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29  人間は尊いものである

29人間は尊いものであるやはり人間が第一である。人間のために組織がある。組織のために人間があるのではない。それに徹しないから、間違いを起こしてしまう。 ――組織を強くしようと思えば個人にある程度犠牲をしいることになり、逆に個人を生かそうとすれば組織の結束力は弱まるように思います。強い会社にするためには、個人と組織のどちらに比重をおけばよいのでしょうか。松下  それはもういうまでもなく人間が第一だと思います。人間のために組織があるんですからね。人間が軽視されるような組織はいけませんね。そう思います。原則はそういうように考えて、ものを判断しなければいかんと思いますね。  人間は常に主座に立っていないといけません。人間が主座からはずれるような、いっさいのものの考え方は邪道です。人間がいちばん中心である、いっさいのものの考えはそうですね。そうしたら案外、筋道が立ってくると私は思うんです。しかし、知識にとらわれてものを考えると、人間が主座からはずれるんですね。悪意をもってはずすわけやないけれど、ついそうなってくるんです。  だから私は、人間が主座であり尊いものであるという人間宣言でもやらないといかんかと思うているんですよ。人権の宣言よりも人間宣言というものが必要やないかと思うんです。  ところがこの二千年来、人間観というものは変わってないんです。いろんな思想が出てきたりしています。宗教もたくさんできてきていますけれど、実際のところは旧来の人間観そのままですわ。そこに私は、どんな思想が出てきてもうまくいかない原因があると思う。人間観を変えずしてどんなものをもってきてもダメだと思うんですね。だから旧来の人間観を変えなくちゃならないと思うんです。  いまのご質問に端的にお答えすると、何といっても人ですからな、経営は。「まあまあ」などと言っていられない。いかなることがあっても人間は主座に立たないといかん。それを哲理にしないといかんという感じがしますな。  そうすればある程度うまくいくんやないかと思いますけどね。それはみんなそう思うているんです。もう分かっていると、思うてはいるけどね、徹してないから間違ってくるんです、人間主座に徹してないから。そういうような感じがしますね。〔一九七一〕

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