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Prologue アサーションとは

目次

はじめに

アサーションとは「自分も相手も大切にする自己表現」という意味です。

それは、日ごろの人間関係において、自分の言いたいことを大切にして表現すると同時に、相手が伝えたいことも大切にして理解しようとするコミュニケーションです。

アサーションは人間関係の基礎であり、誰もが望む自己表現の考え方と方法なのですが、それほど簡単なことではありません。

たとえば、「今日は、いつもより早めに退社できそうなので、家族とゆっくり過ごそう……」と考えながら会社を出ようとしていたら、「お茶でも飲んでいかない?」と同僚から声をかけられました。

そんなとき、あなたはどうしますか?「帰りたいけど、断るのも悪いし……」と思って、一緒に行くことにしてしまうことはありませんか?あるいは、あなたが「今日は久しぶりに家族とゆっくり夕食が食べられるので、早く帰りたい」と言ったら、「お茶なんだから、ちょっとつき合ってよ」と言われました。

さて、どうしましょうか?逆にあなたが、「今日は、いつもより早めに退社できそうなので、同僚とお茶でも飲んで帰ろうかな……」と思っているとき、どうしますか?相手が断ることができないと気の毒だし、断られるのも嫌だし……と声をかけるのをやめることはありませんか?あるいは、お茶を提案したら、相手が早く帰りたいと言いました。

そんなとき、気分を悪くしたりしませんか。

私たちはこのような日常会話や仕事上の問題解決のコミュニケーションで、気持ちや考えが常に一致するとは限らず、葛藤が起こることもしばしばです。そして、葛藤を避けることは決してよい結果を導きません。

そんなとき、自分も相手も率直な気持ちや考えを伝え合い、さわやかな解決を得ようとするのがアサーションの考え方と方法です。

本書では、自分の思いを伝えることができず、公私共に生きにくさを感じていたキャビン・アテンダントの三江さんが、アサーションに出会い、アサーションを試みるうちに、自分だけでなく、ギクシャクしていた職場の人間関係までもさわやかにしていく姿が紹介されます。

主人公がアサーションによって見失っていた自己を取り戻し、自分らしく生きるようになっていくストーリーは、アサーションの方法だけでなく人の心の成長のプロセスを味わうことにもなるでしょう。

アサーションが、自己表現を見直したい人、対人関係を改善したい人に役立つだけでなく、人々との関わりの中で一人ひとりが自分らしさを活かすことにつながり、グループや組織の活性化に貢献することを期待しています。

2015年7月平木典子

01アサーションってなんだろう?

日本語にはない「アサーション」という言葉

主人公の出雲三江さんが浅田翔子女史から初めて聞いた「アサーション」という言葉。

この本を読んでいるみなさんの中にも聞いたことがない人がいるでしょう。

アサーションはアメリカで生まれた「自分も相手も大切にする自己表現」という意味を持つコミュニケーションの考え方と方法ですが、日本語にはこのような意味を表す言葉はありません。

そこで、本書では「アサーション」をそのまま使って、コミュニケーションについて考えていきます。

あなたは、自分が頼みごとをしたとき相手から断られると、不愉快になったり、強引に押しつけたくなったりしませんか。

あるいは、逆に、頼みたいことが言えなかったり、人から頼まれごとをしたとき、自分ができない状況にあっても、引き受けてしまったりしませんか?アサーションの考え方では、本来ならば「頼むべきこと」を子どもや部下に命令したり、押しつけたりして同意させ、自分の思い通りに相手を動かそうとしたりすることを「攻撃的自己表現」と言います。

逆に、「頼んでもいいこと」を頼まなかったり、断ってもいい場合に引き受けてしまったりする言動を「非主張的自己表現」と言います。

「アサーション」は、そのいずれでもなく、頼みごとがあるときは「頼みたい」と伝え、相手から引き受ける返事が返ってくることも、引き受けられないと言われることもあり得る、と考える自己表現です。

