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第2章任せる技術を高めるコツ

目次

第2章任せる技術を高めるコツ

1任せる前のコツ

01任せる相手をよく知る

相手のことをよく知らないまま、仕事を任せようとしても、うまく任せきることはできません。人には得手不得手がありますし、興味の対象となることも異なります。

スタッフに仕事を任せる前に、相手がどういう人物なのか、何を得意としていて、何が不得意なのかなど、そのスタッフのことをよく理解しておくと、効率良くマネジメントすることができるようになります。

まずは、次のシートを見て、一人のスタッフを思い浮かべながら記入してみましょう。(スタッフカルテ作成)

すべての質問に答えることができたでしょうか?私はセミナーの参加者に、これと同じ質問をすることがよくあるのですが、全問答えることができた人は、全体の5%未満しかいません。

つまり、スタッフの細かいことまで理解している人は少数派で、多くはスタッフのことをよく分かっていないまま関わっているというのが実情なのです。

ただ、相手のことを知らずして仕事を任せることは難しいですし、そういう状態で人材育成やマネジメントを行うこともまた困難だと言えます。

美容室やマッサージ店では、お客様との会話や施術、ニーズ、特徴などを記録する顧客カルテを活用している場合が多いでしょう。

そこに顧客情報を蓄積していき、再来店時に接客や施術をする際に参照し、良い関係を築き上げることに役立てています。

スタッフカルテで得意分野を知るスタッフに仕事を任せる前に、このカルテを使った顧客管理の仕組みを応用し、各自の特性を把握していきます。

具体的には、スタッフの普段の行動を観察して、感じたこと、気づいたこと、個別ミーティングで話していく中で分かったこと、抱えている悩み、課題、問題などの情報をスタッフカルテに書き込み、スタッフごとのデータベースを作り上げます。

そうすることで、各スタッフの特性にマッチした仕事を割り振ることができるので、仕事の効率が上がります。スタッフ自身にとっても、得意な業務に取り組むことができるので、心理的な負担なくスムーズに仕事をこなしていけるようになります。

スタッフマネジメントの点においても、このカルテは大いに役立ちます。例えば、スタッフの誕生日と好みが分かれば、各自の好みにあったプレゼントをすることもできます。その場では、「どうして私の好きなものを知っているのだろう?」と不思議に思うかもしれませんが、同時に「大切にされている」とも感じます。

また、カルテに書き留めておいたことを基に、個別ミーティングでフィードバックすれば、「自分のことをよく見てくれている」と感じ、やる気もアップするでしょう。

このように、「スタッフカルテ」を使うことで、仕事を任せることと人材マネジメントを上手に行うことができるようになるのです。

02誰に任せるかを慎重に決める

スタッフに仕事を任せてやる気を引き出すことは、人材マネジメントを行う上での基本です。しかし、任せる際の人選と任せる仕事の選択を間違えると、思ったような成果を挙げることはできません。

これは、私自身がアパレル専門店チェーンに勤務していた頃の話です。店長として4年ほど販売と店舗マネジメントを経験し、それなりに周りからも認められる成績を残せるようになっていたとき、本部への異動の話が舞い込んできました。

当時私が勤めていた会社では、店舗勤務から本部への異動は栄転を意味し、中でも商品部の仕入れ部門という花形部署への配属だったのでとてもうれしく思い、意気揚々と本部のある新宿に通うことになりました。

しかし、その半年後に、新設された商品企画部のプランナー職にさらに異動することになり、そこでは、会社の基幹ブランドの企画・立案をすべて賄うという重責を担うことになったのです。

私としては、商品企画には一度も携わったことがなく、それに関する教育も全くされていない状態のまま、会社の中枢を担うような立場に置かれたことに大きな不安を抱き、一転して、憂鬱な気持ちで仕事をすることになりました。

それでも、とにかく会社から言い渡された期限までに、任された商品のプランニングを行わなければならなかったので、がむしゃらに企画を立てていきました。

そうして半年後、私が企画した商品が店頭に並ぶことになりましたが、結果として企画は大コケし、会社に大きな損失を与えることになってしまいました。

その後、会社の組織変更が行われる中で、私が就いていたプランナーという職種自体がなくなったこともあり、今度は営業部の地区統括マネージャーとして、現場復帰することになったのです。

そこからは、私自身、息を吹き返したように任された仕事をこなしていき、2年連続で売上ナンバーワンの成績を収め、社内表彰を受けるまでになりました。

現状の任せている仕事をしっかりこなせるからといって、そのスタッフが他の仕事もすべてうまくこなせるわけではありません。

人には得手不得手がありますし、任せられるだけの十分なスキルが備わっていないまま仕事を任せてしまうと、スタッフとしては、仕事のやり方が分からずに動けない、もしくは勝手に判断して行動し、当時の私のように任された仕事をうまくこなせず、周りに迷惑を掛けてしまうことにもなりかねません。

人によっては、プレッシャーに押しつぶされてしまう場合もあります。また、仕事を任せることができる人材が不在であれば、無理をして任せるのではなく、任せることができるように育成することが順番としては先になります。

