はじめに──あの会社はどうして優秀な人財を採用できるのか?世の中には、2種類の会社があります。それは、採用がうまくいっている会社とうまくいっていない会社です。採用がうまくいっている会社は、新しいことにチャレンジできるので、業績を伸ばし続けています。一方で、採用がうまくいっていない会社は、新しいことにチャレンジできず、現状維持が精一杯となり、外部環境の急激な変化に対応できずにいます。もしあなたの会社が前者なら、本書を閉じて、さらに業績を伸ばすための別の書籍を読み、ぜひそれを実践してください。ただ、もしあなたの会社が次のような状態だったら、ぜひ本書をひきつづきお読みください。◎求人情報サイトに掲載してもエントリーが少ない。◎企業展にブースを出しても、席が埋まらない。◎レベルが高い人のエントリーが最近減ってきている。◎面接に来るはずだった応募者に、連絡もなくブッチされる。◎内定通知を出しても、辞退されてしまう。◎採用しても、こちらが期待するパフォーマンスを上げてくれず、お荷物になっている。これらのうち1つでも当てはまるなら、あなたの会社は採用がうまくいっていない可能性があります。結果にこだわるコンサルタント私は企業の現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタントです。所属する株式会社アタックス・セールス・アソシエイツは、「世界一の営業支援の会社を目指す」という理念を掲げ、クライアント企業の目標を絶対達成させるために、営業コンサルティング事業を展開しています。世の中には数多のコンサルティング会社、研修会社がありますが、他社との決定的な違
いは、私たちが何よりも「結果」にこだわっているということです。目標を絶対達成させる営業コンサルティング会社と名乗っている以上、何より「結果を出す」ことをゴール(目的)に支援を行なっています。ですから、現場指導は社員個人の能力やスキルを向上させるだけに留まりません。個人のみならず、外部環境の変化に左右されず、安定的に結果を出し続ける、そんな強い組織をつくり上げることこそを私たちはミッションとしています。代表取締役社長の横山信弘は、『絶対達成する部下の育て方』(ダイヤモンド社)、『空気で人を動かす』(フォレスト出版)、『最強の経営を実現する「予材管理」のすべて』(日本実業出版社)などの著書でも有名なコンサルタントですし、「壁マネジメント」と呼ばれる独自のマネジメント手法を世に送り出し、ベストセラー『結果を出すリーダーほど動かない』(フォレスト出版)など3冊の著書を出す山北陽平も当社のコンサルタントです。他にも非常に個性的なタレントが在籍しており、その全員が目標を絶対達成させるためにコンサルティングをしています。そんなタレント集団に在籍する私も、年間150回以上の研修、セミナー、コンサルティング支援に従事し、これまでに営業にかかわる人だけでも累計2500人以上のビジネスパーソンに対して、現場指導や研修を行なってきました。私の仕事は、「結果を出す」ことです。中堅中小企業であれば社長から、一部上場企業であれば事業責任者から、「自分たちでは限界があるから、なんとかぜひお願いします」と言われ、コンサルティングに入ります。そして、実際に結果を出してきました。支援1年目から過去最高利益を達成したり、支援開始から2年連続で前年売上額115%アップ実現したりと、目標達成はあたりまえで、それを上回る結果を出すことも珍しくありません。結果が出せない原因を探って見えてきたものしかしながら、すべてのコンサルティング先ですぐに結果を出してきたかというと、決してそうではありません。結果を出せないまま、共に試行錯誤を繰り返し続けているクライアントが存在します。結果を出せないのはなぜなのか、絶対達成コンサルタントである私は、24時間365日考え続けます。
◎部下たちの基礎力が不足しているから、別に研修をおこなって鍛えよう。◎マネジャーが部下たちに正しく指導できていないから、マネジメントルールを整えよう。◎改めて外部環境分析を行ない、社長と営業戦略を策定しよう。現場指導は、いつもこのように試行錯誤の繰り返しです。100%正しいプランは存在しません。プランを実行したら、確実に結果が得られるというプランは世の中にないのです。ですから、コンサルタント自身が現場の人たちと一緒になってPDCAサイクルを回していくのです。多くのクライアントが正しくPDCAサイクルを回すことで結果を出していくなか、結果が出ない会社がありました。やっていることは間違いありません。それでも結果が出ないのです。従業員数250人の専門商社──。ある日の現場でのミーティング終了後、この会社のあるマネジャーが私を別室に呼んで、矢継ぎ早にこう言ってきました。「うちのメンバーたちは、初めから目標を達成する気があるとは思えません」「酒井さんの言うとおり、マネジメントしていますが、言ったことを本当にやりません」「こちらからどうなっているのかと聞かない限り、報告も連絡も相談もしてきません」「管理システムへの予材状態の入力すらもやったりやらなかったりです」「うちの人事に言ってやりたいですよ。何やっているんだよって。即戦力をちゃんと採用しろよって」このような発言をするマネジャーに対して、いつもは「自責と捉えなければダメだ」と一喝する私も、このときばかりはその言葉が出てきませんでした。「原石を磨けば、いつかダイヤモンドになる」どこかで私はそう思っていました。新入社員からマネジャー、経営幹部まで3000人近いビジネスパーソンの指導に携わってきましたが、「育成により人は変えられる」と信じて、これまでやってきました。しかし、同時にいくら鍛えても結果を出せない人材がいる事実にも何度か直面してきました。そして、このとき悟ったのです。どんなに磨いても、石ころは石ころだ。ダイヤモンドにはならない。すぐに私は、社長に電話をしてこう言いました。「人財採用をもっとちゃんとやらなきゃダメです」と。
人が、組織風土も売上もつくるそれから私は前職時代に知得していた採用ノウハウを、当社の絶対達成コンサルティングと融合させ、この会社で徹底的に実践しました。その結果、この会社はどうなったか。売上は1・7倍になりました。業績を上げた要因は、社内の空気の変化です。1〜2人しか入社がなかった大卒人財が、今では毎年安定的に10人採用できるようになり、その過程で組織風土が劇的に改善され、30%を超えていた離職率が1%以下となりました(3年間で離職した人数はたった2人のみ)。今では社員たちはお互いを支え合い、全員でどんなに高い組織目標でも達成しようという活気に満ちあふれています。この経験を通じて、私は実感しました。それは以下のようなことです。◎経営目標を達成させるには、採用が本当に大事。◎育成には限界がある。◎素材の目利き力こそが経営力。◎採用を間違えたら、「爆弾」を背負うようなもの。◎採用ミスによる組織へのダメージは計り知れない。◎付加価値を生み出す「いい人財」を採用しないと意味がない。それからというもの、私は営業コンサルティングの傍ら、採用コンサルティング事業を開始し、クライアント企業の単年目標を絶対達成させるのはもちろん、外部環境の変化に左右されず、安定的に結果を出し続ける強い組織をつくり上げるご支援を日々行なっています。採用がうまくいっていない会社の共通点採用がうまくいっていない会社には、ある共通点があります。それは、「採用活動を一所懸命にやっていない」ということ。「ふざけんじゃない、やっているよ!」と、もし気分を害されたとしたら、申し訳ありません。ただ、私がこれまで膨大な数の会社を見てきて、採用がうまくいっている会社に共通しているのは、まさに「一所懸命やっている」ということなのです。「一所懸命」という言葉は、鎌倉時代の頃の武士たちが先祖代々伝わっている土地など
(所領)を命懸けで守ったことに由来しています。まさに「命懸け」で採用に取り組む。人はこれを実践している会社に惹かれ、事実、優秀な人財ほど、そういった会社に集まっているのです。採用市場における、偽らざる事実ここで、ズバリお伝えしたいことがあります。採用は、競争であり、勝ち負けである──。これは隠したくても隠せない、明白な事実です。大手求人会社が公表しているデータがあります(出典:リクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査」http://www.worksi.com/surveys/graduate.html)。同調査の「2019年卒」の調査結果を見てみます。◆全国の民間企業の求人総数が前年の75・5万人から81・4万人へと5・8万人増加している。◆学生の民間企業就職希望者数は、前年42・3万人とほぼ同水準の43・2万人である。◆つまり、求人に対して、38・1万人の人財が不足している。◆特に、300人未満企業(中小企業)の大卒求人倍率は9・91倍となっている(前年の6・45倍から+3・46ポイント上昇で過去最高)。このデータから読み取れることは、採用とは「限られたパイの奪い合いだ」ということです。営業の世界で「他社の売上が上がったら、自社の売上は下がるのか?」というと、そんなことはありません。しかし、他社が採用する人を増やしたら、自社が採用する人は減ります。営業は競争ではありません。しかし、採用は競争なのです──。そして、この競争に勝つか負けるかは、「一生懸命やっているか」「片手間でやっているか」の差なのです。本書では、付加価値を生み出す人財を採用し、成長し続けている会社に共通する「採用」に対する考え方、ノウハウ、実践法を完全公開します。事例を豊富に盛り込んで解説しますので、採用がうまくいっている会社が、いかに採用活動に取り組み、仕組みとして人財を集めているかを知ることができます。また、自社で実際に応用できるよう、ノウハウを体系化して紹介しています。
「入れてから育てる」の限界人事労務分野の情報機関が2018年9月にまとめた実態調査が興味深い事実を示しています(出典:産労総合研究所「2018年度教育研修費用の実態調査」https://www.esanro.net/research/research_jinji/kyoiku/kyoikukenshu/pr_1810.html)。企業の教育研修費用予算額が増加し続けています。◆企業の教育研修費用予算総額は、2016年度6014万円、2017年度7703万円、2018年度8017万円と、3年連続で増加。◆従業員1人当たりの教育研修費用予算額も、2016年度4万3805円、2017年度4万5917円、2018年度4万7138円と増加傾向にある。この数字から、人手不足が深刻化するなか、人財を外部に求めるのではなく、社内の人財をいかにして育てるかに企業が取り組んでいることが見て取れます。私もその恩恵を受けて、ありがたいことに数年先までスケジュールが埋まっている状況です。しかし、あえて言いたいのです。間違えた人を採用したら、どんなに教育してもムリなものはムリ──。どんなに腕の良い料理人であっても、素材が悪ければ、何ともなりません。味を良くするにも限界があります。変化の激しい今こそ、いい素材の仕入れ方法を改めて知っておくべきなのです。採用の考え方、やり方が劇的に変わるあなたが本書を手に取っているということは、採用のやり方を改善しなければならないと真剣に考えておられる証でしょう。本書では、採用のやり方を改善するために必要な重要エッセンスを凝縮してお伝えしていきます。第1章「採用をなめてはいけない」では、採用がうまくいっていない会社が陥りがちな採用に関する大きな勘違いを指摘しつつ、採用が会社にとってどれだけ大切なのかをロジカルにお伝えしていきます。第2章では、いい採用ができない会社に共通する5つの理由を事例を交えながら詳しく解説していきます。第3章では、いい採用を実現するために絶対必要な3つのエッセンス「誰を採用するか」「誰が採用するか」「どう採用するか」について、具体的な方法を提示していきま
す。第4章では、いい採用を実現するためのステップを大きく7つに分けて、わかりやすく解説します。なお、本書では、あえて「人材」ではなく、「人財」と表記しています。少し違和感を持たれるかもしれませんが、企業にとって社員とは、財産のように貴重な存在であるという意味を込めて、あえて「人財」と表記することにします。自社にとって、本当の意味で「財産となる人」はどのような人なのか?どのような人であれば、活かすことができるのだろうか。どのような人だと活かすことができないのだろうか。人は生きている以上、価値のある存在です。自社でその価値を最大化できるか否か、企業側というのはもっと真剣に考えねばなりません。他社に行けば輝いた人を自社が採用してしまったがために、その価値を無為にしてしまう場合だってあるのです。本書が、御社の採用活動を変えるきっかけとなり、新しいことにチャレンジし、業績を伸ばし続けるためにお役に立てるなら、著者としてこんなにうれしいことはありません。
いい人財が集まる会社の採用の思考法CONTENTSはじめに──あの会社はどうして優秀な人財を採用できるのか?第1章採用をなめてはいけない──なぜ採用がとても大事なのか?いい採用ができない会社に共通する「最悪の勘違い」「人さえいれば……」という時代!?採用がうまくいかない、根本的な原因やっぱり、採用も「始めが大事」──Agoodbeginningmakesagoodending.「始め」を疎かにするデメリット「採用を真剣に考える」とは、実際どういうことか?焦って人を採用すると、ロクなことがないイメージしていた人物像に近い人が応募してきた!採用後に発覚した期待外れの「即戦力」「採用の失敗」だけは、絶対に避けるべき失敗採用は「点」でなく、「線」と「面」で考える確かに「人手不足にあえいでいる」けれど……採用失敗のダメージは、思う以上に大きい組織力も売上アップも、まずは素材から成果が上がる組織の公式一流のリーダーでも、限界はある人を見抜く力こそ経営力採用は「競争」とわかっているか?採用の市場原理「採用してみないとわからない」のウソ選考で特にどこを重視したかで、その会社の経営力がわかる採用は、勝つか負けるか求職者の心理プロセスの中身なぜ営業活動より採用活動のほうが厳しいのか?──限られたパイを奪い合う戦い採用活動は、種まき・水まき活動である学生が成長する機会「企業の社会的責任」を果たすのが採用活動──選考する企業側の社会的責任(CSR)
本気で向き合う選考プロセスが生み出す大きなメリットだから、採用をなめてはいけない──第1章のまとめとして第2章いい採用ができない会社の5つの理由ダメ採用は、ダメ営業?ダメ営業マンは何が間違っていたのか?ダメ営業マンも採用に苦戦している人も、変われる「片手間でやっている」から、うまくいかない──いい採用ができない理由①片手間でやっているかどうかの基準大企業のいい採用ができる理由は、知名度があるからだけではないいい採用ができる中小企業にあって、いい採用ができない中小企業にないもの「他責にする」から、うまくいかない──いい採用ができない理由②同じ商品でも売れる営業、売れない営業の違いトップセールスマンの「商品への自信」に学ぶ「自社への自信」のつけ方他責にした瞬間に起こること「相手を知らない」から、うまくいかない──いい採用ができない理由③知らなければ、戦略も立てられない求職者について知っておくべきこと情報は、待っていても入ってこない「マーケットを知らない」から、うまくいかない──いい採用ができない理由④「マーケットを知っている」とは、どういうことか?採用のマーケティング「行き当たりばったり」だから、うまくいかない──いい採用ができない理由⑤「あたりまえ」になっているか?採用のPDCA自社の採用活動を再チェック──第2章のまとめとして第3章いい採用を実現させるために案外やっていないこと経営の問題の根源は、「採用基準」にあり──誰を採用するか①問題解決の手順の第1ステップ安易に採用基準を下げると、組織は疲弊する──誰を採用するか②「採用基準」を下げていいのは、この2パターン採用基準を下げるかどうかは、入社後の教育をセットで考える
3つの覚悟があれば、採用基準を下げてもいい採用の質を下げても、お客様への提供の質は下げられない──誰を採用するか③質の優先度を下げる会社、増加中採用するうえで、一番やってはいけないこと誰をバスに乗せるか──誰を採用するか④行き先を決める前にやるべきことVUCA時代に求められる経営戦略とは?「バスに誰を乗せて行きたいか?」を言語化する採用を妥協したらどうなるか?──誰を採用するか⑤世界的名著の教え採用後の教育でなんとかなる!?──私の失敗談を交えてデメリットは、売上減だけにとどまらない「人財」ではなく、「人手」の採用になっていないか?常に探し続けるいい人財を見抜く基準──採用基準を設定する正しい方法①採用基準を下げず、採用要件を盛り込みすぎない人財の素質を見抜く2つのポイント「先天的・後天的能力」を見抜く──採用基準を設定する正しい方法②人間の意識レベルには5つの階層がある──ニューロロジカルレベル人の意識を変える手順──正しい「場」を設計するコミュニケーション能力は、入社時には必要のない能力「後天的に」伸ばせる能力は、採用基準から外す「価値観」のマッチングを重視する──採用基準を設定する正しい方法③教育しても変えられないもの絶対に外せない採用基準いい人財を「集める」ではなく、いい人財が「集まる」会社の採用基準面接官の主観に左右されない採用基準を設定するコツ「誰が採用するか」で採用の質は変わる人生を変えた1冊の本と1本の電話「何をするか」より「誰とするか」採用とは、人財を供給する活動採用担当にふさわしい人、ふさわしくない人採用する「人数」と「期限」を定める──どう採用するか①なぜ「期限」設定が必要なのか?理想的な期限設定中途採用で「期限なし」は危ない採用戦略・シナリオをつくる──どう採用するか②戦略がなければ、どんな戦術も効果なし数値化して、全体を俯瞰して管理する──採用パイプライン
採用パイプラインを使ったシナリオ作成例第4章いい採用を実現させる具体的なステップ採用がうまくいっている会社の戦術とは?作成した戦略をどう実現するか?御社を「知らない」から応募がない──いい人財を集める①人は未知のものを怖がり、不安だから近寄らない知らない=怖い「知らない」を「知っている」に変える努力をしているか?自社を「知ってもらう」方法──いい人財を集める②採用の4Pマーケティング戦略自社を知ってもらう方法「リアル」「早期化」重視の時代強くて愛される会社がやっていること自社に合った採用方法の見つけ方エントリーは、「量」より「質」──いい人財を集める③量に比例してかかる3つのコスト「はじめまして」で伝えるべき情報──いい人財を集める④人が動かない4つの理由目には入っても、脳には入っていない「知らない」を「知ってもらう」に変える秘策──「インパクト」×「コンパクト」「はじめまして」の後につなげるべきこと効果的なスカウトメールの書き方求職者に興味を持たせる技術──いい人財を惹きつける会社説明会では、説明はいらない求職者が求める知りたい情報とは?知名度が低い会社がマッチングの精度を上げた方法見極め、惹きつける技術──いい人財をつかむ面接術採用面接を行なう2つの目的面接官は誰がやるのか?──いい人財をつかむ2つの役割分担相手のホンネを引き出し、こちらに惹きつける面接のスタンス術見極めるポイントは、結果主義でなく、プロセス主義──できる面接官が持っている「掘り下げ力」掘り下げることで、惹きつけられる適性検査と人間の役割志望動機は聞かない
志望動機とは、自分と会社とをつなぐもの自社が応募者にどういうポイントで選ばれたいか?いい人財を逃さず「動機づけ」する技術──内定後フォローの方法内定辞退者続出の時代内定者フォローが必要な場合のやり方──2つのステップ間違った採用をリカバリーする方法人間が幸せを実感するとき「日本でいちばん大切にしたい会社」に学ぶ人財採用の目的「間違った採用」の定義ミスマッチを防ぐ施策間違った採用をしてしまったらおわりに
いい採用ができない会社に共通する「最悪の勘違い」「人さえいれば……」という時代!?突然ですが、次に挙げる件数は何を示す件数か、わかりますか?◎2010年……76件◎2011年……89件◎2012年……193件◎2013年……299件◎2014年……1264件◎2015年……984件◎2016年……1328件◎2017年……3274件◎2018年……4336件ヒントは、日本経済新聞社の記事(紙面および電子版)に登場した「あるキーワード」の件数です。もったいぶるのは紙面の浪費ですので、ササッとお伝えしてしまうと、この数字は、「人手不足」というキーワードが登場した件数です。記事を詳しく見ていくと、2010年は、ほとんどが中国をはじめとした海外の人手不足に関する記事、国内では介護人材不足やIT人材不足の記事がちらほら。2011年から2012年にかけては、東日本大震災の被災地での土木建設関連の人手不足に関する記事がこれに加わり、2012年から2013年頃から飲食業など他業界にも人手不足感が拡がっています。その後は、さまざまな業界で人手不足感が一気に高まっていることが、記事の件数の飛躍的増加からイメージできるでしょう。まさに、「人手不足」という言葉が、日本中の至るところで頻繁に飛び交っていることがわかります。現在、採用市場において企業側は選ばれる立場です(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192005_00002.html)。2019年3月において、有効求職者数178万1453人に対して、有効求人数は289万3473人。有効求人倍率は1・63倍。採用市場は「売り手市場」と呼ばれる環境にあります。最近、取り上げられることが増えてきたのは、「人手不足倒産」という言葉です。経営はそれなりに順調にいっているのに、人が採れないことを理由に、廃業を余儀なくされてしまう……。これが「人手不足倒産」です。今や、従業員の離職や採用難など人財不足による収益悪化で倒産する企業も全国で急増しています。2018年は、前年比44・3%増となっています(参考:帝国データバンク「人手不足倒産」の動向調査〈2013~2018年〉https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p190106.pdf)。せっかく高い志を持って起業し、これまで苦労し紆余曲折がありながらも会社を築き上げてきた。お客様からも高い評価を受けるようになり、事業が回るようになってきた。まさにこれからというときに廃業を余儀なくされる。その理由が、間違った経営をしていたというなら、あきらめもつくかもしれません。しかし、その理由が「人が採れないから」というものだとしたら──。想像するだけで、私はいたたまれない気持ちになります。倒産まではいかずとも、ここ数年、採用がうまくいかなかったがために、経営計画が未達成となってしまったという話を聞くことも少なくありません。あなたも、「人さえいれば…」と思っている一人かもしれません。採用がうまくいかない、根本的な原因では、ここであなたに質問です。「スバリ、あなたの会社の採用がうまくいっていない理由は何ですか?」この質問に対して、どんな答えが浮かんだでしょうか?パッと浮かんだ答えを書き出してみてください。「」私は、採用に関するコンサルティングはもちろん、営業のコンサルティングもしています。多くの会社で、コンサルティングをしていると、結果を出している営業パーソンと結果を出せていない営業パーソンには、決定的な違いがあることがわかります。
それは、トークスキルなどではありません。「思考のクセ」の差です。具体的に言えば、ある問題が発生したときに、その原因を「自責」にするか「他責」にするかの違いです。口グセのように、次のような発言をする営業パーソンがいます。「当社商品は▲▲だから売れない」「このエリアは▽▽だから売れない」つまり、売れないのは「自社の商品のせい」「担当しているエリアのせい」と言うのです。しかし、社内には、その商品で結果を出している営業パーソンもいます。同じエリア、同じ規模の会社を担当している営業パーソンで、圧倒的な結果を出している人もいます。つまり、自分以外の何かのせいにして、「やるべきことをやっていないだけでしょ」ということです。売れない原因を自分の外に求めるか、自分の内に求めるか、この思考習慣のクセは大きな成果の差を生み出すものです。では、先ほどの質問に戻ります。「スバリ、あなたの会社の採用がうまくいっていない理由は何ですか?」「少子化だから」「売り手市場だから」「中小企業だから」「不人気業界だから」「給料が安いから」「立地が悪いから」もし、このようなことを1ミリでも思っているとしたら、結果を出せていない営業パーソンの思考です。本書を読みながら、この思考パターンを切り替えていきましょう。なぜなら、同じ売り手市場において、採用がうまくいっている会社もあるのですから。同規模の中小企業でも、採用がうまくいっている会社もあるのですから。同業界の企業でも、採用がうまくいっている会社もあるのですから。同条件の企業でも、採用がうまくいっている会社もあるのですから。今すぐに、この思い込みから逃れなければなりません。いい採用をするためには、この最悪の勘違いから逃れることです。
やっぱり、採用も「始めが大事」──Agoodbeginningmakesagoodending.「始め」を疎かにするデメリット「始めが大事」ということわざがあります。辞典を引くと、「最初に立てた計画、決めた方法、やり出した態度などが最後まで影響する。したがって、手をつける場合には慎重さが大切だということ」とあります。類語には「始め半分」「始めに二度なし」「始めよければ終わりよし」「始めよければ半ば勝ち」があります。こういった言葉があることからわかるのは、物事は最初によく準備してかからなければならないということが古くから言われている、という事実です。私たちの日常でもビジネスにおいても、「始めが大事」という場面は、実に至るところにあります。例えば、サイト制作。先日もわが社でこんなことがありました。自社サイトのリニューアルをしようと、社内の担当と打ち合わせをしていました。「このページ内に動画を貼り付けたい」私はそう言いました。しかし、担当はこう言います。「サイト制作会社に最初に依頼したときの設計で、このページに動画を貼り付けるとなると、難しいかもしれません。見積もりを取ってみますが、二桁、いや下手すると、三桁かかるかもしれません……」「えっ……」多くの場合、「やり直し」というのは面倒なものです。コストも、時間も、トータルでみたら、余計にかかります。はっきり言って、かかる必要のなかった無駄なものです。「始めにもっとよく考えてやっておけば、のちのち苦労せずに済んだはずなのに……」そんなことは、私自身もしょっちゅう思うことです。ホームページであれば最悪捨てて、イチからつくり直すこともできますが、人の場合は
そうはいきません。「採用を真剣に考える」とは、実際どういうことか?私は企業の現場に入ってコンサルティングをしていますが、大きく飛躍する企業ほど、この「始めが大事」を実践していると感じます。では、大きく飛躍している企業ほど、「始めが大事」をどのように実践しているのでしょうか?◎新入社員には、入社後すぐに現場に配属せずに研修をして、基礎教育を徹底してやる。◎プロジェクトを開始する前に、リーダーが最初にその目的をメンバーに周知する。その他にも実践していることはあるかもしれません。しかし、これらの場面は、本当に「始め」と言えるでしょうか。「始め」というのは「起点」です。考えるべきは、入社後の社員教育は、起点と言えるのか?プロジェクトの目的共有は、起点と言えるのか?ということです。大きく飛躍する企業ほど、「始めが大事」と捉え、実践していることがあります。そう、それが「採用」です。「自社には、どのような人財が本当に必要なのか?」「そのような人財に入社してもらうには、どのようなプロセスが最適なのか?」企業は存続していかなければなりません。そのために考えるべきは、「始めが大事」だということです。大きく飛躍する企業は、そのことをわかっているからこそ、採用に力を入れています。「採用のあり方」「やり方」を真剣に考え、常に環境に合わせて実践し続けているのです。プロジェクトを始動するときでも、それは同じです。そのプロジェクトメンバーに誰を「採用」するか?それにより、プロジェクトの成否の何割かは決まってしまうのではないでしょうか?「始めが大事」
採用を真剣に考えるということは、そういうことなのです。それでは、採用について考える旅を、一緒に始めてみましょう。
焦って人を採用すると、ロクなことがないイメージしていた人物像に近い人が応募してきた!これは、「はじめに」で実例として挙げた従業員数250人の専門商社の話です。採用コンサルティングに入った初日、採用担当者が最近起こった出来事として私に打ち明けてくれました。数カ月もの間、中途採用活動をしてきたものの、なかなか要件に合う人財が現れない状況が続いていたと言います。早くいい人財を見つけなければ現場に示しがつかないと焦っていた、そんなある日、人材紹介会社(エージェント)から一人の職務経歴書が送られてきました。「まだ若いにもかかわらず、前職では複数拠点のマネジメント経験がある」会ってみようと思うには、十分な内容でした。「イメージしていた人物像に近い!」そう直感し、すぐに面接の段取りをしました。面接はトントン拍子で進みました。社長も、いつもは辛い評価を行なう重役も、「いいんじゃないか」と判断。そうとなればスピード勝負です。「内定通知」の段取りと、フォローの進め方をエージェントと打ち合わせしました。応募者も当社に好印象を持っているようですが、選考に進んでいる会社が複数あるので、すぐに結論は出せないとの情報。なかなか現れないだろう人財です。こうなったら、なんとしても採用に漕ぎ着けたいところ。彼と、前職が同業種の先輩社員との食事会をセッティングしました。先輩社員が当社に入社した経緯を話すことで、シンパシーを感じてもらえると考えたからです。会食時には社長直筆のメッセージを手渡してもらいました。会食後の3日後、彼の意思がエージェントを通じて知らされました。「内定を承諾します」ミッションコンプリート!
