップの決め手につながるからです。
人が働く目的には賃金を得ることが挙げられます。しかし、ただ賃金を得るだけならP/Aの中には自宅からもっと近い、時給の高い所もあるはずです。P/Aが働く場所としてあなたの店を選んだのは、少なからずあなたの店の経営姿勢や従業員の雰囲気に共感を持ったからにほかなりません。
また、あなたのほうでも縁あってそれらのP/Aを選んだのです。店の規模は大きく売上げや店数が多く、仕事も特別に大変でもないのに常に人手不足に悩む店があります。逆に売上げも小さく1店しかない、しかも仕事も何でもやらせて結構きついのに人で困っていない店があります。
それらの店では、多少時給が低くても従業員が生き生きと働いていることが多いものです。その理由は、その店で店長(経営者)やほかの従業員(P/A)と働くことが楽しいからです。なぜ楽しいのでしょうか。
それは働く人自身が、その仕事にやりがいや興味を持ち、自分を生かせることで、結果としてその店やその仕事に誇りと意義を感じているからです。
しかし、それらのP/Aは採用以前から誇りや意義を感じていたわけではありません。縁あって採用したP/Aに経営者や店長が一生懸命、店の考え方やその仕事の果たす役割を教え、その結果として誇りや意義を感じてもらえるようになったのです。
それらのP/Aに対し、店や仕事の接点となったのが教育トレーニングです。また、教育トレーニングには職場内の人間関係を良くする効用もあるのです。
それが結果として、明るく楽しく公平な職場をつくり出したのです。それでは、中小店でもできる教育トレーニングの具体的な仕組みづくりとやり方を、7ポイントにまとめ提案します。
①P/A向け主要作業を分類し棚卸ししよう
店内で行っているさまざまな作業には、新人のP/Aでもすぐに取り組める作業と新人のP/Aには取り組めない(取り組ませるべきでない)作業があります。前者の代表的な例が清掃作業であり、後者の例が苦情処理などです。
P/A向け作業を分類し棚卸しするときのポイントは、作業に関して必要な知識、技術、経験、判断力、お客さまへの責任、仕事の発生するサイクル(適時・毎日・毎週・毎月)や頻度、作業量、作業時間などです。
P/A向けの主要作業を分かりやすく表せば、新人に3日間から1週間で教えることのできる作業で毎日(毎週)の作業量が多く、知識、技術、経験、判断力、お客さまへの責任をあまり必要としない作業となります。
一般の小売店を例に取れば、具体的には清掃作業、品出し・陳列作業、陳列直し作業、これに基本的な接客作業とレジ作業や包装作業が加わります。
スーパーマーケットなどの場合には、さらに生鮮や惣菜などの加工やパック詰め作業などが加わります。また、単価や商品にあまり変動のない定番商品の検品作業や値付け作業なら、新人のP/Aでも実施できます。
これら検品や値付け作業に関しては、任せてもよい商品とそうでない商品を業者やメーカーごとに明確に分類し、決めると分かりやすくなります。
②新人向け主要作業の標準化と単純化をしよう
標準化とは、各作業の基準を決めることです。清掃作業にしても、人によって違うやり方を許していては、あるべきクレンリネスの水準が保てません。基準がないと例えば、山田さん、渡辺さん、鈴木さんと3人のP/Aが店内の清掃作業をしたとします。
3人はそれぞれ使用する洗剤や清掃用具も異なるし、清掃を始める場所の順番や手順も異なります。結果として、山田流はバックヤードまではきれいになっていないが20分で終わりました。渡辺流はバックヤードもきれいになりましたが30分かかってしまいました。鈴木流は売場、バックヤードともきれいで25分かかりました。
このように仕上がりのレベルや作業に要した時間に差が出てしまい、しかも、各自は自分のやり方が一番良い方法だと思い込んでいる場合が多いのです。
清掃作業だからまだよいのですが、これが商品管理や販売に関する作業であれば、お客さまからの苦情の対象にもなりかねません。従って、P/A向けの主要作業にはすべて基準を明確にしなければならないのです。
先の例の清掃作業であれば、自店にとって一番良い方法(洗剤、用具、手順など)と適正な作業時間を明確にし(標準化)、誰もがそのやり方を守ることをルール(マニュアル)とします。しかも、分かりやすく誰でもすぐできるようにする(単純化)ことが重要です。
③トレーニングプログラム作成とトレーナーの事前トレーニングをしよう
中小店だけでなく、マニュアルのある売上規模や店数の多い企業でも教育トレーニングがうまく実施できていない原因の大半は、トレーニングプログラムの整備不足とトレーナーが正しいトレーニング方法を知らないために起きています。