このように、「誰に何を任せるのか?」という判断を正しく行うことは、経営者、マネージャーの重要な仕事の一つだと言えます。

03雇用形態で仕事に差をつけない

「Aさんはアルバイトだから、この仕事は任せないでおこう」「Bさんは正社員だから、この仕事を任せよう」このように、正社員、派遣社員、パート・アルバイトといった雇用契約上の種類だけで任せる仕事に差をつけるのはお勧めしません。

私がかつてセブン‐イレブンのFC店を経営していた頃の経験からお話しすると、正社員、パート・アルバイトの能力、やる気には大差がなく、スタッフの雇用形態によって仕事に差をつけることはナンセンスだと考えます。

当時私の店では、主力商品である弁当、おにぎりなどのデイリー品の発注を含めた商品発注の大半をパート・アルバイトに任せていました。

それらは、年間にすると2億円以上の売上規模となります。これは私の店だけに限りません。大半の同チェーンの店では、同様にパート・アルバイトが発注業務を任されています。

言わずと知れたことですが、セブン‐イレブンは小売業の中で業績ナンバーワンの企業です。その売上の大半が、正社員以外のスタッフによって作り出されているのです。

セブン‐イレブンだけに限らず、ディズニーリゾートにおいても、スタッフの9割はパート・アルバイトです。また、そこで働く人たちは、人並み外れた技能や特別な知識を持ち合わせているわけではなく、どこにでもいるような主婦パート、学生アルバイト、フリーターが中心です。

それでも、業界断トツでナンバーワンの業績を生み出したり、伝説に残るホスピタリティ満点の接客、サービスを提供し続けたりすることができているのです。

そもそも、正社員だから優秀、パート・アルバイトだから優秀ではないということはあり得ません。私は、人材採用を行う際の顧問先へのアドバイスとして、家庭の主婦は優秀な人材の宝庫であるとお伝えしています。

なぜなら、もともと一流大学卒で大企業のエリート社員だった人が、結婚や妊娠を機に退職し、その後、家庭の事情からフルタイムで働くことができないゆえ、仕事をしないまま家庭に居続けているというケースは、思った以上に多いのです。

もちろん、名の通った大学の卒業生や一流企業に勤めていた人がすべて優秀かといえば、一概にそうとは言えません。

しかし、これは私の経験ではありますが、そういった人は採用した後も教えたことの覚えが早かったり段取りが良かったりと、何かと重宝する場合が多かったのも確かです。私のかつての店でも、金融機関で勤務経験のある主婦をパートとして採用していました。

彼女は機転もきくし、金銭管理にも非常に長けていたので、主戦力として大いに活躍してくれました。最終的に彼女を副店長として抜擢し、スタッフマネジメントの大半を任せることになったのです。

小さな店や中小規模の会社に、一流大学卒や一流企業に勤務していた人材が正社員として入社してくる機会はそれほど多くはありません。

でも、パート・アルバイトとしてならば、そういった人材も無理なく採用することが可能なのです。その場合は特に、任せる仕事に差をつけることはもったいないことだと言えます。

04あえて難しいことから任せる

本人の実力に見合った仕事を任せれば、よほどのことがない限りきちんと仕事をこなすことができるはずです。そうすれば業務が滞ることがないので、現場が混乱することもありません。

何より任せる方としては、安心して仕事を依頼することができます。ただ、この場合、「任せる」とは名ばかりで、仕事の中身を見ると作業的なことばかりになっている場合も少なくありません。

また、誰にでもできるような簡単な仕事しか任せてもらえないのでは、任された方としては仕事へのモチベーションは上がらず、個人の成長も期待することはできなくなってしまいます。

それとは逆に、多少のリスクは覚悟の上で、今の実力には見合っていない無理難題を投げ渡すという任せ方もあります。以前勤務していたアパレル専門店チェーンでの私自身の経験です。

新卒で入社した半年後のこと。新店のオープニング店長として赴任するようにとの辞令を受けました。そのとき、上司からは「本部として初出店の地区となるので、会社の威信を懸けた非常に大切な店舗となる」と聞かされました。

半年前まで学生だった自分になぜそんな大役を任せるのか、不思議に思う部分もありましたが、とにかく、任せられた以上は、店長としての仕事に全力を尽くすのみと腹を決め、仕事に打ち込みました。

結果的には店のスタッフに支えられ、その店舗では予想を大きく上回る実績を残すことができました。今振り返ると、投げ与えられた「無理難題」のお陰で店の業績を大きく伸ばすことができましたし、私個人としても大きく成長することができたと言えます。

このように、相手の実力以上の仕事をあえて任せることで、短期間に想像以上に良い結果を導き出すことが可能となる場合もあるのです。

ただ、すべての人が無理難題をすんなり乗り越えられるわけではありません。また、そういった状況におかれた場合、悩みを抱えることになる人も多いでしょう。

そういうときに、抱えている問題、悩みとなることをすぐに相談できる環境を整えておくことはとても大切です。

具体的に言うと、個別ミーティングなどを利用して、上司とじっくりと話をする機会を設けることになります。そういう場を用意しておくと、重責を任せられたスタッフとしてもサポートされていることが分かるので、肩に力が入り過ぎず、自分の実力を十分に発揮することができるようになります。

