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CHAPTER1予想外の感動を生み出す「ホスピタリティ」とは何か

ホスピタリティはお客様に感動を与えるだけでなく、自分の成長にもつながります。ホスピタリティのポイントをおさえましょう。

目次

CHAPTER1予想外の感動を生み出す「ホスピタリティ」とは何か

01ホスピタリティとサービスは、どこが違うのか?

ホスピタリティとは「思いやり」のマインド

「ホスピタリティ(hospitality)」の語源は、ラテン語の「hospice(ホスピス)」です。ホスピスとは、「客を保護する」という意味で、寺院が旅人を積極的に保護していたことに由来するといわれています。

日本語には「おもてなし」という美しい言葉がありますが、ホスピタリティに近い言葉だと思います。また、ホスピタリティを生み出す考え方のことをホスピタリティ・マインドといい、「おもてなしの心」と訳すケースもあります。

しかし、本書では、よりわかりやすいように、ホスピタリティを、そのマインドも含めて「相手に対する主体的な思いやり」と定義して話を進めていくことにします。

「相手に対する主体的な思いやり」を、もっと具体的にいえば、「自ら相手の気持ちになって、相手の立場に立って、共に考えてあげる気持ち・心」のことです。

サービスは「義務的な作業」でしかない

ホスピタリティと混同しやすいのが、いわゆる「サービス」です。実際「サービスとは、どこが違うの?」という疑問をもたれた方も多いのではないでしょうか。

同じもののように感じられるかもしれませんが、実はサービスとホスピタリティは全然違うものなのです。サービスは、ラテン語の「奴隷」を意味する言葉が語源で、「~しなければいけない」というような義務を含んでいます。平たくいえば、お客様に対して必ず履行・提供しなければいけないのがサービスです。

たとえば、どこの会社でも、マニュアルには、接客の手順などが規定されています。これは、必ず履行しなければいけない、いわゆる作業レベルに属し、サービスということになります。

もちろんサービスは、お客様が不快な思いや不満を抱くことを防ぐためにも必要です。ただ、サービス、言葉を換えればマニュアルでは、お客様に予想外の感動を生み出すことはむずかしいでしょう。

小さな感動を与えることはできても、予想外の感動にまではいたらないということです。では、予想外の感動はどういうときに生まれるのでしょうか?もうおわかりですよね。

サービスをきっちりこなし、そのうえにホスピタリティがプラスされたときに初めて、お客様に予想外の感動を与えることができるわけです。

ただし、後述するようにマニュアルレベルでも一生懸命に取り組むことによって、お客様に予想外の感動を与えるケースもあります。

ホスピタリティからつくられた〝しくみ〟がサービス

サービスとホスピタリティは意味が違うものの、とても近い関係にあります。そもそもサービスとは、お客様へのホスピタリティをもとにつくられたものだからです。

「こうしてさしあげれば、お客様に喜んでもらえる」ということをもとにつくった〝しくみ〟がサービスなのです。

ただ、いったんサービスに組み込まれたホスピタリティはサービスであり、ホスピタリティとはいえません。日常的に、かつ義務的に行うことになるからです。

しかし、「お客様のために、このサービスはもっとこうすればいいのでは」というホスピタリティによってサービスを改訂すれば、サービスのレベルがさらにアップしていくことになります。

くわしくは後述しますが、ディズニーではその傾向が強く、サービスやルール(マニュアル)もどんどん改善・向上していきます。

ホスピタリティはマニュアル化できない

プロローグでもご紹介した、私が東京ディズニーランド内でカギを落としたときのキャストの対応について、もう一度触れてみましょう。

あのとき、私がパーク内にカギを落としたということを知ったキャストの連携やチームワークのよさは、ルールどおりに的確に行動した結果として生まれたものでしょう。

もちろん、自分の役割をルールどおりにきちんと果たせず、長時間、私を待たせるようなことがあれば、私は、カギが見つかったとしても、スッキリとした気分にはなれなかったかもしれません。

マニュアルとは、もともと「お客様に不満をもたせない」ためにつくられた必ず守らなければいけないルールです。もちろん、マニュアルをしっかりと的確に実践するディズニーのキャストは素晴らしいとしかいいようがありません。

