はじめに
設備投資は、企業における最も大切な戦略である。現在の収益力は、過去の投資の結果であり、今行っている投資が、将来の利益を規定している。したがって、現在の利益が低いのは、過去に不適切な投資を実行したためであり、あわてて経費などを削減してもあまり意味はない。過去の投資を悔やんでも後の祭りであり、むしろつぎの投資により収益力の改善を図ることが急務である。
適切な投資によって企業の成長と安定は約束されるし、逆に質の悪い投資を繰り返していれば存続は期待できない。設備投資の重要性は、ほぼすべての経営者の持つ共通の認識と思われるが、その適切な意思決定はかなり難しいものである。投資の内容、規模、タイミング、いずれをとってもその選択肢はきわめて多く、最善の決定は不可能に近い。それにもかかわらず、経営者は設備投資の意思決定を行うことを迫られ、もし難しさを理由に投資を避ければ、企業の長期的存続は失われる。しかし最善の選択は実現できないにしても、手順を踏んで適切な意思決定を行うことにより、ブレの少ない、結果的には安定した投資は可能である。
まず第一に、企業の方向性を見定めた中長期経営計画に沿ったコンセプトの明確な投資を行うこと、第二に、その資金的側面として採算性の判断と資金収支の安全性を必ず確認することの2点を守ることである。前者については思いつきで、あるいはお金が余っているからという理由で多くの投資がなされ、そのほとんどが失敗していることを見ればその重要性はいうまでもあるまい。後者については、将来のことはよく分からないので採算計算しても無意味であるという理由で、その実行が軽視されてきたが、企業の存在意義は投資をして利益をあげることである以上、将来の不確実性を理由に採算判断を放棄することは経営の放棄にほかならない。
この小著を発行するに至った理由としては2つあげることができる。まず、筆者が日々業務をともにしている中小企業経営者の多くは、業務多忙のこともあり設備投資計画を十分に検討することが少なく、かねてより適切な手引書を提供することが必要と思われていたことである。
ついで、設備投資に関する入門書がほとんど見当たらず、もしあっても現在価値法を中心とする理論にかたより、実務で使いにくいものが多く、実際に使いやすい採算判断を説明したものが望まれていたからである。採算判断においては、理論上は現在価値法がベストであるが、実務の立場からいえば採算性と流動性を十分に検討すればよく、具体的には回収期間法と投資利益率法を理解すればよい。したがって、本文の中の現在価値法の項は飛ばしていただいてもさしつかえない。
実際のところ、企業経営において最重要である設備投資に関する書物があまりに少なく、投資といえば、証券投資との誤解が多く、その重要性が十分に認識されていない。その意味では、
この本が設備投資の重要性を再認識するきっかけになればと思っている。この本では、ある食品機械メーカーを取り上げ、ケーススタディの形で設備投資計画を立案することにした。投資計画については、メーカーの増産投資と、新規事業の一環としてコンビニエンス・ストアの出店の2つの事例を取り上げた。メーカーおよび商業経営のいずれにも役立つものと思われる。
本書の執筆に際しては、多くの方にご教示・ご協力いただいたが、メーカー部門においては、大嶋正道氏(佛松村石油研究所 代表取締役)、商業部門においては、水谷勝氏(中小企業診断士)にそれぞれお世話になった。最後になったが、PHP研究所の辰本清隆氏に企画段階から全面的にご協力いただいたことに心から感謝したい。
1994生F5月
久保田政純
序企業の将来は設備投資で決まる
設備投資は、経済の節目節目で、大きな脚光を浴びる。ある時は、好景気の原動力と讃えられ、また経済の停滞を招く元凶のようにいわれることもあるもこれは、設備投資が10年近いサイクルで繰り返される景気の波動の主な形成要因となっているためであり、好況期には、景気の強力な牽引力になる反面、景気低迷期には、過剰設備として目の仇にされるのが常である。
一方、企業の側から見れば、設備投資は経営の屋台骨とでもいうべきものであり、企業活動は、設備投資をもって始まる。例えば大手スーパーが、小さな商店から、あるいは大手自動車メーカーが、輸入の旋盤から事業を興してきている。
このように、設備投資は事業の基盤であり、企業活動にとって不可欠なものである。そして設備投資戦略によって企業の将来の収益構造の大枠は決められる。このため、設備投資を実行すればほぼ将来の収益は決まっているのであって、投資をした後でいくら経費を削っても、あるいは、いくら目標利益を高く掲げても、焼け石に水なのである。
経営者にとって、適切な設備投資を手順にのっとって行うことは人への投資と並んで最大の課題であり、最も大切な意思決定である。企業の骨組みとなる設備投資によって、その将来は左右される。投資が少なすぎれば、営業活動を維持発展できずその将来は先細りとなる。一方、投資が過剰になされるとうまく資金が回らず、突然の企業活動停止、すなわち倒産を招くことになる。
このように、投資は過剰でも過少でも企業の成長と安全を損なうものであり、タイミングのよい適切な投資を実現していくのはそれほど容易なことではない。しかし、思いつきと度胸依存の投資を脱し、手順を踏んで議論を尽くした投資へと変えることにより、そのリスクの多くは回避できるものである。