無理難題を与えた後は放置するのではなく、現状がどうなっているのかを把握し、必要であれば適切なアドバイスがしっかりと行えるよう、フォロー態勢を万全にしておく必要があります。

そういう状況であれば、無理難題を与え、仕事を任せることは、人の成長を加速させるのに有効な手段となります。

05考え方を教えてから任せる

新しいスタッフを雇い入れるときは人員不足の場合が多いので、一刻も早く戦力となる人材を補充したいと考えてしまいがちです。

ただ、作業のやり方を教えたからといって、いきなり売場に立たせて仕事を任せることはお勧めしません。

任せる仕事の「意味」を理解しないまま働くことになると、単にルーティンワークをこなすだけのつまらない毎日を過ごすことになってしまいます。

結果、仕事へのモチベーションは上がりません。そうならないためには、任せる仕事の作業手順を教える前に、店の仕事をする上での「考え方」を教えることが必要です。

かつて、私が経営していたセブン‐イレブンのFC店では、レジ接客の際にお辞儀を行うことを決まり事にしていました。

業務の中で実行させる際に「接客のときにお辞儀をしなさい」と教えただけでは、「コンビニでそんな丁寧な接客をしなくてもよいのに……」と思うスタッフも出てきます。

そうなると、お辞儀は徹底されなくなってしまいます。でも、私の店では24時間365日、すべてのお客様へのレジ接客で、お辞儀が徹底できていました。

それは、新人を採用した際の教育において、任せる仕事の作業手順を教える前に、店での仕事に対しての「考え方」を伝えるレクチャータイムをつくり、それぞれの業務の持つ意味を教えていたので実現できていたのではないかと思います。

例えば、接客時のお辞儀についてであれば、レクチャーの中では、「なぜお辞儀をするのか?」を以下のように語り、考え方を伝えていました。「当店は地域で最後発のコンビニです。だから、売上を上げるには他店とは明確に差別化された優位性をアピールし、お客様から選ばれる店になる必要があります。

この地区の競合店は無愛想な店が多いので、「親切丁寧な接客」を行えば他店との差別化が可能です。丁寧な店だと印象付けるために、レジ接客時はお辞儀をしていく必要があるのです」このように、業務を行う理由を理解させれば、スタッフは抵抗なくこちらが求めることを実行できるようになるものです。

レクチャーの中では、それ以外にも、「スタッフとしてのあるべき姿」「なぜこの店を経営しているのか」「店のこれまでの歩み」「地域の中での役割」「経営理念」などについても詳しく語っていました。

しかし、時間をかけて「考え方」を学び、その場では理解したつもりになっても、しばらくすると記憶は薄れてしまいます。ドイツの心理学者エビングハウスの実験によれば、人は記憶の42%を20分で忘却し、1週間もすれば2割程度の記憶しか残らないとされています。

そのため、レクチャーの受講後はレポートの提出を義務付け、さらには、翌日からの作業研修や通常業務の中でも、事あるごとに伝え方や切り口を変えて「考え方」を再インストールしていくことも行っていました。

2任せるときのコツ

01期待していると伝える

「やる気がないわけではないが、なかなか業績がアップしない」という伸び悩みスタッフへの対応に手を焼いている方は多いのではないでしょうか。

もう少し頑張ればなんとかなるのに、なぜか課題に取り組むことを途中で諦めてしまう。そういったスタッフは自分に対して「能力が低い」とレッテルを貼り、これ以上の成長は無理と自ら決め付けているケースも少なくありません。

ただ、そんなスタッフでも、仕事を任せていくことで、目を輝かせていきいきと働くように生まれ変わらせることは十分可能です。その際のちょっとしたコツについて紹介します。

福岡市博多区の美容室アンドゥドゥ(林宏貴さん経営)では、商品の販売キャンペーンを通し、伸び悩みスタッフのやる気に火を付け、さらには2ヵ月でこなす予定の販売目標を3週間足らずの超ハイスピードで一気にクリアするなど、店全体の売上を劇的にアップさせることに成功しています。

今まで、林さんの店でキャンペーンを行う際は、販売力のあるスタッフが責任者に任命されていました。しかし、今回はあえて業績不振のスタッフにすべてを任せることにしたのです。

もちろん、困ったときには上長が相談に乗るなどのバックアップ体制を整えてはいましたが、それにより、準備やオペレーションがうまくいかず、キャンペーンが失敗に終わる可能性も十分考えられるわけです。

しかし、今回はスタッフを信じ、重責を担わせることにしました。林さんは、個別ミーティングの席や売場で顔を合わせたときなどに、責任者として任命したスタッフに対して、キャンペーンの成功を信じていること、彼らに期待している旨を、事あるごとに伝えていきました。

そうしたところ、任されたスタッフはキャンペーンの責任者としての責務を遂行していく中で、販売マニュアルを作成したり、自ら積極的にセールスを仕掛けたりするようになり、スタッフの行動が一変することになりました。

