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パート社員が社長さんに伝授!利益を生み出す主婦パートを育てるすごい方法【オリジナル】

目次

はじめに

「パート社員は期待どおり働いてくれない」──そう思っていませんか?

本書は、これからパート社員を活用したい、それも主婦のパート社員を活用したい、と真剣にお考えの中小企業の経営者に読んでもらいたいと考えています。

著者である私たちは2人ともパート社員です。勤続年数は、鈴木が17年、関が12年です。私たちは、経営コンサルティング会社で、社員研修の講師を主要業務にしています。

また、社内では新人の指導係も担当しています。あくまでもパート社員ですから、ふだん働く時間は午前9時30分から17時までです。夕方の6時には家に戻って家事をしています。私たちの勤務時間は、出産前は9時から16時、子供が小さい時期は9時から15時、子供が大きくなった現在は、9時30分から17時というように、そのときの状況に合わせて、働く時間を選択しています。

私たちは、研修の講師として出向いた先で、よく「えっ、パート社員なんですか?」と驚かれてしまいます。そして、多くの方が、どうしてパート社員なのかと聞きます。さらにパート社員でもこのように働いていて、「しっかりした会社ですね」とも言われます。

では、もともと私たちは、〝意識が高い〟と言ってもらえるパート社員だったのでしょうか。答えは「いいえ」です。鈴木は、家から自転車で通えるという理由で、関は経理ができるようになりたいという理由で入社しました。最初のスタートはこんなものです。

しかしながら、総務・経理から始まり、営業を兼務する研修の講師と仕事を経ていくなかで、次第に「利益を生み出すにはどうするか」という意識が生まれてきました。また、10年前は10名前後だったパート社員が現在では40名に増えました。

その間、社内のパート社員の活用を実際にこの目で見、肌で感じ、採用にも携わってきました。うまくいっているものには、必ず仕組みがあります。

その仕組みははじめからあったものではなく、少しの変化が結果を生み、試行錯誤を重ねるなかで仕組みとして確立してきたものです。本書では、仕組みをうまく活用することで、利益を生み出すパート社員を育成する方法を書きました。

私たちは今まで研修を通して、受講生の悩みをたくさん見聞きしてきました。そして、大変多くの経営者や管理監督者の方が、パート社員の活用で悩んでいることに気がつきました。

研修では、その度にアドバイスをしていたのですが、次第に「悩んでいる多くの方に、うまくいく活用のコツを伝える必要がある」という思いが強くなってきました。経営者の方々が今のままパート社員を活用しながら、試行錯誤を通じて育成のコツをつかんでいくこともできるでしょう。

しかし、それには時間がかかります。本書の読者が、パート社員をうまく活用できるよう、そのコツをお伝えできればと思います。あなたにとって本書が、利益を生み出すパート社員の育成に少しでも役立つならば幸いです。鈴木ゆかり 関美分

 

パート社員が社長さんに伝授!利益を生み出す主婦パートを育てるすごい方法──目次

はじめに「パート社員は期待どおり働いてくれない」──そう思っていませんか?

第1章 パート社員活用で成功する会社・しない会社がある

1正社員vsパート社員

2パート社員は会社が思うように働いてくれない?

3パート社員の活用がうまくいかない理由

4うまくいっている会社の共通点

5今、パート社員の活用はどうなっているのか

6働く主婦の本音

7多くの人が興味を持って私たちに聞くこと

8やる気のあるパート社員にするには何が必要か?

第2章パート社員の意識改革への道

1過去の実態

2所長の決断

3本書のパート社員の前提は、「主婦」です

4制度化への道のり

5当社の構成とパート社員の仕事

第3章採用編ダイヤの原石を見つける方法

1パート社員の採用でこんなミスをおかしていませんか?

2なぜ未経験者を選ぶのか?

3採用スケジュール・年間予算・1人を採用するのにかかる金額

4応募したいと手を挙げてもらうには

5いつ、どの媒体を選んだらいいか

6一次面接……いい人を採用するためのステップ・バイ・ステップ

7二次面接……「いいと思って即採用」がまずい理由

第4章育成編利益を生み出すパート社員を育てる仕組み

1OFFJTの仕組み

2なぜ、パート社員にここまで行うのか

3主婦のパート社員に見られる傾向

4この研修で期待されていること

51週間目に教えること

62週間目に行うこと

7なぜ、2週間の指導が効果的なのか

8新人が、スムーズに会社に溶け込めるようにするには

9困ったパート社員への対応

10トップとの最終面接

11新人研修を終えて

第5章現場での実践編パート社員の早期戦力化

1実務サイドでの新人指導の仕組み

2実務を早くマスターさせるには

3パート社員にも、一般の正社員と同じくらいの情報量を

4評価システムの流れ

5女性が多い職場で、良好な職場環境は、どうすればつくれるのか

第6章応用・展望編これからの私たちの働き方

1パート社員を組織化するときによく起きること

2もう一度整理をしてみると

3働く主婦に対する配慮

4今後の課題あとがき

第1章パート社員活用で成功する会社・しない会社がある

1正社員vsパート社員

数カ月ほど前のことです。知人の会社で、経理の人が辞めると言って困っているという話を聞きました。

知人「この間入ったばかりの経理の子、もう辞めたいって言ってるよ」

鈴木「困りましたね」

知人「困ったよ~。辞めたら、こっちがその間、経理やんなきゃいけないし、新しい人が入った時に、また引き継ぎで時間が取られる。自分の仕事ができないよ」

鈴木「その仕事、正社員でなければいけないのかな?」

知人「いや、今まで正社員だったから正社員で、と考えてたんだけど……」

鈴木「いっそのこと、パートを2人やとったら?人件費も安くなるし、2人のほうが、仕事がはかどるよ。1人休んでも対応できるし」

知人「でもパートさんって、責任感がないじゃない。以前に、時間になったら仕事をそのままにして帰った人もいるよ」鈴木「そういう人も確かにいるね」

知人「それだと困るし、経理って大事だから、正社員がいいんだよ」

鈴木「でも、正社員を採用するのって、大変でしょう?」

知人「大変だよ。なかなか採用できないよ。でも、妥協して採用すると、今回みたいなことになっちゃうんだよね」

鈴木「パートでも優秀な人を採用できるよ。正社員を採用するより、採用しやすいしね」

知人「本当?でも、そうはいっても……」

鈴木「うちの会社の経理は、全員パートよ」

知人「えっ、そうなの?うまくいってるの?」

鈴木「10年前からうまくいってるよ」

知人「それって、どうやってるの?ちょっと教えてくれる?」

鈴木「いいよ、実はね……」

しばらくたってその知人から、「パートの人を2人採用してうまくいってるよ。会社のやり方次第なんだね。実感したよ」と明るい声で連絡が入りました。

2パート社員は会社が思うように働いてくれない?

私たちは、ついこの間、こんなことを経験しました。研修の打ち合わせで、初めてA社に行ったときのことです。私たちは、ドアを開けながら、「こんにちは」と声をかけました。数人が事務所にいましたが、誰もこちらを見てくれません。

ちょっととまどいましたが、気を取り直してもう一度、今度は大きな声で言いました。「すみません」すると、近くにいた女性が周囲を見て、誰も応対しないので仕方ないといった様子でこちらに来ました。

「いらっしゃいませ」と小さな声で、おまけに迷惑そうな表情です。すると、奥から課長が出てきて、「あっ、いらっしゃいませ。どうぞこちらへ。○○さん、お茶を出してね」と言いながら応接室へ案内してくれました。

打ち合わせが始まりましたが、なかなかお茶が出てきません。課長は内線で再度お茶を催促しました。そして困り顔で、「いやぁ、正社員の女の子が辞めたので、その後にパートさんを入れたんだけど、気が利かなくて、参ってるんですよ」と話しました。

翌日、同社に電話を掛けると、パートさんが出ました。

鈴木「田中様はいらっしゃいますか」

パートさん「外出していますけど」

鈴木「では、何時ごろお戻りですか」

パートさん「5時です」

鈴木「そうですか。ではまたこちらから連絡を入れます。お手数ですが、電話があったことをお伝えいただけますか」

パートさん「会社名が早口で聞き取れなかったんですけど」

鈴木「あ、申し訳ございません。△△と申します」

これは極端な例かもしれません。しかし、これに似たようなことが、あなたの会社では起きていないでしょうか?

また、このようなパートさんは、こんなこともしているかもしれません。

●休みのことや自分の都合ばかりをいう

●呼んでも返事をしない。声が小さい

●ミスを認めない、人のせいにする

●「それは私の仕事ではありません」という発言が多い

●仕事が終わっていないのに、時間ですからと平気で帰ってしまう

本当にこういうパート社員には頭を抱えてしまいます。でも、こういう人を辞めさせて、優秀な人を採用するのも大変です。その人が辞めたあと、その仕事を誰がするのか、優秀な人をいつ、どのように採用するのかなど、面倒なことが多いからです。

そもそも、企業はどんなことをパート社員に求めているのでしょうか。『平成18年度版パートタイマー白書』(株式会社アイデム「人と仕事研究所」刊行)によると、「パート・アルバイトに求める仕事に対する姿勢」の上位3つは次の内容です。

1位与えられた仕事に対して最後まで責任を持って行う

2位与えられた仕事はどんな仕事でも積極的に取り組む

3位効率的に仕事を進められるように自分なりに工夫して取り組む

このような意識を持って働いてもらうには、そのための仕組みが必要です。安い人件費で仕事をさばこうとして、パート社員の活用に安易に取り組み、思うようにいかないというケースがたくさんあります。そこで、どの会社にも該当するケースを3つ挙げてみました。

3パート社員の活用がうまくいかない理由

【CASE1】「とりあえず人手がほしい」という理由で採用すると……

月初めのある日、

社長「A子さん、この間頼んだアレ、できてる?」

A子さん「営業数字のグラフですか?」

社長「いいや、売掛金の一覧だよ」

A子さん「すみません、まだです。今日中にやろうと思ってるんですが……」

このところ急に忙しくなり、1人しかいない事務員のA子さんはてんてこ舞いです。

「これからもっと忙しくなるし、早急に1人、パートさんを入れたほうがいいな」そう思った社長は、求人誌にパートの募集記事を出しました。予想に反して実際に応募してきたのは、2人でした。

再度求人記事を出すのはお金もかかるので、2人のうち、よさそうな人を採用するしかない、と考えて面接をしました。

「求人記事にも書いてあるように、簡単な事務です。パートさんですので、補助的な仕事が主になります」あんまり最初に厳しいことを言うと来てもらえないから、ちょっと抑えて言っておこうと考えて、このように話しました。「残業はありますか?」との問いにも「ありません」と答えました。

仕事の内容よりも、処遇のことばかり聞かれたのが気にはなったものの、事務経験があり、パソコンも使えるというYさんを採用しました。これで事務の仕事もスムーズになるぞと、社長は安心して営業に飛び回りました。しばらくしたある日の夕方、会社に帰るとA子さんが社長を呼び止めました。

A子さん「社長、実はYさんのことですが、仕事がやりづらいんです……」

社長「えっ、どういうこと?」

A子さん「こっちが頼んだことしかやってくれないんです。仕事を任せようとすると、私はパートだからと言うんですよ。仕事が終わってなくても、時間になったら帰っちゃうし……。社長から一度ちゃんと言ってください」

社長「そうか、わかった」

と、その場では言ったものの、Yさんを採用する時に適当なことを言ったからな……。なんと言えばいいのか、社長は困ってしまいました。

【CASE2】勤続年数を重ねても、変わらない仕事量

F子さんは、入社4年目で一番勤続年数が長いパート社員です。この会社では、毎年パート社員を採用するので、社長は、F子さんに新人のパート社員に仕事を教えたりする、指導的な仕事もしてほしいと思っています。

しかし現実は、パート社員の指導は正社員がやっています。4年前と比べて、F子さんの仕事の量は増えもしなければ、減りもしていません。

能力はあるので、「できる仕事をもっと増やしてもらいたい」と社長は思っています。また、今のF子さんの仕事をやれるのが、F子さんしかいないという状況なのです。ですから、F子さんが休むと困ったことになります。さらに、「私がいないと困るでしょ」というようなわがままな態度が、最近少し鼻につくようになってきました。

社長としては、F子さんの仕事は、もう少し楽にできると思いますし、新人にも教えてもらいたいと期待しているのですが、ついそのまま注意もしないで放置してしまっています。

【CASE3】そうはいっても、やっぱりパートだから……

営業システムを見直していかないと、と思っているけれど、「今まで男性の正社員が営業していたところに、女性のパート社員を行かせるのはどうかなぁ」「パートなんかをよこして、うちを軽く見ているのか」「パートに責任ある仕事ができるのか」「お客様からこんなクレームが来ると困るな、D子さん、営業をやりたいって張り切っていたけど、そうはいっても、やっぱりパートだからなぁ……」というようなことはありませんか。

さて、これら3つのケースですが、あなたがこのようなことをしているのであれば、残念ながらパート社員を使って、企業を発展させることはむずかしいでしょう。

しかし、パート社員を活用して、企業は発展していけるのです。

4うまくいっている会社の共通点

私たちは、営業先を初めて訪問したときに、「あっ、ここ、感じがいいな」と思ったり、「担当の女性がしっかりしているな」と感じた会社で、必ず質問することがあります。

「受付の方は、大変感じがいいですね(担当の○○さんは大変しっかりしていますね)。どのように指導なさっているのですか?」すると、相手は喜んで教えてくれます。

「いやぁ、そうでしたか。実はですね、ことあるごとに伝えているんですよ。受付は会社の顔。つまり、○○さんは会社の顔だから、お客様には、笑顔で明るく応対してくださいって」あるいは「○○さんには、人事として、こういうことができるようになってほしいということを、繰り返し伝えていますね」。

「あっ、ここ、感じがいいな」と思った会社では、ほぼ100%、こうした答えが返ってくるのです。要するに「このようにしてくださいね」と、期待することを本人にしっかりと伝えているということなのです。「なぁんだ」と思われましたか?簡単なことですよね。

しかし、期待することを従業員へしっかり伝えていない会社は、案外多いのです。例えば、こんなことを伝えておくことも必要です。

●呼ばれたら明るく「ハイ」と返事をする

●社長に頼まれた仕事は、すぐにとりかかる

●「できません、やれません」と簡単に言わない

●仕事に責任を持ち、メンバーに迷惑をかけない。判断に迷うことは、すぐに上司へ相談する

私たちの会社では、こういったことを「仕事の心構え」と呼んで、とても大切にしています。これはできてもらわないと困るという業務処理レベルに関しては、ここまでできてほしいという基準レベルをしっかり伝えています。

よく「うちの会社は、あいさつを大事にしているので、明るく元気にあいさつしてください」などと指示し、指示された新人も「はい」と受けるやりとりがあります。では、これで新人が明るく元気にあいさつをしてくれるでしょうか?実際には、する人もいればしない人もいる。どちらかというとしない人のほうが多いかもしれません。

どうしてこうなってしまうのでしょう?その理由は、「明るく元気に」の捉え方が人によって違うからです。経営者の期待するあいさつと、従業員がこれぐらいでいいかなと思うあいさつには、とても大きな差があるのです。

期待どおりやってもらうには、しっかりと具体的にその期待を伝えなければなりません。「あいさつひとつできない。ここに書いてあるのって、うちのパート社員のことだよ」と思った方、ご安心ください。

そのパート社員の多くは、悪気があってやっているのではありません。そういう応対がよくないとわかっていないのです。「えっ、それぐらいわかっているだろう」そう思われるかもしれません。

しかし、もう一度言います。それぞれのパート社員は、ビジネスに適した明るく元気なあいさつが、実際にはどのようなものであるかをよくわかっていないのです。

研修をやっていると、この現実を目の当たりにします。少しでもビジネス感覚のある人なら、身につけていて当然ということがわかっていないのです。

報告についても「大事だ」ということはなんとなくわかっている。だけど、何をどのように報告していいかわからない、できない。そういう人がほとんどです。

「仕事の心構え」は、正社員だから身についている、パート社員だから身についていない、ということではないのです。雇用形態がどちらであっても、身についている人もいれば、そうでない人もいます。

会社側からすると、正社員で「仕事の心構え」ができていない人が最も困る存在です。逆にパート社員でそれができていると大助かりです。当たり前のことですが、人件費は利益を出すための経費です。

しかも、経費の中で、多くの比重を占めます。経営者は、当然、経費を抑えて利益を出したいと思っています。ですから、人件費が安くて仕事ができるパート社員は、歓迎すべき存在です。

だからといって、人件費の安いパート社員にどんどん働いてもらおうという安易な考えだけで、パート社員を活用しようとしても、なかなかうまくいかないのです。

5今、パート社員の活用はどうなっているのか

最近、私たちは、パート社員を活用していくにはどうしたらいいのか、ということをよくきかれます。以前に比べて、このことについて話をする機会がずいぶんと増えました。

「うちは、パート社員は採用しないから」と言っていた社長さんを、しばらくぶりに訪問してお話をうかがうと、女性の事務員の半分が派遣社員やパート社員になっている、と聞くこともよくあります。

正社員が減って、パート社員や派遣社員が増えたということは、皆さんも感じていると思いますが、その背景について少し触れていきたいと思います。

総務省統計局『労働力調査』によると、平成17年10~12月期平均では、役員を除く雇用者は5053万人と、前年同期に比べ43万人の増加となりました。このうち、正規の職員・従業員は、3384万人と、前年同期に比べ41万人の減少となりましたが、パート・アルバイトなどの非正規の職員・従業員は1669万人と、前年同期に比べ84万人の増加となっています。

こうした動きの背景には、企業の経営環境の厳しさによる影響が考えられます。企業がパート社員を雇用する理由として、「人件費を節約するため」「景気変動に応じて雇用量を調節するため」などのコスト要因が挙げられます。また、サービス経済化の進展に伴い、「1日の中、週の中の、仕事の繁閑に対応するため」「長い営業(操業)時間に対応するため」などの業務の変化要因も挙げられます。

企業にとって、自社の競争力を保つためにも、パート社員は重要な労働力です。さらに、今後パート社員には、仕事の質を上げることや、基幹的な役割を担うことが期待されるでしょう。

本章2節の『平成18年度版パートタイマー白書』によると、パート・アルバイトが従業者の半数以上を占めている事業所は、全事業所のうち、53・9%もあります。

また労働時間では、1日「4~5時間」、週「5日」、週「20~30時間未満」の労働が最も多くなっています。弊社のように主婦を雇用している事業所は87・1%と9割弱となっていて、今後、主力として最も多く雇用したいのは、「主婦」と回答した事業所が過半数を超えています。