相手の状況によって返事が大きく「イエス」か「ノー」にわかれることを知っていて、それに対してこちらも相手に同意したり、事情を説明して再度依頼したりして選択することができ、話し合いができると考えます。

大声で怒鳴らないとしても、相手の自己表現の選択を許さず、自分の言い分だけを通そうとしているならば、それは攻撃的自己表現です。つまり、自分の言いたいことだけをはっきり言えばいいということではないのです。

いっぽう、相手を立てて大切にしていても、自分から自己表現の選択をせず、言いたいことを引っ込めて相手の言う通りに従うならば、それは非主張的自己表現になります。

アサーションは、双方を大切にするやり取りを考え、その試みをして、双方が理解し合い、葛藤があるときは歩み寄ってものごとを進めようとするコミュニケーションです。

アサーションの意味がわかると、それはアメリカ人だけでなく、日本人にとっても、おそらく世界の人々にとっても、とても大切な考え方であり、意味があることだとわかるでしょう。

そこで、私はアサーションを日本で広めようと活動を始めたとき、そのままカタカナにして日本に紹介し、意味を覚えていただこうと考えました。

そして、今、アサーションは日本にも世界にもこの言葉で広がり、注目されるコミュニケーションの考え方と方法になっています。

アサーション・トレーニングの誕生

アサーションの考え方と方法は、アメリカの心理学者ウォルピーによって開発され、最初はカウンセリングの方法のひとつとして活用されていました。

カウンセリングには、内気で人と会話をすることが苦手な人や、コミュニケーションがうまくできない人、つい引っ込み思案になって思ったことが言えない人などが相談にきます。

ウォルピーは、その人たちを助けるために、アサーションという考え方を自己表現の方法として伝え、訓練したのです。

三江さんのように相手の困るようなことは言わず、相手の思いをかなえようとする人は、相手にとっては優しい、いい人ですが、本人は自分の言いたいことを呑み込み、自分の時間や思いを犠牲にし、心労やストレスをためることになります。

「仕事なんだから」「上司には逆らえないから」「あの人は一方的で……」と思って応じて自分の都合を後回しにしていると、今回、三江さんが恋人との予定を急にキャンセルしたように、親しい友人や家族まで巻き添えにします。

三江さんが上司を立てたことで恋人を不愉快にさせたように、目の前の相手を大切にしようとするだけでは、人間関係はうまくいかないのです。

ウォルピーは、非主張的な自己表現をアサーションで助けようとしているうちに、やがて、非主張的な人たちの自己表現の支援だけをしても人々の人間関係は変わらないことを発見しました。

自己表現の苦手な人が自己表現の方法を知り、自己表現ができるようになることは確かに大切ですが、人々のやり取りには、他者の自己表現を邪魔する人、自己表現を自由にさせない人がいることに気づいたのです。

つまり、渋谷ワタル氏のような無意識のうちに自分の思いを押しつけたり、有無を言わせず命令したりする人や、相手の自己表現を踏みにじり、自分の思いを通す人がいて、その人たちもアサーション(自分も相手も大切にする自己表現)をする必要があると考えたのです。

一方的にがまんすることもあきらめることもない

三江さんのように、仕事、上司の命令、先輩の頼み、妹の愚痴など、他人の都合に従うのは仕方がない、がまんすべきと思っていると、強引で、他者のことを大切にしない人から引き受けないでもいいことを押しつけられます。

つまり、浅田さんが三江さんに伝えたように、相手を大切にしていても自分を大切にしないと、自分で自分をないがしろにしてしまうことになります。

アサーションは誰もが、いつでも、どこでも実行する必要があることなのです。ただ、誰もが相手によって、状況によってアサーションができるときとできないときがあるのも確かです。

「仕方がない」とあきらめてしまうのではなく、三江さんのようにアサーションについて知ってみることから自分と相手を大切にする人間関係が始まります。

次の見開きのチェックリストは、よくある場面や状況で、あなたがどのような態度をとっているかを知る、手がかりとするためのものです。テストではありませんから、正解もありません。チェックが終わったら、どのように変えると自分にふさわしいものになるか、考えてみましょう。

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