棚卸資産は月商の三分の一あればよいということを知っている経営者は多いが、それでは、
手元現金がどれだけあればよいかとの考えを明確に持っている企業は案外少ない。もちろん、
現金比率は三〇%以上という鉄則があるが、ここで言うのは、金利も稼がない手元現金のこ

とだ。企業では毎日現金を準備して日払いすることは皆無のはずであり、
会社の出金日は月に二日、多くて三日にすべきである。
給料、仕入れ代金、手形落ち、事務消耗品も月払いの銀行振込時代の今日、
交通費や高速代金すらもプリペイドカードや回数券方式である。平均月商
の二五%が金利のつかない当座引き落としにあれば、会社に現金を置かな
い方式をよく考えてみることである。
金利を稼がなくてもよいお金は、「現金と当座預金は月商の何日分」とか
「当座預金は○○○万円を限度とする」といったようにはっきりとした社内
ルールを決め、経理担当者に任せ切りにせず、売掛債権、回収業務、棚卸
資産の社内しつけが大事である。今後は、現金・預金の取り扱い面でも総
務部経理課のリストラを実行すべきである。
総務部長のほうも、売上げが増えたら、総務や経理の人を増やさなけれ
ばと考えていないか。というのは、これからは自社で何でもやる必要はな
いからだ。振替でも何でも、どんどんシステム化されてきているし、コン
ピュータ化が進んでいる。ところが、
「うちにはコンピュータがあります」
「きちんと使っていますか」
「え―と……」
たいがいこのような状況でコンピュータをフルに使いこなしてる会社は、中小企業では
めったにお目にかからない。近い将来には、電子マネーでの取引が一般化されてこよう。そ
うなればコンピュータ化をいっそう進める必要が高まるのはもちろんだが、同時に、従来の
売掛金や手形管理だけでなく、現・預金の管理もほとんど人手をかけずに行なえるようにな
る。
まして銀行の当座預金に大事なお金を預けておくなど、とんでもない。それはお金を遊ば
せているのと同じだ。そんなお金があるなら借金の返済や必要な事業資金に回すべきである。
お金(現金)も早く回転させることがこれからの経営には欠かせない。
経営者も「預金はあったほうがいい」と言う。銀行は、中小企業に対しては「ワクをつくっ
とかないと、いつに何が起こるかわからんから」と言うが、業績さえよければ銀行は金を貸
してくれるのである。好業績に加え、明確な将来の方針があれば、なおのことである。そう
いった意味で、総資産の場合、役員の方のお仕事のなかで、駄々っ子がおもちゃねだりをし
ているわけではあるまいし、在庫をどっさり、売掛金はたっぷり、受取手形もたくさん抱え
ているような経営をされていたのでは、いつまでたっても会社はよくならない。
損益計算書から貸借対照表を見て、売掛金が先月から、さらに三カ月前からどのようになっ
ているか、受取手形の期限なり増減がどのように推移しているか、それをできるだけ減らす
方法はないか。出張するセールスマンに現金を先渡ししたり、各拠点に小口現金を置いたり、
各人が立替すればいいものを、やたらと甘い管理をしてはいないか。
アサヒビールがフレッシュローテーションに踏み切ったのも、お客様がおいしいと感じる
新鮮な商品を届けるという、大きな戦略転換をやってのけたからである。それが今日の好業
績に結びついているわけである。私がくどいほど申し上げているように、商品もお金も同じ
値打ちのあるものである。戦略を考え、打ち出すのはトップ陣だ。ここがどうやこうや、と
いった細かな問題で議論するのではなく、売掛金や在庫などの資産を減じ金融負債をゼロに
近づけるよう、負債はゼロにするよう、現・預金を活用することがベストであるという強い
確信に満ちた方針に立って経営を進めてほしい。
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