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CHAPTER2後輩との信頼関係を築く

目次

01リーダーシップをもって後輩と接する

リーダーシップに必要な2条件とは?

プロローグでもご紹介しましたが、ディズニーの上司・先輩は、常にリーダーシップをもって、後輩と接しています。

その結果、後輩たちとの信頼関係も深まり、後輩たちも、先輩の姿を見てリーダーシップをもちたいと願い、そして実際に身につけていることが、パークを運営する大きな力となっています。

ディズニーにおけるリーダーシップとは、どのようなものをいうのでしょうか。

私は、ディズニーのリーダーシップとは、次の2つの要件を満たすものととらえています。

リーダーシップの要件①ホスピタリティ・マインドをもっていること

リーダーシップの要件のひとつは、ホスピタリティ・マインドをもっていることです。

「ホスピタリティ」の語源は「客を保護する」ことですが、私は「自主的・主体的に相手を思いやること」と解釈しています。つまり、相手を思いやるマインドを常にもっていることが、リーダーには求められるということです。

相手とは、お客さまはもちろん取引先の担当者、職場の上司・先輩、同僚、後輩など、自分以外のすべてを含みます。私たちは、ホスピタリティ・マインドをもち、さまざまな仕事上のスキルを実践してはじめて、相手の信頼を得ることができます。

ところが、残念なことに、ホスピタリティ・マインドよりも、スキルを教え込む会社が多いのです。たとえば、お辞儀や挨拶の仕方については熱心に指導するが、ホスピタリティ・マインドについては、ほんのおさわり程度といった感じです。

そのため、社員も、スキルだけを頼りに人と接することになってしまいがちです。どんなにスキルにすぐれていても、ホスピタリテイ・マインドがなければ、相手の胸に響かないものです。

もちろん、相手が後輩であっても、です。

リーダーシップの用件②自分が模範となること

もうひとつのリーダーシップの要件として、自分が模範となるように行動することが求められます。この必要性については説明するまでもないでしょうが、実際のところ、守られていないケースが少なくありません。

たとえば、どんなによいことを言っていても、行動が伴っていなければ、「なんだ、口だけじゃないか」「言うこととやることが、全然違うじゃないか」と後輩たちの反感を買うのは目に見えています。

言うことと行動が常に一致している、常にホスピタリティ・マインドをもって、お客さまだけでなく、自分たちにも接してくれる上司・先輩であれば、後輩たちも信頼を寄せるようになります。

そこで、上司や先輩は、次のことをしっかりと肝に銘じておく必要があります。

●自分が後輩を指導する立場であれば、後輩の模範となることディズニーでは、日常的に、上司や先輩が、このようなリーダーシップをもって、後輩たちに接しています。

だからこそ、後輩たちも、「あの上司や先輩のようになりたい」「あの上司や先輩のように、スキルを高めたい」と、素直に上司や先輩を模範に、行動するようになるのです。

それが、結果的に、最高のショーをゲストに提供し続ける大きな力のひとつとなっています。

02後輩に「いつも見てくれている」と意識させる

後輩が気がつくように、堂々と「見る」ことがポイント

上司・先輩との間に、信頼関係が必要であることはいうまでもありません。しかし、この信頼関係がうまく築かれていないケースが多いのではないでしょうか。

たとえば、それは、後輩を評価するシーンなどで、顕著にあらわれます。「どうして、そういう評価ができるのか」「自分のことを何も知らないくせに」というように、上司との信頼関係ができていないと、後輩が不平・不満の態度を示すことが多いはずです。

このようなことがないようにするには、やはり、上司・先輩が、日頃から後輩の仕事ぶり・状態をよく見ていることが大切です。

見るポイントは、

  • ミッションや行動指針に沿って仕事をしているか
  • 困った様子はないか
  • ロスやミスはないか

というように、ミッション、行動指針、仕事の内容、心身の健康に関するものなど、いろいろ考えられます。見るとき注意したいのは、何も監視するわけではないので、陰からこっそり見ず、堂々と見ることです。

