3万人以上の社長に会ってその懐具合の実態を見てきた私が強く思うことは、儲かっている社長の多くは穏やかな人柄を感じさせるということです。 九州に高齢者介護関係の事業をして、規模を急速に拡大している社長がいました。その会社は、まだ業歴は浅く 5年程度でしたが、次々と施設を増設してそれがすべて順調にまわっていました。その社長は、私が勤めていた金融機関に、新たな施設を建築するために融資を申し込みしてきたのです。 ひょっとするとプライドの塊みたいな人で、偉ぶっていて話がしにくい人かもしれないと思っていました。 ところが、いざ会ってみると、とてもおとなしい感じの人で全く偉そうになどしていません。こちらの質問にもきわめて穏やかに紳士的に答えてくれました。 もっとも、事業内容の話になると、他社が真似できないノウハウを持っていて、「さすがに儲かっている社長は違う」と唸らせるほどの迫力がありました。 この社長のように、本当に儲かっている人ほど、一見すると「プライドを捨てたのでは」と思えるほど穏やかで気さくなのです。儲かっているという余裕があるから穏やかになれるのでしょうか、それとも逆にプライドを捨てているから儲かっているのでしょうか? 私はおそらく後者が正しいと思っています。なぜなら、プライドを捨てた時から儲かるようになった社長を見たからです。 大阪に 20代で住宅建築会社を創業した社長がいました。私が初めて会ったのは、この会社が融資を申し込みしてきた時で社長は 40歳でした。当時は赤字の連続で自転車操業の状態だったので、融資しても返済ができるかどうか疑問を感じるほどでした。 そんな状態でも、社長の印象は、自信満々でとてもプライドが高く虚勢を張っている感じだったのです。なんとか融資は OKになりましたが、私としては「もうあの人には会いたくない」と思ってしまいました。 それから 15年後、私は再びこの社長に会う羽目になりました。私が転勤で同じ大阪支店に舞い戻った時、融資の申し込みをしてきたのです。社長は 55歳になっていました。 私は社長の顔を見た瞬間、「あれ?なんだか前と雰囲気が違うな」と思いました。会って話をすると、以前とは全く異なりとても穏やかでにこやかな対応です。年齢を重ねたせいもあるかもしれませんが、それだけではないということがわかりました。経営状態が大幅に改善されており、高額の経常利益を上げていたのです。 社長の雰囲気が以前とあまりに違うので、私は思わず「社長、以前は短気な感じでしたが、ずいぶん雰囲気が変わりましたね。いったいどうしたのですか?」とかなり不躾な質問をしてしまいました。 それでも社長は怒ることなく、「下手なプライドを捨てたんですよ。若い時はプライドが高くて人に対していつもケンカ腰で話をしていたのですが、それではいい人脈ができず情報も入らないことに気がつきました」と話してくれました。 プライドを捨てた瞬間から多くの商機が舞い込んできて、会社が右肩上がりに転じたというウソのような話ですが事実なのです。 ただし、「プライド」を捨てたといっても以前より「自尊心や誇り」、つまり、自分自身と会社を誇りに思う気持ちはむしろ強まっているはずです。 自分に自信があって誇りに思っているからこそ、人から何をいわれても気にならず穏やかで余裕ある気持ちでいられるのです。「うぬぼれや高慢」という意味のプライドを捨てた瞬間から、真のプライドが保てて会社も儲かるということなのです。 プライドを捨てるといっても、いつも謙虚な態度でいればいいということではありません。ビジネスを成功させるためには、市場に存在感を示して競合に勝たなくてはいけません。そのために会社や経営者としての自尊心は高くし、商品やサービスで自己主張をしていくことが重要です。 中小企業の経営者は、たとえ小さい会社でも「一国一城の主である」という意識を持っています。そのため、つい偉ぶろうとしてしまう人が多いのですが、そのような表面的な虚栄心はむしろ会社の業績を悪化させてしまいます。 儲かる社長になりたいと思うなら下手なプライドなどはドブに捨ててしまいましょう。 07/儲かる社長は、下手なプライドではなく、真のプライドを身につけている!
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