1アルバイト戦力化の必要性
正社員は店長一人……残りはパート、アルバイトでまわっている店舗は世の中にたくさんあります。人材不足がひどい会社では、数店舗に正社員の店長が一人いるだけというところもよく聞く話です。
人材の補充を懇願しても、なかなか会社が対応してくれない。気がつくと人も辞めていってしまう。そして、また自分の仕事が増えていく……。そんな苦しい日々を過ごしている人も多いのではないでしょうか。
その苦しさを解決するのには何が必要でしょうか。おそらく人が欲しいはずです。それもできたら社員が欲しいと思います。同じ立場で働いてくれる仲間の存在は、確実にあなたの力になることは間違いないでしょう。
しかし、今のあなたに本当に必要なことは別にあります。それは、あなたの欲しい人材ではなく、今いる人材を活かす技術なのです。人が来ればどうにかなるのではなく、今いる人をどうにかすることを考えなくてはいけないのです。
忙しいあなたの場合、人に教えることもままならない状況。ましてや、スタッフのモチベーションの管理などなかなかできないでしょう。この状況では、新しい人が来たところで、おそらく環境は変わらないでしょう。
もし超優秀な新入社員が来てくれれば、状況は変わるかもしれません。しかし、その可能に賭けている余裕はないはずです。
そこで確実な解決方法が、今いる人材、つまりパートやアルバイトを戦力化することです。つまり、仕事を任せる技術を身につけることなのです。
実際に、飲食業、アパレル業、サービス業、製造業などはもちろんのこと、高級ブランドの販売員も、IT業界では重要なニュース配信担当やエンジニアも、アルバイトが担当していることは珍しくありません。あのディズニーランドも9割がアルバイトであるということは、ご存知の方も多いと思います。
ユーザーの立場だと気づかないことが多いですが、中に入ると非常に重要な業務もアルバイトに任されていることに驚くことが多いのです。
別に有名企業だからとか、ディズニーだから優秀なアルバイトが育っているというわけではありません。共通するのは、アルバイトに仕事を任せようとする意思と仕組みなのです。
2013年の総務省のデータでは、非正規雇用者数が初めて2000万人を超えて、正規雇用者数との人数比率も38%を超えました。3人に1人が非正規雇用者ということになります。良くも悪くも、アルバイトなしに企業活動の継続が難しくなっているのが現状なのです。
しかも、これからは少子化によって、アルバイトの人材不足も始まっています。ある牛丼チェーン店では、アルバイト不足が原因で、多くの店舗で営業ができない状況となって大きなニュースとなりました。
かたや、讃岐うどんのチェーンを展開する会社では、驚くことにパートを店長に抜擢し始めました。ここ4年で800店舗近い全店長をパートに切り替える予定です。
前述の牛丼チェーンのアルバイト不足の原因は、アルバイトの労働条件だと言われています。特に深夜のワンオペと呼ばれる一人運営はネット上では激しく批判されています。
私はそのお店でアルバイトをしたことがないので、どこまでが事実なのかはわかりませんが、アルバイト不足で店舗が閉店したという事実を考慮すると、閉店店舗に限っては、アルバイトが辞めたくなる環境だったのではないかと思います。
かたやうどんチェーンでも、パートを全店舗で店長化するといいます。店長になるということは、少なからず体力的にも、精神的にも負担が大きくなることは間違いないでしょう。
責任が増えていくことに不平不満を言うパートもいるかもしれません。しかし、それをやりがいと感じる人たちで順調に進んでいるようです。
この2社の違いは何でしょうか?おそらく、大きな違いは任せる内容が似て非なるものだったということでしょう。具体的には、ただ作業を任せるだけか、それとも責任を預けるか、の違いだと私は思います。
責任を預けることとは、作業も増えますが、同時にやりがいも増えるのです。責任を預けてはじめて人は成長します。そういう意味では、私は責任のあることをどんどんアルバイトやパートに任せることに賛成です。
不平不満が出てくる多くの場合、責任という名の作業だけが増えているのです。ここに注意しなくてはいけません。その成果に合わせて、報酬や待遇を変えていくことは当然必要です。
それ以上に必要なのが、預ける側の考え方や伝え方です。コストの効率化で仕事を任せるのか、相手のやりがいを思って仕事を任せるかで、受け手の印象は180度変わるのです。
やりがいを感じる意識の高い人にとっては、これらの責任はお金以上の大きな報酬になるものです。これが、仕事を任せる技術の違いなのです。技術と聞くと難しそうですが、ちょっとした心構えのようなもので、誰にでもできることなのです。