現在正社員が行っている仕事で、パート・アルバイトに任せられる仕事がどれくらいあるかを聞いたところ、3分の1以上の事業所が「多くの仕事をパート・アルバイトに任せられる」と回答しています。

そのために必要になることとして、「業務を見直し、標準化・マニュアル化を図る」「業務遂行のために必要なパート・アルバイト個々の能力レベルを把握する」「パート・アルバイトへの教育訓練を充実させる」が、上位3項目となっています。

パート社員に期待をかけている事業所が増えている一方、しっかり働いてもらうための方策も必要と考えていることがわかります。

6働く主婦の本音

先日、当社のパート社員40名にアンケートを取りました。その中に「以前働いていた会社を辞めて、こちらの会社に入社するまでのブランクはどれくらいですか?」という質問に対して、最長18年からブランクなしまで、平均4・1年という結果が出ました。

また、「働くきっかけ」の問いには、次の図のような答えが出てきました。結婚や出産で仕事を辞め、子育てを経て、また仕事につくというのは、女性にとって大きな環境の変化です。

パート社員と話をすると、実際に仕事を探すようになるまでは、「子供に負担がかかるのではないか」「家族の協力は得られるだろうか」「子供の急な病気のときはどうしようか」「自分の能力が通用するだろうか」「職場にすぐとけ込むことができるだろうか」というようなことを考え、就職活動を始めるまでに悩んだ時期も長いということでした。

さらに、就職活動を始めると、小さな子供がいるということで、電話で問い合わせをした時点でことわられたり、面接までこぎつけても、やはりその場でことわられたりしたという経験をしています。

著者(鈴木)の場合、当社で働きながら、出産・子育てを経験しました。子供ができたことを上司に話すと、「おめでとう」と言われたあと、「出産はいつごろ?復帰はいつぐらいにできる?」と聞かれて、ひどく驚いたことを覚えています。

出産を機に退職するものだとばかり思っていたからです。育児休暇をもらい、また職場に復帰できる。しかも勤務時間を相談できるというのは、本当にありがたいと思い、なおのこと仕事をがんばろうと思いました。

小さな子供がいるパート社員は、子供の都合でよく休むからあてにならない、戦力にならない、残業を頼めない、ということをよく聞きます。

しかし、実際にデータとして、どれだけ仕事に支障があったのか、きちんと捉えられているでしょうか。なんとなく感覚でこのように思っている会社が、大半ではないかと感じます。

休みが必要であれば、制度として整備する。残業ができなければ、うまく仕事の配分や時間調整をしていく。このような前提で、パート社員を見ていくと、改善できる点が見えてくるのではないかと、私たちは考えます。

7多くの人が興味を持って私たちに聞くこと

私たちは「パート社員なのに意識が高いね」「パートで研修の講師をやっているなんてすごいね」とよく言われます。しかし、入社当時は「都合のよい時間と曜日で働きたい。残業があったらいやだな。子供が病気になったら、すんなり休めるのかな。休みがほしいと言って、いやな顔されたら働いていけないな。いろいろ覚えなきゃいけないみたいだけど、あんまり無理はしたくないな」というようなことを考えている、ごく普通のパート社員でした。

そこからどうして現在のようになったのか、どのように「仕事に対する意識」を身につけていったのか、順を追って話したいと思います。毎週のように、私たちは研修の打ち合せや研修の報告などで、経営者や人事の研修担当者と会います。そこで、私たちがパート社員だということを話すと、多くの人が「えっ、パートなんですか」と驚きます。

「はい。私たちのグループ会社は8割以上がパート社員なんですよ」と答えると、もうこからは、「パート社員にどんな仕事を任せているのか」「そんなふうに働いてもらうにはどうしたらいいのか」「何か特別なことをしているのか」「採用はどうしているのか」「派遣社員や女性の正社員はいないのか」と質問攻めになります。そういった質問に一つひとつ答えていくのですが、最後によくこう言われます。

「いやぁ、そうですか。大変参考になりました。うちもあなたたちのような優秀な人がいてくれたら、いいんですけれどね」「いえ、そんなことはないですよ。やる気にさせる『仕組み』を作るのが大事なんですよ」と答えているのですが、いつもうまく伝えきれずに、モヤモヤした気持ちを抱えていました。

働く人の資質や問題だけに目を向けていると改善は進まないのに、と思うからでした。

8やる気のあるパート社員にするには何が必要か?

今、私たちが所属するグループ会社では、従業員の8割にあたる40名が女性のパート社員です。保育園や小学校で他のお母さんたちに「どこで働いているの?」と聞かれて答えると、「あそこで働いているんだ、すごいね」「なかなか採用されないんでしょ?履歴書送ったけどダメだったって人、知ってるよ」と言われることがあります。

他の働くお母さんたちと話をすると、働くということへの取り組み方というか、姿勢が違うなということを、会話から感じることがよくあります。「だって、パートだから」「パートに責任求められても」「正社員とは違うんだから」「そこまで一生懸命やらなくても」というような言葉が会話の中に出てきます。

そして、私たちのことを話すと、こういう反応が返ってきます。「えっ、パートでそんなことしてるの」「なんで、正社員じゃないの?」「それはパートの仕事じゃないよ」私たちが普段、感じていないこういった内容を他の人から言われるたび、少し違和感を抱いていました。

一体どこで違ってくるのだろう。実は、パート社員たちの意識の変化は、社内でもありました。10年以上前は、「だって、私はパートだから」というパート社員が大半でした。

しかし、今そういうことを口にするパート社員は1人もいません。どうしてそうなったのでしょうか。以前の実態から、どんなことを経て今のような仕組みを作ってきたのかを、次の章で説明します。

第2章パート社員の意識改革への道

1過去の実態

現在はパート社員の意識も高く、仕事に熱心に取り組んでいますが、以前はどうだったのでしょうか?新人のころ、張り切っていた著者(鈴木)はよく周囲に声をかけていました。

「3階のOさんのところに行きますが、何か用事のある方いますか?」「今手が空いているので、何かお手伝いすることありますか?」そして、ある日、私はベテランパート社員のTさんに給湯室に呼ばれました。

そして、「あのね、あんまり仕事を引き受けると、あとが大変だよ。適当にやったほうがいいよ」とアドバイス(?)を受けたのです。「はあ」と答えながら、そんなものなのかなぁと思いました。

そのあとも部長から依頼された仕事をしていると、「大変だねぇ、面倒な仕事を押し付けられちゃったね」と言われたりしました。このような発言は、もちろん一部の人から受けるだけでしたが、一生懸命仕事をしてもしようがない、仕事はそこそこやればいい、という空気があったのは事実です。

今考えると、当時事務所にいたパート社員は、補助的な仕事をするということで採用されていました。新しい仕事を依頼すると、「これを私がやるんですか?」という答えが返ってきたり、暇な時間ができると給湯室でおしゃべりをしたり、会社への不平・不満を公然と口にしたり、女性同士で派閥をつくるなど、いろいろと問題点が多かったのです。

しかし、このことは当時のパート社員だけに問題があったのではなく、管理する側にも問題がありました。当時のパート社員の仕事は、補助的な仕事という前提のもと、責任や権限が不明確で、会社からの情報提供も少なく、定期的な打ち合わせなどもなく、ルーティンワークはやるものの、ほぼ放任に近かったのです。

こうなると、パート社員は「会社のものさし」を持っていないわけですから、「自分のものさし」で物事を判断するようになり、不平不満が多いパート社員になってしまうのです。

著者(鈴木)が入社して2年ほどは、このような状態でしたが、ある日、所長が決断をしたのです。

2所長の決断

平成3年のある日のことです。所長から発表がありました。「これから監査スタッフを10名採用します」「監査スタッフって何?何が変わっていくの?」社内の変化には、不安がつきものです。

監査スタッフは、パート社員で会計監査の仕事をすると聞いても、「監査は正社員の仕事だよ。できるのかなぁ。それに人が集まると思う?」などと、社員もパート社員も不安でした。

しかし、新聞に募集の折り込みチラシを入れ、求人誌2誌に募集をかけたところ、多くの応募者が集まり、一気に採用することができたのです。

そもそも所長は、なぜこのような決断をしたのでしょうか。その理由は、「事務所の収益性を上げるため」です。それも、品質を落とさずに仕事をしていくためには、どうしたらよいか。その答えが、監査スタッフの大量採用だったのです。

当時の顧問先は、約300件です。顧問先の内訳は、売上数十億の企業から1000万円の個人事業主まで多種多様です。正社員1人が担当できる顧問先は、当然限界があります。だからといって規模の大きな顧問先に力を入れて、小規模の顧問先をないがしろにするわけにはいきません。

品質を落とさずに、サービスを提供していくにはどうするか。小規模の顧問先を正社員が担当していくことは、収益性の面から見ても無理があり、経営が成り立たなくなります。そこで、所長はパート社員に小規模の顧問先の監査をやってもらうということを考えたのです。

所長が、事務所の収益性を上げるためにパート社員を活用するということを思いついてから、決断するまでに、2~3年かかったとのことです。実際に行動に移すまでは、パート社員にきちんと仕事ができるかどうかを見極めました。

具体的には、前向きでやる気のあるパート社員1~2名に、通常の業務を任せながら、小規模の顧問先を数件担当してもらったのです。任せてみると、うまくいくことがわかりました。そこで、やるからには組織の改革も視野に入れて、戦略として実施しようと大量採用に踏み切ったのです。

採用後も不安が消えたわけではありません。私たちが心配したのは、正社員がやっていた仕事を、どの程度パート社員がやれるだろうか、ということはもちろんですが、一番は、顧問先の反応でした。

「パート社員をよこして、うちを軽くみているのか」という反応がくるのではないか。この点を非常に気を使いました。しかし、監査スタッフの活用が始まると、最も心配していた顧問先の反応は杞憂に終わりました。

顧問先から「丁寧だ」「きめの細かい仕事をしてくれる」「聞いたことに関して、レスポンスが早い」という高い評価をいただいたのです。

仕事の中身についても、研修を行い、引き継ぎをしっかりやって、きちんと教えていけば大丈夫だと私たちは、自信を持つことができました。

監査スタッフの活用は、事務所にとって初めての試みだったので、不安も大きく、試行錯誤を繰り返しました。今のように制度化するには、それから3~4年かかりました。しかし、パート社員の活用に着手してみると、収益面では倍以上の効果が出たのです。

企業がパート社員を活用する理由は、「人件費が割安だから」という答えが一番多いのですが、本当にコスト削減になったのか、計測している企業は少ないのではないでしょうか。

弊社でパート社員の活用が進んだのは、この計測がシンプルにでき、成果がわかりやすかったことも要因のひとつです。パート社員の活用を進めていきたいと考えている会社は、パート社員を採用したあと、正社員に仕事を任せていたころと比較して、実際にどのくらいコストが削減されたのか、計測することをおすすめします。

3本書のパート社員の前提は、「主婦」です

一般に、非正規の職員・従業員には、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員等の雇用形態があります。当社で雇用しているのは、パート・アルバイトで、派遣社員・契約社員は雇用していません。また、パートは、「主婦」を雇用しています。この理由は、グループ経営者である会計事務所所長の、主婦に対する以下の考え方によります。

●高い能力を持っている人が多い

●きめ細かい丁寧な仕事をしてくれるので、会計事務所に向いている

●仕事面で「主婦だから」という理由で、男性と能力に違いがあるとは思わない

●一家の主婦ということで、安定感があり、責任感もある

●家庭と仕事を両立したい

と考えている主婦に、最大限に力を発揮してもらいたいあとは、会社側が、いかにパート社員一人ひとりの潜在的に持っている能力を引き出すことができるかが、大きなポイントになります。

ここで、当社スタッフを4名紹介します。仕事への取り組み姿勢、物の考え方などを垣間見ていただければと思います。

総務・経理担当Kさん(現在、準社員になって5年目、パート社員の期間は4年)

──入社のきっかけを教えてください。

はい。家族で浜松に引っ越してきてから、まずは子供を預ける保育園を見つけて、職探しを始めました。自宅から近い会社を探していたのですが、小さな子供がいるということで、軒並みことわられました。そこで、少し通勤範囲を広げて探したところ、この会社を見つけました。家庭第一優先という募集記事が応募をするきっかけになりました。

──以前はどのような仕事をしていましたか?

経理と営業事務です。

──入社当時と、現在では意識の持ち方が違うと思いますが、何が一番違いますか?

そうですね、やはり仕事を任されているという責任感が一番違いますね。

──その責任感を強く感じるきっかけになったことは、何かありますか?

はい、あります。実は入社当初は経理を主にやっていたのですが、総務担当者が、部署を移るということで、私が総務・経理を全面的に任されることになったのです。正直、大変なことになったと思いました。事務所を辞めようかなと思ったのは、後にも先にもこのときだけです。

──でも辞めずにがんばったんですね。

はい、今にして思えば、もう後がない、やらざるを得ないという状況になって、覚悟を決めることになりました。逆に私に総務・経理を任せてもらってもいいのだろうか、ということを考えましたが、所長から直接お願いしたいということを伝えてもらったので、よしやろうと決心ができました。

また、働く環境が、私にとってとても都合がよかったんですね。子供の病気で休みをとったり、早退したりしても、周りが当たり前のように受け入れてくれました。家庭優先というのは本当だったんだ!と思いましたね。そのとき自分が助けてもらったので、今は小さなお子さんのいるスタッフを助けようと思っています。

──仕事への意欲、やる気をどうやって高めていますか?

総務・経理は、所長と話をする機会が多いのですが、「何か困ったことはないか」など常に気を配ってくれています。また、仕事面では、「次はこういうことをやってほしい」というように、期待されることが次々に増えています。大変でもあるのですが、期待をされるということは、評価をされているということですから、できるかぎり期待に応えたいと思っています。

それと仕事を任せられるときには、すべて任せてもらえるので、仕事を進めるのが楽ですね。今、私は準社員として、9時から5時まで働いています。残業はしないで就業時間内でフルにがんばっています。これは、所長に「Kさんのあとに続く人に、仕事が時間内にきちんと終わるところを見せてほしい」と言われているからです。

──これからの目標を教えてください。

はい、一緒に働いている総務・経理のスタッフに、私の仕事を任せていきたいと考えています。ただし、他のスタッフは扶養の範囲内で働いているので、無理のないよう配慮するつもりです。

また、私たちは、顧客はもちろん事務所内のメンバーにとっても、開かれた総務・経理を目指しています。全体の仕事がスムーズにいくように気を配っていきたいですね。内部スタッフTさん(現在、準社員になって1カ月目、パート社員の期間は7年9カ月)

──入社のきっかけを教えてください。

結婚して家庭に入りましたが、ずっと家にいるよりは働きに出たいと思い、求人誌に募集記事が載っていたので、応募しました。

──以前はどのような仕事をしていましたか?

食品会社で、検査やレストランのメニュー開発をしていました。

──入社してから今まで、がんばることができた理由を教えてください。

はい。私は、以前勤めていた会社で正社員としてがんばっていました。しかし、パート社員になったら、もうそんなに期待もされないし、仕事も任されないんだろうと思っていました。ところが、こちらの事務所は、期待をかけてもらえるし、仕事を任せてもらえます。ありがたいなぁと思いました。

私の仕事は、期限の決まっている仕事が多いので、責任を感じます。やっぱりがんばる理由のひとつには、責任感がありますね。これは真っ先に思い浮かびます。とは言っても私だけでなく、みんながやっていることです。仕事の大変さというのはあるのですが、一緒に仕事をするメンバーに恵まれて、わからないことはすぐに相談できますし、チームワークがとてもいいと思います。

──社内の雰囲気が良いとみなさん言いますね。

そうなんです。これだけ女性がいて問題のない気持ちのいい職場というのは、めずらしいと思います。私たちは、お昼ごはんを会議室で食べるのですが、会議室に入った順で座って、特定のグループ同士でかたまるということがないんですね。我が社では当たり前の環境ですが、この事務所を辞めた人が、全員口をそろえて、事務所の雰囲気が良かったと言いますね。

──職場の環境もがんばる理由になるでしょうか。

はい、大きいと思います。職場で、プライベートでも付き合える仲間に出会えるとは思ってもいませんでした。それと、会社の中に自分の居場所がしっかりあるという感じがしています。

──これからの目標を教えてください。

私自身の経験を通じて、後輩が自分で考える姿勢を身につけられるよう、手助けをしていきたいと考えています。会計の仕事は、結果としては同じでも、なぜそうなるのかを考えて、自分で調べたりすることがとても大事だと、最近特に思うのです。

マニュアルに頼って、自分で考えなくなると、微妙な判断を必要とされるときに応用が効かないような気がします。もちろん私自身、「考える姿勢」を見せていきたいと思っています。助成金・社会保険・給与担当Mさん(入社して3年1カ月)

──入社のきっかけを教えてください。

次女が小学校に入学したので、そろそろ働こうと思いました。こちらの会社は、知り合いが働いていて、すごくいい会社だということを聞いていましたし、ちょうど求人誌に募集記事が載っていたので連絡しました。

──以前はどのような仕事をしていましたか?

総務部で事務を担当していました。

──入社して3年がたちますが、今の状況を教えてください。

私の担当している助成金の仕事は、ちょっとしたミスで申請ができなくなってしまったりするので、まちがいがあってはならないものです。お客様に、「こうします」と約束をしたら、必ず実行しなければいけないので、重い責任を感じます。

──そのなかでやりがいを感じるのは、どんなときですか。

そうですね。ある程度1人で判断できたり、仕事をやりきったときはうれしいですね。同じくらいの給料でもっと楽なパートもありますが、ここではみんながんばっていて、手を抜いたりしないので、私自身ちゃんとしなければいけないという気持ちになります。他のメンバーから刺激を受けることが多いですね。

私は、取引企業のところに伺う機会が多いのですが、みなさん、雇用者の問題でとても困っています。よく、「おたくは、みんなちゃんとしているね、感じがいいね」とほめられます。よそからみても、私たちの会社のメンバーは、しっかりしていると思われているんだなと感じます。

──職場の仲間とは、どのように協力し合っていますか。

助成金の仕事は、2人で協力し合っているのですが、上司に相談するほどではない、ささいなことが聞ける相手がいて、とても助かっています。責任のある仕事を1人でやるのは、やはりプレッシャーがあります。もちろん責任はきちんと果たす心づもりでいるのですが、子供の病気など家庭の事情もあります。

2人ペアで仕事ができるというのは、とても気持ちが楽になります。他のメンバーもとても協力的です。わからないことをたずねると、必ず手を止めて聞いてくれます。助け合いの精神があって、仕事がしやすいですね。

──これからの目標を教えてください。

仕事の中身をもっと勉強していきたいです。将来的にどのようになりたいのか、ということはまだ漠然としています。今はパート社員でいいのですが、将来については、今後の課題です。内部スタッフUさん(入社して3カ月)

──入社のきっかけを教えてください。

家の近くで働きたくて、こちらの募集が目にとまったのがきっかけです。

──以前はどのような仕事をしていましたか?

