日常生活でそうそう凶悪な犯罪者に遭遇する事はありませんが、そのダウングレード版である迷惑人間は身近な場所にいます。犯罪者も迷惑人間も同じカテゴリーに属しているので、犯罪者を知ることで迷惑な人間のことも理解できます。人を見るサンプルとしては犯罪者の方が明確で、わかりやすく異常な点を見ることができます。彼らを観察する時、嫌悪感を抱かずに淡々と情報を拾っていってください。目をそむけたくなる犯罪者を見ることは、感情と切り離して人格を見抜く練習になります。裁判が終了した刑事事件の記録は検察庁で安価に閲覧する事ができますが、ノンフィクションの書籍でも確認することができます。書籍であれば収監された後の犯人との対話も掲載されている、小林一光著『連続殺人犯』(文藝春秋社)がオススメです。・犯罪を犯す人格 25歳の男が秋葉原で 7人を殺害する通り魔事件が起こった時、犯人が派遣工であった事から、社会構造のせいだとする意見がでました。しかし実際は親からの厳しすぎる躾けによって、人間の型枠がないまま大人になった事が原因でした。こういった事件が起こった際、解説に政治思想を混ぜられる事がありますが、それらのノイズは全て無視します。今までの人を見る方法と同じく、淡々と情報を読み解いていきます。犯人は質問の返事が遅いと母親にひっぱたかれたり、九九を間違えたら風呂に沈められるなどの『スパルタ教育』を受けています。食べるのが遅かった時は、新聞チラシの上に食事をばらまかれ、それを食べさせられました。まるで囚人のような扱いです。母親の経歴を見ると県内トップクラスの高校に進学したものの、大学受験に失敗して就職しています。これは第四章『経歴によって人を見抜く』で述べた、流れに矛盾が見られるポイントです。ここを深掘りして、一度の受験で大学を諦めた(諦めさせられた)理由などを調べると、母親の境遇が浮かび上がってくると思われます。母親が息子を自分と同じ高校に入れるため、追い込みをかけたことが事件の遠因と思われるので、そこまで遡らないと犯人を理解できません。これは親を責めるためではなく、同じ事件を起こさせないようにするため、原因を特定する作業です。第六章『年代の人間学』で述べた通り、母親のサポートがないと子供は発達段階の課題をクリアできず、人間の核がない不安定な大人になります。実際に犯人は職場などで他人の行動に悪意ばかり感じ取り、不満を蓄積させていきました。彼ら犯罪者が社会で毒気を帯びていくさまは、生まれた時は無毒な魚のフグが、エサの中にある微毒を蓄積していき、やがては猛毒を持つようになるのに似ています。
彼は秋葉原で事件を起こす少し前、派遣先の工場で自分の作業着が隠されたと思い込み、奇声を発しながらその場をメチャクチャにして職場を飛び出しています。幼児のように奇声を発するのは煽り運転やクレーマーなどにも見られる反応で、幼児期の課題をクリアしていない事が伺われます。リアルな人間関係が上手くいかない彼は、ネットの掲示板に依存していましたが、そこでも関係が上手くいかずに不満を抱いています。彼は自動車系の短大を卒業した後、就いた仕事を無断欠勤で辞めたりを繰り返す人間でした。彼は派遣工だから犯罪を犯したのではなく、不安定な人格だから職も不安定だったのです。従来の犯罪解説は因果関係が逆さまな事が多く、末節だけ見ているので原因に辿り着きません。人を見抜く方法では、川の源流をたどるように犯罪者の経歴を読み解き、その人格に犯罪の原因を探します。・人を見抜く方法で犯罪者を見る他の犯罪者に対しても普通の人と同じく、点の情報をつないで人格要素を見ていきます。事件が起こると犯人の同級生が学生時代の印象を語ったりしますが、それを聞く時に注意すべき点があります。同級生が語る犯人の印象は、同級生の人格で感じ取ったものなので、実像とは異なる可能性があります。例えば同級生が犯人の事を『優しい』と語っても、それだけで NP(優しい)が高いと決めつけず、他の情報と照らし合わせて犯人の人格のパズルを組み立ててください。同級生が語る内容からは、犯人の学生時代の印象よりも些細なエピソードに注目してください。例えばどんな部活に入っていたのかや変わった行動、家庭環境が垣間見えるようなエピソードなどです。・犯罪者たちを冷静に見る犯罪者を自分と同じ人間の種族だと思うと、残忍な犯行に拒否感が生まれます。彼らのことを『奪う』生存戦略の種だと思う事で、冷静に観察できるようになります。飢餓の時代が長かった人類には、奪う事で生き残った種の遺伝子も含まれています。それが色濃く反映し、現代に奪う種として生まれたのが犯罪者です。彼らはハイエナが子供のシマウマを狩るように、当たり前の行動として弱い者を狩ります。自然の摂理なので犯人を憎まず、かといって境遇を憐れんだりもしません。理不尽な被害に遭う一般人が、それでも犯罪者の更生を願うべきなのは、刑務所だと一人当たり数百万円の税金が必要だからです。文明社会で底辺にいる事が多い犯罪者ですが、ひとたび社会が荒廃したら勝ち残るのは、彼ら奪う側の者かもしれません。この章では犯罪に心を揺さぶられず、思考を働かせて犯人たちの人格を読み取ってください。 7- 1アニメ会社放火殺人事件
41歳の無職の男が京都のアニメ制作会社に侵入し、ガソリンに火をつけて 36人の命を奪いました。犯人の青葉真司は、自身の書いた小説がアニメ制作会社に盗用されたと思い込んで、強い恨みを抱いていました。人格は遺伝と育った環境で決まりますが、青葉の経歴を見ると子供の精神を破壊する実験をしているかと思うほど、救いのないものでした。そんな犯人の経歴をたどりながら、人格を見ていきます。・誕生青葉が生まれる前、父親は青葉の母親とは別の女性と家庭を築いていました。父親は本業の農家の仕事はあまりせず、職を転々としていました。経済的に厳しいはずですが子供を 6人も作っていて、計画性の無さを感じさせます。父親の人格の要素としては F C(感情的・自己中心的)が高くて、 A(計画性・論理性)が低いことを感じさせます。この父親は顔が良くて背も高いためモテたそうで、送迎バスの運転などをしていた頃に幼稚園の教諭と不倫関係になり、離婚をして家を出てしまいます。この行動は C P(父性的な責任感)や NP(優しさ)の低さを感じさせます。昔は政財界で成功した人物が、妾など複数の女性との間に子供を作っていましたが、これは勝ち残ったボス猿が多くの子を残すように、 CP(リーダー)の要素からくる行動です。そういう男性は複数の家庭を支える経済力を持っているのが前提ですが、青葉の父親は C P(責任感)が低くてあまり仕事をしていません。さらに父親は妻子を置いて家を出て行った後、勝手に田畑を売ってしまったため、残された元妻と子供は貧窮しました。父親の F C(自分勝手)が突出して高いことが伺われます。こういう外見だけの軽薄な男とくっついてしまう女性は一定数存在しますが、大抵は男の生活力の無さに泣かされるハメになります。四十代半ばの父親は不倫関係だった女性と再婚し、その二人の間に生まれたのが青葉です。・小学校時代青葉は茨城の小学校に入学しましたが、彼が小三の時に母親が家を出ていく形で両親が離婚しています。父子家庭となった後も父親は複数の女性と交際してトラブルを起こしたりと、初婚の頃から変わらない F C(社交的・感情的)の高さを見せています。あまり働かない父親で家計は苦しかったようで、茨城から埼玉に転居しています。小学校時代の青葉は万引きを日常的に行っていて、友人に一緒にやらないかと悪びれもせずに声をかけています。このエピソードは F C(身勝手)が高いととる事もできますが、同時に C P(規律・正義感)が低いこともあらわします。子供時代は人格が大きく揺れ動く頃で、なおかつ子供なので C P(厳格な父性)はあまり発達していないものですが、万引きを普通にしていた事については一般的でなく、留意すべき点です。・中学時代
小学生から柔道スクールに通っていた青葉は、中学で兄と同じ柔道部に入りました。スポーツ経験は通常 F C(行動力)をプラスするものですが、柔道のように礼儀を重んじたりするものは C P(規律)も含まれます。しかし青葉は柔道部で威張ったり反則も辞さなかったりで、他の生徒はあまり組みたがらなかったそうなので C Pを評価できません。年齢的に F C(活発・身勝手)が優位なのは仕方ないですが、彼は同年代と比べてもルールを守らなかったり、相手の痛みへの NP(共感力)が足りません。家庭では父親の家賃滞納で再び転居せざるをえなくなり、青葉は県内の別の中学に転校しています。青葉の経歴には中学の中途半端な時期に、同県内で転居をした記録が残っています。この転居は第四章の『経歴によって人を見抜く』で説明した通り、入学と卒業で中学校が違うという違和感としてピックアップする項目です。その違和感の原因を探ることで、本人に降りかかったストレスを知ることができます。現に青葉の転居も親が転勤族なわけではなく、マイホームの購入による転居でもなく、家賃滞納が原因でした。理不尽な理由で転校を経験したからか、青葉は転校先では大きく雰囲気が変わっています。転校前の学校では威張ったり、柔道で反則的な組み方をする側でした。それが転校をすると、逆にイジメを受ける側になってしまいました。家庭生活が壊れる連続で学校生活も上手くいかないなら、青葉にとって世界はオアシスのない砂漠のように感じたでしょう。青葉は中学校に行かなくなり、引きこもるようになりました。・高校時代不登校のまま中学を卒業した青葉は、アルバイトをしながら夜間高校に通っています。生徒の境遇も年齢もバラバラの夜間高校は、同年代の中にいると浮きやすい青葉には向いていました。教室では一番前の席で授業を受け、バイトでは無遅刻・無欠席でまじめな勤務態度でした。この点に CP(向上心)の芽生えか、 A C(従属的)の高さの可能性を見ます。彼は高校でもバイト先でも我を出すような事がなく、意志力を感じさせないため、 CP(頑固・意志)より A C(従順)の可能性が高いものとします。また、青葉は鉄道写真を撮るのが好きでした。自閉スペクトラム(アスペルガー)の人は、鉄道を好む傾向があります。彼らはレールが平行に敷かれたさまや、その上を大きな鉄道車両が時間通りに走ったり、窓がキッチリと並んでいる姿に惹かれます。彼らが似たようなアングルの鉄道写真ばかり撮るのは、正解の構図にピッタリと写真を納める作業にこだわりがあるからです。皆さんもホテルのベッドシーツがシワひとつなく敷かれているのを見ると、気持ちがよくなると思いますが、撮り鉄と呼ばれる人の快感もそれと同じです。ただ自閉スペクトラム(アスペルガー)の場合はピッタリ合わせることへの執着が強いため、構図の邪魔になる木を切ったり、駅員や他の撮り鉄と騒動を起こしてしまいます。話を青葉に戻します。
