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PART2バレットジャーナルのつくり方——自分を深く知り、大切なことに気づくシステム

目次

用途に合わせて柔軟に変えられるシステム

あなたのバレットジャーナルは、ToDoリスト、日記、スケジュール帳、スケッチブックになる。そのすべてを一か所にまとめることができるのだ。

この柔軟性は、バレットジャーナルが「モジュール」(組み立てユニット)で構成されているからこそ、可能になる。おもちゃのレゴ・セットの1ピースが、ひとつのモジュールに相当すると考えていいだろう。

バレットジャーナルのシステムの各ピースは、それぞれ別の機能を果たし、1日のタスクを整理したり、1か月の計画を立てたり、目標に取り組んだりするうえで役に立つ。

必要に応じてこのピースを組み合わせ、独自のシステムへとカスタマイズすることもできる。

当然、必要とするものは時間の経過とともに変わっていくため、どんな人生の局面を迎えようと、バレットジャーナルはその変化に対応していく。

あなたが進化すれば、バレットジャーナルの機能や構成も進化していくのだ。

パート2では、バレットジャーナルのシステムの基盤をなす「モジュール」をじっくりと見ていく。

モジュールがどのように作用するのか、なぜ作用するのか、そしてもっと大きな枠組みのなかにどう組み込まれるのかが、おわかりいただけるだろう。

バレットジャーナルの初心者は、バレットジャーナルのセットアップ法や「思考の目録」の内容をバレットジャーナルに移動させる方法を学んでいこう。

バレットジャーナルをすでに利用しているみなさんには、パート2を読み、バレットジャーナル・メソッドを次のレベルへと進化させてもらいたい。

みなさんがこれまで利用してきたツールやテクニックについて詳しく説明しているし、現在のようなデザインが確立されるまでの経緯も述べている。

みなさんがバレットジャーナルを利用しているうちに頭に浮かんできたさまざまな疑問にお答えすることもできるはずだ。

バレットジャーナル初心者のみなさんには、パート2をすべて読んでから、ペンと紙を用意して実践に臨むことをお薦めする。どのテクニックも有効ではあるけれど、バレットジャーナルの真のパワーは、あらゆる細部をまとめた総合力にある。

バレットジャーナルを最大限に活用するために、それぞれのパーツがどう相互作用しているかを理解しよう。ではまず、バレットジャーナルのセットアップ法について、段階を踏んで学んでいこう。

バレットジャーナルを始める前に僕自身、いろいろな整理術を試してきたけれど、どれもしっくりこなかった。うまくいかないと、そのたびに挫折感を覚えたり、やる気を失ったりしたものだ。

みなさんには、決してそんな思いを味わってほしくない!パート2が退屈な手引書にならないよう、努力はしたけれど、テクニックの説明が続くのは避けられない。

最初は、移動させるものがすごく多いように感じるかもしれない。でも、できれば、それぞれの構成要素を独立したものとして考えてもらいたい。説明を読み、理解し、じっくりと考えてもらいたい。

「これは自分の役に立つかな?」と、自問しよう。もし、ある時点で、よくわからなくなってしまったら、内容がわかるところだけ試してみよう。

構成部分の大半はそれぞれが独立して利用できるため、ほかのものは活用せず、気にいったものだけを利用することもできる。

だから、ぴんときたものから始めよう。それがたったひとつのピースでもかまわない——そこから着手しよう。バレットジャーナル自体、そうして誕生したのだから。うまくいくピースをひとつずつ、活用していこう。

ラピッドロギング——効率よく思考を整理する技術

ぱっと思い浮かべてもらいたい——最近、誰かから、なにか有意義なことを言われただろうか?オーケー、じゃあ、もっと簡単なことから思いだしてみよう。

2日前、ランチになにを食べた?まったく思いだせなくても大丈夫。思いだせないのは、あなただけじゃない。自分の経験を正確に記憶に留めておくことなどできないのだから。

僕たちが経験することは——嬉しいこともつらいことも——すべて人生のレッスンだ。そうしたレッスンを尊重し、内容を書き留めておけば、あとで読み返し、そこから教訓を得られる。こうして、僕たちは学び、成長するのだ。

経験から学ぶ機会をみすみす無駄にしていると、失敗を繰り返す運命に甘んずることになる。日記をつけるようになれば、こうした自己学習の機会を確実に設けられる。

とはいえ、日記をつけるという昔ながらの方法の問題点は、構成が定まっていないうえ、時間がかかることだ。

ところがラピッドロギングでは、必要不可欠なもの以外はすべてをそぎ落とすため、きわめて効率よく日記をつけられる。

つまり、ラピッドロギングは「現在のリスト」として、いまの思考を把握し、整理するうえで有効なのだ。

ラピッドロギングは、あなたの人生で起こっている出来事を効率よく把握するうえで役に立つし、それについてじっくりと検討するきっかけをつくる。

次で、昔ながらのやり方で日記をつけた例と、同じ情報をラピッドロギングで整理した例を紹介する。

記号や構造についてはあとで詳しく説明するけれど、この例をご覧になれば、ラピッドロギングがいかに簡潔で単刀直入かがおわかりいただけるだろう。

頭のなかの考えを記録する際、このようにスリム化して記入すれば時間を節約できるし、多忙な生活の合間に手早く記入することもできる。

バレットジャーナル・ユーザーのレイ・チェシャーは、こう説明する。

「僕はイギリスの低所得者層の多い地域の高校で、科学の教師をしています。

日々のスケジュールはぎっしり詰まっているので、そこに新たな用事を入れようものなら、とんでもなく忙しくなる。

だからこそ、ラピッドロギングが便利なんです。

たとえば、じきに役所の視察が入ると、直前に通知があったとしましょう。

でもバレットジャーナルのおかげで、視察が入る前になにをすべきかを、すぐに把握することができました」自宅で、学校で、職場で、ラピッドロギングはあなたが日々、対処しなければならない用事の山を整理するうえで役に立つ。

トピックとページ番号を書く——見返すための基本ルール

ラピッドロギングの初めの一歩は、記録しようとしている内容の枠組みを決めることだ。まず、ページ上部にトピックを記入しよう。

「買い物リスト」といった、シンプルなトピックでもかまわない。

BuJoでは大半の物事がそうであるように、トピックは、書いてある内容を把握しやすくするほかにも役割を果たしている。

トピックには、以下の3つの機能がある。

  • 1内容がなにかを明示し、説明する。
  • 2あなたの目的がどこにあるのかを明確にする機会となる。
  • 3検討すべき点を定める。

これまでに、明確な議題もないのに開催されたミーティングに出席したことはないだろうか?一般に、それはあまり生産的とはいえない。

実際に作業を始める前に、検討すべき議題を定めておけば、集中すべき点が明確になるし、優先順位を決め、時間を効率よく使うことができる。

ページのトピックをつけると、しばし、考えるきっかけができる。

このスペースでなにを検討すればいいんだろう?その目的は?これを検討したら、自分の生活にどんな価値が加わるだろう?そんなことをわざわざ考える必要はないように思えるかもしれないけれど、僕はこれまで何度もリストを見直した結果、ああ、これは自分の人生になんの意味ももたらさないと自覚した経験がある。

「今年見たテレビ番組」をすべて書きだすことに、本当に価値があるのだろうか?ノー。こんなリストをつくるのをやめれば、その分、ほかのことに貴重な時間を当てられる。

目標を意識した「意志力」のある人生を送りたければ、前進する前に、まずは立ち止まって考えよう。

●効果的なトピックの記入法

また、ポイントを押さえたトピックを設ければ、バレットジャーナルは使いやすい参考書に変貌する。あるトピックを探すために、いつなんどき、バレットジャーナルを見直すかわからないからだ。

