PART2姿勢トレーニングこのPARTから本格的なトレーニングが始まります。「いい声」の土台となるのは、「よい姿勢」。人前で話すにあたり、ここにあげたトレーニングをひとつでもやっておくと、声の出方が全然違ってきます。
超短時間で声の出し方を変えるプログラム私がトレーナーを務めるスクールでは、5~8人のグループレッスンなら1日8時間、マンツーマンレッスンなら約3時間のレッスンで、「声」を中心に「体」や「メンタル」まで変えることを目指しています。「そんな短時間で変えることなんてできるの?」と、疑問に感じる人も多いでしょう。しかし、時間をたくさん費やしたところで、劇的に声が変わるわけではありません。何かをマスターするときは、時間をかけてやるよりも、「超短時間集中」が最も効率がいいのです。「声」のトレーニングも同じ。基本的な「声の出し方」を覚えるのに、時間をかける必要はありません。そして、「声」の出し方は、自転車や泳ぎと同じで、一度覚えたら忘れません。長期記憶に定着しやすいのです。では、これから、そんな「超短時間集中プログラム」に従って、あなたの声を変えることを目指します。あなたも、私からマンツーマンの指導を受けているつもりで、ここに書いてあることを実践しながら読み進めてください。通常は3時間のコースですが、この本では、新たに説明力をつけるPARTもくわえ(PART6)、さらに縮めて2時間で身につけてもらうことを想定しています。今から、本書に書かれている通りに集中してやれば、だんだんと声が変わっていくことを実感できるはずです。
「いい声」は、まず「姿勢」から実践の話に入る前に、ここで大事なことに触れておきましょう。声がこもる、声が小さい、よく聞き返される、すぐノドが痛くなる、ノドにつまった感じがする、プレゼンで緊張する、声の通りが悪い……。私のレッスンにいらっしゃる方は、みなさんこのような声の悩みを抱えています。みなさんに共通しているのは、体の使い方が間違っているということです。猫背や出っ尻、左右アンバランスな姿勢、骨盤のゆがみは、肩こりや腰痛を引き起こすだけでなく、やる気が出ない、手足の震え、声帯の硬直、響きがなくつまったような声、見た目の印象の悪さにつながるのです。また、落ち着かない、不安、イライラ、不眠、便秘などなど、心身の健康面にも影響を与えます。そんな状態では、よい印象を与える話し方、声の出し方はできません。発声や話し方の土台となるもの。それが「姿勢」なのです。あなたが考えている以上に、姿勢や体の使い方は、声や話し方に影響を与え、ひいては人生にまで影響を与えています。私はボイストレーナーにくわえて、整体師としての活動も併せて行なっています。先にもお話ししたように、私はもともとテニスのプロコーチとして活動をしていました。しかし、故障を繰り返したことから、体を整えることで運動のパフォーマンスを上げる整体に興味を持つようになり、様々な流派の先生から学びました。こうして学んだことに、自分なりの工夫をくわえてつくりあげたのが、「ボイトレ整体」という名の体の調整プログラムです。「ボイトレ整体」や話し方のトレーニングを行なうなかで、声や話し方で悩むほぼ100%の人が、姿勢や体の使い方に問題があることに気づいたのです。しかし、忙しくてなかなか時間が取れないという理由で、体のゆがみを修正したり、体をほぐしたりなどの改善を実行している人はほとんどいません。また、過度の緊張や不安感、意欲の減退などは、「メンタルが弱い」というひと言で片付けられがちです。その原因の多くは、姿勢の悪さや体の緊張にあるのですが、そう考える人はほとんどいません。ただ、姿勢をよくしようと、一生懸命背筋をのばしてみても、かえって疲れてしまい、結局元の状態に戻ることもよくあります。「いい声」は「まず姿勢」から。ここからは、よい姿勢が持続するワークをご紹介しましょう。私は第一線で活躍する俳優や声優、アナウンサー、エグゼクティブの方々に声のメンテナンスをさせていただくこともあります。ここで紹介する姿勢ワークは、そうした声や話し方のプロの方向けの特別クラスでお伝えしているものです。どれも簡単にできるものばかりです。ぜひ試してみてください。このワークをやってみると、姿勢の悪さが引き起こす、以下の悩みが解消されます。・声が小さくこもって聞き返されてしまう・人前に出ると、体が萎縮してしまい、自信なさげに見られる・早口で話していることが理解されない・人と話すたびに緊張して言いたいことの1%も言えない・何を言いたいのかわからなくなってしまう・大勢の前で話していると、ノドが塞がるような感じがして、声がかすれてしまう・声が上ずる項目の見出しに「動画あり」と書いてあるトレーニングには、次のサイトにスマホで見られる動画がアップされています。トレーニングの参考にしてください。■「本がすき。」ピックアップhttps://honsuki.jp/pickup/12327.htmlでは、早速トレーニングを始めていきましょう。