その結果、伸び悩みスタッフの成績は店内トップクラスに跳ね上がったのです。同時に、それに触発された他のスタッフのやる気もアップし、店全体でも過去最高の売上をつくり出すことができました。人は、期待されるとそれに応えようと頑張り、期待通りの成果を挙げるようになります。

これは、心理学でいうところの「ピグマリオン効果」に当てはまります。アメリカの教育心理学者のロバート・ローゼンタールによって行われた実験によると、学校で、一般的な成績の生徒をA、Bの2グループに分け、Aのグループには、「君たちは成績優秀者だ」ということを伝え続け、優等生として扱うようにし、Bグループへは、今まで通り普通の生徒として扱いました。

その結果、優等生として扱われたAグループの生徒は、数ヵ月後には本当に優秀な成績を取るようになり、Bグループの生徒には変化が表れることはありませんでした。仕事を任せる際に「あなたに期待している」「あなたならできる」と声掛けを行い、可能性を信じることで、スタッフはあなたが思い描く状態になっていくのです。

02任せる範囲を明確に示す

自ら進んで仕事を見つけ出し、行動してくれる人材は、マネジメントをする私たちにとって、とてもありがたい存在です。

ただ、スタッフの中には、指示したことはきちんとやるけれど、与えられた仕事が終わると次の指示が出るまでの間、ぼ~っと突っ立っているか、手持ちぶさたにしていて何をするのでもなく、ただ売場にいるという人もかなり多くいます。

そういった、いわゆる「指示待ち族」ばかりが周りにいると、現場で指揮を執る経営者、マネージャーだけが忙しく指示を出し続けなければならなくなります。

なぜ、指示を待っているのか?スタッフが上司からの指示を待っている場合、意欲がなく、できれば仕事をやりたくないと思って何もしないというケースは、それほど多くはありません。

実は、自分で動きたくても、やってよいのかどうかの判断がつかないので、仕方なくぼ~っと店の中で突っ立っているというケースが多いのです。

店の中でこういったスタッフを生み出さないためには、指示がなくても自分で自由に動いてよいとする範囲を明確に示しておくことが必要となります。

スタッフが自ら考えて動き、伝説となるサービスを生み出し続けているザ・リッツ・カールトンホテルでは、スタッフがお客様を喜ばせることを目的とするのであれば、上長の許可なしで一人一日20万円まで、自分の判断で自由に会社の経費を使うことができると定められています。

そういったルールが明確になっているので、スタッフはその範囲の中で自由に考え、行動ができ、タイムリーな対応ができるのです。

また、「やり方が分からない」「やることが分からない」ので動くことができないというスタッフも多くいます。そういったスタッフに対しては、自分で考えて仕事を見つけ出すことができるだけの力を備えさせることから始めていく必要があります。

仕事の「やり方が分からない」スタッフに対して、まず行うべきことは、どの仕事の、どの部分が分からないのかを、1つずつ確認していくことです。

この手のスタッフは、新人教育を受けた際に、しっかりと業務手順を習得しておらず、あやふやな状態のまま放置してしまっているケースが多いのです。また、「やることが分からない」スタッフに対しては、時間が空いた際にする仕事をリストアップしておき、どういうときに、何をすればよいのかを具体的に教えていくとよいでしょう。

まずは、自分で考えて行動できるように基礎教育を徹底して行う。その後は、自分の意思のもとに自由に考えて動いてもよいとする範囲を定めることで、「指示待ち族」スタッフが、自分で考え、行動する「できるスタッフ」に変わります。

03各自の役割を明確にする

スタッフに仕事を任せる際、各自の役割を明確に伝えることが大切です。重要な仕事の場合はもちろんですが、例えば、切れた電球を交換する、備品の文具を購入する……といったこまごまとした雑務についても、各スタッフが担う役割を明確にしておく必要があります。

なぜなら、大きな組織では、総務部や庶務課という部門があり、雑務を一手に引き受けてくれますが、小さな店や事業所においては、そういったこまごまとしたことを経営者、マネージャーが行う、もしくは、一部の限られた人にしわ寄せがきてしまうというケースが多々あるからです。

雑務の一つ一つの項目に関しては、それほど時間も労力も要しないことばかりです。でも、「塵も積もれば山となる」がごとしで、雑務をこなしている時間を年間トータルで考えると、ばかにできないほどの時間を費やすことになっているものです。

そう考えると、経営者、マネージャーが雑務を引き受けることになっていたとしたら、自分自身の本来やるべき仕事にも少なからず影響が出てきます。文具の購入などであれば、休憩で外出するスタッフに、「ついでに赤ペンと消しゴムを買ってきて」とお願いすれば済むのでしょうが、私としては本来であれば、そういった指示も経営者、マネージャーが自ら行うべきではないと考えます。

また、一部のよく気がつくスタッフが自発的に雑務を引き受けることになっていた場合、初めのうちはあまり気にならないのですが、それが続くと負担に感じるようになり、徐々に不満が蓄積されていきます。そのため、一見すると重要ではない細かな業務においても、各スタッフへの割り振りをしっかりと行い、各自の役割を明確にしていくことが必要なのです。