「10月13日、ミーティング、4、メモ」では、あとで見返したときに意味がわからないけれど、「10/13/木(月/日/曜日)、アクメ社(クライアントの名)/ウェブサイトの再立ちあげ(プロジェクト名)/ユーザーフィードバック(ミーティングの重要議題)」というトピックにしておけば、あとで見返すときに内容がよくわかる。

トピックを決めたら、ページのいちばん上に書こう。これで建物の基盤はできたが、住所がなければ目当ての建物は見つからない。

バレットジャーナルにおける「住所」とは「ページ番号」だ。だからバレットジャーナルでは、ページ番号が欠かせない。ページ番号をつけておけば、特定のトピックを「インデックス」で探す際に役に立つ。

トピックに内容の説明を加えないのは、「デイリーログ」のトピックだけだ。デイリーログには、あなたの頭に思い浮かんだことをすべて書きだすので、毎日のデイリーログのトピックはただ日付だけだ。

月/日/曜日とだけ、記入すればいい。あとで見返したとき、ぱらぱらとページをめくりさえすれば、すぐに目当ての日付を探しあてられる。トピックに関しては長々と説明するより、実際に試してもらうほうがずっとわかりやすい。

ただ実際にペンで書きだす前に、どんなトピックにするのか考えよう。実際にトピックとページ番号を書き込んだら、そのページには、そのトピックに関連する内容をなんでも書き込んでいい。

バレット——不要な情報をそぎ落とすシンプルな箇条書き

ラピッドロギングが、バレットジャーナルを書く際の「言語」であるとするならば、バレットは「構文」だ。トピックとページ番号を書き込んだら、考えていることを客観的に短文にまとめ、箇条書きで記入しよう。

簡潔な箇条書きをつくるには、簡潔さと明快さのあいだでバランスをとらなくてはならない。内容が短すぎると、あとで見返したときに、なんのことやらわからなくなる。長くだらだらと書けば、思考を整理できなくなる。

たとえば「早急に、折り返し電話!」では、短すぎる。

誰に折り返し電話をすればいいんだろう?いったいなんの用件で電話をかける必要があるんだっけ?慌ただしい日々をすごしていると、こうした用件の内容は記憶からすっぽりと抜け落ちてしまう。

とはいえ、「ジョン・Mに、できるだけ早く折り返し電話。6月の売上のデータがいつ入手できるか知りたがっている」では情報が多すぎる。

「ジョン・Mに電話。Re:6月売上データ」と、まとめてみよう。短文ではあるけれど、長文とまったく同じ内容を伝えている。記号を利用してタスクの優先順位をつける方法については後述する。

しっかりと内容を押さえた短文をまとめるには、少しばかり練習が必要だけれど、しだいに、書き留めるだけの価値があるものを見わけられるようになる。

日々の生活は複雑このうえなく、記録をつけて推移を追う必要があるものが山ほどある。これまでにリストをつくった経験がある人なら、そうしたリストがすぐに手に負えなくなってしまうことがよくおわかりのはずだ。

前後関係や背景がわからなくなったり、優先順位がわからなくなったりしがちなのだ。ラピッドロギングは、この問題をごくわずかな手順で解決する。

まず、箇条書きの内容を分類しよう。

  • 1しなければならないこと(タスク)
  • 2経験すること、経験したこと(イベント)
  • 3忘れたくない情報(メモ)

それぞれに、箇条書き用の印がある。

こうした印を利用すれば、どのカテゴリーに分類すればいいかをすばやく判断できるし、その内容の前後関係や背景も短くまとめられる。いったん書き込んだら、あとで見返したときに、目当ての内容を見つけやすくもなる。

では、それぞれのカテゴリーについてじっくりと見ていこう。箇条書きを利用すれば、書き込む内容を簡潔にまとめられるようになり、効率があがることが実感できるはずだ。

タスクを箇条書きにする——一瞬でステータスがわかる

記号の使い方タスクの箇条書きには、さまざまな機能がある。

まず、チェックボックスとして考えよう(以前のバレットジャーナルの方式では、実際にチェックボックス「□」を使っていたけれど、ドット「・」のほうが効率がいいことがわかった。

チェックボックスをつくろうとすると、四角い箱を書くのに時間がかかるし、見た目もすっきりしないし、読みにくくなるからだ)。

一方「・」なら、すぐに書けるし、すっきりしていて、ほかの形に簡単に変えられる柔軟性もある。タスクには5種類の進行状況があるため、ほかの形に簡単に変えられる「・」が便利なのだ。

なんらかの行動を起こさなければならない用件。すでに行動を起こし、完了した用件。先延ばしにしたタスク(そのため、矢印の先が右側を向いている)。

翌月のマンスリーログ、または特定のコレクションに移動した用件。来月以降の予定に入れたタスク。バレットジャーナルのページの前のほうに戻って、フューチャーログに書き込む(そのため、矢印の先が左を向いている)。

バレットジャーナルに書き込んだタスクが、もう必要ではなくなる場合もある。状況が変わったり、期限がすぎたりしてしまった場合などだ。必要なくなったものは、削除しよう。

箇条書きした内容の上に取り消し線を引くだけでいい。これでひとつ、気にかけなければならないものが減った。

サブタスクの記入法タスクには、完了するまでに複数の段階を踏まなければならないものがある。

こうした段階——サブタスク——は、マスタータスクの下に、少し行頭を下げて箇条書きにするといい。

すべてのサブタスクを完了したら、ようやくマスタータスクを完了できる。

必要がなくなったサブタスクは、上から取り消し線を引いて消去すればいい。

ヒントマスタータスクの下に、ぞろぞろとサブタスクが並んでいる場合は、そのマスタータスクの規模が大きくなり、ひとつのプロジェクトになったと考えていい。

その場合は、それを独立したコレクションにしてもかまわない。

たとえば、旅行の計画を立てようと思ったところ、旅先のリサーチ、移動手段の手配、必需品の購入などが必要となり、それぞれにまたサブタスクが生じることがある(XとYとZのホテルについてネットで調べる、飛行機の運賃やレンタカー料金を調べるなど)。

こうして、あるタスクが大きなプロジェクトになっていることに気づきはしたものの、いまは新たにコレクションをつくる時間がないという場合は、それ自体をタスクにして「・ハワイ旅行のコレクションをつくる」と書き込んでおこう。

こうして、バレットジャーナルはあなたの頭のなかで錨を下ろす役割を果たすのだ。

タスクの書き込みは、ふたつの役割を担っている。

第一に、タスクとして記録しておけば、バレットジャーナルが手元にないときでも、完了していないタスクのことを忘れにくくなる。

これは「ツァイガルニク効果」と呼ばれている。

旧ソ連の心理学者ブルーマ・ツァイガルニクは、地元のレストランのスタッフが、いろいろな料理の注文を受けたあと、その料理が配膳されるまではその複雑な内容を覚えているのに、配膳されたとたんに忘れてしまうことに気づいた。

この例からもわかるように、完了していないタスクは頭のなかで摩擦を起こし、あなたの注意をそちらに向けようとする。

第二に、タスクとその状態を記録すると、自分の行動の記録を保管できる。

とりわけ、「振り返り」の際や、数日前、数か月前、数年前のノートを見返すときに、貴重な意味をもつ。

自分がどんなことに取り組んできたかを、いつでも振り返ることができるからだ。

イベントの書き方——「経験」に客観的にピンを刺す

イベントは「○」の印で表す。

イベントは、あなたの経験に関する用件で、事前にスケジュールに組み込める(「チャーリーのバースデーパーティー」など)。

あるいは、そのイベントが終わったあとに書き込むこともできる(「賃貸契約終了、やった!」)。

イベントの項目は、それが個人的なものであろうと、激しい感情をともなうものであろうと、できるだけ短く、客観的に記入すべきだ。

たとえば、「夜、映画鑑賞」という項目に「彼と別れたから」という情報は盛り込まない。

その経験の複雑さを詳細に記述しないからこそ、イベントを記入しやすくなる。

肝心なのは「記録を残す」ことなのだから。

つらい出来事があったあと、そのときの感情を克明に説明するのはむずかしい——とくに、その出来事が起こった直後は。

たとえそれが嬉しい出来事でも、複雑な感情をもつ場合がある——感謝の気持ちが湧きあがってくることも、勝利に酔いしれることも、幸せを共有できる人がいなくて涙を流すこともあるだろう。