マニュアルがあっても、それはあくまでも基準を示しているに過ぎないことを理解すべきです。必要なのはそれらを新人P/Aに対し、どのような順で誰がどのように教えるかということなのです。
これをトレーニンプログラムといいます。トレーニングプログラムを作成する上で重要なことは、新人をどのレベルに何日間で育成するかという期待レベルを明確にすることです。
中小店の場合には基本的な作業やサービスに関し、正社員とアシスタントのできるレベルに3日間から5日間、長くとも1週間で育成することが目標となります。
トレーニングプログラム作成に当たっては、マニュアル同様に現場で作業のよくできる人や新人P/Aに教えるのが上手な従業員の意見を最優先にして作ることです。
さらに、それらを用いて実際に教育トレーニングを繰り返し実施し、自店のトレーニングプログラムを改定し続けることです。まず良いと思えるものを現場でミーティングを重ね、店長などがまとめ役となって作成することが大切です。考えるより生むはやすしなのです。
また、実際に新人P/Aの指導に当たるトレーナーのロールプレイング(交代で新人P/Aの役やトレーナーの役となり、トレーニングプログラムに沿って教えあう訓練)を行い、具体的な言葉や動作を確認することも大切な準備となります。
④新人P/Aは個人別にチェックしよう
P/Aにもいろいろなタイプの人がいます。何にでも積極的に挑戦し、次々に要領良く覚えていくタイプ。覚えるのに時間がかかるが、覚えたことは確実にしっかりと責任感を持ってやりぬくタイプ。
性格は明るいが少しおっちょこちょいで、作業は早いが簡単なミスを起こしがちなタイプなど、さまざまあります。トレーナーとしてはトレーニーの特徴を把握するとともに、誰が何ができて何ができないのかを個人別につかむ必要があります。
また、それらを個人面談などを通して直接伝え、本人に納得してもらった上で、教育トレーニングを繰り返す必要があります。詳細については第10章「P/Aの人事考課とカウンセリング」を参照してください。
⑤新人P/A各自の個性を伸ばそう
P/Aにはそれぞれ個性があります。サービスに関するマニュアルは最低基準を表しますが、基準に達したら後は、各個人の個性や能力の素晴らしい面を引き出すようにしたいものです。
特に、ファッションや輸入雑貨などの店では、商品知識をベースに接客サービス面でP/A各個人のセンスや個性を生かせる場面も多く、それらが仕事の張り合いややりがいにつながるからです。
将来的には仕入れを任すことも可能です。このレベルになると、トレーナーはさりげなく距離をとり接客が終了した時点などに、トレーニーにワンポイントアドバイスを与えます。
また、自分が過去に体験した苦情や失敗の事例などを基に、トレーニーにそのようなときにどうしたらよいかも考えさせるとよいでしょう。
この積み重ねによって、トレーニー個人の技術レベルが上がるとともに、中小店の場合には従業員間の人間関係も円滑さを増します。
⑥全員で報告の習慣をつくろう
中小店の場合、トレーニーが育ってくると人によっては自己裁量の度が過ぎる場合も出てきます。
大切なことは、任せてよい担当商品の範囲や値引きの限度などをも明確に伝え、それ以外の場合は「恐れ入りますが、上司と相談させていただきますのでお待ちいただけますか」などと、必ず接客中でも報告の習慣を身につけさせなければなりません。
また、定期的に行う初期に習った清掃などの基本作業も、その終了時には必ず「清掃終わりました」と上司に報告させる習慣を、きちんと守らせるようにする必要があります。
この辺が中小店でも組織を維持する際のポイントとなるのです。
⑦ベテランをトレーナーにしよう
とかくベテランの従業員になると、中小店の場合はハウスルールを無視したり、勝手に基準を変えてしまうことが多いものです。そこで新人P/Aを育成するトレーナーには、ベテランの社員やベテランのP/Aが当たることを義務づけておくとよいでしょう。
ベテランが常に基準を正しく繰り返して新人P/Aに教えるため、その店の基準とすべき接客サービスのレベルや商品管理、店舗管理の基本作業を自分から守らなければならなくなります。
その結果、基準となるべきレベルが維持されることになります。サービスや作業で常に大切なのは、原理原則とその原点です。
それらを時流とともに変化するお客さまのニーズやウオンツに対応させ、どれだけ満足できるレベルまで自店の基準を引き上げることができるかが重要なのです。
そして、その具現化の決め手は現行マニュアルのレベルアップと教育トレーニングプログラムの作成と改正を含めた運用にあるのです。
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