MENU

36  苦難が楽しみとなる

36苦難が楽しみとなる経営とは一種の総合芸術である。白紙の上に価値を創造する仕事である。その道のりにおいて苦難、苦悩が待ち受けている。しかし経営者たるものは、その苦しさを味わい、それ自体が楽しみとなるようでなければいけない。松下  経営者というものは、私は、広い意味で芸術家やと思うんです。というのは、経営というものは一種の総合芸術やと思うから。一枚の白紙に絵を描く、そのできばえいかんで、いい芸術家と評価され永遠に残る。要するに、白紙の上に価値を創造するわけですわな。これ、経営と同じです。  むしろ、われわれ経営者というものは、白紙の上に平面的に価値を創造するだけやない。立体というか、四方八方に広がる広い芸術をめざしている。だから、生きた芸術、総合的な生きた芸術が経営だと、そういう観点で経営を見なければならんというのが、私のとらえ方です。  そういう目で見ると、経営というのはすばらしいもので、経営者というものはたいへんな仕事をする人なんです。ところが、なかなか世の中はそう評価してくれませんけどな。(笑)  単なる金儲けとか、合理的な経営をするとか、そんな目からだけ見たらいかん。結局、人生とは何か、人間とは何かというところから出発しなければいけない。  それは、人前では、「商売人です、毎度ありがとうございます」と言うているけれども、内心では、すこぶる高く自分で自分を評価しているんです。総合芸術家なんだと。だから、その評価に値するだけの苦心なり、悩みがある。これが経営者というものの本来の姿ですわ。  そういう誇りと、その誇りに伴うさまざまな苦難というか、苦悩というものは、〝味わい〟をもっている。そう考えることができないで、苦労がいやだというのなら、最初から経営者にならんほうがいい。こう言いたいな、ほんとうのところ……。  作品ができた、仕事が進んだというときの喜びを味わう。苦しさを味わい、喜びを味わう。それによって自分というものを考える。それがないような人は経営者になれない。なっても失敗する。こういうふうに思うな。長い経験の中で、辞めたいと思ったことはあるけれど、それだけだったらほんとうにしまいだからね。やっぱり、そのときに意識転換をやらんとね。行きづまりになる寸前に、百八十度転換して苦しみを楽しみに変えるということをやらないといかん。  常に死を覚悟して、しかも自殺もせずに方向転換する離れ業を、心に描ける人でなければいかんですな。楽なもんやない。空中ブランコみたいな仕事ですな。そういう苦しさを味わえるということが楽しみだと。そういうことでしょうな、経営者というものは。のんびりしている人は、まだほんとうの芸術家になっていない。駄作をつくっているんです。〔一九七六〕

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次