彼にとって不確かな事が多い世界の中で、鉄道だけは確かな存在だったのでしょう。必ずしも鉄道好き =自閉スペクトラムというわけではないですが、小学生時代の万引きや中学の柔道部での他害行為も合わせ、青葉にその可能性があるとしてピックアップします。※誤解がないように注釈を加えると、アスペルガーは鉄道以外にも数学や天文等にも興味を示し、強い好奇心を持っているのでスペシャリストとなりうる才能でもあります。テスラのイーロン・マスク氏は、自身がアスペルガー症候群だという事を公表しています。青葉の高校生活で意外なのはクラスのヤンキーに憧れを抱いていた事で、これは F C(自由な子供性)か、 A C(場に合わせる子供)の高さの可能性があります。しかし彼自身は暴走行為や奇抜な恰好などをしていないため、 FCは限定的な高さと推察します。この大して高くない FCが青葉の人格の中で目についたのは、他の要素が A C(従順)以外は全く目立たないからです。転校前の中学時代に悪目立ちとはいえ印象的だった FCが、この頃には影を潜めてしまっています。青葉がヤンキーに憧れたのは畏怖の念が転じてのことか、それともヤンキーの非社会性に自分と通じる何かを感じたのかもしれません。 CP(リーダーシップ)・ NP(優しさ)・ A(論理)といった要素は、青葉のエピソードからは見えてきません。要素が全般的に低いと植物的な印象を他人に与え、個性が見えなくて影が薄くなります。高校やバイト先で『まじめだけど愛想があまりない』という無機質な印象を残したのも、彼の要素が全般的に低い可能性を裏付けています。小学校の同級生や、中学でも柔道部員以外は青葉の事が印象に残っていない生徒が多く、これも青葉の要素が全般的に低い可能性を物語っています。・卒業後青葉が就活をしたか不明ですが、卒業すると人材派遣・新聞配達・コンビニなどのバイトを転々とします。この不安定な職歴は CPがまだ育っていない事を意味しますが、人を見抜く方法では 26歳 ± 3歳までは成人前と扱うため、進路が定まらない事は大目に見ます。特に青葉は小学校では母親が出ていき、中学では家賃滞納で引っ越して転校など、ことごとく足元を壊されているので向上心が持ちにくい環境でした。そんな中で彼が 21歳の時に、父親が生活苦から自殺をしました。あまり働かずに女性関係が激しく、運転手の仕事をしては事故を起こす父親は、もしかしたら何らかの特性を抱えていたのかもしれません。・人生の足踏みが続く青葉の 20代の職歴には、コンビニのバイトが数か所入っています。コンビニは客層が様々で、予期せぬ要求をされる事があるので青葉の人格には不向きなバイトです。それなのにコンビニのバイトを店を変え何度も繰り返している事から、青葉の迷走が伺えます。彼は身の振り方を考えられる A(計画性・客観性)がなく、周りにアドバイスできる人もいないため、正解に辿り着けないのは当然の結果です。犯罪者となる者の周辺には道を示せる人がいないことが多く、これは青葉にも当てはまります。彼が似たようなバイトを転々とすることからは、 CP(向上心)と A(計画性)が低い可能性をとります。
CPの低い人の職歴が方向性の定まらないものになるのに対し、高い人の職歴は一貫性があり、右肩上がり(地位の向上)の線になりやすいです。青葉は人材派遣にも登録していたようですが、家賃を滞納するほど金銭に困っていたため、父親同様に休みの多い働き方であった事が推察されます。彼はギャンブルで借金をする F C(活発)的な金欠ではなく、働きに出なくなった A C(消極)的な金欠というところに人格が出ています。高校までの彼には F C(行動的)で多少の挑戦が見られましたが、数々の失敗と加齢で FCが後退したことが想像されます。青葉の失敗の連続は、親と共に正しい幼少期の段階を経ていない事が大きいです。家庭で人間関係の基礎を習得し、学校の友人関係の中で自分という存在を確立していく過程が、青葉にはまるでありません。周りが正しく成長して大人用自転車に乗る中、彼は一人だけ補助輪が付いた子供用自転車のままで、社会に出されたようなものです。普通の社会人が人生を前に進めている中、青葉は必死にこいでも追いつけずに劣等感を募らせていったことでしょう。・最初の事件大人になってからの青葉の最初の犯罪は、バイトを辞めて生活保護を受給しようとするも断られ、貧窮して食料品を盗んでいたことですが、これは捕まっていません。最初に逮捕されたのは 28歳の時に起こした下着泥棒と、女性への暴行です。青葉は下着泥棒を何度かしている内にエスカレートして、アパートのベランダから女性宅へ侵入して口をふさぎました。強姦(不同意性交)の有無は不明確ですが、この時は執行猶予判決に留まっています。子供の頃からの万引きといい、性欲の赴くままの行動といい、青葉の脳には欲望に対するブレーキがないかのようです。こういった抑制機能に難がある脳は、少年の頃から生涯に渡って犯罪を繰り返す生来(生まれつき)犯罪者に多く見られます。彼らは貧しいから犯罪者になるのではなく、現代社会に適応できない脳だから貧しいのです。ちなみに下着泥棒という犯罪ですが、捕まると家宅捜索でおびただしい量の下着が発見されることが多いです。これは犯人が下着を自慰に使うのが一番の目的なのではなく、盗むことで脳にドーパミンという快楽物質が出て、盗むこと自体が快感になって止められなくなるためです。家賃を滞納していた上にアパートに家宅捜索が入ったため、青葉は住居を転々とした父親と同じく、追われるように引っ越しました。真面目にバイトをしていた十代の頃と、生活苦からの万引き ~下着泥棒・暴行の点をつなげると、彼の人生が右肩下がりになっている事が見て取れます。幼少期の発達段階が不十分なまま社会に出た彼は、大人として扱われても出来ないことが多くあります。その惨めさから、心にオリ(ドス黒い沈殿物)が溜まっていく日々であった事が想像されます。オリは心の中にヘドロのように蓄積されていき、 28歳で限界の量に達して下着泥棒と暴行という形で表に出たのでしょう。本人も犯行動機に関して金欠でヤケになったからと言っています。
貧した時に他害行為に及ぶ者もいれば、発奮して実力以上の力を発揮する者もいます。失敗続きの彼にはもう、発奮するような内燃機関は無かったのでしょう。 28歳という年齢は、人を見抜く方法では成人となる 26歳 ± 3歳に当てはまります。ホルモンが不安定な頃の若気の至りではすまない、しっかりと大人になってからの犯罪は人を見る上で重大事項として扱います。・二つ目の事件下着泥棒と暴行事件を起こした後、青葉は子供の頃に住んでいた茨城県に戻りました。職業安定所で仕事を探しながら住める、雇用促進住宅という安価な住宅に住んでいる時、徐々に他害的な行動が増えました。青葉の部屋から大音量の音楽や、壁を殴っているような音がするようになりました。これまで青葉の人格の要素は、他が低いために相対的に A C(場に合わせる子供)を優位としてきました。この A C(おとなしい)の特徴として、忍耐の限界を超えるとひねくれて反抗的になる特徴があります。彼の半生は我慢を強いられる連続で、一度目の犯罪(下着泥棒・暴行)の時には限界を超えていたことが伺われます。そんな生活の果てに 34歳の青葉は包丁を持ってコンビニに押し入り、店員から金を奪っています。しかしカンシャクを起こしたような行動力は一瞬で醒め、逃げきれないと思って自首をしており、彼の職歴と同じく優柔不断な A C(臆病)が伺えます。流れで見ると強盗の計画はずさんで A(計画性)が低く、逃げ回るような F C(行動力)も低く、犯行後に A C(臆病)の要素により自首をしました。強盗という行動に FCを見るかもしれませんが、彼はもともとコンビニ店員の職歴が多く、自分のフィールド内で犯罪をしたに過ぎません。 FCが高ければより儲かる、別のフィールドに進出しているはずです。この事からも彼の要素は全般的に低くて、 A C(人の顔色をうかがう)が他より相対的に少し高いため、中途半端な犯行につながった事がわかります。しかしちゃんと機能するくらい A Cが高ければ、もう少し空気が読める人間になっているはずなので、 A Cもやはり限定的な高さでしょう。逮捕後に警察が部屋を確認すると、彼の内面世界のあらわれである室内は荒れ果てた状態でした。この二度目の犯罪の時に彼は 34歳でしたが、人を見抜く方法では 30代半ばには人格の要素が固まるものとしています。第六章『年代の人間学』で述べた通り、ここから人格的に大きく成長する可能性は低いです。特に独身で子供はおろか、恋人さえいない青葉が変わる要因は何もありません。普通の人は 26歳 ~ 30代半ばで人生の土台を作りますが、青葉はむしろ高校卒業時より後退しています。・強盗の動機青葉はコンビニ強盗の動機について
