ディズニー・ミッション──すべてのゲストにハピネスを提供する
「ミッション」とは、その組織がめざすべき方向性のことです。
組織の存在意義といってもよいでしょう。
「自分たちの会社は、何のために存在しているのか」ということです。
ディズニーのミッションは「すべてのゲストにハピネスを提供する」ことです。
このディズニーのミッションは、正社員はもちろん、アルバイト1人ひとりにまで浸透しています。
それを物語るシーンをご紹介しましょう。
シーン1「ミッキーは、1人に決まってるじゃない!」アルバイトの女性キャストが、自宅にいたとき、母親にこう聞かれたそうです。
「ねえ、ミッキーは何人いるの?」ディズニーに勤めている娘なら裏事情にもくわしいはずと見込んでの質問でした。
女性キャストは、こう答えたといいます。
「何言ってるの、お母さん。
ミッキーは1人に決まってるじゃないの」もちろん、キャストに対する「バックステージの話を外部にもらさないように」というディズニーの教えもあったでしょう。
しかし、それよりも、彼女は、母親が、今度ディズニーランドを訪れたときに、ミッキーと出会ったときの幸福な気持ちを大切にしてあげたいと思ったのでした。
シーン2ミッションを自分なりに消化するレベルのアルバイトもいる優秀なキャストのなかには、ゲストに「何をしてるの?」と聞かれた場合、「いま、私がやってることですか?」と質問内容を繰り返して、自分が質問を正しく受け止めているかどうか確認した後、「答えになっているかどうかわかりませんけど。
みなさん、楽しい思い出をたくさんつくってらっしゃいますよね。
実は、私は、パークに落ちている思い出のかけら(=ゴミのこと)を拾ってるんですよ」と答えるキャストもいます。
つまり、「すべてのゲストにハピネスを提供する」というミッションをただ理解しているだけでなく、自分なりに消化して行動に移しているのです。
実は、ディズニーでは、このようなシーンに、それこそいたるところで出合うことができます。
というのも前述したように、ディズニーでは、すべてのスタッフの心にミッショ
ンが刻み込まれているからです。
御社に「ミッション」はあるか?
「あなたの会社のミッションは何ですか」と問うと、「ええ?あったかなあ」というような答えが返ってくるケースが少なくありません。
しかし、何も大上段に構える必要はありません。
たとえば、どこの会社にも、基本方針があるはずです。
「理念」あるいは「社是」「会社の使命」といった言葉で、会社のあるべき姿がうたわれているはずです。
これこそ、立派なミッションです。
ただ、ほとんどの会社で、立派な額におさめられているだけで、社員の心には刻まれずじまい、というのが実情ではないでしょうか。
社員に徹底されず、いつのまにか風化した、場合によっては、方向が変わってしまったというケースもあるようです。
また、ミッションは、会社組織全体だけでなく、さまざまなプロジェクトにおいても設ける必要があります。
たとえば、「なぜ、このプロジェクトを行うのか」、つまり、プロジェクトの存在意義を明確にしておくことが必要です。
たとえば、ただ単にバケツに「水を汲んできなさい」と命令されて水を汲んでくるケースと、「飲食用の水をプールする」というミッションが明確で、そのために「水を汲んできなさい」と説明されて水を汲んでくるケースを考えてみましょう。
前者の場合は、ただひたすら水を汲んでき続けるほかありません。
また、ミッションがはっきりしないと、社員個々が勝手に行動する、あるいは社員が仕事へのこだわりを発揮できないなど、さまざまな問題が生じます。
その結果、効率が悪い、生産性が低い、モラルを逸脱するといった会社の存亡を左右する事態に結びつくケースも少なくありません。
それに対してミッションがはっきりしている後者の場合は、はっきりと目的意識をもって、水を汲んでくることができます。
ゴミが入らないようにバケツにフタをするなど工夫をすることもできます。
モチベーションが高まり、効率も高まります。
もしミッションがない場合は、早急にミッションをつくる作業を始めるべきです。
すべての会社・組織に共通するミッション──人のためになる人材を育てる
ミッションをつくることに、上司・先輩がかかわるケースもあるでしょう。
