01ホスピタリティを伝えるために必要な7つのスキル
ホームパーティを開くとしたら?
ホスピタリティに必要なスキルとは何でしょうか。あなたがホームパーティを開いたときのことを想像してみると、その答えが見えてきます。
まず、ホームパーティを成功させるための2つの前提条件をクリアしておくことが必要です。ひとつは、どういったお客様が何人いらっしゃるのかを、家族全員に知らせておくことです。
家族全員に知らせておけば、子どもが対応するにしても、「吉田さんですね、父から聞いております」ときちんと挨拶をすることもできるし、お客様も「私のことを知ってるんだな」と好印象をもたれるはずです。
たとえば、職場でお客様を迎えるときでも、それこそ受付も含めて職場の全員が知っていれば、職場のスタッフ全員で温かくお迎えすることができます。
お客様にしても、会う約束をした人物以外から挨拶をされればうれしいものです。逆に、「誰、この人?」みたいな対応をされれば、イヤな印象が残ります。
もうひとつは、相手に好印象をもたれるような準備をしておくということです。
整理整頓や飾りつけなどに注意を払うことも必要でしょう。ただ、それも度がすぎないようにすることが大切です。気どらず、ありのままの状態を見てもらうという姿勢が、お客様の好感を呼ぶものです。
お客様を「笑顔」「挨拶」「アイコンタクト」で迎える
さて、ホスピタリティを伝えるために必要なスキルの話に移りましょう。まず、お客様を迎えるときは、笑顔で、お客様の目を見て、明るく挨拶をします。
ディズニーの行動指針の「礼儀正しさ」を思い出してください(CHAPTER3LECTURE01)。①笑顔②挨拶③アイコンタクトといったスキルをしっかり実行することが大切です。
TPOに合わせた「身だしなみ」とは?
もうひとつ重要なのが、きちんとした「身だしなみ(④)」で、お客様を迎えているかということです。
基本は、●清潔であること●上品であること●控えめであることです。
また、次の2点にも気をつけましょう。
●機能的であること仕事がしやすい身だしなみを心がける●調和がとれていること職場内の同僚やお客様とバランスのとれた身だしなみを心がける
TPOをわきまえ、周囲の人から浮き上がってしまうことのない、お客様に好印象を与えるような身だしなみであることが大切です。
ポイントは「スマートな応対」
ホスピタリティで最も大切なことは「一生懸命さ」です。ただ、できれば喜んでいただけることをさりげなく、スマートに実行に移すことができれば、お客様もより心地よく感じてくれるはずです。
スマートな応対とは、ひと言でいえば、「お客様とのコミュニケーションをスムーズに、かつ深めるような応対をする」ということです。
基本は、次の3つです。
⑤言葉⑥話し方⑦ボディランゲージ次に、それぞれのスキルについてくわしく見ていきましょう。
02人は相手を「第一印象」で決める
第一印象が悪いとホスピタリティが通じない
人には、物や人に対して最初にもった印象、つまり第一印象を心にとどめておく傾向があります。心理学的にいうと、第一印象に強い影響を受けることを「初頭効果」といいます。
こんな実験結果があります。人が、「10個の単語を覚えてください」と言われて10個の単語を聞かされたあと、いちばんよく覚えていたのは、最初に出てきた単語でした。
これと同じことです。人は、第一印象を実によく覚えているものです。そして、もうひとついえるのは、第一印象は時間がたつにつれて、だんだん強化されていく傾向があるということです。
たとえば、「服が汚れてるなぁ」という第一印象が、いつのまにか「この人は不潔」というように変化・強化されていってしまうのです。
ですから、よい第一印象を与えることは、人と接するうえで、とても大切です。第一印象が悪いと、ホスピタリティを素直に受け止めてもらえない可能性も大いにあり得ます。
だから私は、もっと強い言い方をします。「わざわざ相手から嫌われるような第一印象を、自らつくることはないでしょう」と。
第一印象をよくする4つのポイント
実は、人の第一印象を左右する大きな要素が、挨拶、笑顔、アイコンタクト、身だしなみ、の4つなのです。この4つをしっかり守っていれば、どんな相手にも悪い印象を与えることはなく、よい印象を与えるはずです。
ホームパーティはもちろん、どんなビジネスシーンでも絶対に必要な「基礎スキル」です。人の記憶に残りやすいのは第一印象ともうひとつ、最後の印象です。
ですから、お客様のお見送りの言葉も忘れないように心がけましょう。ちなみに、最後に受けた印象に強く影響を受けることを、心理学では「新近(終末)効果」といいます。