「見られている」ことに気づかれなければ、見られていないことと同じになるので、〝見られるように見る〟ことが必要です。

「先輩は、ちゃんと見てくれているんだ。あ、上司は自分のことに気づいているな」と後輩や部下に意識させることが大切です。

「見る」ことで、後輩に公平感・納得感を抱かせる

上司・先輩が見ること、後輩・部下が見られていると意識することは、後輩や部下の公平感・納得感につながります。

たとえば、人事考課などのとき、日頃よく見てくれている上司や先輩の言うことであれば、後輩や部下も、「自分のことをよく見る先輩の判断だから、間違いないだろう」「たしかに、そうだなあ」と納得して受け入れることが多いものです。

公平感・納得感に欠ける人事考課や評価は、社員の仕事に対する意欲を低下させます。最悪の場合は、仕事拒否、退職などの事態も考えられます。

「見る」ことが後輩のモチベーションを高める

上司や先輩が、後輩や部下をよく見る行為は、後輩との信頼関係を築き、人事考課などに対する後輩の公平感や納得感につながるだけではありません。

自分の存在が認められている」という後輩の自覚を促すことになり、仕事に対するモチベーションを高めます。

03何か感じたら、すぐに「声をかける」

声かけ」が「見てくれている」ことを実感させる

上司・先輩には、ただ後輩を「見る」だけで終わらせずに、ひと言声をかけることをおすすめします。何も大げさに考えることはありません。

「お客さまへのいまの笑顔、すごくよかったね」「いまの電話の対応、とてもよかったよ」「うまくなったねえ」「どうしたの?元気がないね」「悩んでるの?いま時間ある?」といったひと言でいいのです。

後輩を見ていて感じたことを素直に、ひと言声に出して伝えるのです。声をかければ、後輩・部下は、上司や先輩が自分を見てくれていることを、より強く実感することができます。

直接声をかけることができない場合は、メモを渡す

ディズニーのようにゲストと向き合って仕事をしているような場合は、直接声をかけるタイミングや時間をとりづらいケースも出てきます。

そんなとき、「いまの笑顔、よかったよ」といったひと言をメモにして、キャストに手渡します。そのキャストは「ああ、先輩は、見ていてくれているんだ」と喜びを感じることができます。

こうした小さな積み重ねが、前に述べたような公平感や納得感を後輩に抱かせることにつながっていきます。また、上司・先輩に親近感を覚えることにもなります。職場における仲間意識や信頼関係が育っていきます。

04仕事の成果だけに注目しない

成果ばかり気にしていると、後輩の信頼を損ねる

後輩を見ていて、声をかけるときの内容が、いつも仕事の出来具合についてばかりということはありませんか。成果についてばかり声をかけていると、「いつも自分や会社のことばかり考えている人だ」という印象を後輩に与えることになります。

また、成果ばかりを気にする、とげとげしい風土の職場になってしまう可能性もあります。後輩は、成果だけでなく、どれだけ自分が頑張ったかを先輩に見てもらいたいと思っています。

成果も大切ですが、後輩の頑張りを、先輩として認めてあげることも、後輩との信頼関係を築くうえでは大切です。

後輩の行為そのものを評価する

そこで、ときには、「これだけの成果をあげてくれて、うれしいよ」と成果をあげたことについて声をかけるのではなく、「きみの誠実な態度が実を結んだね」というように、後輩の行為にスポットを当てて、声をかけるようにしましょう。

すると、声をかけられた後輩も、「先輩、自分のことをよく見てくれているなあ。先輩は、成果だけでなく人間的な面にも目を向けてくれているんだ」と思い、信頼を寄せるようになります。

後輩の最善を尽くす姿勢を評価する

人は、相手が最善を尽くす姿に心を打たれるものです。ディズニーでも、キャストの自然な思いやりから出た精一杯の行動が、ゲストの大きな感動を呼んだ事例が少なくありません。

上司・先輩も、成果だけに目を奪われず、後輩の精一杯の頑張りにも目を向けたいものです。そして、「そこまでやれるなんて、すごいよ」と最善を尽くした後輩を讃えてあげましょう。

そのような上司・先輩の姿は、後輩の上司・先輩に対する信頼感を醸成することにつながります。

05間違った考えに染まった後輩を変える!

