鬼 100則 98社員の辞めさせ方 出店が短期間に集中する時期、大幅な人員増が必要なため、少し無理をして新卒 30人と中途採用十数人を受け入れた。彼らは、研修期間を終えてそれぞれの赴任地へ向かう。 しばらくしてある店長から、「彼にはこの仕事は厳しい、向いていない」との連絡が入る。その訴えを受けて、業務を変えたり、彼に対する教育やコーチを誠心誠意重ねたりしたが、なかなかうまくいかない。店長はもとより、部長、社長までもが加わり話し合いをしてたどり着いた結論はこうだった。 採用面接で我々は「会社の目線」で彼を選んだ。会社は必死で彼を育てようとしている。だが、どうしても会社と合わない。彼の青春の大切な時間を食いつぶしてしまう。 彼も苦痛だろうと感じるようになった私は、勇気を出して、実家に電話をかけた。 ご両親から相当なお叱りを受けた。「何のための採用面接だったんだ!」と。 ご両親とは心を込めて話し合った。彼のために議論に議論を重ねてたどり着いた結論である旨を伝えた。その際、社内で彼を見つめ続け気づいた彼の特性、彼と相性がいいと思われる労働環境などを伝えた。ご両親の知り合いにそういった会社がないかを聞いた。 もし万一、いい会社が見つかって入社の内諾が取れた場合、ご両親から「今の会社は土日は多忙。『疲れた、辛い』と毎日漏らすのを見ているのは親としても苦しい。知り合いにお前と相性の良さそうな会社がある。今の環境に自分から見切りをつけて新天地に行ってみないか」と話してもらうことにした。 後日彼は、自分の意志で我が社に別れを告げ、胸を張って新天地へと旅立っていった。 彼のご両親からは「 1人の若造のために、ここまで将来を考え抜いてもらってありがたい」というお言葉をいただいた。 本人の適性を無視した採用は絶対にしてはならない。 また、会社に長く貢献してきた功労者であっても、会社のさらなる前進にとって障害となる場合もある。そのような場合に会社としても手を打たざるを得ない。だが、この場合も目の敵にして追い出してはならない。社員たちがいたからこその事業である。社長が心を込めて次の人生へ送り出してあげるのだ。送り出すときまでも誠心誠意をつくし、その後のその人の人生を考え抜く社長の思いは、きっと伝わるはずだ。
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