03ディズニーでは「いらっしゃいませ」と言わない
「いらっしゃいませ」では会話にならない
挨拶に関してディズニーに特徴的なことがあります。それは、ゲストに対して、「いらっしゃいませ」と挨拶しないということです。
というのも、「いらっしゃいませ」と挨拶した場合、それに対して、ゲストは笑顔を返すことはできるでしょうが、挨拶を返すことはむずかしいものです。
そのため、ゲストが無言で目の前を通りすぎてしまう確率が高くなります。そこで、ディズニーのキャストは、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」の3つを使い分けるようにしています。
なぜなら、この3つの挨拶に対しては、必ずといってよいほど、ゲストも挨拶を返してくるからです。挨拶が返ってくれば、「何かお探しですか」「新しく出たプーさんのストラップをお探しですか」と言葉を重ねていくことができます。
つまり、挨拶がゲストとコミュニケーションをとるきっかけになるわけです。
挨拶を職場に根づかせる
前述したように、ディズニーではゲストに明るく挨拶をすることが行動指針に規定されています。
ただ、ディズニーでは、ゲストに対してだけでなく、上司・先輩、同僚たちとも、明るく挨拶を交わし合うことが当たり前になっています。
挨拶をしなかったり、元気のよい挨拶でなかったりすれば、「どうしたの?元気がないね」と上司・先輩が心配して声をかけるくらいです。
職場でも明るく挨拶を交わし合う──それは、ディズニーの場合、新人当時こそゲストに対して挨拶を行うためのトレーニングといえるでしょうが、しだいに当たり前のこととして身についていきます。
まわりのキャスト全員がそれを実行しているからです。ディズニーの風土となっているのです。
04笑顔で接すれば笑顔が返ってくる
「つくり笑顔でも素晴らしい可能性を秘めている」
笑顔も第一印象を左右する重要なスキルです。笑顔の素晴らしいところは、笑顔で接すれば相手も笑顔を返してくるということです。
たとえば、東京ディズニーランドには年間約1500万人のゲストが訪れます。東京ディズニーシーと合わせると、年間約2500万人にもなります。
極端な言い方をすると、ディズニーのキャストが、すべてのゲストに笑顔で接すれば、2500万人の笑顔が返ってくることになります。
その実現をめざして、さまざまな研修やトレーニングが組まれ、上司・先輩たちは部下や後輩キャストを指導・サポートし、後輩キャストたちも自己啓発に励んでいるといっても過言ではないでしょう。
もちろんキャストも人間ですから、プライベートでつらいときもあるはずです。
だから私は、「つくり笑顔でもいいんだよ。つくり笑顔でも、『笑顔』という信号が脳に行って、今度は脳から体全体に『笑顔で楽しいんだぞ』という指令が行き渡るんだよ。だから、つくり笑顔でも体にいいんだよ」
「笑顔で表情筋を鍛えると、シワになりにくくなるんだよ」と、個人的につらいときでも、なんとか笑顔でオンステージに立つことができるように、キャストたちに話したものでした。
いみじくも、マザー・テレサが次のような言葉を残しています。
「笑顔は、たとえつくり笑顔でも、素晴らしい可能性を秘めている」
もちろんディズニーに限らず、笑顔で接すれば相手に好印象を与えることができるはずです。
たとえば、スタッフルームなどに等身大の鏡を置いて、お客様と接する前に、笑顔の練習や身だしなみの確認をするのもよい方法でしょう。
自分の「素の表情」を確認しておこう
そうはいいつつも、人間、四六時中笑顔でいることは、さすがに不可能でしょう。そこで必要なのが、笑顔でないときの自分の顔を鏡でチェックしておくことです。というのも、人によっては笑顔よりも素の表情のほうを印象にとどめることがあるからです。
そういう人に素の表情を見られて「笑顔はやさしそうだけど本当は怖そう」という印象を一度もたれてしまうと、たとえ心からの笑顔を見せたとしても、そうとは受け止めてもホームパーティを開くとしたら?ホスピタリティに必要なスキルとは何でしょうか。
あなたがホームパーティを開いたときのことを想像してみると、その答えが見えてきます。まず、ホームパーティを成功させるための2つの前提条件をクリアしておくことが必要です。
ひとつは、どういったお客様が何人いらっしゃるのかを、家族全員に知らせておくことです。