いったん根づいた風土を変えるのは容易ではないが……

ディズニーでは、トレーナーと後輩のキャスト、つまり教える者と教わる者というはっきりとした上下関係ができあがっているので、トレーナーは、叱ったほうがよいと思えば遠慮なく叱ります。

叱られる側も、これは、育てるという愛情の延長だと思っています。こうした姿勢は、研修、トレーニングを通じて、ディズニーの風土として根づいています。

逆に、たとえば直接叱る、注意することのできない会社では、やがてそれが風土となって根づいてしまう可能性があるので注意しなければなりません。

とにかく、いったん根づいた風土を変えるのは容易ではありません。

社長がいくら「今後は、その場で叱る、注意するようにしましょう」と訓示しても、風土にどっぷりつかった上司・先輩は、実際の行動に移すことができないものです。

そのような状況をなんとか打開しようと、いまいる後輩たちに、いきなり方針を変えて接しても、驚きと違和感を与えるだけです。逆に、教える側のほうが浮いた存在になってしまいます。

ただ、それでも、「自分が正しい」という自信があるのなら、あきらめてはいけません。なぜなら、「人は変わる。人は育つ」ものだからです。

そのことを実感した私の体験を紹介します。

本来のミッションが忘れられていた職場に赴任──

これは、私が、それまで所属していたジャングルクルーズから、カヌー探検というアトラクションに責任者として赴任したときのお話です。

最初に、責任者といえども、アルバイトのトレーナーによるトレーニングを受けることになります。私が赴任したときのトレーナーというのが〝鬼トレーナー〟で、開園するまでの1時間、カヌーを漕ぐトレーニングをみっちり鍛き込まれました。

開園してからも、漕ぐ役割を担当する船首に配置され、舵役の後尾に位置したトレーナーからワザと方向をずらされるなど、徹底したトレーニングを受けました。そのきついトレーニングが2日連続で続きました。20代前半だった私の体も、さすがに悲鳴をあげました。ものすごい筋肉痛に襲われました。

しかし、それよりもはるかに〝痛い〟出来事が、私を襲ったのです。実は、私は赴任してまもなく、「これは、ちょっとおかしいな」と感じていました。

というのも、それまでいたジャングルクルーズでも、上下関係は厳しかったのですが、ゲストに楽しく笑っていただくナレーションをキャスト同士で競い合うようなところがありました。

とにかくゲストにハピネスを提供するというミッションに従って、キャスト全員が役割をこなしていました。

ところが、カヌー探検のキャストからは、そのミッションがあまり感じられなかったのです。むしろ、それよりも「カヌーを漕ぐ」こと自体が目標となっている感じがしていました。

そのことをあからさまに口に出すキャストもいました。ただ、赴任して間もない〝新人〟だったこともあり、私はそれを口に出せずにいました。

「カヌーを漕ぐ」ということが、そこまでキャストに意識されるようになったのには、それなりの理由がありました。カヌー探検は、前述した私のトレーニング風景からもわかるようにたいへんきつい仕事です。

さらに、カヌーを漕ぐこと自体きついうえに、どんなに自然条件が悪くても、基本的に運営を中止することがありません。カヌーは風の影響をもろに受けるので、強風の日はたいへんです。

しかし、カヌーを河に漕ぎ出さなくてはいけないのです。そんな仕事のつらさに耐えきれず、せっかく仕事を覚えても長く続かないキャストが多かったのです。

そうした事態を打開するために、私の前の責任者が、男ばかりの職場だったこともあり、「体を鍛えるつもりでカヌーを漕ごう」とキャストを励ましたのです。

彼としては、考えた末の苦肉の策だったと思います。もしかすると、そのとき、私が彼の立場であったら、同じような言葉を口にしたかもしれません。

前の責任者にはどこか親分肌のところがありました。カヌーを漕ぐことが、体を鍛えることになるのも確かでした。ピュアなキャストたちにも、なんとかカヌーを続けたいという気持ちがあったに違いありません。

「そうか、そう思って仕事をすればよいのか」キャストは、つらい仕事を克服する道を、その励ましの言葉に見出したのでした。

そして、次第に、体を鍛えるために「カヌーを漕ぐ」ことが、自分たちの〝ミッション〟として、キャストの心に強く刻まれていったのです。

さらには、カヌー探検のゲストは、「カヌーを漕ぐ」ことを楽しむためにやってきたのだと思い込むようになってしまったのです。

ゲストからクレームが入った!