設備投資実行の際、最も重要な点としては、まず第1点として、設備投資を中長期経営計画の中にしっかりと位置づけること、すなわちコンセプトを明確にすること、第2点として、必ず採算計算を行い収益力のある投資を行うことが挙げられる。企業の経営計画との関連が不明なまま、思いつきで、あるいは他社がやったからという横並び意識で、時に有名な人が勧めたからなどの理由で投資を実行し失敗した例があまりに多い。自社独自のしっかりした経営目標を打ち立てて、その方向に沿った投資を行うことが大切である。
つぎに、採算計算については、投資の回収期間による判断も流動性の観点からは大切であるが、加えて採算性判断のため少なくとも投資利益率法(ROI)、できれば現在価値法を利用したい。というのも、自社の投資に必要とされる最低限の要求利回り(資本コスト)を明確にしなければ、これらの指標は使えないからである。
例えば、自社は設備投資の利回りは常時10%以上なければ採用しない、などである。この結果、常に投資の採算(質)に配慮することになり、資本コストを意識した投資の意思決定がなされ、単に他社との対抗上のみの設備投資などは排除される。
また、企業収益への寄与については具体的な数字で測定しにくいが、企業活動を維持する上で、どうしても欠かせない投資がある。例えば、公害防止投資などであるが、この場合でも必ず採算計算を行う原則を確立しておくべきである。
1。企業経営における設備投資とは
(1)何のための設備投資か
企業が安定した成長を続け、同時に収益力を高めるためには、モノおよびヒトに対し適切な投資が必要である。過去にこの投資を怠り、結果的に衰退していった多くの例が存在する。企業の成長と安定を達成するための最大の戦略が、これらの投資にかかわるものである。
さて、ヒトとモノに対する投資の中で、モノに対する投資を一般的に設備投資という。設備投資とは、民間企業が生産・販売活動等の企業活動を行っていくために、工場や店舗などの有形固定資産を取得することを意味する。
有形固定資産を取得するのが設備投資であるから、商号・特許などの無形固定資産を取得するための投資は、厳密には設備投資とはいわない。しかし一般的には、営業権の取得などの無形固定資産や研究開発投資、ソフトなどの情報化投資も含めて広く設備投資と呼んでいる。
企業は、資本をさまざまな形態で調達し、それを原材料・仕掛品・製品、さらに売掛金などの流動資産に投下し、日々の生産や販売を行っている。これらの活動を行う
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容器
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としての設備は、一度購入されると、毎日供給・消費される流動的な原材料などとは異なり、長期間一定の場所に固定され企業内で稼働するため固定資産といわれ、原則として1年以上使用される。固定資産は、有形固定資産(目に見える資産)、無形固定資産(営業権・特許などのように無形のもの)、投資(出資金・長期証券投資など)の3つに分類される。このうち有形固定資産とは、具体的には土地・建物・機械装置などの設備をいう。
企業が設備投資を行うのは、大きく分けて、現存の機械や店舗が古くなったため取り替える必要が出てきた場合と、新工場などを建設する場合の2種類がある。いずれの場合も、適切な設備投資がなければ企業の継続的発展はあり得ない。すなわち、企業の将来の収益力はこの設備投資によって決定されるので、設備投資を実施した時点で将来の収益の大枠は固まっている。設備投資が経営における最大の意思決定といわれるのはこのためである。
さて、設備投資、証券投資などに使われる投資という言葉は資本の「運用形態」、つまり資本を運用することを意味している。現金への運用は現金投資、棚卸資産へのそれは在庫投資、有形固定資産は設備投資、有価証券は証券投資と呼ばれる。ちなみにヒトヘの投資は、お金をヒトの教育などに使い、その効果を将来得ようとするものであり、資本の一運用形態とみなせるものである。
企業の投資にかかわる意思決定とは、資本をどの資産にどの程度運用するか、資産の規模と構成を決定することをいい、この巧拙により企業の営業利益が変動する。例えば、どのような設備投資を、どの程度の規模で実行するか。あるいはしないのか。その意思決定の内容に応じて営業利益が決定される。そこで、投資の意思決定により収益力が影響を受けることを、ビジネス・リスクという。企業の財務的意思決定の中で大きなものは、この投資の運用決定と、その資金をどこからどの程度調達するかという資金調達決定の2つである。
(2)設備は企業の骨格
企業が倒産する最大の原因に、過大な設備投資が挙げられる。しかし、設備投資を怠っていたために倒産したという事例を聞くことは少ない。これは、そもそも会社は資金繰りさえつけば、ある期間内はなんとか持ちこたえることができるからである。