家族全員に知らせておけば、子どもが対応するにしても、「吉田さんですね、父から聞いております」ときちんと挨拶をすることもできるし、お客様も「私のことを知ってるんだな」と好印象をもたれるはずです。
たとえば、職場でお客様を迎えるときでも、それこそ受付も含めて職場の全員が知っていれば、職場のスタッフ全員で温かくお迎えすることができます。
お客様にしても、会う約束をした人物以外から挨拶をされればうれしいものです。逆に、「誰、この人?」みたいな対応をされれば、イヤな印象が残ります。
もうひとつは、相手に好印象をもたれるような準備をしておくということです。整理整頓や飾りつけなどに注意を払うことも必要でしょう。
ただ、それも度がすぎないようにすることが大切です。気どらず、ありのままの状態を見てもらうという姿勢が、お客様の好感を呼ぶものです。
お客様を「笑顔」「挨拶」「アイコンタクト」で迎えるさて、ホスピタリティを伝えるために必要なスキルの話に移りましょう。
まず、お客様を迎えるときは、笑顔で、お客様の目を見て、明るく挨拶をします。ディズニーの行動指針の「礼儀正しさ」を思い出してください(CHAPTER3LECTURE01)。
①笑顔②挨拶③アイコンタクトといったスキルをしっかり実行することが大切です。
TPOに合わせた「身だしなみ」とは?もうひとつ重要なのが、きちんとした「身だしなみ(④)」で、お客様を迎えているか
「つくり笑顔でも素晴らしい可能性を秘めている」笑顔も第一印象を左右する重要なスキルです。笑顔の素晴らしいところは、笑顔で接すれば相手も笑顔を返してくるということです。
たとえば、東京ディズニーランドには年間約1500万人のゲストが訪れます。
東京ディズニーシーと合わせると、年間約2500万人にもなります。
極端な言い方をすると、ディズニーのキャストが、すべてのゲストに笑顔で接すれば、2500万人の笑顔が返ってくることになります。
その実現をめざして、さまざまな研修やトレーニングが組まれ、上司・先輩たちは部下や後輩キャストを指導・サポートし、後輩キャストたちも自己啓発に励んでいるといっても過言ではないでしょう。
もちろんキャストも人間ですから、プライベートでつらいときもあるはずです。
だから私は、「つくり笑顔でもいいんだよ。つくり笑顔でも、『笑顔』という信号が脳に行って、今度は脳から体全体に『笑顔で楽しいんだぞ』という指令が行き渡るんだよ。
だから、つくり笑顔でも体にいいんだよ」「笑顔で表情筋を鍛えると、シワになりにくくなるんだよ」と、個人的につらいときでも、なんとか笑顔でオンステージに立つことができるように、キャストたちに話したものでした。
いみじくも、マザー・テレサが次のような言葉を残しています。
「笑顔は、たとえつくり笑顔でも、素晴らしい可能性を秘めている」もちろんディズニーに限らず、笑顔で接すれば相手に好印象を与えることができるはずです。
たとえば、スタッフルームなどに等身大の鏡を置いて、お客様と接する前に、笑顔の練習や身だしなみの確認をするのもよい方法でしょう。
自分の「素の表情」を確認しておこうそうはいいつつも、人間、四六時中笑顔でいることは、さすがに不可能でしょう。
そこで必要なのが、笑顔でないときの自分の顔を鏡でチェックしておくことです。というのも、人によっては笑顔よりも素の表情のほうを印象にとどめることがあるからです。
もちろん、自分が悪いわけでもないのですが、自分の素の表情がどういうふうに見えるかを確認しておけば、「怖そうな顔なので誤解されがちなんですけど……」と先手を打って、文字どおり相手の誤解を避けることもできるでしょう。
05アイコンタクトには「相手の存在を認める」効果がある
アイコンタクトがないと、相手は「無視されている」と感じる
アイコンタクトとは、相手の目を見て話す、ということです。
たとえば、相手にそっぽを向いて話されると、どんな感じがするでしょうか。もちろんイヤな感じがします。なぜイヤな感じがするのでしょうか。それは、相手が自分の存在を無視していると感じるからです。
逆にいうと、アイコンタクトには、相手の存在を認めるという効果があります。「目は口ほどにものを言う」といいますが、文字どおり目を見ると、相手がどんな気持ちで自分に接しているかが、それこそすぐにわかるものです。
とくに、挨拶をするときは、きちんと相手の目を見ることが大切です。これは、礼を欠くことになります。
第一印象が悪くなることはいうまでもありません。もちろん、相手が子どもである場合は、膝を折るなどして、自分の目の高さを子どもの目の高さに合わせましょう。
アイコンタクトが苦手な人は?