例えば、福岡を中心に40店舗のスーパーを運営するハローデイをご存知でしょうか?実際にここでは、新商品の開発や店内装飾、社内イベントの企画や運営など、パートに重要な仕事を積極的に任せています。
それを負担と感じるどころか、やりがいを感じてもらうことができ、圧倒的な離職率の減少に一役買っているのです。雇用の流れは非正規化の流れのほうが、まだまだ強いのは間違いありません。
少なくとも、本書を手にとってくれたあなたの環境は、こちらに近いのではないでしょうか?世の中の3分の1の人が非正規雇用である事実。
あなたの日常生活の中で、彼らに支えられていることは、あなたが思っている以上に大きいのです。まずは、この事実を認識してもらえれば、アルバイト・マネジメントの必要性を感じてもらえることでしょう。彼らを大切にし、辞めない環境をつくることが必要なのです。
Makethemostofyourstaff0-2アルバイトに仕事を任せるための心構え
先の牛丼チェーンの問題から、もう1つ見えてくるものがあります。チェーン店全国2000店舗のうち、閉店店舗が184店舗であるという事実です。つまり、閉店する店舗もあれば、元気に営業をやっている店舗もあるということです。
おそらく、チェーン店の中でも、アルバイトも社員も楽しく働いている店舗が存在していると私は思うのです。この違いが、店長のマネジメント能力の差であるということなのです。
同じチェーンであれば、時給や労働時間などは大きな違いがありません。大きく違うのは、店長のアルバイトに仕事を任せる技術です。
技術というと難しそうですが、私が思うのは、仕事の頼み方、伝え方、心遣いなど、相手の立場に立った気遣いをベースに、仕事を任せるちょっとしたコツだと思うのです。ただ、この気遣いが大きな違いとなって仕事環境が変わります。
決して難しいマネジメントではなく、忙しいあなたでも、ちょっとした気遣いでできるものです。そして、あなたにしかできなかった業務を、少しずつアルバイトやパートに任せていくのです。
現在、私は株式会社グッドウェーブプロモーションという会社の役員です。企業のセールスプロモーションにおけるイベントやキャンペーンの制作・運営を行うイベント会社です。
電通、ADKをはじめとする大手代理店から、コカ・コーラ、ゼスプリ、バンダイナムコ、ベネッセ、伊藤園など多数の企業が行うイベントやキャンペーンで働くスタッフの人材派遣もさせていただき、年間で1万8000人以上のアルバイトスタッフの管理もしています。
そして、その仕事の特徴となっているのが、まさにアルバイトに仕事を任せるということなのです。一日100名以上のアルバイトが働くようなイベント会社らしい仕事から、長期的に店舗を運営するような店舗経営の仕事まで様々です。ただ、どの仕事でも欠かせないのが、ディレクターと呼ばれるアルバイトリーダーの仕事です。
ディレクターと呼ばれる彼らは、アルバイトという立場でありながら、我々社員に変わって同じアルバイトを管理し、マネジメントをしていくのが仕事なのです。
その仕事ぶりは、正社員との違いなどまったく感じることはありません。具体的な例で言うと、バンダイナムコさんの仕事がわかりやすいかもしれません。現在、北は北海道から、南は九州までの全国各地の商業施設でキャラクターショップの運営をさせてもらっています。
そこで彼らは、ディレクターという立場で、接客はもちろん、スタッフの休憩管理から、金銭管理、商業施設との渉外など、一般的には店長と変わらない仕事をしてくれています。
派遣法や請負における指示系統の範囲内になりますが、まさにアルバイトに店長を任せているようなものです。彼らがはじめから仕事ができたかというと、当然そんなことはありません。
社会人経験のない若者が、少しずつ仕事を任され、成長してくれたのです。アルバイトに仕事を任せることに不安を感じる人も多いでしょう。当然だと思います。でも想像してみてください。
しっかりしたアルバイトやパートに仕事を任せるのと、新入社員に仕事を任せることを想像すると、当然前者のアルバイトに仕事を任せたくなると思います。
要は肩書きや立場でなく、誰に仕事を任せたいかが重要だということです。そして、誰に仕事を任せるのでも、結局リスクは伴うのです。
そして、このリスクを取らないとあなたの忙しく、大変な環境は変わらないのです。周りに任せられる人がいないのであれば、育てなくてはいけません。
最小限のリスクで彼らを効率的に成長させることが、アルバイト・マネジメントになるのです。そもそも、社員だからとかアルバイトだからとか、その発想がナンセンスです。