マニュアルどおりに動かない従業員をたくさん抱えている組織も少なくないはずですから。ホスピタリティはマニュアルで規定することができません。

結局は、キャスト1人ひとりが自分のホスピタリティを自分なりに表現することになります。といっても、それは、必ずしもむずかしいことではありません。

カギを失くしたとき、私を案内してくれたキャスト、待ってくれていたキャストがすべて自分のホスピタリティを発揮し、一緒になって心配し、見つかったときは一緒になって笑顔いっぱいで喜んでくれました。

「たいへんですよねぇ」「見つかるといいですね」「そうですかー。それはよかったですね!」と、私に声をかけてくれました。

つまり、みんながみんな、カギを落とした私の立場に立って、共に心配してくれたり、励ましてくれたり、喜んでくれたりしたのです。

そのキャストたちの姿に、私は、まさに予想外の感動を覚えたのです。何も大げさな言動をとる必要はありません。自分なりの心のこもった自然で素直な言動に、お客様は予想外の感動を覚えるものです。

02ホスピタリティには「一生懸命」さが必要不可欠

キャストがゲストに渡した〝手づくりのレインコート〟

2011年3月11日、東日本は大地震に見舞われました。東京ディズニーランドも激しく揺れました。地震直後、パーク内の施設が安全かどうか、点検する必要に迫られました。

その間、ゲストには、施設外に出て待機してもらわなければいけませんでした。しかしあいにく外は雨。しかも気温は10度を切る寒さでした。

雨具を用意していないゲストのなかには、寒さに体を震わせている人もいました。そこで、あるショップのキャストが機転を利かせました。

商品を包む大きめのビニールの包材を切って、「もしよかったら、これをレインコートがわりに着てください」と寒そうにしているゲストに差し出したのです。

包材をかぶるのですから、ゲストのなかには気に入らないと思う方もいたかもしれません。しかし、大半のゲストは、「ありがとう」と言って、包材でできたレインコートを身にまとってくれたといいます。

それはゲストが、「キャストは、いまできる精いっぱいのことをしてくれている」「私たちのことを、一生懸命考えてくれている」と理解してくれたからにほかなりません。

つまり、キャストのホスピタリティがゲストに通じたということです。包材のレインコートは決して格好よいものではなかったでしょうが、キャストのホスピタリティに、多くのゲストが感動したことは間違いないでしょう。

「一生懸命取り組むこと」がホスピタリティの原点

私が研修でよくするお話があります。それは、私が友人の家を訪問したときのことです。私が友人宅の玄関のチャイムを鳴らすと、待ちわびていたかのように、玄関のドアが開き、奥さんと4、5歳くらいの女の子が迎え入れてくれました。

友人は、家にある分だけでは足りないかもしれないと、新たにお酒を買いに出かけているとのことでした。私が応接間に通され、ソファに座って友人を待っていると、入り口のドアを開けて、先ほどの女の子がニュッと顔を出しました。

私が、にっこり微笑むとスッと顔を隠して、いなくなりました。しばらくすると、その女の子が、胸で押すようにしてドアを開けて、応接間の中に入ってきました。

見ると、両手で1本のウイスキーボトルを重そうに抱きかかえているではありませんか。女の子は、「はい」と言って、私の前にボトルを置きました。

そして、それ以上は何も言わずにスタスタと応接間から出ていきました。しかし、私には、「このお酒、飲んでね」という彼女の気持ちが十分に伝わってきました。

お父さんがお友達とお酒を飲むことを、お父さんかお母さんから聞いて知っていたのでしょう。私を歓迎する気持ちが、その一生懸命にウイスキーボトルを運んできた姿から読みとれました。そのとき、私はホスピタリティの原点を見たと思いました。

たとえば、相手のためを思ってしたことが、相手のニーズに合わないことがあります。そういうとき、相手は、あまりいい気はしないでしょう。ただ、一生懸命さは、相手に必ずといってよいほど通じるものです。