設備投資を怠って業界から消滅・廃業していった企業は、人間でいえば老衰にあたるものであり、倒産ほどには目立たないだけのことだ。設備投資に消極的な企業も数多くあり、設備投資の役割を過小評価する向きもあるが、企業にとって設備投資はつぎのようにきわめて重要なものであり、その戦略によって、企業の将来性は決定されるといってよい。
設備は企業の骨格を形成する。製造業では工場が、商業では店舗が「設備」である。工場なしでは、優秀な労働者も原材料も生産活動に組み入れることができない。適切な設備投資により、うまく需要に対応して増産を行い、マーケット・シェア(市場占拠率)を伸ばす企業がある一方、設備投資を怠り、生産能力不足のため、みすみす顧客を失う企業もある。
業界の不況時に積極的な設備投資を敢行し、需要回復時にその増強設備をフル稼働させて、業界に独占的地位を築く企業もある。YKKや東京製鐵はその代表例である。またかつて繊維不況時に積極的な多角化を進め、それぞれの業界で上位のポジションを獲得した旭化成の事例もある。
ファナックの稲葉清右衛門社長は、同社の売上高経常利益率25%という経営目標をどんな厳しい時期でも変更しないのかという質問に、
「旗(目標)は揚げて持っていればいいんです。なぜ、そんなにこだわるかというと、私はボリュームの拡大を目指したことはないんです。ただ、強い体質だけを維持したいという具合に考えていたんですね。それが旗ですから、降ろしたら旗がなくなっちゃう。そのためには設備投資でも開発投資でも必要なことは思い切ってやる。私は今年の下期に大きな投資をしようと思っているんです。額が大きいから、担当の役員は非常に気にする。私はなぜ、そんなに気にするのかというんです。貯金を下ろせばいいんだから。問題は、その投資をすることによって、この円高に対応できるだけのコストダウンが実現できるかどうかです。投資の額なんかあまり気にしない」(『日経ビジネス』93年8月23日号)と答えている。
同社もまた、好不況にかかわらず明確な経営目標の下に、必要な投資を必要な時期に実行し、今日の地位を築いてきた企業である。なお、不況期に投資するメリットとしては、投資額が場合によっては好況時の6~ 7割の水準まで安くすむこと、発注後タイミングよく機械の納入がなされること、資金の調達金利も低いことなど多くの点が挙げられる。しかし残念ながら不況期に十分な投資を実行できるのは、体力のある優良企業のみであり、この結果さらに企業間格差が拡大する。
設備投資がなされていないために、工場が老朽化し生産効率が上がらず、製品品質も保証されない状態で衰退に向かう企業もある。ある精密機械メーカーは、研究開発を重視するあまり生産設備への投資を怠り、工場が雨漏りする状態になり、その結果、製品はコスト競争力を失い、クレームが多発して、業績不振を招いた。また、江戸時代からの粉挽き業を発展させ、澱粉製造業に展開していったある企業は、とうもろこし原料が輸入割当制であることから、独占的な供給体制に安住していた。そのため、工程改善などへの設備投資を怠ってきたが、最終的に公害処理への巨額な投資にツケが回り、資金繰りに窮して廃業に追い込まれてしまった。
商業の場合も、5年ごとに店舗改装を行わなければ顧客吸引力が大幅に低下するといわれており、よい店になるほど頻繁に改装を実施している。このように、企業が存続し成長していくためには設備投資が不可欠であり、これを怠ると、企業は疲弊し、長期的には存続する基盤を失う。
(3)技術革新の手段
設備投資により、企業は経営の革新、特に技術の革新を実現する。半導体は米国で開発されたものであるが、大量生産への移行過程において日本企業は積極的な設備投資を行い、飛躍的な技術革新を実現した。DRAM(随時書き込み。読み出しメモリー)においての日本の圧倒的優位は周知のところである。一方、米国半導体メーカーは、MPU(超小型演算処理装置)に投資を集中する明確な設備投資戦略を採用しており、この分野では日本勢を大きく引き離しつつある。
自動車業界の競争力も、積極的な設備投資戦略の結果であることはいうまでもないが、この他に自動車大手メーカーを取り囲む中小部品メーカーの設備投資も見逃すことができない。これまで大手メーカーは、発注量を増加させながら加工単価を切り下げてきた。この厳しい条件の下で、部品メーカーは設備投資を敢行して、企業体質改善を行い、生産技術の革新を追求せざるを得なかったのである。結果として、自動車メーカーは世界に冠たるものとなり、また数多くの部品メーカーは主として生産技術面での独自のノウハウを蓄積して自立していった。この成果は設備投資によってもたらされたものである。
店舗においても、その改装は流通の変革を反映して、改装のサイクルが短縮化している。
流通の変革とは、消費者ニーズの多様化、商品のライフ・サイクルの短縮化、流通チャネルの変化、新業態の開発などによって起こったものである。また、顧客の嗜好動向の変化をすばやく仕入れに反映する、いわゆる「売れ筋」の把握は、POSと呼ばれる情報機器類への設備投資なしには実現しない。町の書店が衰退し、一部の書籍販売がコンビニエンス・ストアなどに取って代わられている現象も、設備投資戦略と無関係ではない。
