鬼 100則 17成功体験はいずれ足枷になる 塩野七生著『再び男たちへ』(文藝春秋)には、次のような歴史の教訓が書かれている。 「盛者必衰がなぜ歴史の理になるのか。興隆の要因であったのと同じものが、ある時期を境にして衰退の要因に変わる。競争の次元が変化したことによってそれまでの成功の要因であったもののほとんど全てが、否定的な足枷に変わってしまう」 これまでの成功要因が否定的な足枷に変わってしまった結果、盛者が衰退していった事例は枚挙に暇がない。 駅前留学で有名な NOVAは、割賦販売での前金収入により、多額の回転差資金を手にした。しかし、その魔力に魅入られて次々と投資を行い、破綻の道を進むことになった。 三陽商会は、バーバリーという超有名ブランドの力で大成功を収めた。しかし、いずれブランド契約の期限切れが来ることをわかっていながら、ブランドとの何十年間の関わりの中で構築されてしまった世界から脱却できず、窮地に陥った。 私の場合、〝兆し〟を捉えて、それまでの成功要因を次々と捨てたおかげで、〝衰退の道〟を歩まずに済んだ。 最盛期のマツヤデンキ躍進の要因は大型店舗規制法案に守られたことにあった。 500 ㎡以上の店舗が出せないときに小型店で全国展開を行い、大成功を収めたのだ。 しかし、大型店舗規制法案という岩盤規制が崩れる〝兆し〟があったのだ。それをいち早く捉えていた私は、行動を開始していた。我が社はフランチャイジーとしてマツヤデンキに参画しており、 96社の中で売上 1位であったが、その座を捨て、北関東で Y社、 K社の安売りの逆風を受けていたカトーデンキ販売株式会社と提携して大型化の道を歩んだ。 その後、アメリカからの外圧により、大型店開設が認められるという大変革が起きた。すると、数年で全国に大型店が乱立。小型店展開での大成功要因に呪縛されたままのマツヤデンキに危機感はなく、外的要因の大変革に合わせた身を切る改革に舵を切れなかった。 結果、 1000億円の売上を達成し、 400店舗を擁した一部上場企業のマツヤデンキは、市場から消えた。 成功体験に酔うことなく、常に次のステージでのチャレンジを繰り返すのだ。いつでも今は途中形なのだから。
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