Part2輸出実務をおさえよう
- ①インコタームズとは何か?
- Story2インコタームズって?
- 03輸出実務の流れ
- 04輸出貨物の価格の建て方
- 05インコタームズとは
- 062020年版インコタームズ①いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則
- 072020年版インコタームズ②海上および内陸水路輸送のための規則
- Column1日本の食文化の普及と農林水産物・食品の輸出──FBI戦略
Part2輸出実務をおさえよう
輸出貨物の価格の建て方04輸出貨物の価格を決めるには、まず、商品の製造にかかる費用と、その輸送に必要なコストを算出します。
商品の製造にかかる費用(製造原価・仕入原価)を基本原価とします。
その輸送に必要なコストには、輸出経費と利益、輸出諸掛があります。
輸出経費と利益、輸出諸掛の主な項目は、次の表のようになります。
輸出諸掛のうち、どこからどこまでの費用を輸出者が負担するかについて、貿易取引では一般的にインコタームズを用いて取り決めます。
インコタームズを用いると、輸出諸掛のうち、主に通関費用、船積費用、海上運賃、海上保険料について、輸出者(売主)と輸入者(買主)のどちらが負担するかを、簡潔かつ明確に取り決めることができます。
また、インコタームズを用いると、貨物の引渡しをどの時点とするか、つまり、貨物の危険負担がどの時点で売主から買主に移転するかについても明確に定めることができます。
危険負担が移転する時点を明確にすることで、輸送中の事故で貨物に損害が生じた場合には、どちらがその損害を負担するかが明確になります。
インコタームズとは05インコタームズ(Incoterms)とは、貿易条件を3つのアルファベットの記号で表した貿易条件です。
Internationalの”In”と、Commercialの”Co”に「条件」を意味する”Terms”を組み合わせた造語で、貿易取引上の紛争や摩擦を避けることを目的に、国際商業会議所(ICC:本部フランス・パリ)によって定められました。
昔からの慣習を定型化して、解釈基準を明確にしているインコタームズは、1936年に誕生し、時代背景に応じてその後何度か改正され、現在、2020年版が最新となっています。
2020年版インコタームズは、次の表のように、2分類11規則に定型化されています。
2分類とは、「いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則」と「海上および内陸水路輸送のための規則」です。
貿易取引条件で、価格を決める際には、一般的にこのインコタームズを用います。
インコタームズの表記方法は、たとえばFCAYOKOHAMACYや、CIPBANGKOKCYなどのように、3つのアルファベット記号の後に「売主(輸出者)が輸送費を負担するまでの場所」を明記します。
この場所は、インコタームズの条件によって、指定引渡地(船積港)や指定仕向地(仕向港)などが記されます。
FCAYOKOHAMACYは、横浜港(輸出地)のコンテナヤードまでの運送人渡条件、CIPBANGKOKCYは、バンコク港(輸入地)のコンテナヤードまでの輸送費・保険料込条件です。
インコタームズは、売買する当事者間の、費用負担の範囲と、貨物の危険負担の範囲(貨物の受渡時点)を同時に示しています。
なお、インコタームズは、所有権の移転や支払方法、契約違反については規定していません。
これらは売買契約の条項や、契約を規律する法律で取り扱うことになります。
インコタームズのみでは完全な売買契約とはなりませんので、注意しましょう。
2020年版インコタームズ①いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則06「いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則」の「いかなる輸送手段」とは、トラックや鉄道などを利用した陸送、船舶を利用した海上輸送、航空機を利用した航空輸送のことを示します。
「単数または複数の輸送手段」とは、陸送のみ、といった単数の輸送手段の場合も、陸送+海上輸送のように複数の輸送手段を組み合わせた場合も、いずれも使用できる貿易条件である、ということを意味しています。
この規則には、次の7種類があります。
