はじめに
消費者が、雇用不安や給与削減、また年金問題など将来への不安から、「今、お金を使うこと」に極めて慎重になっているのです。 例えば、買い物における低価格志向はとどまるところを知りません。結果、スーパーなどの「安値競争」もすさまじいまでになっています。
このしわ寄せが、「納品価格の低下」という形で食品メーカーなどに及び、各社の収益を圧迫しています。「いったいどうすればいいというのだ」「とてもやっていけない」 これが企業の本音でしょう。
しかし、どんな企業であれ、今のこの世の中で経営を続けていこうとする限り、こうした環境を逃れることはできません。業績悪化を環境のせいにし、次の一手を打つことをやめてしまえば、お金が回らなくなってしまいます。 では、どうするか。 企業が打つべきいくつもの「手」のうち、本書ではパート・アルバイト活用を提案しています。
しかしそれは、単に「時間単価の安い人材を雇用することで、人件費を抑えましょう」というものではありません。 パート・アルバイトは、「人件費が安いから」「雇用調整がしやすいから」「正社員より簡単に、その場しのぎ感覚で採用できるから」といった理由で、漫然と雇用されることの多い労働力です。
しかし、それでは他社に勝ち、この不況を乗り越えることはできません。 本書では、そうしたこれまでの考えをぬぐい去り、パート・アルバイトを企業業績に資する戦力の一つと明確に位置付けて、活用し、戦力化していくことを提唱しています。 要するに、パート・アルバイトであっても「意欲・能力が高い人を選び」「その人にできるだけ長く働いてもらい」「自社の業績向上のためにいかんなくその力を発揮してもらう」ことを目指して、より戦略的に、雇用し活用していくという提案です。「相思相愛マネジメント」は、その具体的な手法です。
すなわち、パート・アルバイトという労働力の特徴をよく知った上で、そのもてる力を最大化し、企業経営にしっかりと活かしていくためのマネジメントのノウハウであり、考え方なのです。「相思相愛マネジメント」は、私の思いを込めた造語です。特色は三つあります。 第一に、「相思相愛マネジメント」で行うことは、コミュニケーションを高める行為であることです。誰かと“相思相愛”になるには、相手とのコミュニケーションが不可欠ですから、ある意味当然ともいえるでしょう。 第二に、「相思相愛マネジメント」は、パート・アルバイトが働き始めてからではなく、採用のはるか前、募集や選考のときから始まるということです。 理由は簡単。採用後の成長は、その人が本来もっている能力や資質によって、大きく違ってくるからです。だからこそ、すでに募集や選考のときから相思相愛マネジメントを意識して、自社戦力として育つに足る意欲・能力を備えている人材を、しっかり選んでいくことが大事です。 第三は、「相思相愛マネジメント」が、パート・アルバイト活用に成功している企業の、成功事例に基づいたノウハウだということです。 というのは、「相思相愛マネジメント」は、私が十数年にわたり、求人広告会社の社員として、また人材マネジメント情報誌の記者・編集者として企業取材を続けるなかで、実際に見聞きしてきた「成功例」がもとになっているからです。多種多彩かつ多数の成功事例を改めて俯瞰し、その共通点を探していたとき、「相思相愛」という言葉が、頭にはっきり浮かびました。その後、改めてその視点で成功事例を見直し、整理したのが、本書に記した内容です。 整理してつむぎだした方法や考えが実際に有効かどうか、検証もしています。自身の日々の仕事において実験的に、相思相愛マネジメントを実践してきたのです。 一つ例を挙げれば、おかげさまで私が募集広告を出し、面接し、採用した主婦パートの「 Iさん」は、自分に合ったペースで、年々自身の仕事の幅を広め内容を深めながら、八年経った今なお週三日勤務で働き続けてくれています。ちなみに「八年」は彼女にとって、大手百貨店企画室での正社員としての勤務期間に迫る長さです。また、今年の年賀状には「正直、自分がこれほど長く、意欲的に、パートを続けられるとは思わなかった」と書き送ってくれました。 不況期を乗り越えるために、あるいはそうでなくとも、人的コスト削減の面から、正社員以外の人材、特にパート・アルバイトの活用は極めて有効です。 しかし、繰り返しになりますが、それは単なる「雇用」ではなく「活用」、つまり「適材適所の人員配置により、パート・アルバイトとして働く人それぞれの能力を活かす」ものでなくてはなりません。もちろん、賃金に見合わない労働を強制するものであってもいけません。改正パートタイム労働法など、各種法律に則っていることは当然です。
第一章パート・アルバイト活用の基本
1 相思相愛マネジメントとは?
パート・アルバイトを戦力にする/ビジネスなのに、相思相愛?/募集・採用はお見合い結婚/定着・戦力化は、幸せな結婚生活/想う力が試される/一〇ステップ相思相愛マネジメントとは/「短時間労働者」への愛情のかけ方
2 パート・アルバイト雇用の現状と課題
景気に左右されるパート・アルバイトの雇用/有効求人倍率から自社の採用しやすさを知る/「生産性」と「サービス力」を維持する採用/問題の原因は、三つの「ない」/ベテランがいる戦略的な職場へ/「続かない」が原因の三つの「コスト(無駄)」/「相思相愛」で「 Win-Win」の関係作り
第二章実践! パート・アルバイト「相思相愛」マネジメント ――募集、採用、導入から定着へ
ステップ1 募集 ~お見合いの相手探し ~
1 お見合いの相手は「自分好み」を吟味する結婚は、急がば回れ/まずは欲しい人材の明確化
2 たくさんの「いい人材」に出会うために
採用活動は婚活と同じ/求人広告メディアの使い分け「有料は質」「無料は量」/有料広告メディアの吟味ポイント/メディア別広告の特質を知る/こんなにある! 無料で募集する方法/【事例】無料告知の成功例 ~店頭ポスターの場合 ~/インターネットで有料と無料のコラボ効果!/自社の採用 HPを魅力的にする方法
3 相手に「想われる」求人広告の作り方
「魅力」と「信頼感」を演出する三つのポイント/「信頼感」を裏付ける広告記載の一〇項目/キャッチコピーで「魅力」を伝える/間口を広げつつ、しぼり込む/時給の相場を知っておく/ウチ流「身のほど時給」の決め方・考え方/時給を上げる場合の注意点/【事例】相場より高い時給でも成功している企業/時給以外の三つの魅力で「応募したい」と思わせる/【データ】パートが「パートという働き方を選んだ理由」とは?/トレンドは「狙い撃ち」募集/この賃金は違法 ~最低賃金と男女別賃金 ~/禁じられている募集とは?
ステップ 2 応募受付 ~「ぜひ会ってみたい」と思わせる ~
1 「会ってみたい」と意思表示した人を逃さない!
応募受付の対応で良い印象をもってもらう/応募はスタッフ全員で受け付ける体制作りを
2 良い人を採用するための、効果的な受付方法
応募の数を増やすには「応募の手間」を軽くする/大量の応募が見込めるときの対応方法
3 まだ見ぬ相手の情報を得る工夫
応募受付で「どんな人か」を垣間見る/「電話受付」で相手を見る/「 WEB受付」で相手を見る/「履歴書受付」で相手を見る/事前情報に振り回されるな
ステップ 3 面接 ~いざ、お見合い! ~
1 面接の目的は「理解し」「理解される」ことパートの面接は“即断即決”のお見合い/良い面接場所とは? 場所の案内方法は?/相手を不快にさせない時間の取り方 2 相手を見抜く面接の仕方と質問内容
相手を見抜く面接の五段階/知っておきたい実務知識 社会保険に加入する、しない?/知っておきたい実務知識 一〇三万円、一三〇万円の壁とは ~税金と扶養控除 ~/面接では五感をフル稼働する/「面接で相手に直接聞くこと」リスト/「書面での提示を求めること」リスト/「相手の様子から見抜くこと」リスト/「この人でいい?」チェックリストが判断を助ける/面接で聞いてはいけないこと 3 相手に「理解してもらう」ための面接ノウハウパート・アルバイトが「辞めない」面接方法/【事例】「売り場」を案内しながら面接する ~大手アパレル会社の場合 ~/【事例】 3 K職場をあえて見せて、パート・アルバイトが定着 ~工場の場合 ~/「あなたに期待すること」を、面接で話す重要性/面接結果の通知の仕方が「よりよい今後」を左右する/【採用する場合】コミュニケーションをかねた通知方法/【不採用の場合】「しこりを残さない」通知の仕方
ステップ 4 入社(雇用契約) ~長いご縁の第一歩 ~
1 入社日は結婚記念日入社当日が大切 ~パート・アルバイトが初日で辞める理由とは ~/【事例】初日の対応で辞めようと思ったわけ ~事務パートの場合 ~/入社前の準備 2 「入社当日にすべきこと」と雇用契約入社当日にはうれしさと「これからよろしく」の気持ちを表現する/確実な信頼関係を築くために/雇用契約の結び方と明示しなくてはならない労働条件/雇用契約の期間をどうするか ~二種類の雇用契約 ~/知っておきたい実務知識 有期雇用契約を締結・更新するときの留意点/知っておきたい実務知識 パート・アルバイトにも就業規則を/知っておきたい実務知識 外国人を雇う場合は?
ステップ 5 導入 ~新人教育 ~成田離婚しないために ~
1 成田離婚の原因と弊害新人導入期が大切な理由/【事例】主婦パートが大手ファストフード店を五日で辞めたわけ/成田離婚が周囲に及ぼす影響 2 新人パートの不安な気持ちを取り除く「新人担当者」を決めよう/新人担当者に向く人、向かない人 3 決まりや基本は最初に共有入社直後だから厳しく教える/新人時代に徹底すべき三つの基本教育/働くこととは? CSとは? ~意識付け教育 ~/わが社流「正しいやり方」を身に付ける ~技能教育 ~/心を教え、動作を教える ~マナー教育 ~/新人導入教育のオリジナル手順書を作成する
ステップ 6 シフト管理 ~家事分担は夫婦でバランスよく ~
1 上手なシフト管理のコツ上手なシフト管理は相思相愛の要/予定が重ならない人を採用する/パート・アルバイトを多能化する/知っておきたい実務知識 パート・アルバイトにも年次有給休暇はある/知っておきたい実務知識 年次有給休暇にまつわる決まりあれこれ 2 パート・アルバイトの気持ちとシフト管理コツは希望を聞く姿勢/公正・平等を意識する/【事例】「約束破り」が招いた悲劇 ~介護福祉施設に勤める主婦パートの例 ~/知っておきたい実務知識 休憩時間に関する決まり/知っておきたい実務知識 パート・アルバイトにも休日が必要?
第三章「相思相愛」で、パート・アルバイトを育てる ――認め、愛することで、人は成長する
ステップ 7 コミュニケーション ~会話と連絡が円満のもと ~
1 コミュニケーションがすべての土台コミュニケーション不足が「早期離婚」の引き金に/「気持ちよく働いてもらえる」か「否か」の大違い 2 二つのコミュニケーションを意識する「交流」と「仕事上の情報伝達・情報共有」/パート・アルバイト「だからこそ」大切な理由/存在感を感じさせる 3 コミュニケーションを「見える化」し「仕組み化」する「気づいたときに」の危険性/「見える化」と「仕組み化」で、個人のスキルに頼らない/コミュニケーションを「見える化」する方法/【事例】タイムカードをなくしてコミュニケーションを仕組み化 ~ファミレス ~/【事例】全員ミーティング定例化でコミュニケーションを仕組み化 ~業務請負会社 ~/コミュニケーションのさまざまな手段
ステップ 8 教育 ~効率的な家事と自己実現 ~
1 効率的に身に付けさせるための三つの教育方法教育でやる気を高め、マンネリ化を防止する/手軽で効率的な OJT/一斉・一律の習得には OFF― JT/成長のカギを握る S D(自己啓発) 2 パート・アルバイトだからこそ、の注意点知識や経験は個々それぞれ/年長パート・キャリアパートに教える場合の注意点/「なぜ、教育するのか」を意識する/上手な注意の仕方、褒め方とは
ステップ 9 評価と賃金 ~頑張っても、認められない? ~
1 適正な評価で「やる気」を引き出す戦力化とやる気の関係/やる気を引き出す三つのポイント/適正な評価が、人と企業を成長させる/【事例】賞与を「社長室で社長から手渡す」 ~豚まんチェーン ~ 2 評価に応じた賃金の支払い方評価に応じた賃金制度は必要か/まずは「評価表」を作ることから/【事例】接客販売 A社と部品メーカー B社の評価項目/評価の結果を賃金表に落とし込む/知っておきたい実務知識 残業代の支払いが生じるときは?/知っておきたい実務知識 休日労働の割増賃金って?/手当で報いるのも一つの手/パート・アルバイトの賞与と退職金は必要か/正社員とのバランスを視野に/【事例】パートで仕事復帰した元正社員の不満 3 実際に「評価する」ときの注意点評価の公平性・納得性を高める五つの工夫/評価者訓練が大事/成果だけでなくプロセスも見る
ステップ 10 正社員登用と退職 ~より永いご縁になるとき、別れるとき ~
1 企業力を高める「正社員登用」パート・アルバイトを正社員登用する三つのメリット/正社員への登用制度をパート・アルバイト活用戦略の一つとして/正社員とパートの違い/短時間正社員という選択肢も/【事例】パートを短時間勤務の正社員に 2 法令遵守で相思相愛パート・アルバイトも法律で守られている/男女差別の禁止とセクハラについて/健康診断を実施するパート・アルバイトとは/妊娠・出産したパート・アルバイトの保護/育児や介護をするパート・アルバイトに対する義務/パート・アルバイトの待遇や苦情に関する会社の責任 3 それでも退職が決まったらパートが退職を申し出たらどうするか/そもそも退職とは/契約終了(雇い止め)する際の実務/パート・アルバイトも簡単に解雇できない/パート・アルバイトが退職するときの実務まとめ 「相思相愛」でプラスのスパイラルを回せ!相思相愛の目的は/マネジメントは愛情がすべて
1 相思相愛マネジメントとは?
パート・アルバイトを戦力にする パート・アルバイトは、正社員に比べて安価な労働力です。これを活用することは経費削減の面から、もちろん企業業績にプラスです。この不況期だからこそ、他社に勝つために、ぜひ活用していきたい戦力です。
しかしこれが、「安かろう、悪かろう」になっては、いけません。パート・アルバイトに仕事を任せることにより、商品や製品の質が落ちたり、接客サービスが悪くなっては、お客さまが離れてしまいます。これでは本末転倒です。
また、他社と同じようにパート・アルバイトを雇用するのでは、他社との差別化もできません。 そうではなく、パート・アルバイトを、企業業績を高める人的戦力の一つと明確に位置付け、その特性を踏まえたマネジメントをする必要があるのです。パート・アルバイトの能力を活用し、戦力化していくのです。
小売業・サービス業・製造業など、多くのパート・アルバイトを雇用している企業であれば、なおのことです。 その際、まず考えてみたいのが、なぜパート・アルバイトが正社員に比べ安価な労働力なのか、ということです。「パート・アルバイトなのだから、賃金が安くて当然」ではありません。安いのは、「正社員とは働き方が違うから」です。
例えばパート・アルバイトは、「週三日勤務」「一日五時間勤務」など、本人の希望をある程度かなえながらの勤務が可能な働き方です。また、転居を伴う転勤や、本人の望まない異動もないことが普通です。つまり、正社員に比べ、拘束度が高くありません。また、実際に担当する仕事の内容や責任も、ある程度限定的です。 このように正社員とは働き方が違い、したがって安価なのですから、パート・アルバイトに正社員と同じ働きを求めてはいけません。
しかし一方で、働き方が違うとはいえ、パート・アルバイトも同じ会社のスタッフであることに変わりありません。同じ組織の一員としてしっかり能力を発揮し、「パート・アルバイトとしての仕事」を全うすることを、はっきり要求していくことが必要です。パート・アルバイトを“戦力化”していきたいならなおのことです。
そこで必要になってくるのが、パート・アルバイトに特化した、マネジメント・ノウハウというわけです。ビジネスなのに、相思相愛? 詳しくは後で述べますが、パート・アルバイトは正社員に比べて、一つの会社でずっと働いたり、より高い能力を自ら発揮しようとすることが少ないのが通常です。
そんなパート・アルバイトを長期に雇用し、能力を発揮してもらい、彼らと「相思相愛」関係を築くには、パート・アルバイト側ではなく会社側に、努力と工夫が必要です。
このため相思相愛マネジメントは全体的に、会社側からより意識的、積極的に、率先してパート・アルバイトを「想い」、その結果パート・アルバイトから「想われる」関係作りをするものとなっています。
ここまで読まれて、疑問や違和感を覚えた方がいらっしゃるかもしれません。 すなわち、パート・アルバイトにそこまで労力をかけるべきなのだろうか、という疑問です。そして、ビジネス書や、マネジメントの分野で、「相思相愛」という言葉が使われることへの違和感です。
疑問については、これまで述べてきたとおり。不況期にこそパート・アルバイトの力を活用すべきであり、それには努力と工夫が不可欠です。 一方、ビジネスで「相思相愛」という言葉を使うことへの違和感ですが、例えば「面接は、お見合いだ」などという言葉を耳にした経験はないでしょうか。この面接に代表されるように、人の採用から定着・戦力化に至る人材マネジメントは、究極のところ、「想い、想われる」関係作りに他ならないと私は考えています。
ちなみに「相思相愛」とは、パート・アルバイトとして働きたい人と、パート・アルバイトの力を自社に活かしたい企業が、お互いを心から必要とし合う状態です。こうした関係を作ることが、相思相愛マネジメントの主眼です。募集・採用はお見合い結婚 半面、「相思相愛マネジメント」は「男女の出会い ~継続的な結婚生活(共同生活)」の各段階に、驚くほどぴったりとなぞらえられるのも特徴です。
また、これに従って考えると、一つひとつのマネジメントの意味や意義が理解しやすく、また実践も容易になります。 例えば、募集・採用は、まさにお見合い結婚そのものです。 募集は、「結婚相手を探しています」ということを、周囲にきちんと伝えること。つまり、結婚紹介所に登録したり、顔が広く世話好きな親戚や知り合いに「誰かいませんか」と相談したりすることです。実際には、募集広告を出したり、「募集中」の貼り紙をします。 その後、お見合いは、相手候補の中から、相手の写真や自己紹介書の情報を手がかりに、実際に会う相手を決定し、実施します。募集・採用の場合、履歴書などの情報をもとに、実際に会う相手を決める段階です。 こうしてお見合い相手つまり、面接相手を決定したら、まずは、実際に会ってみることです。会ってみて、いろいろと話をし、お互いの希望や価値観を確認します。「自分がどんな生活をしたいのか」「相手はどんな家庭を築きたいのか」。つまり「どんな仕事をしてほしいのか」「どんな働き方をしたいのか」など、お互いの望みを確認し合います。ここが合致しない結婚は、極めて破綻しやすいものだからです。 その結果「この人なら」と思えたら、結婚の申し込み、つまり「採用」を決定するわけですが、このとき、こちらが「いいな」と思っても、相手から断られる可能性があることまで、実際のお見合い結婚そのものです。定着・戦力化は、幸せな結婚生活 募集・採用が、出会い ~結婚に至る各段階であるならば、その後の定着・戦力化は、末永く幸せな結婚生活を手にすることと、そのための努力そのものです。 例えば、入社は入籍です。パート・アルバイトと雇用契約を結ぶことは、婚姻届に署名・捺印し、届けること。つまり、雇用契約なら働く条件について互いに合意し明示して、入籍であればお互いの気持ちを確かめあって、今後の長いお付き合いを約束する瞬間です。 しかしながら、こうしてきちんと書類を交わし、約束しても、まだまだ油断はなりません。新婚旅行中に、お見合いの場や事前情報ではわからなかった相手の意外な一面を見て、「こんなはずじゃなかった」「もう嫌だ」という思いに至ってしまう可能性はゼロではありません。もちろん、こんな状態では結婚生活は続けられず、最悪の場合、かつてよくいわれた「成田離婚」となってしまいます。 こうした悲しい結果を防ぐには、お互いが思いやりの気持ちをもって、相手を理解し許容するよう努めること。パート・アルバイトのマネジメントの場合なら、導入 ~新人教育を、丁寧にしっかり行うことになるでしょう。 ようやく二人の生活が走り出しても、まだまだ山あり谷ありです。互いが生活に充実感を感じ、満足感を得ていくためには、公平な家事分担や、日々の会話、情報共有や、まめな連絡などのコミュニケーションが欠かせません。また、相手の個性や考え方を尊重し、認め合った上で、日々接していくことが大切でしょう。 こうしたことも、パート・アルバイトのマネジメントにおいて、すべて必要になってきます。想う力が試される しかし、究極的には、すべては次の一言に、集約できると思います。それは「愛すればこそ、愛される」ということです。 相手を嫌うと、不思議と必ず相手からも、嫌われてしまうもの。パート・アルバイトのマネジメントでも、それは全く同じです。だからこそ、まずは雇う側から、パート・アルバイトにプラスの気持ちを届けること。このことにより、パート・アルバイトにもプラスの気持ちを抱いてもらうことこそが、マネジメント成功のカギであり、近道です。 繰り返すようですが、多くの場合、パート・アルバイトにとっての仕事や職場は、正社員ほど大事だったり、固執すべき対象ではありません。 そんな彼らに「働くのはここでなければならない」と思ってもらうこと。その結果、長く頑張ってもらうこと。つまり「定着」「戦力化」するための方策が、“まずは自分から愛すること”。雇う側からパート・アルバイトに、プラスの気持ちを届けることです。「そんなことできない」と思いますか。あるいは「そんな打算的な」と否定的に思われるかもしれません。 そうした感想をもたれることも覚悟で、やはり私は「雇う側から、パート・アルバイトにプラスの気持ちを届ける」ことが大切だと、申し上げたいと思います。 また、「打算的な」と感じるのは、それが打算であるから、と言えないでしょうか。本気で愛すれば、それはすでに、打算ではありません。 部下の育成は、愛情が大事といわれます。対象がパート・アルバイトであっても、同じです。パート・アルバイトを本気で育成したいなら、つまり「定着」「戦力化」したいなら、そこには愛情が不可欠なのです。 あるいは、心からの愛情をもって、時に厳しく接することこそが、パート・アルバイトを高レベルに育成する、最短ルートといえるかもしれません。一〇ステップ相思相愛マネジメントとは 本書が提唱する「相思相愛マネジメント」は、そんな愛情の示し方を、一〇のステップに分けて、具体的にどうすればいいのかを解説したものです。 ちょっとした工夫で、本来辞めずとも済む人を「辞めさせない」ことは可能です。特に新人については、すでに募集のときから「辞めさせない」マネジメントを意識して一貫して行うことにより、早期離職を減らせます。 また既存スタッフを含めた全パート・アルバイトに、できるだけ長く勤めてもらい能力を発揮してもらうためには、日常的なコミュニケーションなどすべての局面において、相思相愛を意識します。 ちなみに、各ステップを具体的に記すと、以下のようになります。
ステップ 1 募集 …お見合いの相手探し
ステップ 2 応募受付 …「ぜひ会ってみたい」と思わせる
ステップ 3 面接 …いざ、お見合い!
ステップ 4 入社(雇用契約)…長いご縁の第一歩
ステップ 5 導入 ~新人教育 …成田離婚しないために
ステップ 6 シフト管理 …家事分担は夫婦でバランスよくステップ
7 コミュニケーション …会話と連絡が円満のもとステップ
8 教育 …効率的な家事と自己実現ステップ
9 評価と賃金 …頑張っても、認められない?