町の書店の大半は店舗改装、顧客情報分析などにはあまり関心がなかった。そこで大手取次店(卸)は書店の立地条件から届けるべき書籍をコンピュータ分析して、機械的に決定して配送し始めた。ますます町の書店は顧客動向に無関心となり、新刊書籍への勉強を怠り、結果として顧客を失い、コンビニエンス・ストアに取って代わられようとしている。
もちろん、国民的な活字離れなど他の要因の影響も見逃せないが、店舗として最低限の設備投資を怠った「つけ」は大きかった。
このように設備投資は企業の骨組みを形成するとともに、その経営を革新していく役割を担っているのである。「設備投資は企業の生命」といい切る企業経営者もいる。
∠ 設備投資の危険性
(1)認識しておくべき3つの危険性
前節で述べたように、設備投資は基本的に企業にとって戦略的色彩を帯びたものであり、単なる修繕的な更新投資は別にして、全体的な見地から企業の将来を展望しつつ決定するものである。
適切な設備投資がなければ企業の成長はあり得ないが、同時にその危険性も十分認識されなければならない。企業の業績が悪化する直接の契機は多くの場合、設備投資にある。その理由はつぎの通りである。
①財務安定性の悪化
その他の生産要素(労働力、原材料など)に比べ、一挙に1件当たりに支出される金額が大きい。また成長率が高い企業ほど設備投資が活発になり、その資金調達を借入金に依存することが多く、企業の資本構成を悪化させ、次第にその安定性を失うことになる。
特に設備投資効果が上がらず、設備借入金の返済源資が不十分な場合、資金繰りの逼迫を招く。
②弾力的経営の阻害
設備投資がいったん実行されると、企業の製品を簡単に変更することが困難になる。
また工場のレイアウトも長期的に固定され、弾力的な対応が不可能になる。特に、設備投資に伴って人員増が発生した場合は、設備が遊休すると、設備は廃棄できても人員はそのまま雇用せぎるを得ないので、その後の弾力的経営がきわめて難しくなる。場合によっては設備に引きずられ、いつまでも特定の製品を生産し続けることすらある。また、コンセプトが適切でない店舗投資を行った場合、現在の店舗をこわして新たに改装するしか方法はない。急激な環境変化や構造転換に対し柔軟な対応ができなくなる。
③固定費の上昇
設備投資により、減価償却費。人件費・金利などの固定費が大幅に上昇する。
これをカバーするためには、高い操業度を確保することが必要とされ、生産・販売両面において経営の総力が割かれる。会計上の収益確保のため、最悪の場合は在庫の積み増しに走る経営者も多く見られる。
(2)設備投資の失敗例
以下、いくつかの設備投資の失敗例を検討し、参考にしよう。
①構造転換への遅れ(Aメッキエ業)
A社は大口需要家に近いという立地メリットと、各種メッキをすべてこなせる幅広い技術力を生かして順調に業績を仲ばしてきた。
しかも、都心のビルの工場に、狭いながらもコンパクトかっ効率の高い設備を設置、同時に公害防止設備に万全の注意を払うなど、設備投資にも前向きであった。
この結果、メッキエ場としてほぼ完成した工場となり、業界でも中堅の企業に位置づけられていた。
ところが、ユーザーである電子部品メーカーが、急速な円高を契機に海外あるいは地方へ工場を分散し始めたこと、および親会社からの発注形態についても、下請け企業で対応可能なものはできる限り下請け企業に任せるようになり、従来の単一部品発注からユニット発注、完成品発注という形態にかわつてきた。
このため、メッキのみという単機能では受注が難しくなり受注量が激減した。
A社の場合は、過去の設備投資が、かえって機動的な構造変換を阻害してしまった。やや酷ながら、海外も展望した大きな経済の流れを少しでも考慮したならば、おそらくためらいを生じ、都心での思い切った単機能型投資に踏み切らなかったであろう。
②需要予測の不備(B機械加工業)
B社は大手機械メーカーの子会社として、機械加工を主な業務としている。主力の建設機械部晶以外への展開を図るため、数年前、親会社の勧めにしたがい、巨額の資金を投じて産業用エンジンの量産ラインを設置した。
しかし、需要予測の誤りもあって、現在に至るまで低稼働率に苦しんでいる。専用機のライン転用がきかないこと、工場内での移転も困難なことなどから、工場の合理化の阻害要因にもなっている。
B社が本来行うべき設備投資は、専用ラインではなく、汎用性を持った設備の選択であったと思われる。B社の場合は需要予測が不十分のまま、見切りで一挙に巨額な投資を行ったことが失敗の原因である。末端ユーザーまでも展望し、自社独自の判断で投資を検討したならば、ややコスト面では競争力は劣ろうとも、段階的投資で様子を見る案が採用されたのではなかろうか。
③製品戦略の不在(C精密機械工業)
C社は、多角化の一環としてOA機器への進出を実施した。当初は自社ブランドでの直販を行っていたが、すぐ行き詰まり、大手メーカーと提携してOEM(相手先のブランドによる生産)に切り替え、大規模な設備投資を行つた。ところが担当の機種が伸び悩み、1年もたたないうちに生産量が激減して、工場は5割稼働にも達していない。