①EXW(ExWorks):工場渡条件②FCA(FreeCarrier):運送人渡条件③CPT(CarriagePaidTo):輸送費込条件④CIP(CarriageandInsurancePaidTo):輸送費・保険料込条件⑤DAP(DeliveredAtPlace):仕向地持込渡条件⑥DPU(DeliveredAtPlaceUnloaded):荷卸込持込渡条件⑦DDP(DeliveredDutyPaid):関税込持込渡条件これら条件は、一文字目のアルファベット別に、E、F、C、Dの4類型に分類することもできます。
E類型は出荷条件(売主の施設で受渡し)、F類型は主要運送費買主負担条件(売主は買主が指定した運送人に貨物を受け渡す)、C類型は主要運送費込条件(売主が主要運送費を負担する)、D類型は到着条件(売主が貨物を輸入国の目的地まで輸送するのに必要な費用と危険を負担する)です。
では、それぞれの貿易条件について詳しくみていきましょう。
①EXW(ExWorks):工場渡条件輸出地(積み地)の工場や倉庫など、売主(輸出者)が指定した場所で貨物を引き渡す条件です。
輸出地内で貨物を引き渡した時点で、危険負担も費用負担も買主に移転します。
輸出地の引渡場所から輸入地までの輸送費・海上保険の手配はもちろん、輸出通関も買主(輸入者)側の手配となります。
EXWは、売主の費用負担、危険負担が最も少ない条件です。
売主が貿易取引に不慣れな場合などによく用いられます。
EXWの後には、輸出地における指定引渡地を明記します。
例:EXWABCFACTORYINYOKOHAMA(横浜のABC社工場渡し。
売主は横浜のABC社工場内までの費用を負担)場合によっては、引渡場所(工場や倉庫)の住所も明記し、引渡地を明確にします。
②FCA(FreeCarrier):運送人渡条件売主が、輸出地の指定場所で、買主の指定した運送人に貨物を引き渡す条件で、このときに貨物の危険負担・費用負担が売主から買主に移転します。
「運送人に貨物を引き渡す」とは具体的には、コンテナ貨物をコンテナターミナルのCY(コンテナヤード)やCFS(コンテナフレートステーション)で引き渡す場合や、航空貨物を航空会社又は代理店に引き渡した場合などのことをいいます。
この運送人は、海上運賃や航空運賃など、運賃を負担する買主が指定します。
なお、輸出通関の義務は売主(輸出者)にあります。
海上保険の負担は、買主です。
FCAの後には、輸出地における指定引渡地を明記します。
コンテナ貨物の場合は、輸出する港のコンテナヤードになります。
例:FCAYOKOHAMACY(横浜港CY渡し。
売主は横浜港のコンテナヤードまでの費用を負担)場合によっては、引渡場所の住所も明記し、引渡地を明確にします。
③CPT(CarriagePaidTo):輸送費込条件輸出通関と、輸入地までの輸送費を売主が負担する条件です。
海上保険は買主が負担します。
ただし、貨物の危険負担は、輸出地の指定場所で、売主が指定した運送人に貨物が引き渡されたときに移転します。
海上運賃や航空運賃など、運賃を負担する売主が、運送人を指定します。
「費用負担」と「危険負担」が売主から買主に移転する時点が異なることに注意しましょう。
CPTの後には、輸入地における指定仕向地を明記します。
コンテナ貨物の場合は、輸入する港のコンテナヤードになります。
例:CPTBANGKOKCY(売主はバンコク港のコンテナヤードまでの費用を負担)場合によっては、仕向地の住所も明記し、引渡場所を明確にします。
④CIP(CarriageandInsurancePaidTo):輸送費・保険料込条件輸出通関と、輸入地までの輸送費に加え、海上保険も売主が負担する条件です。
ただし、貨物の危険負担は、CPTと同様、輸出地の指定場所で、売主が指定した運送人に貨物が引き渡されたときに移転します。
CIPの後には、輸入地における指定仕向地を明記します。
コンテナ貨物の場合は、輸入する港のコンテナヤードになります。
例:CIPBANGKOKCY(売主はバンコク港のコンテナヤードまでの費用および海上保険を負担)場合によっては、仕向地の住所も明記し、引渡場所を明確にします。
⑤DAP(DeliveredAtPlace):仕向地持込渡条件輸入地の指定場所に到着した輸送手段(トラックや船舶など)上で、貨物が引き渡されたときに、貨物の危険負担と費用負担が買主に移転する条件です。
輸入地の指定場所は、ヨーロッパのように陸や川が地続きで、そこに国境がある場合、国境における輸送手段上での引渡しとなりますが、日本のような島国の場合は、通常、ターミナルから運び出された貨物が、トラックなどで指定の荷受場所まで輸送され、その輸送手段上(トラック上)での引渡しとなります。
輸送手段上での受渡しですので、そこからの荷卸し作業費は買主が負担します。