日本人の場合「すだれ文化」と呼ばれることもあるように、ずっと相手の目を見て話すのは苦手という人が少なくありません。
そこで、私は、「挨拶は絶対アイコンタクトでしなければならないが、相手が話し始めたら、視線を合わせ続けなくてもいいから、耳をそばだてて一生懸命に聞きましょう」とすすめています。
そのとき、うなずきや相づちなどを入れることで、さらに好感度が高まります。
そして、相手の話が終わりそうになった時点でアイコンタクトをとり、相手の話が終わると、相手に許可を求め、今度は、自分のほうから話し始めるのです。
自分が話すときは、相手の目をしっかり見て話しましょう。ただし、ずっと目を見ることができない人は、ときどき軽く上下に目線をはずしてもよいでしょう。
06相手に好印象を与える3つの「言葉」
言葉は「使う」のではなく「遣う」
言葉は、道具のように〝使う〟のではなく〝遣う〟のです。つまり、相手に気持ちを遣る、相手の立場に立って言葉を遣うのです。キャストの言葉に関して、ディズニーでよくいわれるのは、「言葉の心遣い」ということです。
つまり、相手に好印象を残すような言葉遣いを心がけようということです。その目安として、①明るい言葉、②やさしい言葉、③美しい言葉の3つをあげています。
言葉の選び方ひとつで、相手に与える印象も大きく違ってきます。
たとえば、「トイレ」と言っても、いまはそれほど違和感を感じないでしょうが、それよりは「お手洗い」という言葉のほうが、上品で清潔感もあります。
また、「おことわりします」と言うよりは、「ご遠慮いただけますか」と言ったほうが、相手も受け入れやすいでしょう。ちょっとしたことですが、相手とのコミニュケーションを深めるうえで大切なことです。また、「てにをは」の遣い方次第で、相手の受け止め方が違うこともあるので、注意したいものです。
たとえば、「英語を話すのは上手だね」と言うのと、「英語を話すのも上手だね」では、意味もニュアンスも全然違ってきます。言葉を遣うときは、気配り、心遣いが大切です。
ディズニーでは「知りません」「できません」はNGワード
ディズニーでは、ゲストから質問を受けたときなどに「できません」「知りません」という言葉は禁止ワードになっています。そういうときは、「お調べいたします」「確認いたします」と答えます。
そして、その結果「できなかった」「わからなかった」ときは、「まことに申し訳ないことでございますが、その商品は在庫を切らしております。現在入荷の予定も決まっておりません」
というように言い、「そのかわり、このような商品がございますが、いかがですか」というような代替案をゲストに提示します。
この言葉の流れには、「知りません」「わかりません」と言い切ってゲストにあきらめてもらうのではなく、なんとかゲストが納得できるような答えを出したいというディズニーのホスピタリティが込められています。
「ていねい語」と「婉曲話法」が基本
ディズニーでは、新人キャストに対して「ていねい語」と「婉曲話法」について、研修・トレーニングを行っています。
「ていねい語」とは、「すみません」「~でございます」という言葉に代表される、文字どおり、ていねいな言葉です。
「婉曲話法」とは、「クッション言葉」と「依頼形」の2つを足したものです。クッション言葉とは、「申し訳ないことでございますが~」「お手数をおかけいたしますが~」「失礼ですが~」というような、話の頭につける言葉のことです。
依頼形とは、「~していただけますか」とお願いする場合に最後につける言葉のことです。
ディズニーでは、ていねい語と婉曲話法の2つだけは、キャスト任せにせず研修・トレーニングによってしっかりと身につけるよう指導しています。
実際、この2つを身につけておくと、ゲストからのキャスト応対に関する苦情が格段に少なくなります。
ただ、その後、もっとゲストに喜んでもらいたいというホスピタリティをもつことによって、自己啓発のひとつとして、尊敬語や謙譲語などを自主的に学習するキャストも少なくありません。
相手が聞きやすい話し方
〈ポイント①〉まず、大切なのは明るい話し方です。電話応対などでも、笑顔で話さなければ明るい話し方はできません。
〈ポイント②〉また、相手に伝わる声の大きさで伝えなければいけません。
〈ポイント③〉さらに話す速度です。
話す速度が速すぎると、意味が通じないのはもちろんですが、「せわしい人だな」と思われます。
相手が聞きやすいようにゆっくりと話しましょう。間も大切です。
たとえば、文章にした場合、句読点の入るような箇所は、しっかり間を空けて話しましょう。
参考になるのは、NHKのアナウンサーの話す速度や間です。視聴者がいちばん理解しやすいスピードで話しているのです。