C社の場合はOEM生産にもかかわらず、一挙に多額の投資を行うなど詰めの甘さが目立つ。しかも、OA機器のライフ・サイクルの短さは、業界を少しでも知る者にとっては周知の事実である。根本的には、何よりも製品戦略がなく、自社の技術的優位性について評価も行われていないなど、場当たり的に成長商品を追いかけた無分別さにすべての問題がある。
④体力以上の投資(Dディスカウント・ストア)
現金問屋から出発したD社は、着実に実績を伸ばして大手メーカーから商品を仕入れることができるようになり、ディスカウント・ストアヘ脱皮し、事業を拡大していった。低価格を販売戦略におき、さらに規模の拡大を図って販売店網を作り、急速に売上を伸ばした。
しかし、土地取得と店舗建設の資金は、すべて銀行借入に依存した。この土地建物への投資残は年商の約7~ 8倍とあまりにも巨額であった。その上、社長が日々資金繰りに忙殺されている間、経理の不正、退職者の続出など内部管理に問題が出てきた。結局、手持ちのテナントビルの売却もままならず、倒産に至った。この場合は、資金計画を含めた十分な投資計画の検討もせず、いたずらに業績の拡大を急いだのが原因である。
⑤無計画な事業拡大(Eビデオ販社)
書店で映像媒体の販売を行うことはすぐれた着想であり、先見性のある販売方法であった。これに加えて、E社は委託販売方式を採用した。売りきり返品なしの販売方式では、書店は数多くの商品を仕入れるリスクを避けるので、いきおい品揃えが十分でなく消費者の目に触れにくいからである。この方式が当たり、E社は業績を伸ばしてきた。しかし、委託販売方式のため多種のビデオ製作が必要になり、
製品に当たり外れが生じること、および多品種のため製作コストが増加することなどの問題が生じた。そこで製作コスト引き下げのために量産指向に走り、スタジオの建設あるいはビデオケースの自社製作工場の建設などの設備投資を行った。
これがE社の資金繰りを悪化させ、現金化に期間のかかる委託販売方式もE社の足を引っ張り、関連販社の倒産をきっかけにE社も倒産した。
なお、ビデオの大量販売に関連する事業に無計画に手を出したことも、資金繰り不足を加速した。例えば、スタジオ・レンタル、ビデオテープ生産下請け、雑誌出版など、どれひとつをとっても大きな事業であった。
⑥不適切な事業選択(F測定機器製造業)
金属性測定器等を生産していたF社は、家業にとどまる同業者が多い中で、熟練工を必要とする工程を機械化し、量産化設備投資を行い順調に業績を伸ばしてきた。
しかし、成長にも限界が見えることから新規事業へ進出を決定し、工場敷地も拡張の余地がないので、工場用地を探し、電子部品を生産していた工場建屋を取得した。そして、測定器製造工程にきわめて似ているという理由で、プリント基板製造に進出することにした。しかし、設備完成後すぐに不況入りしたため、ユーザーの開拓が困難で稼働率の向上が実現していない。
また製造工程で、電子部品製造と測定器製造では精度のレベルが全く異なることも次第に判明した。本業と製造工程がほぼ同様であるという理由で新規事業展開を選択し、かつ需要を確定せず、あいまいなコンセプトのまま手掛けたことが失敗の原因である。
以上、いくつかの失敗例から共通する要因を2つだけ取り出すと、まず、。投資計画の目的があいまいである。より具体的にいえば、企業の中期の経営計画の中で十分な裏付けがなされていないついで、
・計画の十分な詰め、特に採算面並びに資金面での検討がなされ′ていないということに尽きよう。
本書におけるこれ以降の記述は、結局のところ、この2点をどう投資計画の立案に折り込んでいくかということに焦点が絞られている。
3。設備投資計画立案の進め方
(1)計画立案上の留意点
設備投資計画を実際に立案する際の留意点を、まず新規事業の場合、ついで一般の中小企業における場合で考えてみよう。
<新製品開発もしくは新規事業の場合>
設備投資計画の対象が新規事業、もしくは新製品の場合、留意すべき点はつぎの通りである。
①社会に受け入れられるものであること
新規事業が社会に受け入れられる意味のあるものであれば、少々の困難でも社員一丸となって克服できるものである。宅配便が事業として成長し、定着したのは、鉄道の小荷物輸送の不便さに悲鳴をあげていた消費者の全面的な支援があったからにほかならない。
行政などからの支援がなくても、社会的意義が大きければ、いつか事業は軌道に乗るものである。紳士服のディスカウンターは製造ルートを大手に押さえられてきたが、不合理な値付けに対する消費者の不満を汲み上げ、業界の主力販売チャネルに成長した。
②自社の特色を生かすこと
消費者に待望されているものでも、自社の経営資源上の特色を生かしたものでなければ、単に競争相手によいアイデアを提供しただけで終わる。いわゆるシナジー効果を発揮しなければならない。製本業者が、職人的工程のつらさを機械化したいという社内の要望をきっかけとして、次々に技術的問題を克服して印刷機械メーカーとして成長していった。この例は自社の特色を生かしたものである。しかもこの企業においては、従来通り職人的な版下は今も存続して、高付加価値な部門になっている。
販売力。技術力。生産面のノウハウ等その企業特有の差別的優位性を利用することが大切である。
③新規事業のリスクを自社負担能力の範囲内にとどめること