また、貨物到着後、国内輸送される前に行う必要のある輸入通関や、輸入税の納付についても買主が行います。
海上保険の負担については、インコタームズでは定めていないので、売主と買主の間で契約時に取り決めた内容に準じます。
DAPの後には、輸入地における指定仕向地を明記します。
例:DAPABCOFFICEINBANGKOK(バンコクのABC社オフィス渡し。
売主は、バンコクにあるABC社オフィスまでの費用を負担、ただし輸入通関と輸入税は買主負担)場合によっては、仕向地の住所も明記し、引渡場所を明確にします。
なお、D類型(到着条件)では、海上保険の負担について、インコタームズでは特に定めていません。
危険負担の移転が輸入地となるので、そこまでの危険を負担する売主が、実務上、必然的に海上保険を負担する場合が多いといえます。
もしくは売主が子会社、買主が親会社となるケースで、親会社が一括して保険を負担する、という場合もあります。
また、サンプル品などのため海上保険は不要、といったケースもあります。
ですので、海上保険の負担をどうするかについては、契約時にしっかり確認しておくことが大切です。
⑥DPU(DeliveredAtPlaceUnloaded):荷卸込持込渡条件輸入地の指定場所に到着した運送手段から荷卸しされ、貨物が引き渡されたときに、貨物の危険負担と費用負担が買主に移転する条件です。
DAPとは異なり、輸送手段からの荷卸し作業費を売主が負担します。
輸入通関や輸入税納付については買主が行います。
DPUの後には、輸入地における指定仕向地を明記します。
例:DPUABCOFFICEBANGKOK(バンコクのABC社オフィス渡し。
売主は、バンコクにあるABC社オフィスでの荷卸し費用までを負担、ただし輸入通関と輸入税は買主負担)
⑦DDP(DeliveredDutyPaid):関税込持込渡条件輸入地の指定場所に到着した輸送手段上で、貨物が引き渡されたときに、貨物の危険負担と費用負担が買主に移転する条件で、輸入通関や、輸入税の納付も売主が行います。
海上保険の負担については定めがありません。
DDPでいう「指定場所」はターミナル、倉庫、工場、事務所など輸入地のいずれの場所も含んでいます。
したがって、DDPは、DAP・DPU条件に、売主が輸入通関や輸入税の納付も済ませる、という条件を加えたものになります。
DDPの後には、輸入地における指定仕向地を明記します。
例:DDPABCOFFICEINBANGKOK(バンコクのABC社オフィス渡し。
売主はバンコクにあるABC社オフィスまでの費用および輸入通関・輸入税を負担)場合によっては、仕向地の住所も明記し、引渡場所を明確にします。
2020年版インコタームズ②海上および内陸水路輸送のための規則07「海上および内陸水路輸送のための規則」は、輸送手段を船舶に限定した貿易条件です。
海に囲まれた我が国の場合は、海上輸送のうち、主に在来船での貿易取引に使用されます。
コンテナ船の場合は、前出「いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則」を適用します。
内陸水路を利用した貿易取引は、ヨーロッパ圏のように地理的条件上、河川が国境をまたぐような場合に行われます。
この規則には、次の4種類があります。
①FAS(FreeAlongsideShip):船側渡条件②FOB(FreeOnBoard):本船渡条件③CFR(CostandFreight):運賃込条件④CIF(Cost,InsuranceandFreight):運賃・保険料込条件なお、実務では慣習上、従来のインコタームズ条件を用いて、CFRをC&Fと表記したり、コンテナ船での貿易取引にFOBやCFR、CIFと表記している場合もみられますが、ICCでは貿易取引の現状に最も適した最新版のインコタームズを用い、コンテナ船での貿易取引にはFCAやCPT、CIPを適用すべき、と推奨しています。
また、売主と買主が合意すれば、2010年版や2000年版など、改訂前のインコタームズを適用することも可能ですが、費用負担や危険負担などについて、現状の貿易取引に最も即しているのが最新版といえます。
では、それぞれの貿易条件について詳しくみていきましょう。
①FAS(FreeAlongsideShip):船側渡条件輸出地の指定された船積港で、貨物が埠頭上、または艀上に積み込まれて、本船(輸入地へ向かう船)に横付けされたときに、危険負担・費用負担が売主から買主へ移転します。
貨物は、本船上に積み込まれていない状態で引渡しとなり、本船への積込みは買主の負担となります。
(なお、はしけとは、港から沖合いにある本船に貨物を積み込むために使用する小さな船で、今はほとんど見られません。