その際、誰が、何を、いつ、どのように実施するのかがパッと見て分かるように、担当者と任せる業務を載せた一覧表を作成し、事務所の目立つ場所に張り出して、作業完了後に各自で完了のサインができるようにしておきます。

その後は、実施漏れやチェック漏れ、もしくは、実際にはやっていないのに完了したことにするなどの虚偽の報告がなされないよう、定期的に確認することも大切です。

04報・連・相ツールを使う

任せる内容を伝えたり、任せたことについての報告を受けたりする際、口頭ですべてを行うとなると、膨大な時間と手間が掛かります。そういうときは、マネジメントツールを活用すると、正確かつ、スピーディに情報の伝達が行えます。

店の中には、日報、連絡ノート、作業指示書などさまざまなマネジメントツールが存在していますが、よくあるのが以下のようなケースです。

・ツールは準備されているけれども、現場のスタッフが誰も活用しない「名ばかりツール」になっている。

・スタッフが任せた仕事の完了報告や進捗報告をした際、誰も目を通さずファイリングされてしまい、最終的に報告書が紙ごみとなっている

・マネジメントツールに書き込む項目が多くあるため、記入するのに時間がかかり、営業や接客よりも書類作成が優先されている。

このような状態だと、マネジメントツールがあることによるデメリットの方が大きくなってしまいます。しかし、ツールをうまく活用すれば、店内マネジメントやコミュニケーションを充実させるのに大いに役立ち、仕事を任せていく上での強力な武器となります。

マネジメントツールを上手に活用するためのポイントは、以下の3つです。

  • 思ったときにすぐに使える(書き込める)
  • 書き込むのに時間がかからない
  • いつも目につくところに保管(設置)されている

もし、あなたの店でマネジメントツールが有名無実なものになってしまっているとしたら、右記のポイントが押さえられていないのかもしれません。それではここで、マネジメントツールを活用することで、スタッフに仕事を上手に任せている事例を紹介しましょう。

大阪で手作りアロマ石鹸とバスアイテムを輸入・販売しているステンダース・ジャパン(谷本瑞絵さん経営)では、「オールインワン・マネジメントシート」と呼ぶツールを活用して、スタッフに任せる仕事内容、連絡事項の伝達、スタッフからの報告を一元管理しています。

店にあるマネジメントツールには、日報、連絡ノート、作業指示書など、さまざまなツールが存在しています。ただ、多種のツールを使うとなると、現場のスタッフがツールの使い方を理解できず混乱しますし、すべてのツールへ必要な情報を記入していくとなると、膨大な時間がかかってしまいます。そのため、谷本さんの店では、それらすべてを1枚のシートに集約しているのです。

「オールインワン・マネジメントシート」の使い方

①「作業指示書」としての機能と使い方店で一般に使われている作業指示書は、業務項目だけが一覧表としてリストアップされているものが多く、シート自体がパウチされ、事務所の壁などに貼り付けて使用されているケースが大半です。

しかし、現場でこの作業指示書がきちんと活用されているケースは、ほとんどありません。なぜなら、新人スタッフであれば、仕事の流れが頭の中に入っていないので指示書を見ながら仕事をすることになります。

でも、ある程度慣れてくると、やるべきことが頭に入ってしまうので、指示書を見なくとも作業ができるようになります。すると、今度は勝手に仕事の流れを作って行動するようになり、結果として、面倒な仕事が省かれたり、後回しにされたりすることになります。

谷本さんが活用している「オールインワン・マネジメントシート」は、曜日ごとに違う指示内容が記載されているので、毎日やるべきことが異なります。

つまり、シートを確認して仕事を進めることが必要となるので、我流に走ることがなくなります。また、時間帯ごとにもやるべきことが指示されていますので、入社間もないスタッフであっても、何をしたらいいのか分からずに困るということがありません。こうすることで、生産性はぐっとアップします。

②「報・連・相ツール」としての機能と使い方報・連・相を行う際に手間が掛かってしまうと、そのこと自体がおっくうになるので、店内のコミュニケーションが希薄化してしまいます。

そのため、できるだけスピーディに、また簡単に使える情報伝達ツールが必要となります。ステンダースの店では、「オールインワン・マネジメントシート」を、スタッフが売場で待機しているカウンターの上に常時設置しています。

皆の目につく場所に置かれているので、思いついたときに、その場ですぐに記入することができます。そうすることで、報・連・相が活発に行われるようになるのです。実際、谷本さんの店では、このツールを介して、新人スタッフへの声掛けや、シフトの関係でなかなか顔を合わせる機会のないスタッフ同士がうまく情報共有をすることができるようになり、店内のコミュニケーションが充実してきています。

05最後は責任を取ると伝える

仕事を任せられると、「うまくできなかったらどうしよう……」と思い、失敗したときのリスクのことを考えてしまう人が多いようです。失敗することに対して、不安をまったく感じない人は多くはありません。

