Chapter1アルバイトだけでまわるチームとは?
指導者を見出せ
「アルバイトだけでまわるチーム」と聞くと、アルバイトスタッフ全員が非常に高いスキルとモチベーションを備えて、一致団結している素晴らしいチームをイメージするかもしれません。
もちろん、そのようなチームが私の目指す理想のチームでもあります。チームをその状態にするには1つずつ段階を踏んでいく必要があります。
まずはじめに目指さなければならないのは、素晴らしい指導者がいるチームをつくることです。アルバイトスタッフが所属するチームやグループには、必ず彼らを管理する指導者がいます。
その指導者は社員であることがほとんどです。社員には社員の仕事があるとよく言われます。確かに高度なスキルを有する社員にしかできない仕事があるのも事実です。
しかし、アルバイトスタッフの管理が社員にしかできない仕事であるとは私は思いません。アルバイトスタッフにはできない仕事は確かに多いです。
しかし、責任という言葉にとらわれて、社員にしかできないと思い込んでいる仕事も意外と多いのです。
アルバイトスタッフの負う責任については後述しますが、アルバイトリーダーというような役職で、アルバイトスタッフ全体を管理している会社も最近非常に増えてきました。
私の会社でもディレクターと呼ばれるアルバイトスタッフが、イベント会場などで彼らを管理し、叱咤激励しつつ、アルバイト教育を行なってくれています。
熱意を持って、現場スタッフを教育してくれる姿に、社員とアルバイトの違いを感じることはまったくありません。
「アルバイトだけでまわるチームをつくる」には、アルバイトスタッフ全員に対して教育をするのではなく、優秀なアルバイトスタッフの指導者を育てていかなければなりません。
◆優秀な指導者とは
そもそも指導者とはどんな役割を果たす人のことを指すのでしょうか。私もたくさんの方々に指導者の役割について教えていただきました。
それについては、様々な意見があります。そこで優秀な指導者に必要な要素のうち、私が思う重要なことを1つだけ共有させていただきます。
優秀な指導者とは、次の指導者を育てることができる人です。
みなさんも経営者や店長、部署やグループ、大小の違いはあるかもしれませんが、いずれかの組織の中で指導者的立場にいるのではないでしょうか。
みなさんのような組織の指導者には、次の指導者を育てることができるようになってほしいと思います。もちろん、みなさんが担っていることのすべてをアルバイトスタッフが担うことは不可能でしょう。
しかし、その一部や、みなさんの部下が担っていることを任せることは可能なはずです。
あまり大きく考えずに、小さな指導者をたくさん育てるイメージでよいのです。その小さな指導者は、同じ小さな指導者を育てることができるほどに、優秀なのです。その指導者たちがまとめるのが、アルバイトスタッフだけでまわるチームになります。
アルバイトスタッフ活用のメリット
そもそもアルバイトスタッフを雇用するメリットには、どんなことが挙げられるでしょうか。ここでは私が考えるメリット4点を挙げてお話ししたいと思います。
❶低コストオペレーション
アルバイトを雇うことでコストを抑えられる。最大のメリットとして誰しもが思いつくことでしょう。最近ではコスト削減のために、社員雇用を控え、アルバイト雇用を増やす企業が非常に増えています。
スーパー、コンビニ、レストラン、アパレルをはじめ、今や超一流ブランドの販売員も、実はアルバイトスタッフであることは珍しくありません。
❷ミスマッチのない正社員採用
仕事が増え会社に利益が残ってはじめて、社員雇用の機会が出てきます。ここにもアルバイト雇用の大きなメリットがあります。そのアルバイトスタッフが優秀に育てば、そのまま社員登用ができるからです。
募集や面接の費用もかからないというコスト面でのメリットもありますが、何より仕事ぶりを日頃から見ているため、ミスマッチのリスクが少ないというのが大きなメリットです。
現在、当社の幹部のほとんどがアルバイトからの登用です。一般社員もアルバイトからの登用も多く、勤続率も自然と高く、非常に良い雰囲気の社内環境になっているのが自慢でもあります。
❸教えることで社員が成長する