ステップ 10 正社員登用と退職 …より永いご縁になるとき、別れるとき
最近の募集トレンドは「狙い撃ち」だといわれています。自社がほしい「一定の層」に、ビシッと的をしぼった募集広告を作るのです。 例えばある会社では、自社のパートタイマー募集広告で、こううたっています。「短時間勤務のパートタイマーですが、頑張れば昇進・昇格し、時給もアップしていきます。シングルでも、お子さんをしっかり育てていける収入が得られます!」 この会社では、新卒新入社員を営業社員として一から育てるより、営業経験や、たとえ事務職であってもビジネス経験のあるパートを雇用したほうが、自社の売上にプラスだと考えています。実際、パートタイマーにも高度な判断を伴う、難易度が高く責任も重い仕事を任せる一方、時給も正社員の時間給に匹敵する額を支払っていました。 ただし、誰でもいいわけではありません。仕事に責任をもち、しっかりと職務を全うし続けてくれる人でなければ、困ります。そんななか、過去の採用経験から「子育て中のシングルマザーのパートは、時間観念がしっかりし、決められた時間内で、きっちり成績を上げていく人が多い」と感じていたことから、「その層」にぴったり的をしぼった募集広告を出すことにしたのです。 男女別の募集が禁じられていることから( ●男性のみ、または女性のみを対象にした募集参照)、広告に「シングルマザー」と記すことはできませんが、想定した層からの応募が多数あり、結果は上々。短い拘束時間でしっかり稼ぎたいパートタイマーと、過去のビジネススキルを活かしてきっちり仕事をしてほしい会社の意向がぴったり合い、とても良い雇用関係が結ばれているそうです。この賃金は違法 ~最低賃金と男女別賃金 ~ 募集時賃金を決める際、気をつけなくてはいけないポイントがあります。「最低賃金」と「男女別賃金」です。いずれも、法律で定められた事項です。 最低賃金とは、文字どおり「この額を下回ってはならない」という賃金額です。最低賃金法により、地域別最低賃金と、産業別最低賃金が決まっています。地域別最低賃金は各都道府県ごとに時給で設定され、そこで働くすべての労働者に適用されます。もちろんパート・アルバイトの時給も、これを下回ってはなりません。試用期間中や高校生に対して減額した際など、要注意です。 最低賃金は毎年改定されるので、確認が必要です。また、生活保護とのかねあい等により、最近は毎年、かなりの上昇幅をもって改定される傾向にあります。 ちなみに平成二一年秋に改定・発効の最低賃金は、東京都が最も高く七九一円となっています。最も低いのは、佐賀県、長崎県、宮崎県、沖縄県の六二九円です。関東は、以下神奈川県七八九円、埼玉県七三五円、千葉県七二八円など。関西では、大阪府が最も高く七六二円で、京都府七二九円、兵庫県七二一円などとなっています。愛知県は七三二円です。 また、男女別賃金も違法です。携わっている仕事の内容や評価が同じであるならば、男女で賃金に差を設けることは、法律で禁止されているのです。 パート・アルバイトの場合、同じ職種や条件で、男女を理由に賃金格差を設けることは少ないようですが、知っておきたい基礎知識です。禁じられている募集とは? 募集においても、法律で禁じられていたり、してはいけないとされていることがあります。具体的には、以下の二つです。 ●男性のみ、または女性のみを対象にした募集 例えば「女子パートさん」「キャンペーンレディ」「男性配送スタッフ」「ウエイトレス」といった言葉を、募集広告で使うことはできません。女性のみ、あるいは男性のみを対象にした募集は、男女雇用機会均等法により、特別な場合を除いて禁止されているからです。 特別な場合とは、均等法の適用除外職種の場合。つまり俳優、モデルなど芸術・芸能分野、守衛・警備員など防犯上、神父・巫女など宗教上、あるいは女性更衣室の係員など風紀上、またホスト・ホステスなど業務の性格上、一方の性であることが必要な場合です。 なお、女性労働者が男性労働者と比較して「相当程度少ない」場合、女性への不均等な扱いを改善するためであれば、女性に有利な取扱いが可能です。これを「ポジティブ・アクション」といいます。 ●年齢を制限した募集 人を募集する際、正社員であれ、パート・アルバイトであれ、年齢制限を設けてはいけません。改正雇用対策法により、主に「年長フリーター」対策として、募集・採用時の年齢制限が原則禁止となりました。 ただし、以下の六つの場合のみ、年齢制限が例外的に認められています。 定年年齢を上限として、期間の定めのない雇用契約で募集・採用する場合 ○「六三歳未満の方を募集(定年が六三歳)」 ×「六三歳未満の方を募集(定年が六五歳)」 労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けられている場合 ◯「警備員として一八歳以上の方を募集」 (警備業法により一八歳未満の就業等は禁止) 長期勤続によるキャリア形成を図る目的で、期間の定めのない雇用契約で、若年者等を経験不問で採用する場合 ○「三五歳未満の方を募集(職務経験不問)」 ×「三五歳未満の方を募集( □ □業務の経験のある方)」 技能・知識の継承の為、特定の職種について労働者数が相当程度少ない年齢層を、期間の定めのない雇用契約で採用する場合 子役など、芸能・芸術分野で採用する場合 六〇歳以上の高齢者や、特定の年齢層の雇用を進める行政施策の対象者に限定して採用する場合
ステップ 2応募受付 ~「ぜひ会ってみたい」と思わせる ~
1 「会ってみたい」と意思表示した人を逃さない!応募受付の対応で良い印象をもってもらう つい見過ごされがちですが、応募受付は「相思相愛マネジメント」の重要なポイントです。応募受付は、応募者と求人企業の「最初の直接の接点」だからです。求人企業についてまだ何も知らない応募者は、応募受付で対応した社員のそれこそ一挙一動から、その会社を判断します。「本当にこの会社で働いていいのか」、つまり「楽しく働けそうな雰囲気か」「しっかりした会社か」「硬すぎないか」「働く仲間はいい人か」等々を、意識的あるいは無意識的に、はかっているものなのです。 応募受付は、お見合いの際、世話してくれる人から得られる書類以外の、インフォーマル情報のようなもの。ここで良い印象を持ってもらうことにより、「実際に会ってみたい(面接してもらいたい)」という気持ちを高めることができます。 求人が少ない、いわゆる「買い手市場」のときならともかく、一たび「売り手市場」になれば応募者は、応募受付の対応次第で、容易に応募をやめてしまいます。応募はスタッフ全員で受け付ける体制作りを パート・アルバイトを募集することが決まったら、何よりも先にすべきことは、すでに働いているパート・アルバイトを含めた同じ職場のメンバーに、募集する事実とその内容をきちんと告知することです。目的は、「全員で応募受付する」体制を整えることです。 募集広告を出すと、応募の電話や、募集内容に関する問い合わせの電話などが入ってきます。そのとき、募集を知らないスタッフが対応し「は? 何のことですか」などと言ってしまえば、応募者が不審に思ったり、不安を抱いたりしてしまいます。 最近増えている、インターネット広告の場合も要注意です。応募や問い合わせのメールのチェック体制が整わず、返信が遅れれば、応募者は「対応の悪い会社だな」などとマイナスの印象を抱いたり、あるいは「もう選考が終わったのかも」とあきらめて、他社に目を向けたりしてしまいます。 これらは、事前に注意さえしておけば、ほぼ回避可能な過ちです。応募受付は応募者を選ぶ場であるとともに、応募者に選ばれる場でもあることを、職場全体でしっかり情報共有しておくことが大事です。 応募受付で失敗しないためには、最初から全員で受け付ける体制作りをしておきます。「パート・アルバイトを現在募集している」事実をスタッフに伝えておくことはもとより、応募者からの問い合わせがあった場合の応対の仕方などを、きちんとマニュアル化し、徹底しておきます。それにより、採用担当者が不在でも、応募者に「いい感じの会社だな、この会社で働いてみたいな」と思わせることができます。 なお、電話であれ来訪であれ応募者から何かしらのアプローチがあった際、採用担当者が不在でもきちんとした受付を確実に行っていくためには、受付フォーマットを用意し活用することが得策です。記入するべきは、以下の各点です。 ◯(応募者の)氏名 ◯電話受付、あるいは来訪の日時 ◯連絡先電話番号 ◯住所 ◯電話受付、または来訪受付時の、担当者名(スタッフ氏名) 同時に、以下の各点について「忘れずに伝えること!」として、注記しておきます。 ◆のちほど採用担当者から折り返し電話連絡したいこと ◆その際、連絡してよい電話番号について(携帯か固定電話か) ◆その際、連絡してよい時間帯について ◆応募あるいは問い合わせてくれたことに対するお礼 応募者に対して丁寧に対応する体制を作り、それを意識付けることで、スタッフ一人ひとりの態度が変わってきます。さらに、「自分も、こうやって大切に対応してもらったのだな」と感じてもらうことで、既存スタッフのモチベーションアップにもつながるのです。 2 良い人を採用するための、効果的な受付方法
5月13日 17:31
応募の数を増やすには「応募の手間」を軽くする 自社向きの人を厳選し採用するため応募の数を増やすには、応募の手間をできるだけ軽くすることが大事です。その視点から、以下、電話受付と WEB受付についての、メリットと注意点を解説します。 ●電話受付のメリットと注意点 メリットは、第一に応募が簡単なので、応募数のアップにつながること。第二に、応募者との連絡事務が簡略化できること。受けた電話ですぐに面接日時を決定すれば、何度も連絡を取り合う手間が省けます。三つめのメリットは、「電話受付」で相手を見るで詳述するように、応募者からの電話を直接受けることで、その人となりが垣間見えることです。 一方、電話受付の注意点は、募集内容によっては応募や問い合わせの電話が立て続けに来て、通常業務に支障をきたす場合があることです。「人余り」で、買い手市場化が進めば進むほど、この傾向は顕著です。例えば週末に求人広告を出した場合、翌月曜日の午前中は、応募の電話対応だけでつぶれてしまった……ということが実際に出てきます。 なお、電話受付の場合、受付開始日時や受付時間を募集広告に必ず明記しておきます。応募者が会社の定休日や業務時間外に電話をかけてしまい、「電話をしたのに出ない」「本当に募集しているのかしら?」といった苦情や疑問を抱くと、応募をやめてしまいかねません。 ● WEB受付のメリットと注意点 一番のメリットは、受付時間の制約がないこと。また、すべて電子データとして記録が残るので、「あれ、あの人との約束はどうだっけ?」といった、忙しいゆえの「つい、うっかり」を防げます。データ管理となるので、面接日程表の作成など受付事務も効率化されます。 加えて、応募者にとっての簡便さです。就職活動をインターネットで行ってきた世代がすでに三〇代となっており、彼らに WEB応募への抵抗感はありません。 注意点は、応募者の個人情報の漏洩です。すべて電子データで残るため、その管理には最大限の注意を払うことが大切です。加えて返信のスピードが大切で、少なくとも二四時間以内には何らかの返答をすべきでしょう。応募者にとって返信は、早いほどうれしいものです。丸一日経ってもなしのつぶてでは、面接に行く気さえ失わせてしまいかねません。大量の応募が見込めるときの対応方法 求人数に比べ、仕事を探している人が圧倒的に多い「買い手市場」になると、一つの募集広告に応募者が殺到することになります。実際「求人広告を出した翌日から応募の電話がひっきりなしとなり、受付初日で応募を締め切った」などという話は、最近たくさん聞いています。 過去の経験等から、そうした事態が見込める場合は、逆に応募のハードルを高めること。これにより「本当に働きたい」真面目で真剣な応募者の比率を高めるのです。 具体的には、履歴書受付がこれにあたります。特に飲食業・サービス業などのパート・アルバイト募集では、この受付方法を採っていることが少ないため、他社に比べて面倒な分、応募が減る傾向にあります。「急ぎ履歴書を書いて、封入し、切手を貼り、投函する」ことをしてでも、「ぜひ採用されたい」と思う人しか、応募してこなくなるからです。つまり、応募者を、質・量ともにしぼり込むことができます。 さらに、明らかに採用条件に合わない人の場合、「一次選考の結果」として、面接に進まず、書面で断ることが可能です。 注意点は、履歴書の取扱いです。個人情報であり細心の注意を払うことはもちろんです。また、不採用とした場合、本人に返却した方がよいでしょう。 しぼり込みの他の手段として、募集広告に「試用期間(最大二カ月)終了後、意欲や能力が高いと判断された方のみ契約更新いたします」などと記すのも効果的です。 3 まだ見ぬ相手の情報を得る工夫応募受付で「どんな人か」を垣間見る 応募受付は、応募者の人となりなど、プラス αの情報を得る貴重なチャンスでもあります。すでに「一次面接」くらいの意識で行うことが大事です。 応募受付を「応募者に選んでもらう第一歩」であると同時に、こちらからも「応募者を見る」手段なのだと意識して行うことで、採用後のミスマッチを減らせます。「こんな人だと思わなかった」というような事態を、事前に回避できる確率が高まるのです。 具体的には、ビジネスマナーがどれだけあるか、明るい印象か暗い印象か、整理して話をしたり、文章で表現できるか、などをチェックすることが可能です。 以下、応募受付方法ごとに、何が見えるかを具体的に記しましょう。「電話受付」で相手を見る 電話受付は、相手の人となりなどを一番感じやすい受付方法です。姿形こそ見えませんが、「声」は相手そのものであるからです。 例えば明るい雰囲気か、暗い雰囲気か。滑舌がよく聞き取りやすいか、もごもごとした話し方で聞き取りづらいか。早口で立て板に水のようなのか、ゆっくりと落ち着いた話しぶりなのか、などです。 募集しているのが、電話業務を伴う仕事の場合など特に、こうした「話し方のくせ」が仕事上でも繰り返される可能性は大きいです。お客さまと直接接点のある職種の場合も同様です。「話し方のくせ」は、接客サービスの場面でも出てきます。
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話し方は、トレーニングで矯正していくことも可能です。また、社会経験のない学生アルバイトなどに、最初から高度なものを求めるのは無理です。とはいえ、初期教育に多大な労力を必要とする人よりも、そのスキルをすでに身に付けていたり、少しの訓練で済む人を採用した方がいいことは事実です。 なお、電話の場合、かけてくるタイミングにも、その人となりが表れます。極端な例ですが、例えば昼も営業しているレストランに、ランチタイムに応募の電話をしてくる人は、ビジネス感覚や相手に配慮する感覚に欠けているのではないか、と判断できます。 「WEB受付」で相手を見る これは履歴書の場合も同様ですが、 WEB受付の場合、書いてある内容そのものが、「相手を見る」大切な情報となります。 書いてある内容について注目すべきは、第一に志望動機です。例えば「 ◯◯の仕事に興味があり、ぜひやってみたい」「貴店の商品のファンであり、ぜひ仕事をしてみたい」といった一言が書ける人は、「やる気」の面でも期待できます。 そして、職歴も大事です。仕事に一貫性があったり、自社と同様の業務、あるいは自社業務に必要なスキルが体得できるような仕事をすでに他社で経験しているかどうか、などを見ます。 こういった情報は、正社員採用の場合は厳しくチェックするのが普通です。ところがパート・アルバイトの場合、「住所や年齢、家族構成の確認程度しか見ない」会社もあるようです。しかし今、この厳しい経営環境のなか企業が生き残っていくためには、パート・アルバイトであるからといって、おざなりな仕事をしてもらっては困ります。 そのためには、パート・アルバイトが応募にあたって記入した情報に関しても、きちんと見ていく必要がある。そんな時期に、来ているように思います。「履歴書受付」で相手を見る 履歴書受付の場合、「 WEB受付」のところで記した“書いてある内容”に加え、筆跡や写真、また、使い回した跡がないかどうかも、重要なチェックポイントとなります。 筆跡については、字がきれいかどうかよりも、「丁寧に気持ちを込めて書いているようか」をチェックします。もちろん、宛名書きなどを手書きでしてもらうような職種の場合は、字がきれいか否かも、重要な判断材料です。 写真については、きちんとした証明写真が貼られているか、写真が曲がって貼られていないかなどをチェックします。ピンぼけのスナップ写真をはさみで切り抜いて使っていたり、写真が曲がって貼られているのは「適当でいいや」「採用されたらラッキーかな」といった、安易な気持ちの表れです。 履歴書の「使い回し」とは、応募したものの採用されず戻ってきた履歴書を、記入年月日等の部分を細工して、別の企業の応募に再利用することです。毎回書き直すのは面倒くさい、というわけです。 応募者の、この心情も理解できます。しかし、「使い回すことに平気」な裏にあるものは、「別にこの会社でなくてもいいや」という、なげやりな感情です。 本当に「ここで働きたい」と心から思えば、少しでも合格可能性を高めるために、履歴書の書き方も工夫するのが普通です。例えば、志望動機一つとっても、 A社と B社が違う会社である以上、 A社に対するものと B社に対するものが、まったく一緒であろうはずがありません。つまり、流用など考えられません。事前情報に振り回されるな 電話や WEB、履歴書などを通じ、応募者を「見る」ことの大切さを述べてきました。パート・アルバイトの採用は、後に述べるように短時間・一回きりの面接で行うことがほとんどです。必然的に、そこで得られる情報は限られます。だからこそ、なおのこと、事前情報をおろそかにしてはなりません。 しかし、矛盾するようですが、こうした事前情報に振り回されてもいけません。 その人を判断するには、当然のことながら事前情報だけでは不足です。また、収集した事前情報は、「採用する側の思い込み」である可能性が否定できません。 電話や WEB、履歴書などを通じて得られる事前情報に注意を払うのは、あくまでも応募者に関する採否の判断材料を増やすためなのです。 また、応募者側のモチベーションが、実際に会い面接で仕事の話をすることで、上がる場合があります。つまり、同じ人が、面接を通じ、自社にとって「より“良い”人材」に化けることがあります。事前情報に振り回されると、そうした新たな可能性の芽を摘んでしまったり、気づかないままで終わってしまいます。
ステップ 3面接 ~いざ、お見合い! ~
1 面接の目的は「理解し」「理解される」ことパートの面接は“即断即決”のお見合い 面接は、お見合いです。それもパート・アルバイトの採用面接の場合、結婚するかしないかを「即断即決」しなければならないお見合いであることがほとんどです。 例えば正社員の新卒採用の場合、二次・三次面接やグループディスカッション、筆記試験など相手を見定める「お付き合い期間」を設け、じっくり選んで決めるのが普通です。 一方、パート・アルバイトについては一五 ~二〇分など、短時間・一回きりの面接で答えを出すことが一般的です。新卒同様の選考ではコストがかかりすぎますし、パート・アルバイト側にも、かえって不自然に思われてしまいます。 つまりパート・アルバイトの面接では、短時間で、自社にとって最良の結果を導き出していかなければなりません。最良の結果とは、相思相愛の関係です。すなわち、自社が「欲しい」人材に、「ここで働きたい」と思ってもらい、入社してもらうこと、です。 一方で、面接が「お見合い」である以上、選ぶと同時に、選ばれる場でもあることを、忘れてはいけません。応募者側も、面接を通じて企業を見ています。採用するかしないかを判断するのは企業ですが、その判断を聞いた後、「入社するか否か」を決めるのは応募者です。 選び選ばれる場である面接で、「相思相愛の関係になる」という最良の結果を得ていくためには、「応募者を理解する」「応募者から理解される」という二つを、同時に行っていく必要があります。「応募者を理解する」とは、応募者の人となりや、勤務可能な時間帯、仕事に対する意欲や志向性などについて質問し、確認をすることです。一方、「応募者から理解される」とは、自社の業務や、任せたい仕事の内容、また、仕事に対してどんな姿勢で臨んでほしいかなどを説明し、わかってもらうことです。良い面接場所とは? 場所の案内方法は? お見合いは、事前準備が大事です。落ち着かない場所だったり、要領を得ない進行ではうまくいきません。 面接も同じです。例えば場所も「パート・アルバイトだし、どこでもいいや」ではいけません。できるだけ人の出入りのない、落ち着いて話のできるところを選びます。 自社の会議室などを確保できれば最高ですが、会議室などがない場合でも、ちょっとした工夫で別の場所を「よりよい面接場所」に仕立てられます。 例えば休憩室なら、面接中は従業員の立ち入りを制限したり、衝立で仕切って面接用のコーナーを設けます。レストランやファストフード店などで客席を利用する場合は、お客さまの少ない隅を使うのはもちろん、隣にお客さまが座ったり、近くに団体客を誘導することのないよう従業員に指示しておきます。 ささいなことのようですが、落ち着いて話ができることは、「理解し」「理解される」ための大変重要な要素です。 なお、応募者は緊張して面接会場を訪れます。だからこそ、訪れた場所が間違いなく面接会場であることを、一刻も早く知らせてあげる工夫も大事です。 具体的には「誰が何時に面接に来るか」を会社の受付担当者や、店舗の場合はフロアで働く従業員に伝えておき、それらしい人が来たら「面接にお越しの方ですか」などと声をかけてもらいます。また、建物の入り口などに「 ◯◯会社パート・アルバイト面接会場( ◯階にお越しください)」といった貼り紙を掲示します。 こうした万全の対応をすることで、面接に来た応募者が抱く、店や会社に対する印象は、格段に良くなります。相手を不快にさせない時間の取り方 せっかく面接に来てくれた応募者との面接時間は、最低二〇分は取りたいもの。たった一〇分ほどでは相手に失礼ですし、面接時間として不十分です。初めての場所で固くなっている応募者の緊張をほぐし、「理解し」「理解される」ために、質問したり、逆に相手の質問などを受けていれば、二〇分くらいは簡単に経ってしまいます。 任せたい仕事の難易度が高い場合などは、三〇分以上みておいた方がいいでしょう。それだけ「理解し」「理解される」べき要素が多くなるからです。また、ここでしっかり意思疎通できていることは、実際に働き始めて以降、「相思相愛」の関係になることを、後押しします。 何人もの応募者と立て続けに面接する場合は、四五分間隔くらいで面接スケジュールを立てておくと安心です。面接担当者自身もトイレに行ったり、面接中に入った急な仕事の連絡等に対応することもできます。 定刻に訪れた応募者を待たせるなどしてはなりません。ビジネスパーソンとして当然ですし、応募者に「この程度の会社か」と、あなどられてしまいます。 2 相手を見抜く面接の仕方と質問内容