そうした感情は厄介であるだけじゃなく、気を散らせるものにもなる。

こんなとき、イベントを箇条書きにすると、その経験にピンを刺し、一時的にあなたの頭から荷を下ろす役割を果たす。

そうすれば、ほかの優先事項に再び集中できるようになる。

こうしておけば、バレットジャーナルに安全に記録を保管し、時間に余裕があるときにいつでも見返すことができる。

そうすれば、物事を俯瞰したり、凝り固まった気持ちをほぐしたりすることができるだろう。

●現実を冷静に眺めて前を向くひとつ、イベントの例を紹介しよう。

マイケル・Sというバレットジャーナル・ユーザーがある女性と出会い、彼女にとても惹かれた。

数か月後、マイケルは彼女と交際を始めた。

ふたりは強い絆で結ばれているように思えたし、明るい未来が待っているようにも思えた。

ある日、マイケルは彼女から夕食に誘われた。

テーブルに着くと、彼女の様子がおかしいことに気づき、「なにかあったの?」と尋ねた。

すると彼女は「もうこれで終わりにしたいの」と言った。

不意をつかれ、彼は理由を尋ねた。

彼女は理由を説明しなかった。

でも、とにかく、もうふたりの関係は終わったのだ。

わけがわからず、マイケルは混乱したまま喪失感にさいなまれた。

それまでは、彼女との関係は特別なもので、ふたりは強い絆で結ばれていると思い込んでいたのだ。

数週間後、彼はバレットジャーナルを見返した。

そこには、ふたりの関係のすべてが記録してあった。

彼は1ページずつ、じっくりと読み返していった。

そして、大きなショックを受けた。

というのも、その短い交際期間中、彼が記憶していたほどには、ふたりの関係はうまくいっていなかったことがわかったからだ。

どのページにも、自分にやさしく接してくれたとは言いがたい女性の様子が綴られていた。

当時の状況をみずからの言葉で語った記録を読むうちに、彼は現実を客観的に眺められるようになり、前を向くきっかけを得られた。

それはバレットジャーナルをつけていたからこそもたらされた、貴重な体験だった。

マイケルは、まるで目の前の霧が晴れたような感覚を味わったのだ。

このように、客観的に自分の体験を記録しておくと、山あり谷ありの人生を前進するうえで大きな力となる。

とはいえ、BuJoは暗い現実を照らしだすだけではなく、あなたの気持ちをポジティブに、穏やかにすることもできる。

1年の最後に「今年はあまりいいことがなかったなあ」と思う場合もあるだろう。

たしかにハワイ旅行は実現しなかったし、希望していた昇進もかなわなかった。

でも、人間にはもともと物事を悲観的に見るバイアスが組み込まれている。

そんなふうに悲観しがちになったら、バレットジャーナルを読み返すといい。

きっと、バランスのとれたものの見方ができるようになるはずだ。

ページをめくれば、お祝い事があったこと、大きなプロジェクトを完了したこと、ダイエットやトレーニングで一定の成果をあげたこと、子どもやペットが愛らしいしぐさをしたこと、友人や伴侶と心を通わせられたことなどがわかるはずだ。

人間の記憶力は、あてにならない。

だから自分が実際に経験したことであっても、不正確に記憶したり、偏見をもって覚えていたりする。

研究によれば、ある出来事を体験したときの実際の感情と、あとからそのことを思い返したときの感情とは、大きく異なるそうだ。

すばらしい体験をしたのに、ネガティブな感情をまじえて覚えていることもあれば、ネガティブな出来事を楽しかった出来事として覚えていることもある。

ハーバード大学の心理学者ダン・ギルバートは、人間の記憶力を写真ではなく肖像画にたとえている。

人間の頭が芸術家のように記憶を「解釈」するからだ。

だからこそ、実際に起こった出来事を正確に記録に残すことが重い意味をもつ。

というのも、僕たちは過去の経験を基盤に決断をくだすことが多いからだ。

過去の記憶に頼って判断をくだしていると、実際にはなんの効果もなかったのに、効果があったと思い込み、過ちを繰り返すこともある。

いいことも悪いことも、問題の大小にかかわらず、とにかくなんでも記録に残そう。

数日後、数か月後、数年後、それはあなたの人生という旅路をたどる正確なロードマップとなる。

今日に至るまでの道のりがわかれば、これから前進する道を選ぶ際に、正確な情報に基づいて決断をくだせるようになるはずだ。

ヒント出来事が起こったら、できるだけ早くその記録を残そう。

そうすれば詳細をよく覚えているあいだに、正確に内容を記入できる。

毎日の振り返りの時間を利用して、その日の出来事を簡潔に記録に残すのもいい。

ヒント来月以降の特定の日付の予定に入れる必要があるイベント(誕生日、ミーティング、夕食の約束など)は、フューチャーログに書き込もう。

ヒント長い文章や、表現豊かな日記を書くのが好きな人は、イベントのバレットの下にメモのバレットを加え、あとで見返すときのために、詳細や興味を惹かれたことを書いておこう。