採用担当者としての仕事の中で、もっとも安堵感に包まれる瞬間です。入社時期の調整と、配属や受け入れ準備を行ない、現場に引き渡しました。採用後に発覚した期待外れの「即戦力」それから数週間か経った頃でしょうか、直属の上司となったM部長から連絡が入りました。そして矢継ぎ早に言われました。「今回採用した彼は、どういう基準で採用したんだ?」「やる気はあるようだけど、こちらが指示したことをやらないんだ。やれないのかもしれない」「『えっ!?ちょっと待てよ。それってやるのがあたりまえだよね!?』ということばかりだ」「『ドラフト1位の即戦力人財』だと聞いていたけど、完全に『育成枠』だよ」「どうするんだよ。今ただでさえ人手不足で忙しいのに、育成なんてしている暇ないんだよ……」このような不満が多くあがってきたのです。採用担当者は、この話を打ち明けてくれた最後、ため息混じりにこう言いました。「いい人財だと思って、社長も重役もOKだったのに……。採用って本当に難しい、そう思ってしまって、その後どうしたらいいかわからなくなってしまいました」このようなことは、日本中の至るところで起こっていることでしょう。ちなみに、この会社はその後、彼を育成するために外部の研修に参加させたり、上司がマンツーマンで指導したりと、手間暇をかけました。しかし、彼に変化は見られず、投じたコストが回収されないまま、約1年半後、彼は退職していきました。自信を失った彼は、その後の転職活動もうまくいかず、なかなか転職先が決まらなかったと聞きます。上司であるマネジャーは、結果的に長時間労働を強いられることとなり、体調を崩し、現在では入退院を繰り返す状態にまで悪化してしまいました。この組織は、大事な戦力であったマネジャーすらも失う結果となったのです。「採用の失敗」だけは、絶対に避けるべき失敗ビジネスには成功と失敗が付き物です。失敗したことがないという会社は、そもそもチャレンジしていないということです。チャレンジしない限り、成功は得られません。
◎新しく始めたプロジェクトが赤字になってしまった。◎新規の大口顧客を開拓するため、商談を組んだものの不調に終わった。現状を打破するために、このように新しいチャレンジをすれば、うまくいかないこともあります。うまくいかないことのほうがむしろ多いものです。短期的に見れば、一つひとつの失敗の損失は少なくないでしょう。しかし、長期的に見れば、チャレンジしない会社は、いずれ成長が止まることになります。そして、いずれ衰退期に突入することになります。失敗を許容する企業文化がなければ、社員は萎縮して新しいチャレンジをしなくなります。失敗を恐れず、貪欲に取り組む社員を育成するためには、失敗したことを叱るのではなく、チャレンジしないことを叱らなくてはなりません。そして失敗したときには、「チャレンジして失敗したんだから仕方ない。この経験を次に活かそう」と背中を押すのです。しかし……。私は「採用は失敗してはいけない」と考えています。先の会社の例のように、組織に与える影響が大きいからです。それだけではありません。会社だけでなく、採用した人に対しても傷を負わせることになるからです。お互いに傷だけが残る──。これが採用を失敗したときに生じる状態です。結婚生活がうまくいかず、離婚する夫婦と似ているかもしれません。「今回の結婚相手とはうまくいかなかったけど、すぐに気持ちを切り替えて次の相手を探そう」そんなふうに容易く気持ちを切り替えられないのも、採用と結婚に共通する点だと思います。採用は、その人の人生を左右する行ないです。責任が伴う行ないです。であるならば、結婚相手をプロフィールと数回の会話で決めないのと同じで、人の採用も書類や数回の面接では決められないはずです。もしあなたが経営者だったら、退職していった社員に対して、「もし彼を当社が採用していなかったら、彼は自分を活かせる別の会社でもっと能力を発揮できていたかもしれない」と思ったことがあるかもしれません。だから、採用をテキトーにやってはいけません。勉強も探求もせずに、感覚でやるものではありません。採用に対して真摯な姿勢と取り組みを行なう企業こそ、いい人財からもお客様からも地域社会からも選ばれる企業になると私は考えています。
採用は「点」でなく、「線」と「面」で考える確かに「人手不足にあえいでいる」けれど……今、日本企業の多くが人手不足にあえいでいます。帝国データバンクが2019年1月に行なった人手不足に関する企業動向調査があります(出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p190207.pdf)。それによると、「正社員が不足している」と回答した企業割合は53・0%。1年前の2018年1月調査から1・9ポイント増加しました。不足している業種の上位は、次のとおりです。1位放送(76・9%)、2位情報サービス(74・8%)、3位運輸・倉庫(71・9%)、4位建設(67・8%)、5位飲食店(65・9%)。非正規で不足している業種の上位は、1位飲食店(84・1%)、2位飲食料品小売(67・7%)、3位メンテナンス・警備・検査(61・7%)、4位各種商品小売(57・5%)、5位娯楽サービス(57・4%)という調査結果でした。企業からは、「今ある仕事についても、人手の確保が困難でなかなか先に進められない」「人手不足が深刻化して、売上が減少している」「現状でも人手不足なうえ、他の案件を引き受けられない状況は当面続くと予想される」などの声が挙がります。採用失敗のダメージは、思う以上に大きい「採用がボトルネックになり、事業展開にブレーキがかかっている」というジレンマと「逆に採用の課題さえクリアすれば、未来が拓ける」という希望とは交錯するものです。このような状況下に置かれると起こってしまうのが、先の項目でご紹介した実例です。
しかし、採用は「今という『点』」で考えると失敗します。採用は、必ず「今から未来へと続く『線』」で考えねばなりません。なぜなら、言うまでもなく、事業は「点」ではなく、「線」だからです。そして、組織に「面」で影響が出るのが採用です。良い影響もあれば、悪い影響もあります。悪い影響の場合は、組織に与えるストレスは非常に大きいものがあります。採用さえしなければ存在しなかったストレスです。限られた資源の中で、かけるべきコストは分配しなければなりません。時間、費用、人的労力は、プラスのリターンを生み出すためのコストであるべきです。採用を失敗した場合には、時間も、費用も、人的労力も、コストとして本来かけるべき方向に費やすことができません。本来得られるはずであったリターンも奪われることになるのです。営業活動の場合、「今回のA社の案件が、ダメだったね」で済まされます。なぜなら、ダメなら、次に当たればいいだけですから。一方、採用活動の場合、そうはなりません。「今回のAさんの採用、ダメだったね」では済まされません。簡単には辞めさせることもできません。夫婦関係も同じです。「今回の相手はダメだったね」とすぐに離婚できません。協議を重ねて、場合によっては裁判所の審判を仰ぐことにもなります。その間の精神的コスト、時間的コスト、金銭的コストは計り知れません。採用も同じです。採用を間違えると、『点』だけでなく、『線』だけでもなく、『面』の単位で組織に与える影響は複利的に大きくなるのです。
組織力も売上アップも、まずは素材から成果が上がる組織の公式「料理」は、「素材」と「味付け」で決まるものです。いくら料理人の腕が一級品であったとして、調理方法や味付けが優れていたとしても、「賞味期限切れの素材」であれば、おいしい料理にはなりません。このことをビジネスに置き換えれば、「料理=成果」「素材=人財」「味付け=戦術」と言えるでしょう。ビジネスにおいて、求める成果を得るためには、適切な人財と戦術が必要というわけです。つまり、次のような公式が成り立ちます。【成果=人財×戦術】いくら経営者の腕が一級品であったとして、戦術が優れていたとしても、それを実行する人財がふさわしくなければ、競合との戦いに勝つことはできません。スポーツでも同じです。例えば、サッカー。強いチームをつくり上げるには、「選手×監督の戦術」が必要です。現有選手の力を引き出し、個の選手に応じたベストな戦術を選択することで、強いチームをつくり上げる、そんな優れた指導者は存在します。しかし、ヨーロッパリーグでもJリーグでも、選手の補強を行なっています。勝つために、戦力が不足しているポジションに必要な選手を他のチームから補強しているのです。選手の数には限度がありますので、構想外となった選手は他のチームに移籍させ、勝つためのチーム編成を行ないます。資金力のあるチーム、練習設備環境が充実しているチーム、優れた指導者がいるチーム、過去の実績があるチームほど、選手補強がうまいものです。
野球の世界も、バスケットボールの世界も例外ではありません。勝つためには、選手という素材が充実していることが必要不可欠。いかなるスポーツでも共通することです。音楽の世界でも同じです。音楽プロデューサーがいくら優れていても、歌い手という素材がいなければ成り立ちません。だから、新人を発掘するためにオーディションが行なわれるのです。一流のリーダーでも、限界はある料理人にせよ、スポーツ監督にせよ、音楽プロデューサーにせよ、書籍の編集者にせよ、彼らは、これまでの経験から目の前にある素材の良さを引き出したり、新しい素材と今ある素材とをうまく組み合わせることに長けています。調理、味付けはいくらでもできるものです。しかし、どんなに優れた才能を持っている彼らにしても、素材を見つけることができなければ、仕事になりません。仕事が始まらないのです。だから、「始めが大事」というわけです。素材の調達を怠ったり、テキトーな素材選びをしてはいけません。特に、ビジネスの世界は、凄まじい勢いで環境変化が起こっています。昨日まで通用した戦術が一夜にして陳腐化することもあります。だからこそ、「いい素材をいかに見抜き、確保しておくか」。それがビジネスの成否を決めると言っても決して過言ではないでしょう。料理と同じで、まずは素材から。お客様に提供する料理(=価値)は、素材(=人財)選びから。お客様に喜んでいただける素材かどうか、見極めること。すべては人財採用から決まります。
人を見抜く力こそ経営力採用は「競争」とわかっているか?「料理」は、「素材」と「味付け」で決まるもの。ビジネスにおいても、「味付け」より前に「素材」が大事だ。そんな話をしました。「そんなこと、今さら言われなくても、わかってるよ!」と思っている人もいるかもしれません。いや、でも、誤解を恐れずに言わせていただくと、「本当にわかっていますか?」と言いたくなることがあります。素材にしても、選手にしても、その数が無限にあれば、それほど困ることはないでしょう。調達が容易であれば、あとは「味付け」や「戦術」に集中すればいいのです。しかしながら、それらは無限に存在しません。有限です。泳いでいる魚は有限なのです。さらに言えば、「良い」と思う基準というのは、自分も他人もだいたい同じです。自社が考える良いという人財の基準は、よその会社も同じであったりします。狙っている魚はだいたい同じというわけです。だから、この本の冒頭「はじめに」でも述べましたが、「採用は、競争であり、勝ち負け」なのです。その競争に勝つために、「命懸けで」取り組まなければいけません。これは精神論ではありません。命懸けで取り組むには、どのようにしていけばいいかを、ひきつづきお話ししていきます。いい人財採用を実現するためにとても大事な思考法なので、再度お伝えしました。採用の市場原理話を戻しましょう。新卒採用においては、ある人は10社でも20社でも内定を獲得します。「うちに来てくれ!」と数多くの企業からオファーをもらうわけです。
一方で、1社も内定を獲得できない人もいます。人に容易に優劣をつけることはできませんが、「人を見る目」はだいたい同じです。同じようなフィルターを持って、選考をしているのです。だから、ある人には内定が集中し、ある人にはいっさい声がかからないという現象が生じるのは珍しいことではありません。商品であっても、売れるものと売れないものは理不尽なほどハッキリと存在します。それが市場原理であり、そうなれば必然的に、特定の人財の争奪戦になります。需要が供給を上回るのですから、取り合いになります。プロ野球のドラフト会議は、そのリアルな場でしょう。1位指名に複数球団が競合し、抽選をする。「交渉権獲得」というくじは、くじを引く代表者の手にかかっている。順番にくじを引き、一斉に紙を広げる。静寂の後に訪れる、歓喜の瞬間。しかし、複数球団が競合した選手が、入団後活躍するということは「絶対」ではありません。むしろ、何年経っても芽が出ずに、花を咲かせることもなく、プロの世界からひっそりと姿を消す選手は少なくありません。「採用してみないとわからない」のウソ「採用してみないとわからない」多くの経営者、採用関係者が口にする言葉です。しかし、これは本当でしょうか?ここでハッキリと申し上げます。「採用してみないとわからない」この言葉は、いい人財を採用できない企業の言い訳に過ぎません。「マネーボール」という映画があります。アメリカ・メジャーリーグを舞台とした映画です。メジャーリーグを舞台とする映画はこれまでもたくさんありました。しかし、「マネーボール」が他と違うのは、主役が選手ではないという点です。主人公は、球団を運営するGM(ゼネラル・マネジャー)です。野球では、一番の目的は「勝つこと」。特にプロの世界では、勝つことが観客動員、収益にもつながるからです。勝つためには得点を取らなければなりません。そのためには優秀な打者が必要です。では、優秀な打者とはどんな打者でしょう。あなたはどう考えますか?打者として一般的に評価される指標は、「打率」「打点」「ホームラン数」でしょう。
この数値が高い選手はもちろん優秀です。しかしながら、獲得競争も厳しくなります。そうなると、資金力のある大きな球団には敵いません。資金難のために優秀で年俸の高い選手を獲得することができず、長年低迷中のチームのGMに就任したビリー・ビーンは考えました。何を考えたか?それは、「優秀な選手の定義」です。各種統計から選手を客観的に評価する「セイバーメトリクス」という手法を用い、従来のスカウトたちが見ない視点で選手を評価していきました。例えば、「出塁率」と「長打率」です。「フォアボールでもいいから塁に出る能力が高く、またバットに当てたときに長打にする能力が高い選手が優れている」という発想です。他にも他球団が持たない「優秀な選手の定義」に基づき、他球団が見向きもしなかった選手を何人も迎え入れます。あまりにも常識から外れた選手選考に、監督・古株のスカウトマンらの反発は相当なものでした。しかし、ビリー・ビーンは、この発想を貫きます。結果、限られた予算・人件費の中で「人財採用」をしたチームは勝ち続け、20連勝という新記録を打ち立てるのです(この続きは、ぜひ映画をご覧になってください)。選考で特にどこを重要視したかで、その会社の経営力がわかるこの実話が示唆することは、人を採用する際にどんな点を重視するか、見極めるポイントをどこに置くかが非常に重要だということです。では、日本を代表する大手企業は、新卒採用にあたってどんな点を重視しているのでしょうか?日本経済団体連合会(経団連)が毎年行なっている「新卒採用に関するアンケート調査」の結果を見れば、それがわかります(出典:日本経済団体連合会「新卒採用に関するアンケート調査」2018年度調査https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf)。「選考にあたって特に重視した点は?」という問いに対する回答が以下です(経団連企業会員1376社を対象に実施し、597社が回答)。「コミュニケーション能力」が82・4%と最も高く16年連続の1位、「主体性」が64・3%で10年連続の2位、「チャレンジ精神」が48・9%で3年連続の3位、4位「協調性」47・0%、5位「誠実性」43・4%と続きます。
このように求める人財の資質が各社横並びで、何年も前から変化がないというのは、私の目には異常に映ります。なぜなら、時代は変わっているからです。テクノロジーは飛躍的に進歩し、産業構造も大きく変化しています。歴史を辿ると、時代が変われば、活躍する顔ぶれが変わっています。それは、時代によって活躍する人財の要件が変わるからに他なりません。時代の変化を捉え、事業をさらに展開していくためには、これからの時代に活躍する人財とはどんな人財なのかを読み取ることが必要です。そして、考え抜いた人財の要件を自社の採用基準に落とし込むのです。時代が変わっても勝ち続けるためには、これから活躍する人を見抜く力が必要です。それこそが経営力と言っても決して過言ではありません。
採用は、勝つか負けるか求職者の心理プロセスの中身最近、数多くの書籍やネットの記事で、「採用=営業」と言われるようになってきました。初期アプローチから受注を獲得するまでの営業プロセスと、採用活動のそれとが類似しているからでしょう。お客様の購買行動における心理プロセスを整理したモデルに、「AIDMA(アイドマ)」があります。「知る(Attention)」↓「興味を持つ(Interest)」↓「欲しいと感じる(Desire)」↓「記憶する(Memory)」↓「購入する(Action)」これは、求職者の就職活動における心理プロセスにも当てはめて考えることができます。つまり、求職者の心理プロセスに沿って、アプローチをしなければならないというわけです。実際に当てはめてみます。◎どのようにしたら、自社を知ってもらえるか(Attention)◎どのようにしたら、自社に興味を持ってもらえるか(Interest)◎どのようにしたら、自社に応募してくれるか(Desire)◎どのようにしたら、他ではなく自社に入りたいと動機づけられるか?(Motive)※◎どのようにしたら、自社への入社を決断してくれるか?(Action)
※Actionを「応募する」という行動とした場合には、Memory(記憶する)が適当。応募から入社までの心理プロセスとした場合には、Motivate(動機づけ)が適当。求職者の心理ステップに沿って、このように知恵を絞りながら、あの手この手と施策を講じるのが採用活動です。まさに営業活動と同じと言えるでしょう。なぜ営業活動より採用活動のほうが厳しいのか?──限られたパイを奪い合う戦いしかしながら、採用は、営業とは比較にならないほどに厳しいものです。私は営業のコンサルタントだからこそ、その違いがわかります。だからこそ、そこははっきりと強調しておきます。なぜなら、それは「限られたパイの奪い合い」だからです。かつて私は人材紹介会社で営業の仕事に従事していました。求人をしている会社に訪問して、現状を伺いながら自社のサービスを提案する毎日です。当時担当しているエリアに愛知県の三河エリアがありました。三河といえば、世界的に有名な巨大企業の本社があるエリアです。そう、トヨタ自動車です。三河には、本社のみならず、工場が複数にわたり存在します。三河エリアのお客様先に伺うと、よくこんな話を聞きました。「最近、トヨタが工場の期間限定従業員を募集しているでしょ?おかげでうちに全然応募がなくなってきたわ……」「あんないい条件を出されたら、うちなどはそりゃどうしようもないよ……」その当時、トヨタ自動車は期間限定従業員を定期的に募集していました。その待遇は、正社員並み以上でした。そうなると、周辺の会社は軒並み求人に苦労するようになるのです。求人広告の訴求ポイントを刷新したり、条件を変更したり、さまざまな方策を実施しますが、見せ方を変えるだけでは、わずかな反応の変化しかない状態でした。この点が営業と採用との違いです。営業の場合、競合他社の売上が上がったら、自社の売上は下がるのか?というと、そんなことはありません。しかし、他社が採用する人を増やしたら、自社が採用する人は減ります。営業は競争ではありません。しかし、採用は競争なのです──。限られたパイを奪い合う戦いなのです。そのことを理解できていない会社は、これから長期的に、本当に厳しい時代を過ごすことになるでしょう。
採用活動は、「ちゃんとやっているか」「やっていないか」で、勝ち負けがはっきりするものです。
採用活動は、種まき・水まき活動である学生が成長する機会大学生が4年間でもっとも成長するのはいつか?大学入学から卒業までの4年間を通して数多くの学生を見てきた私の感覚では、それは就職活動のときです。大学関係者の方々には申し訳ないのですが、おそらく異論がないことであろうと思います。「社会の厳しさ」と「自身の現状」をリアルなまでに突きつけられるのが、就職活動です。一般的な大学生活を送ってきた学生の場合、現実をまざまざと突きつけられるインパクトは、就職活動の他にないことです。人には「成長するきっかけ」というものがあります。そのきっかけとは、こうありたいという自身の「あるべき姿」を持つこと。次に等身大の生身の「現状」を知り、「あるべき姿」との間にできた「ギャップ」をリアルに気づくことです。どうにもならないことも世の中にはたくさんあります。多くの学生が人生で最初にその現実を知る機会、それが就職活動です。資格試験を努力量によってクリアできた学生も、就職活動は別物。理由も明らかにされないまま〝お祈りメール〟はやってきます。いくらその企業のことを調べ尽くして、自身を採用するメリットを練りに練って考え、面接で披露したとしても、落ちる企業には落ちるものです。いくら熱意があって自身を営業しても、相手が不必要なものだとすれば売れません。仮に何度チャンスがあってもその結果は同じでしょう。これまで、彼らが経験したものと就職活動とはまったく異質なものなのです。「企業の社会的責任」を果たすのが採用活動──選考する企業側の社会的責任(CSR)でも、これが社会です。学生にとっては理不尽に映ることも社会のリアルな姿です。社
会に出て働いている人間なら、誰もが経験している日常です。就職活動の体験を通じ、これから自身が生きていく社会のリアルな姿を理解します。そして自身と向き合い、時に戸惑い、時に喜び、試行錯誤や葛藤の末に進むべき路を決めていきます。試行錯誤や葛藤の多かった学生ほど、就職活動前と後の変化は、形容するのが難しいほど大きいものです。このことからわかるのは、採用する側の企業は、採用活動を通じて若者の成長に貢献しているということです。松下幸之助は、「企業は社会の公器である」という言葉を残しています。採用活動は「企業の社会的責任」を果たす役割を担っているというスタンスを持つことは、とても重要です。そのスタンスは、必ず学生側に伝わるものです。本気で向き合う選考プロセスが生み出す大きなメリット日本は少子高齢社会です。これからはさらに働く人一人ひとりの力を高めていかねばなりません。採用活動を通して、これから社会に出ようとしている学生と相対する企業側ができることはたくさんあります。本書では、順を追って具体的な手法をお伝えしていきますが、それらの手法のベースには、若者を成長させるために、「企業の社会的責任」を果たしていこうというスタンスがあります。言うまでもなく、新卒採用で出会うすべての人が自社に入社するわけではありません。採用基準に合わず不採用にする人もいます。他社を選び、選考を辞退する人もいます。しかしながら、他社に進んだ学生のこれからの活躍や成長にも寄与できるタッチポイントが採用活動です。短期視点では、無意味に映ることでしょう。しかし、長期視点では、意味のあることかもしれません。事実、学生たちに本気で向き合う一連の選考プロセスが口コミで評判となり、次年度以降の候補者形成に生きる事例はたくさんあります。例えば、三和建設という会社があります。大阪に本社を構える創業70年超の中小建設会社です。2017年に「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞を受賞したこの会社は、採用活動そのものの価値をブランド化する取り組み=「リクルーティング・ブランディング」を実践し、中小建設業にもかかわらず、採用倍率は20倍、内定辞
