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Jスポーツ社長の夢と現実

佐藤塾に入りたいと、J社長が訪ねてきた。

「今やっているスポーツ用品の小売事業を、わたしの代で何としても、売上一〇〇億円企

業にし、上場させたい。それも店頭からではなくていきなり二部上場したい。佐藤塾の生徒

に知人がいるが、しっかりと事業を伸ばしている。ぜひ仲間に入れてほしい」と。

Jさんは、当時、年商四〇億円の一地方スポーツ用品小売店の社長であったが、成長業界

にいて毎年売上を三〇から五〇%も伸ばしていたから、大まじめである。そこで聞いてみた。

「年商一〇〇億円と上場を目指すというのは実に頼もしいが、今のご商売を上場するメリッ

トは何ですか」と。

「それは、男として事業を興し会社をつくった以上、 一〇〇億の会社は区切りになるし、

上場してはじめてたいしたものだと世間が認めてくれるのではないですか。 一緒に創業した

仲間だって、人生を賭けた甲斐があるっていうものです。それと、先生笑わないでください。

本音を言うと、大金をつかんでみたい。創業者利潤を二〇〜三〇億円はとりたい。大金持ち

になって、好きなことを思う存分できるようになりたい」。素直になかなか欲張りなことを

言う。そこで、こうたずねた。

「君の意気込みは買うが、上場するといっても、上場の条件は調べたのかな」

「いや、まだそんな先のことは具体的に考えたことがありません、夢みたいなものですか

ら」

二部に上場するには一〇億円程度の利益を出すことが必要だ。当時、J社の利益は

一億五〇〇〇万円ぐらいであったと思う。いきなり上場を現実的な目標とは考えられないの

だろう。しかし、本当に心の底から上場を願うのなら、それではいけない。

「君はまだ若い。上場はまだまだ遠い先のことだと考えている。しかし、あっという間に

社長人生は過ぎていくものだ。君の四〇代、五〇代、六〇代に、どう人生を過ごしているの

か、君の理想の姿を思い浮かべてみなさい。その姿に少しでも近づくように、いま何ができ

るかを考えて確実に手を打つ、これが大事なことだ。

これから一〇年もたたないうちに五〇歳になる。あっという間に六〇歳になる。上場の準

備を今から始めても早すぎるということはない。大金持ちになりたいという欲も否定するこ

とはない。大金を実際に動かすようになったら、あなたのお金についての考え方も変わって

くるだろう。だからといって、今の素朴な動機を消すこともない。

本当に成し遂げたいことを、たとえば年商一〇〇億円でも、上場でも、心の底に強く強く

念ずることだ。そして、長期にわたる実行計画を練って、少しでも前に進める。社長という

ものは、したたかでしつこい存在でないとだめだ。ただ念仏みたいに口先だけで唱えていて

も、前には絶対に進めないよ。わたしの塾で仲間が一生懸命にやっていることは、要は、社

長としての自分の夢の長期にわたる実現計画なんだ」と。

J社長は、まず「年商一〇〇億円企業の実現」を目標に定めて、わたしの指導する長期計

画の手順に沿って、その実現計画を練り始めた。すると、すぐに壁にぶち当たってしまった

のだ。「先生、今のままでは、五年どころか一〇年たっても一〇〇億円にいきっこない。や

はリスポーツの地方小売では無理なのだろうか」と、自分の夢と現実とのギャップに気がつ

いて、まるで青菜に塩の状態であった。

これでいいのである。夢の実現の第一歩は、「現実を知る」ことなのだ。

創業してから無我夢中で事業を伸ばしてきて、「さあ、次は一〇〇億円企業だ」と野望を

膨らませる。このエネルギーが大前提にないといけない。無鉄砲でもやんちゃでもかまわな

い。しかし、実現するためには、現状との差に社長が自分で気づかないと、とんでもない間

違った方向に走りかねないのである。

これまでさまざまな会社の面倒をみてきて思うことは、社長は自分の会社の現実を意外な

ほどご存じない、ということである。

勉強会などで、ご参加の社長の夢と現実の差をつめていくと、「このままでは倒産してし

まうことになる」とか、「業種転換しないと生き残れない」などと改めて驚かれる方が少な

くないのだ。

さて、現実との差の大きさに気づいたJ社長が、次の打つ手を見つけるまでの詳細は省く

が、「高収益商品の柱」を輸入に求めて、組み立てプールの輸入施工で売上を大きく伸ばす

までは、決して平坦な道ではなかった。現在は売上一五〇億円近くに達して、 一〇〇億円を

目指すという大きな夢を実現させ、次の大目標である上場準備に着々と向かっている。

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