一生懸命であれば、たとえニーズに合わないことでも、相手は、「一生懸命やってくれているんだ」と、好意的にとらえてくれるものです。

それは、自分のしたことは相手のニーズに合わなかったかもしれませんが、自分のホスピタリティは通じた、ということです。相手も感動するはずです。

逆に、一生懸命でなければ、たとえニーズに合っていてもホスピタリティは通じないものです。もっといえば、一生懸命になれなければ、ホスピタリティがあるとはいえないでしょう。一生懸命であること──これこそ、ホスピタリティの原点です。

03相手に直接接しなくてもホスピタリティは通じる

お客様は「接する人」だけを見ているわけではない

自分のホスピタリティが相手に通じたとき、相手は予想外の感動を覚えます。というと直接、相手と接するケースのように思いがちですが、決してそうではありません。

たとえば、東京ディズニーランドでは多くのゲストが、・芝生がいつも緑に保たれている・窓ガラスに一点の曇りもない・トイレがピカピカに保たれているといった光景を見て感動します。

仮に、これらが汚れていたり不潔であったりすれば、ゲストは「気持ちが悪い」とか「きたない。いやだな」と不快感を抱いてしまうでしょう。リピーターも激減するに違いありません。

しかし、東京ディズニーランドでは、ゲストに感動すら与えているわけです。ここでわかるのは、お客様を感動させるのは接客する人間に限らないということです。

いくらホスピタリティをもってお客様に接しても、オンステージそのものが不潔で汚れていれば、お客様に感動を与えることはむずかしいでしょう。

逆に、オンステージがどこも美しく清潔で輝いていれば、お客様に言葉で説明しなくても、感動を与えることができます。

なぜなら、お客様に「きれい」「美しい」だけではなく、そういう状態を生み出している従業員、キャストの「一生懸命さ」が伝わるからです。

たとえ、お客様の目に触れないところで仕事をしていても、お客様にホスピタリティを伝えることは十分可能なのです。お客様が見ていないからといって手を抜くことは許されません。

たとえば、青々とした芝生や美しい花がつねに維持されているのは、日の昇る前から芝生や花などの状態を確認し、枯れているとその部分だけを切りとり、新しいものに植え替え続けている、バックステージ(裏方)で働いているキャストたちがいればこそです。

また、28年以上もパークが清潔に保たれ続けているのは、夜の清掃を担当するナイト・カストーディアルのキャストがいるからです。ポップコーンを床に落としてもつい拾って食べてしまえるぐらい清潔なのは、このキャストたちのおかげです。

東京ディズニーランドのオンステージのような大きな枠組みに限らず、たとえば街中のショップであっても、商品の陳列風景や飾りつけなどに気を配っていると、お客様に好印象を与えることができるわけです。

便器に名前をつけて清掃するカストーディアル

私が、ナイト・カストーディアルでトレーニングを受けていたときに聞いた話です。ナイト・カストーディアルのキャストたちは、なんとトイレの便器1つひとつに、たとえば、「ナンシー」とか「キャシー」といった人の名前をつけて清掃をしているというのです。

もちろん、手鏡をもって便器の縁の裏側までしっかり洗うなど、小さな感動を生み出すためのルールが細かく定められています。

ナイト・カストーディアルのキャストたちは、そのルールをしっかりと守ったうえで、さらに自分たちで、「ナンシーはきれいだが、キャシーはきたない」といったことがないように、愛情をもって一生懸命清掃に取り組んでいたのです。

ゲストに少しでも気持ちよく利用していただきたいという、キャストのホスピタリティがあればこその行動といえるでしょう。

04「行動+スキル」がなければ相手は感動しない

料理を落としたゲストを感動させたキャスト

「あ、しまった……」「あ~、どうしよう……」こんな不安な状態に陥ったとき、誰かのサポートで、まったく期待もしていなかったほど事態が好転したとなれば、人は、大きな感動に包まれやすいものです。