社会的に意義があり、自社の得意分野で始めるにしても、新規事業にリスクはつきものである。どこに障害が横たわっているかもしれず、場合によっては撤退が必要になる可能性もある。
そのため、いつも自社の体力すなわちリスク負担能力を把握し、それを超えると判断される場合は無理をすべきではない。一時期ベンチャー企業の隆盛が続いたが、自社のリスク負担能力を超えた工場建設に走り、その結果、倒産が相次いだ。
なお、リスク負担能力とは、結局のところ投資にかかわる借入金を余裕をもって返済できる力といってよい。
④調査を徹底的に実施すること
調査は外部調査、内部環境調査が中心になる。現場でのナマの声を直接収集することが大切である。内部環境調査は自社の強み。弱みを十分把握して、いわゆる差別化戦略を打ち立てることである。
なお、新規事業への取り組み姿勢を、社会との連携も十分に考慮した上できわめて簡潔明瞭に示したものとして、セコムにおける新規事業の基本方針(憲法)を参考までに記載しておこう(出所『日経ビジネス』93年9月27日号)。
「実施すべき事業の憲法5ケ条」
第1条 セコムの提供する社会サービスシステムは、人々の安心の為のサービスシステムである。この基本から外れる事業は行ってはならない。実施する事業が目的に合致することであっても、派生的に社会に有害なものの発生が予測されるものは行ってはならない。
セコムの行う社会サービスシステムは、高度な技術に立脚した革新的最良のものでなければならない。
他のいかなる組織が実行するよりも、セコムが事業化し実施することが、最適であるとの判断が重要である。
セコムは、常に社会の変化を継続的に注視し、能動的に社会の変化に先駆けて、社会サービスシステムを準備し、実行する責任を有する。あきらめることなく果敢に挑戦し実現させるべきである。
自らの努力、苦労を減じる為、妥協的に他の組織と提携するようなことはしてはならない。
<計画作成上の留意点>
つぎに、主として中堅。中小企業が設備投資計画を作成する時の留意点を挙げる。
①投資コンセプトを明確にすること
中堅。中小企業が設備投資計画を立てる時に最も大切なことは、前述の通り設備投資の目的とするコンセプトをまず明確にすることである。この理由はつぎの通り。
・コンセプトが不明確なまま設備投資を行うと、往々にして各セクションから提出された設備投資計画をただ寄せ集めたものとなり、全体として目指す方向があいまいとなる
。また各投資案の選択を行う際に、各投資案の優先権を決定する基準がはっきりしないため、決定すべき部門が判断を放棄することが多く、結局は社長の恣意的な判断に委ねられることになってしまう
・優先度なり判断の基準が不明確であると、計画策定中に思いつきで計画の内容が変化していき、最終的には何のために投資するのか分からなくなってくる
よくある例だが、当初はごく絞った差別化商品を、市場開拓の先兵として投入する目的で設備投資計画を検討していたところ、どうせ投資をするなら別の製品も生産できるようにしておこう、営業隊のために事務所も作ろう、さて資金計画が大きくなりすぎた、それでは生産設備の一部を削ろうといった具合になり、決して手をつけてはいけない当初目的の設備内容が変更を迫られるようなことが起こる。設備投資の目的がしっかりしていないと、 トップの判断の揺れのままに計画が変形していくはめになってしまう。
②十分に時間をかけて投資案を作成すること
ついで大切なことは、どんなに時間的制約があろうと、設備投資計画を丁寧に作成することである。検討不十分なままの煮つめていない計画で出発すると、失敗する確率が非常に高くなる。設備投資計画を具体的に実施していく時、どんな計画でも予定通り進行することはまずあり得ないからである。
予定通り進まない場合、十分検討された計画であれば、変更への弾力的な対応が可能だが、検討不十分な場合は対応策がとれず、計画の遂行が不可能になるケースが多くなる。
十分検討されたということは、事前に問題点が確認されていることが多く、また社内的にも各段階において計画についての認識が行き渡っているということなので、それだけ計画がスムーズに遂行できることになる。
ある会社の例だが、設備投資計画を社長の指示で8回も練り直し、その過程であらゆる観点からの検討が加えられ最終案が成立した。最初は甘すぎる案が出され、こんなうまい話があるはずがないという一喝で却下された。第2回目は投資の回収が10年を超える案が出され、これも回収に長期間を要する投資は意味がないということで再度却下された。このようにして十二
分な検討を経て作成されれば、計画時点で成功は半ば約束されたといえる。
③ トップは結論を先にいわないこと
第3点として留意すべき点は、第2点とやや似ているが、社内の実力者は計画の検討段階において、決して結論を先にいってはならないということである。実力者が発言すると企業内では自由な討議が難しく、しばしば見られる風景だが、その意向に迎合する形で結論が導かれる。
また、あってはならないことであるが、計画案に反対する人が被告人扱いされることさえあり、誰も本当の問題点を指摘しないことになる。こうなると計画の失敗は必至である。特に計画の実施が前提となつている時に、 トップに反対して計画の中止をいうことはなかなか~Cきることてヽはない。