そこで、ミッションについて、もう少し述べておきましょう。
ミッションをつくるとき、まず考えなければならないのは、自分たちは、どういうビジネスをやっていて、どういう人材を育てるかを明確にし、理解しておくことです。
そこで、まず自分たちの属する組織について考えてみましょう組織というとすぐに思い浮かぶのが、顧客であり、CSでしょう。
では、商品やサービスを買ってくれる顧客のために組織が存在するかというと、それだけではないはずです。
組織の存在は、取引先の人、社員、会社のある地域の住民のためでもあるはずです。
そう考えていくと、組織は「人」のために存在していることがわかります。
人のために組織が存在しているのであれば、当然、その組織に属する社員は、人のためになる存在でなければいけないはずです。
すなわち、「組織は人のために存在し、われわれは人のためになる存在でなければならない」ことは、すべての会社、組織に共通する基本的、かつ重要なミッションということです。
もちろん、上司・先輩には、そういう人材を育てることが求められます。
まずは、この考え方を「ミッション1」とし、自社のミッションづくりをスタートさせましょう。
上司・先輩は、ミッションをきっちり理解しておく
ミッションがあれば、それで十分かというと、そうではありません。
ミッションを後輩に伝える上司・先輩が、ミッションをしっかり理解しておく必要があります。
当たり前の話ですが、上司・先輩がミッションを理解していないと、後輩たちに正しく伝えることができません。
そうなると、ミッションはあってないようなものです。
上司・先輩の間違って伝えるミッションを、後輩たちは、そのまま身に付けることになり、本来のミッションとは異なる方向に、職場あるいは会社全体が動いていくことになります。
場合によっては、ミッションがないケースと同じように、後輩たちが、各自別々の方向に進んでしまい、職場のなかがバラバラになる、あるいは派閥ができて、職場の人間関係が著しく悪い方向に向かうことも十分考えられます。
その結果、会社の提供するサービスや商品などのクオリティが低下すれば、顧客離れが進むことになります。
会社が損失を被ることは、いうまでもないでしょう。
つまり、ミッションがあっても、それを伝える上司・先輩に問題があれば、ミッションは生きないのです。
ひいては、会社に不利益を与える可能性があります。
といって、すべての責任を上司・先輩に求めるのも考えものです。
やはり、まず経営者自身がミッションの大切さをしっかりと認識する必要があります。
そして、できれば、ミッションを全社員に浸透させるためのしくみをつくることがのぞまれます。
なぜディズニーでは、ミッションが社員全員に浸透しているのか
どうしてディズニーでは、正社員はもちろん、アルバイト1人ひとりにまでミッションが浸透しているのでしょうか。
それは、上司・先輩がミッションを理解していることはもちろん、さまざまな機会を通じて繰り返しミッションを伝えているからです。
まず、ディズニーの導入研修、さらに、その後に行われるどの研修プログラムにも、必ずミッションと行動指針が盛り込まれます。
さらに、キャスト間のコミュニケーションをはかるためのさまざまな媒体にも、ミッションと行動指針が頻繁に登場します。
たとえば、アルバイトにも配布する社内報があります。
その社内報にキャストの写真が掲載されていますが、全員「笑顔」です。
これは、ハピネスを提供するためには、笑顔が不可欠な要素であることを、暗黙のうちに伝えているのです。
ディズニーでは、ミッションや行動指針がキャストの日常のなかに組み込まれているといっても過言ではないでしょう。
その結果、いつしか自然にディズニー・ミッションが、すべてのキャストの心に確実に根づいていったのです。
ディズニーの例からもわかるように、後輩1人ひとりにミッションを根づかせるには、経営陣、上司・先輩自身が、常に自社、あるいは職場やプロジェクトのミッションを念頭に置き、もちろん正しく理解し、さまざまな機会をとらえて、繰り返し繰り返しねばり強く後輩に伝えていくことが不可欠です。
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