それこそ、気持ちが180度変わってしまうのですから、当然といえば当然でしょう。それを物語る東京ディズニーランドのレストランでのエピソードがあります。

このレストランでは、自分で好きな料理を選んでトレイにのせてから、会計するというシステムが採用されていました。

あるゲストが、トレイの料理の会計をすませてテーブル席に向かおうとした直後、あやまってトレイの料理をひっくり返してしまったのです。

そのゲストは、大あわてで落とした料理を片づけようとしました。すると、すぐにキャストがやって来て、「大丈夫ですか。おケガをされたり、服が汚れたりしていませんか」「大丈夫ですよ。あとは、私たちが片づけますから」と言って、そのゲストを別の場所に案内し、きれいに片づけてくれたといいます。

それだけでもゲストは、ほっとしたでしょう。

ところが、レシートが落ちていることに気づいたキャストが、そのレシートを拾って、「このレシートをちょっとお借りしていいですか」と言うなり、さっと料理の並ぶエリアに向かいました。

そして数分後、そのキャストが、ゲストが落とした料理とまったく同じ料理をトレイにのせて運んできてくれたというのです。ゲストも、自分が落とした料理と同じものをキャストが運んできてくれることまでは予想していなかったのではないでしょうか。ゲストが大きな感動に包まれたことは間違いないでしょう。

ホスピタリティは「行動」しなければ通じない

前の例は、キャストのホスピタリティあふれる行動にゲストが感動した話です。ここで確認したいのは、「行動しなければゲストにホスピタリティを伝えることはできない」ということです。

というのも、ホスピタリティとは、「相手に対する主体的な思いやり」です。人は他人の心のなかを見ることはできません。

ですから、ホスピタリティをもっているだけでは相手に通じないし、相手を感動させることもできません。ホスピタリティが相手に通じるためには、行動に移すことが必要です。その行動を通じて、初めてホスピタリティが相手に伝わります。

前のエピソードに登場したレストランのキャストは、まさに見事な行動を示したといえるでしょう。

ホスピタリティは「スキル」がなければ通じない

もうひとつ必要なのが、いわゆるスキル(知識や技術を使う能力)です。たとえば、接客スキルなどのことです。

というのも、基本的な身だしなみや接遇マナーがきちんとしていると、相手の受ける第一印象がよく、こちらの気持ちや行動を素直に受け止めてもらうことができ、ホスピタリティも通じやすくなるからです。

逆に、身だしなみや接遇マナーに問題があれば、相手は「何、この人!?」と不快な印象を抱いてしまいます。そうなると、こちらが、どんなにホスピタリティをもって接しようとしても、相手は、素直に受け止めてくれません。

まず、相手によい印象を与えること、そのために必要なスキルを身につけること、これが必須となります。

くわしくは「CHAPTER4」でご紹介します。

05「ゲスト以外の人」にもホスピタリティをもつ

先輩、同僚、後輩にもホスピタリティをもつ

いま、多くの職場で問題になっていることがあります。

たとえば、

  • 「おはよう」と挨拶しても誰も返事をしない
  • 上司や先輩が直接話さず、メールで注意したり叱ったりする
  • 同僚が重い荷物をもっているのに、誰も手伝おうとしない

といったシーンに見られるように、人間関係が希薄でコミュニケーションがうまくとれていないのです。

ひと言でいうと、「ストレスが多くて働きにくい職場」が増えているのです。こういった職場に決定的に欠けているのが、職場のスタッフ間におけるホスピタリティです。

こういう職場では、笑顔が少ない、挨拶もろくに交わさないといった特長が見られます。

「CHAPTER4」でくわしく述べますが、笑顔や挨拶は、ホスピタリティに絶対に欠かせない条件です。

笑顔や明るい挨拶が、ホスピタリティを生み出すカギといってもよいでしょう。ですから、ディズニーでは、笑顔や挨拶を徹底的に教え込まれます。

とにかく、最初は、不自然でもいいから笑顔で明るく挨拶を交わすように、上司や先輩がリードしていくことです。すると、いつのまにか職場の空気も変わって、風通しがよくなっていきます。

職場にホスピタリティが徐々に浸透していきます。ホスピタリティが職場に根づいてくると、そこで働く人間のモチベーションも上がり、働きがいも生まれてきます。その結果、職場の生産性も上がっていくのです。