私が配属されて数カ月が過ぎた日のことです。

──親御さんと子どものグループからなるゲストが乗船してきました。

乗り込んだゲストには、パドル(カヌーを漕ぐツール)が渡されます。

「さあ、みんなで漕いで、探検に出かけましょう」というわけです。

しかし、そのとき、多くの子どもたちが、漕ぐよりも、河の水面をピチャピチャたたくことに夢中になってしまいました。

その様子を見たキャストは、カヌー探検には「カヌーを漕ぐ」という〝ミッション〟があるのに、どうして漕がないのかという気持ちが生じたのでしょう。

「みなさん、漕ぎましょうね」と、最初はやさしく声をかけていたものの、一向に言うことを聞いてもらえないので、だんだんきつい調子になっていきました。

そして、あげくのはて、キャスト用の長いパドルで、パチャーンと水面を強くたたく行動に出てしまったのです。それは、ゲストにとってはショッキングな出来事でした。

後日、そのとき乗船していた親御さんから、会社にクレームが入り、社内で大きな問題となりました。私も責任者として、大きなショックを受けました。

「なんとかしなければ……」私は、キャストの意識改革に取り組む決意をしました。

孤独だった……「50対1の戦い」

そうはいっても、すぐに成果が出たわけではありませんでした。一度できあがった風土を変えるのは容易ではありませんでした。

そのとき、カヌー探検にいた50人のキャストのなかには、私の取り組みに賛同してくれるキャストもいたでしょう。

しかし、先輩キャストが違う考えをもっていると、後輩キャストは、自分の気持ちをオープンにできないものです。

ですから、私は、50人全員から嫌われているのではないかと疑心暗鬼に陥り、50人全員とケンカをしているような気持ちになったこともありました。

上司も、指示を出すことはあっても、実際に動くのは私1人でした。孤独でした……。胃潰瘍にもなりました。「会社をやめよう」とも思いました。ただ、私には、「自分は間違っていない」という信念がありました。

私には、ジャングルクルーズ時代、ユニバシティ・リーダー(導入研修を担当する現場キャスト)として、「すべてのゲストにハピネスを提供する」という本来のミッションの重要性を理解し、多くのキャストに伝えてきた経験がありました。

「これだけは絶対に守りとおさなければいけない」その思いが、崖っぷちに立たされた私を踏みとどまらせました。

正しいミッションが復活!「人は変わる」ことを実感

私は、朝礼でも終礼でも、繰り返し、キャストがやるべきことについて伝えました。そして、私が重視したのは、一方的に訴えても絶対に受け入れてもらえないので、自分たちで考えてもらうということでした。

私は、キャストを前に口癖のように繰り返しました。

「ほんとうに大事なものは、いったい何か、自分で考えてみてほしい」キャスト全員から総スカンをくらいそうな状態でしたが、ときにはキャストを飲み屋に誘いました。そして、そこで大激論を交わしたことも何度もありました。

もうひとつ、私が力を入れたのは、新しく入ってきたキャストに、「すべてのゲストにハピネスを提供する」「カヌーをとおして、ゲストに楽しんでもらうことが、私たちの仕事なんだよ」と徹底的に教え込むことでした。

ですから、そういう気持ちをもっているキャストにしか、トレーナーを任せませんでした。最初の頃は、そういうトレーナーもいなかったので、私自身がトレーナー役を務めました。

こうした甲斐あってか、最初は少なかった私の賛同者も、少しずつ増えていきました。そして、1年くらいかかったでしょうか、職場全体の意識をひとつにすることができました。

なかには、どうしても私に賛同できないので、他部署に異動させたり退職させたりせざるを得ないキャストも何人かいましたが、ほとんど全員のキャストが、私の伝えてきたことを受け入れてくれる状態ができあがったのです。

正しいミッションが、キャストの心に復活しました。そのとき、私は、しみじみ実感したものです。「人間って、変わるものなんだ」と。

たったひとつの職場でも、ミッションや方向性を間違えると、会社全体を窮地に追い込んでしまいかねません。

現に、ひとつの職場が本来のミッションから遠く離れて、効率を重視したあまり、顧客の信頼を損ね、結果的に会社が倒産に追い込まれたようなケースがたくさんあります。

私と同じような状況の職場に置かれる上司・先輩の方も少なくないでしょう。

そのときは、後輩を正しい方向に向かわせるための視点、忍耐、熱意をもって問題に取り組みましょう。問題は必ず解決できるはずです。

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