製造業の会社の人事部で、社会保険と新卒採用の担当をしていました。

──こちらに入社しての印象は?

優しいけれど厳しさがあるという印象です。1回やったことはわかっているという前提があるので、次は1人でやれるように自分でも復習する必要を感じています。入社3カ月でまだ失敗が許されていますが、そのうち通用しなくなると思います。初歩的なことでミスをしない、依頼された仕事は100%で返したいと思っています。

──そのほかにはありますか?

面接などで、要求されるハードルが高いことは自覚していましたが、例えばスタッフミーティングで3分間スピーチをするなど、求められていることが多方面にわたっているなと感じます。

──正社員で働いていたときとギャップを感じますか?

以前の上司からは、自分の課の目標などはあまり伝えてもらえなかったんです。それで、いつも「これでいいのかな?」と思いながら仕事をしていました。こちらでは、所長から直接話を聞く機会も多く、スタッフミーティングでも意識の統一がされているので、自分の進んでいく方向が見つけやすいと感じます。

──家庭との両立で気をつけていることはありますか?

特に気をつけていることはないのですが、時間が短いので働きやすいです。余裕があるので、キリキリせずにすみますね。そういえば、この間、3日間休みをいただいたんです。2歳の子供を母に預けているのですが、母の都合が悪くなり、3日間の休みをドキドキしながら打ち明けました。するとあっさりOKがもらえて、休んだあとも肩身の狭い思いをしなくてすんだので、本当にありがたいなぁと思いました。

──今後の目標を聞かせてください。

1年間は修行だと思っているので、積極的にいろんなことをやって自分のものにしたいです。それと会計の勉強と、今までのキャリアで身につけた社会保険の知識をうまく併せて、お客様の役に立つように提供していきたいと思います。違う部署で働くスタッフ4人に、働く動機や職場について話してもらいました。

今の私たちの会社の雰囲気を理解していただいたのではないでしょうか。主婦のパート社員を雇用するデメリットとして、「子供の関係で休みが多い」「時間の融通が利かない」等を聞きますが、私たちはこれをデメリットと捉えていません。

例えば、3人のお子さんがいて、外で働きたいという人は、家のこともやりながら仕事へもチャレンジをしようとしているガッツのある人だと判断しています。同じように、小さなお子さんがいて、外で働きたいという人は、困難が予想できても前向きにチャレンジできると判断しています。

また、就業時間に関しては、やる気のある人が働いていけるように会社側が配慮していく案件と考えており、主婦にとって、都合のよい職場であるよう気を配っています。当社が、「主婦のパート社員」に限っているのは、守秘義務等の管理の問題があります。

派遣社員、契約社員等、現場の裁量で採用し、さまざまな雇用形態の人々が働くようになると、管理が煩雑になり、働く側のモチベーションの維持や意思統一が難しくなります。そこで、当社では、パート社員は「主婦のパート社員」に限るようにして、一元的に管理しているのです。

4制度化への道のり

さて、監査スタッフの大量採用後、活用は順調に進みました。ところが、しばらくすると、以前からいるパート社員との軋轢が生じ、辞めていく人も出てきました。パート社員の人数が多くなると、経営者の目も届かなくなり、きめ細やかな教育ができなくなってきたことに気がつきました。

そこで、研修を事業としているグループ内の(株)エスエスブレーンにパート社員の研修をしてもらうことにしました。研修を依頼するにあたり、所長と研修を行う著者(関)が打ち合わせを行い、何を伝えてもらうのかを明確にしていきました。

同時に、これまでの新人教育を見直してみました。パート社員を私たちに預ける目的は、このように働いてもらいたいというモデルを見せることと、正しいビジネスマナーを身につけること、仕事の心構えを習得させること、新人にはさらに、グループの雰囲気に慣れさせるという4点になります。

この指導を通して、会社の組織風土が醸成するのは、一朝一夕にはいかないということを痛感しました。できるところから少しずつ取り組んでいかなければ、組織風土はつくれません。すぐにできるという、特効薬はないのです。

指導するタイミングひとつとっても、入社して数カ月経った人と、入社したての新人では、指導を受ける態度や真剣さが違います。また、指導する側の心構えが問われるということも、何度か経験しました。以前からいたスタッフの中には、研修を受けることに難色を示し、辞めていく人もいました。

組織の変化についていけない人も当然出てきます。しかし、それは仕方のないこととして受け止め、協力してくれる人と新たな組織作りを進めました。

5当社の構成とパート社員の仕事

ここで、私たちエスエスグループの会社構成について説明します。エスエスグループは、静岡県西部の浜松市にある会計事務所を母体としています。グループは4つで構成されていて、それぞれの業務は次のとおりです。

当社ではパート社員をスタッフと呼んでいますので、それに準じて表記しています。

鈴木眞一会計事務所

①監査スタッフ(パート社員12名顧問先を担当、1人が担当するのは、10件前後)

●月次監査・月次決算●決算業務●年末調整●事業計画書作成

②補助スタッフ(準社員1名パート社員6名小規模の顧問先を数件担当)

●担当顧問先の会計監査●事業計画作成●月次監査・月次決算●税務申告●年末調整……社員のサポート

③OAスタッフ(準社員1名パート社員5名)

●給与計算代行業務●社会保険等書類作成業務

④総務・経理(準社員1名パート社員2名)

●申告書の提出業務●登記関係の提出業務●職員の社会保険関係・給与計算・有給休暇管理●所長のスケジュール管理●会議日程調整●事務所の年間計画表作成●会計事務所の経理事務●所内の在庫管理浜松建設事務センター(準社員1名パート社員2名)●建設業新規許可申請手続き●産業廃棄物等の許可申請●県市町村入札参加手続き、関連書類の作成、提出業務株式会社BTC(パート社員5名)●パッケージソフトの導入・操作指導・サポート●パソコンによる業務改善の企画・提案株式会社エスエスブレーン(パート社員4名)●研修の企画、運営、営業●リーダー・主任研修、新入社員研修、ビジネスマナー研修等の研修講師●ニュースレター作成●経営会議の資料作成●ホームページ作成●エスエスグループの採用受付、新人指導

細かい部分は省きましたが、「パート社員にできない仕事はない」を前提に、これらの業務をパート社員が担当しています。

第3章採用編ダイヤの原石を見つける方法

1パート社員の採用でこんなミスをおかしていませんか?

社員「パートのA子さん、今月で辞めたいって言ってきてますよ」

社長「ほんとか?困ったなぁ、忙しいってわかっているのに。責任感がないよな」

社員「そうですね、社長、どうしますか」

社長「どうしたもこうしたも、新しい人を採用しなきゃいけないだろ」

社員「じゃあ、いつものところに記事を載せてもらうようにしますね」

社長「ああ、一番小さい枠でいいから、早く載せてもらうように頼んどけよ」

社員「はい、時間はどうしますか?」

社長「そうだなぁ、今、忙しいから、9時5時で出しといて」

社員「はい、じゃあ頼んでおきます」

就職情報誌に記事を載せたものの問い合わせが少なく、面接をしてもいい人がいないということでパートさんが辞めたあとも結局補充ができていない。また、とりあえず面接に来た人の中で採用したものの、期待どおりの仕事をしてくれない。このようなことを私たちはよく耳にしています。

このように、安易に採用を考えていると、「いい人」が取れるということは本当にまれで、偶然を頼ることになってしまいます。「おたくは、いい人を採用できて、うらやましい限りだね」とよく言われます。でも、いい人を採用できるようになるまでには、私たちもたくさんの失敗をしてきました。

だからこそ強調して言いたいのですが、採用はとても重要です。当社では採用を慎重に行っています。また採用の場というのは、経営者の思いを伝える場だと捉えています。どんな人に来てもらいたいのか。どんなことを期待するのか。こちらの思いに賛同してくれる人を採用しなければなりません。

この根本が違う人を採用してしまうと、採用してからが大変です。採用してから、根本の部分を相手に変えてもらおうとしてもなかなかうまくいかず、とても苦労するうえ、時間もかかってしまいます。

10数年にわたってパート社員の教育を行ってきましたが、根本的に考え方が違う人に会社の業務を理解してもらい、協力してもらうことは難しいのです。

採用の段階では、まず、こちらの思いに賛同してくれる人を採用しなければなりません。では、これから、長年パート社員の採用に携わる中で感じていることをお話します。

2なぜ未経験者を選ぶのか?

採用面接で、パート社員を希望する人の話を伺うと、自分の都合が聞き入れてもらえれば働きたいと考えてはいるものの、現実には条件が合わずに二の足を踏んでいる人が多いと感じます。

「以前から働きたいと考えていましたが、今日ようやく決心して面接にうかがいました」と話す人が多いのです。今、私たちの会社で働いているパート社員の前職は、バラエティーに富んでいます。

事務、秘書、栄養士、営業、専門学校講師、金融機関、住宅会社、歯科助手、教員、保母、CADオペレーターなど、以前の職場で十分に経験を積み、活躍していた人たちです。

前職で実績を上げていたけれども、結婚や出産、夫の転勤等で家庭に入り、また機会があれば働きたいと考えている人はたくさんいます。

この人たちがどうすれば、ビジネスの場に再び足を踏み入れることができるのかを考える必要があります。私たちは、募集をかけるときに会計の実務経験は問いません。

むしろ未経験者を選ぶ傾向にあります。その理由は、経験があることにより、以前のやり方にこだわり、新しいやり方を受け入れにくいケースがあるからです。

今まで、即戦力を求めて経験者を採用し、その結果、実務はこなすけれども、トップの意向を受け入れることができずに辞めていくということを何回か経験しました。

このようなことを通じて、スキルよりも会社の方針にどれだけ共感し、協力してやっていくことができるか、ここが一番大事だと気付いたのです。

今では、未経験でもやる気のある人を採用し、入社後、育てていくという方針をとっています。パート社員と一口に言っても、それぞれの経験を通じていろんな人がいます。

以下に、私たちがパート社員と接した中で感じた、大まかな傾向を紹介します。

●大企業にいた人は、基本的なトレーニングを受けているので、組織の中での役割行動が身についている人が多い。ルールを守り、上下関係などしっかりけじめをつけることができる。ミスが少なく安心感がある。

●中小企業にいた人は、任されていた仕事の守備範囲が広いので、臨機応変な対応ができる。発想が柔軟で、すぐ行動に移すことができる。自分で思っている以上に能力が高い人が多い。これらは、あくまでもひとつの傾向ですが、それぞれの環境で働いていたメリットがあります。採用の際には、主婦というカテゴリーでひとくくりにせず、先入観を持たずに本人の資質を正確に見ることが大切だと考えます。

3採用スケジュール・年間予算・1人を採用するのにかかる金額

私たちは、年間を通じて募集をかけているので、履歴書が到着すると、次の図のような採用面接スケジュールを組んでいます。

応募者の履歴書は、郵便またはメールで届くので、迅速に対応するようにしています。採用に関して、当社では、人員が不足しているので採用をかけるということは、やっていません。正社員・パート社員とも、「いい人がいたら採用する」を原則として、年間を通じて採用をかけています。

そのため、事業計画の作成時に、採用の年間予算を組んでいます。同時に、募集記事の年間スケジュールを決めます。地元に求人誌が3誌ありますが、3誌同時に募集記事を出す時期と、1誌のみに出す時期、2誌に出す時期というように計画を立てます。

以前、必要に迫られて募集をかけたこともありましたが、結局1人も採用できなかったことがあります。採用は、思いつきでやってもうまくいかないということを実感しています。

ちなみに、昨年私たちがパート社員1名を採用するのにかかった金額は、約20万円強です。確かにコストはかかりますが、パート社員の平均勤続年数は4年6カ月で、確実に収益を上げ、会社に貢献してくれるので、採用などにかかる資本の投下は必要と判断しています。

4応募したいと手を挙げてもらうには

「いい人がいたら採用したい」これは、どこの会社の採用担当者でも口にする言葉です。とはいえ、ただ待っていても「いい人」は会社にきません。なるべくたくさんの人に、この会社で働きたい、と手を挙げてもらいたいものです。

なぜならば、その中から「いい人」を選んでいきたいからです。では、どうすれば手を挙げてもらえるのでしょうか。そこで注目したいのが、パートで働く理由です。

『平成18年度版パートタイマー白書』によると、主婦がパートという働き方を選んだ理由は、1位家事や育児と仕事の両立を図りたいから(64・4%)2位自分の都合のよい時間や曜日に働きたいから(57%)3位扶養の範囲内で働きたいから(40・4%)となっています。

つまり、募集側は応募したいと手を挙げてもらうために、これらの理由を満たさなければならないのです。

当社の募集記事には、「あなたの生活に合わせて始めてください」「社会との接点を持つチャンスです」「子供の病気・行事等につきましては優先いただいて結構です」と明記します。

時間については、「9時から17時の中でお好きな5時間」、勤務日は、「週4日または5日で自己申告」としており、扶養の範囲内で働いてもらいます。

主婦のパート社員は、働くためにはいくつかの条件をクリアしなければなりません。私たちは、たくさんのパート社員と一緒に仕事をする中で、主婦にとっては1日5時間という時間が、仕事と家庭を両立するための最適な時間と判断しています。

募集段階では、どうすれば彼女たちが働きやすいのかを考え、それを彼女たちへわかりやすくアピールしていくことが重要です。もっと詳しく見ていきましょう。

5いつ、どの媒体を選んだらいいか

これは当社のデータですが、皆さんの会社と共通するところも多いはずです。①応募の多い時期応募者が多いのは、基本的に長期の休み前後です。

●春休み前後

●ゴールデンウイーク前後

●夏休み前後

●冬休み前後

今までの経験から、このように子供の休みの前後に多いのが特徴です。その理由として、子供が小学校の高学年になると、子供の休みに合わせてパートに出ようとする人がいます。子供が低学年では、子供が学校に行っている時間帯にパートに出ようという人がいます。

パート社員は、子供の入学などの家庭内の変化によって、働きに出ようという傾向があるのです。家庭から社会(職場)にもどるには、何か大きなきっかけが必要です。

そういうものに後押ししてもらわないと、なかなか決断しづらいのが現状です。

②募集媒体求人募集の手段ですが、地方都市では、地域の求人情報誌に記事を掲載するのが安くて活用しやすいと思います。多少の金額差はありますが、2分の1ページのスペースをとっても、4~5万円です(次図参照)。

大量に採用したいときには、新聞の折り込みチラシも有効です。資金に余裕があるときには、新聞の求人欄にも載せるとよいでしょう。また、職業安定所にも忘れずに募集をかけておくなど、できるだけ多くの媒体を活用することが望ましいのです。

これらの募集媒体に、時期を集中して出すと人は集まります。職を探している人は真剣ですから、目に触れる機会が多いと、この会社は真剣に人を募集している、今人手がなくて困っているんだ、今だと採用の基準が低くなっているのではないか、などと思います。

面接を受ける側の、心理的なハードルが低くなるのです。まずは、自分でも選んでもらえるのでは、と思ってもらうことが大事です。ちなみに、募集をかけるときは、地方の求人誌3誌に同時に掲載します。経費としては1回15万円、1カ月で30万円です。

これで優秀なパート社員1~2人を採用できたら、十分に元が取れる有効な投資です。というのも、採用したものの期待どおりの仕事をしてくれず、そういう人が半年や1年で辞めていくということが、多くなってきているからです。

最近のパート社員の勤続年数の短さなどを考えれば、採用にかける費用は年間予算を確保し、適切に採用して、指導するということが大切になります。

③募集記事の書き方募集広告を出すときは必ず、募集記事に社長の求人に対する思いや考えを入れてください。情報誌の担当者に希望だけ伝えて作ってもらうと、他の募集記事に埋没してしまって目立ちません。一度情報誌を見てください。

会社名と処遇が違うだけの、似たような募集記事がほとんどです。こういう人に来てもらいたい、という「思い」をしっかり作ると、相手にも伝わります。採用する側が自分の言葉で語りかけているものかそうでないのかは、真剣に職を探している人には敏感に伝わるのです。上手に書けなくても、まず自分の

言葉で、どういう人に来てもらいたいかを書き出すことをおすすめします。よく募集記事で見かけるような、「やる気のある方求む」や「業界経験者優遇」では、職探しをしている人に伝わりません。より具体的なメッセージを伝える必要があります。

●例えばこんな経験を活かしてほしい

●まず最初に着手してほしいこと

●あなたに解決してほしいこと

●あなたに約束される待遇と将来

●あなたの職場とメンバーを紹介します

●あなたはこんな知識や技術が身につきます

経営者の頭の中にイメージとしてあるものを言葉にし、それを募集記事へなるべく具体的に盛り込むことが必要です。

また、記事では夢を語ることも大事です。夢、つまり会社の方向性や未来、ビジョンなどのことです。それを踏まえたうえでどんな人に来てもらいたいのか、そして、この会社で働くことによって何を得られるのかを伝えていただきたいのです。

求人誌を見ると、会社側の都合ばかりを書いている募集記事がほとんどです。これでは夢がないのです。その仕事をすることでどのように成長できるのか、どんなことを身につけることができるのかを、ぜひ盛り込んでみてください。募集記事にこれらのことを盛り込むには、ある程度の大きさが必要です。

小さな枠では、伝えたいことが伝えられません。情報をきちんと載せられる大きさの広告にしてください。私たちの募集記事の一番の特徴は、パート社員が働く上でネックになりがちな子育てのことを、次のように呼びかけています。

「子供の病気・行事等につきましては優先いただいて結構です」この一文は、とても効果があり、重要です。実際に、働いているお母さんから、参観会や学校の行事に参加するとき、職場で肩身が狭いという話をよく聞きます。

このように募集をかけると、安心して仕事ができるという理由で、たくさんの人が面接に応募してきます。「こんなことを明言すると、仕事に支障があるのでは?」と思うかもしれません。