④全員が参画すること
第4点としては、設備投資計画の作成は全員参加の形をとることが大切である、ということだ。会社にかかわる重要な問題について、全社員を一定の方向へ結集させる必要がある。設備投資計画は実施の途中において必ず障害にぶつかるが、その時全員参加の形で決定されていないと、だから自分は反対だったとか、社長が始めた計画で私は関係ないとか、逃げ出す社員が出てくる。
ある運輸会社の例だが、相ついで冷凍倉庫の設備投資を社長が独断で進め、部下は何も知らされていない事態が続いた。そのため、受注活動はもちろん、資金調達にも事欠き、数々の障害が続き頓挫してしまった。
(2)計画立案の概要
設備投資計画はつぎの事項を内容として作成する。
①計画の目的
②事業または製品・製法
③立地の選定
④設備の種類・採用技術の選定
⑤工場計画の作成
⑥原材料の調達、外注の調達
⑦公害関連設備の検討
③生産計画の作成
⑨組織・要員計画の作成
⑩販売計画の作成
①投資採算の検討
⑫所要資金並びに調達計画の作成
⑬利益計画・資金計画の作成
以下、各項目を大まかに説明する。
①計画の目的
設備計画について、その計画を立案するに至ったいきさつは何か、その目的は何か、実施時期を現時点におくのはなぜかについて明確にする。
設備計画の狙い。目的としては、つぎのように類型化できる。
・量的拡大、主としてスケール・メリットを追求するもの
。原単位、歩留の向上等、主として変動費ダウンを狙うもの
・新製品への進出、多角化、一貫化、原料転換等、戦略的性格を伴うもの
。公害対策、福利厚生等、直接的な経済効果を見込めないもの
この類型化もそれなりに大切であるが、より重要なのは、前述のように中長期経営計画の中での位置づけをすることである。企業が設備投資計画を立てる時に、最も大切なことは設備投資の目的とするコンセプトを明確にすることである。コンセプトとは、中長期計画を設備投資に具体化させる基本方針である。
したがって、設備投資の目的を明らかにすることは、その設備投資が中長期計画の中で作成されたことを確認する作業ということができる。また、設備投資を完了したもののうまくいかない場合、てこ入れを行うのか、撤退するのか等、再建計画の基準もコンセプトの明確化により可能となる。
②事業または製品
計画対象の事業または製品が新規のものであれば、その特質。用途(需要市場)などについてその概要を明らかにする。既存の製品であれば、競合製品と比べ、どのような特色を出そうとしているのかを検討する。
③立地条件
新設工場については、税金面。金融面などで特別な恩恵はあるか、公共計画(国土・都市。道路)との関係はどうか、公害規制がどうなっているか、補償問題の起こるおそれはないか、などについても調べる。
最近では、立地の選択について国内のみならず、海外も考慮する必要があるので、最も難しい問題の1つとなつてきている。特に、海外の場合は十分な調査ができず、正式に確定した段階で土地に問題があることが判明する場合も多くある。一方、商業の場合は、製造業以上に立地が大切である。特に小売業の場合は、立地産業といわれるほどである。
最近は都市における交通状況、産業構造、人口構成等の変化により、都市構造が急速に変化することもあり、従来は良好な立地条件であったところが、むしろ問題がある場所に変わることもよくある。これは商圏移動といわれており、例えば、ロードサイドにショッピング・センターが建設されたことにより、駅前の商店街がさびれるなどの例はその典型といえるだろう。
商業立地についてはその構成要素別、すなわち地形などの自然条件、商圏。交通状況。公共施設などの集客施設、人口。商業施設の集積状況などをチェックする必要がある。商圏とは、その小売店あるいは商店街を訪れる顧客の地域的範囲のことだが、店舗新設の場合には、その店舗の商圏の大きさおよび質が問題になってくる。
ついで交通は立地上きわめて大切な要素である。例えば、従来は専門店の立地は商店街あるいはショッピング・センターヘのテナント出店が中心であったが、このところ、郊外のロードサイドに立地するケースが増加している。これは、ショッピング・センターヘテナント出店することにより全国展開してきた専門店チェーンも、テナント出店のコストが高くなってきたこと、コンセプトも明確でなく特色のないショッピング・センターの建設が増えてきたことなどから新しい立地を求めた結果、ロードサイドに目を付けたものである。
ロードサイドとは、例えば地方の国道沿いなど広い道路沿いで500坪近い土地を取得できる場所をいう。特色としては、十分な駐車場があり車で来店できること、および昼夜営業で深夜でも利用できることなどである。外食、書籍、靴、紳士服、家具、おもちゃなど、従来考えられなかったような業種が多くなってきている。今後ともしばらくは郊外のロードサイド型店舗、あるいはショッピング・センターの開発が一層進展すると見込まれており、このような立地創造のケースは、商業の設備投資の場合きわめて大きな留意点となる。
④設備
設備の規模。内容・質的水準が適当かどうか検討する。新設設備については、国内・外の同業者の既存または計画設備に比較して優位性が認められるか、早急に陳腐化のおそれはないかなどについて確かめる。
