02「教える喜び」を感じないと後輩は育たない
熱意のある先輩が指導役に抜擢される
ディズニーでは、さまざまな研修が用意されています。
さらに、現場では新人キャストや後輩キャストにさまざまなトレーニングが日常的に行われています。
そんな教育シーンで大活躍するのが「トレーナー」と呼ばれるキャストたちです。
トレーナーは、職場の責任者に代わって、①仕事の手順や方法②仕事をより効率的に行うためのスキルなどのトレーニングを手がけます。
また、キャストに自信をもたせる役割も担っています。
トレーナーは、主にアルバイトから選ばれます。
各施設の責任者が、キャストたちのふだんの仕事ぶりを見ていて、「ほかのキャストに、いつもしっかり教えてあげているな、楽しそうだな」と思うキャストがいると、後日、そのキャストと面談をします。
そのとき、そのキャストに問いかけるのです。
「あなたは、人を育てることに喜びを感じますか」そして、「トレーナーをやってみませんか」と、本人がトレーナーになる意思があるかどうかを確認します。
「やってみたい」と本人が答えれば、トレーナー候補として、トレーナーになるための研修、トレーニングを受け、はじめて正式にトレーナーとしてデビューします。
このように、ディズニーでは、たとえば、アトラクションでナレーションが上手だから、トレーナーになるというわけではありません。
トレーナーになるいちばんの条件は、教えるのが上手であること、そして何よりも、人を教える、育てることに喜びを見出していること、人を教え育てることに情熱・熱意をもっていることです。
こういう条件を備えたキャストをトレーナーとして育てていきます。
ただ、トレーナーになったからといって、昇給に直接結びつくわけではありません。
つまり金銭的な対価はないのです。
トレーナーを示すピンバッチが配られるだけです。
それよりも、トレーナーたちは、「自分がトレーニングすることによって成長していく後輩の姿を見るのがうれしいんです」と言います。
お金とか地位うんぬんよりも、人を育てていくことに〝快感〟があり、やりがいがあるというのです。
また、私の所属していた運営部では、よく「トレーナー(先輩)は、親も同然」という言葉が飛び交っていました。
その言葉には、親のように愛情をもって、ときには叱りながら、ときにはほめながら、後輩を育て自立させようという意味が込められていました。
後輩を育てるときに欠かせない3つのポイントとは?
ディズニーのトレーナーについて前述しましたが、ディズニーでは、後輩を育てるにあたって、基本的に何が求められているのでしょうか。
そのポイントとして次の3つをあげることができます。
ポイント1教える内容・教え方(しくみ)が論理的であること私が、後輩教育の説明をするとき、よく引用させていただく話があります。
それは、次のような話ですたとえば、8枚の金貨があるとします。
そのうち1枚がニセ金貨で、ホンモノよりも少し軽いという特徴があります。
さて、天秤を使って、8枚の金貨からホンモノを取り出すとすると、最低何回、天秤を使えばいいでしょうか。
つまり、最も効率よくニセ金貨を取り出すには、何回天秤を使えばよいかと問うているわけです。
答えは、2回です。
1回目は、3枚・3枚を天秤にかけます。
釣り合えば、ニセ金貨は残りの2枚にあることになります。
その2枚を天秤ではかって軽いほうがニセ金貨ということになります。
3枚・3枚で釣り合わなければ、軽いほうの3枚のうちにニセ金貨があることになります。
そこで、この3枚のうち2枚を天秤にかけます。
そして釣り合えば、ニセ金貨は1枚なので、残りの1枚ということになります。
釣り合わなければ、当然軽いほうがニセ金貨というわけです。
「論理的」とは、この例のように、最も効率がよいものを導き出す考え方であり、トレーニングに要する人件費を抑えるねらいがあります。
また、上司や先輩に教えられたことに従って行動したところ、ムダがあちこちに出たということになれば、後輩に不信感を与えかねません。
もちろん、会社にとっても損失を被ることになってしまうでしょう。
ポイント2心理的な工夫が施されていること後輩に何かを教えるときには、ホスピタリティ・マインドを発揮し、教えられる側の後輩の身になって、後輩に過度な負担を強いることのないよう工夫することが必要です。
たとえば、入社したばかりの後輩には、基本的なことにポイントを絞り、シンプルな教え方を心がけるべきです。
教育プログラムやマニュアルをつくる際にも、このように人の心理を配慮し、かつ上手に活用すれば、後輩も頭のなかで整理しやすく、理解も深まります。
ポイント3上司・先輩が教えることに熱意をもっていることどんなにマニュアルや教育プログラムがすぐれていても、教える側に熱意がなければ、相手の心に響きません。
ただ、ディズニーのように会社に教育担当者を決めるしくみがあれば問題ないかもしれませんが、上司・先輩という理由だけで、後輩教育を担当している場合には、いやいや後輩教育をせざるを得ないこともあるでしょう。
しかし、後輩をほんとうに育てたいと思うなら、情熱・熱意をもって教育にあたらなければなりません。
しっかりと自覚することが大切です。
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