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相手を見抜く面接の五段階 面接では、短時間で応募者の人柄ややる気、経験や能力などを見抜き、「相手が自分の望む人」なのかを見極めることが大事です。それには以下の五つの段階を、確実に踏むことです。 ● 1 場の雰囲気を和ませる 応募者が面接場所に入ったら、「こんにちは」と明るくあいさつをし、応募の礼を述べ、採用担当者としてにこやかに自己紹介します。応募者の素顔を見るためには、何よりも緊張をほぐしてあげることが大事だからです。 このとき「場所はすぐにわかりましたか」「外は暑いですか」など簡単に答えられる質問をしてもよいでしょう。これは「アイスブレイク」といわれるもので、氷のようなコチコチの空気をとかすことが狙いです。 ● 2 仕事内容と「期待する働き」を説明する 会社の業務内容と、採用後に任せる仕事の内容を説明します。どんな部署で、どんな役割を果たしてもらうのかや、具体的な作業内容などの解説です。 また、その際、相手に期待する働きなどもはっきりと伝えます。例えば、パート・アルバイトとはいえ責任をもって仕事にあたってほしいことや、期待する成果などもすでにこの時点から伝えます。面接でここまで踏み込む理由は、後述(「あなたに期待すること」を、面接で話す重要性)します。 ● 3 応募者に質問をする 志望動機、働く目的、得意分野、前職の退職理由、通勤時間、通勤手段、勤務可能な期間・曜日・時間などを質問します(詳細は「面接で相手に直接聞くこと」リスト)。また、仕事に対する志向性なども確認します。つまり、「あくまで単純簡単な作業を、責任を負わずにやりたい」のか、「難易度が高く責任もある仕事にも取り組んでいきたい」のか、ということです。 なお、主婦パートの場合、知っておきたい実務知識 で解説する「扶養控除の範囲内」で働きたいかどうかは、勤務シフトなどにもかかわってくるため確実に聞いておきます。 ● 4 応募者からの質問を受ける 応募者が知りたいことはさまざまです。丁寧に説明したと思っても、応募者にとっての不明点はいろいろと残っているものです。 そんな疑問を取り除き、不安を解消する機会を積極的に提供することは、応募者の満足につながります。企業への信頼感も増します。 ● 5 今後の予定を伝える 面接が終わったら、「一週間以内に、採用の場合はお電話で、不採用の場合は書面で通知します」などと、期限を区切った具体的行動予定を知らせます。これが、企業に対する信頼感のもととなります。 その際「お越しいただき、ありがとうございました」など、応募者が時間を割いて面接に来てくれたお礼を、改めて述べるとよいでしょう。 社会保険に加入する、しない? 社会保険には、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険、介護保険の五つがあります。パート・アルバイトであっても、以下の加入要件を満たす場合は、加入します。 雇用保険……一週間の所定労働時間が三〇時間以上の場合、正社員同様「一般被保険者」として加入。三〇時間未満でも、一週間の所定労働時間が二〇時間以上の場合「短時間労働被保険者」として加入。ただしいずれの場合も、六カ月以上雇用される見込みがあることが必要となる。また、昼間学生は基本的に適用除外 労災保険……パート・アルバイトでも全員が加入 健康保険・厚生年金保険……一日または一週間の所定労働時間及び一カ月の所定労働日数がその事業所で働く正社員などのおおむね四分の三以上の場合に加入。ただし「日々雇用される人(一カ月を超えない場合)」や「二カ月以内の期間を定めて雇用される人」などは適用除外 介護保険……パートが健康保険の被保険者で、四〇歳以上六五歳未満の場合に加入 なお、社会保険の資格取得日は、試用期間を設けていた場合でも、実際に勤務を開始した日になります。また、社会保険の適用要件を満たしているにもかかわらず加入していない場合、二年間さかのぼって保険料を徴収されることがあるので、注意します。 一〇三万円、一三〇万円の壁とは ~税金と扶養控除 ~ 主婦パートを雇用していると、「年収一〇三万円の壁」「年収一三〇万円の壁」といった言葉を、耳にすることがあるでしょう。 これらの額を超えなければ、所得税を納めずに済んだり、サラリーマンの妻の場合社会保険料を自ら負担することなく社会保険に加入できるため、主婦パート
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パートが自分の年収がこれを上回らないよう、就労調整することがあるのです。 なお年収は、一月 ~一二月で計算します。このため、一二月の年末ぎりぎりになって、就労調整の目的から「これ以上働きたくない」と言い出すパートが少なくありません。「年末が書き入れどき」という企業では特に、パートの就労調整意向を事前に確認し、年末に休みが集中しないよう適切にマネジメントすることが大事です。 ちなみに年収一〇三万円とは、パートの年収がそれ以内であれば本人の所得に対しては所得税が課税されないという数字です。同時に、その夫の所得には「配偶者控除」が適用されます。 一方、年収一三〇万円とは、サラリーマンの妻である主婦パートの年収がそれ未満の場合、夫の被扶養者として社会保険に加入できるという数字です。つまり、年収が一三〇万円以上になると夫の社会保険の扶養から外れ、パート先で社会保険の被保険者に該当すればパート先で社会保険に、該当しなければ国民健康保険・年金に自ら加入しなければなりません。 このほか、年収が一〇〇万円を超えると、住民税がかかります。 年収一〇三万円について、主婦パートの年収がこれを超えても、「配偶者特別控除」があるため、夫の所得税が急激に増え世帯の手取り収入が減ってしまうことはありません。ただし、夫が会社から扶養手当を支給されている場合、その支給基準が“妻の年収一〇三万円以内”となっていることがあり、要注意です。 年収一三〇万円については、これを超えると「自分で保険料を支払う」こととなる半面、将来自分がもらえる年金額も変わるのですが、目先の手取り収入額が減る抵抗感は大きいようです。面接では五感をフル稼働する 面接には、五感をフル稼働させるつもりで臨みます。 すでに述べたように、パート・アルバイトの面接は、短期決戦のお見合いです。短時間で集中して、採否の判断に必要な情報を、あらゆる角度から入手しなくてはなりません。 採否判断のための情報の第一は、会話から入手する言語情報です。具体的には、内容つまり「質問への答えそのもの」と、内容以外、つまり「質問に対する受け答えの仕方」という二方面からチェックします。 前者は、面接相手がステップ 1で確認した「欲しい人材像」に合っているか否かを、より直接的に確認する材料となります。例えば仕事への意欲や志向性、実際に働ける時間(シフト)などは、面接で相手に直接聞くポイントです。一部書面で提示してもらった方がいいものもあります。一方後者は、「言葉遣いや敬語はどうか」など内容以外の言語情報です。 採否判断のための情報の第二は、非言語情報全般です。つまり「相手の目を見て話せるか」などです。「全体的な印象は」「そわそわしていないか」「身だしなみはどうか」なども、さりげなく入念にチェックします。 それぞれについて、以下に詳しく具体的に記しましょう。「面接で相手に直接聞くこと」リスト 面接で具体的に何を聞くかは、各社各様です。その企業の「欲しい人材像」によって、若干変わってくるからです。 そこで以下に、「面接で聞くこと」を網羅的に記してみました。ここから自社に必要な項目をピックアップしたり、自社ならではの質問項目を追加して、オリジナルの質問表を作るとよいでしょう。 □志望動機(やる気があるか、自社向きの人材か) □働く目的(主な生計費としてか、家計補助か、余暇活用か等) □希望職種(採用後の適正配置は) □前職の内容・過去の職務経験(どんな仕事をしてきたか) □前職で受けた教育(どんな能力開発を受けてきたか) □得意分野(どんな仕事に向いているか) □パソコン習熟度(入力の速度、使用可能ソフト) □前職の退職理由(長期勤務が期待できるか、責任転嫁していないか) □健康状態(持病はあるか、大病した経験は) □通勤時間、通勤手段(交通費は) □勤務可能期間、曜日、時間(長期か短期か、シフトへの対応は〈「予定が重ならない人を採用する」参照〉) □家族の理解(夫や子ども、あるいは親は、本人が働くことに賛成か) □扶養控除内での労働の希望(一〇〇万円か、一〇三万円か、一三〇万円か) □正社員への転換の希望(現在、または、将来子どもの就学など働く環境が変化した際の希望の有無)「書面での提示を求めること」リスト 正確な情報を間違いなく入手するには、履歴書など書面で提示してもらうのが得策です。特に、以下のような内容に関してです。 □氏名(読み仮名) □生年月日、年齢 □住所、電話番号
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□扶養家族の有無 □学歴、職務経歴 □保有資格(運転免許、介護福祉士、簿記二級、など) 本人にその場で書いてもらうか、面接の日時などを連絡する際に「面接のときに、履歴書を忘れずに持参してください」などと伝えます。「相手の様子から見抜くこと」リスト 相手の様子から見抜くことは、すでに述べた「内容以外の言語情報」および「非言語情報全般」です。具体的には、以下の各点などをチェックします。 □第一印象(自社の発展につながりそうか) □服装・身だしなみ( TPOに合っているか、清潔感があるか) □ヘアスタイル・髪の色・化粧・マニキュア(派手過ぎないか、職場の風土に合っているか) □マナー(遅刻の有無、あいさつやお辞儀、言葉遣い、敬語など) □コミュニケーション力(質問を正しく理解し端的に答えられるか、相手を見て話を聞いたり、話をしたりできるか) □性格・性質(前向きか、協調性は、積極性は、謙虚さや学ぶ姿勢を持ち合わせているか、動作は乱暴でないか、など) □面接していないときの態度など(面接の順番を待っているとき、会社を出たあとの様子など)「この人でいい?」チェックリストが判断を助ける 面接時に質問したり、チェックしたりする項目をピックアップしたら、それをフォーマット化しておくとよいでしょう。 A 4サイズ一枚くらいに項目を列記し、 ABC評価や気づいたこと、また、相手が答えた内容を書き込んだりできるようにします。 フォーマット化したものを、「面接チェックリスト」として共有すれば、社内の誰が面接しても一定の水準で面接できます。また、合否判断をする際に、面接結果を俯瞰して比較できます。面接の順番や、誰が面接したかといった、応募者本人とは関係のないことによって、面接結果がブレることを防げます。面接で聞いてはいけないこと 面接では、就職差別につながる質問をしてはいけません。 日本国憲法は、すべて国民は個人として尊重され、法の下に平等で、人種、信条、性別、社会的身分または門地により差別されない、と定めています。また、すべての人に職業選択の自由を保障しています。さらに労働基準法が、労働条件に関する差別的取扱いを禁止しています。 具体的な「してはいけない質問」を、以下に例示しました。 ●本籍などに関する質問はダメ □あなたの本籍地(出身地)はどこですか □生まれてからずっと、現住所に住んでいるのですか □あなたの住所の略図を書いてください ●家族の状況・家庭環境に関する質問はダメ □あなたのお父さんの職業は何ですか。勤務先、役職を教えてください □あなたのきょうだいは何をしていますか □ご実家の家業は何ですか □あなたの両親の学歴を教えてください □お父さん(お母さん)の死因は何ですか □あなたの家は、持ち家ですか、借家ですか ●思想、信教などに関する質問はダメ □あなたには、支持する政党がありますか □労働組合運動をどう思いますか □あなたの家の宗教は何ですか □あなたの愛読書(誌)は何ですか □あなたの人生観は □あなたの尊敬する人物は 3 相手に「理解してもらう」ための面接ノウハウパート・アルバイトが「辞めない」面接方法 パート・アルバイトがすぐ辞めてしまうのには、理由があります。多いのが、思っていた仕事(職場)と違ったため、「その職場で働き続ける意義(あるいは自信)がなくなった」というものです。結婚後に事前に知らなかったマイナス要素を知り、「こんな人とは思わなかった」と離婚を決意する、といったところでしょうか。
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こうした事態を避けるには、パート・アルバイトの「予想」と、「実際」とのギャップを埋めることが必要です。つまり、「どんな職場でどんな仕事をしてほしいのか」「どんな人材を望んでいるのか」など企業側の意向を、最初からきちんと伝えることが大切です。 これを、面接を工夫することで、さりげなく、うまく実行している企業の例を二つ挙げましょう。【事例】「売り場」を案内しながら面接する ~大手アパレル会社の場合 ~ あるアパレル会社では、ショップでの販売パート・アルバイトを採用する際、面接をバックヤードと売り場の両方で行っています。 バックヤードでは、「いつ、どのくらい働けるのか」や過去の職歴などを質問し、また履歴書の内容について確認します。要するに、いわゆる「面接」を行います。 一方、売り場で行うのは、いわゆる「面接」ではありません。具体的には、店長や正社員など面接担当者が、応募者を連れて売り場を案内します。それにより応募者に、さまざまな情報を具体的に与えることができます。例えば、自社がどんな商品を扱っていて、どんな方がお客さまなのか。また、先輩パート・アルバイトはどんな髪形や装いで、どんな仕事を行っているのか、などです。 この「案内」ほど、応募者に採用後の自分の仕事をリアルに誤りなく理解してもらえる方法はありません。しかし、効用は、これだけではありません。 というのは、面接担当者は応募者を案内しながら、応募者を見てもいるからです。例えば、仕事の説明を聞いているときの目の輝き。また、その際に応募者自身から質問があるかどうか。その他先輩パート・アルバイトを紹介した際の受け答えや、面接担当者がお客さまに「いらっしゃいませ」あるいは「何かお探しですか?」と声をかけた際に、お客さまを全く無視した態度をとるか、面接担当者と一緒になって会釈の一つもできるか、といった具合です。 ポイントは、応募者側に、自分が「面接されている」感覚がないことです。また、机を挟んで向き合う面接と違い、リラックスしやすくなります。つまり、より素のままの「その人となり」が出てきます。 同社の人事部長は、こう言います。「売り場を案内する面接方法は、とても良いと思っています。売り場での反応を見て『この人なら』と思い採用した人は、自社に合った人材である確率が高いです。具体的には、職場に慣れるのが早く、仕事ぶりが積極的で、また長く働いてくれる傾向にあります」【事例】 3 K職場をあえて見せて、パート・アルバイトが定着 ~工場の場合 ~ ユニットバスなどの成型を行う、ある工場のパート・アルバイトの仕事は、深夜労働もある三交替勤務。冬は寒く夏は暑く、粉塵も舞うなど環境も厳しいなか高温・高圧の機械を操作します。いわゆる「 3 K職場」であり、「パート・アルバイトを採用しても、すぐ辞められてしまう」のが悩みでした。 困った工場長は、ある日面接の仕方を一変させました。これまでのように会議室で行うだけでなく、応募者を実際に工場の現場に連れていき、「入社後はこんな仕事をしてもらいます」と、逐一説明して回ったのです。 もちろん「自分にはとても勤まらない」と、説明を受けながら明らかに引いてしまい、面接後辞退してくる応募者も増えました。ところが一方、実際に働き始めた場合を想定して、一所懸命質問してくる人もいたのです。 工場長が、なかでも熱心だった主婦を採用したところ、結果は大成功。辞めないどころか、時間あたりの製造数を着々と上げ、改善提案の件数も多い、抜群の戦力に育ちました。「あなたに期待すること」を、面接で話す重要性 面接において、見過ごされがちですがとても大切なポイントがあります。それは、面接において、仕事の内容を説明すると同時に、採用後に「どんな働きぶりを期待するか」を、応募者に語るということです。「え? まだ、採用するかどうかも決まっていないうちに?」と思うかもしれません。 もちろん、採否が確定していないのに、応募者に「合格」と思わせるような発言をしてはいけません。あくまでも「もし、採用になったら」という前提で、です。 その上で、すでに面接のときから「あなたに期待する働き」を話します。というのは、意欲があり、高い資質をもった人ほど、会社が期待を表明することにより、やる気を喚起させる傾向にあるからです。 特に応募が多いときなど「良さそうだな」と思った相手には、ぜひ試していただきたい方法です。というのは、早々に「期待する働き」というハードルを提示することにより、「自分には無理」と辞退してしまう応募者も当然、いるからです。ハードルの提示が、ふるいの役割を果たすわけです。 逆にいえば、応募者が少なく、ともかく採用したい場合などには勇気が必要な行為です。面接結果の通知の仕方が「よりよい今後」を左右する 面接・選考を終え、「採用」「不採用」を決定したら、通知は面接後一週間以内を目安に、全員にできるだけ迅速に実施します。面接時に、面接相手に通知の期限や手段を伝えた場合、当然、それに従って行います。 なお、通知の仕方は、採用の場合と不採用とでは違います。採用の場合は、応募者とのコミュニケーションを意識します。採用通知は、「今後の長いお付き合い」つまり「雇用関係」の、まさにスタートとなるからです。 一方、不採用の場合は、応募者に悪印象を残さないことが第一です。「不採用」は、ただでさえ喜ばしくない情報ですから、表現などには、細心の注意を払います。
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【採用する場合】コミュニケーションをかねた通知方法 採用の場合、連絡は電話で行うとよいでしょう。本人と直接電話で話しながら、入社の意志を確認できます。また、初出社日の決定や、初出社日にもってきてほしい書類、その他注意点を、その電話で伝えることが可能です。 また、応募者の疑問や不安の解消の場にできることも重要です。ぜひ会社側から、相手に「何かご質問はありませんか?」と、たずねましょう。こちらから質問を促すことで、相手も聞きやすくなります。また、会社側のそうした態度によって、これから入社する人に、会社に好印象をもってもらえます。 こうした電話のちょっとしたやり取りも、大切なコミュニケーションです。何より「合格」というそのものが、応募者にとってはうれしい知らせ。だからこそ通知の際は、「おめでとうございます。これからよろしくお願いいたします」といった言葉を添えましょう。 うれしさを採用側が共有してあげることにより、応募者の気持ちが高まります。【不採用の場合】「しこりを残さない」通知の仕方 不採用の通知には、細心の注意が必要です。前述のように、パート・アルバイトの応募者は会社の近くに住む住民であることが多いもの。このため特に小売店や飲食店の場合など、「応募者 =顧客」の可能性が高いからです。 ただでさえ不採用は、応募者に「否定された」気持ちを抱かせます。お見合いで相手から断られるのと同じです。不採用がきっかけで大切な顧客を失ったり、マイナスのうわさなどを流されないよう、気をつけなければなりません。 具体的には「選考結果のご通知」等の書面を、封書で送るとよいでしょう。書面には、不採用の理由を、誠意を込めて記します。例えば「このたび募集人員 ◯人のところ、これを大幅に上回る方々からご応募いただきました。つきましては選考の結果、残念ながら貴意に添いかねる結果となりました」といった具合です。また、面接に来てくれたお礼の言葉も、忘れずに記します。 その際、もし可能であれば、「お礼の一言」を、別途自筆で添えるとよいでしょう。書面に印刷した正式なお礼の言葉とは別に、「今回はご応募いただき、本当にありがとうございました」などと書き添えるのです。不採用通知の数が多くなれば大変ですが、「手書き」の一言が心を伝える効果は絶大です。 さて、提出してもらった履歴書の返却についてですが、法的な規制はありません。しかし、すでに触れたとおり、不採用通知と同封するなどして返却したほうが、良い印象を与えます。 個人情報保護法の施行により、応募者は従来にも増して応募書類の扱いに敏感になっています。返却しない場合は、あらかじめその旨を求人広告に記載しておくか、面接時に伝えておいたほうが良いでしょう。
ステップ 4入社(雇用契約) ~長いご縁の第一歩 ~
1 入社日は結婚記念日入社当日が大切 ~パート・アルバイトが初日で辞める理由とは ~「入社当日」は、言ってみれば結婚記念日。「これから、一緒に、頑張りましょうね」と、お互いが気持ちを確かめ合い、約束をする節目の日です。 相思相愛マネジメントにおいても、入社当日はとても大切です。入社当日の過ごし方次第で、採用したパート・アルバイトの定着や成長が決まると言っても過言ではありません。 採用の通知を受けた応募者は、うれしさと同時に、これから始まる新たな仕事や人間関係に、不安を抱いているのも確かです。「不安な気持ち」を解消させつつ、「採用されてうれしい」「これから新たな職場で頑張るぞ」という前向きな気持ちを、より大きくふくらませ、持続させる。これが、パート・アルバイトを戦力化する入社時点でのポイントです。 ところが、パート・アルバイトの採用担当者と話していると「せっかく採用したアルバイトが、初日だけで来なくなっちゃったんだよね」というケースが少なくないようです。一週間で辞めてしまった、などという話もよく聞きます。 その理由の多くは、パート・アルバイトが「辞めない」面接方法でも触れたように、「思っていた職場や仕事と違ったから」です。もちろん「違った」内容はいろいろです。例えば「思ったよりきつい仕事だった」「職場の雰囲気が自分に合わなかった」「仕事をきちんと教えてくれなかった」「自分の居場所がなかった」「なんとなく怪しげな雰囲気だった」「雇用契約を結ばない」「まだ仕事が終わっていないのに、タイムカードを打刻させられた」といった具合です。 要するに、「うれしい気持ち」と「不安な気持ち」の両方を携えて入社したものの、入ってみたら「不安な気持ち」が増幅される結果になった、ということです。【事例】初日の対応で辞めようと思ったわけ ~事務パートの場合 ~「事務職で採用になったパート先を、一週間で辞めたことがあるんです」 三〇代前半の女性が、大変な剣幕で話し始めました。彼女が入社したのは広告会社。時給や通勤時間などの条件に多少の不満はあったものの、あこがれの業種であり、「ここで頑張ろう!」と思ったといいます。 それなのにたった一週間で辞めてしまったのは、新人を受け入れる体制があまりにもひどかったからです。例えば入社当日、総務事務として入社したにもかかわらず、彼女の机は用意されていませんでした。総務の仕事は、机なくしてはできません。「私は仲間に歓迎されていないのかしら」。彼女の心は、不安でいっぱいになったといいます。 結局彼女の机が入ったのは、勤務開始後四日目でした。しかも引き出しを開けてみると、最低限の事務用品もそろっていないどころか、以前の持ち主の私物がいろいろ出てくる始末。彼女は、「こんな失礼なことはない」「これでは先が思いやられる」と、あっさり辞めてしまいました。入社前の準備 パート・アルバイトとはいえ、採用に至るまでには会社側に、お金や時間や労力など多くのコストがかかっています。苦労してようやく採用した人に、初日あるいは一週間で辞められてしまっては、会社としては大変な持ちだしです。 そんな結果にならないよう、また、入社当日を今後の戦力化に向けた第一歩にするためには、事前の準備が大切です。当日になって不備や不手際が多く起こるようでは、先ほどの例のようにパート・アルバイト本人が、不安になったり軽んじられた気持ちになってしまいます。これでは、モチベーションも下がって当然です。 難しいことをする必要はありません。大事なのは「ウェルカム」の気持ちが伝わること。例えばロッカーなどに、新人パート・アルバイトの名前を記入しておくだけで、「歓迎」の気持ちは伝わります。 とはいえ、店長や正社員など、新人パート・アルバイトを迎える側は、日々、日常業務に忙殺されているのが現状でしょう。「ユニフォームが届かず、初日なのに仕事に入ってもらえない」といったうっかりミスは、多発しがちなのが現実です。 そこで入社前の準備として、具体的にすべきこと、したほうがよいことを、チェックリスト化してみました。いちいち「何をすればいいんだっけ?」とか「あれはやったっけ?」など一から考えるのは、時間の無駄でしかありません。 リストは、さまざまな業種を想定し、網羅的に作成しています。これをもとに、自社に不必要なものを削ったり、必要な項目をさらに加えて、オリジナル・チェックリストに、カスタマイズしてください(以降のチェックリストについても同様です)。 ●「うっかりミス」を防ぐ入社前準備チェックリスト □労働条件通知書(雇用契約書)の用意
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□給与振込先申告書の用意 □通勤交通費申告書の用意 □業務マニュアルの用意 □就業規則の用意(設置場所の確認) □ユニフォームの準備(サイズの確認) □社章、名札、 IDカードなどの準備 □机の確保と清掃 □文具等の準備 □パソコン等の準備( Eメールアドレスの取得) □ロッカーの確保と名前の記入 □タイムカードの準備 □職場の仲間に「明日 ◯◯さんが入社」と伝えておく □近い部署のスタッフに「明日新人が入社する」と伝えておく 2 「入社当日にすべきこと」と雇用契約入社当日にはうれしさと「これからよろしく」の気持ちを表現する 入社当日、最も大切なのは、「新しい仲間である“あなた”が来てくれてうれしいですよ、あなたを歓迎していますよ」という気持ちを、新人パート・アルバイトにきちんと伝えていくことです。 こうした気持ちを表現するのにはコツがあります。第一のコツは、何といっても笑顔で応対することです。笑顔は、受容のサインです。笑顔で迎えてあげるだけで、相手は安心するものです。 第二のコツは、「歓迎」の気持ちが、採用担当者や上司だけでなく、先輩パート・アルバイトも含めた職場の全員のものであることを、伝える工夫をすることです。例えば朝礼等で紹介する場合、新人のあいさつが終わったら、上司が率先して拍手します。それにより自然と、職場に拍手が沸き起こります。「歓迎」のムードを、上司が自らリードして作り上げていくのです。 そのほか、入社当日にすべきこともチェックリスト化しました。自社に必要なものを選び、事前準備に役立ててください。 ●「入社当日にすべきこと」チェックリスト □労働条件通知書の交付(雇用契約の締結) □雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入手続(該当者のみ) □必要書類の提出(給与振込先申告書、通勤交通費申告書など) □職場案内(タイムカード、トイレ、給湯室、更衣室、コピー機等の位置など) □メンバー紹介(上司、仲間) □関連部署紹介(日ごろ顔を合わせる人たち) □座席の確認(本人、上司、仲間) □就業規則の説明 □職場の決まりや慣習などの説明(お茶の飲み方、昼食の取り方など) □今後のスケジュールの説明(導入教育・研修、実際の仕事の開始など) □次回出社日の行動、持ち物等の連絡確実な信頼関係を築くために もう一つ忘れてはならないのが、労働条件通知書を交付して、雇用契約を結ぶことです。雇い雇われる、つまり「雇用関係」にあることを、パート・アルバイト本人と約束します。「え、パート・アルバイトに雇用契約が必要なの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、必要です。パート・アルバイトも労働者であり、当然、労働基準法が適用されます。 また、雇用契約を結ぶ際には、正社員同様、労働条件通知書を交付して、労働条件を明らかにしておく必要もあります。労働条件通知書は、ハローワークなどで入手できます。 労働条件を明らかにした雇用契約が大事なのは、法律で定められていることはもちろんですが、それだけではありません。それ自体が、働く側にけじめを感じさせ、「きちんとした会社だな」との印象を与える効用をもつからです。これがパート・アルバイト本人の「私もしっかり頑張らなくちゃ」「ちゃらんぽらんではいけないな」という意識付けにつながります。 また、上司も「ちょっとぐらいいいだろう」などと甘えることなく、労働条件に則った雇用管理をすることとなります。雇用契約の結び方と明示しなくてはならない労働条件 雇用契約は、労働条件通知書を交付することで代替できますが、その空きスペースに雇用契約欄をオリジナルで設け、パート・アルバイト本人に署名捺印して