もちろん、社員登用ができないこともあると思います。それでも、彼らが社会に出ても通用するように、できる限りの教育をすることは大きな社会的貢献です。
相手が学生でも同じです。「学生時代にグッドウェーブプロモーションで働いて学んだことを、就職面接で話して合格しました」と言ってもらうことがあります。本当にうれしい瞬間です。
学生にとっても、フリーターにとっても、ただのアルバイトではなく、働きながら学べる場にすることが重要なのです。なぜなら、教育に力を入れると、教える側の社員やアルバイトも大きな成長をしてくれることが大きなメリットとなるからです。
人は学んだことをアウトプットするときに、それが定着します。その学びの場をたくさんつくってあげることが重要なのです。教える側も教わる側も学べる場をつくるべきです。
❹将来の仕事につながる
人脈となるみなさんはアルバイトを人脈と考えたことはありますか?経営者の方々は、アルバイトスタッフ一人一人と深くコミュニケーションをとる機会は少ないかもしれません。
しかし、アルバイトとあなどるなかれ、彼らの将来は、みなさんの将来同様に無限に広がっています。せっかく繋がった縁として大切にしていると、思わぬところで仕事に繋がることは多いものです。
私が今の会社に入って14年経ちましたが、入社当時アルバイトスタッフとして働いていた若者も、今や30代の立派なビジネスパーソンです。
アルバイト、社員、経営者などの立場に関係なく、縁を大切にしてください。打算的でも、無意識でもいいから、今の仲間との縁を大切にすることを、常にアルバイトスタッフには言い続けています。
みなさんもアルバイトスタッフとの人脈を大切にしてみてください。思わぬところでビジネスチャンスに繋がるかもしれません。
95%の仕事がキャンセルになっても倒産を免れる
前項のアルバイトスタッフを活用するメリットの1点目に、低コストであることを挙げました。しかし、非正規雇用者を使ってのコスト削減には、様々な批判があるかもしれません。
社会的に非正規雇用者を増やすのはどうなのか?私たちの仕事は社会のためになっているのか?私も自分の仕事について悩んだ時期がありました。
この悩みが一気に吹き飛んだきっかけが、3月11日の東北地方太平洋沖地震でした。東北の方々に比べれば、東京の私たちは決して被災者とは言えないことは理解しています。
しかし、我々の仕事にも震災が大きく影響しました。震災1週間で、約95%の仕事がキャンセルになったのです。正直愕然としました。
CMも自粛するくらいですから、イベントやキャンペーンを企業として実施できないのは当然でした。そこで実感したのが、非正規雇用であっても、誰かの生活を支えているということでした。
社員に関しては、いち早く当社社長が「会社にこれだけ資金があり、いつまで給料は払い続けることができる」と安心を与えてくれたのですが、それでも社員の悩みは消えません。
アルバイトスタッフの生活保障については、何もできなかったからです。申し訳ないという気持ちを、おそらく社員全員が味わったと思います。
仕事がないということで、こんなに罪悪感にかられたのは、間違いなくアルバイト、特に私の会社の仕事だけで生計を立てているフリーターがいたからだと思います。
仕事がなくて本当に申し訳なかった……。
しかし、感情をさし置いて極めて現実的な話をすると、もし当社の仕事を社員、または契約社員だけでまわしていたら倒産していたかもしれません。
極端に仕事が少ないその一方で、人件費を抑えることができたために、しばらくの間の資金繰りの目処を立てることができたからこそ、倒産を免れることができました。
さらにはアルバイトが残した実績のお陰で、4月の初旬には仕事が戻ってきたので一安心できましたが、いくつかのイベント会社が潰れたことはニュースにもなっていました。
「アルバイトだけでまわるチーム」が救いとなったのです。この時、気持ちや綺麗事だけでは人は救えないことを強く実感しました。
人を救いたければ、力とお金が絶対に必要だということです。潰れてしまっては誰も救うことはできません。「雇用の創出」は企業の社会的意義における重要な点です。
しかし、社員雇用をすることは、企業にとっては本当に大きなリスクになります。まずは、綺麗事ではなく、可能な限りリスクを減らし、最大限の利益を上げるためには、社員雇用に代わるアルバイト雇用は非常に有効的な手段だということです。利益を上げてはじめて雇用の創出が可能になるのです。