「仕事で理不尽な扱いを受け、社会で暮らしていくことに嫌気が差した」と言っています。ですがこれは仕事のせいだけではなく、彼自身の受け止め方の歪みが大きいです。物事には良い面と悪い面がありますが、彼には良い面を見る認知能力がなくて、自分には悪い事ばかり起こっているように感じます。チャンスが目の前に来ても気が付かないため、人生が好転せずに嫌気が差します。仕事選びでも対人スキルが低い彼には向かない、コンビニのバイトを何度もやっています。困難な状況に追い込んでいるのは自分自身なのですが、それを認めてしまうと自我が壊れてしまうため、彼のような人間は周囲の人が悪いと考えがちです。物事の良い面が見えないので、上手くいっている人たちは単に運がいいだけか、何かズルい事をやっているのではないかと邪推します。だから社会に恨みを抱きやすいのです。・経済的な理由で強盗をしたわけではない犯罪が起こると、犯人の直近の状況ばかりクローズアップされます。青葉のコンビニ強盗であれば犯行時、職が定まらずに雇用促進住宅に住んでいたことから、貧困が原因だと思われがちです。しかし貧困は最終結果に過ぎず、そこに至る過程に犯罪の原因があります。幼少期から不快な出来事に晒され続けた青葉の脳は、不快なことにのみ反応し、かつ適当に発散する術を持たずに大人になってしまったのが強盗の原因です。もし彼の F C(わがまま・行動的)が高ければ、チンピラのように店で因縁をつけたり交通トラブルを起こしたり、適度にうっぷんを晴らしていたでしょう。チンピラは狂犬病にかかった野良犬のように、いたらやっかいな存在です。ですがチンピラは早めに病気になるか、加齢で体力が落ちて枯れ木のようになり、脅威の度合いが下がります。それに対して青葉は時間が経つほど不満のエネルギーが蓄積されていき、いつ大爆発するかわからない危険なタイプです。その爆発は下着泥棒・暴行・コンビニ強盗と、徐々にエスカレートしていっているのがわかります。・刑務所での青葉強盗で捕まった青葉は刑務所に入ります。青葉の人格であれば他人からストレスを感じやすいため、他の囚人と生活する一般の房は苦痛だったと思われます。そのストレスのためか青葉は刑務所内でトラブルを起こし、懲罰房という部屋に入れられますが、ここでもさらに暴れています。懲罰房は入浴や読書が制限されたり、正座で視線も一点しか見てはいけないなどの厳しいルールがあり、房で暴れると刑が加算される事もあります。幼いころから理不尽の連続だった彼は、刑務所に入る頃には認知能力の歪みが顕著に見られ、多くの事が理不尽に感じられたはずです。その怒りが懲罰房に入れられた時、箱罠にとじ込められた野生動物のように、暴れて活路を見出そうとする行動につながったと思われます。
ただ、この刑務所の中で青葉は小説を書くことに没頭するようになります。現実の世界を不安の中で過ごした彼は、架空の世界に居場所を見つけました。・出所後の青葉出所後の青葉は保護観察施設で過ごした後、生活保護を受けながらアパートで暮らし始めました。一部報道では生活保護を断られたことが放火事件のトリガーのように報じられていますが、断られたのは下着泥棒の頃のことです。出所はしたものの立ち直ったとは言い難く、 37歳の頃には精神障害と診断されていて、近隣トラブルは以前よりエスカレートしています。刑務所生活は彼に良い変化をもたらさず、中学時代の引きこもり期間と同じようなものであったと思われます。出所後の生活で彼は騒音を出すだけでなく、苦情を言いに来た隣家の男性の胸倉をつかんで恫喝するなど、攻撃性が増しています。接する人に恨みを抱く青葉の人格からして、このアパートの隣人が放火の被害者になってもおかしくありませんでした。一般人が被害の確率を減らすには、青葉のような人間が払えない賃料の家に住むしかありません。青葉の高校卒業後の経歴を見返すと、このようになります。バイトを転々 ⇒下着泥棒 ⇒コンビニ強盗 ⇒服役この点と点を結ぶと、社会人になってからずっと右肩下がりの人生です。そんな中でも青葉は小説に一縷(いちる)の望みを託して書き続け、アニメ制作会社が募集していたコンテストに作品を送っています。・アニメに傾倒した理由日本のアニメは多くの人が親しむコンテンツですが、青葉にとってはそれ以上の意味がありました。彼にとってアニメの世界は現実と違って誰にも否定されず、自分が人並に生きられる世界です。その世界の主人公になる手段が、小説で賞を取ってアニメの原作に採用されることでした。同時に小説で稼ぐことが出来れば生活保護に頼らず、対人ストレスを抱えやすい性質でバイトをする人生からも抜け出すことができます。賞を取りさえすれば人生を大逆転できると、夢がふくらみます。しかしこういった重たい思いは、転じて怨念となりやすいものです。・小説をパクられたと思い込むコンテストで青葉の小説は、何の賞も受賞できませんでした。彼には地獄から抜け出す蜘蛛の糸が、自分の目の前で断ち切られたような絶望感だったでしょう。偏執的なストーカーというのは相手をおもんばかる能力が低く、相手のことを勝手に自分の一部のように思っています。
だから拒絶をされると半身をもがれたような、強い被害者意識に見舞われます。青葉にもストーカーに似た精神構造が見られます。普通の人であれば落選で自分の未熟さを反省材料にするところですが、青葉は人生で上手くいかないことが多すぎて、これ以上の自責をすると自我が壊れてしまうため、周囲に失敗の原因を求めます。彼はコンテストを主催したアニメ制作会社のアニメを観て、複数の作品で自分の小説がパクられていると思い込んで強い憤りを覚えます。彼のような人間は好意を抱いてアニメ制作会社に小説を送ったかと思えば、それ以上の熱量で強い恨みを抱きます。これまでの青葉の社会人生活は選択ミスの連続ですが、それでも彼は自分の判断力を疑わずにパクられたと断定しています。青葉はネットの掲示板に、アニメ制作会社に裏切られたことなどを書き込んでいます。その中で印象的なのがアニメ制作会社に対して『相容れない』と書いた事です。相容れないとは互いに許せないとか両立しないという意味ですが、まるでアニメ制作会社が青葉を必要としているかのような書き方です。こういう自分を客観視できない点にも、青葉の A(客観性・論理性)の低さと認知の歪みを感じます。彼が SNSを利用していたかは不明ですが、今までの行動から推察すると、まったく知らない人に距離感のおかしな絡み方をして嫌われるタイプです。コミュニケーション能力に難のある人は発信が苦手なだけでなく、相手からのメッセージも正しく読み取ることができません。だから対話で相手の話をくみ取るようなコミュニケーションはできず、一人芝居のように勝手に頭の中でストーリーを進めてしまいます。自分の小説がパクられたというのは思い込みなどという生易しいものではなく、彼の中では本当にあった出来事になっています。傷つけられた心の痛みさえ感じて、その幻肢痛(失って存在しないはずの手足が痛む)によって相手に復讐の炎を燃やします。彼は現実ではなく自分の頭の中の世界線を生きているので、普通の人々は彼がどれほど恨みを抱いているのか想像もつきません。彼の小説は原稿規定が守られていなかったために、内容の審査の前に弾かれていました。それに彼がパクられたと主張した場面はアニメの主要な部分ではなく、スーパーで肉を買う何気ない場面などです。よほど面白い設定であれば規定外の原稿でも読まれたかも知れませんが、青葉の小説はありきたりな学園ものです。そういった娯楽作品を書くための共感性・発想力といったものは、彼の人格要素からは感じ取れません。盗まれたという思い込みは精神疾患の症状で、似たようなもので認知症の老人が財布の中の金を盗まれたと思う『物盗られ妄想』があります。ただ老人と 41歳の青葉との違いは、怒りをあらわす行動力です。青葉は犯行の準備を一人で行い、泊りがけでアニメ制作会社に行きました。犯行の動機となったパクリについて、事件後に少数ながら青葉に同調する者がいました。
世の中には一定数、自分のことを虐げられた存在だと思っていて、普通の人が働く会社などに敵意を抱く者がいます。彼らの行動原理は恨みであり、報われない人生の原因を他人に求めて攻撃します。・放火青葉はガソリンの容器を買い、スタンドに向かいます。スタンドでガソリンを容器で買おうとすると用途を聞かれますが、青葉は『発電機に使う』と言ってガソリンを手に入れています。言葉というのは最も偽りやすいものです。人を見抜く方法では言葉を信用していませんが、面接の問答などで確認する場合には、質問の深掘りをします。深掘りとは質問に対する相手の答えから、更に質問を作る方法です。青葉のケースなら、「発電機に使う」 →『なんで?』 →「イベントを行う」 →『どんなイベント』 →「地域の祭り」 →『主催者は?日時や場所は? etc.』など、青葉の返答から質問を作るのを繰り返します。大抵のウソは設定が浅いので、深堀りして質問をすると破綻します。青葉はアニメ制作会社の近くでガソリンをバケツに移し替え、建物内に入ってガソリンを撒いて火をつけました。この火が青葉にも引火したため建物から逃げ出しましたが、火傷がひどく路上に倒れていたところを逮捕されました。これは青葉の論理性が低いゆえに、自分の被害を予測できなかった事をあらわしています。本人さえ想定できなかったことなので会社側はもっと想定しておらず、無防備なまま被害に遭ってしまいました。誰もが愛するアニメ作品を作る会社が、襲撃されるほど恨まれるなど普通は考えないものです。しかしその『誰もが』の中に入れない、青葉のような人間はいます。・逮捕後重度の火傷で瀕死だった青葉は、医師の治療によって一命をとりとめます。そして自分を助けてくれた医師・看護師の優しさに感謝をして「人からこんなに優しくされたことなかった」と言っています。虐げられた人間が生まれ変わる感動の瞬間と思いたいところですが、幼少期から 30歳半ばまで時間をかけて作られた人格が、この一回で変わる事はありません。青葉のような人格だと感謝をしていても、いつ恨みに変わるかわかりません。孤独な彼の生活に光をもたらしたのは小説とアニメですが、その制作会社をこの世で最も憎んで犯行に及んでいます。犯人に対して厳しい目で見てしまいがちですが、我々は自分の NP(優しい母性)的な視点も育てなければなりません。そういう目で見ると彼は生まれた段階で難易度が高い人生が決まっていて、成人後の生活保護では救われなかった事が伺えます。