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もらうなどしてもよいでしょう。 なお、雇用契約を結ぶ際会社側が、労働者側に「明示しなくてはならない労働条件」があります。これは、労働基準法及びパートタイム労働法により、定められているものです。このうちパートタイム労働法で定められているものは、パート・アルバイトに対してのみ、明示することが義務づけられています。 ちなみに、このパートタイム労働法の対象となるのは、「フルタイム正社員より短い時間働く労働者」です。社内における呼称が何であれ、関係ありません。つまり、パートだろうが、アルバイトだろうが、契約社員や嘱託であろうとも、自社のフルタイム正社員より所定労働時間が短ければ、パートタイム労働法の適用対象者となります。 明示しなければならない労働条件は、具体的には、以下の ~ の各項目です。 ちなみに、項目の下に ◎印があるものは、労働基準法上の明示事項です。〇印があるものは、パートタイム労働法上の明示事項です。 また、 ☆印の項目は「必ず“書面で”明示しなくてはならない事項」、 ★印の項目は「必ず明示しなくてはならない事項(できる限り書面により確認すること)」、 ▲印の項目は、「制度を設ける場合に明示しなければならない事項(できる限り書面により確認すること)」となっています。 労働契約(雇用契約)の期間 ◎ ☆ 就業の場所、従事すべき業務 ◎ ☆ 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を二組以上に分けて就業させる場合(交替制など)における就業時転換に関する事項 ◎ ☆ 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金、賞与その他これらに準ずる賃金を除く)の決定、計算、支払方法、賃金の締切と支払の時期 ◎ ☆ 退職(解雇の事由を含む) ◎ ☆ 昇給の有無 〇 ☆ 昇給(有無を除く昇給時期や昇給基準等) ◎ ★ 退職手当の有無 〇 ☆ 退職手当(有無を除く支払い基準や支払い方法等) ◎ ▲ 賞与の有無 〇 ☆ 臨時に支払われる賃金、賞与(有無を除く支払い基準や支払い方法等) ◎ ▲ 労働者に負担させる食費、作業用品などに関すること ◎ ▲ 安全・衛生 ◎ ▲ 職業訓練 ◎ ▲ 表彰・制裁 ◎ ▲ 災害補償・業務外の傷病扶助 ◎ ▲ 休職 ◎ ▲ なお、 ☆印(必ず“書面で”明示しなくてはならない事項)のうち、労働基準法で定められている ~ の五つについては、これに違反すると三〇万円以下の罰金に処せられます。 一方、 ☆印のうち、パートタイム労働法上の明示事項である については、これに違反した場合、過料一〇万円に処せられます。なお、この三つについてはパート・アルバイトが希望した場合、ファクスや Eメールでの交付も OKです。 ちなみにこの は、二〇〇八年四月の改正法施行により、新たに「書面を交付して明示しなければならない労働条件」に定められました。つまり、労働条件の書面での明示義務項目に関しては、パート・アルバイトは正社員以上に強化されたということです。パート・アルバイトは、フルタイム正社員に比べて働き方が多様であり、結果、労働条件も正社員に比べ不明確になりがちなことに対応しています。雇用契約の期間をどうするか ~二種類の雇用契約 ~ さて、書面で明示しなくてはならない労働条件の最初にも「労働契約の期間」が来ていますが、この労働契約つまり雇用契約の期間について記しましょう。 雇用契約には、二種類あります。「期間の定めのない」雇用契約と、「期間の定めのある」雇用契約です。「期間の定めのない」雇用契約とは、要するに定年までの契約のことで、一般的に正社員と呼ばれる人は、こちらの契約を結んでいます。一方「期間の定めのある」雇用契約とは、六カ月や一年など文字どおり期間を決めた雇用契約です。いわゆる契約社員と呼ばれる人たちは、この契約のもとで働いている人たちです。 パート・アルバイトの場合、雇用契約は「期間の定めのある」契約と思われがちですが、「期間の定めのない」契約を結んでもかまいません。 入社当初の契約は一カ月など短期にし、この間にパート・アルバイトの働きぶりを観て、「期待どおり」であれば契約期間を延長して更新する、といったやり方もあります。二カ月以内の有期契約で雇用し、これを更新しなければ、所定労働時間や日数が正社員の四分の三以上だとしても、社会保険に加入する必要はありません。これをパート・アルバイト本人に伝えることで、頑張る気持ちを後押しもできます。 短期の契約であれば、もし仮に、「思ったような戦力ではなかった」「職場の雰囲気を乱し、組織で仕事を進める上で迷惑になる」といったことが生じても、契約を更新しなければよいだけです。 有期雇用契約を締結・更新するときの留意点 有期雇用契約を結んだり、更新するときには、「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」により、以下を実施しなければなりません。 有期労働契約を「締結」する場合 パート・アルバイトに対し、その契約期間が満了後、契約の更新があるかないかを明示すること
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有期労働契約の締結時、「更新あり」とした場合 パート・アルバイトに対して、その契約を更新する場合またはしない場合の判断基準を明示すること 有期労働契約の締結後に、その内容や更新について変更する場合 契約を締結したパート・アルバイトに、変更の内容を速やかに明示すること は、例えば「自動的に更新する」「更新する場合があり得る」「契約の更新はしない」といった具合です。 また、有期雇用契約を実際に更新する場合には(契約を一回以上更新し、かつ雇い入れ日から起算して一年を超えて継続勤務している場合)、その契約の実態や、パート・アルバイト本人の希望に応じて、契約期間をできるだけ長くするように努めなくてはなりません。 なお、契約期間を定める場合、最長「三年」が限度です。ただし、後掲の四つの場合は、例外となっています。また、一年を超える契約の場合、一年を超えた日以降労働者は、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができます。 ダム工事等、三年以上の期間を必要とする事業 三年を超える訓練期間を要する認定職業訓練 一定の基準に該当する高度の専門的知識等を有する労働者(最長五年) 満六〇歳以上の者を雇い入れる場合(最長五年) パート・アルバイトにも就業規則を パート・アルバイトにも、就業規則が必要です。労働基準法により事業主は、パートを含め常時一〇人以上の労働者を使用していれば、就業規則を作成しなくてはなりません。 その際、正社員用に作成したものをそのまま適用してもかまいませんが、パート・アルバイト用のものを別途作成したほうがよいでしょう。労働条件が異なるパート・アルバイトに正社員用のものを適用すると、後々トラブルになりかねません。 というのは、雇用契約を結ぶ場合、パート・アルバイトの労働条件は、労働契約法により、“個別に合意して労働条件を決定している場合”にはその内容となりますが、“労働条件を詳細に決めていなかった場合”には就業規則の内容が、労働者の条件になるからです(就業規則が合理的な内容であり、かつ労働者に周知させていた場合に限る)。 ちなみに労働契約を変える場合、就業規則の変更による労働条件の不利益変更は、「変更後の就業規則を労働者に周知させ」かつ「就業規則の変更が合理的なものである」場合に限り、有効となります。 なお、就業規則を実際に作成したり変更する場合は、適用を受けるパート・アルバイトの過半数を代表する者の意見を聴くよう努めることとされています。作成や変更を行った就業規則は、事業所管轄の労働基準監督署長に届け出なければなりませんが、その際はこの意見書を添付する必要があります。 外国人を雇う場合は? 日本に在留する外国人は、在留資格の範囲内で、定められた在留期間に限って、就労などの在留活動が認められています。これらの在留資格や、在留期間は、パスポートにある「上陸許可証印」や「外国人登録証明書」等で確認することができます。 留学生・就学生は、法務大臣の資格外活動許可を受けた場合、働くことができます。留学生が応募してきた場合は「資格外活動許可書」の提示を求め、確認します。許可を受けずに働けば、それは不法就労です。 また、留学生・就学生については、就労時間の上限が定められています。一方、勤務先および時間帯については、一般的に風俗営業または風俗関係でないことを条件に、特に縛りはありません。 なお、外国人であっても、日本で就労する限り、国籍を問わず、原則として労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令が適用されます。労働基準法第三条は、労働条件面での国籍による差別を禁止しており、外国人だからと低賃金にすることは違法です。雇用保険も、被保険者となる要件を満たす場合は、在留資格のいかんを問わず原則として被保険者となります。 ちなみに不法就労とは、次の二つをいいます。 不法入国者など正規の在留資格をもたない外国人が行う収入を伴う活動 正規の在留資格をもっている外国人でも、資格外活動許可を受けないで、許可の範囲を超えて行う収入を伴う就労活動 こうした不法就労の外国人を雇用した場合、入管法(出入国管理及び難民認定法)の「不法就労助長罪」により罰せられる場合があります。具体的には「三年以下の懲役もしくは三〇〇万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定められています。 不法就労の外国人とは知らずに雇用した場合、処罰されることはありません。ただし、状況からみてその可能性があるにもかかわらず確認せずにあえて雇用するような場合は処罰されます。外国人雇用に関しては、「在留資格」「在留期間」「在留期限」を、必ず確認することが大事です。
ステップ 5導入 ~新人教育 ~成田離婚しないために ~
1 成田離婚の原因と弊害新人導入期が大切な理由 面接という名の「お見合い」で初めて出会った企業とパート・アルバイトが、雇用契約という名の婚姻届を出し連れ添うことを約束しても、まだまだ安心はできません。新婚旅行後、かつてよくいわれた「成田離婚」となる可能性があるからです。 成田離婚の原因は、お互いを深く知らないうちに、慣れない環境で行動を共にした結果、両者の心がすれ違ってしまうこと。新人パート・アルバイトの場合もこの“導入期”が大切で、より丁寧なマネジメントを心がけることが必要です。 導入期が大事なのは、このころのパートの心が、不安定なことが多いからです。新たに覚えることは大量に発生しますし、上司や周囲の仲間たちとの人間関係も作っていかなければなりません。仕事を必死でこなしながらも、「これから先、自分に勤まるだろうか」「職場に溶け込んでいけるだろうか」などと考えているのが、この導入期というわけです。 新人が入社したときは、雇う側も「今度の新人はきちんと仕事をしてくれるだろうか」と思っているものですが、雇われる側も「今度の職場はどうだろうか」と揺れています。つまり、まだ「ここで頑張るぞ」と決心するに至っていません。このタイミングで、「実際に始めてみたけど、とても無理だ」とか「ベテラングループに気に入られていないみたいだ」とか、「考えていた仕事と違うようだ」と思ってしまうと、行き着く先は退職です。 また、「三つ子の魂百まで」ではありませんが、この時期に行う新人導入教育は、今後の成長と戦力化を約束する、とても重要な役割を果たします。 ちなみに導入期の目安は、初出勤日からおおむね一週間 ~一カ月ぐらいです。【事例】主婦パートが大手ファストフード店を五日で辞めたわけ 成田離婚は、行動を共にすることにより相手のことが見えたが、その表面的な部分で判断して、結論を急いでしまったことによっても起こります。 パート・アルバイトの早期離職の原因も、これと同様のことがよくあります。例えば大手ファストフード店を入社五日で辞めた主婦パートは、その理由について、店長のふるまいに驚いたからだ、と言い切ります。「入社三日目の、お昼の一番忙しいときでした。私がサブで付いていた先輩パートが、ミスをしてしまったのです。それに気づいた店長が、突然、まるで怒鳴るかのように叱って。もちろん、ミスは注意されて当然です。でも、お客さまもいる前であれはどうかと思ったんです。正直、驚きました。ちょっと、信じられませんでした」 確かに、店長のこのふるまいは、お客さま商売の現場トップのものとは思えません。「五日で辞める決心をした」彼女の判断は然り、ともいえるでしょう。 しかし、たまたま、店長の虫の居どころが悪かったのかもしれません。年に一度しかない瞬間に、たまたま居合わせてしまった可能性もゼロではありません。 ところが、店長にとっては三六五日分の一の確率も、勤務三日目のこの主婦パートにとっては、三日分の一となるのです。この店長にも、「良いところ」はあったかもしれませんが、入社三日目の彼女は、三日間で得た情報をもとに、早々に判断し、退職を決意してしまったのです。成田離婚が周囲に及ぼす影響 成田離婚つまりパート・アルバイトの早期退職は、組織に少なからず負の影響を与えます。これが続くと、「この間入った人、もういないの?」「え、また一週間で辞めちゃったんだ……」などとうわさになり、組織に動揺が走ります。「何か問題があるのではないか?」と思うからです。これでは、他のパート・アルバイトとの間にあった相思相愛関係も、ゆるがされかねません。 しかし、パート・アルバイトにあっという間に辞められてしまって最もダメージを受けるのは、採用担当者や、そのパート・アルバイトの上司である正社員です。採用しづらい職種や業種であればなおのこと、「一から採用のやり直しだ」「その間の仕事はどうすればいいのか」など、その徒労感たるや、はかり知れません。 2 新人パートの不安な気持ちを取り除く「新人担当者」を決めよう 導入期を上手に乗り越えるために有効なのが、「新人担当者」を決めること。要するに、新人パートに付いて新人をサポートする、専任者です。 新人担当者の具体的な役割は、次の三つです。
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基礎的な OJTを行う 質問を受けたり、相談にのる 昼食などに誘ったり、仲間とのパイプ役となる OJTとは、実際に仕事をしながら行う教育のこと(詳細は手軽で効率的な OJT )。新人パートは、忙しい職場に突然入り、圧倒されたり萎縮してしまう場合が少なくありません。そんなとき新人担当者が決まっていて、何かと教えてくれたり「どんなに忙しそうでも、何でも気軽に聞いてね」などと言われていると、安心して相談できます。こうした人がいるかいないかで、職場へのなじみやすさやスピードが、格段に違ってくるのです。 新人担当者を決めたら、もちろん本人に打診します。その際、前述した三つの役割をきちんと説明し、了承を得ます。 OJTは、「いつ、どのように、何を教えてあげてほしいか」を伝えます。その他、新人パート・アルバイトに、積極的に「おはよう」などあいさつをしてあげてほしいこと。仲間との会話の輪に、さりげなく入れてあげてほしいこと。また、折に触れ「何かわからないことはある?」などと声をかけてあげてほしいこと、等を伝えます。新人担当者に向く人、向かない人 新人担当者は、新人パートに与える影響が大きいだけに、人選には注意が必要です。具体的には、新人パートが担当する仕事の経験者か、その仕事をよく知っており、正しい仕事のやり方を身に付けている人。また、仕事に前向きであり、コミュニケーション上手な人が適しています。こうした要件を満たしていれば、正社員でも先輩パートでもかまいません。 ただし、外出等が多く、一緒の時間をあまり共有できない人は不適当です。物理的にその役割を果たせないからです。その意味から、あまりに忙しい人も困ります。聞きたいことがあっても、どうしても遠慮してしまい、声をかけづらいからです。 適当な人がいなかったり、人数が少ない職場では、店長や経営者が新人担当者の役割を担います。ただ、前述のような理由から、適任とは言いかねる場合も多いでしょう。「そうはいっても、うちのパート・アルバイトは皆、勤続期間が短いからなあ」 こう思った場合、多少の不安には目をつぶり、そうしたパート・アルバイトに新人担当者役を任せてみると、意外に良い結果が得られたりします。新人の面倒を見ることで、先輩パート・アルバイトが劇的に成長することが多いからです。 依頼する際は、「困ったら相談してくれればいいから」などとフォローした上で、「ぜひ、君にやってほしいんだ」という気持ちを伝えます。 3 決まりや基本は最初に共有入社直後だから厳しく教える 新人パート・アルバイトに教育をする際、会社の決まりや、仕事の進め方、作業のやり方の基本などは特に、最初に厳しく教えます。マニュアルや就業規則にあるようなことはもちろん、マニュアル化はされていないけれど皆が共通して行っており、それでスムーズに仕事が進んでいるような「不文律」「暗黙の了解事項」も、気づいたときに細かく伝えていくようにします。 入社したてのころは、教えることが多く、「細かいことは後
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というのは、パート・アルバイトの中には、「働くこと」に対する認識が甘い人がいるからです。学生など過去に勤務経験がなかったり、仕事のブランクが長い場合、これは、いたし方ないことです。とはいえ、緩い気持ちで働いてもらっては、会社として困ります。「働くこととは?」に関しては、以下の三点を最初にしっかり伝えます。 パートも正社員同様、会社が売上を上げ利益を確保するための貴重な戦力として雇われていること 組織の一員として、期待される役割をきっちり果たしてほしいこと そのために、本人がもつ能力を、最大限発揮してほしいこと 一方、 CSについて、最初にきちんと教えるのにも理由があります。 第一に、商品やサービスが市場にあふれ、その品質に大きな差がなくなっている今、 CSは全社全員が意識すべき経営の基本だからです。お客さまにご満足いただき、お客さまに選ばれて初めて、自社の商品を購入していただくことができます。この積み重ねが業績です。 第二の理由は、パート・アルバイトは小売店や飲食店、その他さまざまなサービス業などの、「顧客接点」で働くことが多いからです。 CSについてしっかり理解し常に意識していれば、その一挙一動が「お客さまのためのもの」に変わってきます。逆に、 CSの概念をもたなかったら、すべてが顧客不在の行動となり、お客さまはあっという間に離れていってしまいます。お客さまは、パート・アルバイトと正社員を区別してはくれません。この観点から、 CSこそすべての教育の土台といえます。 なお、意識付け教育は、先輩パートや若手正社員などが日々行うだけでは不足です。一度は店長や経営者などしかるべきポジションの人が講師となり、しっかり実施すべきでしょう。 理由は、それだけ重要なことだからです。また、店長や経営者が「改めて」伝えることで、パート・アルバイトの受け止め方も違ってきます。わが社流「正しいやり方」を身に付ける ~技能教育 ~ 技能教育というと大げさに聞こえますが、例えばお惣菜屋さんならフライヤーの使い方やのり巻の作り方、一般企業の事務部門だったら、パソコンの使い方、書類作成の仕方などの教育です。 要するに「わが社における、基本的な作業の仕方」。つまり、最も効率的でミスや事故がなく、周囲との連携が図れるやり方です。 技能を教える際のポイントは、以下の三つです。 仕事に必要なすべてのことを教える 簡単なこと、必要なことから順を追って教える 説明トークを工夫してわかりやすく教える これらは「当たり前」のようですが、意外にできていません。 なお、複数の人が同じ仕事に就いている場合は特に、簡単でよいからマニュアルを作ってそれに従って教えると、効率がよく、教え漏れもありません。誰に対しても同じように教育できるため「不公平感」もなくなります。「私は教えてもらっていない」「教えてもらってないことをやれと言われても困る」は、パート本人からよく聞く不満です。心を教え、動作を教える ~マナー教育 ~ 社員や店員のビジネスマナーに対するお客さまの要求レベルは、ますます高くなっています。ちょっとした対応のまずさや、笑顔や返事がないことが、すぐにお客さまの不満につながります。マナー教育が、かつて以上に重要になっているゆえんです。 実際のマナー教育は「心」と「動作」の両面から実施します。要するに「相手を慮る気持ち」と、「その気持ちを表現する動作」を、ともに教えていくのです。「心」については、「自分がお客さまの立場だったらどうしてほしい?」「自分だったら、どうされたら不快に思う?」などと新人パート・アルバイトに問いかけて、常に想像力を働かせながら仕事をするように促します。 一方「動作」については、あいさつや笑顔、言葉遣い、電話応対、接客応対などを、場面別に教えていきます。その際、知識として与えるだけでなく、実際に「できる」ようになるまで、トレーニングすることが大事です。「この場合のお辞儀の角度は三〇度」などの動作は、「相手に対する感謝やお詫びの気持ちを想像しながら、実際に行ってみる」ことにより、心身に刻まれます。マナーは、いくら教えても、心がこもっていなかったり、職場で実行できなければ意味がありません。 CS(雇客満足)を意識し、マナーある態度で働けば、お客さまから支持されたり、顔を覚えられたり、「ありがとう」といった言葉をかけられる場面も出てきます。それが「働く喜び」や「仕事のやりがい」に結びつきます。新人導入教育のオリジナル手順書を作成する 導入教育は最初が肝腎、といっても、一度に全部はできません。順を追い、期限を決めて実施していくことが大事です。 また、前述のようにパート・アルバイトは、正社員に比べて入れ替わりやすい労働力です。結果、新人が入るたびに、何度も同じ教育をすることとなってしまいます。 そこで、自社ならではの新人導入教育のやり方や内容について「オリジナル手順書」にまとめておくことをおすすめします。そうすれば、新人がいつ入っても、また誰が教えても、同じレベルの導入教育が実施できます。 なお、教える順番について、「働くこと」の意識付け教育と、職場のルールなど基本事項の教育は、入社当日に行うことが大切です。一方、技能教育とマナー教育については、実際の仕事に必要なものから、段階を追って、順次伝えていく方が効率的です。 意識付け教育のうち、「 CS(顧客満足)」については、入社一週間以内を目安に、一度しっかり伝える機会をもちましょう。もちろんそれで終わらせず、その後その後も「ことあるごとに」「いつも」意識させるように、工夫します。
ステップ 6シフト管理 ~家事分担は夫婦でバランスよく ~
