これから先も、「未曽有の危機」は再び訪れる可能性が高い。それに備えて会社のトップが、今からやるべき心構えとは何か。 「できることはすべてやれ、そして最善を尽くせ」 私がいま経営者の方によく話しているのは、カーネル・サンダースのこの言葉です。 ケンタッキー・フライド・チキンの創業者として皆さんもよくご存じのカーネル・サンダースですが、その人生は波乱に満ちていたようです。 経営していたレストランがつぶれ、その店で人気のあったフライド・チキンのつくり方を自分の強みとしてフランチャイズビジネスを始めたのは、 65歳のときでした。 けっしてあきらめない性格の彼は、断られても断られてもひるむことなくコツコツと営業し続け、 73歳のときには全米で 600店という一大ファストフードチェーンにまで成長させ、さらに世界中へとその販路を広げていきました。 そのカーネル・サンダースが、自分には2つのルールがあっただけだと言っています。「できることはすべてやれ、そして最善を尽くせ。それが、何かを達成する感覚をつかむ唯一の方法だ」 厳しい現実に挫け、あきらめてしまったら、その先はないのです。「まだ何かできることがあるのではないか?」「やれていないことがないか?」「本当に最善を尽くしているだろうか?」 常に自問自答しながら、あきらめずに踏み込んでいく心意気を持つことが必要です。 コロナ禍は「徹底すること」を習慣づける好機 何かで成功されている方を見ると、いずれもこの「あきらめない」姿勢を持っています。別の言葉で言えば、「徹底的にやる」精神を持っているのです。 経営者の場合は、自分が徹底してやるだけでは成功できるとは言えません。自分の率いる会社に「徹底」の社風を浸透させ、社員が「徹底してやる」ことができるようにならなければ、ビジネスにおいて本当の成功はできません。「徹底」というのは、経営における大切なキーワードの一つです。 一朝一夕ではできませんが、徹底の社風をつくっていくことが大事です。 徹底を教えるには、順境のときよりも、むしろ逆境にあるときのほうがいいのです。危機のときは、徹底してやるということがより浸透しやすいのです。 例えば、いまは衛生管理を徹底させやすい環境にあります。ウイルスに対する危機感が強いだけに、「きちんと手洗いをしよう」「マスクを着けよう」あるいは「ソーシャルディスタンスを保とう」ということを周知徹底させやすい。 仕事に対する姿勢も、危機のときに「徹底してやろう」「できることはすべてやれ」「やるからには最善を尽くせ」という姿勢を根づかせる格好のタイミングだと思います。そのためには、普段から、コミュニケーションの「意味」と「意識」のうちの「意識」の共有が大切です。コロナの時期ですが、メールだけでなく、「話す」ことも必要です。 危機は必ず訪れる。だからこそ、今から備えよ 2008年にリーマン・ショックが起きたとき、「 100年に 1回の大不況だ」と言われました。 2011年に東日本大震災が起きたときには、「 1000年に 1回の大災害だ」といわれました。 100年に 1回、 1000年に 1回ならば、そうそう遭遇しそうにないように思いますが、起きてしまうときは起きるわけです。 ですから、これから先の 10年も、いつ何が起きても不思議はありません。 何かは分かりませんが、危機は必ず訪れる。ずっと安泰であることなどないのです。 そして、危機のときこそ、普段の姿がありのままに出ます。 資金に余裕のない経営をしていれば、危機には資金繰りで首が回らなくなります。そうならないためには、「ダム経営」を心がけ、資金に余裕を持たせることです。
社長の決断に時間がかかる会社は、緊急時にもなかなか大事な決断ができず、会社の命運、社員の将来を脅かします。そうならないためには、普段から環境変化に目を配り、迅速な判断、即断即決の力をきたえておくことです。 危機ほど経営者の実力が出ますが、それは危機のときにだけ力が発揮できたりできなかったりするのではなく、普段の姿がはっきりと表に出るということなのです。 Point未曽有の危機ほど、普段の準備、「意識」の共有がものを言う。逆境の今こそ、徹底することを習慣づけるべし。
おわりに 本書を最後まで読んでくださり有難うございます。社長として何をすればいいかが、分かったことと思います。 本書の冒頭に、成功は「ワンパターン」だと書きました。その「ワンパターン」を理解していただけたと思います。あとは、それを実践でやり通すだけです。そして、その根幹は、結局は考え方です。「経営的」な成功する考え方を持てばいいのです。 その際には、本書の中でも説明した、・長期でものを考える・経営と執行の分離・経営人材の育成 ということを念頭に置きながら、経営という仕事である、・方向づけ・資源の最適配分・人を動かす の3つを行って欲しいのです。それぞれの考え方については、本文で詳しく説明しました。 あとは実践です。実際に経営を行っていく上では、多くの問題が出てくるかもしれませんが、繰り返し繰り返し、本書で説明した原理原則に立ち返り、反省する。 