しかし、私たちの会社は、保育園や小学校に通っている子供がいるパート社員ばかりです。そういうパート社員は、子供のことを優先させても、同じ立場のパート社員同士でカバーし合ったり、仕事を前倒しにして進めたりと工夫するので、仕事への支障はほとんどありません。働く側の都合を考慮していくということは、優秀なパート社員を採用するために避けては通れないことなのです。

「こうすれば働けるのに」といった問題を解決している企業に、優秀な人材は集まるからです。さらに、募集記事を読んだ人が、応募しやすくする工夫も必要です。「お気軽にお電話ください」という一文をよく目にしますが、実際にお気軽に電話する人は皆無だと思います。

当たり前のことですが、電話をかけやすくするために、受付時間や担当者名を書いておくことが大変重要です。読みにくい苗字でしたら、カタカナで明記しておくといいでしょう。担当者や時間帯がわかっていると、「○○を見てお電話したのですが、担当の○○様をお願いいたします」とスムーズに電話できます。

しかし、明記していない場合は、担当者は誰だろうとか、今、電話して担当者はいるのかな、などと心理的な負担が生じてきます。このような余計な心理的負担を取り除くためにも、受付時間や担当者名は明記しておく必要があります。

④問い合わせの電話で期待値を上げる

当社では、採用の受付窓口は私たちパート社員が担当しており、日によって5~6本の問い合わせの電話を受けます。この問い合わせの電話への対応も大変重要です。というのも、かけてくる相手も何社かに問い合わせの電話をしているので、この会社の対応はどうだろう、テキパキしているか、感じはいいかなどをよく見て(聞いて)いるのです。

電話で好印象を与えるために、私たちはよく聞かれる質問に対して、次のようなマニュアルを作っています。

Q資格を持っていません。未経験でも大丈夫ですか。

Aはい、他業種からの経験のない人が大半です。一番大事なことは、ご本人がどれだけがんばることができるかだと思います。研修期間等もあり、こちらからの指導もありますが、ご本人のやる気と努力が最も重要だと思います。

Q監査スタッフの仕事の内容を教えてください。

A監査スタッフは研修のあと、担当顧問先を持ちます。その顧問先の毎月の会計監査を行います。また年間を通して、決算・年末調整・確定申告などを責任を持って担当しています。

Q面接日はいつになりますか。

Aまず、履歴書をお送りください。履歴書が届き次第、書類選考をいたします。そのあと、面接日をご連絡させていただきます。面接日は、基本的に土曜か日曜の午前9時からとなっております。

Q時間はどれくらいかかりますか。

A午前中いっぱいかかります。まず応募者全体に対しての説明をしたあと、個人面接と試験に移ります。試験の内容は一般常識・性格診断・職業適性です。

Qそちらの場所を教えてください。

A中央警察署がおわかりになりますか(誰でもわかる目印になる建物を示す)。中央警察署の前の高林バイパスを北に向かいます。中央警察署を過ぎてから、2つ目の信号を左折してください。そのまま200メートルほど進んだ左手の3階建ての建物が弊社になります。看板が出ておりますので、おわかりになると思います。お気をつけて、お越しください。

これらのマニュアルを作っておくと、担当者が不在の場合でも対応が可能です。例えば、「申し訳ございません。あいにくAは外出しております。私、Bと申しますが、代わってご用件をお伺いいたします」と対応することができます。

先ほど、応募者は応募する会社をよく見て(聞いて)いると言いましたが、私たちも応募者をよく見ています。電話での問い合わせで、返事が「ふん、ふん」という人や反応や相づちが全くない人がいます。

また、質問に答えているこちらの話が終わらないうちに、次の質問をしてくる人、仕事の中身よりも、休みなどの処遇を必要以上に気にする人、「私でも大丈夫でしょうか」と聞く人……。今まで、多くの問い合わせの電話を受けてきましたが、最初に「おや?」と違和感を持った人は、そのあとに面接と試験を受けてもらっても、ほぼ不採用になっています。

6一次面接……いい人を採用するためのステップ・バイ・ステップ

一次面接の目的は、二次面接に進む人を見極めることです。面接というのは、「こちらも選ぶが、あなたも会社を選ぶ。立場としては、フィフティ・フィフティである」というのが大前提です。

一次面接は毎回、土曜日か日曜日の午前中を使って行います。あらかじめ面接日を3日ほど決めておき、応募者へ一番近い日程から知らせて調整をします。面接日を土日の午前中に設定している理由は、

●一度にまとまった人数で面接を行うほうがメリットが大きい

●平日の昼間に個別に面接を行っていると、担当者の日常業務に支障が生じる

●応募者の中には働いている人もいるので、土日のほうが都合がいい

というケースが多いなどの理由があるからです。

まとめて面接を行うメリットは、大勢の中からこちらの希望にマッチした人を選ぶことができるということと、採用になった人が、「あれだけの人数の中から私は選ばれた」という意識を持つことができ、モチベーション・アップにつながる点にあります。

また、一次面接は私たちの上司が担当しており、経営トップではありません。最初から経営者が面接をすると時間のロスが大きいので、まずは、採用担当者が面接を行います。

①情報提供一次面接は、各回の面接につき、5~10名ほどのまとまった人数になります。午前9時に応募者に来てもらい、最初は担当者から情報提供します。ここでは、どのように働いてもらいたいかを以下のように、こちらからの期待、思いをしっかりと伝えます。

当社の採用に応募していただきまして、ありがとうございます。それでは早速、本日のスケジュールと採用の今後の予定について、お話をさせていただきます。本日のスケジュールは、このあと30分ほど当社からの情報提供をいたします。

その後、試験を行いますが、12時30分までの終了を目安に行ってください。その間、個人面接を行います。時間は約15分ほどかかります。1人ずつ呼びに参りますので、ご協力をお願いいたします。

個人面接と試験が終了しましたら、そのまま用紙を伏せて、本日はお帰りください。試験の結果は、専門機関から水曜日か木曜日くらいまでに私の手元に届きます。

そこで判断し、今回見送る方につきましては、履歴書をご返送いたします。試験の結果が基準をクリアしていましたら、二次面接という形で進めさせていただきます。

二次面接の方は、また来週の土曜日か日曜日に、面接をさせていただくことになります。二次面接は個人面接になりますので、都合の悪い方は遠慮なく申し出てください。

スケジュール調整は、責任をもってこちらでやります。二次面接のあと、2、3日で最終結論を出します。一次面接から最終結果が出るまでに10日間位かかりますので、ご協力をお願いいたします。

さて、それでは当社のことについて話をしてまいります。まず、当社の雇用形態は、パート社員、準社員、正社員と3つあります。

パート社員は雇用保険に入っていますが、社会保険には入っていません。

1日5時間勤務で、週4日稼動の方と週5日稼動の方と二通り募集をかけております。

週4日稼動の方は時給900円、週5日稼動の方は時給850円になっております。

この違いの理由は、今現在、市の託児所の基準で週5日、1日5時間以上の勤務でないと子供を預かってくれないという現状があります。そういう事情により、週4日または週5日を選んでもらうということで二通り用意をしてあります。

当社のパート社員は、103万円の扶養の範囲内で働いてもらうことを前提にしており、残業を一切禁止しております。さきほどの時給の違いは、扶養の範囲内でというところから発生しております。

というのも、週5日で時給900円にすると103万円の扶養の範疇を超えてしまうため、850円という時給で調整をしております。どちらを選ぶかは、皆様のご家庭の事情次第です。

ちなみに、当社のパート社員の8割は週4日、1日5時間稼動で働いております。また、後ほど行います個人面接の時点で、1日5時間のうち働きたい時間帯を確認させていただきます。

さらに、週4日の方については、働きたい曜日を確認させていただきます。募集記事にもうたっておりますが、当社のパート社員は「家庭第一優先」です。

具体的に説明しますと、学校の行事、または、お子さんの病気等で休むということに関しては、そちらを優先してくださいということです。

パート社員の方の仕事については、「家庭第一優先」に働いてもらうために考慮しており、今いる40名のパート社員も何のトラブルもなく働いております。

ただし、会社に出社後は対応が違います。私どもの会社は、仕事の領域と仕事の責任というものをパート社員、準社員、正社員で分けて考えておりません。これはもう全く同じ扱いをしております。

当社の考え方として、パート社員は働く時間帯が違う従業員というかたちで捉えております。具体的に総務・経理の例を出しますと、会計事務所の総務・経理は準社員1名、パート社員2名で担当しています。

正社員は配置しておりません。入社手続き、退社手続きなどのほか、総務と庶務の仕事全般を行っております。当然決算書の作成から事業計画の作成も行い、大企業の総務・経理の業務と、ほぼ同じことをやってもらっております。

中小企業ですので、処理の数が少ない、人員の数が少ないというだけで、発生する案件は同じです。そういう中でスムーズに業務を進めております。

皆様の中にはパート社員ということで、仕事の補助・サポートというイメージをして応募をされている方がいらっしゃるかもしれません。当社は、そういう意味では、正社員と全く同じ扱いをしていますので、補助もしくはサポートという感覚で応募されているのであれば、もし採用になっても勤まらない会社です。

採用後から研修がスタートしますが、将来的にも勉強し、仕事のスキルを高めていくという努力がなされないと、なかなか勤まらない職場です。逆の言い方をすれば、ここで働くと仕事の能力とスキルを高めることができます。そこのところを十二分にご理解ください。

次に、準社員についてお話しましょう。準社員につきましては外部からの募集をかけておりません。しかし、皆様には関係がありますので、簡単に説明することにいたします。

準社員につきましては、雇用保険・社会保険に加入していただきます。こちらの処遇ですが、収入の上限というものは取り払われ、働く時間帯も、朝9時から夕方5時までの1日7時間勤務になります。

ボーナスも年2・5カ月分支払われます。働くスタンスとしては、仕事と家庭の両立ということを目指しています。準社員は休みを取る場合、事前に有給休暇届けを提出し、休暇を取ることになっています。

ちなみに、準社員には、知識力を高め向上しようという気持ちを持ち、戦力として付加価値を高められる方を求めております。社内においては、準社員を希望する人もいますし、扶養の範囲内で働いていきたいという人もいます。

いずれにしても、本人の選択と会社の期待の中で、準社員の登用は考えております。以上、パート社員と準社員について説明してまいりましたが、皆様自身がここで働きたいということであれば、今から試験を行いますので、真剣に取り組んでください。

もし、ご自分のイメージと違うということであれば、このあとに時間をとりますので、このままお引取りいただいてかまいません。休憩を取りますので、もう一度、この会社で働きたいのか、そうでないのかを真剣に考えてみてください。以上のように、ここでは会社の雇用形態に関する情報をすべて伝えるように心がけています。

採用になったあとで、聞いた話と違うというトラブルがないように注意しています。説明後、チャレンジしようと思う人だけ残ってもらい、そうでない人は帰ってもらいます。これはお互いに求めるものが違うので、時間を無駄にしないためにも促していることです。

今までの経験では、ここで約1割の人が帰ります。この説明の冒頭に、面接というのはこちらも選ぶが、あなたも会社を選ぶ。立場としてはフィフティ・フィフティだと書きました。言葉を替えれば、フィフティ・フィフティとは自分でどうするか選択をすることです。

自分で選択することには責任が伴います。そして、それは主体性につながります。まずはパート社員が自ら働く場を自分で選ぶこと。これは簡単なことのように見えますが、とても重要なことなのです。次に、残った人に試験を受けてもらいながら、1対1の個人面接を順番に行っています。

②試験試験は学校法人産業能率大学総合研究所の『新人適性総合テスト』を使用しています。テスト内容は基礎能力・性格特性・職務関心の3側面から構成されています。費用は1人当たり4200円(税込み)です。

月曜日に試験を送ると、木曜日にFAXで結果が送られてきます。試験中、私たちは、試験の内容を説明したあと、マークシート方式の試験に取りかかる手際の善し悪しなども見ています。試験をする最大の目的は、面接のときのイメージと試験結果のすり合わせをするためです。

試験の結果が出てくると、面接時の印象と試験結果の差異に注目します。差異がなく、点数が基準ラインをクリアできていたら二次面接に進みます。しかし、差異がある場合には、面接時の印象を優先しながら、その差異を確認します。今までの経験上、差異が感じられないというのは約65%ほどで、残りの35%は差異を感じています。

③1対1の面接個人面接は、1人当たり15分ほど時間をとって行います。まず、履歴書では字が丁寧で自信のある字か、また、写真も応募にふさわしい写真かを見ます。応募者に質問したいことがたくさんあるかもしれませんが、質問内容も書けるものと、口頭で聞いたほうがいいものに分けられると思います。書けるものに関しては、次のようなシートにまとめてもらっています。

口頭で質問することは、前の会社を辞めた経緯などです。結婚や出産、またはご主人の転勤などの理由や、次の目的があって辞めたというのであれば問題ありません。

しかし、辞めた理由が、人間関係や会社や上司に不満があってということであれば、注意が必要です。その理由が、常識的にみて正当なものであればいいのですが、往々にして本人の思い込みによる不平不満になっていることがあるからです。

そういう人を採用してしまうと、また同じような理由で不平不満を持ち、困ったパート社員になる恐れがあります。

ここでは、その人自身が未解決の問題を抱えているかどうかを確認します。また、当社で働きたいと思った理由を聞き、当社の基準で働くことの確認をします。会計事務所はどちらかといえば、裏方的な仕事です。特に前職が華やかな業界にいた方には、どのように考えて応募してきたのかをお聞きします。

面接の最初に、「全体説明を聞いて何か質問はありませんか?」と聞き、最後には、「他に質問はありませんか?」と聞きます。最後に念押しして確認することで、あとから聞いておけばよかったという不満を残させないようにしています。

そのほか、面接では服装、言葉づかい、立ち居振る舞いなどの第一印象を見ることはもちろん、理解力や要点把握力などの基本的な能力も判断していきます。これは会話の中で判断します。面接の印象と試験の結果で採否を決め、次にトップとの二次面接を行います。

7二次面接……「いいと思って即採用」がまずい理由

二次面接はトップが面接します。ここでは、一次試験を通過した人たちに対して、当社で働く意思の確認と、当社でどのように働いて貢献してくれるのか、次の4点を個々に確認するようにしています。

①プラス思考でいてほしいということ

二次面接で応募者に最初にお願いし、確認していることは「プラス思考でいてほしい」ということです。物事は二面性を持っています。例えば、指示を出されたときに「よし、やってみよう」と思う人もいれば、「難しそう、やりたくないな」と思う人もいます。

出された指示は同じものであるにもかかわらず、指示を受ける人の気持ちの持ちようで、いろいろな受け止められ方があるからです。

経営者の考え方や会社の方針について伝えたときに、「そんなの無理だよ」「やりたくない」では通りません。会社の方針は十分に検討された上で出されることですので、素直に受け入れて取り組もうという気持ちを持ってもらえる人でなければ困ります。

②この組織を少しでも良くしようという気持ちを持ってほしい

組織をかたち作っていくのは、私たち一人ひとりであるということを伝えています。「誰かがやってくれるだろう」とか「私はパートだから関係ない」ではなく、組織を良くするために、「私はどのようにしたらいいか」という当事者意識を持って働いてもらいたいからです。

③休みの調整

わが社では、「子供の病気・行事等につきましては優先いただいて結構です」と明言しており、実際に休んでもらっています。ただし、週4日勤務を希望している人には、休みを取った場合、本来休みに当たる日に出社するなどの配慮をして、できるだけ仕事に支障がないように協力をしてほしいとお願いしています。

④車の運転について

現在、当社では、従業員全員が車通勤で、自分の車を使って顧客先や役所などへ行っています。そこで、次のような質問をしています。

「『静岡市まで資料を届けに、高速道路を使って行ってほしい』と言われたら、行くことができますか?」ここで「はい」と即答する人は、2人に1人です。

5人に1人は「高速道路で運転したことがないので……」「主人が行ってはいけないと言うと思います……」と答えます。高速道路を使って遠方に行ってもらうということは、実際にはまれなのですが、最初に確認をしておかないと、「そんなことは聞いてなかった」とトラブルのもとになります。

また、この質問はパート社員独特のもので、正社員には聞いていません。それは、なぜでしょうか。正社員は高速の運転をして当たり前だからです。それがなぜパート社員だと無理なのでしょうか。やればできますし、この会社に入って高速道路を走れるようになったというスタッフもいます。

高速道路を運転できるというのもスキルのひとつです。このことは、仕事に対する意識を変えてもらうためにも、必ず質問していることなのです。このように最後の面接で具体的に期待することを伝え、最終判断を行います。

ここまでに10日ほど時間をかけて採用面接を行っています。「面接したら感じが良かったんで、明日から来てくれってことになったんだけれど、働き始めたら問題が多くて困っている。面接だけじゃ、わかんないもんだね」皆さんはこのような経験はないでしょうか。

「面接後即採用」には大きなリスクがあります。2回面接を行い、2人の目から応募者を見るということで、採用ミスを少なくすることはできます。

やはり、1人だけの判断だと偏りが出てしまいます。また、面接の回数が1回だけだと、どうしてもその中で一番いい人を選ぼうとしてしまいます。採用の判断基準はあくまでも会社の求めている期待水準であり、集団の中で最も優秀な人ではないのです。

この点を明確にしておかないと、「今回は採用しない」という選択ができなくなるので要注意です。

このように、一次面接・試験・二次面接を通じて、2人の目と試験のふるいにかけ、最終評価を下します。そして、実際に採用になるのは応募者の1割弱です。

弊社のパート社員にアンケートを取ったところ、採用された時の心境を次のように書いていました。

●他にも何件か就職の説明会(面接)に行っていましたが、一番厳しかったように思います。入社後の心得などをきちんと説明してもらいました。

●体制が整っていることを感じ、安心した部分もありましたが、自分に勤まるだろうかと不安に思ったことも事実です。仕事面(時間管理も含めて)で、自己管理が重要な会社だと感じました。

●初めに「社員もパートも責任の重さは同じ。パートという甘えはない」と聞かされ、求めている人材がすぐにわかりました。採用されたならば、自分の能力を試してみたいと思いました。

●業務の大変さや心構えを聞き、厳しそうな会社だと思いました。少しびっくりしましたが、覚悟を決めるにあたり、良いお話だったと思いました。

●パートの採用でも、まるで社員を採用するかのように、会社や会社の求める人材を詳しく説明してもらいました。この時点で、中途半端な気持ちではやっていけない感じがしました。