1 上手なシフト管理のコツ上手なシフト管理は相思相愛の要 パート・アルバイトのマネジメントは、勤務時間への配慮が重要なポイントです。特にパート・アルバイトがシフトを組んで仕事をしている場合、その管理こそ、相思相愛マネジメントの要とすらいえるでしょう。というのは、パート・アルバイトの多くは、主婦や母、学生など、仕事以外にメインの顔をもつ人たちだからです。 そんな彼らの最大の望みは、「自分の都合で働ける」こと。というよりパート・アルバイトの多くは「物理的に働けない時間が多くある」人たちです。 例えば、保育園のお迎え時間や、学童保育から子どもが帰ってくる時間に合わせて帰宅しなくてはならない人がいます。あるいは「小学生の子どもがミニ・バスケットのチームに入っていて、土日は試合の付き添いのためどうしても働けない」などという人もいます。学生なら試験期間や、ゼミ活動、あるいは就職活動がピークを迎える時期などは、やはりそちらが優先されます。 そうした個々の都合に配慮しつつ勤務時間を配分するシフト管理は、言ってみれば、家庭における家事分担のようなもの。どちらか一方に過度に負担がかかるようだと、不満噴出のもととなり、二人の仲は険悪になってしまいます。 これと同様、シフト管理も、誰かにしわ寄せが生じたり、あるいは一定の人ばかりが「おいしい思い」をするようだと、組織に悪影響を及ぼします。 シフト管理のポイントは、仕事の量や緊急度に応じた人の割り振りを、どれだけ効率よく行えるかです。特に営業時間の長い店舗、繁閑の差が激しい製造現場や飲食店では、シフト管理によって労務コストや作業効率、売上なども、大きく違ってきてしまいます。 実際、パート・アルバイトに「現在の勤務先でどのようなところが働きやすいか」をたずねると、回答者の七〇・九%が「勤務時間や勤務日を自分の都合に合わせられる」としています(複数回答)。続く「職場の人間関係が良好である」の四〇・八%を、三〇ポイントも上回り、断トツです(平成二〇年版パートタイマー白書)。予定が重ならない人を採用する シフト管理が難しいのは、パート・アルバイトの休みの希望などが「ある日時」に集中してしまいがちだからです。といって、全員の希望を聞くことは、多くの場合不可能です。 こうしたとき、会社としてパート・アルバイトにシフトの無理をお願いすることは、いたし方ありません。しかし、一方で、無理強いが続いてパート・アルバイトの気持ちが離れてしまい、「ここでは働き続けられない」と思われてしまえば、行き着く先は退職です。 大切なのは「そうならないような対応策を講じる」こと。具体的には、「予定が重ならない人を採用する」ことになります。すでに採用のときから、シフト管理をも念頭に置いて情報収集し、選考するのです。 まず、採用面接の際、シフトの希望を細かく聞き、できるだけ希望が重ならない人を採用します。そのとき「いろいろな地域から採用する」「いろいろな年代の人を採用する」といった視点が奏効することがあります。同じ地域に住み、子ども同士が同じ学校、あるいは同級生だと、運動会や父母会、遠足などの学校行事が重なるため、休みの希望が集中してしまいがちだからです。また、年代が一緒だと、子どもの受験など大きな節目が、重なってしまったりします。 たとえば乳幼児を抱えるお母さんはどうしても休みが多くなりがちですが、子どもがもう大きな人を採用することで、その穴をカバーしてもらいやすくなります。 一方、学生アルバイトの場合は、「いろいろな学年の学生」「いろいろな高校・大学、サークルの人」を採用します。 理由は、主婦パートと同じ。一斉に「受験生」になったり、就職活動に入ったり、卒業してしまうといった事態を避けるためです。さらに、学校やサークルまで同じだと、試験期間や学園祭、合宿などといったイベントが重なってしまうことにもなります。パート・アルバイトを多能化する シフト管理に柔軟性をもたせるためのもう一つの方法が、パート・アルバイトを「多能化する」ことです。 多能化するとは、要するに「パート・アルバイト一人ひとりに、ある特定の仕事だけでなく、職場のさまざまな仕事に習熟してもらう」ということです。例えば三人のパート・アルバイトを雇用し、経理・総務・人事の仕事を手伝ってもらっている場合、三人がそれぞれ経理も総務も人事も手伝えるように教育するのです。 多能化すると、突然の休みはもちろん、誰かが退職することになっても対応や引き継ぎが容易です。また、休みの希望が重なった場合など、パート同士の話し合いで、誰が休むか決めてもらうことが可能になります。 半面、多能化とは、働く側にとっては「仕事の負担が増す」こと、ともとらえられます。それを、快く受け入れてもらうコツは、できれば採用面接のときから、「
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から、「いずれはこれとこれとこれの仕事をしてもらいます」などと宣告しておくことです。面接時点では「まずは合格したい」気持ちが強いため、比較的すんなりと受け入れてもらえます。 すでに働いているパート・アルバイトを多能化する場合は「できるだけ皆さんにお休みを取っていただきやすいように」など、多能化の目的が自分たちのためでもあることを、きちんと伝えることが重要です。 この「先に伝え」「納得を得る」行為をはしょってしまうと、新しい仕事に挑戦してもらうたびに「また新しいことを覚えるのか?」「賃金も上がらないのに仕事ばかり増える」などととらえられ、大きな不満に発展しかねません。 なお、取材した複数の会社で「多能化しローテーションできると、仕事内容が日によって変わるため、本人のマンネリ防止になるのもメリットだ」とも聞きました。 パート・アルバイトにも年次有給休暇はある 勤務シフトは、パート・アルバイトの休みも念頭に考えます。その休みの一つに、年次有給休暇があります。パート・アルバイトにも、年次有給休暇は発生します。 年次有給休暇とは、雇用された日から六カ月間(六カ月経過後は一年間)継続勤務し、決められた労働日数の八割以上勤務している労働者に発生する法律上の権利です。この基準を満たしていれば、当然パートにも与えなければなりません。 年次有給休暇の付与日数は、所定労働時間及び日数に応じて変わります。所定労働時間や日数が少なければ、有給休暇の付与日数も少なくなります。 パート・アルバイトと呼称されていても、正社員同様の日数や時間働いていれば、付与日数は正社員と同じになります。具体的には、以下の三つのうち、いずれかに該当する場合、正社員と同じです。 一日の所定労働時間にかかわらず、週の所定労働日数が五日以上 一日の所定労働時間にかかわらず、一年間の所定労働日数が年間二一七日以上 所定労働日数にかかわらず、週の所定労働時間が三〇時間以上 年次有給休暇にまつわる決まりあれこれ 年次有給休暇は、パート・アルバイトが請求する時期に、請求する日数を、与えなければなりません。ただし、請求できるのは労働日。例えば、月・水・金曜の週三日勤務のパートの場合、年次有給休暇を取得できるのは、月・水・金曜だけです。 しかしながら、パート・アルバイトに休まれるとどうしても困るという場合、使用者には時期を変更する権利があります。例えば年末や年度末など、事業の正常な運営を妨げる場合です。 時給で働くパート・アルバイトが年次有給休暇を取得した日の賃金は、月給で働く正社員と違い、きちんと計算して、支払う必要があります。具体的には、次の三つの計算方法があります。いずれの方法を採用する場合も、就業規則等にあらかじめ定めておくことが必要です。 通常一日働いた分の賃金(例えば一日三時間勤務なら、三時間分の賃金)
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から、「いずれはこれとこれとこれの仕事をしてもらいます」などと宣告しておくことです。面接時点では「まずは合格したい」気持ちが強いため、比較的すんなりと受け入れてもらえます。 すでに働いているパート・アルバイトを多能化する場合は「できるだけ皆さんにお休みを取っていただきやすいように」など、多能化の目的が自分たちのためでもあることを、きちんと伝えることが重要です。 この「先に伝え」「納得を得る」行為をはしょってしまうと、新しい仕事に挑戦してもらうたびに「また新しいことを覚えるのか?」「賃金も上がらないのに仕事ばかり増える」などととらえられ、大きな不満に発展しかねません。 なお、取材した複数の会社で「多能化しローテーションできると、仕事内容が日によって変わるため、本人のマンネリ防止になるのもメリットだ」とも聞きました。 パート・アルバイトにも年次有給休暇はある 勤務シフトは、パート・アルバイトの休みも念頭に考えます。その休みの一つに、年次有給休暇があります。パート・アルバイトにも、年次有給休暇は発生します。 年次有給休暇とは、雇用された日から六カ月間(六カ月経過後は一年間)継続勤務し、決められた労働日数の八割以上勤務している労働者に発生する法律上の権利です。この基準を満たしていれば、当然パートにも与えなければなりません。 年次有給休暇の付与日数は、所定労働時間及び日数に応じて変わります。所定労働時間や日数が少なければ、有給休暇の付与日数も少なくなります。 パート・アルバイトと呼称されていても、正社員同様の日数や時間働いていれば、付与日数は正社員と同じになります。具体的には、以下の三つのうち、いずれかに該当する場合、正社員と同じです。 一日の所定労働時間にかかわらず、週の所定労働日数が五日以上 一日の所定労働時間にかかわらず、一年間の所定労働日数が年間二一七日以上 所定労働日数にかかわらず、週の所定労働時間が三〇時間以上 年次有給休暇にまつわる決まりあれこれ 年次有給休暇は、パート・アルバイトが請求する時期に、請求する日数を、与えなければなりません。ただし、請求できるのは労働日。例えば、月・水・金曜の週三日勤務のパートの場合、年次有給休暇を取得できるのは、月・水・金曜だけです。 しかしながら、パート・アルバイトに休まれるとどうしても困るという場合、使用者には時期を変更する権利があります。例えば年末や年度末など、事業の正常な運営を妨げる場合です。 時給で働くパート・アルバイトが年次有給休暇を取得した日の賃金は、月給で働く正社員と違い、きちんと計算して、支払う必要があります。具体的には、次の三つの計算方法があります。いずれの方法を採用する場合も、就業規則等にあらかじめ定めておくことが必要です。 通常一日働いた分の賃金(例えば一日三時間勤務なら、三時間分の賃金) 平均賃金(月給、日給等により計算方法は異なる) 標準報酬日額(健康保険の標準報酬日額)※ただし労使協定が必要 なお、労働基準法の改正により、二〇一〇年四月以降、年次有給休暇のうち五日分は、時間単位での取得ができることになります。これは、子どもの通院の付き添い等に対応するための改正です(労使協定が必要)。 2 パート・アルバイトの気持ちとシフト管理コツは希望を聞く姿勢 シフト管理を成功させるための知恵は、もう一つあります。それは、常にパート・アルバイトと、「シフトの希望を聞く姿勢で」、接することです。 実際には、一〇〇%希望をかなえる必要はありません。というより、すでに述べたように全員の希望をかなえることは、土台無理な話です。そして、これが無理であることは、本人たちもよくわかっています。大事なのは、「気持ちの問題」です。 具体的には、毎月シフト希望表を提出してもらうなどし、「一人ひとりのパートに」「本人の希望を」「常にきちんと確認する」ことです。その上で“この日は出てもらえないか”などと相談します。ただし「保育園の遠足で」「郷里から母が上京するので」など特別な場合については、できるだけ対応してあげるよう心がけます。 こうすることで、パート・アルバイトとの信頼関係を紡ぎます。「店長が困っているから助けてあげよう」「大変なときはお互いさまだ」「お客さまに迷惑はかけられない」などと、ごく自然に思ってもらえるような関係作りをするのです。実際、シフト管理上手なマネジャーは、たいがいこの姿勢で接しています。
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公正・平等を意識する なお、シフトの希望を勤務シフト表にまとめる際、公正・平等を心がけることも、とても大切です。というのは、希望の取り入れ方にばらつきが見えると、パート・アルバイトが会社や店長、上司に対して、不信感を抱いてしまうからです。「えこひいきしている」とか、「私の希望はいつも全然通らない」といった具合です。 公正・平等なシフト管理を実行するには、個々のパート・アルバイトに勤務希望を出してもらう際、できれば一定の制限を設け、これをルール化します。例えば、一カ月ごとに次の一カ月の希望を提出してもらう、といったやり方で本人の希望を聞く場合、「土・日曜・祝日の休みは ◯回まで」などの決まりを作り、それに則った希望を出してもらいます。こうすることで「声の大きな人」の希望が通りやすい、といった事態を防げます。 なお、シフトに関連することとして、「突然の残業依頼」と「突然の勤務時間カット」を嫌がる声を、大変多く聞くことを追記しておきます。具体的には「今日は忙しいからもうちょっと長くいてよ」とか、「今日は思ったより暇だから、もう帰っていいよ」といった依頼です。「突然、今日は残れと言われても、幼稚園バスのお迎えの時間があるから無理なのに」「せっかく時間を空けたのに、突然帰れと言われて時給も支払われないなんて、約束破りだ」などの不満は、出て当然といえるでしょう。【事例】「約束破り」が招いた悲劇 ~介護福祉施設に勤める主婦パートの例 ~ シフトに関する約束破りが、会社にとって悲劇的な結果を招いてしまった、こんな例もあります。 介護福祉施設に勤務する主婦パートが、仕事が原因で腰痛を患ったときのこと。家庭の都合もあり、「来月は、どうか週二日勤務にしてください」と施設長に直接頼んだ上で、それに応じた勤務希望を出していました。ところが、実際に次月の勤務シフト表が配られ、それを見ると、自分の名前が通常どおり、週四日の頻度で記載されていたのです。 その主婦パートは、驚きのあまり、目を見開いたといいます。「あれだけ頼んだのに、何の説明も相談もなく通常のシフトにするなんて!」と怒り、しかしそれは、すぐにあきらめの気持ちに変わりました。そして、次の勤務日に、退職届けを出したのです。 施設長はびっくりし、当然引き留めにかかりました。その主婦パートの勤務が終わったあと、実に二時間も事務室で、とくとくと説得したといいます。しかし、その主婦パートも、表面上は穏やかさを装いながら、決して引きませんでした。 具体的かつ身体的な理由を提示して、わざわざ「来月は週二日に」と願い出たパートにすら、週四日勤務をさせようとしたほど人手が足りなかった職場です。貴重な人材に辞められてしまった施設長の落胆ぶりが、目に浮かぶようです。 休憩時間に関する決まり 休憩時間とは「労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間」です。パート・アルバイトにも正社員と同様に与えなくてはなりません。 休憩時間は、働く時間に応じて以下のように定められています。 一日の労働時間が六時間を超える場合……少なくとも四五分間 一日の労働時間が八時間を超える場合……少なくとも一時間 このとき、一日の労働時間が六時間を超えなくても、昼食を挟む場合には、休憩時間を与えた方が望ましいとされています。 なお、休憩時間に関する注意点は、三つです。 必ず労働時間の途中に与えること(労働時間の前後に与えても、与えたことにはなりません) 休憩時間は一斉に与えること(運輸、物品の販売、理容、金融・保険、旅館・料理店など特定の業種を除き、原則として一斉に与えなくてはなりません) 休憩時間の使い方は労働者の自由(ただし休憩時間とはいえ拘束時間中であり、社内で休憩をとる場合には就業規則に定められた服務規律を守る必要があります) パート・アルバイトにも休日が必要? 休日について労働基準法では、「少なくとも一週間に一日の休日を与えるか、四週間を通じて四日以上の休日を与える」ことを義務づけています(法定休日)。当然、パート・アルバイトにも適用されます。 しかしながら、一週間の労働日数が少ないパート・アルバイトの場合、例えば週四日や週五日勤務で働いているならば、改めて休日を与える必要はありません。
第三章「相思相愛」で、パート・アルバイトを育てる ――認め、愛することで、人は成長する
ステップ 7コミュニケーション ~会話と連絡が円満のもと ~
1 コミュニケーションがすべての土台コミュニケーション不足が「早期離婚」の引き金に 人と人との関係は、会話をしなくなったり、目を合わせなくなると、急速に疎遠になっていくものです。 家庭の場合も同様です。会話がないと、二人の間にだんだんすき間が生じます。関係を維持していくには、忙しければ忙しいほど意識して、会話をしていかなければなりません。 職場でも、店長や上司である正社員がパート・アルバイトに話しかけなかったり、コミュニケーションが不足すると、両者の間に目に見えない溝ができてしまいます。「忙しいから」「話しかけられても相手をする時間がないから」など理由はいくらでもあるでしょうが、コミュニケーションをないがしろにしてはいけません。 特にパート・アルバイトに定着してもらい、戦力化したい場合、コミュニケーションはさらに重要性を増してきます。というのは、パートにとって職場の人間関係は、正社員以上に「そこで働き続けるか否か」を決定する、大事な要素となっているからです。 すでに述べたとおり、パート・アルバイトにとって「人間関係に我慢してまでその職場で働き続ける」メリットは、正社員に比べ薄いことが多いのです。また、職場間の異動が少ないので「この人間関係から逃れるには、自分が辞めるしかない」という結論に至りがちです。 アンケートでも「どんなときに辞めようと思うか」という質問に対し、回答者の四五・五%が「職場の人間関係が良くないとき」を挙げ、最も多くなっています。また、上手なシフト管理は相思相愛の要で紹介したように、「働きやすいと感じる職場環境」について、回答者の四〇・八%が「職場の人間関係が良好である」としています(いずれも平成二〇年版パートタイマー白書)。定着なくして、「戦力化」はありえません。「気持ちよく働いてもらえる」か「否か」の大違い お金をもらっている以上、その日の気分や上司への感情で、仕事の中味に差が生じてはならない――正論ですが、実際にはなかなかそうはいきません。 正社員であっても、日々寸分のブレもなく人に接したり、仕事を遂行できる人は稀でしょう。パート・アルバイトの中には、正社員以上に「きっちり業務遂行していく」人も実際いますが、多くの場合、仕事に不慣れだったり、仕事の一部だけを担っていたりという理由から、気分や感情による差が大きくなりがちなのが実情です。 だからこそ、気持ちよく働いてもらうための、コミュニケーションの工夫が求められます。それには、まずはあいさつです。あいさつは、最も簡単で、かつ劇的に効果のある対応策です。 それも、パート・アルバイトからのあいさつを待っていてはいけません。店長や上司の方から、率先して「おはようございます」「お疲れさま」と、声をかけていくのです。これは、相手がパート・アルバイトだろうが、正社員だろうが、派遣社員や、あるいは業務請負の清掃スタッフであっても同じです。 ポイントは「分け隔てなく」「先手必勝」です。これを心がけることで、あいさつが習慣化されます。良い癖は、財産です。 2 二つのコミュニケーションを意識する「交流」と「仕事上の情報伝達・情報共有」 職場のコミュニケーションは、二つあります。一つは「交流」、もう一つは「仕事上の情報伝達・情報共有」です。 職場のコミュニケーションというと、仲間との「交流」を思い浮かべがちです。「和気あいあいとしたおしゃべり」や、「仕事との関連性の有無にかかわらない情報交換」「親睦会や食事会などの(仕事を離れた)付き合い」といったものです。 もちろん、これらもとても大事です。しかし、そもそも職場の仲間とは、「仕事の遂行のため」に集められた集団です。ホウ・レン・ソウに代表される「仕事上の情報伝達・情報共有」の方が、より重要な役割を担っています。 その際、伝達・共有する情報は、小さな単位でとらえることが大切です。ささいなことでも「聞いてない!」と感情的にとらえられ、それがしこりとなってしまいます。 家庭なら、例えば夕食が要るのか要らないのか、次の週末の予定は、といった日々の連絡です。歓送迎会や出張等で夕食が要らないのなら、それがわかったときにちゃんと連絡する。もちろん、当日の突発的な飲み会の場合でも、できるだけ早く伝えることが大事。――それと同じです。パート・アルバイト「だからこそ」大切な理由
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もっとも、「情報伝達」「情報共有」の重要性は、多くの人が認識しているところです。特に経営理念や経営戦略、具体的な数値目標、目標遂行のための戦術などは、きちんと「伝達」され「共有」されてこそ、会社の発展に結び付きます。 それは相手がパート・アルバイトであっても同じです。いえ、むしろ相手がパート・アルバイトだからこそ、より意識すべきだとさえいえます。 というのは、パート・アルバイトの場合、週三日、一日五時間など、限られた時間しか職場にいない人が多いからです。要するに、物理的に情報伝達が難しい状況にあるわけです。立場が弱く、自分からは聞きづらい場合も多いため、その分意識的に行わなければなりません。パート・アルバイトを戦力化したいのなら、なおのことです。 パート・アルバイトの気持ちの上でも重要です。例えば「どのようなことで、職場で自分が軽く扱われていると感じるか」複数回答で聞いたアンケート結果を見てみると、「業務上必要な情報が知らされない」が三一・一%でトップです。ちなみに、二位は「何年経っても時給が上がらない(二一・一%)」でした(平成二〇年版パートタイマー白書)。存在感を感じさせる パート・アルバイトは、毎日職場にいないせいか「私は聞いてない」「私には教えてくれなかった」などを理由に、疎外感を抱きがちです。これは、派遣社員も同じです。組織の一員でありながら、メンバーになり切れない。そんな心理状態では、やる気になどなれないどころか、だんだん萎縮していってしまいます。 だから重要なのは、彼らに存在感を感じさせてあげることです。「交流」も、「情報伝達・情報共有」も、いずれもこれに役立ちます。 なお「おはようございます」や「お疲れさま」「お先に失礼します」といった基本的なあいさつは、この二つのコミュニケーションを円滑にし、かつパート・アルバイトに存在感を感じさせてあげられる、土台の役割を果たしているといえるでしょう。前述のとおり「気持ちよく働いてもらう」ために必須なのはもちろんです。「咳をしていたみたいだけど体は大丈夫?」「雨が降りそうだね。傘は持ってきました?」など、何気ない言葉がけも同様です。あいさつも、こうした言葉がけも、パート・アルバイト一人ひとりをきちんと認識していればこそ出てくるものだからです。本人も、それを敏感に感じ取っています。 3 コミュニケーションを「見える化」し「仕組み化」する「気づいたときに」の危険性 コミュニケーションは、企業組織が複数の人間で成り立っている以上、なくてはならない極めて重要なものですが、その重要度ほどには重視されていない気がします。 これは、「コミュニケーション」というものの特性によるものだと思います。 第一に、その量や質を計ることが、難しいことです。例えば売上や来店客数のように「今日は昨日より多かった」「少なかった」ということが、数値として見えません。 第二に、納期など期限が定められていないこと
