社長のなかには「うちは中小企業だから社員を教育する余裕がない」と平気でいってのける人がいますが、どういう思いでそういうのでしょうか? 残念ながら、中小企業には際立って優れた人材は集まりません。むしろ「普通の人材」をいかに戦力化して生かすかが重要課題となります。そのためには、社員教育にお金と時間をかける必要があります。 もちろん、それほど大きなお金はかけられないでしょう。「お金をかける」とは、必ずしも資金を出して社外の研修に行かせるという意味だけではなく、社内で教育する手間と時間をかけるということです。 東京で食品製造業を経営している T社長は、若い人を中心に採用し、徹底的に教育して戦力化することに成功しています。 OJT(実際の仕事を通じての教育)の徹底を軸に社員教育の仕組みをつくっています。 少しその仕組みを紹介しましょう。 同社の社員の多くは、飲食店をまわる営業活動が主な仕事です。先輩社員は後輩を 1年間指導することが義務と課せられています。後輩を営業に同行させ、あいさつの仕方から商談まで営業のイロハを教えるもので、この仕組みは先輩にとっても気が抜けないのです。 1つは、人事評価の項目に「後輩をしっかりと指導したかどうか」という項目があるからです。それに、いくら先輩社員といえども、いつも営業が成功するとは限りません。取引先を怒らせてしまうといった失敗を後輩に見られてしまう可能性もあるのです。 一方、後輩社員は、毎日「研修日誌」にその日の研修で気づいたことや今後の目標などを記載し、先輩に提出しなければなりません。これに先輩が指導コメントを記入し、社長に提出します。毎日のことなので、しだいに書くことがなくなってしまうのですが、必ずびっしりと書くことを要求されています。 また、時には社長や役員が講師となって、営業ノウハウや商品知識に関する研修も行っていますし、外部の講師も招聘して、営業や自己啓発の研修を実施することもあります。 このように、社員の教育のために多大な手間とコストをかけているのです。同社の社員は、新入社員の時から OJTによって、短期間で戦力に育っています。教える立場の先輩社員たちも、しっかり後輩を指導することで、自らのスキルを高めることにつながっています。 たしかに資金も時間も余裕がない中小企業が、社員教育をするのはたいへんです。すべての社員は「日常の業務をこなすことで手一杯」という意識が強く、「とても後輩の教育などできない」と思い込んでいるものです。 しかし、活躍できない社員を抱えて商品やサービスを売っていくよりも、社員教育に注力して早期戦力化を図るほうが、中長期的に儲かる会社になれるのです。貢献できる社員や組織を育てるために時間と手間をかけることは、将来の利益が期待できる投資でもあるのです。 社員教育を効果的に実施するには、まずは社長自身が社員教育の重要性を強く認識することが第一です。そのうえで、全社員に後輩の社員を指導することや研修に積極的に取り組む意識を繰り返し伝えていきます。とくに、社長が率先して教育係を務めることが有効です。社長が実務面のノウハウやスキル、あるいは経営上の目標などについて自分の言葉で情熱的に教えると、未熟な社員たちも何かを感じるものです。 また、いくら社員教育を行ったつもりでも、社員は簡単には育たないのが普通です。でも、あきらめてはいけません。毎日継続的に繰り返し、しつこいほどに教え込んでいって、数カ月から数年経ってようやく効果が表れると思ってください。 前述の T社長は、営業のノウハウをまとめた小冊子をつくり、それを使って週に 3回、勉強会を実施しています。勉強会の内容は 2カ月で 1周してしまうのですが、同じ内容を繰り返すごとに新しい情報を取り入れながら勉強することにより、社員たちが徐々にノウハウを蓄積できるという効果があります。 あなたの会社でも、将来の利益増加を目標とするなら、ぜひ直ちに OJTをはじめとした社員教育に真剣に取り組んでください。 24/儲かる社長は、将来のための投資と考え、社員教育に手間とコストをかけている!
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