そして、その気持ちが大きければ大きいほど、行動量は少なくなり、いつもの力が発揮できず、良い結果を出すことができなくなってしまいます。

また、スタッフが実際にミスを犯した場合に、「あなたに任せたことなのだから、ミスしたことは自分で責任を持って解決してもらわないと困る」などと言い、一度でも知らんふりをするようなことがあったとしたら、次に仕事を任せようとした際に、そのスタッフは快く引き受けてくれなくなってしまいます。

そうならないためには、経営者やマネージャーが「最後は自分が責任を取るので、思い切ってやってみなさい」と、任せる際に同時に伝えておくことが必要です。

そうすることで、たとえ今まで担ったことのない、大きな責任を伴う仕事を任せられたとしても、スタッフの気持ちはぐっと軽くなり、「そう言ってくれるのなら、大変かもしれないけれど、頑張って挑戦してみよう!」と思えるようになります。

そして、いつも以上の実力を出して業務に取り組むことができるようにもなれるのです。サントリーの創業者である鳥井信治郎氏は、新しいことを提案してくる部下に対して、事あるごとに「やってみなはれ」と言い、挑戦することを奨励し続けたと聞きます。

この言葉の裏には、「挑戦してうまくいかなかったら次の手を打てばいいし、それでも駄目なら、最後は経営者である自分が責任を取ればいい。だから、思い切って行動してみなさい」という思いが隠れていると私は捉えています。

その言葉に背中を押されたサントリーの社員たちは、次々に新しい分野に触手を伸ばしていき、結果、日本を代表する総合食品メーカーの一つになるまで、会社を成長させることができたことは周知の事実です。

「最後は自分が責任を取るので、思い切ってやってみなさい」この言葉は、仕事を任せる際にスタッフに勇気を与え、行動を促進する、魔法のフレーズです。

あなたの店のスタッフが、抱えている仕事に対してプレッシャーを感じ、行動が停滞し、思ったような結果を出せていないなと感じたときには、ぜひお試しいただければと思います。

3任せた後のコツ

01「任せて任さず」を徹底する

「あなたに任せた」と言って、後は知らんふり。そして、結果が思ったようになっていないと不機嫌になる。そんなことをしていると、スタッフは大きなストレスを抱えてしまいます。

スタッフに仕事を任せたとしても、仕事の進捗状況、途中経過についての報告は常に受けるようにしておき、現状把握に努めるのはとても重要なことなのです。

仕事を任せられたスタッフは、成し遂げるために努めようとしますが、その過程で壁にぶち当たり、身動きが取れない状況になることも少なくありません。

また、任せたきりになっていると、間違った方向にどんどん進んでいたとしても、スタッフはそれに気づくことはできません。

私が、以前勤務していたアパレル専門店チェーンで地区統括マネージャーをしていた頃、担当店の店頭ディスプレイが、まったく魅力を感じないお粗末なものになっていたことがありました。

いつもは他店の模範となるような素敵なディスプレイをしているのに、その日に限ってどうしてそういう状態になっているのか?理由を店長に尋ねました。

すると、そのディスプレイは入社して数ヵ月しか経っていない新人スタッフが担当したからだという答えが返ってきました。

店の顔ともいえる場所でのディスプレイですから、センスのないコーディネートで着せ付けられていると入店客は激減します。

そのため、その場で変更を指示することにしました。でも、店長はすぐに首を縦に振りませんでした。店長いわく、ディスプレイを完成させるのに時間をかけ、苦労をした新人スタッフの気持ちを考えると、今すぐ変更を指示することはできないというのです。

確かに店長の言うことも一理あります。でも、売上を大きく左右する場所のディスプレイがあまりにも魅力に欠けるものである以上、早急に変更するのは当然でしたので、その場はなんとか店長に納得してもらい、渋々ですが変更することになりました。

ここでの店長の間違いは、たとえ任せたことであったとしても、明らかにおかしいと思えることに対して、スタッフが仕事を完了する前の段階で、正しいことを示すアドバイスができずにいたということです。自分が行動したことに対して、自ら間違いに気づかせて学習させるという育て方もありますが、重要な部分で間違えているのを放置していると、取り返しのつかない事態になる可能性もあります。

また、スタッフによっては、自分の間違いに永久に気づかない人もいますので、そういう場合は、結果として人材育成にもならないわけです。任せたことを放置していてはいけないのです。

経営の神様と言われる松下幸之助氏は、「任せて任さず」という言葉を残しています。その言葉通り、任せた後はしっかりとコミュニケーションを取り、おかしいと思ったことに対しては、間違いをきちんと指摘し、修正していくことが必要です。

その際、「せっかく頑張っているのだから、もう少し様子を見てからにしよう」とか、「こんなことを言うと、やる気を削いでしまうのではないか……」などと考えて気をつかい、放置することはやめましょう。スタッフに〝心づかい〟をすることは大切ですが、気をつかう必要はありません。

02我慢して任せる

任せた仕事の途中経過の報告を聞いたときに、自分が思い描いている状況になっておらず、やり方も自分の方法とは異なるものであった場合、口や手を出してしまうという方も多いのではないでしょうか。