●「やる気がなくなった人は帰ってもいいです」と言われ、びっくりしましたが、最後までがんばろうと思いました。採用に関しては、毎回同じことの繰り返しなので、一度仕組みとして作っておけば、あとは細かな変更だけですみます。

中小企業の採用担当者は、ほかの業務も兼務しており、忙しいのが現状です。そこで、年度初めに年間スケジュールの中で、おおまかに採用プランを作って、予算を組んでおくと、いざ採用というときにもあわてずにすみます。

第4章育成編利益を生み出すパート社員を育てる仕組み

1OFFJTの仕組み

パート社員の採用に日数とコストをかけたのですから、入社したらすぐにでも仕事を覚えてもらいたいところですが、私たちは、ここでまたパート社員に育成のための日数をかけています。

配属前に約2週間にわたり、新人研修をOFFJT(OFFtheJobTrainingオフジェイティ。職場外教育。職場を離れて行われる人材教育のこと)で行うのです。これは、一見遠回りのようですが、私たちが、パート社員の戦力化に成功した要因のひとつなのです。

私たちは毎年企業の新入社員研修のお手伝いをしています。大手の企業に伺うと、新入社員の研修期間が3カ月、半年というところもあります。おおむね、配属前に1~2週間研修期間を取り、その間に徹底的に会社の業務、知識、ルールなどを新人に教えています。

わが社では、この仕組みをパート社員の育成に取り入れたのです。この仕組みを話すと、多くの人が、「パート社員の研修を2週間もやるの?」と驚きます。

私たちから、「パート社員への指導はどのようにやられているのですか」と尋ねると、「特にやっていない」「現場に任せている」という返事が大半です。

私たちも以前はそうだったのでよくわかるのですが、パート社員への指導を成り行き任せにすると、期待通りに育つ確率は、2割弱なのです。採用の段階で、今回はいい人が取れたと思っていても、現場に行ったらそうでもなかったということはないでしょうか。

採用当初は、パート社員の意欲も高く、積極的に仕事をしてくれるのですが、仕事に慣れてくると、以下のような問題行動がおきてくるということをよく耳にします。

●時間にルーズ、決められたことを守らない

●指示した仕事が終わるとボーっとしている

●言い訳が多い。できないことがあると人のせいにする

●ミスをかくして、報告をしない

●「やったことがない」「わかりません」という発言が多くなる

これらは、仕事をしていくうえで、障害となることばかりです。パート社員は、自分のこのような行動が、問題であるということに気づいていません。

職場で通用しているので、それでいいと思っています。そして、このような状況を放置しておくと、問題行動があっという間に職場に蔓延してしまいます。私たちは、こういったことを未然に防ぐために、配属前に新人研修を行っています。

会社の業務内容やルール、マナー、期待していることなどの「会社のものさし」をパート社員にしっかりと理解してもらうのです。「会社のものさし」を理解していないと、「自分のものさし」で行動してしまい、そこに問題が発生するからです。

2週間の新人研修の流れは次のとおりです。総務担当者から、入社時に必要な提出書類や就業規則、会社のルール、福利厚生等について、約15分の説明をします。

終了後、2週間の研修がスタートします。新人指導にあてる時間は、1日に約3時間です。私たちは、新人指導の仕事の他にも、いくつかの仕事を担当しています。それらの仕事の調整を図りながら、指導を行うので、1日3時間程度になります。

また、パート社員は週4日勤務のため、4日間×3時間=12時間が、前半の研修時間となります。私たちの都合で時間がとれないときや、パート社員が休んだときには、研修が2週間で終了できない場合があります。そのようなときは、上司に中間報告を入れ、了解を得たうえで研修期間を延長します。

2週間はおおよその目安で、そのときの状況によって判断しています。困ったことやトラブルが発生したとき、誰に相談すればよいのかということが明確になっているので、私たちも安心して新人を指導することができています。

2週間の研修が終了後、上司に報告し、さらにトップに終了の報告を行います。所長面接の日程調整を済ませ、無事面接が終了すると、すべてのOFFJTの研修が終了となります。

2なぜ、パート社員にここまで行うのか

「○○さん、よく連絡くれたね。本当に助かったよ。ありがとう」上司が、1週間前に入社したパート社員に感謝の言葉をかけていました。実は前の日にこんなことがあったのです。

このパート社員が、事務所に1人のときに、お客様から上司宛に電話が入りました。彼女は、上司が外出していること、戻り時刻が5時ごろになるということ、戻ったら折り返し電話することを伝えました。すると、「そうですか。ちょっと、相談したいことがあったんだけど、5時か……」という返事だったそうです。

そこで、「お急ぎですか」と聞きましたが、「特に急がないけど……。そうだね。帰ったら、一応電話をもらおうかな」と電話が終わりました。このあと、彼女は、相手の声の調子や電話の雰囲気を察し、すぐに上司に連絡をとったほうがよいと判断しました。

「○○様ですが、相談したい件があるようなので、一度ご連絡してもらえますか。急がないとはおっしゃっていましたが、念のためご連絡しました」早速、上司が先方に連絡を取ったところ、幹部の教育を考えていて相談したいということでした。

そこで、その日のうちに先方に伺い、話を進め、企画書を提出することになったのです。これは、パート社員が、その場の状況を判断し、機転を利かせ、ビジネスにつなげた一例です。外部の研修を含め、数百名のパート社員の育成に関わってきた私たちは、このような事例をたくさん持っているのです。

2週間の研修の中で、基本を教えたあとに応用として、機転を利かすことについて、たくさんの情報提供をしています。なぜなら、この機転を利かすことが、そのまま利益を生み出すパート社員に結びつくからです。

利益を生み出すパート社員にするためにどんなことを伝えたらいいのか、ということを私たちはずっと悩んでいました。当初は、現場ですぐに役立つビジネスマナーを中心に教えていましたが、ビジネスマナーができるようになっても、こちらの期待する機転を利かすというところまでには、なかなか到達しません。

そこで、ある日、新入社員研修で教えている会社の目的や組織形態など、組織人としての基本をパート社員に、話してみました。すると、今まで働いていた経験もあるので、当然こちらとしては知っていると思っていたのですが、ほとんどの人が忘れている、あるいは知らなかったということを目の当たりにしたのです。

「10年以上前に初めて就職した時と同じくらい〝一〟からの研修を行っていただき、目からうろこでした」というような感想を聞き、基本からしっかりと伝えなければいけないと思った私たちは、グループの各会社の業務内容と相互関係を説明し、さらに、組織の利益と私たちの給料がどのように発生するのか、正しく把握してもらうよう説明しました。

これらをしっかりと教えないと、非常に視野の狭い、断片的な仕事の仕方になると気づいたからです。ビジネスマナー研修のみ(電話の出方、受け方、お茶の出し方)をやっていた当時は、研修後もこんな困ったことが起こっていました。

●以前の会社のやり方にいつまでもこだわる

●仕事の選り好みをする

●自分の都合で仕事を進める

●仕事は正確だが、報告がない。報告が遅い

●自分の勝手な判断で、報告を省くことがある

●不明な点があっても「多分こうだろう」と思い、確認をしないで、仕事を進めてしまう

●すぐに電話にでない

●来客よりも自分の仕事を優先させている

●来客への対応が遅い

●クライアントに対して、友達に話すような馴れ馴れしい言葉づかいをしている

●空き時間になると、勝手におしゃべりをはじめてしまう

会社の目的や業務内容、組織形態、利益を生み出すということ、会社がパート社員に期待していることを教えていく中で、困ったことは次第に少なくなりました。

私たちも、組織人としての基本を理解してはじめて、応用にあたる機転を利かすための情報が活きてくるのだと再確認したのです。多くの会社が、利益を生み出すパート社員を育てたいと考えていますが、以前の私たちのように、一番大事なことを伝えていないのではないかと思います。

手を抜かずにパート社員にきちんと教育していくことで、会社の利益を意識し、自ら考え行動できる、そんなパート社員にできるのだと、私たちは実感しています。

3主婦のパート社員に見られる傾向

私たちが、お客様のところで、パート社員を指導していて気づいたことを話すと、うちでもそうだよ、似たようなことがあったよ、ということがよくあります。とくに家庭に入って、仕事を再開するまでの間、ブランクがあるという主婦によく見られる傾向があります。

ある会社から、採用したパート社員の研修依頼を受けました。私たちは、研修前に必ず、相手企業の担当者に、受講生にどんなことを教えてほしいのか、今困っていることは何かを確認するのですが、そこで聞いた内容は、次のようなことでした。

「家庭にいた期間が長い人なので、いろいろとわからないことも多いと思うから、自分からどんどん聞いてほしいのに、なかなかそうしてくれないんですよ。聞かないで仕事を進めるから、ミスも多くなって困っている。仕事を教えている先輩社員も気を使っているんだけれど、うまくいっていない様子でね……。仕事なんだから何でも教わるつもりできちんと聞いてほしい」

実際に研修をして、パート社員に話を聞いてみると、双方の思いは違っていました。パート社員は、「確認したいけど、何度も聞くと、先輩に悪いんじゃないかな」「こんなこと聞くと、嫌がられないかな」「嫌な顔されたらどうしよう」と思っていて、聞くことに躊躇していたのでした。

専業主婦として、いろいろ周りに気を使いながら過ごしてきたこともあり、仕事をするようになっても、自然とそのような気遣いをしていたのです。そこで私たちが、「仕事ですから聞くことは当たり前です。悪いことではないですよ。

むしろ会社としては、わからないことをそのままにしないで、どんどん聞いてきちんと理解してほしいと期待しているんですよ」と言うと、ほっとした表情で、「そうでしたか。てっきり迷惑になるかと思っていました」と話してくれました。

研修後、再度会社を訪問した時には、担当者から次のような話がありました。「今は積極的に質問してくれるようになり、仕事のミスも少なくなりました。明るくがんばってくれていますよ。ありがとうございました。次にパート社員を採用したら、今回のようなことがないように、どのように仕事をしてもらいたいのか、最初にきちんと伝えておかなければいけませんね。

そうしないと、お互いの思い込みでうまくいくものもいかなくなりますから」また、私たちの会社では、こんなことがありました。新人パート社員に、「○○市役所に書類を提出してきてください」と仕事の指示を出したときに、2通りの対応がみられました。

Aさん「まだ越してきたばかりで、場所がちょっとわからないんですが……」

Bさん「はい、わかりました。実は、越してきたばかりで、まだ地理がよくわからないので、簡単な地図をかいていただけますか」

これは、仕事の心構えを教えるときにとてもいい事例になっています。つまり、Aさんのようでは困る、Bさんのように、行くにはどうしたらいいか、自ら考えて行動できる人になってほしい。

簡単に「できない、わからない」と言わない。その前に、どうしたらできるか、自ら考えることが大事だと伝えているのです。家庭に長くいると、自分なりの価値基準ができていて、職場の中でも家庭の延長上で行動してしまい、会社の価値基準になかなか合わせることのできない人もいます。

パート社員だから難しいことはできない、パート社員だから無理はできない、できないといえば誰かがやってくれるだろう、こういった本人の思い込みを放置しておくと、他のメンバーにも悪影響が及びます。

以上2つの事例のように、主婦のパート社員にはこういったことが傾向として見られることがあります。このようなことを未然に防ぎ、パート社員が、職場のメンバーと気持ちよく働くために研修期間があります。

家庭に長くいた主婦は、どうしてもビジネス感覚が鈍ります。しかし、期待することをはっきりと伝え、どうすればできるのかを正確に伝えていけば、すぐにビジネス感覚を身につけることができます。

私たちは、お客様の話や日頃の指導を通じて、改めて新人研修の大切さを実感しています。

4この研修で期待されていること

この研修で、新人のパート社員が期待されていることは、「経営者の思い」を正確に理解し、実行に移し、早期戦力として活躍してもらうことです。

具体的には次の9項目です。

1.会社の目的・組織形態

2.会社の組織風土(どんなことを大事にしているか)

3.身だしなみ

4.職場のエチケットルール

5.どんなことが評価されるのか

6.仕事の心構え・取り組み方

7.仕事の進め方

8.報告・連絡・相談

9.ビジネスマナー(あいさつ・言葉づかい・電話応対・来客応対)

私たちは、この9項目をビジネスの基本としていますが、これがすなわち「経営者の思い」であり、「会社のものさし」なのです。

研修では、できるだけ具体的に「経営者の思い」を話しています。具体的に嚙み砕いて伝えないと、人の思いというものは、他人にはわからないものです。

私たちは、「経営者の思い」をトップに近いレベルで伝えられるように、多くの時間をトップとの打ち合わせに費やしました。途中、教えている内容に変更や追加があった場合や、さらに強化してほしい項目が出てきた場合は、「なぜ変更になるのか」、「なぜさらに強化してほしいのか」など、それらの背景をしっかり理解するためにトップから情報を得ます。

まず自分自身がトップの意向を正確に理解し、そのあと、変更事項については、新人だけでなく、会社全体に伝え、行動の修正を促しています。2週間の研修で、「経営者の思い」を、新人が、「理解し、実践できる」ようにしていくのが、私たちの仕事です。

ここでは、一切会社の実務には触れません。実務はこの基本が身についてから配属先で教わります。それでは、私たちがどのように2週間の研修を行っているか、具体的に説明していきます。

5 1週間目に教えること

まず新人へ指導員の自己紹介を行います。そのあと、新人への期待と、何かわからないことや不安なことがあれば、いつでも聞いてほしい、私たちはいつでも援助していくことを伝え、新人にとって大事な研修であり、真剣に取り組むことをお願いします。研修を始めるにあたり、会社が準備するものは、新人に渡すテキストやレポート用紙、電話応対マニュアル、座席表の4点セットです。

1日目に教えていることで注意をしている点は、会社の組織風土や身だしなみ、職場のエチケットルールは、自己流にならないよう会社の基準に合わせることを明確にします。

これらは、会社によって違いがあります。私たちにとっては、当たり前のことであっても、新人にとっては説明がないとわかりません。新人が戸惑うことのないように情報提供をします。会社の組織風土(この会社が大事にしていること)わが社で大事にしていることは、次の2点です。

●気持ちのいいあいさつ

●気配り

これは、常々、トップが折に触れ、私たちに話していることです。

「あいさつは、ただするのではなく、『相手が気持ちいい』と感じるあいさつをしてほしい」あいさつひとつで、相手との距離も近くなり、気持ちよく仕事ができます。また、職場の雰囲気も明るくなります。

私たちは、こちらが期待するレベルであいさつができるように、実習を行っています。

「気配り」は、自分の仕事だけ、自分のことだけに集中せず、周りに配慮することを求めています。依頼された仕事が終わったら、周囲に声をかけ、忙しい人の手伝いをする。コピー機の紙が切れたら、そのままにせず補充をする。当たり前のことですが、職場のメンバーが協力し合いながら、気持ちよく働いていくために、次の人のことを考えて行動することをお願いしています。

会社によって、大事にしていることは違います。これは、トップが違うのですから当然です。しかし、新人と接していると、この大事にしていることが、会社によって違うということに、意外と気がついていないと感じます。そのため、以前の会社のやり方をひきずってしまう人がいます。

こういうことを防ぐため、新人にはできるだけ早い段階で、会社の組織風土や職場のエチケットルールをしっかり伝える必要があるのです。身だしなみ身だしなみについては必ず初日に行い、できるだけ早い段階で指導に入ります。

初日の身だしなみを見ると、なかには、これだと困るなという人もいます。これはまだ何も教えていないのですから、仕方のないことだと思います。

そこで初日に、「会社の求める身だしなみ」を具体的に話します。その場で直せるものは直してもらい、翌日にはきちんと対応してもらうようお願いします。

わが社は制服がありますので、着崩したりしないよう、細かく項目をあげて説明しています。服装については、会社によって伝えたい内容は様々でしょう。ある会社の人事の方から、うちの会社では、暗黙のうちに就業時間内はピアス禁止となっているはずなのに、支店によっては、許可しているところもあり、統一ができずに困っているという話を、聞いたことがあります。

やはり、会社の一定のルールとなる、「ここまではしっかり守ってください」というラインを明確にして、早い段階で伝える必要性を感じます。入社してすぐだと、「この会社では、こうしないといけないんだな」と素直に受け止めることができます。

身だしなみやしつけの部分は、時間が経てば経つほど修正がしにくくなります。素直に受け止めることができる初日に指導するのが、一番よいタイミングです。職場のルール一般事務のパート社員として就職した友人が、入社早々、注意を受けた話を聞きました。

自宅で昼食を済ませて、会社に戻ってくると、時刻は午後の仕事が始まる3分前。「よかった、間に合った」とほっとしていたら、先輩パート社員から「○○さん、遅くても5分前には、戻ってくれないと困るのよ。それくらい常識でしょ!」と注意されてしまったとのことです。

「初日から注意されてしまって、ここでやっていけるかなってすごく落ち込んだわ。お昼に行くときに、5分前には戻ってきてねって、言ってくれればいいのに……」と友人は話していました。

その職場で当たり前になっているルール、例えば休憩時間のとり方や、事務用品・備品の取り扱い、廃棄物の取り扱い、携帯電話のマナーなどを最初に伝えておくことは、新人がスムーズに職場に慣れるために大事なことなのです。

また、私たちは、みんなで協力し合いながら仕事をしているので、よりよい人間関係を築いていくための最低限のあいさつとして、「ありがとう」「ごめんなさい」をしっかり言うことも教えています。

2日目に教える4項目

●評価されるポイント

●仕事の心構え

●仕事の進め方

●報告・連絡・相談

これらを伝える目的は、仕事をする上で、会社が期待するレベルを明確にするということです。プラン‐ドゥ‐チェックといった、仕事を進める上での基本は説明しますが、ここでは過去に職場内で発生した事例を多く用いています。困った出来事や上司から注意を受けたことなどを盛り込むことで、単なる情報提供に終わらず、会社が求める基準がより明確になります。

3日目、4日目のビジネスマナーわが社では、こちらが期待するビジネスマナーを、新人ができるようになるまで、電話応対も来客応対もさせません。

それは、お客様にビジネスマナーを指導しているということもあり、スタッフの誰もが、気持ちのいいビジネスマナーを実践できるということが、私たちのブランドになっていると思うからです。

当社に限らず、一人ひとりの応対が、会社のイメージを左右します。自分ひとりぐらい、適当にやっても大丈夫などと思われたら大変です。皆さんの会社では、電話の応対はしっかりできていますか。