退者ゼロ(2019年4月入社は内定者15名、15名入社)という成果を生み出しています。三和建設は、新卒採用のキーワードを「理念共感」と「成長」とし、1人140時間の5段階選考を行なっています。「もはや選考というより社会人になるための研修といっていいかもしれない」と社長は述べられています。選考プロセスでは、会社が学生を見極める以上に、「学生が会社をどう見極めるのか」という観点を重要視し、学生が自ら答えを見いだし、決意を固めるサポートだけに専念しているといいます。たとえ三和建設に入社しなくても、学生にとっては自らの仕事観を明確化できるため、この一連の選考プロセスが口コミで評判となって、次年度以降の候補者集団形成につながっているというのです(参考文献:『人に困らない経営〜すごい中小建設会社の理念改革〜』)。ギブ・アンド・ギブの精神で、未来ある若者たちに種をまき、水をまくこと。いい人財を採用できるのみに留まらず、競争力のある会社となるための行動指針です。いつまたご縁の花が咲くかはわかりません。すぐの見返りを期待せずに、ギブをし続ける採用活動についてぜひ考えてみてください。企業側は、採用活動を〝選考の場〟というより、社会人になるための〝教育の場〟というスタンスを持つべきです。だから、採用をなめてはいけない──第1章のまとめとしてこの章の最後に、第1章でお伝えしてきた内容を改めて整理します。「あなたの会社の採用がうまくいっていない理由は何ですか?」の質問に対する回答で、採用できない本当の理由がわかります。採用できない理由を外に求めているようであれば、その思考のクセは直ちに治す必要があります。採用がうまくいっている会社もあります。採用がうまくいかない理由をこれまでの自社の取り組み方に求め、改善することがすべてのスタートラインです。大きく飛躍する企業は、「始めが大事」と捉え、実践しています。その始めとは「採用」です。採用は失敗してはいけません。組織に与える影響が大きいからです。そのため、時代の変化を捉え、事業をさらに展開していくためには、「優秀な人財の定義」を正しく定めることが重要です。また採用を失敗してはいけないのは、組織に与える影響が大きいからだけではありません。採用の失敗は採用した人に対しても傷を負わせることになるからです。だから採用活動は、勉強も探求もせずに、感覚でやるものではありません。採用に対するテキトーな姿勢は、ジワジワとボディブローのように将来に悪影響を及ぼすことになります。いい人財からもお客様からも地域社会からも価値のない会社という烙印を押されてしまう危険があります。
一方で本気で向き合う採用活動が評判となり、安定的に優秀な人財採用につながっている例もあります。すぐの見返りを期待せず、「企業の社会的責任」を果たすことこそ採用活動のあるべき姿です。この姿勢を示すことが、遠回りでなく、安定的に優秀な人財を採用することにつながるのです。
ダメ採用は、ダメ営業?ダメ営業マンは何が間違っていたのか?採用活動は、まさに営業、マーケティング活動そのものです。私は、営業・マーケティングのコンサルタントとして、年間150回以上、現場指導を行ない、これまでに数多くの営業組織を目標達成に導いてきました。その経験則でわかっていることがあります。それは、営業活動は正しく実践しさえすれば、目標ぐらいは達成できるということです。逆の言い方をすれば、目標が達成できないということは、誤ったやり方で営業活動をしているということです。いくら頑張っていたとしても、そもそものスタンスが間違っていたり、努力の方向がズレていたりすれば、狙った結果を得ることはできません。なぜ、そう断言できるかと言えば、私自身が過去にそうだったからです。今でこそ、営業コンサルタントして、新入社員研修、若手向け研修、マネジャー向け研修など全国を駆け回って実施している私ですが、実は隠したい過去があります。それは、ダメ営業マンという過去です。ビジネス書にはこの類いのエピソードはあるあるネタでしょうが、事実ですから仕方ありません。私は、目標を達成できず、毎週の営業会議で怒鳴りつけられ、まわりから憐れみの表情を浮かべられ、社内に居場所のない営業マンでした。仕事はやっていました。決してサボってはいません。ブラックと言われるほど、長時間働いていました。会社に寝泊まりすることも一度や二度ではありませんでした。昔からの友人の結婚式への出席も断って、休日出勤もしていました。それでも、私はダメ営業マンでした。営業の役割は、会社から与えられた目標を最低でも達成させることです。いくら働いても、結果を出さなければ、役割を果たしたとは言えないのです。営業としての役割を果たせない私は、周囲からの冷たい視線に耐えきれなくなり、精神的に追い込まれ、出勤途中に体調不良に襲われる日々が長く続きました。今、この文章を書きながら、その当時のことを思い起こしていると、目の前が暗く映り
ます。光の見えない、まさにどん底にいました。転職活動をしようと転職エージェントに登録し、カウンセリングを受け、実際に紹介もしてもらいました。ただし、実際に応募はしませんでした。いや、「応募できなかった」と言ったほうが正確でしょう。自信を失っていた私は、これ以上自信を失いたくなかった。これ以上自分を否定されたら、生きていく自信も失ってしまう、そんな生存本能が働いていた、そう今では思います。ダメ営業マンも採用に苦戦している人も、変われるとにかくあの頃は、出口の見えないなか、もがき、苦しみ、声にならない声を出して気が狂う寸前でした。しかし、私は今、コンサルタントをしています。当時のことを知る誰もが不思議がっていることでしょう。「なぜ、あの酒井がコンサルタントをしているのか」訝しい表情が目に浮かびます。人は変われるのです。資質とか、才能とか、天性とか、関係はありません。営業活動は正しく実践しさえすれば、目標くらいは達成できます。採用活動でもこのことは同様です。採用がうまくいっていないのは、正しく活動していないだけなのです。ダメ営業だった経験があるからこそ、「売れる営業パーソン」と「売れない営業パーソン」との違いが私にはわかります。採用活動は、営業、マーケティング活動そのものです。採用を成功させるには、「売れる営業パーソン」と「売れない営業パーソン」との違いを知ることから始まります。あなたが採用に苦戦しているとしたら、かつての私のように「売れない営業パーソン」になっているかもしれません。この章では、売れる営業パーソンと売れない営業パーソンとの違いをもとに、「うまくいく採用」と「うまくいかない採用」との基本的な違いを掴んでいただきます。
「片手間でやっている」から、うまくいかない──いい採用ができない理由①片手間でやっているかどうかの基準売れる営業パーソンと売れない営業パーソンとの間には、いくつかのシンプルな違いがあります。その1つ目は、費やしている「時間」の違いです。売れる営業ほど、やっている活動があります。それは、営業活動です。拍子抜けするような話ですが、事実ですから仕方ありません。今、振り返ると、売れないダメ営業だった頃の私は、単純に営業活動に割いている時間が圧倒的に足りませんでした。毎日朝から晩まで、定時の時間内では処理し切れないほどのタスクに追われていました。求人票作成、求職者面談、シフト表作成、契約書作成などなど、日々やるべきことは盛りだくさん。常に手帳にはタスクの書かれた付箋が貼られ、優先順位をつけながら、処理することに追われていました。終業時間は22時があたりまえ。終電で帰ることもしばしばの状態。目の前のタスクを片付けなければ、営業活動に出かけることができない、そんな状態でした。私がダメ営業だった一番の理由は、営業活動がそれらのタスクの片手間で行なわれていたからに他なりません。当社が民間企業における営業従事者3360名を対象に行なった「日本の営業実態調査2019」によると、1日4時間以上、社内業務に時間を取られている人が21・4%いるという結果が出ました(出典:株式会社アタックス・セールス・アソシエイツhttp://attaxsales.jp/wp/wpcontent/uploads/NewsRelease20190423_AttaxSalesAssociates.pdf)。営業職の仕事とは、お客様の課題を引き出し、それを解決するための方法を考え、提案することです。そのためにはお客様のことを正しく知らなければなりませんし、良好な関係を築く必要があります。良好な関係は一度お会いしたからといって、すぐに築けるものではありません。営業パーソンの行動により、お客様は信頼できる営業パーソンか否かを判断し、信頼できる営業パーソンに仕事を依頼するものです。一度の接触でお客様を虜にするような魔法を使える
営業パーソンでない限り、それ相応の時間と労力は必要です。私は魔法の使える営業ではありませんでした。営業成績は常に不安定。目標を達成する月もあれば、そうではない月もある、そんな状態でした。いい人財を安定的に採用できる会社とそうではない会社との違い。それは、そんな営業と同じく、「時間」です。いい人財を採用できない会社は、採用活動を片手間でやっているのです。大企業のいい採用ができる理由は、知名度があるからだけではないリソースの限られている中小・ベンチャー企業では、採用担当者は専任ではなく、教育研修、人事制度・労務、総務などの他業務と兼任となっているケースが多く見受けられます。中小企業庁の「2015年版中小企業白書」によると、採用専任担当者がいる中小企業は全体のわずか5%程度。その他の中小企業は、社長、人事担当者、各部門の責任者が日々の業務と兼任しています(出典:中小企業庁「2015年版中小企業白書第2節中小企業・小規模事業者の人財確保・定着」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H27/h27/html/b2_2_2_1.html)。一方で、リソースが豊富な企業では、1年を通して、採用担当者を専任に据えています。専任ということは、毎日、朝から晩まで、年がら年中、採用のことを考えている人間がいるということです。営業部門が存在する会社は多いことでしょう。中小企業であっても、売上をつくる役割を担う部門が存在します。営業部門があるということは、目標が達成しているかどうかは別にして、年がら年中、営業のことを考えている人間がいるということです。あなたの会社がいい採用ができていないとしたら、年がら年中、採用のことを考えている人間がいるかどうかということです。もし管理部門の社員が4人いるとしたら、そのうち朝出勤してから夕方に退社するまで、ずっと採用のことを考えているでしょうか?もしいないとしたら、問題は明白です。ズバリ、そもそも費やしている時間と労力が足りていません。かけている時間と労力の差が、採用結果に表れているだけのことです。人手不足が慢性化している中小企業では、一人の社員が複数の業務を兼任することは決して珍しいことではありません。しかし、限られた時間の中で日々の業務と採用活動を両立させることは難しいものがあります。大企業が採用できるのは、知名度があるからだけではありません。専任の採用担当者や
採用チームを結成し、十分な予算を割り当てて取り組んでいるからです。いい採用ができる中小企業にあって、いい採用ができない中小企業にないものあなたの会社は、5年前と比べてどうでしょうか?4年前と比べてどうでしょうか?3年前と比べては?2年前とは?去年とは?採用の仕組み、プロセスを見直し続けていますか?採用のスキルはアップしていますか?変わっていなければ、差はどんどん開いていく一方です。社員が50名以下の会社でも、採用の専門部隊をつくっている中小企業がいくつもあります。やはりそういう中小企業は、いい採用ができています。大手企業の内定を蹴ってでも、入社してくる人もいます。今の売り手市場の中では、大企業だろうが中小・ベンチャー企業だろうが、片手間でやって、いい人財を獲得できるほど、簡単ではありません。採用は、未来をつくる重要な仕事です。「売上」や「利益」ではなく、「採用」「育成」を中心とした計画をしっかりと立てることが本当の事業計画です。
「他責にする」から、うまくいかない──いい採用ができない理由②同じ商品でも売れる営業、売れない営業の違い売れる営業パーソンと売れない営業パーソンのシンプルな違い、2つ目は、「商品への自信」です。人材紹介会社時代、大学生に限定したアルバイト募集サイトを扱っている時期がありました。リクルートが運営する「タウンワーク」、ディップが運営する「バイトル」のようにテレビCMをしていませんので、企業にもユーザーにも当然知名度が低い情報サイトでした。テレアポをしても飛び込み訪問をしても、聞いたこともないサービスへの反応はすこぶる悪いものです。「知らない」というだけで、相手は警戒感を抱きます。「本当にこのサービスに価値があるんだろうか?お金を払っても大丈夫だろうか?」と。アルバイト募集をしていて、「いい人財と出会いたい」と本気で思っている採用担当者でさえも、「知っている=安心」という心理で判断します。私は、自らの力で新規のお客様を開拓し、営業実績を上げていくことができないでいました。一方、社内には、私のように売れない営業ばかりではありません。売れる営業は売ってきます。2倍も3倍もです。商品自体の機能は何も変わりませんし、売れる営業は過剰サービスをしたり、値下げをしていたわけでもありません。では、その差はいったい何だったのでしょうか。今、振り返ると、売れないダメ営業だった私は、商品への自信がありませんでした。そして、売れない理由を商品のせいにばかりしていました。「世の中に知られていない情報サイトなんて売れないよ」心のどこかでそんなふうに思っていたのです。この気持ちは、口には出しませんが、当然お客様には伝わるものです。いくらテレアポしても飛び込み営業しても商談しても、「お客様にとって価値がある商
品なんだ!」という確固とした想いがある営業パーソンとそうではない営業パーソンとでは相手に与える影響は違うものです。トップセールスマンの「商品への自信」に学ぶ「自社への自信」のつけ方ここで、ある住宅メーカーのトップセールスを例に挙げます。「家」というものは、ほとんどのお客様にとって一生に一度の買い物です。だからこそ、住宅メーカーの営業パーソンは兄弟や親族にも勧められるぐらい商品に自信がないと、売ることができないと言います。とは言っても、世の中には多くの住宅メーカーがあります。自社よりも性能のいい家を扱っている住宅メーカーは他にもあるはずです。自社が劣ってしまう部分も当然あるでしょう。「それでもそんなに自社の商品に自信が持てるか」というと、「ん〜」と頭を抱えてしまう営業パーソンが世の中の大半でしょう。しかし、そのトップセールスはこう教えてくれました。「確かに、自社よりも優れている住宅メーカーはいくらでもあるよ。でも、世の中に完璧な商品など存在しない。完璧を求めるのではなく、他社よりも優れている点がどこかを突き詰めて考えれば、おのずと自分の商品に自信が持てるようになるんだ」このトップセールスの考えを採用活動に置き換えてみると、どうでしょう。「確かに、自社よりも優れている会社はいくらでもあるよ。でも、世の中に完璧な会社など存在しない。完璧を求めるのではなく、他社よりも優れている点がどこかを突き詰めて考えれば、おのずと自分の会社に自信が持てるようになるんだ」他責にした瞬間に起こること営業であれば、頑張っているのに売れない状態が続くと、ついつい自分以外のものに原因を求めてしまいたくなります。採用においても、人が採れない状態が続くと、「うちの会社の規模だったら仕方ないよな」とか「認知度が低いうちみたいな会社ならこの程度だよな」とか「今は売り手市場だから」とか、ついつい思いがちです。そのほうが単純にラクだからです。考えなくて済むからです。でもそこで止まっていた
ら、物事は何も進んでいかないことは、聡明なあなたならおわかりでしょう。他責にした瞬間、思考は止まります。成長も止まります。しかし、自責にした瞬間、思考は蘇ります。成長が始まります。望む結果が出ていないということは、自分たちがやるべきことが十分にやれていないだけです。本書では第3章以降に、やるべきことのステップと具体的なやり方を解説します。
「相手を知らない」から、うまくいかない──いい採用ができない理由③知らなければ、戦略も立てられない売れる営業パーソンと売れない営業パーソンのシンプルな違い、3つ目は、「相手を知らない」ということです。営業という仕事は、突き詰めていくと「お客様の課題を解決する仕事だ」と私は考えています。お客様の【あるべき姿(=ありたい姿)】に対して、そうなっていないという【現状】があれば、そこに【ギャップ】が存在します。例えば、行きたい場所が【札幌】であるのに対して、現在地が【東京】であるならば、そこに【ギャップ】が存在します。直線距離にして、832㎞のギャップです。このギャップを埋めることが、すなわち解決すべき【問題】です。その問題を自力で解決できるなら、他人の力は必要ないわけです。しかし、自力で解決できない場合、そこには何らかの【課題】があります。課題とは、問題解決(=ギャップを埋めること)を妨げるボトルネックと言えます。自力で東京から札幌に行けないとしたら、そこには何らかの【課題】があるはずです。課題は、例えば「飛行機で行く資金がない」とか「資金はあって予約もしてあったんだけど、大雪の影響で欠航になってしまった」とか。仮にあなたが旅行代理店の営業なら、そういった状況のお客様にどう対処するでしょうか?札幌に着きたい時間も把握したうえで、解決策を提示しなければなりません。時間に余裕があれば、「東北・北海道新幹線のはやぶさ」と「JR特急」で行く方法を提示するかもしれません。天気予報を確認して天候の改善が予測できるなら、空港に留まって、運行再開してすぐの便を予約することを提示するかもしれません。このように、課題を解決するには、プロセスが必要です。まずは、そもそもの【あるべき姿】を知ることがスタート。そして、その次に【現状】を知ること。自ずと二者間の【ギャップ】を捉えられます。
次に、このギャップを埋める【期限】を知ること。いつまでにギャップを埋める必要があるのかがわかれば、手段の選択肢が限られてきます。そして最後に行なうのは、その選択肢の中から、最良の解決策を提案することとなります。求職者について知っておくべきことこの一連のプロセスの中で、重要なキーワードは「知る」ということです。あるべき姿と現状を「知らない」ことには話になりません。期限を「知らない」と解決策を正しく提示することができません。売れる営業パーソンは、お客様の【あるべき姿】【現状】【期限】をあらゆる角度からヒアリングします。お客様自身も言語化できず、気づいていなかったことをヒアリングすることで、顕在化させることもあります。そして、認識を揃えたうえで、最良の解決策を提示するのです。一方、売れない営業パーソンは、お客様の【あるべき姿】【現状】【期限】のすべてかいずれかをヒアリングできていません。営業パーソンがこれらを言語化できないのです。そして、言語化ができていないにもかかわらず、提案してしまう。それでは、売れるはずがありません。これでは営業とは言いません。これは営業ではなく、「売り込み」です。相手を知らずに、売りたいものを売る行為は、営業ではなく、売り込みです。お客様が何を求めているか?困っていることは何か?その課題(ニーズ)に対して、解決策を提示し、価値があると認められれば、正当な対価をいただく。これが営業活動であり、企業活動です。
ここで認識を持っていただきたいのは、採用活動も企業活動の一部であるということです。新卒学生が就職先に求めていることは何なのか?中途の場合はどうだろうか?就職活動において困っていることは何だろうか?就職活動をするにあたって、どんな情報が必要なのだろうか?採用するということは、目の前の学生や求職者の人生を「預かる」ということです。相手の人生の目的を知り、自社に入社することで得られる価値とは何なのかを伝えることこそが採用活動なのです。情報は、待っていても入ってこないまた、トレンドとして求職者の思考を掴んでおくことも重要です。20代が採用ターゲットであれば、20代の職業観、流行していることなどは押さえておくべきです。就職情報会社が各種調査を定期的に発信しています。他にも「さとり世代」や「マイルドヤンキー」という流行語の生みの親である原田曜平さんの情報も参考になるかもしれません。あえて若者が使っているアプリを使ってみたり、コミュニティを覗いてみたり、積極性を持って情報を取りに行かなければ、「知ること」はできません。最近は、働く価値観も多様化しています。例えば、オンラインサロンに集まる人たちは、会費を払ってコミュニティに所属し、そこでクリエイティブなアウトプットを世に出しています。つまり、お金を「もらって」働くという価値観ではなく、お金を「払って」働くという価値観なのです。相手を知らずに、採用活動をしているとしたら、それはもはや「売り込み」になっているかもしれません。
「マーケットを知らない」から、うまくいかない──いい採用ができない理由④「マーケットを知っている」とは、どういうことか?売れる営業パーソンと売れない営業パーソンのシンプルな違い、4つ目は、マーケットを知らないということです。売れる営業は、自社やターゲットとするお客様の業界を取り巻く外部環境の変化をしっかりと押さえています。新聞や業界紙などのマスメディアの情報はもちろん、関係者からの裏情報などに常にアンテナを張り、一次情報(=事実)をもとに、二次情報(=仮説)を持って、仕事をするのがあたりまえの基準です。採用活動においても、常にアンテナを張り、自社の活動に反映させていかねばなりません。それでは、ここで問題です。以下の人数は何を表す人数か、パッと答えられるでしょうか?「2万人」この人数は、就職情報大手のディスコが2019年1月16日に公表した調査結果により明らかになった、2019年1月1日時点で内定を得ている大学生の総数です。「えっ?1月1日ってことは、卒業まであと3カ月くらいなのに2万人しか内定が決まっていないなんて、そんなわけないだろ!」そう思った方もいらっしゃるかもしれません。はい、おっしゃるとおりです。卒業を3カ月後に控えた大学生(大学4年生や修士1年生)のうち、内定が決まっている学生は約39万人いました。「じゃあ、2万人って?」これは2020年卒の学生(大学3年生・大学院修士課程1年生)の内定者の数です。「えっ?だって新卒の採用って、3月から広報活動開始だろ?どういうこと?」そうですよね、現行の「経団連ルール」で広報活動が解禁されるのは3月から。そして面接が解禁されるのは4年生の6月。
にもかかわらず、その1年半前に内定を得ている学生が「2万人」もいるのです。ディスコの調査によると、2020年卒の内定率は1月1日時点で4・7%と前年同期の3・1%からアップしており、学生の就活の早期化が進んでいることを表しています(出典:キャリタス就活2020学生モニター調査結果〈2019年1月調査〉https://www.disc.co.jp/wp/wpcontent/uploads/2019/01/201901_gakuseichosa.pdf)。採用のマーケティングこれは、あくまでも一例です。採用環境は年々変化し続けています。2018年10月、日本経済団体連合会(経団連)は、2021年度以降に入社する学生を対象とした採用選考に関する指針を策定しないと発表しました。その影響が今後どのように表れていくか、常にアンテナを張り、一次情報(=事実)をもとに、二次情報(=仮説)を持って、戦略を策定していかねばなりません。採用は、マーケティングです。マーケットから人財を供給する活動が、採用活動です。マーケットを知らない採用活動が機能しないのは至極当然のことです。マーケットにおいては、限られたパイの奪い合いが繰り広げられています。厳しさを増しています。一次情報(=事実)をもとに、二次情報(=仮説)を持って、マーケットに戦いを挑んでいくのが採用活動です。簡単に言ってしまえば、ちゃんとやらないと、採用できないということです。今までと同じやり方を続けている限り、うまくいかないのは当然のことです。世の中の動きをもとに、抜本的な戦略を組み立て直すこと。自社の戦況をリアルタイムで捉え、戦術を柔軟に変化させること。マーケットで勝つためには、マーケットと自社の立ち位置を常に正しく知ることが不可欠です。