相手を所詮アルバイトだからと考えれば、当然彼らも自分は所詮アルバイトだからと考えます。相手をアルバイトだろうが社員だろうが、社会人として一緒だと考えれば、彼らも社会人としての努力をするだけの話です。
つまり、教える側の考えがすべて伝わるのです。言い換えれば、もしあなたの周りのアルバイトやパートが育っていないのであれば、それはあなたの責任なのです。
才能を活かすも殺すも上司次第。人を扱うからには、必ず心の中に刻み込まなくてはいけない事実です。まだ若い方には、この考え方は、少し難しいかもしれません。
でも、安心して欲しいのですが、これを書いている私も、そんな風には簡単に思えませんでした。というよりも、今でもそんなことができているわけではありません。
重要なのは、部下の仕事でも、アルバイトの仕事でも、うまくいかないときには、まずは自分の責任だと考えるようにするということです。
納得できようができまいが、まずは冷静に自分の責任として考えてみるのです。実際、肩書きが大きくなるほど感じてくることですが、自分のやったこと以外で人に頭を下げる場合が増えてきます。
部下の謝罪に行くこともあるでしょう。店長などの肩書きを持っている人であれば、お客様に謝罪をすることもあるはずです。それを部下の責任として考えるか、仕事を任せて、管理している自分の責任として捉えるか?どちらが良いかは明白です。
Makethemostofyourstaff0-330歳までのフリーター時代と就職後の変化
そもそも、偉そうなことを言っている私も、実は30歳までフリーターでした。色々な会社でアルバイトをしてきた私の経験上、アルバイトが働く環境は今も昔も厳しいのが実情です。
まだまだ使い捨てにする企業も多いのです。悔しい思いも正直たくさんしました。ただ、今となって思うのが、おそらく、人を使い捨てにしてやろうという悪意ある企業が多かったわけではないということです。
会社や担当者が忙しくて、環境改善をする余裕がないのです。問題を認識しても、そのまま後回し。結果として、アルバイトも辞めていくという負のスパイラルになってしまっているだけなのです。
正社員として入社してからは、私もまさにみなさんと同じ悩みに苦しめられました。とにかく時間がない。人手もない。プレーヤーでありながら、現場作業から社内作業、スタッフ管理まで、すべての業務をこなしました。
昔の弊社がブラック企業みたいなので、書きたくはないのですが、会社に1週間以上泊まり込むことも頻繁にありました。仕事が楽しかったので、ハードワークでも精神的には楽でしたが、それでも、これでは体がもたないと感じたものです。
そんな状況でしたので、スタッフの管理もまともにできてはいません。特に組織ができていなかった頃はひどかった。謝るのが仕事というのも過言でないくらい、よくスタッフの失敗を謝っていたものです。
正直、やっていられない、冗談じゃない、なんで自分のことじゃないのに謝らなければいけないんだと感じたものです。仕事の忙しさ以上に、こちらのほうが私にはストレスになりました。
今考えると、ここが大きなきっかけになったのかもしれません。人のやったことで謝りたくない。だから、仕事を任せず自分で仕事をしよう。それとも、仕事を任せられる人を育てるか。自分にとっては二択でした。
この2つの選択肢で後者を選んだのが、自分にとってのターニングポイントだったのかもしれません。
ただ、人を育てようと思ってからもたくさんの失敗を繰り返してきました。ここでは詳しく書くことができないような、重大な問題もありました。
アルバイトのやったことで、失ってしまった仕事の損失額は、間違いなく億単位はあります。それ以上に、お客様の信用を失ったことは大きな損失です。
積み重ねてきたお客様の信用と信頼を、取り返すことは絶対にできません。そんな失敗を繰り返し、リスクの預け方、仕事の任せ方を身につけてきたのです。当然、みなさんはそんな大きな失敗をする必要はありません。
ぜひ私の失敗や経験を活かして、現在のご自分の立場で、時間もなく人に仕事を任せることもままならないあなたに、アルバイト育成を通じてマネジメントやリーダーシップを学んでもらい、楽になってもらいたいというのが、本書の趣旨なのです。
お陰様で現在では、弊社も優秀なアルバイトとパートに支えられて、右肩上がりで成長をしています。今のお客様が弊社を選ぶ理由が、アルバイトスタッフが優秀だからというのは最高の褒め言葉です。
彼らがお客様の信用を獲得してくれるまでに変わることができたということです。ぜひ、あなたの会社でも、お店でも、優秀なアルバイトに仕事を任せて、より良い組織をつくってくれることを願っています。
本書がそのお力になれれば幸いです。
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