そのときに、あれやこれやと指示を出し、変更を言い付けることになると、せっかく責任ある仕事を任されて、やる気になっているスタッフのモチベーションが急降下してしまうことになりかねません。

上司からの指摘に対してそれに強く反発し、自分のやり方を突き通そうとするスタッフは少数派です。大半は自分の考えを仕方なく曲げて、上司に言われたように軌道修正を行うことになってしまいます。

そうすると、本来は任されたはずの仕事なのに、実際には指示に従って、「作業」をするだけとなってしまいます。これでは、スタッフの成長は見込めません。

スタッフに仕事を任せた後は、たとえ、進捗状況が自分の理想とは懸け離れている状況になっていたとしても、大きなブレや完全なる間違い、損失を被るような重大な事態になっていないのであれば、口や手を出したいという気持ちをぐっとこらえて、まずは、スタッフが思ったとおりにやり遂げさせましょう。

私がセブン‐イレブンのFC店を経営していた頃、開業当初からスタッフに発注を任せるようにしていたのですが、当初は彼、彼女たちが一通り終えた発注を毎回見直し、自分の考えと違う発注がされていたときには、その場で上書きを行い、発注の修正をしていました。

そのやり方をしばらく続けていたところ、スタッフは、「どうせ自分が発注しても後でオーナーが書き換えるのだから……」と考えるようになり、真剣に取り組まなくなってしまいました。

その結果、2500品目におよぶアイテムの発注を実質、私一人でこなさなければならなくなりました。もちろん、そうなると適正な発注を行うことができなくなるので、売上も低下し、発注ミスによる商品廃棄ロスが増加し、一気に経営不振に陥ってしまいました。

その後は、もう一度、発注分担の体制を仕切り直すことにし、担当者には、その部門の商品売上、荒利益管理、在庫管理、鮮度管理、売場づくりのすべてを任せきることにしました。

その際、途中でのアドバイスや相談には乗りましたが、あれこれ口出しすることは控え、担当者の行動を見守ることにしたのです。結果として、スタッフのモチベーションはアップし、業績も徐々に上向いていきました。

自分と同じような考えを持ち、同じように行動する人物は、この世の中にほとんど存在していません。自分と他人(スタッフ)は別の人物であり、任せる相手に対して自分のコピーとなることを求めてはいけないのです。

スタッフに仕事を任せる際には、目的とすることがブレていないのであれば、そこに到達するまでの道筋に関しては、各自の考えのもと、自由に選ばせることをお勧めします。

山登りもそうですが、頂上に到達するための登山コースは複数あるものです。その選択に関しては、スタッフに一任するべきです。

03任せることを定期的に変える

「慣れ、だれ、崩れ、去れ」は、劇団四季の浅利慶太氏の言葉です。同じことを長く続けていると慣れてきて、だれが生じ、最後には崩れてしまう、という意味です。

さらに、劇団四季ではそういう状態になった劇団員に対して、最後は「去れ」と言い渡すことになります。そういった厳しい考えのもと、劇団運営がなされているからこそ、「キャッツ」や「ライオンキング」「オペラ座の怪人」など、数多くのロングラン公演を実現し、日本一の劇団に仕立て上げることができたのではないかと私は考えます。

これは、店の現場にも通じる話です。同じ仕事を何ヵ月も続けていると、仕事には慣れてきますが、その後は慣れを通り越してだれてきて、我流で仕事を進めがちになってしまいます。

仕事のやり方が我流になると、本来やってほしい業務が勝手に省略され、放置されることになります。また、現状に慣れてしまうと問題点に気づきづらくなり、改善点も見出されなくなってしまいます。

新しい刺激がなければマンネリ状態になり、やる気も低下します。そうなると、任せた仕事もきちんとこなせなくなりますので、結果として店の業績は低迷してしまいます。スタッフの「慣れ、だれ、崩れ」を防ぐ一つの方法は、任せる仕事を定期的に変えることが効果的です。

例えば、私が経営していたセブン‐イレブンの店では、弁当部門の発注担当者を牛乳・パックジュース部門の担当へ、牛乳・パックジュース部門の担当者をカップラーメン部門の担当にするなど、半年ごとに発注担当の部門を変えていました。

新任担当者は、新しく扱う商品がどの程度売れるのかなどの先入観を持っていないので、前任者にはない思い切った数の発注をすることもあり、それが、うまくヒットし、大きく売上を伸ばすことにつながる場合も多々ありました。

また、担当者が変われば、売場の陳列や販促POPの書体なども変わります。売場の雰囲気が変われば、お客様にも新鮮に映りますので、売上もグンとアップすることになります。

実際、下の方に陳列していた商品の陳列場所を、新しい担当者が少し上の棚に置き換えたことにより、ヒット商品になったというケースも多いのです。

また、担当する売場や商品が変わると、スタッフは初心に戻って新鮮な目で売場を見ることができるので、前任担当者では気づけなかった問題点、やり方を発見することができます。

これは業務改善にもつながり、同時に作業効率も良くなります。任せる仕事を定期的に変えることで、「慣れ、だれ、崩れ」を防ぐのと同時に、店の業績とスタッフのモチベーションが上がります。