●「お電話ありがとうございます。○○でございます」など、電話の出方は統一されていますか。電話に出る人によって、違っていませんか

●電話の第一声は、明るくしっかり言えていますか

●言葉づかいは、ていねいですか

●かかってきた電話には、3回コール以内に出ていますか

●保留にして30秒以上待たせていませんか

●相手の名前をしっかり聞き取り、取次ぎができていますか

●名指し人が不在のときに、「いません」の一言だけで、済ませていませんか

入社して電話機の説明だけして、「じゃあ電話に出てくれる」では、新人も心構えができませんし、なにより、電話をかけてきたお客様に迷惑がかかってしまいます。

感じのよい電話応対は、会社の利益を生み出していくための、大事なビジネスの手段のひとつです。新人がスムーズに電話に出られるように、内線番号を明記した座席表や、電話のかかってくる先のリストなどをあらかじめ作成し、電話に出る前に練習をさせることをおすすめします。1週間目で身につけさせる4つの行動入社から1週間の間に、新人に必ずやってもらう4つの行動があります。

①しっかり反応(返事やうなずき)を示す

②伝えたことを必ずメモに取る

③その日に伝えたことを、必ず家でまとめてくる

④不明な点は、できるだけ早い段階で質問し、必ず解決する

これらは、すべて仕事に取り組む姿勢に通じることです。これが身についていると、実務を教わるときに、スムーズに習得することができます。「なんだ、そんなこと?簡単じゃないか」と思うかも知れません。

しかし、これを徹底することで、弊社では、格段に研修効果を上げることができるようになりました。このことは最初から徹底していたわけではありません。新人研修を始めてから10数年になりますが、始めたころは私たちも不慣れだったこともあり、各々の新人のレベルに任せていたところがありました。例えば、

●私たちの話に、しっかりとうなずきや返事をして聞いている人と、反応が弱く、こちらが聞いて確認しなければいけない人

●しっかりメモを取りながら説明を聞く人と、「メモを取らなくて大丈夫?」と言わないとメモがとれない人

●教わった内容を自主的にまとめて整理してくる人と、あちらこちらに書きとめたままで整理をしない人研修をしながら、困った新人の行動が気になりましたが、「入社したばかりだから、あまりあれこれ細かく言うといやになってしまうかも」という気持ちもあり、「わかった?」「メモはちゃんと取ってね」「教えたことは忘れないようにしておいてね」と、言葉をかけただけで終わっていました。

私たちは、この時点で研修の本来の意味を理解できていなかったのです。真の目的である、「新人が、経営者の思いを正確に理解し、実行に移し、早期戦力となるための研修」が、ただの「新人に仕事の基本を教える研修」になっていたのです。

そして、案の定、困ったことが起きました。それは、新人同士の習得度の差です。以前教えた内容を振り返ってみると、1人はノートに整理しているので、すぐに対応できます。しかし、もう1人は、教えたことが記憶にも記録にも残っていないため、対応できないのです。

2名がほぼ同時期に研修を始めても、数日間の研修で、すでに習得の差が生じていたのです。研修を同時に始め、同じ情報を伝えていても習得に差が出てしまう。私たちは正直困りました。

同じ時間を割いて指導するのであれば、効率よくできるだけ同レベルで理解させるようにしたい、そのためにはどうしたらいいか。このことを真剣に考えました。

そして、悩んだ末、ある共通点を見つけました。それは、習得の速い新人が、みんな似たような行動をとっていたのです。実は、それが先にも挙げた4点だったのです。これを新人全員にやってもらおう。そう考えた私たちは、早速実行に移しました。

①しっかり反応(返事やうなずき)を示す

「反応を示す」など今更言うことでもないのでは、と思うかもしれませんが、これは大変重要です。「聞かれたら返事をする」こんなことは、ごくごく当たり前のことです。しかし、この当たり前のことができない人が多いのです。

私たちは、毎年多くの企業の新入社員研修をしていますが、ここ数年この反応が弱くなっているように感じます。新入社員は多くの知識を身に付けていて、資格や高い能力を持っているのですが、ごく当たり前と思われる反応(返事、うなずき)が弱いのです。

これは、新卒の新人に限らず、採用したパート社員にも見られることです。そこで、私たちの研修では、意識して返事やうなずきをするように教え、反応を示すことのメリットや、反応が弱いことのデメリットを明確に説明します。

②伝えたことを必ずメモに取る

研修中に私たちが何も言わなくても、メモを取りながら話を聞くことのできる人は、全体のおよそ1~2割です。前半の1週間は、言葉での情報提供が主になるので、何が大事か、どのようなことが求められているのか、教わったことを後になって見直すことができるように、メモを取ることを促します。これも訓練なので、言われなくてもメモが取れるようになるまで、「メモを取ってください」と指導員が繰り返し指導をします。

③その日に伝えたことを、必ず家でまとめてくる

これは、本人の実力をつけるうえでも大変効果的な方法です。研修中に書き留めたメモを、その日のうちに自宅でノートに整理するのです。整理をする過程で、自分自身の理解度を確認することができます。これを行うことが、研修の中でも、ひとつのハードルとなっています。以前このようなことがありました。

指導員「その日に伝えたことは必ず家でまとめてきてくださいね」

新人「はい」

次の日、ノートを見ると整理していません。

指導員「まとめてくるようお願いしましたが、忘れていましたか?」

新人「はい、すみません」

指導員「では、今日は忘れずにまとめてきてくださいね」

新人「はい。わかりました」

多くの場合1~2回注意すると、まとめてきてくれるのですが、それでもやってこない人がいます。

理由を聞くとこのように答えます。「やろうと思っても、家に帰るといろいろやることがあって、まとめる時間がないんです」ここで、私たちは、次のように話します。

「この研修は、あなたのための研修です。あなた自身が、この会社で期待に応えて、評価されるように情報提供をしています。しっかり自分のものにするために、まとめながら復習をしてほしいのです。ノートにまとめることは、入社した方全員にやってもらっています。ぜひあなたも真剣に取り組んでください」ここでは、よほどのことがない限り、例外を認めていません。

この会社では妥協は許されない、言われたことは確実にやらなければならない、「やれなかった」と言ってしまえばそれが通る会社ではない、ということをしっかり認識してもらっています。

④不明な点は、できるだけ早い段階で質問し、必ず解決する

これは、実務を習得するときに大変重要なポイントになります。わからないことは、できるだけ早く解決するという姿勢を、ここで身につけてもらうのです。

私たちは、新人に「わからないところがあれば、必ず次の朝に質問してください」と伝えています。教える内容も大切ですが、まずその前に、新人の教わる姿勢を整えることも重要だと実感しています。

62週間目に行うこと62週間目に行うこと前半の1週間の研修が終了後、いよいよここから実践に移ります。場所も会議室から、私たちの席の隣に移ります。この2週間目は、自動車学校で言えば路上検定になります。

研修方法は、情報提供から一転し、実際の日常業務を私たちと一緒に行いながら、確認や修正をしていく、「業務並行指導」となります。ここで、新人が整理したノートが活躍することになります。コピー取りや書類整理、簡単な文書作成などの指示を受けながら、電話の応対や来客応対などを実践していきます。

電話応対は、次のように進めます。私たちは、他のメンバーへ、新人が優先的に電話に出られるように協力をお願いします。というのも、全員電話に出るのが早いため、新人が電話に出る機会が少なくなってしまうからです。私たちは、新人の電話応対を横で聞きながら、フォローをします。

「今の応対でいいですよ。気持ちの良い応対ができていましたね」「メモが取れて、復唱確認も落ち着いてできていましたね。それでいいですよ」「昨日より内線への取次ぎがスムーズにできましたね。お客様を待たせなくなりましたね」と、できていることは具体的にほめるようにしています。

改善してほしい点についても「○○さん。今の電話応対だと困るわ」では、何が困るのか、新人はわかりません。何がどのように困るのかを具体的に伝えます。「昨日より、電話に出るのが早くなりましたね。あと説明が早口になっていたので、お客様が聞き取りづらかったかもしれないですね。もう少しゆっくり話すと、お客様も聞きやすいですよ。この次は、そこを意識してやってみましょう」と、まず良いところをほめたあと、改善点を伝えます。

教わったことを実践したあとは、「今のやり方でよかっただろうか」と不安になるものです。そこをきちんとフォローすると自信につながり、電話にも積極的に出られるようになります。電話にまつわることをもうひとつ紹介します。

これは、私たちの会社で発生した、トップが会議中のときの失敗談です。会議中の場合の対応は、様々です。「重要な会議なので、一切電話は取次がないように」「○○社から電話があったら、すぐにまわして」「電話があったら内線でまわしていいよ」こういったことも、一定のルールを決めて対応しないと、トラブルが発生します。

その日は、トップから「重要な会議なので電話は取次がないこと」と言われていました。そこに、トップへ顧客のS氏から電話が入りました。新人パート社員のAさんは、ただいま会議中で、終わり次第連絡を入れるということを伝えましたが、「急いでるんだよ。ちょっとでいいから代わってくれ。すぐ終わるから」と言われ、トップに電話をつなぎました。

そのあと、また同じS氏から電話が入りました。次に、電話を受けたのは、ベテランパート社員のBさんです。Bさんは、先ほどS氏から電話があったことを知りません。今、重要な会議をやっているから電話には出られないと判断し、機転を利かし、ただいま外出中と伝えました。

そんなちぐはぐな対応に、S氏は激怒しました。「今、いたじゃないか。電話で話したばっかりだ!」と、クレームになってしまったのです。実際問題このように、出る人によって、応対が変わってしまったら、信用問題になります。

そこで私たちは、全員が同じ対応ができるように、電話応対のオリジナルマニュアルを作成し、周知徹底を図ったのです。そのあとは、スタッフ全員戸惑うこともなく、安心して電話応対ができるようになりました。

それまでは、「何てお答えしたらいいかしら」と受話器を持ったまま、困っていたこともありましたが、そういうこともなくなりました。会社でよく起こりがちなことについては、簡単なものでもいいので、マニュアルを作成しておくことをおすすめします。

2週間目で、特に私たちが気をつけているのが、報告・連絡・相談の「報連相」です。これに関しては、確実にできるレベルまで指導します。「報連相」は大事、ということは誰でも知っています。

しかし、いつ・どのタイミングで行えばよいのかを、理解している人は多くありません。頭では理解していても、どのように行動すればよいのかわかっていないので、結局できないのです。

私たちが、講師を担当した企業研修で、「上司に『頼んだアレ、どうなってる?』と言われたことのある人」と問いかけると、ほぼ100%の人が手を挙げます。今度は部下のいる人に、「部下に『頼んだアレ、どうなってる?』と聞いたことのある人」と問いかけると、こちらもほぼ100%の人が手を挙げます。

上司が「きちんと報告してほしい」と思っているのに対し、部下は「これぐらい報告しなくてもいいか」と思っているのが、よくわかります。現在、当社では、「あれ、どうなっている?」と聞かれたら、それは報告不足ということ、言われたら「シマッタ!!」と思ってくださいと明確に教えています。また、依頼された仕事は、必ず「できました」という報告を入れる。上司がいなければメモを書く。仕事は報告ができたところで終了となり、ここまでがあなたの仕事であるということを伝え、この2週間目で、徹底して実行させています。

新人指導をする中で、トップからこういったことも、ちゃんと報告するようにと依頼された案件があります。

①「今日休んでいるAさんにもスケジュール変更の件、しっかり伝えといて」とスタッフに頼んだときに、「Aさんに伝えました」という報告があったためしがない。大事なことだと、ちゃんと伝えてくれたか気になる。報告をあげてほしい。

②出かけるときに「今日、もしかしたら○○工業さんから、打ち合わせの連絡が入るかもしれません。そのときは内容を聞いておいてください」とスタッフに声をかけると、連絡があった場合はメモがあるが、連絡がないと何も報告がない。「本日は連絡がありませんでした」という報告をあげてほしい。確かに言われてみると、この2つの事例について、報告がしっかりできるという人は、非常に少ないのが現実です。

上司の立場から見ると、こういった報告がしっかりできていると、状況がわかるので安心です。報告をこまめにあげてくれる部下には、安心して仕事を任せられます。そしてそれは、部下との信頼関係につながります。

そのため、パート社員に「報連相」に手を抜かないことと、繰り返し教えています。また、とくに「伝えておいてね」ということは、働く時間帯の違うパート社員を多く抱えている会社では、注意が必要です。

連絡事項がきちんと伝わっていないと、「私は聞いていません」ということになり、パート社員のモラルダウンにつながるからです。限られた時間の中で円滑に働くためには、「報連相」をまめに行うことが大切です。

勤務時間が短いパート社員ですと、上司と顔をあわせる時間も少なく、確認が遅れ、仕事に支障をきたすこともあります。パート社員というと、どうしても現場での作業が中心になってしまうのですが、作業以外にも、このようなことをきちんとやってほしいと、最初に情報提供をすることで、行動できるようになります。

またこのようにパート社員が行動することで、パート社員自身の評価が高まり、モチベーションを高めることができるのです。

7なぜ、2週間の指導が効果的なのか

「電話応対」や「報連相」の具体例を話しましたが、2週間の研修を行うメリットは、情報提供だけで終わらずに、理解したことをしっかり実践できるか確認し、行動を修正できることです。頭で理解したことを行動に移せる人は、残念ながら少数です。

しかし、2週間という時間があることで、確実に行動できるようにしていくことができるのです。私たちは、企業研修や公開セミナーを行っていますが、研修だとその場で終わりになります。そのあとのことは、それぞれの会社にお願いすることになり、受講者の様子を見ることもなかなかできません。

しかし、この2週間の研修では、直接、指導する私たちが、できているかどうかをきちんと見極めることができます。さらに、できていないことに関しては、行動の修正もでき、確実に成果に結びつけることができます。そうはいうものの、私たちも指導を行う中で、たくさんの失敗をしてきました。当初にやってしまった失敗をひとつ紹介します。

新人のCさんに、お茶出しの指導をしているときのことです。関「Cさんは以前の会社でも、よくお茶は出していたほう?」Cさん「はい、お客様も多かったので、毎日出していました。お客様からもおいしいお茶ありがとうって言われたこともあります。結構得意なほうですね」そんな自信たっぷりの口調につい油断してしまい、細かな注意点の説明を省いてしまいました。

数日たったある日、お客様へのお茶出しをCさんにお願いしました。きちんと出せたかどうか、後方から確認すると、お客様の書類の上に茶たくが置かれていました。「まずい!」と思ったと同時に、接客中の上司から、「ちょっとフキンを持ってきて!」と厳しい声がかかりました。

慌てて持っていくと、お客様の書類が濡れていました。書類の上に茶たくが置かれているばかりでなく、茶たくの底も濡れていたのです。お客様が帰ったあと、すぐさま上司に呼ばれました。

「関さん。Cさんに何を教えてるの!今のようなことをされると困るよ」私は返す言葉もありませんでした。Cさんが、お茶出しは得意だと言っていたので……など言えるはずもありません。「申し訳ございません。もう一度指導します」と、すぐに会議室で指導を始めました。

このことから、相手の言うことを鵜呑みにしない、指導をするときに手を抜かないということを肝に銘じました。現在は、新人が以前経験があるということでも、教えるべきことはしっかり教え、再確認をしてもらうように徹底しています。

新人の「知っている」「できる」のレベルと、会社側の求めるレベルと一致しているか、すり合わせをすることが大切です。

2週間という時間があると、指導する側の情報提供が、不十分だった場合に起こる問題にも対処することができるのです。この2週間の研修を通じて、新人は利益を生み出していくための、基本的姿勢を身につけることができます。

これを身につけておくと、実務に入ったときに、実務の指導者が大変助かります。以前は、現場から、研修を早く終わらせてほしいとよく言われていました。

しかし、今では、研修を中途半端で終わらせると、実務指導が、かえって大変になるということで、期間が延びてもいいので、しっかり研修をやってほしいと言われています。

8新人が、スムーズに会社に溶け込めるようにするには

小さな子供のいるパート社員が、入社してきたときには、2週間の研修期間の間に休みを取るということが多くあります。これはどういうことかというと、パート社員として働くことにより、本人の環境や生活パターンは大きく変化します。

今までは子供中心であった生活が、しばらくの間、仕事中心になります。この影響は、家族にも及びます。特に小さな子供は、その変化を敏感に感じとり、急に熱を出したり、病気になったりすることが

あります。子供にとっては、自分中心であってほしいのです。私たちは、このことを当然のことと捉えているので、パート社員には、無理をしないようにアドバイスをしています。

新人にとっては、子供の病気は思いもよらないことです。入社して間もない状態で、「休みをください」とは誰もが言いにくいことです。

しかし、ここで無理をしてしまうと、子供の病気が長引いたり、短期間の間に何度も病気を繰り返すことになります。このようなことが続くと、最悪の場合、会社を辞めることにもなりかねません。

そこで、私たちは、積極的に休んでくださいと声をかけています。しっかりと休んで、子供に関わり、子供を安心させることでこの問題は解決できます。

ここではきちんと休むことが大事なのです。「パート社員はあてにならない」「パート社員は忙しいときに休む」ということをよく耳にします。仕事が忙しくなり、子供に対する配慮が行き届かなくなると、小さな子供は熱を出して、母親の関心をひこうとすることがあります。

あらかじめこういうことを想定して、仕組みを作ることが、パート社員育成のベースになっているのです。このほかにも私たちは、新人がスムーズに会社に溶け込めるように、いくつか心配りをしています。

まず、研修当初は、新人の様子に気を配るようにしています。新人にとっては、慣れない環境の中で、不安も緊張もあるので、少しでも雰囲気に慣れさせるよう、こちらからいろいろ声をかけます。

「昨日はゆっくり眠れましたか?」「不安なことがあったら、なんでも聞いてくださいね」「緊張や気遣いで、最初は疲れると思うけれど、じきに慣れますよ。私もそうでしたから」私たちも同じように新人時代がありました。慣れない環境の中で随分疲れてしまい、入社して2日間ぐらいは、食事がのどを通らなかったことを今でも覚えています。

そのようなときには、周りから少し声をかけられることで、緊張がほぐれ、雰囲気に慣れたりするものです。それと同時に、プラスの言葉がけを多くするよう心がけています。

教えたことがやれていれば、「しっかり報告ができていますね」「そのやりかたでいいですよ」、とできたことをほめます。気になるところがあり、注意するときには、新人がどこを直したらよいのか、具体的に伝え、必ずそのあとの様子に目を配ります。