「行き当たりばったり」だから、うまくいかない──いい採用ができない理由⑤「あたりまえ」になっているか?売れる営業パーソンと売れない営業パーソンのシンプルな違い、最後の5つ目は、〝行き当たりばったり〟です。売れるだけでなく、結果を出し続け、目標を達成し続ける営業パーソンには共通する点があります。それは、「目標を達成させることくらい、あたりまえだ」という思考を持っていることです。この思考を「絶対達成マインド」と私たちアタックス・セールス・アソシエイツのコンサルタントは言っています。人にはそれぞれ「あたりまえ」と捉えていることがあります。会社にはいつも就業時間の1時間前に出社するという人もいれば、5分前に出社する人もいます。毎朝、自宅を出発する前には靴を磨くという人もいれば、特に何もしない人もいます。電車移動中は新聞やビジネス書を読むという人もいれば、スマホでゲームをする人もいます。どちらが良いか悪いかはさておいて、「あたりまえ」と捉えていること、行なっていることは、人によって違うものです。「あたりまえ」になっているかどうかは、それをもし「やってはいけない」と禁止されたとき、どのような感情になるかで判別することができます。多くの人が共通して行なっている「あたりまえ」といえば、歯磨きがありますね。では、もし「今日から3日間、歯磨きをしてはいけない」と言われたら、どんな感情を持つでしょうか?……嫌ですよね。誰もがやらないと気持ち悪いという感情を覚えるはずです。そう思うのは、「あたりまえ」とは、無意識にでも繰り返してしまうほど、習慣化している動作や思考だからです。パンツを穿くこと、スマホを見ることなど、すでに習慣化していることは、「やめろ!」と言われたら困惑するしかないでしょう。これと同じように、目標を達成し続ける営業パーソンには、「目標を達成しないと気持
ちが悪い」という思考が染み付いています。だから、目標未達成という状態を回避するべく、考え、行動します。11時にお客様とのアポイントが入っていたとしたら、確実に間に合うように会社を出発する時間を逆算するでしょう。この場合、目標は「11時にお客様先にいること」。その状態を絶対達成させるために、逆算して行動するのは、ビジネスパーソンなら「あたりまえ」でしょう。実は、これと同じことを、目標を達成し続ける営業パーソンはやっているだけのことなのです。採用のPDCA採用についても同様です。採用目標を達成させたいなら、現状から考えていては始まりません。目標達成を前提に、期限から逆算する思考と行動習慣をインストールするべきです。第3章で詳しく解説しますが、採用プロセス全体を逆算設計する「パイプライン管理」のような仕組みがあれば、目標から逆算して、客観的にギャップを捉えることができるようになります。仕組みとは、システムを入れることではありませんので、定期的に振り返るコミュニケーションの場を設計することが必要です。営業ミーティングと同様に、採用ミーティングを定期実施し、PDCAを回すことは欠かせません(ちなみに採用コンサルティングでは、2週間に1回のペースで90分間のミーティングをしています)。採用担当に任せっきりにすることなく、組織内で採用目標に対する現状進捗をチェックし、ギャップを埋めるアイディアを発散する場が必要です。そのような場が定期的に実施されていないのなら、改めるべきです。しかし、ここで大事なことをお伝えしなければなりません。それは、「採用目標は絶対達成する必要はない」ということです。むしろ、採用目標は絶対達成しなければならない指標ではありません。それがどういうことか、その理由は、次の章でお話しします。自社の採用活動を再チェック──第2章のまとめとしてこの章では、採用がうまくいっていない会社の5つの特徴を挙げました。
①片手間でやっている②他責にしている③相手を知らない④マーケットを知らない⑤行き当たりばったり御社の今までの採用活動において、これら5つのうちの1つでも当てはまる特徴がありましたか?弱い部分、もっと力を入れたほうがいいことに気づくだけでもOKです。売れない営業パーソンと同じ思考パターン、行動パターンになっていないかどうか、常にセルフチェックすることが大切です。
経営の問題の根源は、「採用基準」にあり──誰を採用するか①問題解決の手順の第1ステップ私の所属するアタックスグループは、1946年創業の経営コンサルティングファームです。「社長の最良の相談相手」として、税務会計から人財教育・営業力アップまで守りと攻めの支援をしています。アタックスグループの中において私の役割は、現場に入って組織の目標を達成させるコンサルティングです。経営層の方々を中心に、多種多様なご相談をいただいています。社員たちのやる気を高められないのは、自分のリーダーシップに問題があるのではないか?社員たちが決めたことをやらないのは、自分のマネジメントに問題があるのではないか?社員たちの生産性が上がらないのは、教育体制に問題があるのではないか?社員たちが次々に辞めてしまうのは、評価制度に問題があるのではないか?コンサルタントは、医者と同じ役割を果たさねばなりません。医者の役割は、患者の病気を治すことです。いい医者というのは、患者の症状を正しく掴み、適切な処置をします。当然、医者の手だけでは症状は改善しませんから、患者自身がなすべきことを的確に伝え、症状が改善するまでのシナリオを持って、その都度すべきことを提示します。コンサルタントの役割は、相手の問題を解決することです。いいコンサルタントというのは、当事者の問題構造を正しく掴み、適切な処置をします。当然、コンサルタントの力だけで問題は解決しませんから、当事者自身がなすべきことを的確に伝え、問題が解決するまでのシナリオを持って、すべきことを提示します。医者にしても、コンサルタントにしても、優秀な人間に共通するのは、問題解決の手順を踏んでいるということです。
まず、「あるべき姿と現状とのギャップ」をはっきりとさせます。次に、「どこに問題があるか?」を特定させます。その次に、「なぜその問題が発生しているのか?」を掘り下げていきます。そうすることで、ようやく解決の方向性を見つけ出すことができるものです。そのように手順を踏んでいくと、多くのケースにおいて、リーダーシップよりも、マネジメントよりも、教育体制よりも、評価制度よりも、根本に横たわる問題が浮上します。それが「採用基準」です。さらに踏み込んで言えば、「採用する人を間違えている」のです。
安易に採用基準を下げると、組織は疲弊する──誰を採用するか②「採用基準」を下げていいのは、この2パターン「御社の採用基準は何ですか?」初めてお会いした、ある中小企業経営者と採用に関する話題になったので、尋ねてみました。「採用基準は、下げまくっています。段階的に下げていった結果、今の採用基準は、日本語をしゃべれることです。大げさな話でもなんでもなく、それくらいしないと人が集まらない……」「いやー、本当そうですよね。そして、採用基準を下げたからといって応募があるわけでもないんですよね」私は同調しつつ、次にこう言いました。「でも社長、採用基準を下げてもいいのは、次の2つのパターンのいずれかです。1つ目は、今後、お客様に提供する価値基準を下げるつもりでいること。2つ目は、戦力化までの育成シナリオが万全にあること。社長、御社の場合はいかがですか?」採用基準を下げるかどうかは、入社後の教育をセットで考える売上=単価×個数×頻度です。「〇〇のことだったら、御社だよね」とお客様に認識していただき、お金を払い続けていただくことが経営安定につながっていきます。そういったお客様がたくさん存在すればするほど、安定基盤ができます。この安定基盤は、自社がこれまで提供してきた価値に満足していただいた結果とも言えます。
企業は存続し続けなければなりません。それは社員のためであり、社員の家族のために。そのためにやるべきことは、お客様にご満足いただけるサービスの提供です。これは原理原則だからでしょうか、私はこれまでに1つ目の「お客様に提供する価値基準を下げるつもりでいる」と言う経営者にお会いしたことがありません。では、2つ目はいかがでしょうか?「戦力化までの育成カリキュラムが万全に整備されていること」どれだけ採用時に基準が低くても、本来の採用基準にまで引き上げ、さらに成長曲線を描ける育成カリキュラム、メニューが用意されているかということです。日本のプロ野球においては、「育成選手制度」があります。支配下登録選手(原則上限70人)はペナントレース(公式戦)に出場できる一方、育成選手は、出場できません。つまり、実際の現場に立たせる基準には今は達していないけれど、そのポテンシャルがあり、まさに育成していこうと、技能の錬成向上およびマナー養成を行なう対象が育成選手です。企業が本来の基準を下回る人財を採用するということは、価値を提供するまでに育成を要することを意味します。企業が採用基準を下げるということは、入社後の教育をセットで考える必要があります。3つの覚悟があれば、採用基準を下げてもいいつまり、基準を下げてでも採用する企業には3つの覚悟が必要と言えます。1つ目は、育成する覚悟。2つ目は、待つ覚悟。3つ目は、芽が出ない覚悟。1つ目の育成する覚悟とは、コストを払う覚悟です。育成するとは、社内のリソースを対象者に投資するということです。金銭的コストだけでなく、既存社員の時間も費やすことになります。採用基準を下げなければ不要であったはずの教育やマネジメントの時間が必要となってきます。リターンを得るまでの時間的コストは無視できません。さらに、数値では算出しづらい労力(精神的コスト)もかかります。一人前にするためには根気が必要です。自身の業務をこなしつつ、育成するのは相当な
根気が必要です。採用基準を下げるからには、その覚悟が必要です。2つ目の覚悟は、待つ覚悟です。少なくとも今までよりは時間を要することになります。求める基準にまで持っていくには、時間がかかります。それまでは先行投資です。そんなことをやっている暇がない、余裕のない企業は待てません。財務的にも、時間的にも余裕があれば、育成期間として割り切れるでしょう。その場合でも、いつまでを「育成期間」とするか定義づけし、期限から逆算した育成プログラムは必要でしょう。期限も定めずに、いつまでも待てるほど、ボランティア精神あふれる会社なら別ですが。3つ目の覚悟は、芽が出ない覚悟です。たとえ、期限を決めて先行投資しても回収できないリスクはあります。育成する覚悟があって、基準に達するまで待つ覚悟があっても、芽が出ないこともあります。「あらゆるコストをかけても回収できない」、その覚悟があるか、ということです。採用基準を下げてもいいのは、(1)お客様に提供する価値基準を下げるつもりでいること。(2)戦力化までの育成シナリオが万全にあること。このいずれかに該当し、(2)の場合であったとしても、①育成する覚悟②待つ覚悟③芽が出ない覚悟という3つの覚悟がある必要があります。そうでない限り、安易に基準を下げて、採用することは組織を疲弊させることにもつながりかねません。本来採用しなければ得られたリターンが奪われる可能性すらあります。短期的視点だけではいけませんが、中長期的な視点に立って考えたとしても、基準の低い人材を採用することにはリスクが伴います。
採用の質を下げても、お客様への提供の質は下げられない──誰を採用するか③質の優先度を下げる会社、増加中コンサルティングに入ったある会社のお話です。この会社の最大の悩みは、営業職の離職率の高さでした。採用した人財が、すぐに辞めてしまうのです。営業職人財がいなければ成り立たないビジネスモデルのため、辞めていった分の人財は確保しなければなりません。しかし、離職率は高いまま。そうなると、「辞める」→「募集する」→「辞める」→「募集する」を繰り返すこととなります。結果、採用コストは、倍々ゲームのように膨れ上がっていきました。そして、そうやって莫大な採用コストを投じて採用した人財が、悲しいことにすぐにまた辞めてしまうのです。これって、何かがおかしいと思いませんか?しかし、このような話はもはや珍しいことではなくなっています。2020年卒マイナビ企業新卒採用予定調査では、採用における「質・量の優先度」に関する調査結果として以下の発表をしています(出典:2020年卒マイナビ企業新卒採用予定調査http://mcs.mynavi.jp/enq/saiyou/data/saiyouyotei_2020.pdf)。◎「徹底して質」が大学(文系)で21・0%(前年25・5%から4・5pt減)、大学(理系)で20・2%(前年23・4%から3・2pt減)、大学院(理系)で21・3%(前年25・6%から4・3pt減)等、すべての分類で前年より減少。◎《質重視》の合計値は、およそ8割以上と非常に高い割合である一方、大学(文系・理系)では2012年卒、大学院(理系)では2014年卒の調査時をピークに連続した減少傾向。◎「質よりは量」の割合は、2012年卒を底に大学(文系・理系)と大学院(理系)で連続して増加。つまり、新卒採用環境の厳しさを反映して、質の優先度を下げる企業が増えてきている
ことが明らかになっているのです。採用するうえで、一番やってはいけないこと組織の事情を考えると、「基準を落としてでも人財を獲得しなければならない」、そんな企業が多いのが現実なのでしょう。しかし、「採用するうえで、一番やってはいけないこととは何か?」と尋ねられたら、私はズバリこう答えます。「採用基準を下げること」なぜなら、先の項目で触れた内容の繰り返しになりますが、採用基準を下げたとしても、自社がお客様に提供する価値基準を引き下げるわけにはいかないからです。これまでの価値をひきつづき提供するのはあたりまえで、それ以上の価値を提供し続けることが企業の存亡にかかってくることは言うまでもありません。そして、もしこれまでより低い基準で採用した場合には、これまで以上に教育とマネジメントが必要になります。しかし、いくら優れた教育システムやマネジメント手法があったとしても、後天的に引き上げられる能力と、そうでない能力があるのは、数々の調査データが示している事実です(これについてはのちほど詳しく解説します)。先ほどの企業は、採用基準を下げた結果、「売れない営業」が増えていきました。人数は確保できたものの、付加価値を生み出せない人材を多く抱える状態となったというわけです。だから、「採用目標人数は絶対達成を目指すべきではない」というのが私の考え方です。質を下げた採用は、組織を狂わせます。
誰をバスに乗せるか──誰を採用するか④行き先を決める前にやるべきこと名著『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』には、有名な一節があります。偉大な企業への飛躍をもたらした経営者は、まずはじめにバスの目的地を決め、つぎに目的地までの旅をともにする人びとをバスに乗せる方法をとったわけではない。まずはじめに、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決めている。これは、採用すべき人を考えるうえで、非常に示唆に富んだ一節と言えるでしょう。多くの会社、多くの経営者は、こう考えるのではないでしょうか?「経営目標を達成させるためには、人財が必要だ。今の社内には、質的にも量的にも人財が不足している。だから人を採用しよう」しかし、同書では、「まず考えるべきは、行き先を決めることではない。経営目標という行き先を決める前にやるべきことがあるだろう」と言っています。「この人なら大丈夫、信頼できる」「この人なら情熱があり、資質もある」「どんなことがあったとしてもきっと一緒にやっていける」そう思える仲間をまずは集め、組織を固める。そして、行き先はその後に考えようと。VUCA時代に求められる経営戦略とは?変化し続ける社会において、会社も変化し続けなければなりません。同じことを繰り返していては、現状維持もままならないと言えます。2000年当時、売上の6割、利益の7割を占めていた写真フィルムのビジネスを、4〜5年であっという間に失ってしまった富士フイルム。現在は写真関係を扱う「イメージングソリューション」、医療・印刷・液晶ディスプレイ材料などを扱う「ヘルスケア&マテリアルズソリューション」、そして富士ゼロックス
が担う複写機などを扱う「ドキュメントソリューション」の3つのセグメントでグローバルに事業を展開しています。なかでも「ヘルスケア&マテリアルズソリューション」は2018年度では売上高全体の43%の1兆390億円となっています。技術革新、人口動態、トレンドなど、市場の変化に応じ、富士フイルムのように、会社のドメインを変えていかねばならない事態はいつやってくるかわかりません。これからはVUCAの時代です。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字から、予測不能な状態を指します。そんな時代だからこそ、いい人財の採用は経営戦略です。なぜなら、経営資源は【ヒト・モノ・カネ・情報】ではなく、【ヒト・ヒト・ヒト・ヒト】になるからです。「バスに誰を乗せて行きたいか?」を言語化するこのバスでどこに行くべきかはわからない。しかし、わかっていることもある。適切な人がバスに乗り、適切な人がそれぞれふさわしい席につき、不適切な人がバスから降りれば、すばらしい場所に行く方法を決められるはずです。旅行でもそうです。想像してみてください。あなたが、行く場所を決めて、「行きたい人〜」と募集をしました。本当に自分が一緒に行きたいと思っている人が手を挙げてくれなかったとしたらどうでしょう。それでもその旅行に行くことが前提だとしたら、行くしかなくなります。そんな旅行、あなたは楽しいと思えるでしょうか?まずは、一緒に行きたい人を決める。「その人と楽しめる行き先はどこだろう」と考えるのが、普通ではないでしょうか。では、そもそも「誰をバスに乗せるのか」。採用基準を下げてはいけません。採用基準を明確に設定し、絶対にぶれないことです。採用基準に満たない人財は、絶対に採用してはいけません。まずは、一緒に働きたい人の特性や条件を言語化してみることが、採用活動のスタートラインです。
採用を妥協したらどうなるか?──誰を採用するか⑤世界的名著の教え『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』には他にも、示唆に富んだ文章がいくつかあります。もう少しご紹介させてください。ブルカートは、同社が勢いよく成長した時期にCEOのアラン・ウルツェルとこんな会話をかわしたと話してくれた。「あるとき、『アラン、このポストやあのポストに、まさに適切な人材がなかなか見つからないので、疲れ切ってきた。どこで妥協すればいいのだろう』と聞いたら、アランは躊躇なくこう答えた。『妥協はしない。別の方法を見つけて、最適の人材を探そう』と」採用後の教育でなんとかなる!?──私の失敗談を交えて採用する人を妥協してはいけない。このことは、私自身にも過去に苦い経験があります。私が人生で最初に採用にかかわったのは22歳の4月。大学を卒業し、入社して1カ月目で、私が最初にやった仕事が採用業務でした。入社した会社は、個別指導塾を複数教室展開していた会社。人がすぐ辞めるため、当時まさに人手不足だったその会社は、新卒入社したばかりの私をすぐに教室長にしました。研修も何もありません。あったとすれば、退職する前任教室長と行なった引き継ぎの1日だけ。そんな状態で、つい最近まで学生だった人間が、よくわからないまま最初にやった仕事が採用業務だったのです。私が担当することとなった塾に在籍する講師は、教室長を除く全員がアルバイト。その95%が大学生でした。教育熱の高い住宅街に位置していた塾のため、生徒はたくさんいます。しかし、アルバイト市場は超売り手市場。なかなか募集をかけても応募がない状況でした。講師の頭数が揃っておらず、各講師への負担は増えるばかりという状況でした。
そこで、大手求人広告会社に募集記事を大々的に出したのです。運良くその記事を見て、2人の大学生が応募してきてくれました。とても優秀な大学に所属する2人の学生でした。面接のやり方も何もわからない入社1カ月目の教室長は、わからないなりに、志望動機や長所・短所など、あれこれ質問をしました。今思えば、形だけの面接です。それぞれの質問には明確な意図はなく、ただ「これはお決まりで聞くものでしょ?」ということを思いつくままに尋ねるという感じでした。結果、2人とも採用しました。「う〜ん、どうしようかな」という迷いも正直ありました。しかし、とにかく人が足りていない状況です。頭数を揃えることが先決。あとは教育でなんとかなるだろうと考えて、採用することを決めました。デメリットは、売上減だけにとどまらない結論から言ってしまえば、この2人は採用すべきでなかったと今は言えます。◎頭がいい分、できない子どもの気持ちがわからない。◎自分のやり方を押し付ける。◎生徒により態度が変わる。以上のことから、生徒から人気を得られず、担当させていた生徒が続々と退会してしまう事態となったのです。評判は、退会した生徒が学校中に広めます。保護者は地域中に広めます。口コミというのは恐ろしいもので、「悪い塾」という評判はあっという間に広がっていきました。いったん、「悪い塾」という烙印が押されると、それを覆すことは容易ではありません。まさに私は、そんな経験をしました。それもたった一度の採用の失敗によって……。「人財」ではなく、「人手」の採用になっていないか?人を採用するときには妥協してはいけません。しかし、妥協して人を採用する場面をこれまでにしばしば見てきました。私自身の先ほどの例も含め振り返って考えると、それらには共通する状況がありました。それは、「人手不足で追い込まれている状況」です。私の塾時代の場合も、とにかく講師の頭数が揃わず、切迫していた状況でしたから、
「不足を埋めないと回らないから」という動機の採用でした。私以外の事例には、新規事業立ち上げや既存社員の突然の退職など、その背景はさまざまですが、共通するのは人手が不足していて、「今すぐにでも人を採用したい」という状況です。こういうときこそ妥協しやすいのです。今すぐにでも調達したいというときの「人」とは、「人財」ではなく、「人手」という意味合いが強くなります。気持ちが焦っているため、求める水準より多少低かったとしても、「まあ、いいか。教育でなんとかなるだろう」となりやすいのです。既存社員との相性に違和感があったとしても、「入社した後に何とかなるだろう」と目をつぶってしまいやすくなるのです。これが妥協です。妥協以外のなにものでもありません。追い込まれているから、気持ちが焦ることで、妥協してしまうのです。「人手不足穴埋め採用」のときには妥協してしまう危険性が高まる傾向があると覚えておいてください。常に探し続けるちなみに、私ではありませんが、大学生のころクリスマス前に彼女を見つけて、年明け前に別れる男友達が3人いました。今思えば、クリスマスに一緒に過ごす彼女がいないのは寂しいからと、追い込まれて気持ちで焦った結果、妥協したのでしょう(女性のほうもしかりでしょうが)。妥協するから、長続きしない。これは恋愛も採用も同じ失敗パターンでしょう。では、どうすればいいでしょう。それは、追い込まれる前に、余裕のあるときに採用活動を始めることです。足りなくなってからではありません。足りなくなると予想できた段階で早めに採用を始めるのでもありません。常にいい人財はいないかと探し続けるのです。人手不足というマイナスの状態を±0にする採用でなく、±0からプラスにする採用を通年でやり続ける企業こそ、いい人財を妥協することなく採用できます。そもそも、これからの時代、「人手」はいらなくなっていくでしょう。なぜなら、「手」はロボットでもコンピュータでも、テクノロジーの力で代用が十分可能になってくるのが時代の流れだからです。そういう状況になる前に、財産となるような「人」しか採用しないという姿勢を持つべきと私は考えます。あなたはどう考えますか?