とはいえ、あくまでも内容は簡潔に。

忘れないメモの書き方——本当に重要なことだけ短くまとめる

メモは、ダッシュ「-」で表記する。

メモには、事実、アイディア、考えたこと、観察などを記入する。

いますぐ対処する必要はないし、必ずしも行動を起こさなくてもいいけれど、「覚えておきたいもの」の情報を記録するのだ。

メモは、ミーティング、講義、授業などで使うと便利だ。

メモがどういうものかは、誰でも知っているから、ここではくどくど説明しない。

それよりも、バレットジャーナルならではの方法でメモを活用するコツや、メモにはどんな効果があるかを説明していこう。

メモを短くまとめると、情報を必要不可欠なところまでそぎ落とせる。

講義やミーティングの内容を一言一句、記録に残そうとすると、耳から入ってくる内容を頭で理解できなくなる。

意味もわからず内容を書き写しているようなもので、しまいには集中力が切れてしまう。

その反対に、言葉を選んで内容を短文にまとめていると、話されている内容を脳が本気で理解しようとする。

なにが重要なのか、なぜ重要なのかと自問することで、ただ受動的に話を聞くのではなく、積極的に耳を傾けるようになるのだ。

すると「聞く」という行為が「理解する」という行為に変わる。

バレットジャーナルが大切にしているのは、「自分の頭のなかの声」と同様、「周囲の世界の声」に耳を澄ますことだ。

集中して耳を傾けるからこそ、その内容を理解できる。

これについてはパート3で詳しく説明する。

各ピースをつなげて全体像を把握するミーティング、授業、講義が終わったらすぐに、メモをとるのをやめていいわけじゃない。

情報には前後関係や背景がある。

あなたが新たな情報にふれているとき、そのストーリーは一度にひとつずつ展開していく。

ストーリーが結末を迎えるまで、情報の各ピースがどう組み合わさり、全体を構成しているのかはわからない。

あるイベントが終わったら、少し時間を置き、その時間を有効活用しよう。

腰を下ろして静かに考え、いま聞いた話の内容を処理する時間をもとう。

頭のなかに浮かびあがってきたものを把握しよう。

情報を俯瞰して、全体像をとらえると、その前後関係や背景にあるものが見えてきて、新たな理解を得られることもある。

一歩、引いて客観視し、メモを見返し、頭に浮かんできたことがあれば、それをメモとして書き留めよう。

すると、あなたの理解と現実のあいだのギャップを埋めたり、全体像を明確にするうえで役に立つ。

疑問が浮かんだら、それをリストにしておけば、次回のミーティングや授業で生産性をあげる役に立つ。

好奇心もまた大きなモチベーションの源となり、予習をするなど、積極的に取り組もうとする姿勢を生みだす。

本気でなにかを知りたいと思っていれば、それは必ず見つかるはずだ。

効果的なメモの秘訣——好きなものと関連づけて書く可能であれば、メモにとった内容を、あなたが本当に興味をもっているものと関連づけて考えよう。

次の例を参考にしてもらいたい。

情報「動物が群れをなすと、一風変わった名前で呼ばれる場合がある。

フラミンゴの群れは〝フラミンゴの華麗〟、カラスの群れは〝カラスの殺人〟……パグの群れは〝パグの不平〟」効果的ではないメモ群れになると呼び名が変わる動物がいる。

効果的なメモパグの群れは不平と呼ばれる!1番目のメモは簡潔でそのものずばりだけれど、数週間後に読んだら、このメモが果たして「哺乳動物」「爬虫類」「ウサギ目」のことを指しているのかどうか、わからなくなるかもしれない。

その反対に、2番目のメモは、あなたが好きなものと情報を関連づけている(パグが好きな場合は。

パグに興味がなければ、カラスの例を書き込むほうがいいだろう)。

こうしておけば、ほかの情報を思いだすきっかけになる。

パグやカラスの群れに変わった呼び名がついているのなら、ほかの動物でもそんな例があると推測できる。

このように、簡潔ではあるけれど、個性の強い情報を残しておけば、ほかの情報も思いだす確率が高くなる。

興味を惹かれ、もっと関連情報を調べたくなり、独立したタスクを設ける場合もあるだろう。

メモをまとめるシンプルな秘訣は「未来の自分」を常に頭に描くことだ。

1週間後、1か月後、1年後に読み返したとき、その内容が理解できなければ、メモを残したところで意味はない。

未来の自分に親切にしよう。

「簡潔さ」を求めるあまり、「わかりやすさ」を犠牲にしてはならない。

きちんとメモを残しておけば、何年たっても、あなたのバレットジャーナルには貴重な価値があるはずだ。

記号とカスタムバレット——自分の状況に合わせた記録法

「タスク」「イベント」「メモ」のバレットがあれば、たいていは事足りるはずだ。

とはいえ、人間はひとりひとり、必要とするものが違う。

ひとつのサイズの服が、全員の身体に合うわけじゃない。

これはバレットジャーナルの核をなす精神だ。

だから基本を覚えて、バレットジャーナルを使いこなせるようになったら、ぜひ自分なりのシステムをカスタマイズしてもらいたい。

パート4でカスタマイズについて詳しく述べていくが、まずは「記号」と「カスタムバレット」を利用して、必要に応じてバレットジャーナルをつくる方法を見ていこう。

あとで見返しやすいように「記号」を使うラピッドロギングでリストを作成する際に、記号を利用すると、ぐんと使いやすくなる。

こうした記号を使えば、そのタスクに情報を追加したり、内容を強調したりできるからだ。

記号はバレットの左側に書き加えるので、リストのなかでひときわ目立つし、見返したときに見つけやすい。

次に、僕が便利だと思っている記号をいくつか紹介しよう。

優先事項アスタリスク「*」を使う。

そのバレットが重要であることを示し、たいていはタスクバレットと組み合わせて利用する。

ただし、これは控えめに使うこと。

なにもかもが優先事項になってしまっては、意味がない。

ひらめき感嘆符「!」を使う。

たいてい、メモと組み合わせて使う。

すばらしいアイディアや自分に語りかけるおまじないの台詞が思い浮かんだとき、天啓を得たときなどに使おう。

そうすれば、絶対に見逃すことはない!

カスタムバレット——一目でわかるオリジナル記号カスタムバレットをつくると、あなたの独自の状況に合わせた内容をすばやく書くことができる。

たとえば、タスクをほかの人に任せる場合が多ければ、タスクバレット「・」の上にスラッシュ「/」を書き込み、ほかの人に任せたことを示そう。

ケヴィンがデータを作成したら、/を×に変え、完了したことを示せばいい。

カスタムバレットは、「フットボールの練習」など、タスクやイベントが繰り返し起こる場合にも利用できる。

フットボールの練習であれば「H」というバレットにしてもいい(ゴールの形に似ているから)。

マンスリーログのカレンダーのページに、このHのバレットを加えれば、いつフットボールの練習があるかが、一目でわかる。

そのほうが覚えやすいのであれば、アイコンのかわりに、このようにアルファベットを使うのもいい。

ヒントカスタムバレットの数は、できるだけ少なくしておく。

ラピッドロギングでは、情報をできるだけシンプルにとらえようとする。

ところが、カスタムバレットをたくさん創案すると、どんどん複雑になり、スピードが落ちる。

ラピッドロギングで混沌とした日々から抜けだそうこれで、ラピッドロギングの手順をすべて紹介した。

ラピッドロギングは、思考を「タスク」「イベント」「メモ」に分け、その内容を効率よく把握する手法だ。

同じようなやり方でトピックをつくれば、自分の目的がはっきりとわかるし、ページ番号を振ってあるので、見返したときに、探している情報をすぐに見つけられる。

ラピッドロギングは、日々の骨の折れる退屈な仕事に効率よく取り組めるようにデザインされている。

ラピッドロギングを活用すれば、肩にのしかかる「情報」という重荷をすべて下ろし、混沌とした日々から抜けだし、優先順位の高いタスクから効率よく取り組めるようになるはずだ。