そして、直すことができていたら、「できるようになったね」とほめています。新人は、ほめられていくことで、自信を持ち、やる気をアップさせていきます。指導というと、上からものを言うイメージがありますが、私たちは、新人の立場に立って、配慮していくことが大切だと感じています。

9困ったパート社員への対応私たちが研修をする中で、今までに「ちょっと困ったな」と思う人もいました。過去の例で言えば、こんな人たちです。

●「こんなことは知っています」と発言し、研修に対して真剣ではない態度が目につく人

●人の話を最後まで聞かず、おおかたわかったと判断すると、「はいはい、わかりました、わかりました」と途中で話を切り上げようとする人

●相手によって態度を変える人研修をしていて、このように「おや?」と感じたら、まず私たちのほうで、注意やアドバイスをします。このことは、上司に必ず報告します。

「○○さんですが、研修内容に対して、軽く受け流すような態度が目につきましたので、昨日注意をしました。しばらく様子を見たいと思います」また、報告と同時に相談ももちかけます。

「○○さんですが、相手によって態度を変えるところがあるように見えます。私の気のせいかもしれませんので、少し様子を見ていただけますか」このように、研修中に私たちが新人の様子を見て、「まずいな」と感じたことは、そのままにせず、早めに手を打ち、上司に報告をします。

状況に応じて、上司にも様子を見てもらえるように相談し、情報を上司と共有化できるように対応しています。この仕組みがあり、上司の協力を得られていることで、私たちも安心して指導ができています。

状況が改善されない場合は、上司から個人面接で指導をしてもらいます。人の問題は、ほうっておくと大きなトラブルに発展します。「おや?」と感じたことをそのままにせず、なぜそう感じたのか、その原因を確認し、早い段階で手を打つことが大切です。

10トップとの最終面接

2週間の新人研修が終了すると、新人は、トップとの最終面接があります。私たちは、トップへ新人の様子について報告し、最終面接の日程を確認します。

トップは、期待どおりの育成ができたか確認し、状況や様子を聞いたうえで、面接を行います。最終面接は、時間にして約10~20分程度です。

面接の内容は、会計事務所へ配属する前に、新人に「どのように働いてほしいのか」を改めて説明し、仕事の取り組み姿勢・考え方を再確認します。

トップからは、「勤務時間は5時間と短いですが、仕事への期待は正社員と同じと考えています。常に物事には二面性があるので、プラス思考で考えてもらいたい。困難と思われることでも、できない理由をあげる前に、どうしたら実現できるのか、どんな方法があるかを考えられる姿勢で、仕事に取り組んでほしい。そして○○さんにも、この会計事務所を少しでも良くしようという気持ちで、長く働いてほしいと思っています。期待しています」と伝えられています。

また、同時に仕事の要になる守秘義務・法令順守についても、トップが直接説明します。この最終面接は、どんなに忙しくても必ず時間を作って行っています。

その理由は、たった10~20分の面接でも、その効果は大変大きいからです。面接を受けた新人の多くは、このように話しています。

「研修の卒業面接のようで緊張しましたが、期待されていることやがんばってほしい点などを聞くことができ、気持ちを新たにしました」「パート社員なので、まさか最後にもう一度、トップと面接するとは思いませんでした。期待されていることを感じました」パート社員にとって、トップと1対1で話せる機会はあまりありません。最後にトップとの面接をすることで、新人の気持ちもぐっと引き締まり、パート社員にやる気と責任感が生まれてくるのだと思います。

11新人研修を終えて

2週間の研修で、私たちが新人に対し、指導していることを話してきました。新人が、仕事の基本を身につけ、現場で成長していく姿を見るのが、私たちにとっても一番うれしく、また仕事の動機付けになっています。新人研修の最後に行った、スタッフへのアンケート「入社後の指導教育についての印象は?」への回答を見ていただきたいと思います。

●パートとしての採用で研修があるのには驚きましたが、改めてマナー等の指導を受けることができて勉強になりました。お客様や社内での応対がスムーズにできると思いました。

●自分に不足している、社会人としてのマナーを厳しく指導してもらえ、ありがたく、また、一生の財産になると思っています。

●初めは覚えなくてはいけないことがあって、大変だな、大丈夫かなと不安でした。でもレベルと質の高さに驚き、お給料をいただきながら、この研修を受けられるのはラッキーだと思うようになりました。

●入社の時に1人だったため、マンツーマンの教育にとても緊張しました。今まで事務職を10年以上してきましたが、自分の仕事に対する姿勢の甘さや、マナーの悪さを痛感した期間でした。

●今までに入社教育をここまできちんと受けた経験がなく、ありがたく思いました。

「パート」というのは、「就業時間の短い社員」ということを日々実感しています。厳しく大変なこともありますが、充実しています。

●職業人として、土台作りが重要なことが十分わかりました。皆さん、その土台がしっかりできているから、今の社内のいい雰囲気ができたのだと思います。

●指導の根底にあるものが、とてもしっかりしていて、ぶれていないのでわかりやすかったです。自分の良い点、悪い点を的確にアドバイスしてもらえ、とてもよかったです。

第5章現場での実践編パート社員の早期戦力化

1実務サイドでの新人指導の仕組み

2週間の研修が終了後、現場でパート社員を早期戦力化するために、私たちが行っていることは、パート社員の教育係を決めるということです。

これは一般的にマンツーマン制度と言われており、多くの企業では、新入社員が配属されると、先輩社員が、その指導役になります。

いわゆるOJT(OntheJobTrainingの略。職場の上司や先輩が、部下や後輩に対し、具体的な仕事を通じて、仕事に必要な知識や技能を指導すること)を行うのですが、私たちはパート社員の育成にこの仕組みを取り入れています。

まず、新人には教育係から全体の仕事の流れと、部門の中での新人の仕事の位置づけについて説明されます。

これを教えておかないと、新人は仕事を断片的に理解してしまい、お互いに協力をしながら仕事を進めるという意識が身につきません。些細なことのようにみえますが、大変重要なことです。しかし、パート社員に対して、きちんと伝えているところはまだ少ないのではないでしょうか。

このあと育成の大まかなスケジュールと、その内容を早くマスターできるよう援助することも併せて教えます。当初の1カ月は、安心して実務を覚えられるように、教育係と一緒に仕事をします。

新人が困ること、それはわからないことを誰に聞いたらよいかわからない、聞くタイミングが合わずになかなか聞くことができない、といったことです。

配属が決まってから、なんだか元気がなくなっているなと感じる新人に「仕事慣れた?どんな調子?」と声をかけると、こんなことをよく言っていました。

「仕事でわからないことがあっても、先輩たちになかなか聞けないんです。今忙しいからあとでって言われたり。それでも聞かないと前に進めないからまた聞くと、露骨に嫌な顔をされるんです」周囲も忙しいため、新人に配慮が行き届かず、気がつけば新人がほったらかしになっているということが、過去に何度もありました。

今は、ギリギリの人数で業務を行っている会社がほとんどです。では、そういう状況でいったい誰が、新人の指導をするのでしょうか。

指導者を明確にせず、現場に任せておくと、先輩たちは「自分もそうだったから、自分で努力してね。甘えていては、やっていけないよ」「困ったことがあっても、誰もが通る道だから、がまんだね」と、本人任せにしてしまいます。

一方、新人も新しい職場で一生懸命がんばろうとする意欲があるにも拘わらず、「活用してもらえない。なにもさせてもらえない」と言います。その時間が長くなるほど不満はつのります。

「なにくそ」とがんばれる人はいいのですが、それでも実務の習得により多くの日数がかかってしまいます。

育てようという意識が低い先輩社員の場合、自分の仕事の面倒な作業を新人に押しつけて、雑務ばかりをやらせ、育てるということをしないといったことも起こります。

指導体制が整うまでは、新人が育っていないという事実は、トップと一緒に仕事をしたときに明らかになっていました。

数カ月たっているにも拘わらず、基本的な知識が身についていない、質問にも答えられない。「一体どうなってるんだ!」とトップから指摘され、大慌てで新人に指導をしたこともありました。

せっかくコストと時間をかけて採用した新人が、育成のための体制が整っていないために育たない、最悪の場合、辞めてしまうことになると、会社としては大きなロスになってしまいます。

そこで、私たちはきちんと教育係を決めて、一緒に仕事をするようにしたのです。この教育係になる人は、新人を育てることができ、この人のように仕事をしてもらいたいというように、新人にとってモデルになる人です。新人に教える時間があるという人ではありません。

この指導役を誰に任命するのか、その人選は慎重に行います。人選の前提は、「トップの期待に応えている人、トップの思いに共感してくれる人」です。

この人選を誤ると新人が辞めてしまったり、期待どおりに育たなかったりするので、ここでは十分に気をつけています。新人を育てる一例として、会計監査を担当するパート社員のおおまかな育成スケジュールを説明します。

①入社~1カ月目

●初日に教育係からの説明(仕事の流れ・役割・育成スケジュール)

●教育係と一緒に仕事をする(顧問先への同行・入力作業・資料の作成等)②1カ月目~3カ月目

●正社員や先輩スタッフの顧問先へ同行する

●正社員や先輩スタッフの仕事を受ける(入力作業・資料の作成等)

●不明な点や疑問点は、自分で調べられるようになる③3カ月目~半年目

●担当する顧問先が決まる

●1人で監査業務・決算業務等の処理ができるようになる④半年目~1年目

●一人前のスタッフとして独り立ちする

●先輩スタッフと、同じレベルの仕事とスピードでやれるように努力する実は、この育成スケジュールは、正社員も同じです。このような流れで育成するということと、3カ月後、半年後、1年後はこうなってほしいということを最初に明示します。

このことをしっかりと伝えておかないと、パート社員が、「会社の期待するペース」ではなく、「自分のペース」で仕事をすることになると、私たちは考えるからです。

弊社では、6月と12月に上司との個人面談があることを伝え、仕事ができていればプラス評価、できていなければ努力評価になることをあらかじめ伝えており、評価についても自覚しながら仕事に取り組めるように指導をします。

話が少しそれますが、新人が入社して1カ月たつと、教育係のほかにも先輩スタッフが、新人の指導を行います。新人に仕事の指導をするということは、先輩スタッフにとっても大きな成長の場となります。指導するということは、教えること以上に勉強しないと教えられません。

相手にわかる言葉で、相手のペースを見ながら、マンツーマンで教えるというのは、新人を指導するための立派なスキルです。また、先輩スタッフは先輩スタッフで、新人を指導すると、いろいろなことに直面します。

●説明してわかったというのでやらせてみたら、できなかった

●なぜ、わからないことをちゃんと聞いてこないのか

●理解するスピードが、人によって違うので、指導が難かしい

●よかれと思って新人を注意したら、そのあと不機嫌になり仕事がやりづらい

●仕事を依頼するのにこちらの方が気をつかっている

●できないことへの言い訳が多い誰でも経験があると思いますが、はじめて部下を持ったときは、いろいろと戸惑うことが多いものです。それを一つひとつ悩みながらもクリアすることで、一職業人としても成長していきます。新人に指導をするというのは、そのスタートでもあります。

さらにこれは早いうちに経験させるともっと効果的です。というのも、新入社員研修の受講生で、そのあと1年ほど経って「この子は成長したな」と感じる人は、必ずと言っていいほど、簡単なことでもパート社員やアルバイトへの指導を経験しているからです。

成長が加速される理由は、指導される側と指導する側の両方を、早い時期に経験できるからでしょう。自分の仕事の仕方を振り返り、反省を活かして指導を行うことにより、マネジメントサイクルのプラン‐ドゥ‐チェック‐アクションが自然に行われます。

このサイクルの速度を速め、また、たくさん経験することで成長が加速されるのです。弊社では、より成長を促すために、キャリアの浅い人をあえて指導役にすることもあります。

会計事務所の仕事は、正社員が作成したマニュアルもあり、基本的なところは標準化しやすい仕事です。しかし、マニュアルを渡して、「これを見ながらやってね」だけでは、新人は不安になりますし、こちらの思うように育ちません。

やはり、一人前になるまでには、指導する側が仕事をする姿勢と見本を示し、新人に対して細やかに配慮することをひとつのルールとして実践しています。

この制度が、実際にきちんと機能するまでには、3年かかりました。中小企業の場合、指導役となる先輩がいないということもあるでしょう。そのような場合は、幹部社員や管理職、あるいは社長自らがパート社員の育成にある程度関わる必要を感じます。

そうしないと育つものも育たない、と私たちは考えるからです。

2実務を早くマスターさせるには

業種によって、実務を早くマスターさせる仕組みはそれぞれだと思いますが、わが社で実践している4点を紹介します。

①現場を体験させる実務をマスターするためには、現場をたくさん経験させることが一番の早道です。

「百聞は一見にしかず」、時間が合えば配属初日から、それ以外でも可能な限り現場を体験させます。

②ミスは指摘してやり直させるできるだけ早く仕事を完成レベルに近づけるため、教育係はできるまで何度でもやり直しをさせます。そのため時間的余裕を考えて、仕事の指示をします。最初は簡単な仕事から任せるのですが、100%できる状態にはなかなかなりません。そこで、ミスをしたところは付箋をつけて、本人に返します。

その場合も、「自分で調べたのか」「先輩に確認したのか」「本当に理解しているのか」等を本人に確認します。ミスは指摘してやり直させる。これを徹底的に行うことで、仕事の完成レベルも理解でき、望めるレベルに近づくことができます。期限が迫っているときには、教育係が訂正しますが、その場合も必ずミスした箇所を新人に伝えます。

③自習の時間を設ける常に勉強していくことが必要な業種ということもありますが、新しい知識を積極的に学ぶ姿勢を育てたいと考えています。具体的には、勤務時間内に必ず週1回1時間、自習をさせ、どんなことを自習したのか簡単なレポートを、教育係に提出させます。

④情報を共有化する配属された部門でミーティングの機会を持ち、期待されることを理解し、努力目標を明確にするということです。評価されるとやる気がでると言われますが、パート社員はどうすれば評価されるのか、その基準を明確に理解している人は、意外と少ないものです。

せっかくの努力も、上司の期待するベクトルに沿っていないために評価されないということを、私たちはよく目にしてきました。そこで、そういったことを防ぐために、部門ごとにミーティングを行い、情報を伝える機会を多く設けています。

ミーティングでは、部門長が、連絡事項を伝え、各人の仕事の進捗状況を確認します。進捗状況では、多くのパート社員は、働く時間が週20時間未満と限られているので、仕事の難易度や量は適切かを確認します。また、参加メンバーは、目標に対してどのように取り組み、結果はどうだったのかを一人ひとり発表します。もちろん、新人も発表します。

新人にとっては、先輩スタッフの発表を聞くことが、今後の仕事の取り組み方の参考になります。また、現在の自分との比較の中で、自分の能力を知ることができます。大きな目標を持つことはもちろん大事ですが、その目標に近づくための小さな一歩を明確にすることも大切なことです。

部門ミーティングは、小さな一歩を確実に進めるための重要なミーティングとも言えます。能力開発は、自分の能力を正確に把握し、さらにやるべきことを明らかにして、組織の中で期待される役割を担っていく、という流れがスムーズにできることで達成されます。

先日、スタッフにお願いしたアンケートにも部門ミーティングの成果が出ていました。「自分自身のモチベーションを保つために意識していることは何ですか?」という問いには、次のような回答が多くありました。

●目標を持つこと

●毎日自分なりの目標を決める

●まずは健康維持と、日々の目標を持つことを意識する

●より正確でスムーズな業務処理を日々考える。常に何か課題を持っている

●いかに仕事の効率を上げるかを常に考える

●自分がやるべきことを意識する。やるべきことに順序をつけ、ひとつずつこなしていくことで達成感を持ち、モチベーションを保つ

●目的を定める。仕事を楽しめるようにする

●朝の通勤時間(15分くらい)で、その日の仕事の組み立てを考える

3パート社員にも、一般の正社員と同じくらいの情報量を

私たちは、部門でのミーティングのほかにもパート社員に情報を与える機会を多く設けています。内容は次の5項目です。

①週1回のスタッフ(パート社員)ミーティング

毎週火曜日の12時30分から30分、時間を取っています。週4日勤務の人は、火曜日以外を公休日にするようにしています。内容は、前日の正社員の朝礼で伝えられたことの伝達が中心です。

②月1回のトップと正社員からの実務研修月に1回、午前中に行います。前半はトップの話で、内容は多岐にわたります。後半は正社員からの実務研修で、税制改正や決算、年末調整、確定申告等の内容です

③年1回のビジネスマナー研修毎年7月にスタッフ全員に行うマナー研修です。どのような内容にするのかを、事前にトップや現場責任者と話し合います。以前は、ビジネスマナーに焦点を絞り、入社後に行う2週間の研修のフォローという位置づけにありました。

3年前からはビジネスマナーでは気になるところが少なくなったので、「コミュニケーションのとり方」「報連相」などへ枠を広げて、情報提供をしています。

④年1回の方針発表会多くの会社で開催されている方針発表会と同様、今年1年、組織がどのような方向に進んでいくのか、トップや各部門責任者が伝えます。方針発表会の後は新年会を行います。時間は2時間程度で、食事をしながらゲームなどを行い、楽しく過ごします。新年会が終了するのは夕方5時です。5時過ぎには帰宅できるようにと、パート社員のことを考えてスケジュールを組んでいます。

⑤年2回の個人面接(6月、12月)パート社員への評価を伝え、次の目標を明確にするための面接です。時間は10~15分程度ですが、1対1の個人面接は、仕事の動機付けの上で大変重要です。目標に対してどのくらい達成できたのか、また次の目標をどのように達成していくのかを明確にし、合意をしていきます。このように、パート社員に正社員と同様、会社の情報や仕事の情報を伝える機会を多く設けています。

私たちは、正確な情報があればあるほど、適切な判断ができ、適切な行動がとれます。情報が少なければ、自分の経験の中で判断してしまい、結果的に間違っていたというのはよくあることではないでしょうか。「パート社員だから会議に出なくていいよ」「パート社員は方針発表会に出る必要ないんじゃないの」「パート社員は言われたことだけやっていたらいいよ」これでは、パート社員が仕事をする上で適切な判断をしていくことはできません。正社員並みの仕事をしてもらいたいと考えるのであれば、正社員並みの情報を伝えていく必要を感じます。適切な情報を伝える場を設けることは、やる気を生み出すための大事な仕組みであると私たちは考えます。