恐らくもっと幼少の頃から対策をしなければ、青葉のような人間はこれからも出てくるでしょう。 7- 2尼崎連続変死事件六十代の角田美代子というおばさんを中心にした犯人グループが、わかっているだけで 8人の不審死に関わっていた事件です。この事件の奇異なところは、犯人グループが些細なキッカケで他人の家に押しかけて乗っ取り、その家族を加害者と被害者に分断するところです。犯人グループの中にも角田の共犯者というより、取り込まれた奴隷のような者が多くいました。そんな共犯者の中には、角田にわが子を養子として取り上げられた者もいます。角田は家族を乗っ取ってその資産を吸い取っていますが、お金はあくまで副産物であり、他所の家庭をバラバラにして自分の家族として再編するのが目的に思えます。犯人グループの中には角田の子供や妹やいとこがいましたが、その誰とも血のつながりはありませんでした。角田は血のつながりを避け、様々な手続きで家族を合成して作り上げていったのです。大所帯になって角田一家の運営費がかさむようになると、犯罪に粗さが出てきて角田らは逮捕されました。そして角田が家族と思っていた共犯者たちが供述を始めると、彼女は留置所の中で自殺してしまいました。・角田の稼業角田は繁華街をウロついて金に困ってそうな人を見つけては、高利でカネを貸し付けていました。そういった場所には欲求に抗えない、付け入る隙のある人が多くいます。角田が常に野良犬のように徘徊していたのは F C(行動)が優位で、獲物に声をかけるのが上手かったのも F C(社交的)的な気安さがあったからです。闇金は金にルーズな人に貸すので回収が難しいものですが、角田は弱者から搾り取る方法に長けていました。そうして接点ができた人間に対して金を貸すだけでなく、カツアゲに近い方法で金を巻き上げたり小間使いにしていました。角田のような人間はサメのように、弱った獲物をかぎ分ける能力が優れています。こういった怪しい稼業が、徐々に殺人にまでエスカレートしていきました。・角田が相手を屈服させる手口角田は犯罪まがいの稼業が上達してくると、個人のターゲットを狙うのではなく、一家ごと狙うようになりました。角田は一人の男を取り込むと、養子縁組して自分の親族にしました。そして男の元々の親戚の中から、好き勝手ができそうな家を見つけて男を預けます。預け先の家で男が問題を起こしても、警察に『身内のことだから』と言い逃れができます。親戚の家に預けられた男は角田からの指示で暴れたり、毎日生活費を要求したり無理難題を言いました。
そして親戚の家が角田に「もう預かれない」と言うと、それをキッカケに角田と手下らが一家のところへ来て、不義理だのなんだの難癖をつけます。こういう無理を吹っかけて相手が断ったところを責めるのは、ヤクザの押したり引いたりする手口そっくりです。角田はただ難癖をつけるだけではなく、泊りがけで夜通し説教をし続けました。すると一家は衰弱していって、苦しみから解放されるために角田の言う事を聞くようになっていきます。・疲弊させ、屈服させる人を屈服させるのに眠らせないというのは有効で、秘密警察などが好んで使う手段でした。角田の場合はメンヘラ(精神が病んだ人)が、真夜中に交際相手に何時間も電話をして眠らせない行為に似ています。メンヘラもまた、自分に近い人を衰弱させる習性があります。中年だった角田が夜中でも元気だったのは、定職に就いていなかった事もありますが、覚せい剤をやっていたからだと言われています。それに対して被害者たちは日中の仕事があり、一晩中難癖をつけられる毎日に疲弊していきました。しかも角田らは被害者の家に住み込んでいるので、逃げ場がありません。これはメンヘラが同棲しているパートナーに対して、些細なことで感情を爆発させ一晩中罵声を浴びせるのと一緒です。被害者は仕事と罵倒で眠る時間がなく、正常な判断ができなくなっていきます。そんな毎日が繰り返されると、被害者は角田を怒らせない事を第一に考えるようになり、従順になっていきます。そして無理を言われて振り回される内に、逃げる気力さえ奪われていくのです。メンヘラの手口は罵倒だけでなく、ターゲットの人間関係や仕事にケチをつけて、徐々に社会から切り離して孤立させていく事もします。角田も被害者に切り離し工作を行い、人間関係を分断しています。メンヘラの行動と角田の手口は酷似しているので、角田は金よりも人間に執着していたのではないかと思われます。・戸籍をいじるもう一つの理由角田のような犯罪者たちは、やたらと他人の戸籍をいじくりまわす習性があります。養子縁組させたり、誰かと偽装結婚をさせたり、しょっちゅう苗字を変えさせられたりします。これは犯罪をしやすくするためですが、被害者のアイデンティティ(自分は何者なのか)を奪う目的もあります。このように角田は金銭だけでなく、被害者が存命中から生きた証を奪っていました。角田自身も生い立ちの中で思春期の頃から人生を奪われており、その空虚さを埋めるために他人のアイデンティティ(人生)を喰らっていたのかもしれません。・角田の弟角田には血のつながった弟がいますが、一時期を除いて基本的には別々に行動しています。弟は角田と無関係なところで恐喝などを起こして逮捕されています。
この弟が弁護士から億単位の金を恐喝した時は、友人の債務処理を依頼する名目で近づきました。弁護士が依頼を受けて仕事をすると、弟は弁護士に難癖をつけて、事務所や自宅に何度も行き揺さぶりをかけました。疲弊した弁護士が一度お金を渡すと、そこからが本格的な恐喝のスタートです。弟は弁護士に難癖をつけるための話を新たに創作し、それをもって弁護士を責め立てました。弁護士には妻子がいるため、逃げることもできずに恫喝され続けました。角田が被害者たちを激詰めした時にも言えますが、彼らは謝罪や土下座をさせることにこだわります。土下座させられた方は『自分に落ち度がある』という卑屈な気持ちが植え付けられ、そこから上下関係が発生するからです。この行動は反社とつるんだ経験のある者が、コンビニやスーパーで店員を責める時にも見られます。角田の弟は弁護士の他にも、若い女性に対して同様の行為を行っています。彼らはキズのにおいをかぎ分ける獣のように、ターゲットの弱みを見つけて攻撃します。被害者が根負けして一度でも言いなりになると、そこからが本格的な隷属関係のスタートになります。被害者が遠い街に逃げて就職しても、弟はしつこく関係を持ち続けました。コモドドラゴンという大型のトカゲは獲物にかみつき毒を注入すると、獲物が倒れるまで何キロでもついて回るのだそうです。恐喝犯たちには、そういう爬虫類的なしつこさがあります。弱った状態の被害者が助かるには、周囲の CP(正義感・リーダーシップ)型の人が気付いて厳格な手段をとることです。人間は社会性によって発展してきた生き物で、反社会の存在と戦う時には団結が有効であり、この女性も勤務先の上司によって救われました。だから社会性の枠外にいる犯罪者たちは、ターゲットが周囲の人に助けを求めないよう孤立させようとします。・スナックという場所角田の弟はスナックで困った人を探して、助ける名目でアプローチをかけていました。困っている人という時点で、弱った獲物の候補です。このスナックという場所に人格の要素をつけるとしたら、ホステスや他の客との交流を楽しむ F C(社交的・楽しむ)です。特にホステスがウリのスナックで男性が困った人に協力するというのは、行動が矛盾しています。スナックはあくまで娯楽のための場所であり、矛盾のある行動で近づいてくる者は大抵よからぬ事を企んでいるものです。※スナックに通う全ての男性が、悪人というわけではありません。・監禁を好む角田は自宅マンションのバルコニーに、監禁小屋を持っていました。
外気温と同じで小屋というより、檻と言った方が正確です。いかにもサディスティックな角田らしいものですが、牢屋には人の自由を奪うことで奴隷化しやすいという効果もあります。普通の人を牢屋に入れると数日で自尊心が低下し、断続的に罰を与えられることで無力感をおぼえるようになります。すると牢屋から出しても心が鎖でつながれているかのように、逃げ出せなくなります。こういった学校で習わない人間の習性を、犯罪者たちは最初から知っています。クモが複雑な巣の張り方を生まれつき知ってるように、犯罪者は誰に教わるでもなく、人間をからめ捕る術を持っています。・角田の父親角田の父親は建築関係の手配師をやっていて、自宅に若い作業員たちを住まわせていました。今よりも粗暴な若者が多かった時代、それらをまとめるには激しい気性が必要で、父親の F C(感情的・行動力)が高いことが予想されます。親分的な立場には C P(自他に厳しい・責任感)が必要ですが、父親は角田が二十代前半の頃に商売で失敗をして多額の借金をしているので、 FCの方が優位と見ます。 F C(直感・行動)が突出した人は中年になって勢いが衰えると、それに適応できず失敗しやすくなります。・角田の母親角田が生まれる前に母親は、交際していた男との間に一児をもうけています。その後、売春地帯で小料理屋をやっていた時に、角田の父親になる男と出会い結婚しました。母親は大柄な上に気性が荒く、怒鳴り声をあげることもしばしばでした。この母方の祖母も気性が荒く、角田は遺伝的にも環境的にも F C(直情的)が高いことが推察されます。近所の人の話によると角田の母親の兄は仕事をせず、ヤクザまがいの者だったそうです。それゆえ角田の母親は、売春地帯に働きに出る必要があったそうです。角田の母親が春を売っていたかは不確かですが、若い女がいきなり売春地帯に小料理屋を出すというのはギャップがあります。このギャップに、角田の母親の人生が凝縮しているように感じます。・角田の小・中時代角田が小学二年の時に両親が離婚し、角田は父親に引き取られました。住まいに関しては父親宅や母親宅、あるいは親と関係性のある人物の家を転々としています。小学校低学年頃は、ことの善悪を大人から教わる期間ですが、その家庭が壊れてしまいました。このような不安定な家庭環境で、角田は小学校時代から不登校が見られるようになりました。家庭で社会性を身につける段階が不十分だと、学校に入ってから上手くいかなくなります。不登校は子供の角田が発する不調のサインでしたが、親はそれをくみ取ろうとしませんでした。