少し高度になりますが、アクセント(声の抑揚)やイントネーション(語調)、強調なども少しずつ身につけていくと、コミュニケーション能力が飛躍的に高まります。
それは、もちろん、ホスピタリティが高まっていくことにつながります。
「表情」で話す
私たちが言葉でコミュニケーションをとるとき、そのフォローやサポートの役目を担うのが、ボディランゲージ(身体言語)です。
「非言語コミュニケーション」という言い方をすることもあります。ボディランゲージのなかでも、重要なのが「表情」です。
たとえば、
・相手が楽しそうであれば、笑顔で応える
・不安そうであれば、心配そうな表情をする
・何かに怒っているときは、真剣な表情をする
というように、相手の状況に合わせて表情も変えることが大切です。
もちろん、相手の心を思いやる言葉をかけるのが前提です。それに表情を組み合わせれば、相手も、「本当に、自分のことを考えてくれている」と思うものです。
ホスピタリティが、より相手に伝わりやすくなります。相手に合わせて表情が自然に出るようになるのが理想です。
無意識のしぐさ・クセに注意する
ちょっと気をつけたいのは、無意識のしぐさです。笑顔なのに手を強く握りしめたりすると、相手に、「この人、本当は怒ってるんじゃないのかな」と思われるようなケースもあります。
たとえば、口に手をかざして話すと、相手に「何かを隠してるのかな」と思われる傾向があります。
また、手を体の後ろで組む人やポケットにつっ込んでいる人も同じように「何か隠しているのかな」と思われてしまいます。人と接するときは、自分の出やすい悪いしぐさ・クセに気をつけましょう。
別の見方をすれば、身体には「表現する力がある」ということです。
これをよい方向にもっていく、つまり、自分が相手に一生懸命に話していることをフォローし、サポートするようなしぐさやジェスチャーで表現すれば、相手も好感をもって話を聞いてくれるはずです。
パーソナル・スペースに入るときは声をかける
相手とどのような距離で接するかも、心得ておきたいことのひとつです。
というのも人は、それぞれ「パーソナル・スペース」をもっているからです。つまり、「ここは私のなわばりだ。これ以上近づくな」というスペースがあるということです。
日本人が初対面の人に対してもつパーソナル・スペースは、握手ができるくらいの距離で、それ以上接近すると不快感をもつといわれています。ただ、パーソナル・スペースにどうしても入らざるを得ないケースもあります。
たとえば、お客様の目の前を横切らざるを得ないようなケースもあるでしょう。こういうときは、お客様に許可をとりましょう。
たとえば、「失礼いたしますが、ちょっと前を通らせていただいてよろしいですか」と、ひと声かけるのです。そして、相手が「いいですよ」と許可してくれれば、相手の前を横切っても、相手も不快な気持ちにはならないはずです。
ボディタッチするときは要注意!
相手に直接触れる、タッチするケースについても考えてみましょう。人は、まずは親との直接的な触れ合いを通して、心と体を成長させていきます。
幼児期に、このような触れ合いがなければ心も体も正常に育つことはできません。ところが、人は大人になるに従って、他人に軽々しく体に触れられることを嫌うようになっていきます。お客様にボディタッチするときは、十分注意しなければなりません。
たとえ、相手が子どもであってもです。
どうしてもボディタッチせざるを得ない、あるいはボディタッチすることで事態を好転させることができるような場合は、事前に、「お肩に触れさせていただいてもよろしいでしょうか」というように、許可を求めることが必要です。
職場などで、誰かの成功を祝して、「おめでとう」「やったね」などと言って、ハイタッチをしたり、ハグしたりする光景を目にしますが、もちろん、こういうケースは例外です。
むしろ、このようなシーンがよく出る職場ほどよい職場といえるでしょう。
以上、スキルについて述べてきましたが、大切なのは、「スキルは人をコントロールするためのものではない」ということです。人をおだてたり、ごまかしたりするためのものではありません。
スキルは、ホスピタリティを伝えるためにあるのです。そのことを再確認しましょう。
ウォルト・ディズニーのホスピタリティディズニーの創始者であるウォルト・ディズニーの願いは「すべての人に幸せ(ハピネス)を提供したい」ということでした。
彼は、その願いを実現するために、世界で初めてのフルカラーの長編アニメーション映画「白雪姫」を制作し、世界のスーパースター・ミッキーマウスを生み出しました。