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に動いていくために必要なコミュニケーションが、きちんと図れるようにするのです。コミュニケーションを「見える化」する方法 コミュニケーションの「見える化」は、以下の順番で行います。 まずは、「コミュニケーション」 =「行動」と定義し、実行することです。 コミュニケーションを改めて辞書で引くと、伝達、連絡、意志疎通、交際……等と出てきます。つまり、双方向のものであり、であればこそ「行動で見せる」ことが必要です。行動すれば、相手に「見える」ようになります。 といっても、難しく考えることはありません。職場の仲間とその日初めて会ったら、相手の顔を見て「おはようございます」と、声に出して言うことです。給湯室の流しがきれいになっているのに気づいたら、たとえそれが「仕事であり、やって当然」であったとしても、「きれいになったね」と声に出して、きちんと伝えてあげることです。 仮に誰がやったかわからなくても、周囲の人に「きれいになったね」と伝えることで、「気づいている」ことが、「見える化」され、組織に伝わります。これが、大事なのです。 そして、コミュニケーションを「仕組み化」し「数値化」することです。「仕組み化」は、定例ミーティングを始めたり、その回数を「毎週一回」など義務付けること。数値化は、その回数を自分でカウントすることです。仕組み化で否応なくコミュニケーションをとることになり、数値化により、コミュニケーションの量が「見える化」できます。 上司や店長の側に、コミュニケーションに苦手感があったり、パート・アルバイトとの関係に違和感がある場合は特に、仕組み化してこれを自らに強い、数値化で量的な目標を課していくことが効果的です。これによりコミュニケーションに馴れることで、苦手感をある程度克服できます。また、コミュニケーションを習慣化できます。【事例】タイムカードをなくしてコミュニケーションを仕組み化 ~ファミレス ~ あるファミレスでパートを始めた三〇代後半の主婦は、職場に行ってみて驚きました。タイムカードがなかったからです。 そのファミレスでは、タイムカードの代わりに、紙の出勤簿を使って時間の管理をしていました。つまり、出勤したら、その日時を書き込んで店長のところへもって行き、承認印を押してもらう。退勤のときも同様に、時間を書き込んで承認印をもらいます。店長が不在の場合は、正社員が承認を代行します。 ファミレスやファストフード店など数社でパート経験がある彼女は、最初は「なぜ、タイムカードを使わないんだろう」といぶかりました。こうした職場では、たくさんの人がさまざまなシフトで働くため、タイムカードによる管理が合理的です。 しかし彼女は、今では「紙の出勤簿」による管理を絶賛しています。「最初はいちいち面倒だと思いました。でも、今では『素晴しい仕組み』だと実感しています。というのは、承認印をもらいにいくことで朝晩二回、必ず店長ときちんと目を合わせて、あいさつすることになるからです。どんなに忙しくても『おはよう』『お疲れさま』と声をかけてもらえます。かつては、店長や社員が、私が出勤したり仕事を終えたのに気づいていないのではないかと思ってしまうことがたびたびでした。余裕があるときは承認印をもらいながら雑談したり、何か相談ごとがある場合も、声をかけやすくなりました」 営業時間が長く、多くのパート・アルバイトが入れ替わり立ち替わり働くような職場では特に、全員とあいさつすることすら、ままならない場合があります。このファミレスでも、以前はタイムカードで管理していたようですが、正社員とパート・アルバイトのコミュニケーションを高めるために、「紙の出勤簿に承認印」というまるで昔返りするような、アナログの仕組みに変えたのだといいます。【事例】全員ミーティング定例化でコミュニケーションを仕組み化 ~業務請負会社 ~ ある業務請負会社の現場マネジャーは「週に一度の全員ミーティングを定例化して、職場が明るくなりました」と話します。 このマネジャーがあずかる現場は、入院病棟がいくつもある大規模な病院です。病院のなかに支店を構え、このマネジャーの指示のもと、業務請負会社のスタッフが院内の各部署で医師や看護師の補助業務を行っているのです。「スタッフは、全部で六〇人います。早番、遅番のあるシフト勤務で、同じ病院内ではあるものの、それぞれの持ち場は外科だったり内科だったり産科だったり、ばらばらです。つまり、同じ職場で働いている当社の社員にもかかわらず、そのコミュニケーションは極めて希薄でした。私もシフト勤務ですし、病院側との打ち合わせや、本部主催のマネジャー会議などで現場を外すことも多く、一週間、まったく顔を合わせないスタッフもいました。そのせいか、スタッフの元気が、だんだん失われていくように感じたのです」 そこでこのマネジャーは、週に一度、六〇人のパートが一堂に集まる「全員ミーティング」を実現しました。具体的には、早番のパートに三〇分の残業を、遅番のパートに三〇分の早出をお願いして、全員が集まる場を作ったのです。ミーティング自体は正味二〇分間ほどのものですが、全員が顔を合わせるには、全員の協力が必要です。「有給とはいえ、全員一律に勤務時間の変更をお願いするわけなので、提案するときは勇気がいりました。でも、全員ミーティングを始めて本当に良かったです」とマネジャーは振り返ります。 ミーティングは、マネジャーからの情報伝達、スタッフ同士の情報共有の場として機能する一方、スタッフ同士のおしゃべりの場にもなりました。これにより、院内ですれ違ったスタッフ同士の会話も活発になり、職場の雰囲気は目に見えて明るくなりました。退職者が減るという、予想外の効果も生じています。コミュニケーションのさまざまな手段 前述したようにパート・アルバイトへの情報伝達が徹底しづらい理由の一つは、彼らの多くがシフト勤務で、全員が集まる場面が少ないこと。これをカバーする
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する具体的施策、つまりコミュニケーションを「仕組み化」する手段は、他にもいろいろあります。 多くの現場で応用可能な、より一般的な手段を、以下にご紹介しておきます。 ・朝礼・昼礼・夕礼、及びこれらの併用など(定期的な情報共有・意見交換の場) ・会議・ミーティング(不定期な情報共有・意見交換の場) ・社内報の配布 ・社内イントラネットへの参加 ・社内同報メールへの登録 ・連絡ノート ・上司との定期的な面談 ・雇用契約更新時の定期的な面談 ・公式な社内行事への参加(レクリエーション大会・忘年会・新人歓迎会など)
ステップ 8教育 ~効率的な家事と自己実現 ~
1 効率的に身に付けさせるための三つの教育方法教育でやる気を高め、マンネリ化を防止する 教育は、仕事の効率化や働く満足、仕事のマンネリ化防止に役立ちます。家庭生活を送る上でも、効率的な家事の仕方や料理などを教われば、時間を有効に使え、生活のクオリティが上がり、教わる内容に応じて進歩や変化が楽しめるのと同じです。 特にマンネリ化はやる気を削ぎ、作業効率を下げます。それどころか、パート・アルバイトの転職要因ともなります。逆に、マンネリ化せず「仕事を通じて成長している」実感がある間は、簡単に「辞めよう」とは思いません。そうした実感は、教育によってスキルアップしたり、違う仕事にチャレンジしたりできることで得られるものなのです。 そもそも、会社としても、パート・アルバイトが「いつまでたっても新人同様」では困ります。また、同じ職場の中に、勤続年数のわりに「仕事ができない」人が混じっていると、次第に軋轢が生じ、組織を乱してしまいます。 教育は、知識と技能の両面から行います。マナー教育のところでも触れたように、知識として頭でわかっていても、行動できなければ意味がありません。逆に、行動できても、その意味やねらいを知らなければ、行動の価値は半減してしまいます。 例えば「電話の取次でお客さまにご不快な思いをさせてはいけない」と頭でわかっていたとしても、保留や転送の操作ができずにお待たせしてしまったり、途中で切れてしまっては、無意味です。 一方、保留や転送の仕方を知っていても、「電話の取次でお客さまにご不快な思いをさせてはいけない」ということがわかっていなければ、社内の取次相手が出ないままいつまでも保留にしてしまったりなど、やはり対応に支障をきたしてしまいます。「知って」いて、なおかつ「できる」ようにすることが、教育では大事です。面倒でも、その両方を確実にしていくことが、パート・アルバイト戦力化の早道なのです。手軽で効率的な OJT パートや正社員といった雇用形態を問わず、企業における教育は、 OJT( On the Job Training =職場内訓練)、 OFF― JT( Off the Job Training =職場外訓練)、 SD( Self Development =自己啓発)の推奨、という三つで行うのが基本です。 各方法には、それぞれ特色があります。これを理解した上で、どれか一つではなく、教える内容ごとに使い分けたり、組み合わせたりすることが大事です。 まず、 OJTですが、 On the Job Trainingの頭文字をとった言葉で、オー・ジェー・ティーと読み、「職場内訓練」を意味します。 これは、文字どおり日常業務を通じて上司や先輩などが行う教育のこと。実際に仕事をしながらの実地訓練となり、必然的に「場面ごと」に「具体的に」教えることとなるため、理解してもらいやすい教育方法といえます。また、多くの場合、マンツーマンあるいは一人対少人数での教育となるため、わからないことをすぐ質問してもらったり、理解しているかどうかを確かめながら教えられます。 同様に、実際にやらせてみることで、技能として身に付いているか、すなわち「できる」レベルまで落とし込めているかを、一つひとつ確認できます。その場で「できるまでやらせてみる」つまり、トレーニングを行うことも可能です。 OJTは、教える内容や教える相手により、臨機応変にできるため、高い教育効果が見込めます。 一方で、 OJTは、教える側の力量により、その質がかなり左右されることも否めません。教え方が悪いと、教わる側が辟易してしまったり、理解できないのは自分が悪いのではないかと不安になったり、自信喪失してしまいます。また、教える側が間違って理解していると、その「間違った考えややり方」が、新人パート・アルバイトや後輩パート・アルバイトに、脈々と伝わっていってしまいかねません。 そのため、 OJTは、教える側の人選が大事です。第一に、仕事が正確にできること。また、一つひとつの仕事の意味や狙い、つまり「何のために」「どうして」このように行うのかを、きちんと理解している人を選びます。性格的には、あまりに短気だったり、ものごとをはしょって伝えるような人は、不向きです。 こうした注意点こそあるものの、パート・アルバイトの教育は、実際には OJTが主軸です。教育のために別途時間を割いたり、そのための場所を用意したり、講師を呼んだりする必要がなく、他の方法に比べ手軽で、しかも表立ったコストがかかりません。一斉・一律の習得には OFF― JT OFF― JTは、 Off the Job Trainingを略した言葉で、日本語にすると「職場外訓練」となります。オフ・ジェー・ティーと読み、多くの場合、教わる側を一堂に集めて行うセミナーや研修のことを意味します。一人の講師が、一〇人弱程度 ~内容によっては数百人もの受講生を相手に講義や講演を行ったり、研修を実施します。 OFF― JTは、多くの人に一斉に同じ内容を伝えられるため、ビジネスマナーや新しいシステムなどを職場全体に浸透させたい場合に効果的です。また、 CS(
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CS(顧客満足)等の意識を組織に強く醸成させる目的から、著名な講師を招いて講演をしてもらったり、自社業界で起こっている問題を職場や会社全体に伝えるため、社員が講師役を務めて実施する場合もあります。 このように OFF― JTにはメリットがたくさんありますが、一方、教える相手がパート・アルバイトの場合、難しさも伴います。時間給で雇用されシフト勤務などで働く人を、特定の時間に、特定の場所に集めなくてはならないからです。コスト的にも、自社に開催場所が確保できない場合は、貸会場の使用料などが別途必要となってきます。 しかし、「パート・アルバイトには OFF― JTは実施しない」と結論付けてはいけません。もちろん、教育そのものの大事さはいうまでもありませんが、さらに、法的に違反となる場合があるからです。 というのは、二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法で、「仕事の内容や責任、人材活用の仕組みや運用などが同じ無期雇用契約の(あるいは反復更新により無期と同じ)パート・アルバイトに対しては、教育について、正社員との差別的取扱いは禁止」と、定められているからです。ちなみに同法では、仕事の内容や責任等が正社員とは異なるパート・アルバイトに対しても、正社員との重なり具合に応じて、バランスを取ることを求めています。 教育は、投資です。もったいないから投資しないのではなく、投資した以上のリターンが得られる工夫をすることです。成長のカギを握る S D(自己啓発) SDは、 Self Developmentの頭文字をとったもの。読み方はエス・ディーで、日本語にすると「自己啓発」です。 SDは、仕事以外の自分の時間に自主的に学習することです。例えばパソコン操作を家で練習する、仕事に役立つ本を読む、といったこと。パート・アルバイトが SDに積極的に取り組んでくれれば、こんなにありがたいことはありません。しかし、業務時間外であるならば、これをパート・アルバイトに強制することはできません。 そこで大事になるのが、 SDを奨励するような職場風土作りです。例えば、仕事に役立つ本を職場に設置しておき貸出可能にする、あるいは、休憩室のテレビで業務関連のビデオや DVDを見られるようにしておく、などです。仕事に直結しない内容でも、小説などを通じて人間性を養ったり、業界の知識や歴史を知ることは、仕事の面白みにつながります。社員食堂がある工場などで、その一角を図書コーナーにしている例はよく見ます。 SDを奨励する風土作りを、もっと積極的に進めている企業もあります。例えば、ある全国ブランドの洋菓子製造・販売会社では、ポイント制の福利厚生制度の一環として、仕事に関する教育・研修を自主的に受けた場合、その費用の一部を会社が負担しています。この制度は、パートも対象です。 また、山梨県のあるスーパーでは、パートが仕事に関する教育・研修を自主的に受講した場合、その費用を全額会社が負担しています。その教育費は、 OFF― JT等もすべて合わせた額ではありますが、年間八〇〇万円にも上ります。ちなみにそのスーパーは、正社員は一〇人のみ、パート・アルバイトは約一 ○ ○人です。 同店のマネジャーは、「うちは、パートさんの力でもっているようなものだから」「パートさんを教育して、その分、高度な仕事を行ってもらっています」と言い、教育費を惜しみません。もちろん、積極的に学び成長した人にはより難易度の高い仕事に就いてもらい、その分賃金も上げています。 投資は、それをはるかに上回る利益を上げているからこそできること。その利益の源泉こそ、教育だと、同社は言い切ります。 2 パート・アルバイトだからこそ、の注意点知識や経験は個々それぞれ パート・アルバイトに対する教育は、正社員とは違う難しさを伴います。原因は、その多様性。一人ひとりが、全く違う背景をもった人たちだということです。 例えば「アルバイトは初めて」という高校生や、まだ就職活動もしていない大学一 ~二年生は、「働く」ということに関し、全く白紙の状態です。そんな相手には、不安を取り除きつつ、できるだけ丁寧に、しかし仕事を甘く見ないように、注意して教育する必要があります。 また、同じ年齢の主婦パート二人を雇った場合でも、教育の仕方を変える必要が出てくる場合があります。例えば、学生アルバイト同様仕事の経験がほとんどない Aさんには、新卒新入社員に教えるように、基礎から丁寧に教えます。 一方、過去に正社員として長く働き、パートとしても多くの仕事経験を積んだ Bさんに対しては、中途採用社員を相手にする感覚で教育します。前職とは違う「自社の」やり方や考え方、判断基準などを、過去にとらわれず身に付けてもらうことが、教育の目的となってきます。年長パート・キャリアパートに教える場合の注意点 新人パートが年上だったりキャリアパートの場合には、教え方に注意が必要です。キャリアパートとは「総合職正社員やマネジャーとしてバリバリ働いていた」経験をもつ人など、生半可な中途採用正社員よりもはるかに高度な仕事をこなしてきた経験をもつパートです。 具体的には、言い方や枕詞を工夫します。例えば「よくご存じかとは思いますが」「当社が特に大切にしている点なので、あえて繰り返し確認しますが」といった具合です。 要は新人パートの来し方を、価値あるものと認める言い回しの工夫です。相手を尊重し、敬愛していることが伝わる、気配りの言葉を添えるのです。「なぜ、教育するのか」を意識する なお、厳しく教育し続けると、パートによっては「この会社は、だんだん仕事がきつくなる」などと思う人もいるでしょう。そんな不安や不満を解消するには「なぜ、どうして厳しく教育するのか」「教育の結果、何を期待しているのか」を、きちんと情報提供することです。例えば「当社では顧客満足を極めて重視し
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ています。だからマナーについては特に厳しく、細かく注意することがありますが、一緒に頑張っていきましょうね」といった具合です。 その際、入社当初から「厳しく教育する旨」宣言しておくと、後々の教育がしやすくなります。また、教えた内容を、より早く、深く、吸収してもらえます。 パート・アルバイトを戦力化したい場合の教育は、最終的には「自ら考え、会社として正しい行動ができる」ようになることを目標とします。上司や正社員に確認をとることは大事ですが、いつまで経っても正社員に聞かなければ何もできないようではいけません。上手な注意の仕方、褒め方とは 教育において、注意をすることは重要かつ不可欠です。しかし、その言い方には、すでに述べたように、気配りが必要です。特にパート・アルバイトは、心配りに欠けたちょっとした一言で、傷ついたり、やる気を失ったり、落ち込んでしまったりしがちです。 そこで以下に、せっかくの注意をきちんと受け止めてもらうための、「上手な注意の仕方」のポイントを挙げました。あわせて「上手な褒め方」についても、記します。 ●上手な注意の仕方 □一回に一つのことをその場で注意。過去を蒸し返したり、あれこれ一度に言わない □冷静に注意すること □強く叱る場合は他の人のいないところで行う □「あなた」が悪いのではなく「そのこと」がいけないのだと伝えること。つまり「人」と「事」を分けて注意する □なぜ注意するのか、一つひとつ理由をあげて、かみ砕いて説明する □注意と激励はセットで。特に相手が新人の場合は、励まし希望を与えることで、次への意欲をもり立てる □教えていないことは注意しない □注意して改善されたら、必ず褒める ●上手な褒め方 □事実に基づいて、具体的に、細かく褒める □良い行為は見逃さず、すかさず褒める □むやみやたらに褒めるのではなく、当然褒めるべきものだけ褒める □相手が「褒めてもらえるかな」と予期していることを、外さないように褒める □時間、場所、タイミングを考えて褒める □周囲の人への影響も考えながら褒める □他者からの褒め言葉はぜひ伝える。例えば「 ◯◯チーフがあなたのこと、頑張っていると褒めていましたよ」など
ステップ 9評価と賃金 ~頑張っても、認められない? ~
1 適正な評価で「やる気」を引き出す戦力化とやる気の関係 家庭の主婦が感じる最大の不満は、「家事労働が評価されないこと」でしょう。例えば「家族に『やって当たり前』と思われている」「頑張っても誰にも褒めてもらえない」「どれだけやっても一銭にもならない」などは、よく聞く不満の代表です。 パート・アルバイトの仕事も、同じです。入社当初こそ慣れない仕事にドキドキハラハラするものですが、家事同様、いずれ慣れが生じます。ルーティン・ワークや、やって当たり前の仕事が多く、正社員に比べ仕事が限定されていたり、比較的簡単なことが多いだけに、何の評価も得られなければ、仕事が嫌になってしまいます。 では、そんな気持ちの停滞を防いでパート・アルバイトを戦力化し、その力を最大限に活かすにはどうするか。そのキーワードを敢えて一つ挙げるなら、それは「やる気」に尽きると思っています。「やる気」とは、わかるようでわからないような、非常にあいまいな言葉です。一方で、多くの人が自分自身で実際に、実感する心の動きでもあるでしょう。例えばビジネスパーソンに「やる気になるとどうなるか、自分の体験を話してください」と促すと、多くの人からプラスの言葉が返ってきます。具体的には「仕事が楽しくなる」「自然と仕事に集中する」「仕事の能率が格段に上がる」「仕上がり品質も高くなる」などです。 これは、理屈ではないのです。もちろんパート・アルバイトでも同じです。やる気を引き出す三つのポイント では、パート・アルバイトの「やる気」を引き出すには、いったいどうすればいいのでしょうか。 ポイントは三つ。それは、すでに詳述した「コミュニケーション」と「無理のないシフト」、そして「評価」です。中でも評価は、やる気に直結する、大変重要な要素です。 実際、パート・アルバイトに「いつ、どんなときにやる気になったか」たずねた結果を見てみると、一位が「お客様に喜ばれたとき」で五二・五%。これは、お客さまからの“評価”そのものです。二位が「自分の仕事に対する評価があったとき」で、四六・八%となりました(『平成一七年版パートタイマー白書』)。 ちなみに三位は「仕事の成果が実感できたとき」で三四・五%。さらに「上司から信頼されていると感じたとき」三三・八%、「責任のある仕事を任せられたとき」三二・九%と続きますが、これらに共通するのは、自分の仕事に対するリアクションが感じられたときだということでしょう。 評価とは、リアクションそのものです。自分の行動に対して、なんらかの反応があることは、実際にとてもうれしいことです。それが、プラスのものであればなおさらです。「評価してくれた相手を失望させたくない」「相手の期待に応えたい」「もっと評価されたい」と思い、さらに頑張るものなのです。これが、やる気の源泉です。適正な評価が、人と企業を成長させる 適正な評価の効用は、「やる気」を高めるだけにとどまりません。パート・アルバイトを成長させ、これが企業の成長につながります。 なぜなら、きちんと評価することで、個々のパート・アルバイトに「今の仕事ぶりでいいのか」「ダメならば、いったいどこを正せばいいのか」が伝わるからです。 まずは相手の仕事をしっかり見て、「こういう状態ですね」と認知すること。そして、それが会社が求める基準に沿っていれば「褒める」、つまり、「いいですよ」と伝えます。褒められれば人はうれしいと感じ、もっと頑張ろうと思うものです。 一方、何かが不足していれば「不足していますよ」と、注意します。それが、自分の仕事を振り返ったり、見つめ直させることにつながります。その際「もっとこうしてください」とか「ここを改めてください」と具体的に指摘することが、彼らの成長を促します。 評価の手段は、評価表に基づいた人事考課などに限りません。例えば「頑張っているね」「大変そうだね」「暑いなかありがとう」といった声かけは、何気ない会話のようですが、「認め」という評価の表現方法の一つです。 なお、褒める評価には別の利点があることも、ぜひ心に留めておきたいもの。それは「人は認められると、認めてくれた相手に心を開く」ということです。パート・アルバイトが心を開いてくれれば、マネジメントには大変なプラスです。コミュニケーションも活発になり、職場全体が活性化します。 逆に、パート・アルバイトの仕事ぶりを評価しないことのマイナスは、やる気を削ぎ、成長を止めるだけではありません。ついには、頭に「退職」の二文字が浮かぶのです。 このことは、パート・アルバイト本人に「どんなときに辞めようと思うか」たずねたアンケートの回答に、明瞭に表れています(平成二〇年版パートタイマー
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白書)。回答者の三三・七%が「頑張っても何の評価もされないとき」に、二八・六%が「何年働いても賃金が上がらないとき」に、「辞めようと思った」としているのです。【事例】賞与を「社長室で社長から手渡す」 ~豚まんチェーン ~ 大阪に本社を構える、ある豚まんチェーンでは、年に二回の賞与を、社長から全社員に「手渡し」で支給しています。社長は支給当日、シフトに応じて三々五々受け取りに来る社員を待ち、一人ひとり社長室に招じ入れては、声をかけながら手渡します。これが、朝から深夜近くまで続くのです。正社員のみならずパートも同じです。 目的は、賞与を手渡すことにより、社長が社員一人ひとりと目を合わせて、ほんの数言でも話をすること。こうやって、賞与に込めた「あなたを認め感謝する」気持ちを、伝えようとしているのです。現場があちこちに散っており、ふだんはなかなかもちづらい社長との直接の接点を、定期的に作ることも目的です。パートも対象にしているのは、長年勤務している人が多く、正社員同様大事なスタッフだと考えているからです。 実際その場で渡すのは、明細と数万円程度の現金です。残りは振込となりますが、それでも、全社員分を封筒に入れ用意するのには大変な労力がかかります。もちろん、その日は社長は、まる一日拘束されてしまいます。 豚まんを、一つひとつ手包みで作り、各現場で蒸し上げて販売する同社の仕事は、楽ではありません。また、「丁寧に心を込めて作る」気持ちが薄れると、手作りだけに品質に直結します。笑顔の接客も、できなくなってしまいます。 同社の社長が「手渡し」で評価を伝えることにこだわるのは、厳しい仕事だからです。また「どこよりもおいしい豚まんで、お客さまに喜んでいただく」姿勢を伝えるためです。 年に二回の、「評価を伝える」ダイレクト・コミュニケーションの効用もあってか、同社の売上は右肩上がりを続けています。 2 評価に応じた賃金の支払い方評価に応じた賃金制度は必要か 評価に応じた賃金制度とは、パート・アルバイトを一定の基準で評価して、それを賃金に反映させる制度です。勤続年数の長さだけ、あるいは「 ◯◯さんは何となく頑張っている感じだから、時給を上げてやろう」などという主観による決定は、評価に応じた賃金とはいえません。 近年、企業のパート・アルバイト活用が進み、その仕事の幅も広がっています。単純作業を繰り返す仕事の人もいれば、正社員の補助業務をする人もいます。また、正社員の代替戦力として、かなり難易度の高い仕事を行っている人もいます。同じ職場で働くパート・アルバイトであっても、人により担当している仕事の質が、違ってきているのです。 こうした場合、評価に応じた賃金制度は不可欠です。「全員一律」の賃金は、多くの職場でひずみを生みやすくなっています。 評価に応じた賃金は、法令遵守の面からも必要です。というのは、二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法により、すでに触れた「教育」同様、「賃金」や「福利厚生」などに関してパートと正社員の取扱いを同じにしたり、バランスをとることが、企業に求められているからです。 具体的には同法は、パートタイマーを大きく四つに区分して、正社員との働き方の違いに応じて、処遇を決定するよう求めています。例えば「正社員と同視すべきパート」については、「賃金」「教育訓練」「福利厚生」などすべてについて、正社員との差別的取扱いが禁止です。「正社員と同視すべきパート」に該当する人がいる職場は、実際には少ないと思います。とはいえ、それでも正社員との差別禁止が法律で明文化されたことは、大きな変化です。 なぜなら、この改正法により、雇用管理においてこれまで「別もの」と考えられてきたパートと正社員が、同じ線上に置かれることになったからです。「パートだから」というだけで、仕事の内容を考慮せず一律の処遇をすることは、法律違反となりかねません。まずは「評価表」を作ることから 評価に応じた賃金制度は、まずは「評価表」を作ることから始めます。評価表を作ることで、パート・アルバイト全員を、一定の基準で評価できるようになります。この結果、評価者によるズレやブレが生じにくくなり、評価の正確性を保ちやすくなります。 評価表がないと、評価する側の人の価値観や、評価する側と評価される側の相性などによって、結果が大きく変わってきてしまいます。これでは、パート・アルバイトを疑心暗鬼にさせ、やる気を損ねてしまいます。 評価表は、いくつかの要素で構成されるのが普通です。この構成要素は、企業によって異なります。というのは、評価表は各企業が「パート・アルバイトに求めるもの」の一覧表であるからです。 例えばスポーツクラブで、受付業務のためにパート・アルバイトを雇っている場合と、メーカーで部品の組み立て作業をしてもらう場合では、必要な知識も、実際に行う作業の中味も、そこで求められる能力も違います。スポーツクラブの受付では、明るく臆せずお客さまにあいさつできたり、いつも笑顔でいられたり、混雑時でも慌てずに対応できる臨機応変さが評価されますが、部品の組み立て作業なら、細かな作業を手際良く間違いなくこなせることや、集中力などが評価されます。 一方、仕事の内容によらず、すべてのパート・アルバイトに求められることもあるでしょう。例えば職場のルールを守ることや、仕事に意欲的かつ前向きに取り組む姿勢などです。これらもすべて、評価表に組み込みます。もっと具体的に、「改善提案を月に一〇件以上出す」ことを、評価基準として明示している会社もあります。 評価表の作成は、パート・アルバイトが行っている業務の一覧表を作ることであり、その難易度を明確にすることであり、さらには「自社が大切にすること」を明らかにすることでもあるのです。
