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上限CPO

「」「」上限CPOは「ここまでかけていい」販促費販促費の管理は、利益を上げるうえで重要だ。5段階利益管理では、利益②「純粗利」から利益③「販売利益」を導き出す過程で販促費を管理している。「販売利益」が対前月や他の商品に比べて悪化している場合、「販促費の投資効率が悪くなっている場合」と「販促費の先行投資を強化した場合」の2つの要因が存在する。

しかし、後者の要因であった場合、「先行投資をしたのだから一時的に販売利益率が悪化するのは仕方がない」で終わらせていいわけではない。先行投資をしたなら、その投資がいつ、いくらになって回収できるのかを明確に把握しておく必要がある。そのためのマネジメント指標が「上限CPO」と「時系列LTV」だ。

 

CPOとは、コスト・パー・オーダー(CostPerOrder)の略で、一人のお客様を獲得(受注)するのにかかるコストを指す。どんな業種でも注文を取ろうとすれば、広告を出したり、営業したり、何らかの販売活動が必要だ。CPOをかければ売上は上がるが、5段階利益管理の経費項目にある販促費などのコストがかかり、利益は減る。売上は大きいが、利益の少ない会社はたいていCPOが過剰だ。だからこそCPOのマネジメントが必要となる。当社のようなネット通販では、CPOの大部分を広告費が占めるが、CPOを管理する仕組みができているので、入社半年の新人でも運用できる。

一般的にCPOは「一件の受注に対してかかるコスト」と考えられるが、私は「一人のお客様と出会うのにかかるコスト」と定義している。一人のお客様に繰り返し注文いただくからだ。一人のお客様と長くおつき合いし、定期購入していただく。これは販促費の削減と高い利益につながる。では、具体的にCPOについて考えていこう。

上限CPOを厳守する多くの会社がCPOの目標を定めている。だが、その目標は揺らぎやすい。LTVが上がっていなくても、「続ければ結果が出るだろう」「今は赤字でも後から利益がついてくるはず」と楽観的に考え、販促費をふんだんにつぎ込む。しかし、いつ、いくらになって返ってくるのだろうか。CPOをかけ続ければ売上は上がる。しかし販促費もかかり続ける。これでは販売利益は出ない。しまいには赤字になる。仮に1年の販売利益を3500円と定めたら、図表27の商品Aの場合、12か月後の時系列LTVが1万1000円なので、上限CPOは7500円となる。これは時系列LTVの3か月後の数字と同じであり、3か月でCPO分が回収でき、トントンになることを示している。上限CPOを厳守することが重要だ。冒頭で、当社は新入社員でも広告を運用できると言ったが、上限CPOを決めていればこそだ。これを決めるとビジネスがシンプルになる。

CPOと新規顧客獲得件数の相関性をどう見極めるか営業すればするほど顧客は増える?次に、CPOと新規顧客獲得件数の相関性について考えてみよう。ある商品を発売したとき、その商品の全体利益は、新規顧客獲得件数×顧客一人あたり利益(LTV-CPO)=全体利益で決まるから、新規顧客をいかに獲得するかが重要だ。お客様を獲得するコストがこれまで再三出てきた「CPO」だ。だが、CPOをかければ、新規顧客が無尽蔵に増え続けるというわけではない。広告費と新規顧客獲得件数の関係は「収穫逓減の法則」に当てはまる。

収穫逓減とは、同じ投資をしても、利益の増加分がだんだん小さくなる状態を指す。たとえば、やせた土地に肥料を与えると、土が肥えて農作物の収量は増える。だが、一定水準以上の肥料を与え続けると、肥料を購入した金額に対して収量が見合わなくなる。また、所有する農地を広げれば耕作農地が増え、収量も増加するはず。ところが、農地の追加取得を続けていくと、肥沃な農地だけでなく、農業に適さない土地も取得するので収量が下がる。一定条件の下で、ある生産要素を増加させると、生産量は全体としては増加するが、その増加分は次第に小さくなる。つまり、営業活動を増やせば増やすほど新規顧客が獲得できるというわけではない。適正な営業活動は利益を最大化する。だが、それを超えると、利益を圧迫するコストになるのだ。「イノベーター理論」に見る顧客獲得戦略新規顧客獲得件数の増加に伴い、CPOは上がっていく。これは「イノベーター理論」で説明できる。イノベーター理論とは、新しい製品・サービス市場への普及率を示したマーケティング理論だ。1962年、スタンフォード大学のエベレット・ロジャーズ教授が『DiffusionofInnovations』(邦題『イノベーション普及学入門』宇野善康監訳、産業能率大学出版部、1981年。『イノベーション普及学』青池愼一・宇野善康監訳、産業能率大学出版部、1990年。『イノベーションの普及』三藤利雄訳、翔泳社、2007年)で提唱した。イノベーター理論では、普及の過程を次の5つの層に分類している(図表28)。