そして、1955年には、カリフォルニアにディズニーランドをオープンさせました。
彼の抱くテーマは、ファンタジー(夢・空想)、アドベンチャー(冒険)、ノスタルジー(郷愁)、トゥモロー(未来・宇宙)の世界でした。
それは、彼の、すべての人にハピネスを提供するための原点ともいうべきものです。彼は、人の無垢な心や好奇心をくすぐるような世界をつくり出せば、人々が喜んだり楽しんだりしてくれると考えたのでした。
ただし、それを実現させるためには、当然そのための手段や方法が必要になります。すなわち、それがアニメーションであり、ディズニーランドというテーマパークであったわけです。
ウォルトが、人々に幸せを届けたいという願いをもち、それを実際に届けるために手段や方法を必要とした、つまりアニメーション映画やテーマパークを必要としたという構図は、本書でいうホスピタリティを相手に伝えるためには、スキルもテクニックも必要だという構図と似ています。
つまり、「相手に対する主体的な思いやり」であるホスピタリティは、対人コミュニケーション能力ということができ、その能力を発揮するには、さらに「接客能力」「接遇能力」と呼ばれるものを身につけることが必要だということです。
これらの能力を身につければ、ビジネス、パーソナルを問わず、どのような世界、シーンであろうとも通用すると私は思っています。すべてを一度に習得することはむずかしいかもしれません。
少しずつでもよいので、それらを習得していって、思いやりの心、ホスピタリティを読者のみなさまに感じ、出会う人々に伝えていただくことができればと願っています。
日本人の原点「思いやり」の心を見直そう私が、かつて、京都の老舗旅館に宿泊したときのことです。季節は冬でした。
私は、宿泊手続きの際、「あとで、ちょっと京の街を散策してきます」と、仲居さんに告げました。そして、部屋でひと休憩した後、散策するために玄関で靴を履こうとして、私は驚いてしまいました。
なんと、靴が温められていたのです。宿泊者に、底冷えのする京の街を少しでも温かい状態で散策していただきたいという、旅館の心遣いです。
もしかすると、それはサービスレベルであったかもしれません。しかし、なんというレベルの高さでしょう。日本人のもつ細やかな「思いやり」が見事に実践されており、私は感激しました。
同時に、同じ日本人として誇りを覚えずにはいられませんでした。ホスピタリティは、日本人の原点ともいえる「思いやり」の心です。人との関係のなかで、よりよい人生を楽しむために、これをもう一度見つめ直しましょう。
あとがき
まず、東日本大震災で被災されたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。また、本書を最後までお読みいただいた読者のみなさまに感謝いたします。
私が前著を出版したあと、数多くの出版社から「第2弾を」と依頼されましたが、すぐにはお受けしませんでした。次に出版の機会があるときは、何をお伝えすべきかもっと深く考えてからと思っていたからです。
そんななか、3月11日の震災が起こりました。私も、テレビを観ていて、自然のもつ破壊力に恐れを抱いた1人です。
それとともに震災後の東北の方々の他人を思いやる行動に感動を覚えました。食料が運ばれてくると、整然と並び、お年寄りや子どもがいると率先して先を譲る、その光景は、今回テーマにしている「ホスピタリティ」そのものでした。
日本人のDNAには深くこの「ホスピタリティ」が根づいていると感じたのです。それは、ディズニーで働くキャストの気持ちと似ていました。
この「ホスピタリティ」はどのようにキャストのなかに育っていくのだろうと私なりに考えついた結論が、シンプルではありますが、やさしい笑顔、親しみのある挨拶、相手の存在を認めるアイコンタクト、そして相手が不快に思わない身だしなみでした。
まず、基本があり、そこから「ホスピタリティ」が生まれると考えたのです。当たり前のことを書いているという感覚もあるのですが、私の視点で書きました。
この視点に、もし共感を覚えていただければ、これに勝る幸せはありません。最後に、東日本大震災時のディズニー・キャストのゲスト応対を誇りに思っています。
「夢の世界を守ってくれて、ありがとうございました」福島文二郎
●参考文献『顧客「不満足」度のつかみ方』(武田哲男著、PHP研究所)『ウォルト・ディズニー創造と冒険の生涯完全復刻版』(ボブ・トマス著、玉置悦子・能登路雅子訳、講談社)『ディズニーランドという聖地』(能登路雅子著、岩波書店)
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