いい人財を見抜く基準──採用基準を設定する正しい方法①採用基準を下げず、採用要件を盛り込みすぎない採用基準を下げてはいけませんが、必要な要件を盛り込みすぎるのもいけません。完璧な会社が存在しないのと同じで、完璧な人財は存在しないからです。あまりにも多くの採用要件を盛り込みすぎると、応募が少なくなります。そうなると、少ない応募者のなかから選考せざるを得なくなります。では、「採用基準を下げない」と「採用要件を盛り込みすぎない」という一見矛盾するようなことを、どのように両立させればいいのでしょうか。ここでも、『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』が重要な示唆を与えてくれます。どういう人が「適切な人材」なのかを判断するにあたって、飛躍を遂げた企業は学歴や技能、専門知識、経験などより、性格を重視している。具体的な知識や技能が重要でないというわけではない。だが、これらは教育できるが(少なくとも学習できるが)、性格や労働観、基礎的な知能、目標達成の熱意、価値観はもっと根深いものだとみているのである。ピットニー・ボウズでも同じ方針をとっている。当社にはたいていの企業より、適切な行動をみずからとろうとする従業員が多い。採用にあたって、職歴だけに注目することはない。どういう人物なのか、どういう価値観をもっているのかに注目する。どういう人物なのかを知るために、これまでの人生でくだした決定の理由を質問する。その答えで基本的な価値観がわかる。人財の素質を見抜く2つのポイントポイントは2つです。
①先天的・後天的能力②価値観次の項目から順番に解説していきます。
「先天的・後天的能力」を見抜く──採用基準を設定する正しい方法②人間の意識レベルには5つの階層がある──ニューロロジカルレベル脳の取扱説明書ともいわれる実践心理学NLP(神経言語プログラミング)では、人間の意識レベルを5つの階層に分類しています(スピリチュアルも含めると6つですが、ここでは5つとします)。①アイデンティティ(自己認識)②信念・価値観③能力④行動⑤環境それぞれの階層は、例えば以下のように表現できます。①アイデンティティ(自己認識)は、「私は〜である」②信念・価値観は、「私は〜という考え方を大事にしている」③能力は、「私は〜することができる」④行動は、「私はいつも〜している」⑤環境は、「私は〜に所属している」それぞれのレベルは互いに影響し合い、各階層に変化があると、他の階層にも変化が現れます。
そのなかでも、特に変化させるのがたやすくないのは、①「アイデンティティ(自己認識)」と②「信念・価値観」です。人そのものや価値観を外的な力で変えるのは非常に困難を伴うものです。私は、企業の現場でコンサルティングや研修講師をしています。目標を絶対達成させる状態にしなければなりませんから、達成しなかった人を達成する人に変えることが仕事です。しかし、人そのものやその人の価値観を変えるのは、簡単なことではありません。人間というのは、過去の体験の「インパクト×回数」でできていますので、アイデンティティや価値観を書き換えるためには、相当なインパクト×回数が必要です。しかし、私は人を変えることが仕事です。別の言い方をすれば、人を変えられなければ、仕事をしたと認められず、二度とオファーをいただけなくなります。人の意識を変える手順──正しい「場」を設計するでは、どのように変えているか?それは、ニューロロジカルレベルの下の階層から変えていっているのです。まず最底辺の⑤「環境」を整えることから始めます。環境は「場」とも言い換えられます。人は周囲の環境や場に影響を受けやすいものです。まわりがやっていれば、自分もやらないとまずいと思い、実行します。逆にまわりがやらない場だと、自分もやらなくていいかなどと思ってしまうものです。図書館に行ったほうが、勉強が捗るのはまわりは勉強していて、スマホを見たり、ゲームをしたりする人がいないからです。たばこを1日に1箱も2箱も吸う人でも、禁煙の場所であったり、乗り物に乗っていたりするときは吸いたい気持ちはあっても止められるものです。これも場の力です。つまり、場ができていれば、行動は変えられるのです。ですから、その場にいる人があたりまえに行動すべきことをルールとして設定して、まずは行動してもらう。行動していればほめられる、行動していなければ叱るという場を設計します。すると、行動をするのがあたりまえになり、その行動を繰り返していれば、やがてやるのがあたりまえ化していきます。習慣化していくわけです。そして、行動を繰り返していけば、実力がついていきます。つまり、行動により、過去にはできなかったことができるようになるのです。このように能力は行動により、身につくものです。
【環境→行動→能力】ということです。このマネジメント手法を「壁マネジメント」と言います。詳しくは『結果を出すリーダーほど動かない』(山北陽平・著)をお読みください。コミュニケーション能力は、入社時には必要のない能力このことは、採用基準を設定するうえでとても重要なポイントです。ここでお伝えしたい重要ポイントは、「能力は、のちの教育で引き上げられる」ということです。入社時点で必ず持っていなければならない能力なのか。それとも、入社後の一定期間教育を施すことによって、引き上げられる能力なのか。採用基準を設定する際には、この切り口で整理することが重要です。入社後の教育により、引き上げられる代表的な能力は、「コミュニケーション能力」です。多くの企業で、コミュニケーション能力の高い人財が人気を集めています。以前にもご紹介しましたが、経団連の「新卒採用に関するアンケート調査」で、選考にあたって特に重視した点の16年連続1位となっているのが、コミュニケーション能力です。面接選考が主流ですから、受け答えがしっかりしていたり、自身の言葉で話ができる人ほど評価が高くなるのはある意味仕方がないことです。では、コミュニケーション能力は引き上げられないでしょうか?答えはNOです。いくら話すのが苦手な人でも、それはコミュニケーションをうまく取る方法を知らないだけの場合が多いものです。「後天的に」伸ばせる能力は、採用基準から外す人ができないことをできるようになるには4つのステップを踏みます。これを「学習の4段階」と呼びます。①無意識的無能状態②意識的無能状態③意識的有能状態④無意識的有能状態
④の無意識にでもできるようになるには、①②③のステップを必ず踏んでいくものです。自転車を意識しなくとも運転できるのは、決して初めからではありません。
最初は運転の仕方もわからない状態(①)からスタートします。運転の仕方を知ってもすぐに体は動きません(②)。それなりにトレーニングを積み重ねていくと、なんとかできるようになります(③)。いつしか何も考えなくても、体が勝手にバランスを取り、運転できるようになります(④)。つまり、採用基準を下げてはいけませんが、入社後に鍛えて「後天的に」伸ばせる能力は今すぐに採用基準から外すのです。よく「コミュニケーション能力が高い人歓迎」と記載している求人を見かけますが、あれは「うちの会社に入っても、コミュニケーション能力は高められませんよ。そういう教育はしませんからね」と公言しているようなものです。当然なんらかの事情で、入社時点で必要な能力はあるでしょう。それには、時間軸を分解して、必要となる能力を考えてみることをおすすめします。いずれにしても、教育によって伸ばせるもの、努力すれば伸ばせるものはあります。コミュニケーション能力、笑顔のつくり方などは、訓練次第でいくらでも伸ばせます。英語がしゃべれないのは、単純に訓練が足りないからです。採用基準を柔軟にすべきなのは、今持っている「能力」です。
「価値観」のマッチングを重視する──採用基準を設定する正しい方法③教育しても変えられないもの先の項目でお伝えしたとおり、コミュニケーション能力など、入社後の教育によって伸ばせるもの、努力すれば伸ばせるものがある一方、なかなか変えられないものがあります。それが、「アイデンティティ」と「信念・価値観」です。生まれて数十年もの年月を経て、身につけてきたものが「自分は何者か」というアイデンティティであり、「大切にしている」信念、価値観です。これらは、簡単に変えられるものではありません。いくら教育したとしても、無理なものは無理なのです。少し話は変わりますが、司法統計によると、離婚の申し立て理由で男女ともにダントツの1位なのは、「性格が合わない」ということのようです。男性の6割、女性の4割が「性格が合わない」を理由に離婚しているとのこと。そもそも生まれも育ちも違うわけですから、性格が違うのは当然です。しかし、生活を共にすると、性格の不一致は、積もりに積もって大きなストレスになるものです。話を戻しますが、採用基準の設定においても、「性格のマッチング」「価値観のマッチング」は、非常に重要なファクターの1つです。絶対に外せない採用基準会社にも性格というものがあります。企業規模や給料などが「外見」の情報とするならば、経営理念、ミッション、ビジョン、そしてどんな社員がどんな理由で働いているのかといった情報は、その会社の「性格」を表します。まさに、これまでに事業を展開してきた歴史のなかで大切にしてきた考え方、価値観です。こういった自社の価値観に合う人財かどうかは、外せない採用基準と言えます。採用は結婚と同じです。互いに外見だけで選んでいたら、長続きしないことでしょう。特に、転職者は、今の勤め先の考え方、やり方が合わなくて、新しい環境を求めている
ケースが多いため、転職先を「性格」で選ぼうとする傾向が強いものです。リーマンショックや東日本大震災が起こり、全般的に働くことに関する意識に変化があると言われています。新卒学生が、就職先を決める際のポイントに変化が見られています。ディスコの「2019年卒採用マーケットの分析(就職・採用戦線総括)」によると、就職先企業を最終的に決めた理由のトップは、「社会貢献度が高い」(32・1%)となっています(出典:ディスコ「2019年卒採用マーケットの分析(就職・採用戦線総括)」。就職先の決定においては、会社ホームページ、説明会、選考、社員とのかかわりなどを通じて、自分自身に合っているかを総合的に判断するものです。その判断材料のなかでも、「社会貢献度が高いか低いか」がトップというのは、どういうことか。つまり、自身の価値観と企業の価値観が合っているかどうかを重視する傾向にあると言えるでしょう。なぜなら、社会貢献度は、企業規模や給料などの「外見」情報ではなく、経営理念、ミッション、ビジョン、社員行動指針などの「性格」情報だからです。「価値観と価値観とのマッチング」こそ、真のマッチングです。いい人財を「集める」ではなく、いい人財が「集まる」会社の採用基準ドラッカーも著書『非営利組織の経営』のなかで、組織と個人の価値観のマッチングについて述べています。得るべき所はどこかとの問いへの答えが、いま働いている所ではないということであるならば、次の問いは、それはなぜかである。組織の価値観に馴染めないからか。組織に緊張感がないからか。そのようなとき人は確実にだめになる。組織の価値観が自らの価値観に合っていないならば、人は自らを軽く見るようになる。(中略)組織が腐っているとき、自分が所を得ていないとき、あるいは成果が認められないときには、辞めることが正しい道である。この本を監修してくださっている坂本光司先生の著書『日本でいちばん大切にしたい会社1』でも取り上げている伊那食品工業の塚越会長も著書『年輪経営』のなかで、次のように述べています。
人というのは特に若い人は、心の底では正義感を持っている。会社や経営者が、反社会的なことをしていれば、社員のモチベーションは確実に落ちる。反対に、自分たちのやっていることが、「世のため、人のため」になると確信できれば、どんなに苦しくても頑張って働こうと思うもの。「間違った世の中を正してやろう」くらいの気概を持った経営者に、社員たちはついてくる。第4章では、どのように自社の価値観を伝えていけばいいか?そして、どうすれば求職者の価値観を知ることができるか?その方法について解説します。「働かせてみないとわからない」は、求職者の人生を軽視している企業姿勢です。「事業していくうえで大切にしている価値観」と「生きるうえで大切にしている価値観」とがマッチングしているかどうか、真剣に向き合うのが正しい企業姿勢です。その姿勢を持っている会社に人は惹かれ、集まってくるのです。だから、採用基準を下げてはいけないのです。「価値観が合う人を採用する」この採用基準に満たない人は絶対に採用しない。採用人数は妥協しても、採用基準は妥協してはいけません。「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を受賞するような会社の採用基準は、経営理念や社風に合った人財かどうか。まったく違う価値観を持つ人を採用して組織運営をするのは大変です。「金で雇われた兵士」と「志を持った兵士」とが戦ったら、どちらが勝つかということです。大企業は、傭兵(※)ばかりの集団です。※金銭などの利益により雇われ、直接に利害関係のない戦争に参加する兵。中小企業こそ、「経営理念」という共通の目的や価値観を掲げ、これに共感する人を集めること、そして、組織にしっかり浸透させねば勝てません。共通の志を持って戦ってくれる人財を採用しましょう。家族だけで経営するなら、「理念経営」はいらないでしょう。しかし、血のつながりのない他人を入れるとしたら、価値観に共鳴できる人を採用しなければなりません。価値観の合わない人財を採用してしまうと、社内に不協和音が生まれます。採用がうまくいっている企業は、経営者自らが人財採用の先頭に立ち、価値観のマッチングを行ない、求める人財を獲得しています。面接官の主観に左右されない採用基準を設定するコツ
コンサルティングに入ったある企業では、特徴的な問題が発生していました。最終選考の不合格者が異常に多かったのです。その原因を確認したところ、あることがわかりました。それは、一次選考で明確な採用基準がなく、上がってくる候補者の質にバラツキがあり、社長がひたすら落としていたのです。社長も社長で、なぜ落としたのかをいっさい言語化せず、「もっといい人財はいないのか」と言うだけ。一次面接を担当する人事課の社員も感覚的に面接しているような状態でした。そこで私は、この会社で成果を出す社員とはどんな要素を持っている社員なのかを言語化することから始めました。成果を上げるために必要な要素は会社ごとに異なりますから、職務を遂行するうえで欠かせない要素はもちろんのこと、社内で高い実績を上げている社員をピックアップして、共通して見られる特徴的な能力や行動特性を実際に見て、分析していきました。さらに、全社員に適性検査を受けてもらいました。分析を人間だけで行なうと主観が入り込むためです。適性検査の結果、高い実績を上げている社員に共通する要素が判明しました。それをもとに、採用基準を設定しました。さらに、その採用基準が自社に必要な理由(論拠)も言語化することで、複数の面接官が対応する場合でも、ブレずに選考ができるようになりました。採用基準が抽象的である場合、面接官によって判断にバラツキが生じてしまいます。同じ面接官であっても、そのときの気分や前後の候補者との比較で、判断にバラツキが生じることもあります。人間は感情を持っているので、そのときの自身の状態や、価値観に基づいた主観によって評価が左右されてしまうことがあるのです。この会社は、あらかじめ明確な採用基準の設定とその論拠を示しておくことで、複数の面接官が、正しく公平に候補者を評価することができるようになりました。
「誰が採用するか」で採用の質は変わる人生を変えた1冊の本と1本の電話ここで、少しだけ私自身の話をさせてください。すでにお伝えしたとおり、私はもともとダメダメ営業マンでした。そんなダメダメ営業マンが変わるきっかけは、突然訪れました。精神的に追い込まれ、出勤途中に体調不良に襲われていたどん底にいた時期です。その日、私は本屋にいました。その日も営業会議で〝ド詰め〟に遭い、そのまま自宅に帰る気になれず、寄り道をしたのです。時間を潰せればどこでも良かったのですが、たまたま目についた本屋に何気なく立ち寄ったのです。本屋に入り、無数の本たちに囲まれた私は、特にあてもなく立ち読みでもしようかと、雑誌コーナーに歩みを進めました。すると、その途中で、私の視界に飛び込んできたものがありました。それは、ビジネス書の新刊コーナーに置かれていた1冊の営業本でした。導かれるように手に取り、そのままレジに向かっている自分がいました。貪るように読みました。すぐに著者の出版記念セミナーに申し込み、セミナーのあと、著者にサインをもらうついでに名刺交換をしました。勇気を出して、Facebookで友達申請をしました。案外あっさりと友達承認をもらい、時々メッセージをいただくようになりました。その著者の本は、過去のものから順番に読み進め、すべてを読破しました。それから私は変わりました。まず行動が変わりました。そして結果が出始めました。すると思考が変わりました。考え方が前向きになり、どんなことでも積極的に進んで取り組むようになりました。周囲の目も明らかに変わっていきました。認められる環境は、行動をさらに加速させました。驚くほどに人脈が広がり、仕事のオファーがひっきりなしにやってくるようになりました。もはや神がかっていました。気づくと、私はトップセールスになっていたのです。あの
本を手に取って、1年ちょっとの出来事です。ある日、その著者と何人かで会う機会がありました。その日の夕方、著者から私の携帯電話に着信がありました。仕事のアポイントが入っていたので、時間を置いてあらためて折り返すと、著者は言いました。「酒井さん、私と一緒に働きませんか?」「何をするか」より「誰とするか」私は今の会社に何をするかわからないまま入社しました。「そんなのは嘘だ!」と思われるかもしれませんが、事実だから仕方ありません。何をするかわからないけれど、「この会社に入らなければダメだ」と直感が働く、実はその前に、「お願いします」と入社を決めました。なぜそんな決断をしたのか?答えはシンプルです。一緒に働いてみたいと思っていた人からのお誘いだったからです。その人物こそ、弊社社長、横山信弘です。誘いを受け、その場で「はい、お願いします」と返事をしました。あのときの光景は今でも鮮明に覚えています。採用基準について整理したところで、『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』に書かれていることをあらためて振り返っていただきたいので、再び引用します。偉大な企業への飛躍をもたらした経営者は、まずはじめにバスの目的地を決め、つぎに目的地までの旅をともにする人びとをバスに乗せる方法をとったわけではない。まずはじめに、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決めている。「何をするか」より「誰とするか」。第4章では、いい人財を採用するために具体的に「何をするか」を論じていきます。いい人財を集めるためにやるべきこと、いい人財かどうか見極めるためにやるべきこと、そしていい人財に自社を選んでもらうためにやるべきことです。しかし、それより大事なことがあります。それは、採用活動を「誰がするか」ということです。採用とは、人財を供給する活動
営業パーソンの役割は、「仕事」を獲得すること。採用パーソンの役割は、「人財」を獲得すること。「今さら何を言っているの?あたりまえでしょ」と思うかもしれませんが、とても大事なことなのでお付き合いください。なんらかの商品を手に入れたいと思っているお客様に対して、そのお客様に合った適切な商品を提供するのが営業パーソンです。つまり、お客様の需要に対して、適切な商品、サービスを提供するのが営業の役割だということです。お客様の視点に立って、先回りして提案する営業ほど信頼を獲得し、さらにご用命をいただいたり、ご紹介をいただいたりして、正のスパイラルに持っていくことができます。このお客様と営業との関係は、採用活動に当てはめてみるとどうなるでしょうか?例えば、お客様が会社。営業パーソンが採用担当者。間接部門しか経験したことのない人財が採用担当をしているとしたら、うまくいかない可能性があります。減点主義の世界しか知らない人に、加点主義の世界は未知の世界です。人財は、会社の未来に直結する存在です。そんな未来をつくる人財の供給を担う業務は、自分は間接部門の人間であるというアイデンティティが強い人財に任せてはいけません。会社の未来につながる「直接部門」の仕事なのだというスタンスから合わせていくことが必要です。採用担当にふさわしい人、ふさわしくない人採用担当者に求められる要素は多様です。◎ライティング力◎プレゼンテーション能力◎ヒアリング力◎商談力◎クロージング力バランスのいい完璧な人財はなかなかいません。組織全体で得手不得手を補いつつ、採用プロジェクトの運営体制(採用チーム)を構築すべきです。一番即効性のある方法は、トップセールスを採用担当にすることです。会社の魅力を伝えるのが一番うまいだけでなく、その人自身が魅力的だからです。
採用担当者のイメージが、その企業のイメージに直結します。いわば、採用担当者は、会社の象徴なのです。採用担当者が親切な人だと、志望度やイメージも高くなる傾向があります。営業は、自社の商品、サービスが好きな営業ほど売れるものです。自社の事業が好きでない、事業の将来性に不安を持っている。もしそんな人物が採用担当者だったら、何をやってもうまくいきません。もしそのような人財が社内にいなければ、選択肢は3つです。◎採用担当の実績がある人をヘッドハンティングをする。◎採用コンサルティングを受ける。◎社長自ら採用担当者になる。3つ目の社長自ら採用担当者になるという視点は、とても重要です。会社のビジョン、性格を心得ているのはもとより、相手に本気度が一番伝わるからです。
採用する「人数」と「期限」を定める──どう採用するか①なぜ「期限」設定が必要なのか?ここまでお伝えしてきた考えに則り、「①採用する人財の基準を決め」、「②採用活動を担う人財を選定」したら、次に行なうことは、「目標設定」です。目標を設定しない限り、そこに焦点を合わせてスタートすることはできませんから、まずは採用したい【人数】を定めます。そして、いつまでにその人数を確保させるのか【期限】を設定します。意外とやっていないのが、後者の期限設定です。なぜ、期限設定が必要かというと、期限が曖昧になっていると、逆算して計画を立てることができないからです。集合場所は決まっているけど、集合時間が決まっていないようなものです。集合する場所と時間が決まって初めて、その到着している状態から逆算して、具体的な行動ができるものです。採用においても同様で、9月までなのか、12月までなのか、翌年の3月までなのか、その期限によって、戦術は変わってきます。目標は、必ず期限がセットです。期限を決めておかないと、ズルズルと採用活動が長期化してしまいます。まずは採用する【人数】と【期限】を明確に設定してみてください。理想的な期限設定新卒採用の場合は、基本は、学生が在学中に採用活動を行ないます。ということは、遅くとも3月31日までに採用決定および内定承諾を受ける必要があります。では、3月31日までを期限にすればいいかといえば、それは違います。その期限設定ではリスクが高すぎます。特に現在の採用活動のトレンドは、「早期化」です。2019年3月卒学生の場合、10月1日時点で、内定を受け、就職活動を終了した学生の割合は85・9%というデータがあります(出典:https://www.disc.co.jp/press_release/6505/)。