 

◎イノベーター(革新者)【市場全体の約2・5%】……最初期に製品・サービスを採用する層。情報感度が高く、新しいものを積極的に導入する好奇心を持つ。「新しい」ことに価値を感じ、市場にまだ普及していない、コストが高い製品・サービスでも、価値観に合致すれば即購入する。◎アーリーアダプター(初期採用者)【市場全体の約13・5%】……イノベーターほど急進的ではないが、これから普及するかもしれない製品・サービスにいち早く目をつけ、購入するユーザー層。世間や業界のトレンドに敏感で、常にアンテナを高く張って情報を判断し、これから流行りそうなものを採用するので、世間や業界のオピニオンリーダーやインフルエンサーになりやすい。◎アーリーマジョリティ(前期追随者)【市場全体の約34%】……情報感度は比較的高いものの、新しい製品・サービスの採用に慎重な層。アーリーアダプターの意見に大きく影響を受ける。

◎レイトマジョリティ(後期追随者)【市場全体の約34%】……新しい製品・サービスについては消極的で、なかなか導入しない層。多くのユーザーがこの製品・サービスを採用していると確証を得てから採用する。◎ラガード(遅滞者)【市場全体の約16%】……市場の中で最も保守的な層。その製品・サービスがただ普及するだけではなく、伝統的、文化的なレベルまでそれを採用することが一般的にならないと採用しない。新しいものを積極的に導入する好奇心のあるイノベーターを獲得するためのCPOは低い。購入のハードルも低く、イノベーターが5人いれば一人は購入してくれる。ワンクリック100円とすると、5クリックで1購入なのでCPOは500円。一人のお客様が500円で獲得できる。ただし、イノベーターは市場全体の約2・5%しかいない。イノベーターを獲得してしまうと、次はアーリーアダプターになる。アーリーアダプターはこれから普及するかもしれない製品・サービスにいち早く目をつける。この人たちは10人に一人が購入する。ワンクリック100円とすると、10クリックで1購入なので、CPOは1000円。イノベーターに比べ、アーリーアダプターを獲得するためのCPOは高くなる。このように、図表28の右へ行くほど新規顧客獲得は難しくなり、CPOは高くなる。アーリーマジョリティのCPOは5000円、レイトマジョリティのCPOは1万円、ラガードはCPOをいくらかけても獲得は難しい。購入意欲が高い層を対象にしているうちは低いCPOで新規顧客が獲得できるが、対象が広がるとCPOは上がっていく。図表29を見てほしい。

1000人の市場にイノベーター理論の5つの層を当てはめてみた。イノベーターは25人、アーリーアダプターは135人、アーリーマジョリティとレイトマジョリティは340人ずつ、ラガードは160人いる。1日25人の新規顧客を獲得しようとすると、イノベーターだけが対象になるのでCPOは500円。さらに新規顧客を獲得しようとするとCPOは増える。イノベーターとアーリーアダプターを獲得しようとすると平均CPOは図表29のとおり922円、イノベーターとアーリーアダプターとアーリーマジョリティを獲得しようとすると平均CPOは3695円。獲得件数が増えるほど平均CPOは上がる。つまり、どれくらいの顧客を獲得しようとするかによってCPOは変わるのだ。また、商品発売からある程度時間が経つとCPOは上がる。発売直後と1年後を比べるとCPOは上がっている。購入意欲が高い人から獲得し、その後、意欲が低い人を新規獲得しようとするからだ。

最適「上限CPO」の算出法と9割の社長がハマる罠CPOと顧客一人あたり利益、新規顧客獲得件数の関係を整理すると、次のようになる。CPOを下げる→新規顧客獲得件数は減、顧客一人あたり利益は増CPOを上げる→新規顧客獲得件数は増、顧客一人あたり利益は減したがって、最も全体利益が多くなる最適な上限CPOを見つけることが大切だ。全体利益は、新規顧客獲得件数×顧客一人あたり利益(LTV-CPO)で算出されるからだ。図表30を見てほしい。