4評価システムの流れ

入社当初は、103万円の扶養の範囲内で働くことが、パート社員の条件のひとつです。しかし、経験をつむ中で、もっと働きたいという希望が出てくることがあります。

そこで、パート社員から正社員まで4つの環境を設けてあります。

103万円(配偶者扶養控除が受けられる範囲内で働ける人)

130万円(社会保険の扶養範囲内で働ける人)

準社員(週5日、9~17時勤務)

正社員

パート社員にとっては、子供が大きくなり、手がかからなくなったということも、働く上での大きな動機になるので、家庭と仕事のバランスをとりながら、お互いに合意の上で進めています。

ここで、私たちが一番大事にしているのは、「自分で申告する」ということです。これが、会社からの任命になってしまうと、期待に応えようとがんばるあまり、家庭が犠牲になり、結果的に続かずに辞めてしまうということになりかねないからです。

パート社員自身が家庭と仕事のバランスを見極め、本当に自分ができると判断したときに、自ら申告を行います。自己申告はいつでも直属の上司にすることができます。ただし雇用形態が変わるのは、年度初めの4月になります。また、申告したからといって、全員にOKがでるわけではありません。それぞれに求められる役割があるので、しっかりとその役割を担えるのかどうかを判断します。

時期尚早の場合には、その理由を述べ、具体的にどのようなことを努力すればいいのか、本人が納得できるように話します。パート社員の中には、経験・能力ともに高いレベルにある方でも103万円の配偶者扶養の範囲内で働きたいと希望している人も多くいます。

その人たちには、その環境の中で能力を発揮できるよう担当業務の調整を行い、リーダーの役目を担ってもらいたいと考えてます。パート社員へ評価を伝え、納得してもらうには、まず上司が、ミーティングなどを通じて、パート社員の状況をよく理解するなど、普段から十分にコミュニケーションをとることが必要だと感じます。

そのために、指導員が1対1の個人面接スキルを身につけるために研修に参加するなど、スキルの向上を目指しています。方針発表会など、全体会議で会社の方針と部門の目標を理解し、部門ミーティングにおいて、自分自身の役割の理解と個人目標の設定を行い、進捗状況を報告し、最後に個人面接による評価とフォローという流れになっています。

これらは、一般の会社では、正社員に対してごく当たり前にされていることです。このような制度を、パート社員にも当てはめたことで、パート社員の活用が円滑に進んでいると理解しています。

5女性が多い職場で、良好な職場環境は、どうすればつくれるのか

当社のパート社員にアンケートを取ったときに、改めて気づいたことがありました。それは、次の2つの質問からわかったことです。①この会社で、働いてよかったなと思うことは?②気持ちよく仕事をするために、どんなことを心がけていますか?①の質問の答えとして、

●週4日勤務で、家事と仕事の両立がしやすい点

●自分が希望した曜日に休めるところ

●子供の病気や行事を優先できる環境が助かっている

という答えを予想していました。もちろん、これらの答えはあったのですが、次のような答えのほうが多かったのです。

●女性が圧倒的に多いのに仕事がやりやすい

●よい仲間に出会えたこと

●人間関係が大変良い

●所内が明るい

●社内の雰囲気がとても良く、気持ちよく仕事ができる。

比較的皆の立場が同じなので、いろいろわかりあえることが多いこのように、質問①の答えは、グラフのように大きく3つに分かれました。質問②の答えでは、お互いに気配りをしながら、仕事を進めている様子がよくわかります。

●気持ちのよいあいさつをし、困っているときは助けあう

●あいさつやお礼は必ず伝える。自分にできることがあれば協力する

●相手の立場になって考える(提出物等、回収する人のことを考え、期限に関係なく、なるべく早く提出する、など)

●困っているときは、こちらから声をかける

●注意やアドバイスをもらったら、素直に受け止め、実行する

●自分の手が空いたら、何か手伝えることはないか聞く

●気配りを心がける

●主婦、子育て中という同じ境遇であるため、自分がしてもらったら助かると思うことを、手助けする

●仕事が1人の人に集中していたら、できることを分担したり手伝う

わが社では、育児休暇制度を整えており、この制度を利用した、あるいは、利用する予定のパート社員は14名です。そのうちの2名は2回利用しています。このような制度を現場でサポートしているのが、同僚のパート社員です。ではなぜ、パート社員同士が、お互いに配慮し合えるような良好な職場環境をつくることができたのでしょうか。

ひとつには、女性が子供を産み育てるということは当たり前のことで、できるだけ協力をしていくということが、会社全体で共通認識として取れているということ。このことがベースにあるかないかで、職場の雰囲気はずいぶん違ってくると思います。

もうひとつは、1日5時間で週4日、という勤務体系によるものが大きいと考えます。これは主婦にとって、時間に余裕が持てる働き方です。

逆に言うと、大変なときにお互いに協力ができる勤務体系ではないでしょうか。1日8時間の仕事をフォローするのは、実務的にも負担が大きいものです。

しかし、5時間の仕事であれば、現場で対応が可能です。もちろん、現場は当初は大変でしょうが、みんなで協力をするという共通認識があるため、気持ちよく協力し合えているのです。

1日5時間で週4日勤務は、パート社員にとっても、良好な職場環境を維持するためにも、今のところ、一番望ましい勤務体系ではないかと感じています。

第6章応用・展望編これからの私たちの働き方

1パート社員を組織化するときによく起きること

これは以前、当社でもあったことですが、社歴の長いパート社員がいると、その人でないと、その仕事がわからないというケースがあります。これは危険な状態です。会社に協力的なパート社員だったら、まだいいのですが、そうでない場合、困ったことが発生します。

この人に辞められると困るからと、経営者が従業員に気をつかう、といったことが起きてしまいます。こうなると本人がますますいい気になってしまい、「私がいないと困るでしょう」と増長してしまうケースがあるのです。

これを仕方がないことと認めてしまうと、他の従業員にも影響が及び、上司の言うことをきかない、統制の取れない組織になってしまいます。さらに、仕事の中身についても、担当者が故意に複雑で難しいやり方にしているということがよく見られます。

これは、マニュアルを作るときによく発覚します。よくある例としては、仕事を共有化することに対して非常に抵抗し、その職場に新人を配置するといやがらせをして新人を辞めさせることなどが挙げられます。

そして、やがて会社としてはなかなか改善が進まなくなります。このような状況になっていたら、いったん上司がその仕事の内容と流れを覚えるか、上司の監視下で、1~2カ月間新人に仕事を教える、ということを強制させることが必要です。

これらのことを防ぐためにも、仕事は複数のメンバーができるようにしておくことが肝要です。一極集中にならないよう、リスクを分散させてください。また、主婦のパート社員を活用する場合に、古くからいるベテランパート社員のボスへの対応をよく相談されます。

派閥を作る、新人をいじめる、自分の都合のいいように仕事をして会社に協力をしない、こういったことを放置しておくと、いつまでたってもパート社員の戦力化は進みません。私たちの今までの経験では、ベテランパート社員の能力レベルと活用の仕方が合っていないため、不満になっているというケースがほとんどを占めています。

要するに、本人のやる気と仕事の内容にズレがあったのです。意欲が高いのならば、数字として業績に現れるような責任ある仕事を任せると、やる気が出て会社に協力的になり、優秀なパート社員に変化していきます。

意欲が低い場合には、勤務時間に対し、仕事の量が適切かどうかを確認することをおすすめします。暇な時間ができると、無駄話をしたり、その延長で派閥を作るなど、どうしても人間関係に目がいってしまう人がいます。そこで暇な時間を作らない、仕事と人の配分を的確に行う、ということがとても重要になります。

わが社でも、パート社員の活用を進めるときに、実際に上司がこれらのことを実践しました。協力的でないベテランパート社員へは、個人面接を行い、会社の進む方向性を話し、協力してがんばっていくか、無理と判断するかを、本人に決断させたことがあります。

結果として、辞めていく人がほとんどでしたが、お互いの合意が得られない中で仕事をしても、結果に結びつかないので、早めに対処したほうがよい問題です。

2もう一度整理をしてみると

先日、これからパートで働こうとしている友人と、話をしたときのことです。

友人「ようやく下の子が3年生になったから、これから働こうと思ってるんだ」

鈴木「そう、雑誌で探してる?」

友人「うん、ショッピングセンターの中で、いいところないかなと思って」

鈴木「連絡してみた?」

友人「ううん、これからなんだ。でもブランクがあって、また働き出すのって結構大変だね」

鈴木「そうだね。でも、実際に働き出して、生活のリズムがつかめたら、すぐに慣れると思うよ」

友人「そうだといいな、ところで、鈴木さんってずっと働いているよね」

鈴木「うん」

友人「何年ぐらいになるの?」

鈴木「途中で育児休暇取ったりしたけど、17年かな」

友人「えっ、17年、それはすごいね。ずっと同じ会社だよね」

鈴木「そうだよ」

友人「今、正社員?」

鈴木「ううん、パート社員だよ」

友人「働き続けるのって、大変じゃなかった?」

鈴木「大変だったけど、働く時間帯をね、いろいろ変えてきたの。子供が小さいときは短くしたり、水曜日を半日にしてもらったこともあったし。それに、子供が病気のときや学校行事のときは、休んでいいことになっているから、その点、気が楽だったね」

友人「へぇ、そんな会社もあるんだね。最初の子供ができるまで働いていた会社が、そんな感じだったら私も続けられたかな」

鈴木「9時から5時まででないと困りますって言われたら、きっと無理だったと思うよ。自分がつらくなっちゃうものね」

友人「そうなんだよね、私も今、3時には仕事が終われるところで探してるもの」鈴木「いいところが見つかるといいね」

私たちは、会社以外でも子供から手が離れてきたお母さんたちと、このような会話をすることが増えています。希望の条件どおりとはいかなくても、折り合いをつけながら、働く場所をそれぞれが決めているようです。

中には、午前3時から6時までの3時間、市場やお弁当の製造工場で働くお母さんもいます。仕事から帰ってから、子供を学校に送り出すことができ、しかも時給が高いので人気のある仕事だと聞きます。

就職情報誌でも、フリーペーパーでも、パート社員の募集は増えています。私たちも訪問した先の社長さんに「パート社員で誰かいい人がいたら紹介してほしい」とよく声をかけられます。

これからパート社員の活用を進めたいと思う会社と、その会社で働くパート社員との間には、お互いに建設的な合意を見出していくことが必要です。

●望む結果を達成するために、パート社員が会社に求めるもの

●望む結果を得るために、会社がパート社員に求めるもの

「望む結果を達成するために、パート社員が会社に求めるもの」の筆頭が、パート社員の立場を受け入れる、ということだと私たちは理解しています。

●家事と育児、仕事の両立ができる

●都合のいい時間と曜日で働ける

●扶養の範囲内で働ける

パート社員の問題を、パート社員の立場から見て、正しく理解し、対処することが、まず活用の第一歩ではないでしょうか。

優秀なパート社員を採用するためには、最初にその人が働ける環境を整備しておくことが大切です。

わが社が、現在、他社に比べて優秀なパート社員を採用できているのは、パート社員の働く環境が、他の会社より優位性を保っているからだと思います。

「望む結果を得るために、会社がパート社員に求めるもの」は、会社によってそれぞれでしょうが、当社では「高い収益性」になります。

その仕組みとして、採用・OFFJT・OJTの3つに分けて、パート社員をどのように育成しているのかを紹介しました。

パート社員をサポート的な仕事に使っている限り、利益を生み出すことはできません。正社員のやっている仕事へ、どうやってパート社員をシフトしていくのかをまず考え、システム化を図ることが重要です。

サービス業では、このシステム化が進んでいます。しかし、事務系でシステム化を図り、また、システムをハードとすると、それを円滑に動かすソフト(育成・管理)の充実を図った組織は、まだそれほど多くはありません。ハード面が整備されると、ソフト面はおろそかになりがちです。

しかし、そこを妥協せず徹底して行えたことが、わが社の成功につながったのだと思います。この本を書いている時点では、うまくいっていますが、また社会環境が変わればその環境に適応していく必要があります。

成功するには、その時代や環境の中で、優位性を保つ努力をしていかなければなりません。パート社員の活用で何より大事なのは、「パート社員を活用する」というトップ自らの決断です。

「どうせパートだから、ここまでしかできないだろう」などと思わないでください。トップがそう思っていたら、「そこまでしか、しなくていいんだ」とパート社員は感じ取ってしまいます。できると信じ、期待をかけ、育てることで、正社員並みの仕事をするパート社員が生まれるのです。

3働く主婦に対する配慮

当社では、パート社員が誕生日を迎えると、トップからバースデーケーキのプレゼントがあります。このケーキは直径が25センチもある立派なケーキで、とても美味しく、初めてこのケーキをもらったパート社員は、全員「すごい!」と感激します。

結婚して家庭を持つと、女性は家族のことが優先となって、自分のことは後回しになってしまうことが多いのですが、誕生日も例外ではありません。

自分のためにケーキを買ったり、特別にお祝いをするということも少ないので、このバースデーケーキはパート社員にとても好評で、その家族にも喜ばれています。

また、この他にも年間を通じてレクリエーションが行われています。お花見やボーリング大会、クリスマス会など、家族で参加できるようにと配慮されていて、子供たちも喜んで参加します。

家族と一緒に楽しむことのできる行事が多いので、スタッフの家族同士の交流を育むことができています。主婦が、仕事をする場合は、家族の協力が必要です。

それでもなるべく家族に負担がかからないようにと、私たちは努力をしています。その中で、会社から家族への配慮があると、本当にありがたいと心から思います。

働く側の事情を受け入れてもらい、配慮してもらうと、私たちも仕事をがんばろう、この会社をよくしようという気持ちが高まります。

帰属意識は、正社員だから持つというものではありません。パート社員も認めてもらいたいと思っているし、認めてもらうとうれしいのです。そういう気持ちをぜひ汲んでほしいと思います。

4今後の課題

最後に、働く主婦の意見を少し聞いてほしいと思います。

私たちは、よくメンバー同士でこんな会話をしています。

「いつまで働こうと思ってる?」

「定年までかなぁ」

「私は働けるまで」

「働けるまでって?」

「う~ん、80歳ぐらい?」

「すごいね!」

「うちのおばあちゃんなんか、倒れる前日まで畑仕事してたよ」

「そっかぁ、ずっと働くにはまず健康だね。健康にいいこと何かやってる?」

私たちはいつもあることを考えます。これから子育てが終わって、「さぁバリバリ働こう」といったときに、今度は、親の介護について考えていかなければなりません。

働く女性の先輩が、介護のため、毎週新幹線で東京と親元を往復したという話や、できるだけ自宅でもできる仕事をまわしてもらっているという話を聞き、想像以上に大変なことなのだと感じています。

しかし、「仕事があるから救われた」「他のところで集中できる時間があるということがプラスになった」という話を聞き、励みにもなっています。

介護については、会社にとってもこれからの課題です。パート社員へのアンケートで、「こんな制度があると助かるというものはありますか?」との質問に、介護に関することも出てきました。

数年先はもっと増えていくでしょう。本書の執筆中にも、実際に正社員の女性が介護の問題に直面しました。トップと話し合い、職務の役割の変更と勤務時間の見直しを行い、介護と仕事の両立を図っています。

介護は、育児と違い予測することが難しく、各家庭によって状況は異なります。状況が明らかになった時点で、個人と会社が相談しながら調整を図り、対処していくことが求められます。

仕事を辞めるという選択だけでなく、時間の調整や休業等、その状況で一番よい方法を、会社と合意の上、決めていくことができればありがたい、と私たちは考えています。

「多様な就業形態、家庭環境の人が集まり協同し、収益の上がる会社を運営する」これは、中小企業だからできる、という側面もあるのではないでしょうか。

そのための仕組みを、今後も模索していく必要性を私たちは強く感じています。

あとがき

2006年の5月、「ブックオフパートの主婦から社長に」という見出しが、多くの新聞や雑誌の紙面を飾りました。私たちは、ちょうどこの本を書いている最中で、ワクワクしながらその記事を読みました。

多くの人は、パート社員というと「単純作業者」「正社員の仕事の補助者」というイメージを持っていると思います。私たちは、そういう枠でくくられないパート社員について、この本を書いてみたいと思いました。

そんな中、「パートの主婦から社長に」という見出しは、私たちにとって、大きな励みになりました。経営者でもない、一パート社員の私たちがいろいろと生意気なことを書いて参りました。

パート社員の立場でいうと、実は私たちの考える最終ゴールは正社員ではありません。能力(付加価値)を身につけ、正社員も含めて「働く環境を選ぶ自由を手に入れる」。これを最終ゴールと考えています。

出産、育児、子育てまたは介護など、人生の課題に柔軟に対応しながら、ビジネス社会にも参加して高い評価を得、自分にとって最もいい環境を手に入れる。これは可能なことだと思います。

以前、わが社で働いていたパート社員が、正社員として転職した先の会社から、研修の依頼を受けたことがあります。その理由は、「今度入社した○○さんは、仕事の基本ができていて助かっています。どうして身につけたのかを聞いたところ、前の会社で研修制度があり、そこで身につけたと話していました。うちでもそういう研修をやっていただけますか」とのことでした。

このように、働く場が変わっても変わらないことがあります。それは、仕事のできる人は、自分の会社にとっても、よその会社にとっても、価値ある資産だということではないでしょうか。そして、ここが大事なのですが、誰もがそうなる可能性を秘めていると思うのです。

私たちは、初めの一歩からスタートし、資産となる能力を身につけた人を育てるお手伝いをしたい、と思いながらこれを書きました。その私たちの書いたものが、一冊の本になりました。

これも私たちを取り巻く方々のおかげです。一人ひとりのお名前が書けないことが残念ですが、本当にありがとうございました。

この本は、セミナーにご参加いただいた方、また、その上司の方など、多くの人たちとのやりとりから生まれました。私たちに多くのご指摘を与えてくださった皆さまに、心から感謝申し上げます。

そして、東洋経済新報社の中村実様、コンサルタントの木村喜子様、弊社グループ所長の鈴木眞一、上司の久野輝行、弊社グループ諸氏、皆さまの協力なしには、この本はでき上がりませんでした。本当にありがとうございます。

また、家族の励ましも私たちにとって大きな支えとなりました。最後に、この本を手に取り、読んでくださった読者の皆さまに、心より感謝申し上げます。

皆さまの貴重なお時間をいただき、何かひとつでも役立つことがあれば幸いに存じます。これから、皆さまの会社で戦力となるパート社員が何人も育っていき、私たちの仲間が増えてほしい、心からそう願っております。

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