問題の見られる家庭は、非常に早い段階で育児を切り上げられます。野生の狸が子育てする期間を人間に換算すると 6 ~ 7年で、角田もそのくらいの年齢で家庭生活が崩壊しています。しかし、この頃の角田の態度はまだ表面的には普通の子で、社会に留まろうとする葛藤がうかがえます。それが中学に入って、父親と作業員たちと一緒に住むようになってから変わりました。当時の住まいを持たない若者は作業員というより荒くれ者が多く、一緒に住むことで角田にも影響があったと思われます。その頃から角田は奇抜な服装をしたり、他人の弁当を盗んだりというおかしな行動を始めます。弁当を盗んだのは空腹だったのではなく、普通の家の暮らしを感じたい気持ちからだと思われます。野生動物のように育てられた子らは、普通の人の暮らしに嫉妬をしたり、執着したりします。現代であればコンビニの前に長時間タムロをして、普通の人たちをジロジロと眺めたり、絡んだりしていたでしょう。中学時代から角田は深夜徘徊で補導されたり、気の弱い生徒を探して脅したりしています。この行動は、後に街を徘徊して弱そうな人を見つけて食い物にする、怪しげな稼業と重なります。角田が補導されても親は引き取りに来ず、放任状態でした。子供を育てる能力のない親は、どこで聞いてきたのか『子供の自主性を重んじる』などと、それらしいことを言ったりするものです。しかし人間はたぬきとは違うので、中学時代にはまだ親の教育が必要な頃です。人間教育が足りなかった子は、社会で獣のような食うか食われるかの生き方しかできなくなってしまいます。・大声を出す理由角田は被害者が意に沿わない事をすると、周りに聞こえよがしに大声で喚き散らしました。店でおもちゃを買ってもらえなかった幼児が、周囲を巻き込むために泣き叫ぶ姿と重なります。これは犯罪者たちが子供のままである事を示しています。子供は乗り越えるべき課題を、親の助力を受けてクリアする事で、次の成長段階に進めます。しかし親との関係に問題があった子は、体が大きくなっても内面は子供のままです。だから犯罪者たちは全般的に幼稚でわがままなのです。・角田の高校時代角田は女子高に通いますが、この頃にはすっかり荒んでいて一か月で退学処分になっています。その後、同年代の少女に売春をさせた罪で 19歳の時に検挙されています。
そして 23歳で結婚をし、二年後には離婚をしています。・売春高校中退後に角田は、母親に店を紹介されて自身も売春をしていました。普通の家なら自分の子に教育を受けさせ、豊かな人生が送れるようにします。しかし角田の母親は、娘を金を稼ぐ道具のように扱っています。更に角田はヤクザの叔父と親密な関係になったり、キャバレーで働いたり、荒んだマス目しかない人生ゲームのような生き方をしています。脳にはミラーニューロンというものがあり、周りの人の行動を自分に取り込む性質があります。角田の周りには地獄に片足を突っ込んだような大人しかおらず、それが角田の人格を形作っていきました。・角田の転居歴角田は二十代の時に尼崎から横浜に居を移し、スナックを開店しています。尼崎から転居してスナックを開くなら大阪が妥当だし、わざわざ首都圏に出るのに横浜というのは中途半端です。素性がよくわからない人は、こういった必然性がよくわからない転居歴があるものです。角田の場合は尼崎で売春の摘発にあったのでいられなくなり、持っていた裏社会のツテの関係で横浜になりました。このスナックは裏で売春あっせんをしていたと言われています。・内縁の夫『内縁の』というのは保険金殺人でしか聞きなじみがないですが、角田には内縁の夫がいます。角田は前夫と離婚した二年後に、細身のタクシー運転手の男と同居を始めています。この男との間に子供は作らず、「クソじじい」と呼んで小突き回しています。内縁関係というより、うっぷんを晴らすサンドバッグのような存在だと思われ、それなりに重宝したのか最後まで殺されませんでした。この内縁の夫が逃げなかったのは、メンヘラに捕らわれた人が陥る共依存だった可能性があります。角田に限らずメンヘラは、別れようとすると全力で追いかけてくる執着心があります。実際、角田から逃げようとした人たちは追い込みをかけられ、連れ戻されてひどい目に遭っています。ただ、恐怖だけで支配は続けられないので、メンヘラにも優しい時があります。角田は監禁して恐怖を与えたかと思えば、美味しい手料理を振る舞い情をかけたりもしました。あるいは寂しそうな姿を見せて、自分から逃げることは悪だという感情を相手に植え付けます。メンヘラが手に入れた人を離さないのは、内面に見捨てられることを怖がる子供がいるからです。彼らに無邪気さや弱い子供を見て心を許してしまうと、誰でもターゲットにされてしまいます。
人と親しくなる時は一歩立ち止まって、その経歴から人格を読み取る必要があります。・遠縁の一家をターゲットにした時の手口角田の叔父(前述のヤクザの叔父とは異なる故人)の妻が亡くなり、子供がいなかったため妻側の親族によって葬儀が行われました。夫が死んでから一人暮らしをしていたこの妻は、角田家とは没交渉であったことが伺われます。妻側の親族からすると殆ど他人の角田美代子が葬儀に参加し、いろいろとアヤ(文句・揚げ足取り)をつけはじめました。いわく、喪主を角田の側でやっていないのはおかしいとか、葬儀の段取りの悪さなどをいちいちあげつらいました。妻の生前の希望通り実家の墓に入れようとしたところ、これにも角田は猛反対します。そこで妻の親族が分骨を提案すると角田は「おばちゃんの体を二つに分けるのか」と、新たな火種にしました。このあらゆる事に文句をつけて自分が優位に立つやり方は、ヤクザの手口そのものです。ゴタゴタして問題が長引くと、角田はその時間のことにも文句をつけます。よほど苛烈な責めだったのか、親族の一人は葬儀の一週間後に『いまから死ぬ』と自分の子供に電話をする始末でした。その電話を受けた子(家庭を持っている)が慌てて角田に会うと、新たなターゲットにされてしまいました。ここまで事件を見て叔父だの子だのが入り組んでいて、皆さんもわかりにくいのではないでしょうか?事件を追うと、まるで角田の蜘蛛の巣に迷い込んだかのように混乱しますが、その複雑さが角田の内面世界をあらわしているように思います。角田の被害を受けた複数の家庭は資産を奪われたのはもちろん、それまでの社会的地位も失っています。さらに角田によって離婚させられたり、子供を養子として取り上げられたり、家族を破壊されました。バラバラにさせられた家族は被害者と加害者に分かれる事になり、中には命を奪われる者もでました。・家族を分断する角田は家族を分断する際、各々から聞いた家族の不満を悪口として本人に伝え、不和を起こしていました。これもメンヘラが本能的に使う手口で、周囲の人間関係をかき乱す事を得意としています。皆さんの職場やコミュニティで不和を起こす人間も、小悪魔のように人に耳打ちをしてはいないでしょうか?・社会から孤立させる角田は自分のファミリーに人を取り込むと、家に同居させて徹底的に管理をします。そしてそれまで就いていた仕事を退職させ、バイトのような仕事をあっせんして生活費を納めさせます。これはお金のためというより相手がそれまでの人生で築いたものを奪って、帰る場所をなくす意味合いがあります。
子供時代に帰る家がなかった角田は、理屈ではなく本能で人から帰る場所を奪っていたのです。角田に取り込まれた者の中には、逃げ場がなくて自殺を選ぶ者も出ました。・親族以外の被害者被害者の内の一人で大手私鉄に勤務していた男性は、クレームを言いに来た角田に対応した事でターゲットにされました。角田はファミリーの中から刺青の入った男をひき連れて、鉄道会社で恫喝しながら話しをしました。その話し合いの中で角田は、私鉄の男性が一度も時計を見なかった事を褒めています。普通の人であればこんな事をわざわざ褒めたりはしませんが、そのわざわざをするから効果的なのです。男性は怖い相手に褒められて気をよくしたのか、クレーム処理を進める中で角田の家に通い、家族構成や喫茶店を開く夢を語ってしまいます。そこから角田は男性に喫茶店向きの物件を持ってるとウソをついたり、高級なプレゼントをしています。プレゼントをするのは本来 N P(共感性・奉仕)の行動ですが、最初に会った時に角田がした恫喝とは矛盾します。人を見抜く方法では、矛盾点を見つけたらそこに人格が凝縮されているとしています。ネガティブな方が本性であり、恫喝こそが角田の真の姿で、 NP(優しさ・共感力)を示す行動は獲物を誘いこむ芝居です。角田のプレゼントは貸しを作る行為で、男性をからめ捕る手段の一つです。しかし、角田を良い人だと思っている男性は、角田にそそのかされて大手私鉄会社を辞めてしまいます。そうやって男性を社会から切り離すと、角田は本格的に支配を始めます。最初は小さな用事ですぐに呼び出したりして上下関係を植え付け、その内に男性の妻子も取り込んでいきました。角田は夫婦の些細な不満を煽って離婚問題に発展させ、会議と称して親族を集めさせました。この時の狙いは、夫婦の実家の不動産でした。この夫婦は家を失うだけでなく、奥さんの母親は虐待で亡くなりました。しかも夫婦がその被告となってしまいました。これがごく普通に働いていた人が、角田というおばさんに心を開いたばかりに起こったことです。・角田の金遣い角田は誰かの家の不動産を売ったり、保険金をかけて自殺に追い込んだりするたびに数千万円を得ていました。それでも金遣いが荒く、ファミリーの家計はひっ迫していました。このあたりもメンヘラ特有の、底が抜けたバケツのように心が満たされない性質が見て取れます。金遣いの荒さは F C(衝動的)が高く、 A(計画性)や CP(規律)が低いと見ますが、角田の場合はそれだけでは済まない心の病いを感じます。