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【事例】接客販売 A社と部品メーカー B社の評価項目 接客販売 A社では、以下の三方面から、パート・アルバイトをそれぞれ五段階評価しています。 基本行動……仲間と協力して仕事をしているか、あいさつができるか、遅刻・欠勤がないか、社内ルールを守っているか、等 定型業務……店内の整理・整頓・清掃、クレーム対応、レジ業務、電話応対、商品説明、等 接客スキル……身だしなみ、表情、お辞儀、言葉遣いと語調、等 また、部品メーカー B社では、以下の二方面から、パート・アルバイトをそれぞれ五段階評価しています。 業績評価……代表的な製品に関する、一時間あたりの組み立て個数(具体的な難易度や作業工程の多さ等から、「何個組み立てられれば、どう評価されるのか」は、部品によって異なる) 行動評価……冷静さ、思いやり、率直性、礼儀、整理・整頓、清掃・清潔、身だしなみ、勤務集中、改善意識、コスト意識、日報評価の結果を賃金表に落とし込む 評価の結果を、賃金に反映させたものが「評価に応じた賃金」です。つまり、評価表を作ったら、それに基づいて評価した結果を、パート・アルバイトの賃金にどう反映させていくのか、決めなくてはなりません。 評価結果の反映のさせ方も、各社各様です。中にはパート・アルバイトにも正社員並みの非常に細かい職務資格等級制度を導入し、「最下位等級では賃金アップのピッチは五円」などと決めている例もあります。一方、もっとざっくりと「 ◯◯の仕事ができるようになったら五〇円アップ」などとしているところもあります。 パート・アルバイトを評価して時給を見直す頻度も、それぞれです。人事評価に応じて賃金決定する場合、賞与については半年に一度、時給については一年に一度といったところが多いようです。 しかし、パートの戦力化に積極的に取り組む企業の中には、三カ月に一度という高い頻度で時給の見直しを行っているところもあります。正社員に比べ勤続年数が短いことから「評価の頻度を上げないと、パートのモチベーションアップにつながらない」、また「常に評価し、時給アップのチャンスを明示することで、退職者を減らしたい」などがその理由です。 以上見てきたように、評価に連動した賃金制度の作成は、実際には大仕事です。同じ仕事をするパートが少なくとも一〇人前後いるならば、こうした賃金制度の導入は結果的にプラスになるでしょう。しかし、パートが二 ~三人しかいないような職場では疑問です。 ただし、制度化しない場合は、賃金決定の際の「納得性」「公平性」を、制度がある職場以上に意識する必要があるでしょう。また、正社員とのバランスがとれた金額にすることが、パートタイム労働法により定められていることは、すでに記したとおりです。 残業代の支払いが生じるときは? パート・アルバイトの賃金にも、正社員同様、時間外割増(残業代)が発生します。 具体的には、パート・アルバイトの労働時間が一日八時間(法定労働時間)を超えた場合、通常の賃金に二五%以上、上乗せした割増賃金を支払わなくてはなりません。 注意点は、割増賃金の支払いが生じるのは、パート・アルバイトの通常の勤務時間と関係なく法定労働時間つまり「一日八時間」を超えた場合であること(パート・アルバイトが仕事をかけもちしている場合、複数カ所の労働時間が通算されるのでさらに注意)。 例えば通常の勤務時間(就業規則や労働契約などで定められた所定労働時間。拘束時間から休憩時間を除いたもの)が、午前一〇時 ~午後五時(休憩時間一時間を含む)の計六時間であれば、あと二時間つまり午後七時までの勤務については、割増賃金は発生しません。一日八時間を超える労働、つまりこの場合なら午後七時以降の残業をした場合に、通常の時給が八〇〇円ならその二割五分増しの賃金、つまり時給一〇〇〇円を支払うことになります。 パート・アルバイトに深夜業(午後一〇時 ~午前五時までの労働)をさせた場合にも、割増賃金は発生します。この場合の割増は二五%で、パート・アルバイトがこの時間帯に働けば、たとえ一時間しか勤務していなくても、割増賃金を支払うことになります。居酒屋やコンビニなどの募集広告で、深夜労働に割増賃金が表示されているのは、法に則った行為です。 深夜業の割増は、時間外労働、休日労働の割増と重複加算されます。例えば「時間外労働の割増賃金」の例にあげた時給八〇〇円のパートが、さらに三時間、午後一一時まで働いたとすると、一時間あたりの賃金は以下のようになります。 ○午後七時 ~同一〇時(法定労働時間を超えて労働)……時給一〇〇〇円(時間外割増二五%) ○午後一〇時 ~同一一時(法定労働時間を超えて深夜業)……時給一二〇〇円(時間外割増二五% +深夜業割増二五% =五〇%増し) なお、二 ○一 ○年四月以降、労働基準法の改正により以下のように割増賃金が変更になります。時間外労働の量により割増率が変わるので、注意が必要です。 ○ 1カ月の時間外労働が四五時間以内の場合……二五%以上増し ○ 1カ月の時間外労働が四五時間を超える場合……労使で時間短縮または割増賃金率を引上げる努力義務 ○ 1カ月の時間外労働が六〇時間を超える場合……五〇%以上増し ※中小企業に対しては猶予措置 ※引上げ分の割増賃金の支払いに代えて、有給の休日付与もできる
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休日労働の割増賃金って? 労働者には、一週間に一日または四週間で四日の休日を与えなければなりません。この休日に労働させた場合には割増賃金を支払う必要があり、パートでも同じです。割増賃金は休日労働した時間について、通常の賃金の三割五分以上、上乗せした賃金となります。休日労働をした場合、通常の時給が八〇〇円なら、時給一〇八〇円を支払うことになります。なお、休日に時間外労働をさせても、別途時間外割増賃金は発生しません。 この「休日労働の割増賃金の支払い」が、不要になる場合があります。休日振替とした場合です。休日振替とは、「あらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日にするもの」です。具体的には、事前に振替休日を指定し付与します。こうすれば、当初休日であった日に勤務しても休日労働とはみなされず、割増賃金を支払う必要もありません。 なお、休日振替を行うには、事前に以下の二つを行う必要があります。 就業規則等に休日振替ができる規定を設けておく 少なくとも振替実施日の前日までに、振替日を指定して労働者に伝える 休日を振り替えたつもりでも、 を行わなかった場合、すなわち事前に振替日を特定していなければ、代わりに休んだ休日は「代休」扱いとなります。この場合、休日労働した日の賃金支払いが必要になるだけでなく、その額が「休日労働の割増賃金」額となるので要注意です。手当で報いるのも一つの手 パート・アルバイトの仕事について、手当を活用することで、公平性と納得性を上手に高めている企業もあります。 例えばスーパーの鮮魚売り場担当パートが「 ◯◯の魚を刺身にできる」といった一定の技術を習得した場合、「技術手当」を支給して報いる、あるいは「パートリーダー」や「パート主任」「パート店長」など、監督職やマネジメント職に登用されたパートに、リーダー手当を支給する、などです。 手当は、「毎月五〇〇〇円」など月額で支給することが可能です。時給とは別にすることで、労働時間にかかわらず、毎月の支給額を一定にすることができます。 他にも、勤務時間帯や職種による賃金の差を、基本給は変えずに早朝手当や職務手当、資格手当を支給することで、つけている企業もあります。他のパート・アルバイトが出勤したがらない時間帯や曜日に働いてくれたり、あるいは特に忙しい時間帯に働いてくれる人に対して、会社への貢献度や時間あたりの労働密度の差を考慮した支払いをしようというわけです。 これらパート・アルバイトの手当をまとめると、以下のようになります。・特別勤務手当……土・日曜・祝日や年末年始、早朝や夜間の勤務に対する手当。人が集まりにくいときに、人手を確保したり、出勤を奨励するための制度・職務手当……仕事に特別な資格や免許、技術・技能などが必要な場合、資格手当などとして支給。あるいは、雨天の屋外作業や、他部署に比べて大変な仕事だったり厳しい労働条件だったりする場合に支給すると、仕事による不公平感を埋めることができる・役職手当……店長、主任、時間帯責任者などに、職務内容や責任の度合いに応じて支給する・精皆勤手当……皆勤あるいは欠勤一日など精勤したパートに支給する手当。出勤率を上げたい場合などに有効・通勤手当……実費を全額、あるいは会社規定の限度額内で支給 なお、改正パートタイム労働法では、こうした手当についても、正社員との差別的取扱いを禁止したり、バランスのとれた処遇にすることを求めています。パート・アルバイトの賞与と退職金は必要か パート・アルバイトに賞与を出したり、退職金制度を適用するかどうかは、各企業の判断です。つまり、出しても出さなくてもかまいません。 しかしながら、パート・アルバイトのモチベーションや定着率アップの観点から、これらを用意する企業もあります。特に賞与に関しては、正社員の賞与支給時に合わせ、寸志程度の額をパート・アルバイトにも出している例はよく聞きます。 パート・アルバイトの賞与の額は、以下のように決めているところが多いようです。 ・基本給(時給)に一定率を掛けて算出し支給 ・基本給に関係なく一定額を支給 ・出勤率、勤務成績、勤務年数等に応じて支給 また、賞与はパートの年収に加算されます。扶養控除内で働きたい場合は、就労調整(詳細は知っておきたい実務知識 )に注意が必要です。 一方、退職金に関しては、働いた時間や年数などで基準を設け、これをクリアしたパートに支給している例などがあります。例えば勤続年数五年以上なら一律七万円、一〇年以上なら一律一五万円を支給という会社がありました。いずれにしても「長く働いてくれてありがとう」という気持ちの表現であり、定着を促す手段の色合いが濃いようです。 なお、賃金同様賞与や退職金についても、正社員との差別的取扱いが禁止されたり、バランスを取ることが、改正パートタイム労働法で定められています。正社員とのバランスを視野に ここまで、正社員とパート・アルバイトのバランスを取るべきという記述が目立ったかと思います。これには、近年企業が正社員を減らし、代わりにパート・アルバイトなどの正社員以外の従業員を増やしてきた結果、パート・アルバイトの仕事と正社員の仕事が非常に近くなる場合が増えてきたという事情があります。何度も触れてきた二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法も、こうした社会の変化を受けたものです。
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それだけでなく、パート・アルバイトでの仕事が、かつてのような「自分のお小遣い稼ぎ」目的ではなく、家計を支える重要な収入となっている人も増えているようです。また、正社員としての勤務経験のある人や、自身がパート・アルバイトをマネジメントしたことのある人が、パートで仕事復帰している例が増えています。こうした人は、自分がパートで行っている仕事が、会社のなかでどういった位置付けにあり、どの程度の難易度であり、責任の程度はどうなのか、などがわかります。 正社員とパート・アルバイトのバランスを取ることは、法の遵守という面だけでなく、労働の質に応じてきちんと報いるという面からも、非常に大事になってきているのです。【事例】パートで仕事復帰した元正社員の不満 大手都市銀行に一〇年勤めて結婚を機に退職、夫の郷里に転居し出産後、子どもを保育園に預けて地元の地方銀行にパートで復職したある女性は、仕事の内容と時給があまりに見合わな過ぎることに、大きな不満をもっていました。「業界経験があるだけに、自分がパートで担当している仕事が、どういうものなのかがよくわかるのです。今、パートとして担当している仕事の中には、かつて自分が正社員として行っていたものがたくさんあります。また、今の職場の正社員が、どんな仕事をしているのかも手に取るようにわかります。だからこそ、自分とほとんど同じ仕事をしている正社員の年収が、自分の三倍もあるのはやはり解せないのです。もちろん、パートには営業ノルマもないし、残業もよほどのことでないとしないけれど、それでも差がありすぎるんじゃないか、って」 そのころから「たまに馬鹿らしくなり、辞めてしまおうかと思ったりもするんです」と言っていた彼女。子どもが小学校に上がり、フルタイム勤務ができる環境が整うやいなやその銀行を辞め、今では派遣社員として、一・五倍以上の時給で別の銀行に勤めています。 3 実際に「評価する」ときの注意点評価の公平性・納得性を高める五つの工夫 評価に関するパート・アルバイトの大きな不満の一つに「えこひいき」があります。「あの人ばかり評価される」「私のことは全然見てくれていない」といった声は、多くのパート・アルバイトから発せられています。特定の人ばかりが上司に目をかけられている様子を不快に思うのは、人として自然な感情です。賃金に反映されるなら、なおさらです。 店長や上司自身に「えこひいき」している自覚がなかったり、実際にはしていないのにそう思われてしまうこともあるので、面倒です。 こうした不満がくすぶると、頭のなかに「どこかほかにいい会社がないか」という思いがよぎります。そして、仕事ができる人ほど、あっさりと次の職場に採用され、辞めていってしまうのです。また、こうしたマイナスの感情はマイナスの連帯感を生みやすく、職場に派閥や敵味方を作ってしまいがちです。評価は両刃の剣です。 しかし、評価をしなければパート・アルバイトのモチベーションは下がり、また定着率も悪くなってしまいます。だからこそ、公平性が感じられ、納得感も得られる評価をするよう、細心の注意を払います。 以下、評価の公平性・納得性を高めるのに効果的な工夫を挙げました。 評価者訓練の実施……評価する側の社員を一堂に集め、集合教育で評価の仕方を教えたり、評価基準の共有を図る 複数評価の実施……直接の上司だけでなく、その上の管理職や事業場長など、二人以上の評価者が評価する パート本人の自己評価……同じ評価項目について、評価者だけでなくパート本人にも自己評価させる 評価者面談の実施……パートと評価者である上司が面接し、評価結果を説明したり、自己評価をさせる場合は上司評価との差異について双方が納得するよう、話し合う 評価基準を具体化……誰が評価しても結果が同じになるくらい、評価基準に具体性をもたせる評価者訓練が大事 前項でも挙げた評価者訓練は大事です。特に、パート・アルバイトの人数が多かったり、勤務場所があちこちに散らばっている場合は不可欠です。せっかく評価制度をしっかり作っても、評価する人が誰かによって評価の結果が違ってしまえば、評価制度導入の意味がありません。 具体的には、パート・アルバイトのどこを見て、どうであればどういった評価点を付けるのか、ということを具体的に教えます。評価表を渡し、評価項目の一つひとつについて、具体的にどうであれば A評価であり、どうならば B評価なのかということを説明し、評価者全員で共有していきます。 評価者訓練は、一堂に集めての OFF― JTで実施するとよいでしょう。伝わる内容にブレが生じにくくなるからです。成果だけでなくプロセスも見る 評価をするといっても、多くの場合、パート・アルバイトを結果ばかりで評価するのは困難です。勤務時間や日数の短いパートは、一つの仕事を何人かで担当する場合が多いからです。 一つの仕事が達成された場合、それは最終段階を担当した人だけの成果ではなく、その途中を担当した人すべての力が結集された結果です。そんな、目に見えないプロセスを担った担当者にもきちんと評価の目を向けてあげないと、その人たちは報われません。 なお、これは逆の場合も考えられます。トラブルやクレームです。仮に、パートの Aさんがお客さまからクレームを言われたとします。しかしその原因は Aさんの直前の時間帯にシフト勤務していた Bさんにあった、などということは、実はよくあることなのです。自分には直接原因のないことでクレームを受け嫌な思い
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思いをした上、評価まで下がったとなれば、 Aさんが「こんな職場で働き続けたくない」と思うのは自然です。 実際、パートに賃金に関するアンケートをしてみると、自由回答では「結果だけでなく、プロセスも評価してほしい」という声を目にすることが少なくありません。
ステップ 10正社員登用と退職 ~より永いご縁になるとき、別れるとき ~
1 企業力を高める「正社員登用」パート・アルバイトを正社員登用する三つのメリット せっかく良い人と巡り会い、いくつものハードルを越えて得た幸せな家庭は、できるだけ長続きさせたいもの。相思相愛マネジメントにより、しっかり戦力化できたパート・アルバイトについても同じです。 その際、長続きの手段として「正社員に登用する」ことを真剣に検討してみる価値があります。三つのメリットがあるからです。 第一に、優秀なパート・アルバイトを正社員に登用することで、その人により長く働いてもらえる可能性が高まります。賃金などの処遇が高くなるばかりでなく、無期雇用契約にすることで安定性が高まり、自然と「腰を据えて」頑張る気持ちが生まれるからです。 雇用契約や仕事の内容、処遇などにより、パート・アルバイトが正社員に比べて「辞めやすい」労働力であると述べましたが、まさにその逆というわけです。 第二に、正社員に登用することで、本人のモチベーションが上がります。実際に正社員に登用された人にインタビューすると、「正社員になったことで責任感が増し、より一層頑張らなくては、と思った」と、ほぼ一様に答えます。 第三に、実際の働きぶりを見た上で登用できることです。その意味では、新たに正社員を募集して採用するより、失敗が少ないといえるでしょう。正社員を募集しても「これは!」と思う人材からの応募がなかなかない場合など、パート・アルバイトからの登用に視点を変えてみるのは、有効な手段です。 もちろん、登用の際は、公平・公正に「人を観て」行うことが大事です。正社員への登用制度をパート・アルバイト活用戦略の一つとして パート・アルバイトに正社員への道を開くことは、二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法でも企業に義務付けられたことでもあります。具体的には、企業は以下の四つのいずれかを、行わなければなりません。 正社員を募集する場合、その募集内容をすでに雇っているパートに周知する 正社員のポストを社内公募する場合、すでに雇っているパートにも応募機会を与える パートが正社員になるための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する その他正社員への転換を推進するための措置「法律で定められた義務」などと言われると、企業の負担が増すように感じられるかもしれません。しかし、自社のパート・アルバイト活用戦略の一つとして、ぜひ積極的に取り入れることをおすすめします。 理由はすでに述べたとおりですが、加えて「正社員への登用制度」が制度としてきちんと存在していることが、パート・アルバイトのモチベーションアップに大きく影響することがあります。「頑張れば正社員になれる」ということは、それを志向するパート・アルバイトにとって、大きな魅力になるのです。 求人募集の際にも、「正社員登用制度あり」などと掲載すれば、求人広告の魅力が高まります。「将来は正社員になりたい」と思って応募する人は、仕事に対してより意欲的な人だといえます。面接の際、多少厳しいことを言っても応募を取りやめたりすることなく、ガッツでついてきてくれます。 もちろん、制度があるからといって、正社員になりたいパート・アルバイトをすべて正社員に登用することはありません。パートタイム労働法でも、あくまで「パートが正社員になるチャンスを与える」ことを義務付けているに過ぎません。 半面、「正社員登用制度あり」とうたいながら制度に実効性がない場合、それに気づいたパート・アルバイトがやる気をなくしてしまう可能性があるので、注意が必要です。正社員とパートの違い ところで正社員とパート・アルバイトの違い、つまり両者の線引きは、具体的にはどのように考えればいいのでしょうか? パートタイム労働法では、パート・アルバイトを「フルタイム正社員より短い時間働く労働者」としていますが、実際の働き方における同異性については、 職務の内容、 人材活用の仕組みや運用など、 契約期間の三方向から見ています。 職務の内容とは、パート・アルバイトの「実質的な業務の内容」や「業務に伴う責任の度合」です。 人材活用の仕組みや運用などとは、例えば「“転勤”の有無および範囲」や「“職務の内容の変更”“配置の変更”の有無および範囲」などです。 契約期間は、パート・アルバイトとの雇用契約が「無期雇用契約(または反復更新により無期と同じ)」かどうかです。 こうした観点から、 職務の内容、および 人材活用の仕組みや運用などにおいてパート・アルバイトと正社員に違いが見られず、かつパート・アルバイトと無期雇用契約(または反復更新により無期と同じ)を結んでいる場合、そのパート・アルバイトは「正社員と同視すべき」だとしています。 なお、ある企業では、パート・アルバイトと正社員の仕事の違いについて、以下のように整理していました。