ちなみに、9月1日時点では80・0%、7月1日時点では63・4%です。この早期化傾向は年々高まっています。秋以降でも学生は残っています。留学や部活動などのスケジュールにより、就職活動が十分にできずに、秋から本格的にスタートする学生もいます。掘り出し物の学生と出会える可能性は十分にあります。ただし、そこを当てにしすぎるのはいけません。また、秋にその年の採用活動が続いているということは、翌年の採用活動に影響を及ぼすことにもなります。ということで、基本は9月末を1つの節目に期限設定することをおすすめしています。中途採用で「期限なし」は危ないなお、中途の場合でも、期限設定は重要です。なぜなら、それにより、活動の優先度が変わってくるからです。例えば、紹介会社に依頼する場合、「いい人は欲しいけど、期限はないので、いい人がいたら紹介して!」と依頼した瞬間、その担当者の頭からは御社の情報は消え去ります。急ぎで採用したいとオーダーしている企業が膨大にあるからです。期限設定1つで、紹介会社の担当者の動きが変わるのです。ですから、仮でもいいですから、何らかの理由をつけて、「〇〇月までには遅くとも採用したいから、なんとかお願いします」と期限設定をするようにしましょう。目標には期限が必須です。まずは仮でもいいので、期限設定をしてください。
採用戦略・シナリオをつくる──どう採用するか②戦略がなければ、どんな戦術も効果なし採用基準に合致した人財を必要な人数、期限内に確保するために、「戦略」と「戦術」を立てていきます。「戦略」と「戦術」、この違いを解説するものは多数ありますが、例えば、Wikipediaには以下のように解説されています。◎戦略とは、一般的に特定の目的を達成するために長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術、科学である。◎戦術とは、作戦・戦闘において任務達成のために部隊・物資を効果的に配置・移動して戦闘力を運用する術である。……わかるようでわからない感じです。私は、このように解釈しています。戦略とは、「目的、目標を達成させるために、全体を俯瞰したシナリオ」。戦術とは、「シナリオを実現させるために、その都度やるべき部分的アプローチ」。数多くの現場支援に入っていると、戦略がない状態で、目の前の仕事に執着しているリーダー、マネジャーが非常に多いと、いつも思います。営業であれば、「目の前の相手から契約を獲得するためには、どうすればいいか?」採用であれば、「内定を承諾してもらうためには、どうすればいいか?」このように「どうすればいいか?」と考えていたら、「今、自分は戦略ではなく、戦術を考えている」と認識してください。戦術とは、「やり方」です。英語で言えば、「Howto」です。「戦術」も大事ですが、その前に立てなければならないのは「戦略」です。なぜなら、いくら戦術に長けていて、目の前の相手を順番に倒していく戦闘力があったとしても、目標が達成できるかどうかは別だからです。
目標を達成させるためには、「全体を俯瞰したシナリオ」が必要です。最低でも目標は達成できる、そんなシナリオをつくるのです。数値化して、全体を俯瞰して管理する──採用パイプライン採用目標を達成させるためには、採用活動のプロセスを分解し、全体を俯瞰したシナリオを設定し、進捗を管理することが必要です。私は、この管理手法を「採用パイプライン」と名づけました。「パイプライン管理」とは、そのプロセスをパイプライン(管路)にたとえ、入口から出口までを見える化し、分析する管理手法です。営業活動であれば、「初回訪問」から「受注」までの流れを管理するのが一般的です。採用活動であれば「初回接点」から「内定承諾」までの流れを管理していきます。例えば、「採用目標人数が10人だとしたら、20人には内定通知は出す必要があるな」「内定通知が20人なら、最終選考には30人は必要だな」「最終選考を30人やるには、一次選考には60人は必要だな」「一次選考を60人やるには、会社説明会には100人来てもらわないといけないな」「会社説明会に100人来てもらうには、………」と逆算して、設定するのです。この設定は、なんとなくの感覚でやってはいけません。必ず、客観的な事実に基づいて設定しなければなりません。客観的な事実とは、前年の実績です。前年のデータが数値化されていればいいですが、整理されていなければ、◎内定承諾「」人◎内定通知「」人◎最終選考「」人◎一次選考「」人◎説明会参加「」人と、名簿やリストから数値化してみましょう。そして、前年の実績を踏まえて、逆算してシナリオを描くのです。
採用パイプラインを使ったシナリオ作成例実際にコンサルティングに入っている企業で行なったシナリオ作成を例に解説します。その企業は、前年、新卒採用目標10人に対して、採用実績は5人でした。つまり、未達成です。未達成ということはどこかに問題があるのです。では、どこに問題があるかを特定しなければなりません。特定するうえで行なうべきは数値化することです。そこで、最終的に5人に至ったプロセスを数値化してみました。◎内定承諾「5」人◎内定通知「20」人◎最終面接「25」人◎適性検査「50」人◎個人面接「80」人◎集合面接「200」人◎説明会参加「400」人数値化してみると、このようになりました。次に行なうのは、それぞれのプロセスの歩留まり/コンバージョン率(CV率)を出します。◎内定承諾「5」人↑25%◎内定通知「20」人↑80%◎最終面接「25」人↑50%◎適性検査「50」人↑62・5%◎個人面接「80」人↑40%◎集合面接「200」人↑50%◎説明会参加「400」人
このように各プロセスを数値化していなかったため、数値化することによって社長も採用担当者も初めて全体を俯瞰して現状を捉えることができました。そうすると、どこのプロセスに問題があるのだろうかと、必然的に考え出します。一緒に、10人を採用するための「あるべきプロセス」を考えていきました。前年の現状を捉えたうえで、10人の採用目標人数を達成させるシナリオを設定していったのです。最低でも目標達成させるためには、どのようなシナリオが最適なのか?議論を重ねた結果、次のようなシナリオができ上がりました。◎内定承諾「10」人(前年5人)↑40%(前年25%)◎内定通知「25」人(前年20人)↑83・3%(前年80%)◎最終面接「30」人(前年25人)↑50%(前年50%)◎適性検査「60」人(前年50人)↑50%(前年62・5%)◎個人面接「120」人(前年80人)↑33・3%(前年40%)◎集合面接「360」人(前年200人)↑80%(前年50%)◎説明会参加「450」人(前年400人)
この企業の場合は、次の3つのポイントで、パイプラインを分析し、改善目標を立てました。①説明会参加人数のアップ(前年400人→450人)②説明会から集合面接へのCV率アップ(前年50%→80%)③内定承諾率のアップ(前年25%→40%)やるべきことをやっていないだけで、しっかりやれば、改善する余地が十分にあると捉えたからです。このように、数値を洗い出し、全体を俯瞰したシナリオ、つまり戦略を立てることが重要です。採用目標達成から逆算したシナリオを明確にせずに採用活動を行なうのは、数百キロ先の目的地に向けて、案内標識のない一般道をカーナビも地図もなく、目指すようなものです。「採用パイプライン」で目標達成に向けたシナリオを設定してみましょう。シナリオを設定したら、その次に行なうのは、そのシナリオを実現させるための戦術立案です。次章で解説していきます。
採用がうまくいっている会社の戦術とは?作成した戦略をどう実現するか?採用は勝ち負けです。企業が生き残っていくためには、人で勝ち続けなければなりません。「人が採れれば、経営計画が達成するんだけど……」という言葉の裏には、「人が採れなければ、経営計画が達成しない」という言葉が隠されています。人財採用を「たられば」でやる会社には明日はありません。第1章では、採用が経営に与える影響、第2章では、採用がうまくいかない会社の特徴、第3章では、採用基準、採用担当者の重要性、採用戦略の基本と、順を追ってご紹介してきました。第4章では、採用を成功させるための具体的なステップについて解説します。第3章の最後の項目では、採用目標を達成させる戦略立案として採用パイプラインを用いた、全体を俯瞰したシナリオづくりについてご紹介しました。450人→360人→120人→60人→30人→25人→10人というように、最終的に達成させるシナリオを描きましたが、シナリオを描けば自動的に達成できるなら、苦労しません。大事なのはここからです。どうやってこのシナリオを実現させるか。つまり、「どうやったら、説明会への参加を増やすことができるか?」「どうやったら、選考に進んでくれるか?」「どうやったら、適切な人を見抜くことができるか?」「どうやったら、自社を選んでくれるか?」ということを考えていかねばなりません。この第4章では、採用がうまくいっている企業が実践しているノウハウを交えながら、
具体的な戦術のステップをお伝えします。
御社を「知らない」から応募がない──いい人財を集める①人は未知のものを怖がり、不安だから近寄らないあなたには、「怖い」ものはありますか?私にはあります。例えば、死後の世界です。「自分が死んでしまったらどうなってしまうんだろう」なんてことをたまに考えたりします。この意識は消えてしまって、どこに行くのだろうか?何もなく消えてなくなるだけなのだろうか?考えても答えは見つかりません。ただ残るのは、「怖い」という感情だけです。人が「怖い」とか「不安」とか感じるものは、未だかつて自身が経験したことがない事柄です。私はバンジージャンプをやったことがありません。そして、やりたいとも思いません。想像するだけで足がすくむ感覚を覚えます。これも、やったことがないから怖いのです。やり続けてみたら、案外慣れていくものかもしれません。なぜそう思うかというと、私は以前怖いと思っていたことが今では怖くなくなっているという経験をしているからです。例えば、自動車の運転。私は自動車学校に通い、運転する前までは自分も運転ができるかどうか不安で、運転している自分が想像できませんでした。他にもあります。営業という仕事。就職活動でも営業職には一社も応募しませんでした。むしろ営業だけはやりたくないと強く思っていました。さらには、大勢の人の前でしゃべること。私は小さい頃から人前に出てしゃべるということが大の苦手でした。就職してからも、人前でしゃべるような機会があると緊張して、失敗を重ねてきました。自動車の運転。営業という仕事。大勢の人の前でしゃべること。これらはいずれも経験したことがなかったり、少し経験をした結果、苦手だと思っていたことです。
人は、「知らないこと」「未知のこと」を「怖い」と捉える性質があります。私にとっての「自動車」も「営業」も「人前でしゃべること」も、どうやったらうまくいくかわからないから、「怖い」という感情を抱いていたのです。知らない=怖い得体の知れないものは怖いもの。死後の世界を怖いと感じるのは多くの人にとって共通のことでしょう。「お化け」はまさに得体の知れないものだから、怖いのです。ここでズバリお伝えします。求職者にとって、あなたの会社は「お化け」なのです。なぜなら、得体の知れない存在だから。知られていない中小企業は、「お化け」みたいなものですから、単純に怖いのです。ましてや、今は「ブラック企業」という言葉がメディアだけでなく、日常でも頻繁に使われるようになりました。学生も中途求職者も、絶対に「ブラック企業」には就職したいと思っていません。中小企業というだけで、ブラック企業かそうじゃないかと吟味しています。なぜなら、あなたの会社のことを知らないからです。ただし、まだ社会人として働いた経験のない学生にとって、ブラックかそうじゃないかという識別は本来できません。「理解=言葉×体験」ですから、社会人としての就業経験がなく、ましてや複数企業で働いていない学生に、本当の意味で企業を見分ける力などないのです。あなたの会社がどんなにいい会社であったとしても、それが学生や親や学校や地域社会に知られていなければダメなのです。「知られていない」これが採用がうまくいっていない企業の共通点です。「知らない」を「知っている」に変える努力をしているか?「有名企業=応募多、中小企業=応募少」を生み出す根本は、ここにあります。AIDMAという消費者の購買時の心理プロセスを分解した概念がありますが、消費者も、最初のA(認知)が購買時のプロセスのファーストステップなのです。あなたの会社が採用できないのは、求職者にとって「お化け」のような存在だからです。「中小企業=ブラック企業かもしれない」と色眼鏡で見られているからです。ですから、「知らない」から「知っている」という状態にしなければ、始まりません。
いかに、いい会社かということを知ってもらいましょう。知ってもらう方法はいくらでもあります。
自社を「知ってもらう」方法──いい人財を集める②採用の4Pマーケティング戦略マーケティング用語で、4Pという用語があります。「Product」(製品・商品)、「Price」(価格)、「Place」(流通)、「Promotion」(プロモーション)の4つを指します。この4つのPを組み合わせながら、最適なマーケティング手法(マーケティング・ミックス)を考えるのが基本です採用においては、私は4Pを以下のように定義しています。◎Product:自社そのもの◎Price:自社で働くことで得られる価値◎Place:自社の採用基準に合った人財◎Promotion:自社を知ってもらう活動自社そのもの、そして働くうえでのあらゆる価値を求職者に知ってもらう。つまり、どのような方法でプロモーションをすれば、知ってもらえるか、自社に合ったやり方を見つけ、実践していくことが必要です。自社を知ってもらう方法現在は、このプロモーションの方法が非常に多くあります。ありすぎるほどあります。求人の歴史をたどれば、新卒の場合、1952年に、大学が企業からの採用申し込みを受け付けるようになりました。その10年後の1962年に大学新卒者向けの求人情報誌が創刊されました。大学新聞広告社(現在のリクルート)が創刊した「企業への招待」です。1980年代に入ると、特化型求人専門情報誌が登場し始めます。1997年頃、大手の一部からインターンシップ制度への取り組みが開始されます。1998年からは、IT技術の革新に伴い求人広告市場は紙からインターネットにシフトしていきます。Web求人広告が主流となり、応募(エントリー)もWebで行なうようになり、2000年代はその流
れが加速していきます。2000年代後半からは、スカウトサービスが台頭してきます。今までは求人媒体掲載、人材紹介会社に依頼して、あとは応募を待つというスタイルでしたが、企業から求職者に直接オファーを出すようになったのはこの頃からです。今では、SNSを使った「ソーシャルリクルーティング」、社員紹介(リファラル採用)、マッチングプラットフォームサービスの活用などの「ダイレクトリクルーティング」で、攻めの採用を行なうようになっています。「採用マーケティング」という考え方で、あらゆるチャネルやデータ、テクノロジーを用いて、より効果的な採用活動を行なう手法も登場してきています。「リアル」「早期化」重視の時代このように、採用活動はかつての「待ちの姿勢」から「攻めの姿勢」へと変化しています。もはや「待ちの姿勢」で、いい人財を獲得するなんてできません。HR総研が行なった「2019年&2020年新卒採用動向調査」では、2020年新卒採用においてより重要になると思う施策に対する採用担当者の回答がまとめられています(出典:ProFuture株式会社/HR総研「2020年新卒採用でより重要になると思う施策〈複数回答〉」https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=228)。1位「インターンシップ」44%2位「自社セミナー・説明会」42%3位「自社採用ホームページ」30%4位「学内企業セミナー(3月以降)」24%5位「学内企業セミナー・OB/OG懇談会(2月以前)」22%6位以下が、6位「キャリアセンターとの関係強化」21%、7位「インターンシップ・業界研究セミナー(2月以前)」18%、7位「逆求人(オファー型)サイト」18%、9位「就職ナビ」16%、9位「内定者フォロー」16%、11位「リファラル採用」15%、12位「就職ナビ主催の合同企業セミナー」13%、12位「リクルーター(OB/OG)の活用13%、14位「理系研究室訪問」12%、14位「面接官トレーニング」12%、16位「入社案内」9%となっています。
待ちの姿勢でなく、もはや攻めるのが前提で、企業側が具体的にどのように攻めることを重要だと捉えているのかを示す調査データですが、やはりトレンドは、「リアル」と「早期化」であることがわかります。1位「インターンシップ」(44%)、2位「自社セミナー・説明会」(42%)と続くことから、「リアルな接触」を重要と捉えていることがわかります。また、3月以降の学内企業セミナー(24%)、就職ナビ主催の合同企業セミナー(13%)ではもはや遅く、インターンシップから候補者集団を形成することを重要視しており、実際に年々「早期化」が進んでいます。この傾向を受け、大学側でも早期に「業界研究セミナー」や「OB/OG懇談会」を開催して、リアルに学生が企業と接点を持つ機会を提供するようになっています。他にも「逆求人(オファー型)サイト」(18%)、「リファラル採用」(15%)といった施策も実施もしくは検討していることから、これまでの手法(主にマスアプローチ)だけでなく、いろいろな採用手法を模索する傾向がわかります。そこまで考えていないという読者の方は、危機感を持ったほうがいいでしょう。採用ターゲットに自社のことを知ってもらうというのは、採用活動における出発点ですから、能力的にも志向的にも自社とマッチした人財を探し、出会う方法は見直してみたいところです。ご参考までに、ダイレクトリクルーティングの一例として、サービスサイトを挙げておきますので、チェックしてみてください。◎サイトに登録した学生情報を見て、企業側からオファーを出す「逆求人」→https://www.studenthunting.com/◎企業単位でなく、OBOGの人単位でのマッチングをサポートする「Matcher」→https://matcher.jp/強くて愛される会社がやっていることここで、実際の企業で実施されている事例をご紹介します。◎有限会社原田左官工業所(東京都)2017年の第8回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で審査委員会特別賞を受賞した会社です。同社は、職人の減少・高齢化が進む左官業界において、若者・女性を積極的に採用し、職人の育成に取り組んでいます。
昨今の左官業界では、職人の急減と高年齢化が大きな課題となっています。左官業は、人の手作業により支えられる現場ですから、「人」が財産であり、良い職人を育てていくことが業績拡大にもつながるビジネスです。そこで同社の原田社長は、左官職人を増やすために、自ら東京左官技能者育成協会を立ち上げています。同協会は、東京都から認定職業訓練コースとして認定され、次世代の左官職人を育成しています。東京左官技能者育成協会HP:https://www.sakan.tokyo/この他にも、同社では「職人を育てる」ことを強く意識し、また対外的にもPRしていくことで、左官職人に魅せられた意欲ある若者や女性を積極的に採用しています。◎清川メッキ工業株式会社(福井県)2014年の第5回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で中小企業庁長官賞を受賞した会社です。同社では、1997年より毎年、「めっき教室」という出張授業を小学生から大学生を対象に行なっています。めっき教室では、「職業を選ぶときに大切なこと」を、まず家庭で話し合いを行なってもらってから、授業を迎えます。その後、グループディスカッションを経て、清川メッキ工業の考える「大切なこと」を話し、子どもたち(保護者)との思いのギャップについて話し合います。最終的に、学校で学んだことがいかに社会で大事なことであるかを、めっき実験を通して体験を行なうという流れです。この活動を通じて、「働くこととは、地域や自分自身を知ることで世界を理解でき、利他の精神で社会に役に立つ喜びを実感することである」ことを伝えています。詳しくは、こちらをご覧ください。https://www.kiyokawa.co.jp/omotenashikeiei/もはや企業が行なうキャリア教育です。しかし、ホームページには「決してこの活動は、ボランティアではありません」と書かれています。ホームページには続けてこう書かれています。人材育成活動、組織強化活動、社会還元活動、ブランド発信活動であり、一言でいうと「社会投資活動」です。株や買収といったマネーゲームに投資して、お金としての利益を得るのではなく、社員のみなさん、福井の子ども達へ投資をして将来の「お金で買えない利益」を得る活動です。お金で買えない利益とは?それは、「信頼・安心・人材・人脈」です。将来の「お金で買えない利益」とは、地域の人たちが、同社の存在を誰もが「あの会社はいい会社だよね」と知っている状態です。
就職活動を始める大学2年や3年になって初めて知る会社とは、スタートラインが違うのです。親から内定辞退を受けてしまう会社とは一線を画していると言えます。この話を経営者や採用責任者の方にすることがあります。すると、「そうは言っても、なかなかできることではないですよね」とか、「どうしてそこまでやるのか?」という表情をされることが少なくありません。読者のあなたはいかがですか?あえて私は言いたいです。「どうしてそこまでやらないんですか?人財がすべてなんでしょ?」と。将来を共に生きるパートナーを見つける活動なのだから、それくらいやるのがあたりまえ。これが採用のうまくいっている会社のあたりまえなのです。うまくいっている会社は、採用活動を命懸けでやっています。自社に合った採用方法の見つけ方何が自社に最適かどうかは、いろいろとやってみないとわかりません。これにはPDCAを回していくしかありません。日頃、経営をしているなかで実践していることを採用でもやればいいだけです。「あらゆることをたくさんやってみて、その結果を検証して、次に進んでいく」これを繰り返していかない限り、自社に合った方法は見つけ出していくことはできません。ですから、私もコンサルティングに入った1年目は、「あらゆるやり方があること」「他社事例」は情報提供しますが、「これがいいから絶対に使いましょう」とは言いません。いや言えません。あるべき姿と現状とのギャップが問題です。その問題を解決する切り口の1つがプロモーションです。そのプロモーションのやり方は膨大にあります。家を建てたいと考えたとき、住宅メーカーやら工務店、設計事務所など、膨大にありすぎて悩んでしまうのと同じです。ただ家は専門家に任せないと建てられませんが、人財は専門家に任せなくても採用できます。外部の力に頼りすぎていると、自力で採用する力が身につきません。何年採用活動をしていても、いつまで経っても、再現性がないのです。外部に任せすぎると、ノウハウが自社にストックされていかないのです。営業活動を外注すると、いつまで経っても売る力が身につきません。売れないことを外部のせいにします。問題は商品力のせいかもしれません。ユーザーが本当に求めている商