・角田の最初のターゲット角田の最初の被害者は、角田の母親(離婚後)の家を間借りしていた一家の娘で、角田より 5歳年下の女性です。角田は父親に引き取られたので、この女性と同居していたわけではないですが、女性が中学生になると遊びに連れ出すようになりました。そして女性が中学卒業後に就職すると本格的に連れまわすようになり、女性が日帰り旅行だと思っていたのが一泊する事となり、会社を無断欠席してしまった事から辞めるハメになってしまいました。この頃から角田は身近な人を会社から引き離して、自分の手元に囲う性質があったようです。そして角田と女性が二人で暮らすようになってしばらくすると、一緒に万引きをして捕まりました。女性は未成年だったので角田より早めに釈放されて、生活を立て直すために実家に帰りました。その後で釈放された角田は女性が実家に帰った事に怒り、女性とその両親を家に呼びつけました。ここで角田は憤怒して深夜まで罵声を浴び続けるという、後の犯罪手口と同じことをしています。この手法は論理的に考えられたものではなく、子供がだだをこねるのと一緒です。角田は親に甘えられなかった分、他の人に依存をしていたのです。一緒に住むと言うまで収まらないため、女性は根負けして角田と再び同居してしまいます。この時角田は 24歳、女性は 19歳でした。女性は角田がわがままを言い出したら絶対に折れない事を思い知らされているので、以降は角田に命じられるままの人生を歩んでいます。最初はスナックで次はソープランドで働かされ、そのお金は当たり前のように角田のものにされました。角田にとってお金は相手が自分を見捨てないという証しで、愛情のバロメーターでした。女性は月に 100万以上を渡していたのに、愛情の飢餓が満たされない角田は際限なく使い借金を抱えてしまいます。女性が 28歳の時に角田から離れようと、好きでもない男と交際し、角田の借金 1千万円を肩代わりするから結婚させてくれと頼みましたが許されませんでした。女性が 30歳の時に角田は自分が選んだ男性を紹介し、三人で同居するようになりました。角田は急に優しさに目覚めたのでしょうか?いいえ、人格はそんな風に急に変わることはありません。角田は子供が欲しくなったので、女性に産ませるために男性をあてがったのです。もし女性が妊娠したら角田として病院に通わせ、出生届も角田の子とする取り決めを交わしました。普通は自分の遺伝子を継いだ子供を欲しがるものですが、角田は見た目が良くない自分の子供は欲しくないと言いきっています。そして子供が産まれると実際に角田の子とされて、それに反対していた男性は姿を消してしまいました。さらに一生涯この女性が自分から離れていかないようにするため、自分の母親と女性を養子縁組させて、妹にしてしまいました。
その後も女性は 50歳近くまで売春を続け、ファミリーの赤字の家計をやりくりさせられ、最終的には共犯として逮捕されて 21年の実刑判決を受けました。この事件の犠牲者はわかっているだけで 8名ですが、共犯者にされた人々も中年になって財産と仕事を奪われ、長ければ数十年の実刑を受けた人もいます。・留置所での角田角田は自分が正気を保つために人々を囲っていたので、それらのファミリーと離れると精神状態が不安定になっていきました。そして不安に耐えられなくなったのか、最後には留置場の中で自殺をしてしまいました。結局角田は精神安定剤の代わりに他人の人生を貪っていましたが、何人死んでも心は満たされなかったということです。角田の不可解な行動に関しては、第八章『性格の病』が参考になります。 7- 3福岡女性連続殺人福岡でわずか 1ヶ月の間に 3人の女性の命を奪った、鈴木泰徳という既婚者の男が逮捕されました。鈴木の犯行は女が欲しければ襲う、金が欲しければ奪うという原始人が現代にタイムスリップしてきたような、知性も理性もない犯行でした。犯行時、鈴木は運送会社に所属していたのでトラック運転手とされていますが、働いていたのはわずか数か月間だけです。トラックで深夜から早朝にかけて荷物を運ぶ合間に、ひと気がない場所で犯行を繰り返していました。仕事が短期間な上に勤務中でも仕事以外のことに熱心なのは、鈴木の CP(規律・向上心)の低さを物語っています。・原始的な犯行鈴木は配送の途中で、帰宅途中の 18歳の女性を見かけ、後をつけてひと気のない公園に差し掛かったところで女性の口を塞ぎ、公園に引き込みました。鈴木は原始性が強いとはいえ、ひと気がないところまで後をつける頭は働きます。これは太古の昔から原始人が、狩りの獲物を追跡する行動をとっていた名残りです。人間の脳には古い部分が残っていて、粗暴な犯罪は主にこの部分が関わっています。公園で鈴木は女性のマフラーで首を絞めて気絶させ、姦淫しました。その後、被害者に顔を見られたことを思い出して、今度は絶命するまで首を絞めています。顔を見られる事を予期していなかったのは、鈴木の A(計画性)の低さがあらわれています。このように鈴木は、バカという凶器を振りかざすタイプの犯罪者です。さらに鈴木は金品を奪うために女性のバッグを持っていこうとしたところで、近くにトラックが止まったために逃げ出しました。その次の犯行からは包丁を使うようになり、被害者の命乞いを無視して何度も刺す残虐性をあらわにしています。
鈴木は三人目の被害者に対して 5回刺した後で仕事に戻り、約 1時間後に再び現場に戻っています。そして被害者が痙攣しているのを見て死亡することを確信すると、安心したように立ち去っています。この行動は人間の頭で考えたものとは思えないので、鈴木のような犯罪者を見る時は『狂犬病の犬がウロついている』という目線で見ないと心が乱れてしまいます。・鈴木の経歴鈴木は県内の農業高校から、自動車関係の専門学校に入って卒業しています。偏差値が低くてフラフラした経歴からは、 A(論理性)と CP(キャリアの一貫性)が低く、 FC(衝動的)が高い可能性をとります。しかし、 10代は人格が定まっていないため、これが最終判断というわけではありません。その後の経歴と照らし合わせて同じ特徴が見られたら、 10代で見られた人格が生来の性質で、全く成長しない人間だとわかります。高校の頃から他害的な行動の一端が垣間見られ、鈴木は人と違うポイントで激高する人間だったそうです。専門学校を卒業した後は、親がやっている自動車整備工場で働き始めます。・激高する人普通の会社でもたまに、変なことで激高する人はいるのではないでしょうか?脳は電気信号によって情報を伝達していますが、激高する人は脳内でスパークしているのではないかと思うような反応をします。鈴木は 10代から逮捕される 30代まで、何度も激高したり事故を起こしています。・たびたび事故を起こす鈴木が犯行時に運送会社に勤めていたのはわずか 4ヶ月で、その理由は度重なる事故です。入社して 1ヶ月の見習い期間が終わって、一人で運転させられるようになるとすぐに自損事故を起こしています。見習いに戻されて講習を受けた後に、再び一人で運転するようになると、またすぐに事故を起こします。結局 3ヵ月で 3度の事故を起こしたために退職する事になりました。鈴木が事故を起こしたのは女性を物色していたからと思いがちですが、もともと事故を起こしやすい人間だと思われます。事故を起こしやすい人格・認知能力の者は決まっていて、鈴木は 20歳頃に人身事故を起こしています。その後の事故がないのは不思議ですが、人身事故の後は父親の自動車整備工場に勤めているため、自損事故があっても表面化しなかった可能性があります。例え整備工時代に事故を起こしていなかったとしても、人生で 4度もの事故は多すぎます。・激高する脳
鈴木が逮捕されたのは 35歳で、人を見抜く方法で F C突出型の人間が破綻しやすいとされている、 36歳前後の年齢に当てはまります。 F C突出型は感情が優位で、興奮しやすくピンボールの玉のように行き当たりばったりの行動をします。激高したり事故を起こす鈴木の脳は、感情優位だけに留まらず、スパークしやすいものと思われます。脳のスパークと言っても電極をさして電流を調べたわけではなく、概念的な表現です。スパークする脳はデスクワークをさせても、落ち着きがなくミスを連発してしまう人にも見られます。そういう人は考えるより前に機械を操作する手が動いてしまったり、目が先走って全く違う部分を見ていたりします。挙句の果ては机にじっと座っているだけで体調不良になったりします。とにかく作業をしていても、何か気になるものがあると脳がスパークしたかのように、その事に意識が乗っ取られてしまいます。これらが一つでも当てはまればスパークする脳だと決めつけないのは、本書で度々ご説明している通りです。しかし、鈴木の場合は当てはまる部分が多くあり、実際に事故を何度も起こしています。・鈴木の性欲鈴木は中学の頃から女性の下着に興味を持ち、下着の窃盗を繰り返していました。性欲があったとしても何度も窃盗するというのは、普通の男子には見られません。それに鈴木が大量に所持していた AVは、強姦のジャンルでした。 AVに影響される人がいるという意見に対して、普通の男性は『現実とフィクションの違いくらいわかるだろう』と言います。ですがそういった普通レベルではない者は、 AVと現実の境界があいまいで影響を受けてしまうのです。・鈴木の金遣い鈴木は結婚してからも、ホステス目当てのスナック通いをやめませんでした。ズレた感性と事故を起こすような気の回らなさから察するに、鈴木は巧みな会話で女性の興味をひくことはできなかったでしょう。店では大金を使う事でホステスの気を引こうとしていましたが、いくら使ってもなびかない女性には激高していました。このような頭では当然お金を稼ぐことも苦手で、スナック通いの金は借金で賄われており、返済が滞ると父親が肩代わりすることもありました。ダメな男の特徴である金遣いの荒さと働かなさは、 FC(自由な子供性)が高くてそれを抑える C P(厳格な父性)が低いという、経済力がない人の定番の人格です。奥さんに内緒で自宅を抵当に入れて借金をした時には、父親が援助して家は残りましたが、鈴木は勘当されました。数年間は続いた自動車整備の仕事は、この時に失っています。その後にまた自宅を抵当に借金をしたため、奥さんは鈴木を拒絶するようになりました。