外部関係者にもホスピタリティをもつ

たとえば、自社で、ある商品を取り扱うとき、消費者への販売はもちろん、消費者に対する事前調査、問屋や運送会社の担当者との取引・交渉など、さまざまな場面で人と接することになります。

このとき、ホスピタリティを発揮することで、顧客の獲得はもちろん、外部業者との信頼関係の醸成など、多くのメリットが生まれます。

逆に、商品の販売だけを重視して、そこにいたる過程で出会う人々への対応をおろそかにすると、悪評がたったり、流通がスムーズに展開できなかったり、ビジネス上の損失につながる可能性もあります。

地域の人たちにもホスピタリティをもつ

会社・組織の立地する地域の人たちに対しても、ホスピタリティをもって接することが大切です。その姿勢が、地域の人たちの支持を高め、「私たちの地域の会社・組織」という評価もいただけることにつながります。

それは、結果的に、会社・組織の価値を高めることになります。私が在籍していた当時、ディズニーのキャストは、ボランティアで定期的にパークのある浦安の道路や公園を清掃していました。

地域の人々に対する〝感謝の思い〟を行動で表していたのです。

すべての「人」にハピネスを提供する

「すべてのゲストにハピネスを提供する」は、東京ディズニーランドのミッションですが、おそらくすべての「人」がハピネスを求めているのではないでしょうか。

誰もみな、幸せになりたいと願っているはずです。

その意味において、「すべての『人』にハピネスを提供する」というミッションは、東京ディズニーランドに限らず、すべての業種・業態に共通するといえるでしょう。

そのミッションを実現するためには、すべての人にホスピタリティをもって接する必要があります。

お客様、外部関係者、職場の上司・同僚、地域の人々……どんな相手であってもホスピタリティをもって接する人材をたくさんもつ会社・組織は、間違いなく強みを発揮するはずです。

06ホスピタリティが信頼を生み、人脈をつくる

ホスピタリティが「お客様の信頼」を呼ぶ

ホスピタリティをもってお客様に接することにより、・顧客満足度が上がる・カスタマー・ロイヤルティが上がる・リピート率が上がると前述しました。

そのため、ホスピタリティは、お客様や会社にはメリットがあるが、自分には何もメリットがないと思ってはいませんか。そんなことはありません。

ここでは、ホスピタリティをもって接した個人にとって、どういうメリットが生まれるか、見ていきましょう。

たとえば、あなたが、お客様にホスピタリティをもって接し、好印象、あるいは感動を与えることができると、お客様は、当然、あなたに感謝し、「この人は信頼できるな」という気持ちを抱きます。同時に、お客様は、あなたの属する組織・会社に対しても、信頼感をもちます。

たとえば、「教育が行き届いている会社だな」「この会社のサービスはいいな」という言葉をよく耳にしますが、それは実際に接した個人を通して、その人間の属する組織や会社も同じように見ているということです。

それが、逆に、あなた個人がお客様に不快な思いをさせた場合には、「なんだ、この会社は、まるでしつけが行き届いていないじゃないか」「サービスの悪い会社だな」と組織や会社への不満となって表れます。だから、組織・会社にとって人材教育が大事なのです。

お客様に信頼されれば、組織・会社からも信頼される

あなたを通じてお客様から組織や会社が信頼されると、今度は上司や先輩から、あなた自身が信頼されるようになり、評価も上がります。

給料が上がったり、昇進につながるケースもあるでしょう。

そうはならないケースが多いかもしれませんが、たとえ、そうならなくても、上司や先輩から、「おまえは、ほんとによくやってるな」「お客様がすごく喜んでたぞ」とほめられ、自分が組織・会社から信頼されていることを実感できるでしょう。

あなたがもし新人社員であれば、このような体験を通じて、ホスピタリティの大切さを実感することになるでしょう。ホスピタリティとはこういうものか、ということも理解できるはずです。

信頼は「人脈」をつくる

もうひとつ重要なことは、人から信頼されることは、自分のキャリア形成のなかで「人脈をつくっている」ということです。いうまでもなく、人脈は、ビジネス、あるいは人生において成功する大きな力となります。