「よい姿勢」を体に覚え込ませるトレーニング動画あり私たちは気がつかないうちに体を緊張させ、負担をかける姿勢をつくり出しています。体に負担がかかると、筋肉が硬くなり、ノドが締まって呼吸が浅くなります。これでは、伸びやかな声を出すために必要な「骨伝導を使った声の響き」をつくり出すことができません。声をしっかりと出せないと、それが気になって、話す内容や話し方まで気が回らなくなります。聞き手にも意識が向かず、何を話しているかわからなくなる……そんな状態に陥るのです。体に負担をかける姿勢には、次の3つの特徴があります。1.体の重心が後ろにかかっている2.骨盤が後傾している3.アゴや頭が前に突き出しているこんな姿勢でいると、声が出しにくくなることにくわえ、人に、だらしない、みすぼらしいという印象を与えかねません。では、よい姿勢の特徴とは、どんなものでしょうか。それは次の3つです。1.骨盤が立っている2.頸椎(首の骨)~脛骨(「弁慶の泣きどころ」と呼ばれる脛の部分)までが1本の棒のようなイメージである3.足裏で地面を感じることができるこれらを常に意識するようにしておくと、筋肉に負荷をかけず、骨が体重による重みを支えて、余計な緊張を筋肉に与えることがありません。そして、背骨や頸椎、椎間板への負担が減ると同時に、内臓への負担も軽減します。内臓の負担の軽減は、疲れややる気が出ないなどの状態を改善することができます。さらに、呼吸の際の肺への負担や声帯への負担も減らすことができるので、深い呼吸が可能になり、発声がしやすくなります。こうしたことを可能にする「よい姿勢」を保つには、次の4つのポイントを意識してください。1.足の裏全体で地面を感じながら立つ2.太ももの前と脛骨に意識を向ける。ポイントは、足の前面で立っている感覚を持つこと。力は入れない3.お尻の穴を軽く締める。それによって腸腰筋が働き、この筋肉とつながっている横隔膜が使いやすくなる4.肋骨の位置を少し高くする。プラス5センチ上げるイメージで「背筋をまっすぐに」と言われると、反り返る人が多いのですが、それだとノドが締まってしまいます。その点、この4つのポイントを意識して立てば、肩や首に力が入らず、体軸がまっすぐに立って、体幹がしっかりしてきます。次の図の①を見ながら、7秒間この姿勢を続け、体に覚え込ませてください。
首のストレッチよい姿勢を保つポイントを体が覚えたら、今度は首から上に意識を向けます。「ノドが詰まった感じで声が出づらいのです。けいれん性発声障害ではないかと心配になり、病院で診察してもらいましたが、〝異常ありません〟と言われました」そんな悩みを訴える方が、ここ数年増えてきました。パソコンで作業したり、スマホを見ているときは、うつむき加減で猫背の姿勢になりがちです。猫背の問題点は、首が前に突き出た姿勢になってしまうこと。その結果、ノドが締まって呼吸が浅くなります。さらに、呼吸に関する第一、第二頸椎が機能しなくなって、声帯に負担がかかり、声が上ずったり、息が苦しくなったりするのです。こうした状態になるのを防ぐには、「首の角度調整」と、次の項でやっていただく、首とアゴを正しい位置に戻す、「アゴの前出し禁止トレーニング」をおすすめします。首の角度調整1.耳の裏のくぼんだところ(押すと痛い)に中指を置く。右耳には右手の中指、左耳には左手の中指を。2.両手の中指を同時に押し上げ、顔を上げていく。3.アゴを引きながら、スッと前を向くこのストレッチをやると、自然とアゴを引いた、ちょうどいい首の角度がつくれます。3回繰り返しましょう。
アゴの前出し禁止トレーニングアゴが前に出ているとノドが締まり、声が通らなくなります。アゴが前に出ているときは、肋骨が落ちて、体重が後ろにかかってしまっています。アゴを前に出すことで、体重のバランスを取ろうとしてしまうわけです。それを防ぐトレーニング方法は、次の2つです。1.「アウアウ」体操まず、こちらの図の②のように、両耳の後ろを両手中指で押さえます(右耳には右手、左耳には左手)。そのまま図の③のように、顔を押し上げ、上を向いてしゃべる感じで「ア〜ウ〜ア〜ウ〜」と10秒発声します。次に、図の④のように、アゴを引きながら正面を向くようにします。その状態でまた「ア〜ウ〜ア〜ウ〜」と10秒発声してみてください。声が出しやすくなったことを実感できるはずです。2.アゴ揺らし体操「アウアウ」体操と同様の手順で顔を上向きにし、その状態でアゴを左右に揺らします。手を置かなくてもかまいません(次の図)。ミシミシと音がすると思います。10秒ほど揺らしたら、そのままスーッとアゴを引いていきます。このとき、「ハーーーーッ」と発声してみてください。無理なく音量が大幅にアップしていることに気がつくはずです。
