01自ら考動させる
仕事を任せる際、経営者、マネージャーが常にあれやこれやと細かく指示を出していくと、スタッフは自分で考動(考え・動く)しなくなります。接客をする中では、販売マニュアルに書かれていることだけではなく、イレギュラーなことも多々起こります。
そういったことが起こるたびに、どう対処するべきかの指示を上長に仰ぎに来る、もしくは、指示されるのを待っているとなると、必要なときにタイムリーな対応ができずに、絶好のチャンスを逃す、もしくは手遅れになってしまう場合もあります。
実際、接客中のスタッフに対し、その場で細かく指示を出すことはできませんし、お客様に接していく中では、その場で得た情報を基に自分で考えて、臨機応変に対応していくことが必要になります。
これは、サッカー日本代表の元監督である岡田武史氏が当時実践していたことです。サッカーの試合は、いったん始まってしまうと、ベンチからの指示をピッチに立つ選手に届けることがなかなかできません。
サッカースタジアムに行ったことがある方はお分かりかと思いますが、試合中は選手が大きいグランド内を目まぐるしく走り回ります。
また、Jリーグの人気チームや、日本代表クラスの試合となれば、何万人もの観衆がスタジアムに集まり歓声を上げますので、その声にかき消されてしまい、指示をしたくてもベンチからの声は選手まで届きません。
そこで、岡田監督は選手たちを試合の前に集めてミーティングを開き、自分たちの過去の試合のビデオを見る機会をしばしばつくり、ビデオを見ながら、あらかじめ決められていること以外の動きをしている選手のプレーに対して、「今のはOK」「この動きはいいね!」と伝えていくのだそうです。
そうすることで選手たちは、ビデオに対しての監督のコメントを通して、試合でイレギュラーな対応を迫られたときにどういうプレーをすればよいのかを自分で判断できるようになったとのことでした。
サッカーの試合で、自分で判断ができずにベンチからの指示を待っているようでは、相手にボールを奪われてしまいます。そのため、選手らが自分で考えて判断し、行動することが求められます。これはサッカー選手に限った話ではなく、店のマネジメントの現場にも通じる話です。
自分で考動するスタッフを生み出すためには、リーダーが常にあれやこれやと指示を出すのではなく、自分で考え動くことができるための環境を整えることが大切です。
そのためには、まずは基礎教育が十分になされていないスタッフに対してはトレーニングをきちんと積ませること。そして、その課程を終えたスタッフには、任せた仕事を成し遂げる上で必要な「情報」「技能」「意欲」が持てるように促すことが必要となります。
02スタッフのお手本になる
誰から任せられたのかによって、仕事への取り組み方は大きく異なります。私がアパレル専門店チェーンで大型店の店長を任せられた3年目のことです。
就任以来続けていた、連続月間予算達成の記録更新を逃してしまった月がありました。その翌日、すぐに当時の上司から電話が入りました。
その上司からはいつも多くのことを学ぶことができ、会ったときにはねぎらいの言葉や適切な助言をいただいて、人間的にもとても尊敬できる方でした。
その日の電話では、予算を落としたことに対してのお小言を一つも聞かされることなく、いろいろとアドバイスを受けた後、電話の最後に、「この店のことは岡本さんに任せているのでよろしく頼むな!」と告げられました。
上司からその言葉を投げ掛けられたことによって、当時の私の心のやる気のスイッチは「バチッ!」と音を立てて入ることになり、その翌月からは、また月間予算を達成することができるようになりました。
その年は年間ベースで見ると、過去最高の売上を記録することができました。任せられた相手によって、仕事への力の入り方・取り組み方は大きく異なります。
あなた自身が、スタッフから尊敬される人物になることはとても大切です。では、尊敬されるに値する上司になるためには、どうすればよいのでしょうか。
それは、さほど難しいことではありません。経営者、マネージャーとしてのあるべき姿(自分としての理想像)を思い描き、それに近づけるように日々、学び、成長していくことで、スタッフは自然とあなたのことを尊敬に値する存在として見るようになります。
その上で気に掛けておくべきことは、常にスタッフから見られていることを意識して行動・言動をするということです。具体的には、不平、不満、愚痴や、お客様・スタッフ・取引先・家族に対しての悪口は言わないということ。
また、店で定められている就業ルールを自らもきちんと守ることなどです。周囲から尊敬される存在となることで、あなたから任せられた仕事に対してスタッフが取り組む姿勢は大きく変わります。そうすることで、任せることが一気に進んでいくのです。
03自分の夢を語ろう
常に夢を語り続けている人は、周りから応援されるようになります。スポーツの世界で、オリンピックやワールドカップなどに出場している選手のことを応援する人は多いです。
私もそうですが、応援している選手やチームの試合が海外で行われる場合、日本時間で深夜や早朝になることもあるのに、そういうときでも眠い目をこすりながらテレビの前で応援し、その結果に一喜一憂するという方は少なくないはずです。
