五年後に株価一五〇〇円以上の上場企業にし、新規事業を展開していきたいというのがJ
社長の夢だと書いたが、二部上場を果たすためには、常識的にいって一〇億円以上の利益が
必要だろう。少なくともそのくらいの利益は欲しい。したがって、第一にJ社長は、五年後
に一〇億円の利益を出すことを基本目標に据えたのである。
一〇億円の利益を出す以上、社員の生活も向上させていきたい。Jスポーツは、社員のモ
チベーションが非常によく、 一致団結して仕事をしてきた会社だが、その割には、ボーナス
なども人に発表できるほど多くは支給していなかった会社である。そこでこれからは、社員
がプライドをもてるような高い給料を出し、生活水準を向上させていきたい。J社長は、こ
れを第二の基本目標としたわけである。
第二に、上場後に展開する事業の準備をこの五年の間にしておきたい。日本人の余暇時間
の増加に伴い、新しいかたちのレジャーが必ず生まれてくるはずだ。それへの対応が、自分
のこれまでの商売の延長上にある新規事業と結びついていく。その準備の一環として、今か
ら用地なども確保しておきたい。それには上場を果たしてファイナンスしたお金を充てれば
いい、というのがJ社長の第二の基本方針となった。
これまでのように土地や店舗のリース料を支払っていくというやり方では、お金を支払う
だけで何も残らない。自分の土地に自分で建物を建てれば、減価償却という手法で内部留保
が取れる。したがって、そういうかたちの併用もしていきたいという思いも、用地確保の発
想に拍車をかけたのだろう。
さらに、利益が多く、決してつぶれることのない健全な会社にしたい。経営者としてはだ
れしも願う方針だが、これがJ社長の第四の基本ビジョンとなった。
そして最後に、上場に際しては創業者利益をたくさん得たい。できれば三〇〜四〇億円は
欲しい、という夢を基本方針に据えたのである。
以上にあげた五つが、長期計画を立てるに当たってのJ社長の基本ビジョンである。考え
ようによっては、どれも虫のいい願いばかりだ。だが、社長の夢は、これでいいのである。
長期計画には、虫がよかろうと悪かろうと、こういう夢を描くことがまず大事である。それ
が社長の強い意思であれば、それを明確に意思表示する。社長の仕事は、将来こういう会社
にしたいという明確な意思をもつことだといっていい。 一番困るのは、意思も何も表明しな
い社長なのである。
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