12はたを困らせない自分が経営者として適格かどうか、商売人としてどうか、いつも自問自答をする必要がある。そして、儲けることができない、いわば不適格者になったときこそが退くときである。 ――懸命に努力しているのですが、なかなか成果に結びついてこないのが実情です。そこで単刀直入に伺います。どうすれば儲かるのでしょうか。松下 これはもう非常に肝要な質問ですな。何だかんだと言っても結論はここに落ちつかないとウソですな。(笑)しかし、金儲けの道は非常にむずかしいようだけれども、私はまた一面に非常に簡単やと思うんです。 それは儲けることですね。損しないことですよ。そんなこと分かってるやないかと、(笑)おっしゃいますけれど、実際は儲けようとして損をしている方が非常に多いのです。ああいうやり方をしたら損するよりほかしかたないと思うことを、一所懸命儲けようと思ってやっているということです。 だから静かに考えて、ほんとうに儲かるか儲からないかということをお考えになって、そしてこういうことが儲かるとなれば、それを強く堅持していくことではないかという感じがいたします。 これは非常にいいご質問でありますけども、妙味ある答えというものはむずかしいんです。これは皆さんみずから解答をみつけるよりしかたがないと思いますが、私はやはり適正利潤というものは商売人の義務であると考えています。 つまり商売人が適正利潤をもらうのは国家に対する義務の遂行であるということを最近言っているんです。だから、少々大きな工場であれば、天下の土地を使い、天下の人を使い、天下の金を使ってそして利益を生み出さないということは、世間に申しわけないことだと言っています。どうすれば利益があがるかということを真剣に考えれば、道ができてくるんやないかという話をしているんです。 皆さんは小規模でやっておられますから、あるいはそういうことをお考えにならない場合が多いかもしれませんが、小規模でも大規模でも義務は一緒やと思うんです。 こういうことを申しあげると、はなはだ無礼になりますけれども、皆さんが儲けられないということは儲けることに不適格者であると。(笑)そりゃできませんわな、不適格者では。歌うたいの適格者は歌を歌わないといけないのであって、商売人はやはり儲けることの適格者やないといけないですね。不適格者が商売をすれば失敗します。 だから、自分が商売の適格者であるかどうかということをみずから検討する必要があると私はいつも思っています。まだ私は松下電器の経営をしていますが、松下電器の経営者として適格者であるかどうかをいつも自問自答しているんです。 まだ適格者であると思っているあいだは、私は会長を続けます。しかし、不適格者になったな、もうその才能が乏しくなったなと思ったら、ただちに退陣しようと思っているんです。それが、私は尊い義務の遂行だと思うんですね。より出処進退を明らかにし、退くべきときに退くということです。 自分が適性を失ったら、その場から退くということが大事です。こういうことを言うと、けしからんとおっしゃるかもしれませんが、商売人の適格性のない人が商売をすれば失敗しますよ。それは自分が困るのではなく、はたが困りますわ。 皆さんは、自分は商売人としての適格者であるかどうかを常にお考えになっているかどうか。儲からないと言う前に、自分は適格者かどうかをお考えになることが大切です。そうして適格者であれば儲かるはずだということです。それでひとつご勘弁願いたいと思います。〔一九六四〕
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