品・サービスではないかもしれません。アプローチしている対象が間違っているかもしれません。アプローチのやり方が間違っているかもしれません。PDCAを正しく回し、勝ち続ける状態をつくり出すための鉄則は、必ず自ら計画を立て、自ら実行し、成果が出ていないとしたら自らの責任とし、自ら改善計画を立てることです。どんなやり方に手を出すにしても、この姿勢を持ちさえすれば、いずれ自社の勝ちパターンを見つけ出すことができるのです。
エントリーは、「量」より「質」──いい人財を集める③量に比例してかかる3つのコストもし、あなたが10人を採用したいと考えたときに、何人を集めるのが理想だと考えますか?50人ですか?100人ですか?200人ですか?300人ですか?それとも1000人ですか?答えは、10人です。理想は、10人を採用するために、10人の候補者を集め、10人全員を採用すること。ただ、これはあくまでも理想です。なかなかこのとおりにはなりません。でも、これが採用活動における理想であり、「あるべき姿」です。なぜなら、採用活動には膨大な時間と費用と労力がかかります。「時間的コスト」「金銭的コスト」「精神的コスト」です。エントリーする人数が多ければ多いほど、この3つのコストは増えていきます。①時間的コスト時間的コストとは、アプローチに対してリターンが得られるまでの時間です。エントリー数が多ければ多いほど、次のスケジュールを組むのに時間を要します。面接の日程を決めて返事があるのを待つのも、10人と100人だったら10倍の時間差が発生します。それらは、雪だるま式に増えていき、採用業務を圧迫していきます。また、応募者の時間的コストも奪っていくことになります。私がコンサルティング支援に入っていつも気にかけているのは、採用担当者の業務配分です。「弊社は、残業がないですよ、休日出勤はないですよ」と言っている採用担当者が、時間外に学生と面接していたり、休日に会社説明会をしていたりしたら、説得力がないでしょう。嘘をつく人、言行一致でない人は信頼されません。世の中の原理原則です。②金銭的コスト金銭的コストも馬鹿になりません。
pdf)。※2019年新卒採用において、1社ごとに採用費を入社予定の人数で割った数値の平均値。エントリーが多ければ多いほど、説明会の会場費もかかります。配布資料の部数も増えますから、単純にお金がかかります。他にも、30人に内定を出して、その中から10人の内定承諾を狙ったとしたら、30人にフォローが必要になります。食事会をセッティングしたり、懇親イベントを開いたり……。理想は、これらのことをしなくとも、最終選考に来た10人の学生全員から「もう御社以外は断ってきたので、御社に入れさせてください」と言ってもらうことです。新卒採用には、おおまかに次のようなコストがかかります。。◎就職情報サイト掲載料、イベント出展料などといった【広告費】◎採用ホームページ、入社案内などといった【採用ツール制作費】◎会社説明会・選考会等会場使用料などといった【セミナー運営費】◎電話オペレーターやデータ分析などを外部委託している場合は【アウトソーシング費】大学生・大学院生の求人倍率が上昇している影響もあり、採用単価は、2016年卒45・9万円、2017年卒46・1万円、2018年卒53・4万円と、年々増加傾向にあります。自社では1人を採用するのにいくらの費用がかかっているのか、一度計算してみるといいでしょう。③精神的コスト精神的コストは、苦労やストレスなどです。これは採用担当者にとってもそうですが、見逃せないのは応募者の精神的コストです。エントリー数が増えれば増えるほど、自社の採用基準を下回る人数が増えてしまったとしたら、不採用になる人数が増えるわけです。本来採用されるべき企業を受けに行っていればよかったのに、自社に応募したがためにその機会が奪われているとしたら、応募者にとって不幸と言えるでしょう。自社にとっても、同様です。本来、フォローすべき採用基準に達している人財への接触量が減り、入社動機を高められなくなれば、せっかくの応募者を他社に奪われてしまうことにもなります。
つまり、量が多すぎると、【一人ひとりの単純接触回数が減る】→【入社動機を高められなくなる】→【コンバージョンが落ちる】というサイクルに陥ってしまうのです。採用活動に無尽蔵に自社の戦力(時間、人)を投資できるならいいですが、やはり適正なラインはあります。理想は10人を採用したいなら、10人の候補者を集め、10人全員を採用することです。しかし、それは現実的ではありません。ただ目指すべき「あり方」を間違えてはいけません。10人採用することが目標であって、エントリー求職者を増やすことが目的ではないということです。そのあたりも踏まえて、「採用パイプライン」を設定してみましょう。
「はじめまして」で伝えるべき情報──いい人財を集める④人が動かない4つの理由就職情報サイト、自社サイト、紙媒体、駅広告、合同企業説明会……。自社のことを、初めて知ってもらうタイミングは必ずあります。営業でも、集客でも、広告でも、クラウドファンディングでもなんでもそうですが、人が動かないのには理由が大きく4つあります。1つ目は「知らない」2つ目は「興味がない」3つ目は「忘れている」4つ目は「迷っている」です。動かしたい相手が動いてくれないとしたら、その相手がそもそも今、この中のどの状態にあるかを正しく確認することが必要です。目には入っても、脳には入っていない採用活動においては、動かない理由の大部分が「知らない」という事実です。では、知ってもらうには、どうすればいいか?いろいろな方法があることはすでにお伝えしたとおりです。どんな方法を使うにしても、「人間の認知構造」は知っておいたほうがいいでしょう。それは、「選択的認知」というものです。簡単に言うと、「人は認知するときに選択している」ということです。すべての情報を一律に認知しておらず、「これは認知しておこう」「これはあんまり自分には関係ないから別にいいや」というふうに無意識的に選択しているのです。例えば、突然営業パーソンが飛び込み訪問をしてきて、商品説明を始めたとします。あなたにとってその商品はまったく必要ないし、関係もないし、知っておくべき情報ではなかったとします。その場合、あなたは初めから認知しようとしません。脳の認知ブロックと言えばいいで
しょうか。目には入ってきていても、脳には入ってきていないのです。だから営業パーソンは、ネタがなくてもいいからお客様のところに足を運ばなければなりません。なぜなら一度行ったからといって、認知されていないからです。同じネタでいいから、話に行けばいいのです。どうせ相手は覚えていませんから。「選択的認知」というブロックがありますので、「知らない」を「知る」に変えるのは考える以上にたやすくないのです。「知らない」を「知ってもらう」に変える秘策──「インパクト」×「コンパクト」でも、相手にとって「知らない」を「知る」に変える方法はあります。それは、「インパクト」×「コンパクト」です。就職情報サイトを見ていると、本当に疲れます。もはや就職情報サイトは食傷気味になっています。似たような情報が飽きるほど、載っているからです。私は過去に求人情報サイトを運営していた側なのでわかりますが、どうしても似てきてしまうのです。なぜなら、求人原稿を作成するのは、決まった人たちだからです。私も求人原稿を毎日ひたすら作成していました。自分がつくった切り口がある企業で当たったとします。キラーワードの完成です。求職者の気持ちを捉えて、応募者を増やすことができたわけですから、お客様にたいへん喜んでいただきます。そうすると、他の企業で、同じようなターゲットの募集があった場合に、またそのキラーワードを使います。そうすると、また当たるのです。応募が何倍にも増えます。結局、このキラーワードは、求人情報サイト内にあふれ返ります。その結果、どの企業の求人情報も似たような内容になってしまうのです。そこで考えていただきたいのは、自社ならではのメッセージです。自社が大事にしてきたこと、新しく迎え入れる人財に約束すること、期待すること……。切り口はなんでもいいのですが、自社しか発信できないメッセージをつくるのです。でも、ダラダラ書く必要はありません。なぜなら、基本、全部は読んでいないからです。知らない会社の情報を初めから一字一句読むような人はほとんどいません。だから必要なのは、「コンパクト」です。「はじめまして」の後につなげるべきこと
そして、何より重要なことを最後にお伝えします。それは、「はじめまして」のシチュエーションにおけるゴールです。「はじめまして」の後に何を入れるか?人と人とが出会いました。その後の流れはどうあるべきか?特にビジネスにおいては、「はじめまして」の次こそが重要です。「はじめまして」→「さようなら」ではダメなのです。「はじめまして」→「また機会があれば」でもダメ。「はじめまして」→「次いついつに会いましょう」があるべき姿です。「はじめまして」のゴールは、次の約束を交わすことです。この目的を明確にし、メインメッセージをはっきりさせることが重要です。つまり、採用サイトは、「リアルに会いたい」と思わせることにのみ目的を置かなければなりません。合同企業説明会は、「さらに詳しい話を聞きたい」と思わせることにのみ目的を置かなければなりません。ダラダラと情報を載せるのではなく、「もっとリアルな情報を知りたい」と思わせるメッセージを発することが重要です。その際に、気をつけるべきは、「誰でも入社できるようなイメージを持たせない」ことです。適切な人をバスに乗せるためには、むやみに候補者を集めることはお互いのコスト(時間的、金銭的、精神的)を奪うことになります。ですから、採用基準に合う人財に対して、手紙を書くイメージでメッセージを発するのがコツです。パーソナルにコミュニケーションするつもりで「会いたい」と思わせるメッセージを考えてみてください。自社にとって対象外の人財が、「これは自分に対してではないな」と気づき、応募してこないことも重要なことです。効果的なスカウトメールの書き方「このメール、全員に送っているんだろうな……」こう思われたら最悪です。「自分にだけに送っているんだ」というのが伝わることで、人は動きます。既存のテンプレートをたくさん打つような方法ではなく、送る内容にこだわるべきです。特に学生の場合は、就職活動中、1日に数十通ものメールを受信します。そこで特にこだわるべきは、「件名」です。スカウトメールのうち、最も目に触れやすい部分だからです。メール本文は開封させない限り読ませることはできませんが、「件
名」は受信ボックスにメールが届いた瞬間に読ませることができるメッセージです。ポイントは、ズバリ【特別感】です。件名に、相手の名前を入れることができるなら入れてください。自分に届いたメッセージなら、開封しないといけない気がします。名前を入れられないなら、「○○大学のあなたにだけお伝えしたい案内です」と入れるだけでも違います。本文には、「あなたにしか送っていないメッセージ」であること、そして、なぜなのか理由を記載します。理由がなければ、「そんなの他の人にもどうせ言っているんでしょ」と思われてしまいます。チャラ男のように思われては逆効果です。「だからあなたにスカウトしているんです」といった理由を加えて特別感を演出することで、「わざわざ私にだけ送ってくれたなら、考えてみようかな」と思わせることができます。そういう意味でやってはいけないのは、「〇〇大学の皆様」「〇〇な方は〜」という表現です。なぜNGなのか?パーソナルでなく、マスアプローチであることがわかってしまうからです。実際は複数の学生に同じメールを送っていると、ついついマスの表現を使ってしまいがちです。人というのは、まったく同じメッセージであっても、「1対複数」のメッセージと「1対1」のメッセージでは反応がまったく変わります。人は、「1対1」、つまり、自分だけに対してメッセージを出されると、反応しなければならないと思うものです。例えば、私は研修やセミナーに登壇するときは、この法則を使います。反応が悪い受講者にあえて、「Aさん、これについてはどう思いますか?」などと尋ねたりします。それまで「みなさん、これについてはどう思いますか?」と尋ねていたときは無反応だったAさんも、直接講師から名指しで声をかけられたら、さすがに無視はできません。少なくとも何らかの反応はするものです。スカウトメールでも、不特定多数のメッセージだと反応は落ちます。「私にだけ」というパーソナルメッセージを演出することで、反応率は上げることができます。個別会社説明会の集客に苦労していたコンサルティング先は、これを実践することで、前年より65名多くの学生を、エントリーから個別会社説明会に集客することに成功しました。
求職者に興味を持たせる技術──いい人財を惹きつける会社説明会では、説明はいらない新卒採用においては、会社説明会を行なうのが定番になっています。会議室を一定時間貸し切ってやるのが普通ですが、最近ではインターネットのサービスを使って、自宅に居ながら会社説明会に参加できるようにもなっています。中途採用の場合には、面接の場で会社の説明をしますので、同じことだと捉えてこの項をお読みいただければと思います。まず、会社説明会を開催する目的は、選考に進んでもらうことのみにあります。そのためには、興味を持たせないといけません。どんなふうに説明をすれば、自社に興味を持ってもらえるか、頭を捻って、あれこれ実践していることでしょう。パワーポイントで資料を作成したり、プレゼンテーションの練習をしたり、準備を万全にして、求職者により正しく自社のことが伝わるよう、説明の仕方を工夫しているものばかりです。しかし、会社説明会でやってはいけないことがあります。それは、「説明をすること」です。なぜなら、その情報はもうすでに知っているからです。会社説明会に参加する人たちは、どんな話を聞きたいと思っているのか、「他者視点」で相手の立場になって考えてみてください。インターネットの情報や知り合いからの誘いを受けるなど、なんらかのきっかけで、参加した会社説明会です。そこで聞かされるのが、すでに事前に知っている情報だけだとしたら、「この会社説明会に来た意味ってあったのかな」と思うのではないでしょうか。すでに選考に進むつもりで参加しているのなら別ですが、説明会の内容次第で選考に進むか否かを検討しようとしている相手には、興味を持たせて選考に進んでみようという動機を持ってもらわねばなりません。だから、すでに情報を発信していて、ネットを見ればわかるような話を長々としてはいけません。インターネットを通じて情報が得られるこの時代に、インターネットで伝えられることを伝えていたら、ゲンナリされるだけです。
求職者が求める知りたい情報とは?会社説明会では、どんな情報を発信すればいいのか?それは、「一緒に働くのは、目の前のこの人たちですよ」という情報です。つまり、入社したら、一緒に働くことになる現場社員を登場させ、話させるのです。会社説明会の参加者が知りたい情報は、「社風」です。生まれたときからインターネットがあるのがあたりまえの世代は、会わなければわからない情報を求めています。インターネットだけではわからないリアルな情報です。何を見ているかというと、社員の何気ない表情、社員同士の会話、日常が垣間見える情報です。言語情報ではなく、非言語情報です。社長や社員の熱意、これも非言語情報です。オフラインでしか伝えられないものを伝える場が会社説明会です。だから、パワーポイントの資料を用意して、プレゼンテーションだけで終わる会社説明会は、参加者が求めていることと異なります。リアルな場なのですから、用意したものを説明されても、それならインターネットで十分なのです。やるべきはライブ感のある取り組みです。社員座談会、即興質問回答会、職場見学ツアーが最もリアルに自社のことを伝えることができ、参加者が満足する取り組みです。一方通行でなく、双方向にコミュニケーションを行なう場が、会社説明会には必要です。もはや会社説明会という名称を変えてしまったほうがいいでしょう。知名度が低い会社がマッチングの精度を上げた方法これは、あるコンサルティング先の会社の事例です。知名度が低く、エントリーがとても少ない会社です。知名度はそんなに簡単に上げられるわけではありません。だから、会社説明会を企画して募集をしても、全然集まりません。そこで、会社説明会のコンセプトを変更しました。1対1か1対2の個別就職相談会という形にしたのです。営業で言えば、個別商談会のようなイメージです。求職者の課題、ニーズを確認しながら、自社が合うところ、合わないところをリアルに紹介していきます。お互いのことを十分に理解したうえで、選考に進むことを提案するのです。その結果、驚異的なコンバージョン率になりました。毎年100%選考に進むのです。
このことからわかったのは、「相互理解」がマッチングの精度を上げるというあたりまえの真実です。こちら側も学生が当社を選ぶ理由をわかっているし、求職者側も当社が自分を選ぶ理由をわかっている、相互理解は入社するかどうかの意思決定にも直接つながってくる重要なキーワードです。会社説明会を少人数開催にし、相互理解を高める機会とすれば、非常に効率的な採用活動を実現させられる可能性があります。知名度が低く、なかなか応募者を集められない会社ほど、相互理解を高めるプロセスを導入するといいでしょう。
見極め、惹きつける技術──いい人財をつかむ面接術採用面接を行なう2つの目的興味を持ってもらい、いよいよ採用面接を行なう段階となりました。面接は、採用活動において非常に大事な接点ポイントであることはご承知のとおりです。面接がうまくないと、採用活動の成功はありえません。まず、採用面接を行なう目的を整理してみます。採用面接には以下2つの目的があります。①選ぶ(見極める)……採用基準を上回っているか?②選ばれる(惹きつける)……応募者の選社基準を把握し、PRする。そして、自社への志望順位を上げる。面接は選考の場です。「この人は自社で活躍できる人財かどうか」と選考するわけです。ただし、選考とは、会社側だけが行なうことではありません。応募者も選考します。「この会社は自分が活躍できる会社かどうか」と選考するわけです。お互いに選考し合う場であり、お互いが正しい判断ができるよう、情報提供し合う場にすることが必要です。
面接官は誰がやるのか?──いい人財をつかむ2つの役割分担面接官は、応募者にとって選考のなかで接触する数少ない存在です。そして、最も記憶に残る存在でもあります。面接官を通して、その会社をイメージしますので、とても重要な存在だと言えます。では、どういった人財を面接官に選べばいいのでしょうか?面接官は、「応募者とのマッチング」で選定することが重要です。応募者の特徴、ニーズに合わせて面接官選びをするということです。人は、自分と共通点がある人に親近感を覚えるものです。出身地、大学、部活動、趣味など共通点があると安心します。選考前に得られている情報から、社内で共通点のある社員をセレクトし、面接に同席させるのです。面接官は、その場で気軽に簡単にできるものではなく、トレーニングが必要です。誰にでもできるわけではありません。熟練したスキルが必要で、そのためには場数も必要になってきます。メインで面接するのは、人事の採用担当者など経験のある人間がやるべきです。共通点のある社員には、要所要所で話をしてもらい、志望動機を形成させる役割を担ってもらうのです。先ほどもお伝えしたとおり、面接は、①選ぶ(見極める)、②選ばれる(惹きつける)の2つの目的があります。この2つの視点を持って面接を行なうことが必要です。しかし、これは簡単なことではありません。効果的なのは、面接を「見極め役」と「動機形成役」の2名で実施する方法です。一人は見極め役、一人は動機形成役という役割分担です。私が籍を置くアタックス・セールス・アソシエイツでは、一次面接を行なう際に、この役割分担で実施しています。当社の場合、見極め役を私、酒井が担当し、動機形成役を社長である横山が担当します。私が質問を繰り出し、冷静に応募者を見極めるのに対し、横山は自社に入社することのメリットをホワイトボードを使いながら熱く話します。短時間のうちに、①選ぶ(見極める)、②選ばれる(惹きつける)という目的を果たすには、熟練の業が必要です。人によっては得意、不得意がありますので、このように役割分担をしてみるのも1つの方法です。特に動機づけについては、誰が一番適しているのかよく考えて人選してくださ
い。当社の場合は間違いなく社長の横山です。動機づけがきっちりできないことには始まらないため、一次面接から社長の横山に登場してもらうようにしています。相手のホンネを引き出し、こちらに惹きつける面接のスタンス術具体的に面接ではどのようなスタンスで望むのがいいのでしょうか?私自身は、前職を含めて、約3000人と面接をしてきました。応募者には、心を開いてもらわなければなりません。そのためには面接する側の人間は、話しやすい場をつくる必要があります。私が行なっているスタンスは、少し先に入社した「先輩」が、これから一緒に働く後輩と話すつもりで、応募者と同じ方向を向いて、一緒に考えることです。上から目線ではなく、ほぼ同じ目線で、常に共感の姿勢を示しながら話を聞いていきます。心掛けていることは、以下の点です。◎一問一答式の面接はしない(自然なコミュニケーション)。◎質問の際に、面接シートに目線を落とさない(応募者に目線を合わせる)。◎ペーシング(共感):どんな回答があっても、いったん必ず受け入れる。例えば、意識してうなずく、バックトラッキングする、ほめどころを見つけてほめるなど。「頑張ってこられたんですね」「まわりから信頼されていたんですね」といった声がけをする。ホンネを引き出せないと、①の目的である「見極める」ことができません。しかし、それ以上にこのスタンスを持つことで、②の「惹きつける」ことができるようになります。応募者は、「ホンネが話せた」という実感が持てると、そのホンネを引き出してくれる相手を安全安心の場だと捉えます。ここは自分がホンネを話してもいい場なのだ、「居場所」なのだと実感します。また、自身の経験をもとに、自分の言葉で仕事のやりがいを伝えれば、応募者の心に響くことができます。誰もが言うことではなく、「私は、こういう理由で入社しました」「私は、この仕事をするうえでやりがいを感じるのはこういうときです」「私は、新しく入社する人にこういうことを実現させてほしいです」と「私は」を主語にして話すと、相手に伝わりやすくなります。