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正社員 →仕事の仕組みを考える役割 パート・アルバイト →仕事の仕組みの中で、実際に作業する役割 仕事の仕組みの中で、その仕組みがよりうまく運用されるよう、判断したり指示する役割短時間正社員という選択肢も「短時間正社員」とは文字どおり、フルタイム正社員より短い時間働く正社員です。「え? 労働時間が短いなら、パート・アルバイトじゃないの?」と思われた方も多いでしょう。実際、これまでは「正社員はフルタイム働くもの、短時間勤務ならパート・アルバイト」という考えが一般的でした。 それに対して短時間正社員は、働く時間にとらわれず、一人ひとりのスキルや能力・意欲を評価して「長期にわたって自社戦力として活躍してほしい」人を正社員として雇用していこうという考えであり、パート・アルバイトを正社員に登用する際の、有効な選択肢です。 というのは、能力も意欲も申し分ないにもかかわらず、家庭の事情などからフルタイムでは働けないがゆえに、パート・アルバイトとして雇用されている人がいるからです。こうした人々を短時間正社員に登用することは、本人のモチベーションも定着率も高めます。もちろん、子どもが大きくなるなど本人の働く環境や意思に応じて、フルタイム勤務に替わってもらうこともできます。 特に看護師など人手不足の職種において、人材確保の有効な手段として注目を集め、また実際に広まっています。長い目で見れば今後、少子高齢化による労働力不足が、他人事ではない自社の課題として表面化することは自明です。そんななか、優秀な働き手を確保していくための一つの方策として、フルタイム正社員が一時的に短時間勤務をする場合も含めた「短時間正社員」という雇用形態が、意識され始めているのです。 なお、短時間正社員として雇用した場合は、フルタイム正社員が同じ仕事をし、同じ評価を得た場合の賃金を時間給換算し、実際に働いた時間分、支払います。また、その労働時間にかかわらず、社会保険に加入します。【事例】パートを短時間勤務の正社員に 神戸に本社を構え全国に店舗展開する、洋菓子製造・販売のある老舗企業は、パートタイマーを短時間勤務のまま正社員に登用する人事制度を導入しました。同時に、フルタイム正社員に対しても「希望すれば理由を問わず短時間勤務を認める」としています。 パートを正社員にすれば、当然人件費が上昇します。実際、同社は「導入は決断でした」と振り返ります。 それでも決意したのは、創業八〇年近い同社のさらなる発展のためでした。同社には、正社員約八〇〇人に対して、パート・アルバイトが二〇〇〇人近くいますが、優秀なパートを正社員化し、その意欲・能力を発揮し定着してもらえれば、長期的には人件費上昇分以上の生産性向上が、期待できると考えたのです。 実際に短時間正社員に登用されたスタッフの一人、三〇代の Aさんは、こう話します。「私は就職氷河期世代で、短大卒業後パートで入社しました。仕事はすごく楽しくて、途中からパート店長も引き受けました。でも、実際に店長になってみると、仕事は同じなのに正社員とパートではお給料が全然違うことに気づきます。でも、仕方ないと思っていたんです。だから今回、短時間正社員制度ができ、正社員になれて、本当にうれしいです。もっともっと頑張って、結果を出さないと、と思います」 一方、やはりパート店長から短時間正社員になった Bさんは、「数社のパートを経験していますが、ここは本当に働きやすく、長く勤めたいと思っていました。そこに今回、短時間正社員制度が導入され『会社は私たちのことを考えてくださったんだ』と思いました。パート時代から、モチベーションは高く維持してきたつもりですが、制度導入で会社の期待を肌で感じ、今まで以上に責任感をもって働こうと思っています」と話します。 同社は「導入したのは正解だった」と、当時の決断を評価しています。 2 法令遵守で相思相愛パート・アルバイトも法律で守られている パート・アルバイトも労働者です。「労働基準法」「パートタイム労働法」ほか、各種労働関係の法律により守られています。パート・アルバイトだからといって好き勝手に働かせていいわけではありませんし、そんなことをしたら世間から「いいかげんな、あこぎな企業」と思われてしまいます。「知らなかった」ではすまされないのです。 同時に、かつてに比べパート・アルバイト本人たちが、「自分たちの働き方」に関する情報を収集しやすい状況になっています。企業側の違法行為が、労働者の訴えによって表面化することも稀ではなくなりました。 よくいわれる従業員の非正社員化が、すべて悪いわけではありません。空いた時間を活用し自分のペースで働きたい人もいますし、拘束を嫌いあえて正社員にならない人もいます。そういった人たちに短時間や短期間の勤務でも支障がない仕事、つまり熟練を要せず拘束度や責任も低い仕事に就いてもらい、その分低い賃金で雇用することには、妥当性があります。パート・アルバイトと会社の双方が納得し、双方の満足につながる働き方といえます。 ともあれ、法律を知り、法に則った適切なマネジメントを行うことは、パート・アルバイト戦力化の近道です。そこでここでは、法律で定められているマネジメント・ポイントについて、これまで触れてこなかった部分を記します。男女差別の禁止とセクハラについて パート・アルバイトにも、男女雇用機会均等法が適用されます。これにより、事業主は、パート・アルバイトに男女を理由とした差別的取扱いをすることを禁じ
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禁じられています。具体的には、禁じられている募集とは?で触れた募集・採用、そして配置・昇進・降格・教育訓練、一定の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新の各場面です。 また同法では、職場におけるセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)に関しても、「事業主は雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と規定しています。すなわち、職場におけるセクハラに関する方針を明確化し、パート・アルバイトを含むすべての従業員にその内容を周知・啓発します。また、従業員の相談に応じたり苦情を受け付けるべく体制を整備し、それらに迅速かつ適切に対応しなくてはなりません。 なお、相談の対応にあたっては、プライバシーを保護すること、また相談したこと等を理由に不利益な取扱いを行わないことを定め、これもパート・アルバイトを含むすべての従業員に周知・啓発します。健康診断を実施するパート・アルバイトとは パート・アルバイトでも、健康診断を受けさせなくてはならない場合があります。以下の二つの要件を、ともに満たしている場合です。 期間の定めのない雇用契約によって雇用されている人。また期間に定めがあっても、契約期間が一年以上(深夜業を含む業務など特定業務に従事する場合は六カ月以上)である人。契約更新により一年以上雇用されることが予定されている人。もしくはすでに一年以上雇用されている人 一週間の所定労働時間が、その事業所で同種の業務に従事する正社員の四分の三以上の人 なお、一週の所定労働時間が正社員の四分の三未満であっても、おおむね二分の一以上の人に対しては、健康診断を実施することが望ましいとされています。 健康診断の費用は、事業主の負担となります。一方、パート・アルバイトが健康診断を受けた際の時給については、一般健康診断の場合、労使が協議して決めることになっています。とはいえ労働者の健康は会社の運営に不可欠です。従って、賃金も支払うことが望ましいといえるでしょう。 実施時期は、一年に一回定期的(同じぐらいの時期)に行うこととされています。定期健康診断の結果、「過労死」等に関連する一定の項目で異常の所見が見られる場合、労働者の請求に基づき、労働者災害補償保険(労災保険)により、二次健康診断等給付が受けられます。妊娠・出産したパート・アルバイトの保護 労働基準法により事業主は、パート・アルバイトに対しても、母性保護措置を取ることが義務付けられています。具体的には、以下の五つです。 妊産婦などの危険有害業務の就業制限……妊娠、出産、哺育などに有害な一定の業務への就業には制限があります 産前産後休業と軽易な業務への転換……産前六週間(多胎妊娠の場合は一四週間)について女性が請求した場合、および産後八週間については、原則的に就業が制限されます。また、妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に配置転換させなくてはなりません 妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限……変形労働時間制が採られている場合も、妊産婦が請求すれば、一日および一週間の法定労働時間を超えて労働させることはできません 時間外労働・休日労働・深夜業の制限……妊産婦が請求した場合、これらが制限されます 育児時間……生後満一年に達しない子どもを育てている女性は、一日二回、少なくとも各三〇分の育児時間を請求することができます なお、これらの母性保護措置を受けたことや、そもそも結婚・妊娠・出産したことなどを理由に、そのパート・アルバイトを解雇したり雇い止め(契約終了(雇い止め)する際の実務参照)にすることなどは、男女雇用機会均等法により禁止されています。また、企業は、妊娠中および出産後のパート・アルバイトが保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保したり、主治医などから受けた指導事項を守ることができるようにしなければなりません。 産前産後休暇、育児時間等の賃金を有給として取り扱うかどうかは、各企業で決められます。その際、就業規則などで明確にしておくことが大事です。育児や介護をするパート・アルバイトに対する義務 パート・アルバイトでも、期間の定めのない雇用契約を結んでいる場合、育児休業や介護休業が取得できます。期間の定めのある雇用契約の場合でも、一定の要件を満たしている場合にはその対象になります。これは育児・介護休業法により定められていることです。その他、同法により企業は、具体的には以下の四つを実施しなくてはなりません。 (なお、育児・介護休業法は、二〇〇九年六月に改正法が成立しました。※印は、改正法による変更点です。なお、改正法は、二〇一〇年〈常時一〇〇人以下の労働者を雇用する事業主については二〇一二年〉夏ごろまでに施行される予定です) 育児休業制度 パート・アルバイトが申し出た場合、企業はその子が一歳に達するまでのあいだ、育児休業をさせなければなりません。また、パート・アルバイトが申し出た場合、子どもが一歳六カ月に達するまでの間、休業期間を延長させなければならない場合もあります ※父母がともに育児休業を取得する場合、一歳二カ月(現行一歳)までの間に、一年間育児休業を取得可能とする(パパ・ママ育休プラス)。また、父親が出産後八週間以内に育児休業を取得した場合、再度、育児休業を取得可能とする。配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得を不可とすることができる制度は廃止 介護休業制度 パート・アルバイトが申し出た場合、要介護状態にある対象家族一人につき、常時介護を必要とする状態ごとに、一回の介護休業をさせなければなりません 子の看護休暇 小学校就学前の子どもを養育するパート・アルバイトが申し出た場合、年五日まで、病気や怪我をした子どもの看護のために休暇を与えなければなりません ※小学校就学前の子どもが二人以上であれば、年一 ○日に拡充 勤務時間の短縮等の措置 三歳未満の子どもを育てているか、要介護状態にある家族の介護をしているパート・アルバイトについては、勤務時間の短縮等を行います。 その他、以下の改正があります。
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※三歳未満の子どもを育てている労働者について短時間勤務制度(一日六時間)を設けることが事業主の義務とされます。また、労働者からの請求があったときの所定外労働の免除を制度化しなくてはなりません ※介護のための短期の休暇制度を創設しなくてはなりません(要介護状態の対象家族が、一人であれば年五日、二人以上であれば年一〇日) ※苦情処理・紛争解決の援助及び調停の仕組みを創設する(二 ○一 ○年四月施行)。また、勧告に従わない場合の公表制度及び報告を求めた場合に報告をせず、又は虚偽の報告をした者に対する過料を創設する 育児・介護休業中の労働者に、賃金を支払う義務はありません。ただし賃金については労使間であらかじめ取り決め、きちんと明示しておきます。 雇用保険料については、育児・介護休業ともに、給与を支給していなければ、被保険者(労働者)も事業主も支払いは免除となります。一方、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、育児休業の場合は事業主が社会保険事務所に申請すれば、被保険者、事業主負担ともに免除されます。介護休業中の場合は、被保険者、事業主ともに負担しなければなりません。パート・アルバイトの待遇や苦情に関する会社の責任 例えば、あるパートさんから「正社員と同じ仕事をしているのに、なぜ給料に差があるの?」と聞かれた場合、きちんと説明しなくてはならないことが、二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法により義務付けられています。 こうした「待遇の差別的取扱い」「賃金の決定方法」のほか、「教育訓練」や「正社員への転換を推進するための措置」などについても、説明責任があります。 また、公正な待遇を実現するため、パート・アルバイトからの苦情や紛争の解決に関しても、パートタイム労働法によって取り決めがなされています。具体的には、「労働条件の明示」「差別的取扱い」「教育訓練」「福利厚生施設」「正社員への転換」「待遇についての説明責任」について苦情や紛争があった場合、まずは事業主が、事業所内で、自主的に解決を図ることが、努力義務となっています。 それでも解決しない場合、都道府県労働局長による助言・指導・勧告や、都道府県労働局の紛争調整委員会による調停の対象となります。 3 それでも退職が決まったらパートが退職を申し出たらどうするか 基本的に、自ら退職を申し出たパートを引き留めるのは、得策ではないと考えます。「辞めよう」という意思表示は、受ける会社側にしてみれば突然のことですが、本人にとってはいろいろと考えた結果です。そうして行き着いた結論を、他者が覆そうと頑張っても、無理が生じるものだからです。 一方、相手にためらいが見えた場合など、退職の意思を改めて確認してみたほうがいいこともあります。特に退職の理由については、じっくりと聞きます。辞める理由が本人の意思とは違うところにあり、会社側の対応いかんで問題が解決でき、辞めずに済むことがあるからです。 例えば、夫の転勤が理由なら、転居先次第では別の店舗で継続勤務できることもあるでしょう。職場の人間関係が理由なら、異動や仲裁、場合によってはトラブルメーカーとなっている人を突き止め、教育・指導するといった対処の仕方もあるかもしれません。そもそも退職とは パートが会社を辞める場合、大きく二つの辞め方があります。一つは、退職。もう一つは、解雇です。 退職とは、本人の申し出による退職や、雇用契約期間の満了による退職です。本人の申し出による退職は、期間の定めのない雇用契約を結んでいるパートか、または一年を超える有期雇用契約を結んだパートが契約後一年を経過した後に退職を申し出た場合、いつでも退職することができる、というものです。 しかしながら、パート・アルバイトを戦力化し、責任ある仕事を任せていれば、当然引き継ぎや後任の選定も簡単ではありません。そこで、退職の申し出は、例えば「一カ月前まで」など妥当な時期に行うことを、“社内ルール”として就業規則などに明記しておくとよいでしょう。 一方、雇用契約期間の満了による退職は、期間を定めた雇用契約(有期雇用契約)を結んだ場合です。雇用契約期間を定めて初めて雇い入れた場合、その期間が終われば、自動的に契約が満了し、退職することになります。しかしながら実際は、雇用契約が満了しても、その契約を更新し、引き続き継続雇用している場合が多いようです。 なお、更新をせず、契約を終了(雇い止め)する際には、雇い止めの予告をし、理由を明示しなくてはならない場合があります(雇い止めの予告参照)。 また注意すべきは、こうして短期の反復更新を続けていると、「実質上は期間の定めのない雇用契約だった」と判断される場合が多いことです。つまり雇用契約期間が満了しても、期間満了が退職の理由として認められない場合が生じます。 この場合、使用者がパート・アルバイトとの雇用契約をただちに終了したければ、解雇予告(パート・アルバイトも簡単に解雇できない参照)の手続きをとる必要が生じます。 いずれにしても退職は、円満退職とすることが、双方にとって望ましいといえるでしょう。契約終了(雇い止め)する際の実務 有期雇用契約により雇用していたパート・アルバイトについて、契約を終了(雇い止め)する場合、「雇い止めの予告」及び「雇い止めの理由の提示」を、行う必要がある場合があります。これは、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に定められているものです。 また、パート・アルバイトが妊娠したり出産した際、妊娠や出産そのものや、母性健康管理や母性保護、あるいは妊娠や出産による能率低下などを理由に雇い止めすることは禁止されています。
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●雇い止めの予告 有期雇用契約を結んでいるパート・アルバイトに対してその契約を更新しないとき、以下のようなパート・アルバイトに対しては、少なくともその契約が満了する三〇日前までに予告をしなくてはなりません。 雇い止めの予告をするパート・アルバイトとは、「三回以上契約を更新している」または「雇い入れの日から起算して、(更新の有無にかかわらず)一年を超えて継続勤務をしている」パート・アルバイトです。 一方、あらかじめ契約を更新しない旨を明示している場合には、予告をする必要がありません。 ●雇い止めの理由の提示「雇い止めの予告」をした際、パート・アルバイトが「(有期雇用契約を)更新しない理由」について証明書を請求したときは、遅滞なく交付しなければなりません。実際に雇い止めを行ってから、パート・アルバイトが請求してきた場合も同様です。 なお、雇い止めの理由を提示しなくてはならない有期雇用契約とは、「三回以上契約を更新している」または「雇い入れの日から起算して、(更新の有無にかかわらず)一年を超えて継続をしている」雇用契約で、かつ「あらかじめ契約を更新しない旨を明示していない」雇用契約です。パート・アルバイトも簡単に解雇できない「パート・アルバイトなら、自由に解雇できるんでしょ?」――というのは誤解です。パート・アルバイトであっても、以下に記すように「解雇の制限」があり、自由に解雇することはできません。また、解雇をする場合は、「解雇の予告」をしなくてはなりません。 ●解雇の制限 解雇が「客観的に合理的な理由を欠き」「社会通念上相当であると認められない」場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労働契約法第一六条)。 これは、有期雇用契約のパート・アルバイトが契約の更新を繰り返している場合、その更新をしないときも同様です。解雇案件が出た場合は、それが認められるか否かなど、労働基準監督署に相談した方がいいでしょう。 なお、以下のような解雇は、法律で禁じられています。 〈法律上禁止されている解雇〉・労働災害で療養中の期間とその後三〇日間・産前産後休業中とその後三〇日間・女性の婚姻・妊娠・出産・産前産後休業の取得、男女雇用機会均等法による母性健康管理措置や、労働基準法による母性保護措置を受けたことなどを理由とする解雇・育児・介護休業や子の看護休暇の申し出、取得を理由とする解雇 ●解雇の予告 パート・アルバイトを解雇する場合、いずれの場合も正社員同様、少なくとも三〇日前には解雇予告をしなくてはなりません。三〇日前に解雇予告をしない場合、三〇日分以上の平均賃金を支払わなくてはなりません。 ただし、労働者の責に帰する重大な事由がある場合には、労働基準監督署に「解雇予告手当除外認定」を申請し、認定されれば解雇予告手当を支払わずに即時解雇することが可能です。また、以下の労働者に対しては、解雇予告をする必要がありません。 〈解雇予告を必要としない労働者〉・日々雇い入れられる者・二カ月以内の期間を定めて使用される者・季節的業務に四カ月以内の期間を定めて使用される者・試用期間中の者(一四日以内) 試用期間中であっても、働き始めて一五日以上経っていれば解雇予告が必要となりますので、注意が必要です。 ちなみに解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の三つがあります。このうち整理解雇とは、事業の縮小など、経営上の理由で行うものです。懲戒解雇は、労働者が服務規律違反など経営秩序に反した場合、その制裁として行うものです。普通解雇は、整理解雇・懲戒解雇以外の理由で、やむを得ず行うものです。パート・アルバイトが退職するときの実務 パート・アルバイトが退職する際、パート・アルバイトからの請求があった場合には、七日間以内に賃金を支払わなくてはなりません。その退職が、自己都合によるものであっても、雇い止めであっても、解雇であっても同じです。また、積み立て金や保証金など、本人の権利に属するものがあるならば、すべて本人に返さなければなりません。 退職するパート・アルバイト本人に対して、会社は次の書類を交付したり、返還したりします。 ・雇用保険被保険者証(被保険者であり、会社で預かっている場合、返還) ・離職票(被保険者の場合、交付) ・厚生年金手帳(被保険者であり、会社が保管している場合、返還) ・源泉徴収票(交付) ・退職証明書(パートから請求があった場合に交付)
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なお、退職証明書の記載事項は、 使用期間、 業務の種類、 その事業における地位、 賃金、 退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)となりますが、本人が希望しない事項を記入してはいけません。 一方、退職者からは、次の書類等を返還させます。 ・健康保険被保険者証(被保険者の場合〈被扶養者分も〉) ・会社が発行した身分証明書、通行証、従業員章(バッジ)など ・会社が貸与した作業服、制服、印鑑など まれに、退職した本人の私物が会社に残ってしまっていることがあります。その場合、仮に本人との連絡がつかなくても、勝手に処分することには問題があります。本人にとっては大事なものかもしれませんし、後で取りに来る可能性もあります。生鮮品などを除き、しばらくは預かっておいたほうがよいでしょう。まとめ 「相思相愛」でプラスのスパイラルを回せ!相思相愛の目的は 冒頭でも述べたように、本書の真のテーマはコミュニケーションです。 人にはそれぞれ、固有の能力があります。パート・アルバイトであっても、単に働く立場が違うだけで、固有の能力があることは同じです。 そんな個々の社員の能力は、コミュニケーションを良くすることで、より発揮されやすくなるものです。また、個々の能力が有機的に絡み合い、組織力となって、より大きなパワーを発揮します。 経済情勢が悪化するなか、多くの企業は「人件費を潤沢にかけられる」状況にありません。少しでも利益を出すために、最少の人員数で仕事を回すことが求められています。一〇人で一二人分、一三人分の仕事をしなくては、生き残れない時代なのです。 一〇人で一二人分、一三人分の仕事をする際、それが働く人の共感を得ない「労働強化」となってしまってはいけません。働く人の意欲がなえ、逆に生産性が低くなってしまいます。そうでなく、仕組みややり方を変えることで、作業効率を高めることが重要です。 その際、仕組みややり方の変更に加え、「働く人の意欲を高めてお互いが自然と協力し合えるような関係を作り、個々人の力も、組織力も、無理なく高めていきましょう」というのが本書の主旨。そして、その鍵を握るのがコミュニケーション、それも「相思相愛」のコミュニケーションであるのです。マネジメントは愛情がすべて「相思相愛」の関係が上手に作れると、さまざまなものがプラスのスパイラルを描くようになってきます。 お互いが思いやり、働く仲間やお客さまに「善かれ」と思う行動を、自然ととるようになるのです。また、個々人の働きがいや、やりがい、モチベーションが高まります。その結果、職場全体が活気あふれる、思いやりに満ちた場に変わります。 こうした職場で働けることは、パート・アルバイトにとっても、上司にとっても、幸せなことです。同時に、個々の、そして組織の、仕事の質を高めます。生産性が上がり、お客さまからの評価も高くなり、さらなる売上や利益という形で還元されます。 このスパイラルを作る「相思相愛」の最初のひと押しは、再三述べてきたように、上司あるいはマネジャーから行います。まずは上司から、部下であるパート・アルバイトを愛するのです。 愛するとは、大きな心で、人として相手を受け入れていくこと。きちんと観ること。認めること。認めているということを、プラスであれマイナスであれ“評価”の言葉で、確実に表現していくことです。 もちろん、マネジメントするパート・アルバイトの人数が増えれば、こまやかな対応は物理的に不可能となってくるでしょう。そんな場合は、自分のかわりにパート・アルバイトをマネジメントするパート・リーダーを育成したり、部下の正社員をリーダーとして登用します。 とにもかくにも、働く側のパート・アルバイトが「一人の働く人として、誰かにきちんと見てもらえ、認められている」と、実感できることが大切です。 本書で記した「一〇ステップ 相思相愛マネジメント」は、パート・アルバイトと上司あるいは企業が、そんな「相思相愛」関係になり、皆がハッピーになるための具体的な方法です。ぜひ、実践してみてください。
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