選手とは親しい間柄でもないのに、心から声援を送り、応援してしまうのはなぜなのでしょうか?それは、選手たちが「優勝を目指す」という夢を持ち、メディアを通じて「次の大会では絶対にメダルを取ります!」と宣言するなど、夢を語っている姿を幾度となく目にするからです。
また、夢を追い掛けている人は皆、キラキラと輝いています。そういう人が懸命に努力している姿を目の当たりにすると、夢を実現させて一緒に喜びを分かち合いたいと感じ、「応援したい」「サポートしたい」という気持ちが生まれ、その人のファンになっていきます。
これは、スポーツ選手に対してだけではありません。職場であれば、経営者、マネージャーが夢(ビジョン)を語り、その実現に向かい邁進する姿を見せることで、スタッフは「何か手伝えないものか?」「一肌脱いでやろう!」と思い、応援してくれるようになります。
ビジョンの実現を目指し、行動を共にしていく気持ちになっているスタッフに仕事を任せていくと、やる気を持ってしっかりと仕事に取り組んでくれるようになります。
ただし、夢は相手に語らなければ伝わりません。しかも、何度も言わなければ、なかなか伝わらないものです。ですから、スタッフに対して夢について語り、「なぜ、それを実現したいのか」「実現できたらどうなるのか」を繰り返し伝えることが必要となります。
そうすることで、あなたの周りに夢を共に実現させたいと思う「やる気に満ちたスタッフ」が自然と集まるようになります。
自分が夢を共有したいと思える人から任された仕事に取り組むことは、すなわち、スタッフ自身の夢を実現することにもつながるのです。そうすると、任された仕事をしっかりとこなそう、責任を持って成し遂げようという気持ちも自然と沸き上がってくるものです。
任せた仕事を成し遂げる過程での気づき、学び、喜びは、人の自信を育みます。自信を持つことができれば、何事にもチャレンジしていく勇気とパワーを手に入れることができます。
スタッフに仕事を任せていくことで、スタッフは大きく成長していくことになるのです。あなたの店、あなたのもとで働くスタッフ、そして、あなた自身の成長を加速させるために、「仕事を任せる」ことを、これから始めていきませんか?
あとがき
私のコーチングプログラムに参加いただいている方の中で、ゴールとしている地点に早く到達することができる人に共通することがあります。
それは、学んだことをすぐに実践し、その行動を成果が出るまでやり続けるということです。「継続は力なり」と昔から言われていますが、200人を超える企業、店舗の経営者と関わってきた中で、正しいやり方を学び、それを継続し続けることで、抱えている問題の多くは解決することができるし、目標達成は可能だと私は考えます。
人の問題、マネジメントの課題、人材育成については、組織のリーダーたちが抱える悩みの中で大きなウエイトを占めています。
ひとたび人に関する問題が浮上すると、本来やるべき仕事が手につかないという状況になってしまいます。
何か一つでもよいので、本書でお伝えしたことに実際に取り組んでいただき、そこでの取り組みを継続し、現状を変化させていってください。
KeepMovingTowardYourGoal!~ゴールに向かって走り続けよう!~
最後になりましたが、本書を執筆するにあたり、お力添えをいただいた皆さまに、心からお礼を申し上げます。特に、企画書をお見せした最初の段階から興味を持っていただき、書籍化への道筋をつけていただいた、月刊「商業界」編集長の笹井清範さん。
書き上げた原稿を渡すたびに、褒めていただき、ねぎらいのメッセージを投げ返してくれた、執筆の際の最高のパートナーであった月刊「商業界」編集部の庄子真美さん。
最終章を書き上げたときに庄子さんから受け取った「この本に携わることができて、私はとても幸せです」というメッセージは、私の宝物にしていきたいと思います。
そして、この本を世に広めていく活動にご尽力いただいている㈱商業界販売2部の日下部洋子さんには心より感謝しております。また、本書の中に登場していただいた方を含む、私が主宰する「インストアコミュニケーション(ISC)サポートクラブ」のメンバーの皆さま、そして、私のことをいつも応
援してくれているステキな友人たちには、今回はいつも以上にご協力をいただくことになりました。あなたたちがいたからこそ、この本を作り上げることができました。感謝しております。
そして、普段の生活の中で、私のすべてを心から支えてくれている愛すべき家族にも、感謝を伝えたいと思います。本当にありがとう。この本がきっかけで、かつての私と同様の悩みを抱えている方が一人でも多く、「人マネジメント」の問題から解放され、商人(ビジネスパーソン)として豊かな未来を描けるようになることを願っております。2013年2月繁盛企業・育成コーチ岡本文宏
【購入者限定の特別プレゼントをご用意しました!】1スタッフのやる気が高まる『経営情報誌』『ISCサポートジャーナル・特別号』(PDF版)A420ページのボリュームでお届けします!2スペシャル音声セミナー『岡本文宏の音声セミナー』(MP3)約50分の講演を収録しています!3メールセミナー無料参加本書で書き切れなかった繁盛店を生み出すノウハウを特別公開!(全5回)さらに!岡本文宏のメールレターを無料配信いたします。
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