見極めるポイントは、結果主義でなく、プロセス主義──できる面接官が持っている「掘り下げ力」面接をする人は「掘り下げ力」が必要です。応募者はある程度、質問されることを予想して準備してくるものです。まずは答えやすい質問から入り、それを受けた回答から掘り下げていきます。新卒採用の場合、職歴がないため、応募者間で違いを見つけられるほどの判断材料が多くありません。一般的な質問をしているだけでは、違いがわからないのです。そのため、過去の体験・行動を深く掘り下げていく必要があります。「その結果を得るために、どんな行動をしたのですか?」「そのとき、そのような行動をしたのはなぜですか?」「その結果を得た今、どんな気づきがあって、仕事に活かせると考えていますか?」過去のエピソードを聞くときには、その結果の大きさで判断してしまいがちです。県大会出場より全国大会出場のほうが結果としては優れています。しかし、その結果を得るまでのプロセスがどうだったかを掘り下げていく必要があります。なぜなら「再現性」がなければならないからです。成果を出し続けるためには、自ら考え、行動し、検証し、改善していくPDCAサイクルが欠かせません。自社で活躍できるかという未来を推測するためには、過去の思考、行動が判断材料となります。ですから、面接する人には掘り下げる力が求められます。それにはそれ相応のトレーニングが必要なのは言うまでもありません。掘り下げることで、惹きつけられる実は、この掘り下げ力は、相手のホンネを引き出す以上に、選ばれるためにこそ重要なスキルです。なぜなら、掘り下げることで、ホンネを引き出すことができれば、その時点で他社より優位に立つことできるのです。コンサルティング先の会社の面接官は、トレーニングを重ねた結果、学生からこのように言われたそうです。「他社ではここまでの話はしませんでした。御社は私のことを理解しようといろいろと話を聞いてくださいました。自分のことをしっかり理解してくれたうえで、内定を出してい
ただいたので、安心感と納得感が他社とは比較できないほどあります。御社で頑張りたいです。どうぞよろしくお願いいたします」面接の場で、相手のことを正しく引き出し、理解ができれば、動機形成をすることにつながるのです。適性検査と人間の役割ある意味、「見極めるのは人間の仕事ではない」と割り切ることも必要です。人が人を見極めるには、限界があります。なぜなら人間には、先入観など無意識のフィルターがあり、適切な判断を妨げてしまいます。だから、適性検査に任せてしまったほうがいいのです。人間の仕事は、惹きつけることのみです。惹きつけることは、人間にしかできないことです。人の感情を熱くすることができますし、人の感情を冷ますこともできてしまうのが人間です。だから「『誰が』バスに乗せるか」が重要というわけです。志望動機は聞かない面接の場において、定番中の定番の質問に、「志望動機を教えてください」という質問があります。ちゃんと準備できる人間かどうか確認する儀式みたいな質問です。ただし、この質問は、営業が初めて会うお客様に対して、「当社を選んだ理由を教えてください」と言っているのと同じです。商談中のお客様は、「まだ、当社を選んでいない」段階です。面接中の応募者も「まだ、当社を選んでいない」段階です。志望動機は、応募者任せでは高まりません。説明会をして、面接をしていれば、自然と高まっていくわけではありません。こちらが応募者に合わせて、高めていくのが志望動機です。一緒につくり上げていくのが志望動機です。特に初期段階では、志望動機を聞いてもまったく意味がないということです。相互理解ができておらず、ましてや学生の場合には、就業経験がないため、表面的な志望動機しか言えないものです。それを言わせるのは、ただの自己満足にしかすぎません。志望動機とは、自分と会社とをつなぐもの
志望動機は一緒につくっていくものです。【説明会→集合面接→個人面接→最終面接】の接点を繰り返すなかで、徐々に具体度を上げていくものです。言うなれば、「私は△△だ。会社は○○だ。だから、私と会社は合っている」(※)というストーリーづくりです。※△△は、学生の選社基準(どんな基準で企業を選んでいるのか)、○○は、それに対して自社がマッチしている部分をいう。だから、会社は応募者のあらゆる情報を収集し、さらに自社の情報を提供する際には、このような型を意識してみるといいでしょう。「あなたは△△だ。当社は○○だ。だから、あなたと当社は合っている」と。まずは、事前に現在の社員のストーリーを整理しておくといいでしょう。自社が応募者にどういうポイントで選ばれたいか?見極め、惹きつける技術として、いい人財をつかむ面接術についてお話してきました。面接とは、「見極め」「動機づけ」のために行なうもの、そして、「見極め」は適性検査や各種診断でも代用が効くものであるのに対して、「動機づけ」は人間にしかできないことであり、動機づける面接、つまり「選ぶ面接」から「選ばれる面接」を意識して実施することが重要だというお話をしました。そのうえで、選ばれる面接のポイントとして、「面接官の選定方法」「ホンネを引き出すスタンスと掘り下げ術」「一緒に志望動機をつくる方法」について解説してきました。最後に重要なことをお伝えします。それは、「どんなポイントで選ばれたいか」ということです。突然ですが、「見た目」か「中身」か、あなたが自信のあるのはどちらでしょうか?(私は見た目には自信がありませんので、中身で勝負するしかないと思っていますが)採用活動においても、自社がどういうポイントで選ばれたいのかを整理して、情報提供することが重要です。給与や休日など機能的メリット(見た目)で選ばれたいなら、それでもいいでしょう。そうではなく、「こんな働き方をしたい」とか、「こういうことができるようになりたい」という情緒的メリット(中身)で選ばれたいなら、そこを強調すべきです。特に情緒的メリット(中身)は、面接や選考プロセスのなかで伝えるべきことです。感覚的なものであり、相手に合わせて伝えるべきことだからです。採用ページで伝えるのにはなかなか難しく、限界があります。情緒的メリットは、中身ですから、「ありのまま」を見せることが重要です。
◎選考プロセスのなかに、リアルな「中身」に触れてもらう機会をつくる。◎「この仕事を、この仲間と、この環境でやりたい」と決断できるよう、情報提供する。これらが「ありのまま」を見せるということです。また、最近の内定辞退の少ない会社の特徴は、採用担当者やリクルーターが学生と個別に向き合い、将来のことや就職活動の相談に乗っているという点です。既存社員が「ありのまま」に接することほど、会社の中身を知る方法はないでしょう。採用する側が「審判員」になるのではなく、「伴走者」「応援者」になって初めて、候補者から得られる情報が変わり、本当に何をすれば候補者のためになるかがはっきりと見えてきます。
いい人財を逃さず「動機づけ」する技術──内定後フォローの方法内定辞退者続出の時代内定者辞退の割合は、自社の採用プロセスの成否を判断する材料です。リクルートキャリアの調査によると、2019年春卒業予定の就活生のうち、内定辞退率が67・8%(2019年3月卒業時)となっています。10人に内定を出したら、7人から辞退されるという計算です。会社によっても異なりますが、10人に内定を出して10人から辞退されるということも珍しくありません。いい人財ほど複数企業から内定が出ていますので、最終的には1社に絞り込まなければなりません。例えば2社を選択する際に、両方とも選びたくても選べないのが就職活動です。最後には決断をしなければならないのです。決断を促すために、内定者フォローを行ないます。食事会や懇親会を開いたり、社員たちが集まるイベントに招待して会社の雰囲気を見てもらったり、工夫をしている企業が多くあります。しかし、公式の選考プロセスのなかで、動機形成を終えておくのが基本と思ってください。これまでの【集める→興味を持たせる→見極める→動機づける】というプロセスのなかで、動機ができあがる設計をしておくことが基本です。そして、あるべき姿は、最終選考のときに、「他社はすべて断ってきたので、御社に入社させてください」と言わせることです。ただし、延長戦が必要なことは致し方ない部分もあります。選考とは別に、非公式の場を設け、動機形成を高めるのです。内定者フォローが必要な場合のやり方──2つのステップ非公式の場で行なうので、選考にはいっさい関係がないことを最初にお伝えしたうえで、会う約束をします。
基本姿勢は、「候補者の意思決定を手助けする」ということです。「売り込み」ではなく、候補者の今後の人生を考えたうえでの最適解を一緒に考えていくということです。内定者フォローは、誰がやるかが重要です。ステップを1と2に分けて解説します。【ステップ1】共通項のある先輩社員によるペーシング(情報収集と情報提供)まずは、その候補者となんらかの共通項がある社員との面談をセッティングすることです。共通項とは、出身地、大学、部活動などです。たとえば、候補者が金融機関と自社とで悩んでいるとしたら、金融機関で働いた経験のある社員をアサインします。もちろん金融機関と自社の両方の内定を受けて、最終的に当社を選んだ社員でもOKです。Uターン就職しようか、Iターン就職しようか悩んでいる候補者なら、同じ悩みを抱えた経験のある社員をアサインします。共通項があればあるほど、相手は警戒感を緩め、ホンネを語ってくれるからです。非公式の場では、次のようなことを押さえておきたいところです。◎評価に影響を与えないインフォーマルな場であることを説明する(場所はカフェ等が望ましい)。◎ボトルネックを確認する(悩んでいることなどホンネを聞き出す)。◎自己開示をする(同様に自身も会社選びに悩んだ経験があること/最終的に当社を選んだ理由/当社を選んで良かったと思える点など)。ここで注意すべきは、クロージングをしないことです。あくまでも情報収集と情報提供に徹します。社長および人事の評価ポイントは伝えてもいいですが、だからといって決断を迫ることはしてはいけません。なぜなら、非公式の場だからです。あくまでも相互理解を図り、意思決定の切り口を一緒に探していく場です。信頼関係を形成し、企業選択の際には、自社が最良の相談相手として位置づけられることが理想の姿です。直接会う以外にも、定期的な接触を重ねていくことも重要です。これは、採用担当者の役割です。ペースとしては週1回程度です。刻一刻と候補者の心境は変化していきます。他社の選考状況にも進捗があります。しばらく放置をしておくと、連絡すら取れなくなる危険性もあります。週に一度は、できるだけ決まった曜日、時間に電話をしてみてください。定例にするこ
とで、気にかけてもらえている印象を持ってもらうことができます。単純接触でいいですから、1回の電話時間の目安は5分以内。2、3分でもいいです。回数を重ねていくことで、単純接触効果として好意を持つようになっていきます。また、定例のコンタクトに加えて、他社選考日の翌日には必ず連絡を取ることが重要です。心境の変化が生じやすいタイミングが他社選考日です。そのタイミングは押さえておく必要があります。他社の選考スケジュールは、単純接触ができていれば、たいてい教えてくれます。【ステップ2】社長・幹部によるクロージングしかるべくタイミングで、クロージングをしていくことが必要です。これまでの公式、非公式のやりとりを振り返り、クロージングを図ります。誰がやるかも重要です。会社規模にもよりますが、中小企業であれば社長です。誰が発する言葉かが重要だからです。社長が発する言葉と一般社員が発する言葉とでは重みが圧倒的に違います。発信するメッセージの型は知っておくといいでしょう。①当社が採りたい理由②学生の入りたい理由それぞれについて解説します。①当社が採りたい理由これまでを振り返りながら、「なぜ当社があなたを採用したいと考えているか」を伝えます。これが具体的であればあるほど、候補者に届きます。「だからあなたに入社してほしいんだ」ということを目を見て熱く話すことが重要です。②学生の入りたい理由これまで候補者が発してきた言葉に基づき、当社を選ぶ理由を整理します。悩んでいるとしたら、それも共有し合ったうえで、こういう理由で当社を選ぶべきであることを伝えます。選社基準というのは、簡単に持つことが難しいものです。ましてや働いた経験のない学生ならなおさらのことです。社会の先輩として、あくまでも客観的に冷静に話をすべきです。そうすることによって、①で熱心に主観的に話すのと、変化をつけるのです。場合によっては、他社を勧めることも必要かもしれません。それくらい本気で相手のことを考えているからこそ、相手が納得するクロージングができます。営業でも同じです。お客様は素人だから、商品を選ぶ基準を持っていません。その道の
専門家である営業は、プロとして、選ぶ際の基準のヒント(切り口)を提供する役割を持っています。お客様の頭の中を整理して、納得して商品を選べるようにすると、リピートにつながっていくものです。採用においても、候補者は素人だから、会社を選ぶ基準を持っていません。だから、選ぶ際の基準のヒント(切り口)を提供していかねばなりません。候補者の頭の中を整理して、納得して入社を決めさせると、辞めずに頑張ってくれるものです。
間違った採用をリカバリーする方法人間が幸せを実感するとき幸せの条件は、「成長の実感」です。他人との比較ではなく、過去の自分と比較して「成長している」と感じることができれば、幸福感を得られるものです。もうすぐ2歳になる娘は、昨日できなかったことが突然できるようになったりします。新しい言葉を覚えて使えるようになったり、テレビに出ている人の踊りを観て、完コピできていたり。新しいことができるようになった娘は本当にうれしそうな気持ちを全身で表現します。親としても、そんな子どもの成長を実感できるときほど、幸せを実感することはありません。以前できなかったことが、少しずつできるようになっている。幸せを感じるときとはそういうときだと思うのです。また、何らかの目標を設定して、達成しようするプロセスそのものも幸せです。資格取得でも、マラソン完走でも、貯金でも、ダイエットでも、ゲームのクリアでも、目標に向かって小さくても一歩ずつ前に進んでいるそのプロセスそのものが自己肯定感を高めてくれます。「日本でいちばん大切にしたい会社」に学ぶ人財採用の目的「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を受賞する会社はみな、社員の幸せを一番に考える会社です。例えば、本書の監修者である坂本光司著『日本でいちばん大切にしたい会社1』でも取り上げられた伊那食品工業のホームページにはこうあります。経営にとって「本来あるべき姿」とは「社員が幸せになるような会社をつくり、それを通じて社会に貢献する」ことだと思います。そして売り上げも利益もそれを
実現するための手段に過ぎないのです。会社を家庭だと考えれば、分かりやすいかと思います。社員は家族です。食べ物が少なくなったからといって、家族の誰かを追い出して、残りの者で食べるということはありえません。会社も同じです。家族の幸せを願うように、社員の幸せを願う経営が大切なのです。またそう願う事で、会社経営にどんどん好循環が生まれていくのではないでしょうか。社員の幸せを一番に考えるから、成長を実感できるように教育もしっかりするし、好不況にかかわらず、人財採用をやり続けています。なぜなら、入社した新入社員が10年経っても20年経っても下っ端であったならば、その会社は社員を幸せにできていないと言えるからです。企業が人財採用をする目的はここにあります。自分が成長することはもちろん、誰かを成長させることで人は幸福を味わえます。部下を持つということは幸福を実感する機会を増やすことになります。「間違った採用」の定義間違った採用とは、雇った社員を幸せにできない採用です。社員が付加価値を生み出さないことは、会社にとってもマイナスですが、その社員にとってもマイナスです。会社にいる限り成長できないのですから、不幸以外のなにものでもないです。社員を間違って採用し、不幸にしてしまわないためには、本書で紹介した正しい採用の思考法をベースに、正しい手順で採用活動を行なうことが必要です。ミスマッチを防ぐ施策それでも、実際に働いてみないとわからないことがあります。正社員の基準に達しているか否かを判断するために、一定期間を試用期間として契約社員として雇用するという方法をとっている企業もあるでしょう。他には選考プロセスにおいて、インターンシップ(就業体験)を必須とする方法もあります。インターンシップと言えば、一般的に就職前の学生を対象として企業が実施するものとして定着していますが、中途採用であっても、一定期間のインターンシップを採用選考のなかで課す企業もあります。これは「社会人インターン」と呼ばれています。期間は数カ月の「長期インターン」、数週間程度の「短期インターン」、1日だけの
「1dayインターン」などがあり、基本的には有給で実施するものです。面接の代わりとして、業務を体験してもらうことで、お互いに理解ができ、ミスマッチを防ぐことが可能な取り組みです。もちろん期間が長いほどミスマッチは防げますが、在職中の社会人の場合はハードルが高くなる面もあります。その場合、時間は終業後や土日などに設定したり、週2日間からの稼動や、在宅勤務などの相談ができたりする場合もあります。お見合いではわかりませんし、お付き合いしているだけでもわかりません。一緒に同棲してみて、お互いのいいところ、悪いところ、許容できるところ、できないところが見えてきます。インターンシップは、結婚相手としてふさわしいかどうか、同棲してみて判断するようなイメージと捉えればいいでしょう。間違った採用をしてしまったらそれでも間違った採用をしてしまった場合には、どのようにすべきか。雇った社員を幸せにできないということですから、まずはその事実をしっかりと向き合って伝えるべきです。しかし、リストラなどは行なってはいけません。「日本でいちばん大切にしたい会社」は、例外なく、好不況にかかわらず人財確保を大きくぶらさないばかりか、「どんなことがあっても、社員とその家族の命と生活を守る」と公言し、リストラなどは決して行ないません。間違った採用をしてしまったからといってリストラが許されるなら、いつまで経っても、いい加減な採用活動が改善されることはないでしょう。だからこそ、「採用したからには絶対に幸せにするんだ」という決意が必要です。その決意がないなら、採用活動はしてはいけません。人を不幸にする会社は、採用活動はしてはいけません。社員は家族です。家族の一員を迎え入れるには相当の責任が伴います。だからこそ、採用活動は命懸けでやらねばならないのです。
おわりにここ数年、日本でも知られるようになったリーダーシップ哲学があります。「サーバント・リーダーシップ」です。サーバント・リーダーシップとは、「召し使い」を意味する「サーバント」と、組織を導く「リーダーシップ」という正反対の言葉を結合させたリーダーシップ哲学です。アメリカのロバート・グリーンリーフ(1904~1990)により1970年に提唱され、日本では数年前からメディアで取り上げられることが増え、知られるようになってきました。サーバント・リーダーシップでは、「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後、相手を導くものである」と言います。つまり、部下に対して明確なミッションやビジョンを示し、それを遂行するメンバーに奉仕するリーダーシップと定義されています。「支配ではなく、奉仕・支援という姿勢でリーダーシップせよ」と捉えればいいでしょう。私は企業の現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタントです。現場に入ると、実にさまざまな方々を対象に指導しますので、サーバント・リーダーシップについて、こう思ってしまいます。「エンゲージメントレベル(熱意)の高い部下ならいいが、そうでなく、やるべきことすらやらない部下に、このような姿勢で臨むと逆効果なだけではないか」と。米国の調査会社ギャラップによると、エンゲージメント(熱意)の高い社員は、米国の32%に対して、日本企業は6%しかいないという結果が出ています。日本企業における「モチベーションの低い社員」は70%に達すると言われ、いまや重要な経営課題に発展しています。しかし、現在の風潮は明らかに、「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後、相手を導くものである」という方向です。だからこそ、ますます、「誰をバスに乗せるのか」が大事な時代になってきたのではないかと考えています。そして、そんな時代だからこそ、リーダーシップを学ぶ前に、まずは採用について学べ!そういう想いがあって、本書を執筆いたしました。私にはもうすぐ2歳の娘がいます。あと20年もすれば、娘も社会に出て働き始めること
でしょう。その頃の日本では、世界では、人々はどんな価値観を持ち、過ごしているでしょうか?なかなか想像ができないものです。あるべき姿は、働く人が葛藤をしながらも適材適所でイキイキと働いていること。働くことが好きで、いつまでも働いていたいという価値観を持つ人が大多数ということ。人生100年時代です。「働かざるを得ないから働く」ではなく、「働きたいから働く」。そんな人がもっともっと増える世の中になってほしい──。嫌いなことをイヤイヤやるほど生産性の低いことはありません。少ない人数で少ない時間で最大のパフォーマンスを上げる方法はたくさんありますが、ベースにあるべきなのは、働く人がその仕事をイキイキとやっていることでしょう。社員が仕事を楽しんでいる。事業が社会に貢献している。あなたの会社がそんな会社であるならば、どうか自信をもって採用活動をしていただきたいと思います。これからは、そんな会社が事業を発展させていく時代だからです。そして、採用の競争力がある会社になるのは間違いありません。しかし、採用活動を蔑ろにしている限り、本当の意味で採用の競争力を発揮することはできません。本書を執筆した目的はそこにあります。いい会社にもかかわらず、採用がうまくいっていない会社が日本にはたくさんあります。本書をお読みいただいたあなたには、本書で紹介した採用の考え方をベースに、ぜひ1つでも2つでも手法を真似て実践していただけたとしたらうれしい限りです。将来ある人たちが御社に仲間入りし、さらに御社が成長することこそが社会に貢献することに他なりません。本書がそのきっかけになれば望外の喜びだと感じます。個別のご質問、ご相談をいただければ、必ずお時間をお取りし、お話しする機会をつくります。それが私にできる公器の役割だからです。下記URLのお問い合わせページよりお気軽にどうぞ(http://attaxsales.jp/contact/)。読者のあなたと直接お会いできるのを楽しみに、筆を擱きます。2019年7月酒井利昌
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