コレクション——効率よく整理する4つのテンプレート

#bulletjournalcollectionどんなに頭のなかを整理しようとしても、人生には予想もつかないことが起こる。

そうすると、また頭のなかがごちゃごちゃになってしまう。

バレットジャーナルでは、こうした混沌と闘おうとするのではなく、混沌を受け入れる。

そのためにバレットジャーナルでは、昔ながらのスケジュール帳のように直線状の構造ではなく、「モジュラー」を利用している。

この「モジュラー」は、いわばレゴのセットのようなものだ。

それぞれのモジュラーは、関連情報をまとめて整理できるテンプレートだ。

こうして、ひとつのモジュールに集めた情報を「コレクション」と呼ぶ。

コレクションはほかのコレクションと内容を入れ替えたり、再利用したり、カスタマイズしたりすることができる。

たとえば、あなたは先月、買い物リストをつくり、旅行の計画を立て、プレゼンの準備をしたとしよう。

でも今月は、妊娠しやすい時期のトラッカーが必要かもしれないし、パーティーの計画があるので食事の献立を考える必要があるかもしれない。

整理する必要がある情報がなんであろうと、そのためのコレクションをつくろう。

見本にできるコレクションがなければ、オリジナルのコレクションをつくればいい(これについてはパート4で詳述する)。

あなたが利用することにしたコレクションの内容は、時間の経過とともに変化していくだろう。

だからこそ、バレットジャーナルには柔軟性があり、さまざまな方法で利用できる。

ネットで検索すれば、多様なバレットジャーナルの画像を見られるし、ひとつとして同じものはない。

どのバレットジャーナルも、ユーザーのそのときどきの独自のニーズに応じているからだ。

ここではまず、バレットジャーナルの核をなす4つのコレクションについて説明しよう。

「デイリーログ」「マンスリーログ」「フューチャーログ」、そしてすべてのコレクションのページ番号を示す「インデックス」だ。

この4つのコレクションは、あなたのノートの基盤となる。

では、それぞれのコレクションについて説明し、互いにどう関係しているのか、見ていこう。

デイリーログ——日々のタスクから出来事、発想まで書き留める

#bulletjournaldailylogデイリーログは、バレットジャーナルのきわめて便利なコレクションだ。

日々のさまざまな用事やアイディアをリアルタイムで書き留めるようにデザインされているからだ。

どんなに多忙なときでも、デイリーログを活用すれば簡単に思考を整理できるので、目の前のタスクに集中できる。

デイリーログの準備に必要なのは、その日の日付とページ番号を書くこと。

それだけ!あとは、頭に思い浮かんだそのときに、タスク、イベント、メモなどを、「ラピッドロギング」記法で書き込めばいい。

なにかアイディアが浮かんだら、そのたびに書き留めていかないと、いつまでも頭の隅でくすぶり、重荷となる。

それをいったん書き留めておけば「ノートにきちんと保管できた」と安心することができる。

デイリーログは、たんなるToDoリストではない。

もちろん、デイリーログを見れば「しなければならないこと」が一目でわかるけれど、その日のあなたの経験もしっかりと記録に残せる。

デイリーログは、いつだってあなたの発想を歓迎する。

あなたは頭にひらめいたことを、いつでも自由に書き留められる。

内容のよしあしを判断する必要などない。

いずれデイリーログの内容は、そのときのあなたの状態を示す記録となり、「振り返り」の際に役に立つ。

多忙な生活のなかで忘れがちな物事の前後関係がわかるからだ。

そうした背景が把握できれば、熟慮したうえで行動を起こせるようになる。

これまで、ありとあらゆる整理術を試してきた。

でも、どれひとつとして継続できなかった。

なにしろ、テクニックを習得するには、おカネや時間がものすごくかかるものばかりだったからね。

ある日、僕は1冊25セントのノートと1本のシャープペンシルでBuJoを始めた。

すると、バレットジャーナルではノートの構成より、自分が「目的意識」をもつほうが大切だってことがわかってきた。

朝の時刻から順番に、僕はデイリーログに1日の活動やタスクを書き込んでいった。

すると1日がスムーズに流れるようになった。

バレットジャーナルを利用して、物事の経過をたどり、記録を残せるようになったからだと思う。

——ケヴィン・Dログは好きな量だけ書けばいい「デイリーログにはどのくらいのスペースが必要ですか?」という質問をよく受ける。

僕の答え。

その日に必要なだけのスペースをどうぞ。

どのくらいのスペースが必要になるかは、事前にはわからない。

複数のページにわたってデイリーログを書く日もあれば、ページの半分も埋まらない日もあるだろう。

どんな1日になるのか、事前に知ることはできないのだから当然だ。

とはいえ、その日、なにをしたいのか、目的意識をもってすごすほうがいい。

「今日は愚痴をこぼさない」といった目標を立てるのだ。

ただし、あまり過大な期待をしないように。

だって、その日にどんな出来事が起こるかは、あなたのコントロールの及ばないことだから。

人生が大海原なら、日々の生活は波だ。

大波もあれば、小波もある。

あなたのバレットジャーナルは浜辺で、日々、打ち寄せる大波と小波を受け、その形を変えていく。

ページを埋める内容がとくになければ、なにも書かず、翌日の日付を記入してかまわない。

その反対に、書きたいことがたくさんあるときは、好きなだけ書き込んでいい。

だからデイリーログのスペースをあらかじめ決めて、事前に準備しておかないほうがいい。

当日になってから、あるいは前夜に、日付を書き込むといいだろう。

BuJoをうまく使いこなせるようになったら、これまでは目にするとストレスが溜まるばかりだったToDoリストが日々の記録となり、目的意識をもって生きるようにあなたに訴えかけるリマインダーの役割を果たすようになる。

マンスリーログ——一目でわかる月単位の里程標#

bulletjournalmonthlylog「マンスリーログ」は、新たな月に突入する前に、少し深呼吸をして、一歩引いて客観的に状況を眺めるうえで役に立つ。

ToDoリストを俯瞰できるようになるし、それにあてられる時間がどのくらいあるかもわかるからだ。

1冊のバレットジャーナルがあなたの人生のストーリーを綴る1冊にあたるなら、マンスリーログは新たな章の役割を果たす。

ささやかではあるけれど、1年間の区切りをなす重要な里程標となるのだ。

マンスリーログをつくれば、いま自分が1か月のどのあたりにいるのかがわかるし、1か月の流れを確認しつつ、その前後関係を意識し、モチベーションや集中力を維持することができる。

マンスリーログは、未記入の見開きページを使おう。

左側を「カレンダーページ」、右側を「タスクページ」として、コレクションのトピックには何月かを明記し、両方のページに記入する。

月間で見通す「カレンダーページ」カレンダーページには、その月の日付を左のページの端に書く。

そして、その横に曜日を書く。

左側の余白を少し広くとり、必要に応じて、記号を書き込む。

記号を書いておけば、カレンダーページを見返したときに大切な出来事を見つけやすくなる。

一般のスケジュール帳と同様に、イベントやタスクを事前に書き込むのもいい。

とはいえ、イベントには変更が付き物だから、その出来事が起こってからカレンダーページに書き込むことをお薦めする。

そうすれば、マンスリーログのカレンダーページは1か月の記録帳の役割を果たす。

こうして記録を残しておけば、将来のあなたに感謝されるだろう。

実際に起こった出来事が一目でわかるので、その月に、あなたがなにに集中して取り組んでいたかを正確に把握できるからだ。

ヒントできるだけ短く書こう。

マンスリーログはあとで見直すためにある。

ヒントわかりやすくするために、1週間を線で区切るのもいい。

月ごとに思考を整理する「タスクページ」マンスリーログの右側の「タスクページ」には、いま、頭のなかにある「思考の目録」を書きだす。

しばらく時間をとって腰を下ろし、頭のなかでずっと泳ぎまわっているものを頭の外にだそう。

今月、重要なことはなんだろう?優先順位が高いものはなんだろう?思考を整理したら、前月に戻って、まだ完了していないタスクを確認しよう。

重要な項目があれば、新しいマンスリーログのタスクページに移動させよう。

この「移動」については後で詳しく説明する。

マンスリーログでは、この「移動」を通じて、完了していないタスクを忘れないことが肝心だ。

完了していないタスクは、きちんと完了するまで、あるいは必要がなくなるまで、移動させよう。

フューチャーログ——将来の計画を示すタイムマシーン

#bulletjournalfuturelogバレットジャーナルは、自分が「いま、ここ」で必要としているものを基盤に展開する。

それなのに、どうして未来の計画を立てられるのだろうと、不思議に思う人もいるかもしれない。

この目的を果たすには「フューチャーログ」というコレクションが役に立つ。

フューチャーログは、来月以降の特定の日付の予定を記入しておく場所だ。

だから、いまが9月で、12月5日が締切りのプロジェクトがあるのなら、それをフューチャーログに記入すればいい。

フューチャーログは、バレットジャーナルの最初にある「インデックス」の次の見開きページに記入する。

フューチャーログにはたいてい、見開き2ページか4ページをあてる。

デザインは人それぞれだ。

次に、僕がつくった3か月分のフューチャーログの例を挙げるので、参考にしてもらいたい。

実際には、どう活用すればいいのだろうか。

昼間はデイリーログに、頭のなかに浮かんだことを(あとでしなければならないタスクであろうと)すべて書きだす。

デイリーログを利用すれば、どの内容をどのページに書き込めばいいのか、いちいち悩まずにすむ。

とにかく整理する時間ができるまで、なんでもかんでも書き込んでおけばいい。

そして、いよいよ整理にあてられる時間ができたら——たとえばデイリー・リフレクションの「振り返り」の時間に——デイリーログからフューチャーログへとタスクを移動させる。