こうして鈴木の異常な性欲は、行き場を失いました。・金遣いから見る要素 F C(自由な子供)と A C(顔色をうかがう子供)は同じ子供の要素で、これらが優位な人には子供っぽさがあります。 F Cと A Cを見分けるのに、お金の使い方を観察します。 A Cは自己評価が低くて贅沢や大それたことをしたがらないので、金遣いは消極的な傾向があります。ただマニアックな分野にお金を使ってしまう事はありますが、全般的な支出は地味です。それに対して FC型は活発にお金を使い、壊れた蛇口のように金をだだ漏らしにします。お金をもらう事に関しても A Cは遠慮がちですが、 FCは実力より多くもらえないと不満を抱きます。・論理性の低さ鈴木の学歴や金遣い、困ったら奪う場当たり的な頭を見ても A(論理性)の低さがわかります。農業高校と自動車専門学校という学歴の流れを見ても、 Aが高くない事が伺われます。逮捕されたのは被害者から盗んだ携帯を使い、出会い系やアダルトサイトにアクセスしていたためです。その理由が自分の携帯で通信料を払いたくなかったからで、鈴木がお金に困る人特有の『百円を惜しんで千円を損をする』というアベコベな思考回路をしているのがわかります。お金がない人の事を論理性が低いと言っているのではなく、お金がなくなる理由により鈴木の Aの低さを判別しています。お金に困っている理由が、例えば子供に高額医療を受けさせているからであれば、 CP(父性)・母性( NP)の高さを評価します。他にお金がないのは能力の割りに自信がなくて、積極的に年収を上げようとしない A C(顔色をうかがう子供)の人もいます。・鈴木の結婚鈴木は父親の自動車整備工場に勤めていた 30歳頃に、看護師の女性と結婚しています。もし父親の庇護がなければ鈴木は職を転々として、女性からは結婚相手にできるような男に見えなかったでしょう。鈴木は借金が原因で整備工場の仕事を失うと、人格通りの姿になっていきました。彼の人格では仕事で稼ぐことはできないという見立て通り、 35歳で入った配送会社では何度も事故を起こして、見習いばかりさせられて稼げる見込みがありませんでした。この頃には奥さんは離婚をしたいと思うようになっていました。
事件を起こした理由について鈴木は、奥さんや親から孤立していた事や借金の取り立てのストレスだと言っています。ストレスは多すぎれば毒になりますが、適量であれば現状を変える原動力になります。しかし、鈴木のような人間は溜まったストレスよりも多くを発散するので、丹田(腹の下)に力が入らずいつまでも這い上がれません。事件を起こしてもなお、自分に責任があるとは思わない鈴木は、 35歳になっても三歳児のようです。そんな不気味な大人に社会で居場所がないのは、至極当然のことです。・鈴木に親の援助がなかった場合金貸しもバカではないので、返済の見込みが立たない人間には貸しません。鈴木の借金が膨らんだ理由として、金貸しが実家を信用した事があげられます。就職にしても親の工場でなかったら、人格的に鈴木の勤めが続いた可能性は低いです。実際に勘当された後は配送の会社に入ったものの、数か月で退社しています。配送会社の次は行きつけのスナックで紹介してもらった土木会社に入り、 1ヶ月後に捜査の手が及んで逮捕されました。もし親の援助がなくて、借金が膨らまなかったら事件は起こらなかったのかといえば、そうとも言いきれません。鈴木のように失敗が多いうえに他人のせいにしがちな人間は、行き詰ると犯罪で何とかしようとする可能性は十分あります。確かなのは鈴木のような人間と、相互利益の関係を築くことは難しいという事だけです。 7- 4関西青酸連続死事件殺人犯の 8割近くは男性です。そんな中で有罪が認められただけでも 3人の男性を殺害したのが、筧千佐子という女です。明確に殺人とされたのは 3人ですが、彼女の周りで不審死をした男性を合わせると、全部で 11人です。筧は結婚相談所で知り合った、主に 70歳前後の男性と交際し、結婚をするか遺産相続の公正証書を書かせた後で青酸化合物で殺害していました。そうして手にした遺産は、総額で 8億円以上と言われています。彼女は 50代半ばから犯行を始めて、 70手前のおばあちゃんになるまで続けていました。警察に捕まった時には次の獲物を囲い込んでいたところで、まだまだ犯行を続けるつもりでした。・結婚相談所を使う筧は最初の夫が病死した 4年後、 52歳の頃に結婚相談所に登録しています。結婚相談所は経済的な条件で相手をフィルタリング(選別)できるので、筧は一般人がハローワークで仕事を選ぶ感覚で、お金になる男性を物色していたと思われます。ある程度の資産を自分で築いた男性は、歳をとってもそれなりに現実的な判断ができるため、若い女とくっついても財産をひっぺがされてお終いだという警戒心があります。だから現実的な年齢差の筧が選ばれます。
・筧の容姿 68歳で逮捕された時、筧の顔は頬もまぶたも年齢相応に垂れ下がっていましたが、若い頃の可愛い顔の面影は残っていました。殺人を犯したという先入観で見ると不気味な顔に見えますが、彼女の若い頃の顔は菩薩像のようにこじんまりとまとまった顔をしています。被害者の男性たちは、まさかこんな地味な女に殺されるとは思ってもいなかったでしょう。・殺害の手口筧は男性と『親密』になった後で、健康に良いからとカプセルを飲ませます。この時まず自分で毒の入っていないカプセルを飲み、次に毒入りのカプセルを被害者に飲ませます。これは簡単に見えて、殺そうとする相手の目の前で冷静に演技をするには、胆力や非情さが必要です。この点について筧にはウソの才能があって、警察の取り調べの中でウソ発見器にかけられても全く反応しなかったそうです。ウソをつく人格の要素は、 FC(身勝手)か A(利己的・計算高さ)ですが、犯罪が計画的なことを考えると筧は Aの要素が高いと判断します。・葬儀の場で遺産の話筧は男性が死亡すると少しでも早く遺産を回収するため、すぐに葬儀を行いました。男性の遺族が慌てて葬祭場にかけつけると、筧は遺産相続の話を始めます。遺族は普通の人々なので『葬儀の場で遺産争いをするようなマネはできない』という常識的な考えをしたので、筧の要求はすんなりと通りました。亡くなった被害者の男性らは皆、堅実に勤め上げた人ばかりだったので、筧は一回の葬儀につき数千万円の遺産を手に入れています。彼女は恥を感じる人格より、 A(計算高さ・利己的)の方が発達していたため、こういった事が平気で出来ます。他にも筧の犯罪には A(合理的)の高さを伺わせる場面がいくつもあります。・筧の足跡から人格を読み取る筧は 1946年に生まれましたが母親は未婚だったため、すぐに北九州の夫婦の養子になりました。養子という事に関して、それだけでネガティブな判断はしません。筧がいつ養子の事実を親から知らされたか不明ですが、ショックを受けたであろう事は想像できます。その時に親からの扱いに不満があれば、自分が養子であることと関連付けて負の感情を抱く可能性はあります。しかし里親の家庭は真面目で、戦後間もない同時期の日本の中では恵まれた方だと思われます。遺伝の影響は年齢が上がるほど強くあらわれる特性がありますが、筧の生みの親がどのような人間だったかは不明です。
・筧の小・中学校時代筧は頭の良さが印象的な少女でしたが、これは育ての親が鬼のように勉強をさせたか、生みの親からの遺伝の影響が考えられます。もし遺伝的に勉強ができない子にスパルタ教育を施すと、子供は否定され続けているように感じて精神が病みやすくなります。しかし、そういった兆候は表面的には彼女に見られず、活発な性格をしています。中学時代の筧には人間関係のトラブルはないですが、印象的なエピソードがあります。運動が苦手な筧は教師に、できないなりに頑張っている自分の体育の評価を上げるよう談判しています。これは上を目指す CP(向上心・リーダーシップ)の高さか、 AC(従属的)の低さの可能性を取ります。気は強い方ですが友人とトラブルが起こってはいないため、極端な人格とは言えません。・高校時代筧は偏差値が非常に高い、公立の進学校に入学しています。この高校の現在の偏差値は 70で、東大に進学する生徒も出しています。ここでも周囲の筧に対する印象は『頭が良い』というものです。 A(計算高い)ばかり突出していたら冷たい印象を与えたりするものですが、筧は『穏やか』『笑顔』といった印象も残しています。ややネガティブな印象としては『目立たない』というものですが、このあたりは中学時代の運動ができない事と合わせて、 FC(活発)がさほど高くなかった可能性があります。しかし問題になるほど低いという事もなく、通常の範囲内に収まっていたと思われます。部活は手芸部で、この部を人格の要素に当てはめると N P(優しい母性)になります。つまり高校時代の筧には、 NP(共感力・面倒見のよさ)の要素がチラりと垣間見えたことになります。高校でも人間的トラブルはなく、無理して勉強をしている風でもないので、頭の良さはスパルタではなく遺伝的な A(論理性)の高さと見ます。他の犯罪者たちの幼少期と比べて、筧は両親がそろった堅実な家庭で育ったことを伺わせます。・高校卒業後第四章『経歴によって人を見抜く』で、学歴と職歴は流れで見ることをご説明しました。この流れが急角度で変化した箇所を、矛盾点としてピックアップします。矛盾点には挫折が埋まっている事が多く、乗り越えられなかった挫折は長い年月をかけて人格を歪めていくものです。筧は高校を卒業後に都市銀行に就職していますが、進学校から就職というのは経歴の流れがブツ切りにされたような違和感があります。筧は頭の良さから教師に進学を勧められ、本人もその気のようでしたが親に反対されて進学を諦めています。