肩甲骨ゆるトレ姿勢がよくなり、首とアゴの角度が定まってきたら、今度は肩まわりです。肩こり、あるいは首こりに悩まされている人は、声の通りもよくありません。そういう人は、肩甲骨まわりの筋肉がカチカチになっているので胸が開かず、肩が内側に入ってしまっています。そのため、通る声を出すのに必要な胸郭の響きを生み出すことができなくなっているのです。また、肩甲骨まわりの筋肉が硬いと、息を吸ったときに肺に空気が十分に入らず、浅い呼吸になります。浅い呼吸による酸欠状態の日常化は、心拍数を増やし、慢性的な緊張状態や不安感を生み出すことにつながります。そうならないよう、肩甲骨まわりの筋肉をほぐして、肩甲骨がよく動くようにするには、次のトレーニングがおすすめです。1.肩に軽く手を置く。左肩には左手、右肩には右手を。2.鼻から息を吸いながら、両肘を前に突き出すようにして、後方へゆっくり回す。3.両肘が真上まで来たら、口から「ハァーッ」と息を吐きながら、後方へゆっくり下ろしていく。4.10秒かけて一周するイメージでゆっくりと行なう。この一連の腕回しを、自分の筋肉の状態をたしかめるイメージで3回(合計30秒間)行なってください。肩甲骨がよく動くのがわかると思います。ちなみに肩甲骨のまわりには、「褐色脂肪細胞」という代謝を上げる細胞があるので、痩せる効果も期待できます。
鎖骨ゆるトレ相手に少し強く出られると、心が折れそうになる……。そういう他人からの「気」を受けやすい人は、鎖骨の上下の筋肉がカチカチに硬くなる傾向があります。そのため、いつも胸の前面が重苦しく息が浅い、その結果、声が出にくいという状態になりやすいのです。先にご紹介した体軸をまっすぐに立てることと、以下、ご紹介する「鎖骨ゆるトレ」を続けていくと、声がよく出るようになります。鎖骨をゆるめておくと、呼吸がしやすくなるからです。また、喉仏の奥にある声帯の筋肉もリラックスしてきて、相手からの不当な要求に対して、「声」で対抗しやすくなります。鎖骨ゆるトレ①(左右20秒ずつ)1.左の鎖骨の少し上の、押さえるとビリビリする部分を、右手の指3本(人差し指、中指、薬指)で押さえ、20秒間グリグリ回す。2.右の鎖骨についても1と同様に、左手の指3本でグリグリ回す。
鎖骨ゆるトレ②(左右15秒ずつ)1.左の鎖骨の下で硬くなっている部分を、右手の人差し指、中指、薬指の3本の指で、くるくると円を描くように15秒間マッサージする。2.右の鎖骨についても1と同様に、3本の指でマッサージする。このトレーニングは座ったままでもできるので、オフィスで仕事の合間などにやるのもいいでしょう。肩がほぐれて、気分もシャキッとしてきます。
体全体リラックス・トレーニング最後は、体全体をリラックスさせるトレーニングです。「リラックスしたほうがいいのはわかるんだけど、どういう状態をリラックスというのか、いまいち感覚がわからない」――そんなふうに思ったことはありませんか?リラックスとは、体から力を抜くことです。体に余計な力が入っていると、「声」が響いてきません。筋肉が硬くなり、呼吸も浅くなって、「声」が骨に届かないからです。つまり、よく響く声にとって必要な骨伝導が起こりにくくなるわけです。「体から力を抜く」のは意外と難しいものですが、簡単にできる方法があります。2つ、紹介しましょう。1.小指トレーニング動画ありペンを2本、用意してください。片手に1本ずつ、小指だけでふわっと軽く握り、両腕をたらんとたらして、正しい姿勢で立つ。それだけです。10秒くらいそのままの姿勢で立っていると、体が軽くなってきます。パソコン作業やスマホ入力などを日常的に行なっている人は、親指や人差し指側に力が入る作業ばかりしているので、なかなかリラックスできません。小指の感覚をみがくことで、リラックスするコツがつかめます。試しに、親指と人差し指でペンをギュッと握って、そのまま「はー」と声を出してみてください。その感覚を覚えておいて、次に小指でふんわり握った状態で「はー」と声を出す。小指を意識したほうが、「声」の響きがよくなったり、音量がUPしたことを実感できるはずです。
2.お風呂感覚トレーニング湯船に浸かっている状態で腕の力を抜くと、腕がふわーっと浮いてきます。立っているときに、その感覚を頭の中で再現してみてください。上半身がふわふわ、ぷかぷか浮いている感じになって、自然と体から力が抜けていきます。ちなみに、このリラックス法でパニック障害を克服された方もいます。それまでは、電車に乗ると心臓がドキドキしてくるので乗らないでいたのが、頭の中で、腕がふわーっと浮くイメージを繰り返し思い浮かべてみたところ、乗れるようになったそうです。この方はまた、会議などで意見を否定されると体を硬くして黙ってしまうのが常だったのですが、このトレーニングのおかげで、否定されても気にならなくなり、積極的に発言できるようになったと言います。ポイントは、湯船に浸かって気持ちよくリラックスしている自分を繰り返しイメージすることです。簡単な割に効果は絶大なので、ぜひ試してみてください。
コメント