タスクを予定に入れたのだから、デイリーログのバレットの上に移動の印「」を書けばいい。

こうすれば、そのタスクが予定に組み込まれたことがわかり、しばらくそのタスクのことは考えずにすむ。

フューチャーログは「順番を待っている列」のようなものだと思えばいい。

それぞれのタスクが、予定されている月になるのを、首を長くして待っている。

マンスリーログをつくったら、いますぐ着手できるタスクがないかどうか、確認しよう。

もしあれば、そのタスクをフューチャーログからマンスリーログのタスクページに移動させよう。

移動させたら、フューチャーログに移動の印を書きたす。

フューチャーログは、人生における責務の数々を意識するうえでとても役に立つ。

あなたのフューチャーログは、あなたの将来の計画をざっと示すタイムマシーンの機能を果たし、必要に応じて軌道修正を図ることもできる。

インデックス——あとで簡単に記録を引きだす工夫

#bulletjournalindex私はこれまでずっと、業務日誌をつけてきました。

電話で話した内容、ミーティングのメモ、そして職場で起こったことなどを、時系列に沿って記録してきたのです。

そのうえ、デスクには大量のToDoリストが積みあがり、付箋メモや紙のカレンダーなどが散乱していました。

しまいには、携帯電話でもカレンダー機能を使うようになったほどです。

業務日誌のなかから、特定のメモを探すときには、まずカレンダーを見て、そのミーティングがあった日を探します——さもなければ、だいたいこのあたりのはずと、見当をつけなければなりません。

それから日誌を開き、目当ての日にちのページを探すのです。

バレットジャーナルを利用するようになってからは、すべてが大きく変わりました。

いまでは、インデックスのページを開き、目当ての内容が記してあるページ番号を探せばいい。

ページ番号がわかったら、あとは、そのページを開くだけ!——シェリル・S・ブリッジズバレットジャーナルは、あなたが共有したいものがあれば、なんでも歓迎する。

あるとき、あなたは今週の計画を練っているとしよう。

しばらくすると、今度は部屋のレイアウトのスケッチを始め、そのあとは詩を綴り始める。

こうして没頭していれば、解放されたような気分を味わえる。

でも、ノートに書いた内容がどこに行ったかわからなくなるのは困る。

読者のみなさんは、いろいろな種類のコレクションがあるのに、そのすべてをどう追跡するのだろうと、不思議に思われるかもしれない。

バレットジャーナルでは、この難題を「インデックス」で解決する。

インデックスをつくれば、1日に、1か月に、1年間に考えたことをノートにすべて書き込み、あとで目当てのものを簡単に見つけられる。

インデックスは、いわゆる普通の「もくじ」の役割も果たしていて、バレットジャーナルの最初のページに記入する。

インデックスは、ほかのコレクション(デイリーログ以外)をすべて保管する容器のようなものだと考えればいい。

インデックスをつくるには、見開きページを開き、計4ページのトピックに「インデックス」と書こう(バレットジャーナルの公式ノートには、インデックス用のページが最初から設けられている)。

インデックスにコレクションを加えるには、ただコレクションのトピックとそのページ番号を書けばいい。

上の図版の例をご覧になればおわかりになるだろうが、コレクションは連続している必要はない。

人生は予測がつかないため、ときにはギアを変え、新たに優先順位を高くしたことに集中する場合もある。

インデックスがあれば、状況に応じて優先順位を変えられる。

いったん中断したあと、以前のコレクションのページを利用して再開してもいいし、もとのページがいっぱいになってしまったら、次の白いページを開き、そこに同じトピックを書き込めばいい。

新たなページにページ番号を記入したら、インデックスに戻り、そのページ番号を記入しよう。

「サブコレクション」で階層を分けるあなたがあるプロジェクトに取り組んでいて、さまざまな準備が必要となる場合、それぞれの準備に独立したサブコレクションを設けよう。

右の図版の例からわかるように、「ユーザー行動プロジェクト」には4つのサブコレクションがあり、それぞれがプロジェクトの独立した構成要素となっている。

「専用インデックス」でページ単位で分けるバレットジャーナルのなかには、特定のトピックに絞った内容のみが記入されているものもある。

あなたが学生なら、いま受講している教科ごとにコレクションを設けるのもいい。

プロジェクト・マネジャーなら、ひとつのプロジェクトの異なる作業の経緯を記録するのもいい。

こうした場合は「専用インデックス」を利用するといい。

普通のインデックスと同じはたらきをするけれど、違うのは、インデックス1ページがひとつのトピック専用になる点だ。

たとえば、あなたが科学、英語、数学、歴史の授業を受けているとしたら、それぞれの教科ごとに専用インデックスのページを用意しよう。

アメリカ史の授業を受けているのなら、インデックスに「アメリカ史」というトピックのページを設けよう。

アメリカ史における個別の出来事が「マスターコレクション」となり、そこからまた枝分かれしたものが「サブコレクション」となる。

「スレッド処理」で前後関係をつなげるインデックスを利用すれば、目当ての内容を見つけやすくはなるけれど、いちいちインデックスに頼って、あちこちページをめくるのが面倒だと思う人もいるかもしれない。

そんな方には「スレッド処理」が役に立つ。

このテクニックを教えてくれたのは、バレットジャーナルのコミュニティーのメンバー、ソフトウェア・エンジニアのキャリー・バーネットだ。

教えてもらった方法を試してみたところ、すごく便利なことがわかった。

スレッド処理とは、プログラミングで、あるコードと別のコードを関連づける処理を意味する。

バレットジャーナルでも同じ考え方で利用し、ノートのなかで、ある事柄と、その前後のページに記された事柄を関連づけるためにおこなう。

たとえば、あなたのバレットジャーナルにコレクション(①)があり、それは10-15ページにあるとしよう。

15ページにはもう余白がなくなっている。

その後、あなたはほかのことに集中するようになった。

けれど、しばらくして、以前のコレクションを再開したくなったら、今度は新たに51-52ページにコレクション(②)をつくればいい。

またしばらくほかのことに注意を向け、また再開することにしたら、今度は160-170ページで再開する(③)。

3か所に分かれているこれらのページをまとめるスレッド処理をしたければ、まず新たなページ番号の横に、いちばん最初のページ番号を書きたせばいい。

たとえば②で再開するときには、51ページの右側に「10」と書けばいい(①のスレッドは10-15ページになる)。

②の最後のページは52ページなので、その左側に「160」と書けば、③(160-170ページ)のスレッド処理ができる。

このテクニックを、コミュニティーメンバーのキム・アルバレスが応用し、複数のノートにスレッド表示をしてみせた!たとえば「読みたい本」というコレクションを新しいノートでも続けたいけれど、内容をすべて書き移すのが面倒なら、スレッド処理をすればいい。

「読みたい本」の最初のコレクションが、2冊目のバレットジャーナルの34ページにある場合、新しいノートの「読みたい本」コレクションのページ番号の横に、「2.34」と書く。

最初の「2」はバレットジャーナルの何冊目かを表し、「34」はそのノートのなかの当該コレクションのページ番号を表す。

この表記は、スレッド処理したほかのノートをインデックスに関連づけるときにも利用できる。

たとえば新しいノートの13ページにある「読みたい本」のコレクションを利用しつつも、古いノートのコレクションを参照したい場合、新しいノートのインデックスに「読みたい本:(2.34),13」と記入すればいい。