なお設備増設の場合は、既存設備の能力その他を考えあわせて、その適否を調べる。
また、技術の進歩の速さから、いったん設備を入れたあとで設備投資が遊休化することも考えられる。例えば、ギアを生産する場合、従来は鋼材を旋盤などで機械加工していたが、冷間鍛造で、一度にプレスでギアを打ち抜けるようになった。この加工方法に変えると、今までの機械は不要となる、といったケースである。また、ある一定のレベルの性能をクリアすれば十分な設備に対して、過剰な性能を求める傾向が現場には多い。
⑤生産技術
新規採用技術については、自社の技術水準でうまくこなすことができるか、またその技術は新しい技術の出現によって早急に陳腐化するおそれはないかなどについて確かめる。特に技術者は、新技術の採用が生きがいでもあり、これらはトップがよく見て、技術者のプライドを守りつつ適正な判断を行う必要がある。
⑥人的要素
新設設備の経営責任者には、その重要度にふさわしい人物を配置する。生産関係技術者および工員の質、量、その賃金ベースなどの検討をする。
また、要員計画についても検討する。要員計画とは、事業を遂行するために、労働力を質と量の両面にわたり割り当てていくことである。要員計画については、一般に経験上ある程度の基礎数字を各社とも保有しているが、労働分配率や人件費総額を目安にする方法もある。
⑦原材料事情および下請け関係
原材料・燃料事情について、質・量・価格はどうか、下請け工場。部品工場の整備を検討する。外注を利用する場合、内製との比較を行う。
外注を利用する目的としては、コスト(賃金の低さを利用)、労務(作業環境の悪い仕事に対する労務上の対策)、生産能力(自社の生産能力の不足を補う)、資金(自社の投資負担回避)、技術(自工場の専門外の技術を補うため)などが挙げられる。
一般に、自社内でどうしても内製しなければならないものとしては、自社独特の加工技術を有するもの、技術・営業面において秘密保持の必要があるもの、操業度維持のため生産量の確保が必要な場合などである。
自動車メーカーを例にとると、エンジンはほとんど内製している。また、あるケーキ屋の例だが、自家製ケーキを売りものにしているため、新規出店に際しても製造部門を併設することにした。このため、設備投資資金も職人の新規採用も必要となり、その負担は大きなものだったが、自社の競争力を維持するためやむを得ず内製を行った。場合によっては、内製維持のため採算を犠牲にすることさえある。
一方、外注の形態としては、単工程外注、部品のユニット外注、完全外注の3つがあり、最近は単工程外注は少なくなってきている。単工程外注とは個別工程の加工で、材料の切断、メッキ、塗装、熱処理など、最も単純な形態である。部品の一貫外注(ユニット外注)とは、部品工程の大部分を外注する場合、全加工を1社にまとめて外注する方式である。その外注先がまとめ役となり、2次下請けへ各工程を出す。完全外注とは、部品から最終製品に至るまでまとめ、さらに包装、梱包、保管まで行うものである。自社設計によるOEM(相手先のブランドによる生産)の場合もこれに含まれる。
③販売計画
製品はどのような販売経路で販売するか、販売先・販売数量・価格。販売条件はどう予定しているか、市場占拠率はどの程度見込むかなどで、販売計画は本来、設備投資計画を検討する時にまっ先になされるべきものである。
販売計画を立てるため、まず販売予測を行うが、その準備として、外部要因と内部要因の両面から検討を行う。外部要因とは景気動向、人口動向、所得水準、技術革新、消費動向、競合メーカーの動向など、企業を取り巻く経済。社会環境のことである。内部要因とは自社の販売員、販売経路、顧客の良否、商品の品質、価格競争力、販売促進のレベル、生産能力など、自社の持つ総合的販売力である。これらを総合的に評価して販売予測を行うことになる。
一般的に使用される予測方法を挙げると、外部情報としては市場調査(質問法、観察法、実験法)、一般経済調査(新聞、雑誌、政府。金融機関・業界などの資料)、顧客からの情報、競合先の動向調査などがある。一方、内部情報としては、販売実績、顧客カード、営業員からのヒアリング、苦情処理、生産能力などがある。これらを総合して販売予測を立てていく。
業界の需要予測、シェアロ標などは、一般にどの企業でも十分な検討がなされるのが普通である。しかし、意外にみのがしやすいのが同業他社、競合企業への対応である。
当然のことだが、需要の増加がある場合、単独企業でそのすべてを吸収できるわけではなく、競合メーカーも設備の能力増を行ったり、安値攻勢をかけてきたりする。この点を十分に検討した販売予測を作成しなければ、収支計画にも大きな影響を与える。特に同業他社に追随して新規市場へ進出した途端に、先発企業がそれを待っていたかのように、格段に品質を向上させた新商品を発表するなどの商品戦略をとることがあるので、常に相手との競合を意識する必要がある。
③建設工事計画
工事が計画どおり完成するようスケジューリングを行う。
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