責任とリスク
「よくバイトをそんなに信頼できるよね?バイトじゃ責任とれないじゃない」と言われることがあります。そんなとき、私はこのように答えます。
「あなたの会社では、社員の肩書きがあれば責任をとれるようになるのですか?」アルバイトスタッフの負う責任について考えてみましょう。
飲食業やサービス業においては、配膳スタッフ、接客スタッフ、レジスタッフ、受付スタッフなどがアルバイトの仕事に多いようです。
これらの仕事すべてに共通すること、それはお客様と接することです。お客様は接するスタッフをそのお店や企業のスタッフとしてしか見ていません。そのスタッフが社員であろうがアルバイトであろうが関係ありません。
笑顔で素敵な接客をしてもらえれば、また行こうと思うでしょうし、無愛想で感じが悪ければこの店には二度と来ないと思うでしょう。
このように、サービス業の場合は企業のイメージを大きく左右する最前線で、アルバイトスタッフが働いていることが多くあります。
こう考えると、アルバイトスタッフの仕事には、本当に大きな責任が伴っていることになります。また、テレビ、出版、新聞、音楽、広告などクリエイティブな仕事に携わるアルバイトもたくさんあります。
大切な資料や原稿をアルバイトスタッフが預かって、誰かに届けるというのはよくある話です。その資料の価値や原稿の制作時間を考えると、大変な責任を預かったことになります。
営業、事務、工場作業、どんな職種であっても、すべてのアルバイトスタッフはとても大きな責任を背負って仕事をしていることが多いのです。
彼らの負う責任に関して重要なのは、彼ら自身がその責任の大きさを認識して仕事をしているかです。人が作業している限りミスは起きます。トラブルがゼロということはありえません。
大切なお客様が不快に思って、もう二度と来店しないかもしれない。大切なクライアントからの仕事が来なくなってしまうかもしれない。このようなことが絶対にないように、リスクを最小にする必要があります。
特に私の会社のビジネスは、人を扱っている以上、残念ながらリスクをゼロにすることはできません。しかし、それを少しでもゼロに近づける努力を、仕組みや管理体制で行うことが仕事なのです。
そこでもう一度質問をします。
最悪の事態に発展してしまった場合、「その原因が社員であれば、その仕事に対しての責任はとれるのでしょうか?」当社の場合は過去に、社員が原因でお客様にご迷惑をおかけしたことも、アルバイトが原因でご迷惑をおかけしたこともあります。
しかし、大きなトラブルになってしまった場合には、最終的な責任は、どちらにもとることはできません。過去に積み重ねてきた信用や時間、情熱、そしてたくさんの人の想いの責任は、誰にもとることができないからです。
ビジネスにおいては、最終的に金銭で解決することもあります。入ってくるはずのお金を失うだけでなく、払うことにもなりかねません。
その代金や損失金を社員やアルバイトスタッフに払ってもらう会社は、ほとんどありません。
罰金という形で制裁金を実施している会社はあるかもしれませんが、数百万、数千万と大きなものになってしまった場合には、個人にはどうにもできません。
社員とアルバイトができる責任のとり方は、ご迷惑をおかけしたお客様に対して、逃げることなく誠心誠意の謝罪と、できる限りのリカバリーをすることだけなのです。
辞めて責任をとるなんて、無責任極まりない責任のとり方です。仕事で返すしかありません。
役員である私にも本当の責任をとることはできません。唯一、金銭も含む責任をとれるのは、社長に代表されるその企業のトップだけです。
特に中小・ベンチャー企業の場合、トップの責任は重大です。
会社に何かがあったときには、彼らは家を売ってでもどうにかするというリスクさえ負っているからこその、社長という立場なのです。
そのような意味で、責任とリスクを考えてみると、本当にそのポジションは社員ではないと務まらないのかが見えてきます。
重要なのは、社員、アルバイトという肩書きではなく、任せる相手が信頼できる人間かどうかということです。
信頼できるアルバイトスタッフがいれば、社員だから、アルバイトだからということではなく「〇〇さんだから」となることでしょう。
