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ROIを意識するということ

 父の言うとおりだった。私は、 2億円という受注額や、普段の 5倍以上という粗利に目がくらんで、期間あたりの利益についてまで考えが及んでいなかった。現場監督が生み出す利益だけでなく、自分自身の時間効率も十分に検討されていなかったし、その間の機会損失に対する配慮も足りなかった。  それだけではない。ひとつの顧客からの仕事を受けるために、 10件近くの仕事を流すということは、 10人の顧客を自ら手放すことだ。だが、無事に引き渡しを終えた後、どれだけの紹介をもらえるかと言えば、当然ながら 10人から紹介してもらったほうが多くなる。つまり、未来の売上という機会をも失うところだった。「費用に対して、どれくらいのリターンがあるか」。ここでの費用とは主に時間であり、リターンは期間あたり粗利額、そして、その後の紹介(からの売上)だ。その両者を考慮すれば、たとえ 1棟あたり 5倍の粗利が期待できる案件であっても、私の会社は絶対にビルを受注してはいけなかった。 「ROIを意識する」とは、こういうことだ。そして、これは会社経営だけに関わる考え方ではない。当時の私のように、目先の利益やメリットだけに心を奪われていると、見えてこないものがある。  利益やメリットは、必ず費用やデメリット、機会損失とセットになっている。何かをやるということは、その時間は他のことをやらないということなのだ。契約にしても、旅行にしても、日々の食事にしても、あるいはダイエットなどでも同じだ。  ダイエットをすれば体重を落とせるかもしれないが、それにかかる時間や費用や労力を他のところに振り向けたら、もっと素晴らしいことができるかもしれない。フランスに行っている時間に、同時にイタリアに行くことはできないし、夕食として中華料理を食べに行ったら、その日の夜に天丼やカツ丼を食べることは、少なくとも私には難しい。  何かを判断するときは、利益やメリットだけを考えるのではなく、費用や機会損失についても考えなければいけない。一方を選んだときの利益やメリット、費用や機会損失を把握したら、もう一方を選んだ場合の利益やメリット、費用や機会損失も同じように把握する。両者を並べて、トータルとしてどちらが最適かを見定めるのだ。  その際の判断基準は、会社経営なら会社の目的や目標だし、個別のプロジェクトならその目的や目標が基準になる。プライベートなら、自分の生き方や価値観に照らし合わせて判断する。そうすると、ビジネスも人生も非常に効率がいいものになる。

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