これは親が意地悪なのではなく、終戦から 20年くらいしか経っていなかった当時は、大卒女性に相応しい職場があまりなかったという時代背景があります。それに男性は女性に頼りにされることで承認欲求が満たされるので、自分より高学歴の女性にはコンプレックスを抱きます。結婚が当たり前の当時、親は彼女の幸福を考えて進学を勧めなかったのではないでしょうか。その事を筧がどう思ったか不明ですが、同時代の女性たちの中には『女に高等教育は不要』という風潮に憤りを覚えて、生涯にわたって怒りを原動力に活動する者も出ました。進学を諦めた筧は高卒で都市銀行に就職し、窓口業務を担当しています。ここでも筧は上司から評価されていますが、本人は進学に未練が残っていました。人は性別など自分ではどうにもならない事で制限されると、挑戦して挫折するのと違って長く不満がくすぶるものです。人生で何かにつまづく度に「あの時、大学に行っていれば・・・!」という思いがよぎり、過去を恨みます。筧が進学に反対された事と、自分が養子である事を結び付けて考えたかは不明です。筧が犯罪に走ったのは進学できなかった事が原因とは断定しませんが、経歴の中に矛盾点として存在しているのは確かです。・筧の結婚銀行に勤めてから 4年後、筧は同僚と旅行に行った際に知り合った男性と結婚しました。給料が高いわけではない運送会社の男性と、ナンパのようなキッカケで結婚する事に筧らしからぬ F C(衝動的)を感じます。この時の筧の FCは、 22 ~ 3歳という若さゆえの一時的な高さかもしれませんが、彼女の A(計算高さ)で考えたら、見合いか紹介により年収で吟味した男性と結婚する方が腑に落ちます。しかも筧の結婚は、双方の親の反対を押し切ってのものでした。この行動が進学を反対された不満からか、筧の自我が確立されたからかはわかりません。親への反抗であれば F C(わがまま)の高さ、意志の強さであれば C P(頑固)が高い可能性をとります。あるいは A C(従順)の低さの可能性もありますが、いずれにせよこれまでの筧の人格からすると矛盾を感じる結婚です。これは新たな矛盾点の発生というより、就職した時の矛盾と地続きでつながっているように思います。・結婚生活筧は夫の実家がある、大阪府の農業地域に引っ越しました。大阪府は全体が都会なわけではなく、東京都に奥多摩があるように、筧の嫁ぎ先は緑豊かな場所でした。
北九州の工業地帯で育った筧からすると、大きな環境の変化です。夫の親類には本家・分家の価値観が残っていて、筧は分家の嫁という扱いを不満に感じています。しかし筧は我慢するのではなく、本家の悪口を言って対抗したので親類との関係は良くありませんでした。そんな中で彼女は夫の実家の農業を手伝いつつ、子供を産んでいます。筧の夫は本家の親族の運送会社で働いていましたが、給料が安かったため辞めて衣類のプリント会社を起業します。夫の退職に筧がどれほど関わっていたかは不明ですが、口を出していてもおかしくはありません。後に筧が殺人に使った青酸化合物は、真偽が不確かなものの、この会社でミスプリントを消すために業者から手に入れた物と言っています。プリント事業は中国の工場に押されて苦しく、筧の実家や夫の親族から運転資金を借りて何とか続けていました。気の強い筧が仲の悪い夫の親族から金を借りる事は屈辱で、大金を稼いで見返したいという強い思いを抱き始めました。・投資の失敗と夫の死筧は大金を得ようと先物取引などに手を出し、損をして逆に借金を増やしています。そんな中で夫は 54歳で死去し、筧は保険金を受け取ります。この時は青酸化合物を使用した可能性は低いですが、夫の死でお金が入るという報酬関係を覚えた節はあります。保険金はそれまでの借金の返済に充てられ、 47歳の筧は夫の会社を受け継いで事業を続けました。しかし事業も投資も上手くいかず、廃業して土地・建物は競売にかけられてしまい、筧は夫の実家から転居しました。・なぜ事業も投資も失敗したのか?現代社会では偏差値が高ければ成功すると思われがちですが、これは正しくありません。自己判断を要する事業や投資では、人格のバランスが必要です。 A(学業)が非常に高く、次に C P(決断)が見え隠れする彼女は、盾を持たない槍兵のように攻め一辺倒で守りがありません。それに運送会社を辞めて、門外漢の分野で独立した夫のせいとはいえ、お金に困ると人間の思考力は落ちるものです。彼女が選んだ投資はギャンブル性が高く、 100万円の種銭で 1千万円の取引ができる、信用取引が多く見られます。信用取引は大きく儲かる反面、少し逆方向に値が動くと種銭をすべて失う、山師(ギャンブル好き)が好む投資です。このあたりの攻めの姿勢は夫の親類に分家の嫁扱いされた時、反発した激しい気性に通じるものがあります。それに彼女が Aが高くて情報収集と分析が得意だったとしても、投資会社が得ている情報とはレベルが違い、情報戦では勝負になりません。個人は一時的に数百万円を儲けることができても、潮目が変わって勝ちパターンが通用しなくなったと気付いた時には、儲けた額の倍くらい損をしているものです。
彼女は論理性が高いものの、株をやるには好戦的過ぎました。個人投資家はひたすら臆病に破綻を避けて、長期的に数%の利回りを得るくらいが現実的です。そういった A C(慎重・臆病)さは、彼女には見られない要素です。・結婚相談所に登録夫や資産など色々と失った筧は、 50代で結婚相談所に登録しています。この時の自己紹介のアンケートで彼女は自分のことを『そんなに負けず嫌いではない』『芯はそう強くはない』など、それまでの半生とは真逆の回答をしています。自分のことを寛容で優しく、思いやりがあって尽くすタイプと紹介しています。人を判断するのに、本人が語る自己紹介ほど信用ならないものはありません。とっさの言葉や使用する単語に人格が垣間見える事もありますが、作り上げられた言葉には何の意味もありません。言葉を読むのに意味があるとすれば、人格と矛盾する美辞麗句を並べる人間が、不純な動機を持っていると判断できることくらいです。一般的にペテン師の口数が多いのは、ムラのある自分の半生を覆い隠すために自然と口数が多くなってしまうからです。それにしても青酸カプセルで男を殺す筧が、自己 PRに『健康管理は妻のつとめ』と宣言しているのは、笑えないブラックジョークです。彼女は A(客観性)の高さにより、男が欲するのは NP(優しい母性)が豊富な保母さんタイプであると分析して、そのキャラクターを作り上げました。・結婚相手の条件筧は自己紹介ではほんわかとした NP(甘い)を演出していますが、相手に求める希望年収は 1千万円と強気です。勢いで決めた最初の結婚より、こういう明確な数字を求める方が彼女の人格と矛盾しません。そして実際に彼女は年収 1千万円に匹敵するか、それ以上の資産を持つ男性しか相手にしていません。目標を立ててその通りに達成するのは、 CPが高い事を示しています。この CPは社会人が出世をするのに必要な、基本的な要素です。彼女は攻守のすべてを一人でやる自営では上手くいきませんでしたが、もし企業に勤めて弱点の守りの部分をフォローしてもらっていれば、優秀なプレイヤーになれた可能性があります。会社の営業社員ならクロージングまでしっかりやっていたであろう筧は、男性と親密な関係になると、すぐに遺産相続に関する公正証書を書かせています。・なぜ四回も結婚できたのか?
彼女は四回も結婚していますが、男性はこの回数を不審に思わなかったのでしょうか?実は筧は何度も転居していて、その時にもし戸籍を移動させていたら結婚歴を残さない選択が可能です。彼女には男性が不審に思う個所を先読みする能力があり、制度を組み合わせる論理性もあるので、結婚歴を消した可能性はあります。あるいは男性に戸籍を見せないような流れを作ることもできたでしょう。筧は一連の犯行に慣れてくると、結婚しなくても契約で遺産を受けとれる方法をおぼえたので、結婚歴 4回に対して彼女の周りで不審死をした男性は 11人にのぼりました。・殺人が露見しなかった理由被害者が高齢であった上、病院につきそう筧が長年連れ添った妻の顔をして、元々の体調の悪さを説明をしたため医師も騙されました。ある時は男性が倒れた状況を『書斎でパソコンをやってて、頭がフラフラする言うてこけた』と説明しています。頭を使う作業をしていて、脳に血流が増えて卒中でも起こしたかのようなストーリーです。医師もまさかおばあちゃんが殺して、理路整然としたウソをつけるとは思わなかったでしょう。・逆に騙される筧男性から遺産を巻き上げる時には知恵が回る筧ですが、投資に関しては途端に愚かな判断が目立ちます。例えばある詐欺的な行為をしていた投資会社が倒産しましたが、筧はこの会社に 3億円をつっこみ全て失っていました。他の投資も軒並み上手くいかず、 8億円以上の遺産を手に入れながら逮捕時には借金が 1千万円以上ある状態でした。投資はノーベル賞を取った経済学者の作った会社でさえ破綻するので、 A(論理性)の高さだけでは勝てません。個人であればなおさら臆病さが必要ですが、筧は全てにおいて好戦的過ぎました。・犬好き筧は長年、犬を飼っています。犬好きというと N P(慈愛)の要素が連想されやすいですが、ペットという要素には C P(支配)や、メンヘラ(精神が病んだ人)の執着対象という側面もあります。彼女の場合、人間関係が良好だったのは高校や勤め先の都市銀行など、同程度の A(論理性)の人々の中にいた時です。そこから外れて結婚をした後は人間関係の不和が目立つので、筧は犬好きといっても NP(共感性)が高いとは評価できません。・逮捕後の筧逮捕後に筧は、大学進学への未練を口にしています。
大学で価値観を共有できる同程度の A(論理性)の人々に囲まれ、そこで A以外の要素も兼ね備えた人から影響を受けていたら、彼女の人格も発達してバランスが良くなったかもしれません。そして彼女の闘争心を生かせる職場に入れた可能性もあります。『もし』を言ったらキリがないですが、彼女の A(論理性)の高さが犯罪に使われたために、多くの犠牲者が出てしまいました。・被害を防ぐ危険な人物を避けるには、人格と矛盾する言動・行動に注意します。歳を取って他人と波長を合わせることが難しくなった状態で、結婚して他人の家で暮らそうとするのは矛盾した行動ではないでしょうか。筧のように論理性が高い人間は矛盾を覆い隠す術に長けているので、高齢になった男性が身を守るとしたら、孤独を受け入れて一人で生きていくことではないでしょうか?・事件の人間学を興味深く感じた方へ事件の人間学の特別編として、安倍元総理を銃撃した犯人を扱った書籍を書きました。本人の人格だけでなく、人がカルト宗教やオカルトに惹かれる理由なども解説しています。事件の人間学[特別編]安倍元総理銃撃事件
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