ただし、注意しなければならないことがあります。それは、社外的な見え方です。
我々の場合も、クライアントに安心を与えるために社員がフォローすることがあります。
関係性が整うまでは社員が必要な場合もあるのです。キーワードは「安心感」です。
お客様やクライアントに対して、アルバイトという肩書きが安心感を与える妨げになる場合は、そのポジションはアルバイトでない方が良いでしょう。
お客様やクライアントに安心を与えることは最優先に考えなくてはなりません。理想のアルバイト像ここで、私が思う理想のアルバイト像をみなさんと共有しておきたいと思います。
私が今の会社に入ったとき、当時のアルバイトの質は、恥ずかしくてここではお話しできるようなものではありませんでした。
一部のスタッフは頑張ってくれていたものの、プロ意識のカケラもなく、茶髪にボサボサ頭は当たり前で身だしなみは最悪、笑顔もつくれず勤務態度も最悪、そんなアルバイトスタッフがたくさんいました。
しかし、その原因は明白でした。社員の質が悪かったのです。
当時、よくある風景として、アルバイトとの電話を切った社員から出てくる一言、「なんだよ、こいつ。むかつくな!」「こいつアホなのか?」出てくる言葉は、毎日毎日アルバイトの悪口ばかりでした。
当時、つい最近までアルバイトの立場だった私にとっては、自分のことを言われているようで、毎日フラストレーションがたまるばかりでした。
そして入社2ヶ月も経たずして、早くも爆発してしまったのです。
「いい加減にしろ!アルバイトが駄目なのは、お前らが駄目だからだろ!」完全にキレてしまいました。
あの時の言い方は、本当に反省していますが、しかし、これを機会に私たちがやらなくてはいけないことが見えた瞬間でもありました。
全社をあげてアルバイトスタッフの質の向上を目標に掲げ、それを通して社員自身も自己成長を遂げるよう意識が向き始めたのです。
そして、結果はすぐに現れました。
そこに顕著に気づくことのできた機会が、飲み会の場でした。
当時は、アルバイトスタッフとも飲みにいくことが多かったのですが、彼らが居酒屋で話す話の内容が明らかに変わっていったのです。
以前は、仕事の話などほとんどなく愚痴ばかりだったのですが、徐々に仕事の話が増え、最終的には仕事の話しかしなくなったのです。
彼らが、自分の仕事について熱く語り合っている姿を見て、私の求めるアルバイト像はこれだと感じました。
これは社員でも一緒だと思います。
時間の切り売りと言われるアルバイトスタッフに、プライベートでも仕事について考えてもらえるように、彼らのモチベーションを大切にしたい、そしてそんな姿こそが私の求めるアルバイト像だと感じたのです。
「アルバイトだけでまわるチーム」をつくる手順
ここで「アルバイトだけでまわるチーム」のつくりかたの流れを記しておきます。
それぞれに関して、次章から具体的に述べていこうと思います。
●スタッフ全員がモチベーション高く、一生懸命働くチームを目標に掲げる
↓
●優秀な人材を見極める面接・研修
↓
●選抜した優秀な人材への集中的な教育
↓
●勤務の様子を見ながら、さらなる教育と選抜、同時にアルバイトスタッフが働きやすい環境づくり
↓
●信頼に足る人材に、社員だけに任せてきた大きな責任を伴う
仕事を任せ、アルバイトだけのチームがある場合はそのリーダーに任命、教育・環境づくり、人材選抜にも参加させる以上を繰り返して、能力の底上げを図りましょう。
ある程度のところで、すべての工程をアルバイトスタッフに一任します。
かなり大まかな説明ですが、最終的には自分が行なっている人材教育を、すべて一任するイメージをはっきりともって実行することが必要になります。
全行程を任せるつもりで準備をすることで、今やるべきことが見えてきます。
まずは、効果的な教育をするために、優秀な人材を見極め選抜してください。アルバイトスタッフの能力の底上げのためには、社員の教育以上に時間がかかります。
ですから、成長した優秀なアルバイトスタッフに任せて進めましょう。成長したアルバイトスタッフが増えれば増えるほど、全体的な能力の底上げのスピードも加速します。
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