)輸出通関は売主が行い、海上運賃・海上保険の負担は買主となります。
FASの後には、輸出地における指定船積港を明記します。
例:FASYOKOHAMA(横浜港の埠頭船側渡し。
売主は横浜港に停泊する本船の船側までの費用を負担)②FOB(FreeOnBoard):本船渡条件売主が、輸出地の船積港で、買主の指定した本船の船上に貨物を置いたときに引渡しとなり、危険負担・費用負担が売主から買主に移転します。
貨物が輸送中に転売されるケースでは、すでに船積みされている貨物を「調達したとき」に、危険負担・費用負担が売主から買主に移転します。
輸出通関は売主が行い、海上運賃・海上保険の負担は買主となります。
海上運賃を負担する買主が、本船を指定します。
FOBの後には、輸出地における指定船積港を明記します。
例:FOBYOKOHAMA(横浜港の本船渡し。
売主は横浜港に停泊する本船に積み込むまでの費用を負担)船上渡しであることを明確にするため、FOBYOKOHAMAONVESSELと表記する場合もあります。
VESSELは本船を指します。
③CFR(CostandFreight):運賃込条件売主が、輸出地の船積港で、売主の指定した本船の船上に貨物を置いたときに引渡しとなり、このとき危険負担が売主から買主に移転します。
輸出通関と本船への船積費用、海上運賃の負担は売主となります。
CFRでは、海上運賃を負担する売主が、本船を指定します。
輸入港に到着した本船からの荷卸し作業にかかる費用、海上保険の負担は買主となります。
「費用負担」と「危険負担」が売主から買主に移転する時点が異なることに注意しましょう。
CFRの後には、輸入地の指定仕向港を明記します。
例:CFRBANGKOK(売主は本船がバンコク港に到着するまでの運賃を負担)④CIF(Cost,InsuranceandFreight):運賃・保険料込条件CFRと同様、売主が、輸出地の船積港で、売主の指定した本船の船上に貨物を置いたときに引渡しとなり、危険負担が売主から買主に移転します。
輸出通関と本船への船積費用、海上運賃に加え、海上保険の負担も売主となります。
輸入港に到着した本船からの荷卸し作業にかかる費用は買主負担となります。
CIFの後には、輸入地の指定仕向港を明記します。
例:CIFBANGKOK(売主は本船がバンコク港に到着するまでの運賃および海上保険を負担)インコタームズ条件における「運賃」と「輸送費」の違いCIFは「運賃・保険料込条件」、CIPは「輸送費・保険料込条件」といいます。
「運賃」と「輸送費」にはどのような違いがあるのでしょうか。
CIFは主に在来船輸送の場合に用いられ、ここでいう「運賃」はFreight、つまり船積港から陸揚港までの海上運賃のことを指しています。
CIPは主にコンテナ船輸送や航空輸送の場合などに用いられ、ここでいう「輸送費」はCarriage、これはコンテナ船輸送では海上運賃に加え、港のコンテナヤードと本船との間の輸送費を含んでいます。
また、航空輸送では航空運賃に加え、航空貨物ターミナルと機内との間の輸送費を含んでいます。
Column1日本の食文化の普及と農林水産物・食品の輸出──FBI戦略店頭に青森産のリンゴやリンゴジュースがたくさん並べられていて、まるで日本のスーパーの売り場のように見えますが、これは、台北の写真です。
日本政府は日本の食文化を海外に普及させるべく、日本の農林水産物・食品の海外展開を積極的に進めています。
この戦略は3本の柱からなっていて、それぞれ「日本の食材の活用推進」(MadeFromJapan)、「日本の食文化・食産業の海外展開」(MadeByJapan)、「日本の農林水産物・食品の輸出」(MadeInJapan)を掲げています。
そして、このFrom、By、Inの頭文字をとって「FBI戦略」と呼んでいます。
輸出に際しては、検疫、衛生条件、放射性物質に関する規制、残留農薬、動物衣料品に対する規制、宗教に関わる基準・認証など、様々な課題があります。
たとえば、本書に出てくる海苔などの水産品については、EUでは大変厳しい規制がかけられており、EU圏での展開の拡大は非常に厳しいのが実情です。
事実、欧州のお寿司屋さんでは、日本産の海苔はほとんど使われていません。
とはいえ、2012年度に約4,500億円だった農林水産物・食品の輸出額は、2020年までに約9,200億円規模に拡大しており、FBI戦略が一定の効果を奏し、日本の食文化が海外で受け入れられてきていることがうかがえます。
日本の食文化・素材が海外でより広まっていくよう、期待したいところです。
コメント