05一流の社長は「怖いけど優しい」時にはピシャリと部下を叱れる「厳しいリーダー」であれ社長が「優しい」ことと、「甘い」ことは明確に異なります。ダメなことはダメと言える厳しさも、社長には必要です。 ダメなリーダーは、ダメなことを曖昧にする いまは、厳しすぎると人がついてこないとか、すぐに「パワハラだ」とか言われやすい時代ですが、組織を束ねるトップとして、厳しく言わなければいけないこと、厳しく接しなければいけないときというのがあります。 ダメなリーダーは、ダメなことを曖昧にします。 それは、厳しく言うことは、実は難しいからです。 社員の間での人気を気にし、「嫌われたくない」などと思ってしまう……。 しかし、そんな社長はダメ社長です。 組織は「 For the company」で動かさなければなりません。 方針違反など、会社のためにならないことに対しては、厳しく対応しなければなりません。 それが社長の務め、社長という機能なのです。 厳しくも温かかった松下幸之助さん 経営コンサルタントとして独立するときに、松下幸之助さんとドラッカーの本を徹底的に読んだと言いました。当時、すでに松下幸之助さんは亡くなられていましたから、「松下さんと一緒に仕事をしていたことのある方に話を聞きたい」と、松下電器の知り合いに頼んで紹介していただき、 OBの方にお話を伺う機会を得ました。 そのときに聞いたのが、松下さんは「怖いけど優しい人だった」という言葉でした。 怒るときには、烈火のごとく怒る人だったそうです。 ある部長さんが失敗をして、幸之助さんの執務室に呼ばれて激しく怒られ、その場で失神したそうです。すさまじい怒りだったのです。 しかし、その部長さんが執務室を出た後、幸之助さん自らその部長さんの自宅に電話をかけ、奥さんに「旦那はしょげて帰ってくるから、夕飯にお銚子の 2本や 3本をつけてあげるように」と話したのだそうです。ちゃんとフォローしていたのです。 めちゃくちゃ怖い人だったけれど、人間として優しい人でもあった。厳しさと優しさ、両方併せ持っていた方だったようです。・部下を叱るときは、全力で叱る・叱った後は、フォローを入れる・私心で叱ることは絶対にしない・基本的なことを外した場合は、厳しく叱る・大きな失敗のときは叱らず、むしろ励ましの言葉をかける 松下幸之助流の叱り方をまとめると、こんな感じだったといいます。 時代は変わっても、叱り方のポイントがまさに名経営者ならではです。 人を率いていくには、やはり人望と能力の両方が必要なのです。 経営者は「優しさ」と「甘さ」を混同してはいけない 組織の規律、秩序を導いていくのは社長の役割です。 もう二十数年前の話ですが、私がある中小企業を訪問していたときに、社長が自分の運転する車でこれから営業所に行く、という話をされていました。 そこにベテランの女性社員がダンボール箱を 1個持ってやってきて、「社長、営業所へ行くんだったら、ついでにこれ持っていってよ」と、まるで友だちにでも言うような口調で言ったのです。
それまで温和な表情だった社長は、「宅配便で送りなさい」とキッパリ言いました。一瞬、場は凍りましたが、私は、「良い社長だ。気持ちのいい態度だな」と感じました。 社長は、その女性社員が礼をもって頼んだのならその段ボールを一緒に車に乗せたでしょう。しかし、気心の知れたベテランでも、社長への口のきき方が問題なのです。そのけじめはつけないといけない。 これを許してしまったら、似たようなことがどんどん横行するようになります。 どんなにアットホームな雰囲気で仲良くやっている会社でも、「規律」や「秩序」は保たなければいけない。組織には規律や秩序がなければならないのです。 上司である、社長であるというのは、組織としての機能です。嫌われたとしても、役割、機能を果たさなくてはいけないときがあるわけです。規律を守らせるのも、社長の仕事です。 会社はリーダーで決まります。この会社は当時は小さな会社でしたが、いまでは東証一部上場企業です。そのオーナー経営者が一代で大きくしました。 あのときに、黙ってダンボールを運ぶような社長なら、会社をここまで大きくできなかったのではないか、と私は思っています。 それをやることは「優しさ」ではありません。「甘さ」です。組織の秩序、規律のために、線引きがきちんとできることが肝心なのです。 その社長は、経営が何であるのかをしっかり知っていたのです。 聞きすぎ上司は道を誤る「みんなの意見を聞いてやっていく」という民主主義的な社長もいますが、私はそれで良い判断ができるとはあまり思いません。 もちろん、聞く耳を持つことは大切なことです。衆知を集めるのです。ただし、意見を聞くのと、要望を聞くのは別です。「私はこっちに行きたい」「僕はあっちに行くべきだと思う」という要望を全部聞こうとしていたら、組織はもちません。それぞれの言っていることを全部聞けたとしても、その要望に応えることはできないわけです。社長が聞くと、その要望にこたえなければならなくなります。でも、皆の要望にすべて応えるなど、通常はできません。 だから、部下の話、とくに要望を聞きすぎるのは、良い上司とは言えないのです。会社に対する批判も同じです。聞いていたらきりがありません。そうではなく、ミッション、ビジョン、理念を求心力にする会社を作って、その話を皆でするのです。夢を語る場を持つのです。ただ、それが可能になるのは、社員が働きがいを感じている場合だけです。 ときには、降格人事を考えなくてはいけないときもあるでしょう。 降格されるなんて、誰でも嫌です。その決断をしなくてはならないほうにしても辛い。降格を喜んでしたいと思っている人はいないでしょう。 でも、会社のためになっていない、機能を果たしてない人を降格させることも、リーダーとしては必要なことです。 そういう意味では、必要とあらば降格人事もできる社長は、優れた社長だと思います。 Point「優しさ」と「甘さ」は違う。組織のためならば、降格人事も辞さない。
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