たとえば、自分を信頼してくれる上司が、自分のポジションを引き上げてくれることもあるでしょう。

自分が、独立してショップを開いたり、会社を始めようとしたりしたとき、自分を信頼してくれた人がサポートしてくれる可能性もあります。

お客様、上司あるいは先輩かもしれませんが、「あいつは信頼できる人間だ。助けてやろう」という話がもち上がっても不思議はありません。

人の縁とはそういうものではないでしょうか。

ホスピタリティで人脈ができるというと意外な感じがしますが、人と人とのつながりは、やはり信頼によって築かれていくものです。

相手に対するホスピタリティを欠いていれば、人との信頼関係を築くのはむずかしいといわざるを得ないでしょう。

07ホスピタリティが自分を成長させる

「お客様をもっと喜ばせたい!」という気持ちが高まる

ディズニーのキャストは、ゲストの写真を撮る機会が多くあります。ゲストから頼まれるケースもありますが、キャストから「写真をお撮りしましょうか」と声をかけるケースも多いのです。

ディズニーを辞めたあとも、そのクセが残って、行楽地で写真を撮ろうとする人を見かけると、自分でも気づかないうちに「写真をお撮りしましょうか」と声をかけているという元キャストも少なくありません。

私もその1人ですが……。キャストが写真を撮れば、当然、ゲストから「ありがとう」と感謝されます。

その言葉を聞きたくて、そしてゲストにもっと喜んでいただきたい一心で、ディズニーのキャストたちは、どういう撮り方をすればベストか、自分たちで勉強をしているのです。

そして、たとえば、カップルのゲストであれば、「男性の方、女性の肩に手を置かれてはいかがでしょう」男女2人ずつのゲストであれば、「男性の方は両脇で、女性の方は真ん中のほうが、後ろの景色が入りますよ」というように、勉強の成果を実際の撮影に活かしています。

「知識や技術をもっと伸ばしたい!」という気持ちが高まる

お客様から「ありがとう」と感謝されたり、上司から「すごいじゃないか」とほめられたりすれば、誰でもうれしいものです。

すると、人間というのは不思議なもので、もっとお客様を喜ばせたい、上司や先輩から、もっとほめてもらいたいと思うようになります。

そして、「いまのままでは知識も技術も、まだまだ」「お客様を喜ばせるために、もっと敬語の使い方を勉強しなくちゃ」「話し方をもう少し工夫したほうがいいな」と、自分の知識や技術の足りない点に気づき、もっと勉強しようと思うようになります。

つまり、自分自身の成長に結びつくことになるのです。

ホスピタリティというと、「お客様のために」といった視点だけでとらえがちで、お客様のメリットにばかり目がいきがちですが、人から信頼される、人脈ができる、自分が成長するといったように、自分にとっても、メリットがあるのです。

だから、私は、「自分のためになるから」というような発想で、ホスピタリティを身につけていってもかまわないと思っています。

それは動機レベルにすぎず、実際にお客様に喜んでもらったり上司や先輩にほめられた

りという体験をすれば、「相手のために」というホスピタリティがどんどん身に染み込んでいきます。

結局、その結果として自分も成長していくことになるのです。

自ら積極的に学ぶキャストたち

ただ、従業員が個人的に自己啓発に取り組もうとしても、どうしたらよいかわからないケースや、お金や時間がかかってむずかしいといったケースもあるでしょう。

ですから、組織・会社が本人任せにしないで、サポートをしてあげることが必要です。個人では限界があることが少なくないからです。ただ残念ながら、従業員任せというところが多いようです。

ディズニーでは、語学や手話などのクラスを用意しています。それらを多くのキャストが、勤務時間外の学習時間にもかかわらず勉強の場として利用しています。

このようにして、主体的・積極的に自己啓発に取り組むキャストは、どんどん自分を成長させていきます。こういう人材の多い会社・組織ほど強いことはいうまでもないでしょう。

ディズニーのキャストたちはホスピタリティを進化させ続けています。なぜそれが可能なのか、エピソードを中心に見ていきましょう。

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