時間がたつにつれ、あなたのインデックスは「前後関係の一覧表」となり、どんどん量が増えていくかもしれない。

そうすると、自分が時間とエネルギーを費やしているものを客観的に眺められるようになる。

それはいわば、あなたが「イエス」と意思表示した物事すべてを表す地図だ。

肝心なのは、あなたが「イエス」と意思表示した物事がある一方で、「ノー」という決断をくだした物事もあることだ。

「イエス」は、あなたがそれに取り組んだこと、犠牲を払ったこと、時間を投資したことを意味すると同時に、そのあいだはほかのことに時間を割かなかったことを意味するのだから。

インデックスを活用すると、あなたが「イエス」という意思表示をした物事に集中するうえで役に立つ。

移動——本当に大切なことに気づく方法

そもそも、「しなくていいこと」を効率よく実行しようとするのは、無駄そのものだ。

——ピーター・ドラッカー(オーストリア出身の経営学者)世の中には、リストを作成する際に役立つ整理術がたくさんある。

でも、繰り返しやってみようと思える整理術はほとんどない。

タスクが溜まっていくと、リストは無限に膨れあがり、管理できなくなり、僕たちは途方に暮れ、やる気を失う。

おまけに、そうしたタスクがあること自体をすぐに忘れてしまう。

というのも、タスクをリストに挙げたからといって、そのタスクが「すべきもの」であるとはかぎらないからだ。

生産性をあげるとは、取り組む作業の的を絞り、ごくわずかな物事に取り組むことだ。

「しなければならない」と思い込んでいる作業の内容をときどき見直し、本当に大切なことに時間とエネルギーを向けなくてはならない。

BuJoでは、あるタスクをほかのページに書き直す作業をおこなう。

面倒くさいと思われるかもしれないけれど、この「書き直す」という作業には重要な目的がある。

不要なものを選別する機会になるのだ。

手で文字を書くには、少しばかり時間がかかる。

すると自然に、いま書き写そうとしているタスクについて少々考えることになる。

たとえば、その内容を書き写すためにほんの数秒をかける価値もないと判断したら、そのタスクはもう重要ではなくなっている。

そう判断したら、取り消し線を引いて削除しよう。

あなたは本当にそのイベントに行く必要があるのだろうか?その用事をこなすこと、パーティーを開くこと、その報告書を提出することは、本当に必要なのだろうか?必要な場合もあるだろうが、もう必要ではなくなった場合も多いはずだ。

僕たちは慌ただしい毎日のなかで、つい不要なものまで責任として背負い込んでしまう。

タスクが生じたときに、その場でじっくりと評価し、必要かどうかを検討するよりも、ただ受け入れてしまうほうが楽だからだ。

こうして無意味な用事が次から次へと積みあがり、あっという間に溜まってしまう。

あなたがなんの対処もしなければ、そうした無意味な用事が、あなたの頭の貴重な資源を食い潰していく。

ところが、そうしたタスクを書き直す時間をもてば、不要なタスクを取り除くことができる。

つまり「移動」に時間をあてれば、なにも考えずに自動操縦で日々をすごしたり、人生になんの価値ももたらさない作業に多大な時間を割いたりせずにすむのだ。

「月末の移動」——月に1回自分と向き合うバレットジャーナルのおもな移動は、毎月、月末に実施する。

新たなマンスリーログをつくる際におこなうのだ。

たとえば4月末には、新たに5月のマンスリーログをつくる。

それがすんだら、4月のページのすべてに目を通し、タスクの進行状況を確認する。

すべてのタスクが完了してはいないはずだ。

それはごく当然の話。

だから、「なぜ、このタスクは未完了なんだろう?」と自問し、罪悪感を好奇心に変えよう。

果たして、これは重要なのか?必要不可欠か?このタスクを完了しなかったら、どうなる?ある未完了のタスクが、もう実施する必要はないと判断したら、そのタスクに取り消し線を引き、削除しよう。

そして、ささやかながら貴重な時間が増えたことを祝おう。

自分をこう褒めるのもいい。

よし、よくやった!勝ったぞ!すべての勝利は——どんなにささやかであろうと——しばし、賞賛するに値する。

未完了のタスクが残っていて、まだそれに取り組まなければならない、または自分の人生に価値を加えるものだと判断した場合、そのタスクを移動させよう。

移動の方法には、次の3種類がある。

1未完了のタスクを、新たなマンスリーログのタスクページに書き写す。

それから、古いページのバレットに「移動」の印、「」を書きたす。

2そのタスクを、カスタムコレクションに書き写す。

そして古いページのバレットに「移動」の印、「」を書きたす。

3そのタスクの日付が特定されていて、その日付が来月以降になる場合、フューチャーログに移動させる。

それから「予定に入れた」ことを意味する印、「」を書きたす。

ヒント新しいマンスリーログをつくる際には、必ずフューチャーログを確認しよう。

来月に書き込むべきタスクやイベントがないかどうか、必ず確かめる。

そうしたタスクやイベントがあれば、フューチャーログから、来月のマンスリーログのタスクページかカレンダーページに移動させよう。

ヒントバレットジャーナル初心者のみなさんは、月末の移動の際に、さまざまなことに気づくはずだ。

バレットジャーナルにおけるひらめきや気づきは、この作業から生じる。

バレットジャーナルが初めての人は、最低2、3か月は試していただきたい。

次年度への移動——新たな人生の物語を綴るための棚卸し毎年、年初には、まだ使い終えていなくても、ノートを新調しよう。

もったいないと思うかもしれないけれど、ふさわしいタイミングで新たなノートに切り替えると、自分の裁量で新たなチャレンジができたような気がするし、モチベーションもあがる。

新年はノートを新調するのに最適のタイミングだ。

新年は文化のうえでも「節目」の意味を帯びるけれど、「新たな年」という文字が意味するとおり、実際に「節目」となるからだ。

旧年と新年のあいだに線を引き、過去と未来を区別するのだ。

この機会を利用して、新たなスタートを切るのがいちばんいい。

不要な重荷を下ろし、きたるべき新たな冒険に向けて、身軽になるチャンスにしよう。

ノートを最後まで使ったら、あるいは年末になったら、インデックスを見直そう。

また、すべてのコレクションを再検討し、棚卸しをしよう。

すると、これまで自分が時間とエネルギーを費やしてきたものを正確に把握できる。

次は、むずかしい選択をしなければならない。

これらのコレクション(そして未完了のタスク)は、新年度のバレットジャーナルに書き写すべきだろうか?そうした内容を人生の次の段階へと書き写すと、貴重な学びの場を得られる。

大小を問わず、「価値がある」と証明されているものだけを移動させよう。

新しいノートは、「やり直す」ためのものじゃない——「レベルアップする」ためのものだ。

新たなノートへと内容を移動させるときには、自分に課された責務によってなにを与えられ、なにを奪われたかを直視することになる。

バレットジャーナルをじっくりと読めば、自分の手で書き込んだストーリーが展開していくはずだ。

バレットジャーナルの1冊1冊が、あなたの人生の物語を綴った1巻の作品なのだから。

そこには、あなたが「こう生きたい」という人生が綴られているだろうか?もし、そうではないのなら、次の巻に綴る内容を変えるために、これまで学んできた教訓を活かそう。

ヒントウィークリーログ(#bulletjournalweeklylog)バレットジャーナル・ユーザーのなかには、月末ではなく、週末にタスクの移動をおこなう人もいる。

