第3章任せづらい人への任せ方~職場によくいる5タイプ〜
こちらの意図に反したことばかりするスタッフの存在は、経営者、マネージャーの悩みの種ですよね。私自身も、セブン‐イレブンのFC店を経営していた頃は、「スタッフが思ったように働いてくれない」「何でこれくらいのことができないのか」と思うことが多く、ストレスを感じていた時期がありました。
しかし、そういった悩みの元となるスタッフは、何パターンかのタイプに分けることができ、それぞれに最適なアプローチを行うことで、無理なくスムーズにマネジメントすることが可能となります。ここでは、手の掛かる代表的な5つのタイプへの仕事の任せ方をご紹介したいと思います。
(1)返事は抜群!結果はミスばかりタイプ
仕事を任せた際に、「はいっ、分かりました!」と元気に返事をし、やる気モード全開で取り組むものの、いつも肝心なところでミスを繰り返すタイプのスタッフはいませんか?これは、私がアパレル専門店チェーンで店長をやっていたときの話です。
販売力があり、人当たりも良く、お客様からの評判も悪くないのですが、任せた仕事をこなしていく中でミスを連発するという、入社2年目の若手女性スタッフがいました。彼女のミスが原因でクレームに発展するケースもあり、その対応に頭を悩ませていた時期がありました。
そこで、彼女がミスをする原因を調べたところ、私が指示をしたことを大まかには理解していますが、細かなことについて分からないことがあったとしても自分流に解釈し、そのまま行動してしまう傾向が強いことが分かったのです。
このタイプへの最も効果のある対処法は、「指示事項が正しく伝わっているかどうかの確認を行うこと」となります。
指示を出すたび、毎回確認することは難しいでしょうから、ときどきでよいので、抜き打ちでチェックしてみるのです。私の店では指示事項の伝達を行う際に、A4のシートに連絡事項を記入して回覧するようにしていました。
そして、シートのチェック欄に本人の既読サインが入っていることを確認した上で、あえて「今日、連絡シートになんて書いてあったっけ?」と質問し、その場で伝達事項を要約して言ってもらいます。
その際、理解していない箇所があれば補足説明をし、確実に分からせていくことを繰り返します。地道な作業にはなりますが、このタイプのスタッフに安心して仕事を任せるために、そして、ミスの発生率を下げるためには、最も効果のある方法だといえます。
(2)普段は従順、いきなり反旗を翻すタイプ
あなたの店にも、頼み事をしても嫌な顔一つせず、素直に「はい」と答え、仕事をきちんとこなしていく従順なタイプのスタッフがいるのではないでしょうか?仕事の出来栄えも必ず期待通りの結果となるので、ついそのスタッフに仕事を回しがちになってしまいます。
私がセブン‐イレブンのFC店を経営していた頃、任せた仕事もそつなくこなし、誰かが欠勤した際のピンチヒッターとして、急な出勤を依頼しても二つ返事で応えてくれる学生スタッフがいました。
しかし、知らず知らずのうちに、彼がシフトに入る回数が増えてしまい、数ヵ月経つとほぼ毎日、店に出勤してくる状態になっていました。
彼がいると仕事もはかどるし、安心して売場を任せておけるので、私としては良いことづくしでした。でも、ある日突然、「オーナー、お話があるんですけど……」と切り出され、退職願いを申し渡されてしまったのです。
その日からは、彼の抜けた穴を埋めるため、私も売場に駆り出され、一時的に人手不足の状況に陥り、店が回らなくなってしまったという苦い経験があります。
普通、退職を依願してくるときは、数週間前からなんとなく態度や表情に変化が表れるものなのですが、このタイプにはそういう予兆が一切見られず、突然、やる気が低下してしまい、ひどいときには、当時の私のようにその場で三行半を突き付けられることになってしまいます。
このタイプへの対処法は、ズバリ「仕事を目いっぱいさせないこと」です。この手のスタッフは、基本的に真面目な気質の持ち主なので、任された仕事は一切手を抜かず一生懸命取り組みます。
それがゆえ、きちんと結果を残しますので重宝がられ、仕事がどんどんそのスタッフに集中してくるようになるのです。ただ、自分のキャパをオーバーしていたとしても、本人からはノーと言えないため、仕事もストレスも同時に目いっぱい抱え込んでしまうことになります。
そして、限界に達した段階で突然、反旗を翻すことになるのです。このタイプに仕事を任せる際には、小まめにコミュニケーションを取り、置かれている状況を把握し、仕事量が増え過ぎないように、こちらがコントロールしていくことが必要となります。
(3)いつも反対ばかり、自己防衛タイプ
私がコーチングサポートを提供している老舗居酒屋の二代目も、このタイプのスタッフに悩まされていました。本を読んだり、セミナーに参加したりして学んだ経営手法を店に導入するため、新しいことを始めようとすると、決まって古株のスタッフが反対してくるのです。
そのとき、彼に伝えたのは「新しい仕事を任せる際の手順を変える」ことでした。経営者やマネージャーが新しい提案を行う際、いきなり新規提案のカードを提示してしまうことが多いのですが、これではスタッフからの同意は得られません。
多くの人は、自分の置かれている状況が変化するのを嫌います。つまり、唐突に新しい仕事を任せられようものなら、反射的に反対のカードを突き付けるというのは、ごく自然な行動なのです。そこで、彼には以下の順序で伝えるようにお勧めしました。
(1)これまでの功績に対して感謝する(承認)