04報告を鵜呑みにしない

スタッフに仕事を任せた後で、さまざまな報告を受けることがありますが、それらがすべて事実に正確な情報とは限りません。

私の経営していたセブン‐イレブンの店で、早朝の時間帯のマネジメントを任せていたシフトリーダーから、Aさん(女性スタッフ)の勤務態度が良くないので、オーナーから注意してほしいという申し出を受けたことがありました。

Aさんについては、どんな人物なのかということはよく知っていましたが、そこで聞いた内容があまりにも酷いことばかりだったので、にわかに信じることはできませんでした。

そこで、報告をしてきたシフトリーダー以外のメンバーにAさんのことをそれとなく尋ねてみたところ、報告内容の一部は事実でしたが、それ以外のことは、かなり歪曲報告されていることが分かりました。

それでも、「本当のところはどうなのか?」ということが知りたかったので、早朝シフトの時間帯に抜き打ちで店に行き、現状を自分の目で確認することにしました。

すると、やはり最初に聞いた話と事実には大きな乖離があることが分かったのです。なぜ、こうしたことが起こるのでしょうか。

それは、報告されたことに、そのスタッフの主観が入るからなのです。例えば、Aさんのことをあまり快く思っていないスタッフからの報告となると、その感情を通してAさんの報告がなされるわけです。

人は、先入観のフィルターを通して物事を見聞きし、理解しようとします。ですから、スタッフからの報告も、すべてを鵜呑みにしてはいけないのです。

もちろん、スタッフの話をすべて信じてはいけないということではありません。一次情報を取ること、つまり、自身の目と耳と体を使って、現場で真実を確認することも忘れてはいけないということなのです。

もし、それが難しいのであれば、できるだけ多くの人から話を聞き、情報を集めることが必要です。

事実ではないことを元に、注意をしたり、叱責したりするようなことがあれば、本人としては納得がいかず、快く思わないでしょう。

また、それが元でスタッフとの信頼関係が崩れてしまうこともあり得ます。実のところ、私も以前はそういう失態を繰り返していた時期もありました。

もし、あなたの店でそういったことがあったとしたら、私の二の舞いにならぬよう、事実を自分で確認することに努めてください。

05ゴールイメージを一つにする

仕事を任せた際、その仕事の出来栄えが納得できるレベルにまで達していないというケースも、時にはあるでしょう。

私自身、セブン‐イレブンの店を経営していた頃、スタッフから任せた業務の完了報告を受け、それを現場で確認した際、「もうちょっと丁寧にやってくれたらいいのに……」とか、「なぜ、ここまでやらないのだろう?」などと感じることが多々ありました。

もちろん人にもよりますが、私の経験からすると、スタッフが任された仕事をする上で手を抜き、いい加減な気持ちで業務に取り組むようなことはほとんどありません。

むしろ、一生懸命に仕事をしている場合の方が多いのです。それにもかかわらず、結果は、われわれからすると不足な部分が目立つことが多いのはなぜでしょうか?

それは、お互いが持っている「完成型(ゴール)のイメージ」にズレがあるからなのです。スタッフが「ここまでやればいい」と思っているゴールと、経営者やマネージャーが「ここまでやってほしい」と思っていることが異なるのです。

このような認識のズレが生じてしまうと、スタッフとしては「せっかく一生懸命にやったのに、文句ばかり言われて心外だ!」と憤慨しますし、任せた方としては、「どうして指示したことができないのか!」という具合に、お互いにストレスを抱え、わだかまりを持つことになります。

以前、家事の生産性向上のアドバイザーの方とお話をしたとき、片付けが苦手な子供に部屋をきちんと片付けさせるための方法を聞きました。

そこでのポイントは、「親と子が共通のゴールをつくる」ことでした。具体的には、きちんと片付いているときの部屋の写真を撮り、それを共通のゴールとしてお互いに認識し、写真と同じ状態になるように片付けさせるというものでした。

「部屋をきちんと片付けなさい」といくら言い聞かせても、親が考えている片付いた部屋のイメージと、子供が抱いているそれとが、別ものである場合が多いのです。

各自が持つゴールイメージを一つにするため、きちんと片付いた部屋とはどういうものかについて、お互いに同じ写真を見て確認し合うのです。

これは、家庭での子供のしつけだけではなく、店でも応用することができます。実際、アパレル専門店チェーンなどでは、売場のレイアウト指示書や陳列指示書として売場の完成型の写真を店舗に配布し、売場づくりを行っています。

完成した状態をビジュアルで見せることで、現場では迷うことなく、本部が理想とする売場を再現することが可能となります。こういった指示書がないと、スタッフが好き勝手に売場をつくることになりますので、本部の意図が店に反映されなくなってしまいます。

何度言ってもスタッフが分かってくれない、うまく任せられないという場合は、スタッフとのゴールイメージにズレが生じている可能性があります。

そういうときは、言葉で伝えるだけでなく、完成型をビジュアルで見せて、お互いのゴールイメージを一つにしていくことが必要です。

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