でも僕がウィークリーログを使うのは、その週に予定がたくさん入っているときだけだ。

内容を書き直すのがあまり好きじゃないので、快調にすごすうえで役に立つときしか書き直さない。

また、あまり書き込む内容が多くない場合には、その週のタスクを1ページか2ページにすべて書きだすのも便利だという人もいる。

いずれにしろ、あなたのニーズに合わせて利用すればいい。

僕はウィークリーログをシンプルにしておきたいので、デイリーログのテンプレートを再利用し、ただトピックをその週の日付——6月14-20——に変えて利用している。

「思考の目録」の移動——本当にやるべき価値のあることはなにか?「移動」を試したければ、あなたのノートに書き込んだ「思考の目録」を利用するといい。

まず、「思考の目録」を見直そう。

リストに挙げられているものには、あなたの時間とエネルギーを注ぎ込む価値があるかどうかを確認し、不要なものは削除しよう。

こうして、来月、取り組む必要があるものを決めたら、そうしたタスクを来月のマンスリーログのタスクページに記入しよう。

来月より先に予定しているタスクやイベントは、フューチャーログに記入しよう。

タスクやイベント以外のもの、たとえば「読みたい本」といったものは、独立したカスタムコレクションに整理してまとめよう。

すべてを完璧にしようとする必要はない。

どんな巨匠であろうと、最初は道具選びから始める。

これはあなたがバレットジャーナルとともに進化を続けていく過程の第一歩にすぎない。

自分に辛抱強くなろう。

そして「自分に合う方法」を見つけ、実践することを心がけよう。

あるバレットジャーナル・ユーザーからの手紙なぜ、こうしたこまごまとしたことに、いちいち手間をかけなくちゃいけないんだ?そう疑問に思う人もいるだろう。

もっともな疑問だ。

だから、バレットジャーナルの基盤をなすWhy(根本的な理由)を説明する前に、あるバレットジャーナル・ユーザーから頂戴した手紙を紹介したい。

プライバシー保護のために匿名にさせていただくけれど、この手紙を読めば、バレットジャーナルを日々の生活に組み込むと、どれほど大きな恩恵を受けられるかがおわかりになるはずだ。

「物事を整理する」という作業は、ただToDoリストの項目を消していくだけの作業じゃない。

「本当に大切なこと」を意識することなのだ。

親にとって、それはまさに最悪の悪夢でした。

なにしろ呼吸困難におちいったわが子のそばで、その親御さんはなすすべもなく立っていたのですから。

救急救命士の人たちが巨大なバッグとストレッチャーをもって部屋に駆け込んできて、すぐにあれこれ計測を始めて、そばにいる人たちに口早に質問を始めました。

そのお子さんの顔色は真っ青で、目はきつく閉じたままです。

心肺蘇生が始まると、小さな身体が胸を押されるたびに跳びあがりました。

これは1週間前、息子が通っているプレスクールの教室での光景です。

8歳のクラスメイトはみんな、軽度なものから重度なものまで、さまざまな健康上の問題や発達上の問題を抱えています。

みんなが授業を受けられるよう、教室にはさまざまな工夫がほどこされています。

なかには、脳腫瘍、多発性硬化症、嚢胞性線維症、自閉症、がんなどを患うお子さんもいます。

その日、呼吸停止におちいったお子さんは、直前に様子がおかしくなりましたが、それまで熱はありませんでしたし、吐き気もありませんでした——たった5分前までは。

顔色もよくて、うちの息子と、電車のおもちゃで遊んでいたのです。

私は息子たちから目を離し、ほかのお子さんのために、オレンジ色のクレヨンを探していました。

すると、突然、叫び声が聞こえて、周囲の人たちがそのお子さんのまわりに集まりました。

911への通報。

救急救命士が到着しました。

その日、教室にいた親や先生方はみんな息を詰め、事態を見守っていました。

ほかの子どもたちは安全のため、そばの教室に移動しました。

その日はたまたま、呼吸が苦しくなったお子さんのお母さんが教室にいました。

彼女は落ち着いてなどいませんでした。

両手がぶるぶると震え、お財布からなにかをだそうとして、中身をすべてぶちまけそうになったほどでした。

泣きながらお子さんの手を握っていたところに救急救命士が駆けつけて、お母さんに離れてもらい、治療にあたりました。

それでも、彼女はちゃんと状況を直視していました。

そして、バッグから擦りきれたノートを1冊、とりだしました。

それは、私にはお馴染みのノートでした。

薄い紫色のソフトカバーのロイヒトトゥルム1917。

ゴムひもが左下の端にかけられ、ペンが差してあります。

それは、バレットジャーナルでした。

最後の数ページをめくると、彼女は1ページ分の紙を破り、救急救命士に渡しました。

そして首を横に振り、「お願いです……助けてください」と、すすり泣きながら言いました。

「脈があります」と、ほかの救急救命士が言いました。

紙を受けとった男性は、驚いたような表情を浮かべて手元を見つめています。

私は彼女の隣に腰を下ろし、その肩を抱きました。

床に倒れているのがわが子でもおかしくはありませんでした。

この教室にいるどのお子さんでもおかしくなかったのです。

彼女は紙に書いてある内容を、震えながら伝えました。

「服用している薬と1回分の投薬量、専門医とファイルナンバー、電話番号、アレルギーの症状が書いてあります」そう言うと、彼女は大きく息を吸いました。

「発作の記録。

発作の記録も書いてあります」私は彼女の肩を強く抱きました。

うちの子も発作を起こすからです。

救命士たちが搬送の準備をしているあいだに、彼女はお子さんの誕生日も伝えました。

紙を受けとった救急救命士は、感心したように頭を振り、彼女に言いました。

「ありがとう。

これこそ、息子さんを助けるために必要なものです。

これはいただいていきます」そう言うと、彼は携帯電話をとりだし、バイタル情報を伝え始めました。

彼女はお子さんと一緒に救急車に乗り込みました。

彼らが後部ドアを大きな音を立てて閉め、救急車に乗り、サイレンを大きく鳴らしながらスピードをあげて去っていく様子を、私はじっと眺めていました。

その晩、私は息子を普段より少し強く抱きしめました。

そして腰を下ろし、私自身のバレットジャーナルの新たなページに、息子に関する救急用の情報を書き始めました。

服用している薬、1回分の投薬量、発作の記録、電話番号、ファイルナンバー、アレルギーのリスト。

その夜、新しいページをつくる作業を終え、彼女の携帯に電話をかけるまでに、私はティッシュを1箱、使ってしまいました。

「息子は大丈夫よ」と、彼女が言いました。

「事前に救急救命士から息子に関する情報を聞いていたから、すばやく治療にあたれましたって、お医者様から言われたの。

息子は回復する。

大丈夫よ」彼女は声を詰まらせ、しゃがれ声でそう繰り返しました。

その声には、感謝の気持ちがあふれていました。

そのお子さんは学校に戻ってきました。

小さな酸素ボンベを入れたバックパックを背負って。

酸素ボンベを携行しなければならないことを、本人は残念に思っているようです。

でも、彼は生きていて、幸福で、どこにも損傷を受けていない。

それは、親が子どもに願うことのすべてです。

ほかの親御さんもまた、いまでは各自のノートを携帯するようになっています。

いざというときのために必要な情報が記入してあるのでしょう。

「今度救急車に乗るのはわが子かもしれない」とは、なかなか考えないものです。

とはいえ、高齢の親がいつ転倒するかわからないし、突然、家族が交通事故に見舞われて、治療に必要な情報をすべて思いだせないことだってあるかもしれません。

胸に手を置いて考えてください……最近、そうした情報を必要とした人を、あなたも見かけたことがあるはずです。

ハイウェイで交通事故の現場の横を通りすぎませんでしたか。

子どもの医療記録について尋ねられたとき、すぐには思いだせないことがありませんでしたか。

ですから、書き留めておきましょう。

それを携帯しましょう。

そして、いざというときに、そのページを破りましょう。

あなたは命を救うことができるのです。

自分の、お子さんの、兄弟姉妹の、そして両親の命を。

あらかじめ情報を整理して書き留めておけば、生と死のあいだに一線を引くことができるのです。

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