ここでは1年のLTVが1万円の商品で、CPO、新規顧客獲得件数、1年売上、顧客一人あたり利益、全体利益を比較している。この商品の場合、CPOを3000円にすると、1年の新規顧客獲得件数は100件。CPOを9000円に引き上げると新規顧客獲得件数は一気に300件になる。CPOを上げれば上げるほど新規顧客獲得件数は増え、売上も上がる。だが、顧客一人あたり利益はどうか。LTVが1万円の商品だから、CPOが3000円なら、顧客一人あたり利益は7000円。CPOが4000円になると、新規顧客獲得件数は増えるが、顧客一人あたり利益は6000円に減る。CPOが9000円になると、新規顧客獲得件数は300件に増え、売上は300万円と最も増えるが、顧客一人あたり利益は1000円に減ってしまう。図表30で注目すべきなのは、全体利益が最も多くなるのはどこかだ。全体利益=新規顧客獲得件数×顧客一人あたり利益(LTV-CPO)顧客一人あたり利益が一番多いのは、CPOが3000円のとき、新規顧客獲得件数が一番多いのはCPOが9000円のときだ。だが、全体利益となると、CPOが3000円のときは70万円、CPOが9000円のときは30万円。全体利益が一番多いのは、CPOが6000円のときで80万円となる。全体利益を最大化するには、上限CPOを6000円にするのがベスト。CPOを6000円以上にすると、新規顧客獲得件数が増え、売上は上がる。しかしながら、「収穫逓減の法則」にハマって、全体利益は減っていく。多くの会社がこの〝罠〟に陥っている。レイトマジョリティやラガードまで振り向かせようと、無駄な投資を重ねているのだ。「収穫逓減の法則」や「イノベーター理論」を知らないと、CPO3000円で新規顧客を100件獲得し、全体利益が70万円出るなら、CPOを3倍の9000円に増やせば、新規顧客も3倍の300件、全体利益も3倍の210万円になると安易に考えてしまいがちだ。しかし、そうはならないことを図表30は教えてくれる。

広告投資バランス指標で「機会ロス」「採算割れ」をチェックただし、CPOは低ければ低いほどいいわけではない。減りすぎると機会ロスになる。広告の投資効率の指標の一つに、ROAS(ReturnOnAdvertisingSpend)がある。広告費に対してどれだけ広告経由で売上があったかを計る指標だ。算出式はこうなる。ROAS=広告経由の売上÷広告費たとえば100万円の広告費を出して、売上が200万円だったら、広告経由の売上200万円÷広告費100万円=ROAS2・0(もしくは200%)となる。同じ100万円の広告費でも、広告経由の売上300万円→ROAS3・0(もしくは300%)広告経由の売上500万円→ROAS5・0(もしくは500%)と高ければ高いほうがいいと考える。

では、単純にROASを高めていこうとすると、どうなるか。ROASの低い広告をやめればいい。すると機会ロスが増える。顧客一人あたり利益は増えるが、全体利益は減る。ROASは上がり効率はよくなるが、全体利益額は減る現象が起きる。ROASには最適値がない。リピート前提の定期購入(サブスク)の場合、1を割っても利益が出る。1以上なら黒字、1未満なら赤字という単純なものではない。ROASは「広告Aは広告Bに比べてROASが悪い」「広告Aは先月に比べて今月のほうがROASがよい」と、広告同士や同じ広告の時期別レスポンスを比較するためのものだ。そこで当社では機会ロス、採算割れチェックを「広告投資バランス指標(造語)」を用いて行う。商品が複数あればCPOもそれぞれ変わる。これらをまとめ、機会ロスあるいは過剰投資になっていないかを見る。広告投資バランス指標=CPO実績÷上限CPOこれを算出し、1を下回れば機会ロス、1を上回れば過剰投資、1が適切となる。たとえば、上限CPOが6000円で、結果的にCPO実績が5000円の場合、CPO実績5000円÷上限CPO6000円=0・83となり、機会ロスしていることがわかる。これを週一回確認し、1を上回る場合は広告を抑えぎみに、1を下回る場合は少し出稿量を増やそうと指示する。以前から1を超えた部分について「過剰投資だから広告をやめる」と指示していた。しかし、過剰投資のみを指摘されると、社員は広告を出さなくなる。過剰投資もいけないが機会ロスもいけないので、この指標を用いるようになった。

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