(2)数字を用いて現状を説明する(現状把握)
(3)現状の問題点を指摘する(問題提起)
(4)現状のまま進んだ場合の将来像を伝える(未来予想)
(5)改善策、新規に任せる仕事内容を伝える(提案)
(6)協力してくれるようお願いする(依頼)
伝える順序を間違えると、どんなに良い提案であっても受け入れられることはありません。新しい提案を受け入れてもらうためには、まずはスタッフが今までやってきたことを認め、そのことへの感謝を伝えることから始めなければなりません。
そうしないと、自分たちがこれまでやってきたことを否定されると感じ、自己防衛の行動を取ってしまうのです。また、話の最後は「明日からこうするので指示に従うように」と締めくくるのではなく、「より良い店を目指すために、ぜひ協力してほしい」「あなたの力が必要だ」と締めくくり、指示命令調にならないよう配慮する必要があります。
そうすることで、「そこまで言うのなら一肌脱いでやろうか!」と思い、新しく任せられた仕事に積極的に取り組むようになっていきます。
(4)自分で考えない、とにかく依存タイプ
ちょうど、セブン‐イレブンのFC店を開業して2年が過ぎた頃、スタッフもある程度安定してきたので、久々に家族でディズニーランドに行くことになりました。
当時はファストパス(通常より短い待ち時間でアトラクションを利用できるチケット)がありませんでしたので、夏休みということもあり、人気アトラクションには長蛇の列ができていました。
私たち家族も、お目当てのアトラクションを利用しようと、炎天下の中、1時間半以上列に並び、ようやくアトラクションに乗れる一歩手前の所までこぎ着けました。
そのとき、私の携帯電話に店から電話が入ったのです。電話の内容は、「カツカレーを販売するときに渡す、先割れスプーンの在庫が切れたので、どうすればよいか?」という質問でした。
先割れスプーンというのは、ご存じだとは思いますが、スプーンとフォークの間のような形状をしています。それなら、たとえその在庫がなくなっても、スプーンとフォークを代用すればよいと思いつくはずです。
しかし、私の店のスタッフは自分で考えることをせずに、質問をして答えを聞き出そうとしたわけです。私が家族と一緒に久々の家族旅行を楽しんでいることなど、お構いなしで電話をかけてきたスタッフに対して、正直、最初は腹が立ちました。ただ、後でよくよく考えてみると、そのスタッフに今回のような行動を取らせたのは、私自身の責任であることに気づきました。
当時の私は、スタッフに仕事を任せる中で、「分からないことがあれば、すぐに質問をしなさい」と言っていました。そのことが、結果として、彼、彼女たちが自分で考えて行動するのを妨げていたのです。
つまり、私自身が、私に依存するように仕向けていたことになります。その結果、先割れスプーンの代用として、スプーンとフォークを渡すという簡単なことすら、自分で考えずに解決策を聞きに電話をしてきたのです。
店の中には、このように何でもかんでも質問してくるスタッフが多くいるものです。そういった依存型のスタッフに仕事を任せる際は、分からないことがあれば、質問する前に、まずは自分で考えて答えを見つけることを促す必要があります。
そのためには、問題解決を自らできるような手引き書やマニュアルをしっかりと用意しておくことが必要です。そうすることで、経営者、マネージャーに依存せずに、自ら考え、行動して、任せた仕事をこなせるスタッフになっていきます。
(5)時間がかかる、おっとりし過ぎタイプ
これも、以前私が経営していたセブン‐イレブンの店での話です。何を任せても人の2倍以上時間がかかり、やることなすことヘマばかりの女性スタッフがいました。彼女は「おっとりし過ぎ」という点を除けば、素直で性格も良く、国立大学の学生なので頭もいいし、プライベートで接するのであれば、申し分なくいい子の部類に入る人材でした。
ただ、おっとりし過ぎているがゆえ、なかなか仕事を任せることができず、店の中での問題児になっていたのです。そのスタッフを採用したのは私でしたので、腹をくくり、彼女専属の教育係になり、一人前になるよう育てていこうと決めました。
彼女を教育していく際に行ったことは、以下の3つです。
①普通のスタッフよりも、細かく分解して教える。
②一度教えたことでも、少しでもあやふやな箇所が見つかれば、理解するまで何度も教え直す。
③他のスタッフの習熟スピードと比較せず、彼女のペースに合わせて教える。
そうは決めたものの、予想以上に手が掛かる状態に、正直、いら立ちを覚えることもしばしばありました。結果として、すべてを教えきるのに、一般的なケースの3倍の時間がかかりましたが、その後は、任せた仕事をミスなくきちんとこなせるようになり、最終的には学生スタッフのリーダーとなるまでに成長しました。
スタッフによって、仕事をマスターするスピードは異なります。業務の習得スピードが速い人が、遅い人を見ると「なんでこんなことがサッとできないのか」と首をかしげることになります。
仕事の教え方が全員一律になってしまうと、彼女のようなおっとりタイプであれば、ついていけずに中途半端な知識、スキルしか習得できず、あやふやな状態で仕事をすることになってしまいます。
そのことがミスの多発につながるのです。教える側やマネジメントを行う立場に立つ人は、相手にマッチしたペースで教育を行うことが必要です。そうすれば、おっとりし過ぎタイプのスタッフでも、仕事を任せられる人材に育てていくことは十分可能なのです。
コメント