価格がいかに我が社の思い通りに通せるか、我が社の希望価格をいかに崩さずに押し通せ
るか、これが経営として、儲かるか儲からないかの分岐点になっている。
おのが欲する価格をいかに通すか否かは、流通業者、消費者を含めて、その商品に商品力
があるかないかという問題である。
商品力の分析をアト回しにしてセールスマンの基本動作の徹底にばかり力を入れているの
も良くない。成熟社会の時代には、よく動き回ることが良いことであるとはいえない。要は、
価格維持力であり、商品力が基本である。
価格維持力を保つという場合に大きな力を持つものにブランドがある。ブランドは、大衆
品などの消費財に用いられるが、生産財としての素材にもいえるのである。ブランドなど考
えたことのない業界でも、 一度、我が社の商品に固有なブランドが付けられないかどうかと
いうことを追求してみるべきであり、ブランドの付けられないような商品からは、なるべく
遠ざかるべきだ。
〈実例〉
名古屋に木材貿易商社のF社がある。昭和四九年木材不況に襲われたとき、会社の立て直
しのポイントをブランドにおいた。
同社は、ラワン材の輸入を行なっていたが、この買い付けは一船単位で、現地での仕入れ
から販売まで一切、一〜二名の少人数で担当している。 一船二億円という大きい単位だけに、
市況の高騰、下落の波をかぶると損益は大きい。 一カ月の間に高利を得ると思えば、また、
逆ざやに泣くということもしばしばだつた。
オイルショックでくるべきものがきた感じだったので、思い切った戦略の転換に迫られた。
ラワン材の素材などには、ブランドは付けようもない。資金繰り的には非常に困ったが、思
い切ってラワン材から撤退して、基本的に「トン」で仕入れて「トン」で売るやり方から、 一本
一本売る方向に替えた。
インドやアフリカなどの銘木に絞らせた。そして自社の刻印をつけるには「ブランド指向」
を頭に入れて厳しい日頃の選木眼を生かして実施した。幅・太さ。割れ。キズ・素材・形状
などの「木成り」の良いものをしっかり選木し一本一本大切に仕入れ、オンデッキで日本ヘ
送った。
生産財にブランド付発想しても売れるわけがないと、社内外の声もあったが、結果は売れ
に売れた。このブランド戦略の成功により、見事にオイルショックを乗り切り、黒字安定体
質へと変わっていったのである。
今までにブランドの付けにくいものに付けて成功したビジネスはないわけではなかった。
消費財の場合、塩コンブの「フジッコ」がある。塩コンブは各地で生産されていて、高級品は
ブランド指向が昔からあったが、大衆品用に付けて成功したのがこれだ。
煮豆の「おまめさん」も、この例といえる。
ほんの少し前までは、煮豆も豆腐も味噌も市場商品では量り売りで、小袋に入れたブラン
ド名入りは出現していなかった。
ブランドロイヤリティが生じたわけで、ブランドをみて安心して買える。逆に安心を売る
ということになる。どのような商品でも自社のブランドを付けていくことを考えれば付けら
れる商品が商品力となる。この発想は、別項でいっているように「こだわり」が基本にある。
「こだわり」を商品の中に組み込んでいって、顧客にわかって貰う。この考えを商品に付加
しないで売上げを追求してみても、むなしい結果ではないかと思う。
ブランドとは―要するに作者の名前―ネームを入れることではないか。作者のサインであ
る。 一つの商品を見て顧客は「どこでつくったか」と聞きたがる。このことは仕事の芸術化で
あり、「経営は芸術である」という裏付けとしてブランドの価値は大きい。
この考えをはっきりとさせ、思想を埋め込んで使う人達にそれを意識させる。そこには、
マーケティング発想がある。
マーケティング発想とは、世の中の欲しているものを組み込んで商品となし利益を保ちつ
つ、商品力・維持力を高め、連綿と続けていく一連の活動をいうのはご承知の通りだ。宣伝
活動や、販促だけが決してマーケティングではない。
4
コメント