本書に書いた原理原則や考え方をベースに経営を行えば、きっとうまくいきます。それは、これまで私がアドバイスして成功した多くの社長が行ってきたことだからです。 もちろん、アドバイスした社長さんすべてがうまくいったなどとは言いません。しかし、多くの社長さんたちがうまくいっていることも確かです。成功の法則はワンパターンだと言いましたが、これは経験に基づいたものなのです。 一方、本書をお読みの方の中には、中堅・中小企業の経営者も多いと思いますが、「上場企業のように考える」ということもやってみてください。上場企業では、株主や証券取引等監視委員会、証券取引所など、さまざまな監視が利いています。もちろん、上場企業にも問題のあるところは少なくありませんが、少なくともある規模にまでなれた会社たちです。それにはその秘訣があるはずです。ですから、経営やガバナンスにおいての、その成功パターンをマネするのです。 例えば、取締役会を活性化する、優秀な社外役員を置くなどです。それらは、非上場の中小企業でも、組織を活性化する上でとても役立つものだと私は思っています。これまで上場企業の社外役員を 4社経験しましたが、企業発展に役立つこともたくさん知りました。 さらには、経営は「十種競技」だと私はいつも感じています。ある特定のことを詳しく知ることも大切ですが、経営者となると、マーケティング、戦略、会計、ヒューマン・リソース・マネジメント、法律、さらには、社会情勢の変化など、多くのことを知る必要があります。一つ一つは、専門家レベルまで知る必要はありませんが、それでも、専門家の言うことがある程度理解できることは重要です。 専門的なことは専門家に任せるにしても、最終的な戦略判断は経営者が行わなければならず、その責任も取らなければならないからです。そして正しい生き方を学ぶことも大切です。今後も、幅広い知識を得る努力をしてください。そのために必要なことは「関心」でしたね。 学ぶことや、実践、そして反省を習慣化できている人が成功します。ぜひとも良い習慣を身につけてください。 皆さんがそういう習慣を持てば、成功に近づくことは間違いありません。そして、皆さんのそのような背中を見て、経営人材も育つことと思います。 最後に、本書作成にあたり、PHP研究所の中村康教さんと宮脇崇広さん、阿部久美子さんにはとてもお世話になりました。彼らのおかげで本のレベルが格段に上がりました。この場を借りて心よりお礼申し上げます。 皆さんが経営者として、成功されることを心より祈っています。 2020年9月小宮一慶
〈著者略歴〉小宮一慶(こみや・かずよし)経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。 1957年、大阪府堺市生まれ。 1981年、京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。 1984年7月から 2年間、米国ダートマス大学経営大学院に留学。 MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムや M& Aに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の 1993年初夏には、カンボジア PKOに国際選挙監視員として参加。 1994年5月からは、日本福祉サービス(現セントケア)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。 1996年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。著書に、『社長の心得』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(ともにダイヤモンド社)、『図解「 ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「 PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(ともに PHP研究所)、『伸びる会社、沈む会社の見分け方』( PHPビジネス新書)など多数。
できる社長は、「これ」しかやらない伸びる会社をつくる「リーダーの条件」著 者:小宮一慶 © Kazuyoshi Komiyaこの電子書籍は『できる社長は、「これ」しかやらない』二〇二〇年十月十五日第一版第一刷発行を底本としています。電子書籍版発行者:清水卓智発行所:株式会社PHP研究所東京都江東区豊洲五丁目六番五二号 〒 135-8137 https:// www. php. co. jp/ digital/製作日:二〇二〇年九月二十三日本書の無断複写(コピー)は著作権法上での例外を除き、禁じられています。
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